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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048064
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】香味付与組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240401BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20240401BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240401BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240401BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240401BHJP
   A23G 9/42 20060101ALN20240401BHJP
   A23G 9/32 20060101ALN20240401BHJP
   A23G 1/32 20060101ALN20240401BHJP
   A23G 1/48 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
C11B9/00 G
A23L27/00 C
A23L27/20 G
A23L27/20 F
A23L27/20 D
A23L2/56
A23L2/00 B
A23G9/42
A23G9/32
A23G1/32
A23G1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153910
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩本 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴仙
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 丈士
(72)【発明者】
【氏名】小林 宗隆
【テーマコード(参考)】
4B014
4B047
4B117
4H059
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB18
4B014GG06
4B014GG11
4B014GK05
4B014GL03
4B014GP01
4B047LB03
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF05
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG05
4B047LG07
4B047LG20
4B047LG40
4B117LC02
4B117LG06
4B117LK06
4B117LK18
4H059BA15
4H059BB14
4H059BB15
4H059BB45
4H059DA09
4H059EA32
(57)【要約】
【課題】バニラ香味付与組成物の香味をバニラの天然感高級感、および/またはバニラエキス感のある良質な香味に改善する新規なバニラ香味付与組成物用香味改善剤、バニラの天然感高級感、および/またはバニラエキス感のある良質な香味を有するバニラ風味飲食品用香味付与組成物、ならびに当該香味付与組成物を含有させたバニラ風味飲食品を提供する。
【解決手段】下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、バニラ香味付与組成物用香味改善剤。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、バニラ香味付与組成物用香味改善剤。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【請求項2】
下記A群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、バニラ風味飲食品用香味付与組成物。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【請求項3】
請求項2に記載のバニラ風味飲食品用香味付与組成物を含有する、バニラ風味飲食品。
【請求項4】
請求項3に記載のバニラ風味飲食品において、
前記バニラ風味飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.01ppt以上10ppm未満の範囲となる、バニラ風味飲食品。
【請求項5】
下記A群から選択される1種または2種以上の化合物をバニラ香味付与組成物に添加する工程を含む、バニラ香味付与組成物の香味改善方法。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【請求項6】
請求項5に記載のバニラ香味付与組成物の香味改善方法において、
前記工程では、前記バニラ香味付与組成物の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.01ppb以上1%未満の範囲となるように、前記化合物を前記バニラ香味付与組成物に添加する、バニラ香味付与組成物の香味改善方法。
【請求項7】
下記A群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する香味付与組成物を、飲食品に添加する工程を含み、
前記香味付与組成物がバニラ香味付与組成物である、および/または、前記飲食品がバニラ風味飲食品である、飲食品の香味改善方法。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【請求項8】
請求項7に記載の飲食品の香味改善方法において、
前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.01ppt以上10ppm未満の範囲となるように、前記香味付与組成物を前記飲食品に添加する、飲食品の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味改善剤、香味付与組成物、飲食品および香味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バニラはラン科バニラ属の蔓性植物であり、その長さは最大で60メートルにも達することがある。また、果実も長さ15~20センチ程度のインゲン豆のような形状である。この果実であるグリーンバニラビーンズはそのままでは香気を有さないが、長期間での樹上での成熟工程および、発酵・乾燥を繰り返すキュアリングを行うことにより、独特の甘い香りを有するようになる。
【0003】
このキュアリング工程後のバニラビーンズ(種子およびさやの両方を含む。以下同じ。)から抽出される香料は、主成分であるバニリンを初めとする多くの香気成分(アニスアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、バニリルエチルエーテルなど)を含有しており、それらの香りが複雑に絡み合った独特の甘い芳香を有する。そのためバニラビーンズから抽出される香料は、オイゲノールやグアヤコール等を原料とする化学合成や、リグニンの分解等により製造される安価な合成バニリンでは得られない芳香を必要とする高級菓子、香粧品等に広く用いられている。
【0004】
しかしながら、このキュアリング等の工程は、一般的に6~12ヶ月という長い熟成時間を要するうえ、天候や気温等の制約を大きく受けるため、バニラの品質を安定に保つことが困難である。そのため、天然感、高級感および/またはバニラエキス感のあるバニラエキスを安定した品質で効率良く得ることは非常に困難であり、香料化合物をバニラエキスに添加することにより、バニラ香味付与組成物(バニラフレーバー)の香気の品質を安定的に供給することが求められている。
【0005】
この点、オイゲノールやグアヤコール等を原料とする合成化合物やリグニンの発酵等により製造される合成バニリンを主体とするバニラ香味付与組成物は、安価であり安定供給も可能である。このようなバニラ香味付与組成物の例として、非特許文献1の表-3には特許出願されたバニラ系合成香料が例示されている。また、特許文献1には、3-エトキシ-4-イソブチリロキシ-ベンズアルデヒドが本物のバニラ抽出物に近いより天然のバニラの香調を示すことが記載されている。さらに、特許文献2には、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ-3-エトキシ安息香酸メチルなどが、バニリン自体の香りとは全く異なる、非常に興味深い強いスパイス様又は果実様バニラ香気を発散することが記載されている。またさらに、特許文献3には、β-ダマセノンがバニラ香料組成物にドライフルーツ様香気を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3574744号公報
【特許文献2】特許第3934694号公報
【特許文献3】特開2014-169393号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料p348-366.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1および特許文献1~3に記載の化合物ではバニラ香味付与組成物が有する香味を、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感のある良質な香味に改善するには十分ではなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術における課題を解決し、バニラ香味付与組成物の香味をバニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感のある良質な香味に改善する新規なバニラ香味改善剤、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感のある良質な香味を有するバニラ風味飲食品用香味付与組成物、ならびに当該香味付与組成物を含有させたバニラ風味飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のエーテルがバニラ香味付与組成物にバニラの天然感(熟成感を含む様々な香りが複雑に絡み合ったバニラ独特の甘い香味を包含する感覚が例示されるがこれに限定されない。)、高級感(品質の高いバニラビーンズが使用されているような感覚が例示されるがこれに限定されない。)および/またはバニラエキス感(バニラエキスが有する天然物特有の複雑な深みが例示されるがこれに限定されない。)、より具体的には洋酒感(ウイスキー、ウォッカ、ジン、ビタース、ブランデー、ラム、リキュール等を想起させる感覚が例示されるがこれに限定されない)、甘い香味、熟成感(キュアリング等の工程で十分に時間をかけて熟成させたバニラビーンズが使用されているような感覚が例示されるがこれに限定されない。)、濃厚感(バニラビーンズが豊富に含まれるような感覚が例示されるがこれに限定されない。)および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感(以下単に「さや感」という場合がある。)などの良質な香味を付与乃至増強し、バニラ香味付与組成物の香味を改善することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。また本発明者らは、同じく特定のエーテルを有効成分として含有する香味付与組成物がバニラ風味飲食品にバニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などの良質な香味を付与乃至増強し、バニラ風味飲食品の香味を改善することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0012】
[1] 下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、バニラ香味付与組成物用香味改善剤。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
[2] 下記A群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、バニラ風味飲食品用香味付与組成物。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
[3] [2]に記載のバニラ風味飲食品用香味付与組成物を含むバニラ風味飲食品。
[4] [3]に記載のバニラ風味飲食品において、前記バニラ風味飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.01ppt以上10ppm未満の範囲となる、バニラ風味飲食品。
[5] 下記A群から選択される1種または2種以上の化合物をバニラ香味付与組成物に添加する工程を含む、バニラ香味付与組成物の香味改善方法。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
[6] [5]に記載のバニラ香味付与組成物の香味改善方法において、前記工程では、前記バニラ香味付与組成物の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.01ppb以上1%未満の範囲となるように、前記化合物を前記バニラ香味付与組成物に添加する、バニラ香味付与組成物の香味改善方法。
[7] 下記A群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する香味付与組成物を、飲食品に添加する工程を含み、前記香味付与組成物がバニラ香味付与組成物である、および/または、前記飲食品がバニラ風味飲食品である、飲食品の香味改善方法。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
[8] [7]に記載の飲食品の香味改善方法において、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.01ppt以上10ppm未満の範囲となるように、前記香味付与組成物を前記飲食品に添加する、飲食品の香味改善方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バニラ香味付与組成物の香味を天然感、高級感および/またはバニラエキス感のある良質な香味に改善する新規なバニラ香味改善剤、天然感、高級感および/またはバニラエキス感のある良質な香味を有するバニラ風味飲食品用香味付与組成物、ならびに当該香味付与組成物を含有させたバニラ風味飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、「濃度(ppm、ppb、ppt、%)」は特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」を表すものとする。また、本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味付与(香味を付与する)」には、香味を新たに加える、および/または、香味を増強することを含み、香味を付与乃至増強した結果、香味が改善されるものをも含んでいる。さらには、用語「香味付与(香味を付与する)」には、香味付与の結果、嗅覚および/または味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のど越し、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、炭酸や辛さなどの刺激感などを増強、抑制、または改善するものも含んでいる。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。また、本明細書において、「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0015】
(香味改善剤)
本発明の一実施の形態に係るバニラ香味付与組成物用香味改善剤(以下、本件香味改善剤という場合がある。)は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる。
【0016】
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル。
【0017】
本件香味改善剤は、後述の実施例にその一例を示すように、各種バニラ香味付与組成物に添加することでそのバニラ香味付与組成物の香味を改善することができる。より具体的には、本件香味改善剤は、添加対象の各種バニラ香味付与組成物に天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを付与乃至増強し、当該バニラ香味付与組成物の香味を改善することができる。ここで、「バニラ香味付与組成物」とは、バニラの香味を有する香味付与組成物であって、天然香料素材であるバニラ抽出物(エキストラクト、オレオレジン等)および合成香料素材であるバニリン、エチルバニリン等、ならびにこれらのいずれか一方または両方を含むバニラ香料組成物(フレーバー)、バニラ呈味付与組成物等が例示できる。
【0018】
上記A群を構成する化合物は、いずれもエーテルであり、具体的には以下の式(1)で表されるエチルフルフリルエーテル、式(2)で表されるベンジルエチルエーテル、式(3)で表されるsec-ブチルエチルエーテル、式(4)で表されるプレニルエチルエーテル、式(5)で表されるジベンジルエーテル、式(6)で表されるフルフリルメチルエーテル、式(7)で表されるベンジルメチルエーテルである。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
上記化合物は、当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手できる。上記化合物の合成例としては、原料となるアルコール(2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、3-メチル2-ブテン-1-オール(プレニルアルコール)、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール)を塩基によりアルコキシドとした後に、ハロゲン化アルキル(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化ベンジル、臭化メチル、臭化エチル、臭化ベンジル等)と求核置換反応により上記の各種エーテルを合成する方法(ウィリアムソンのエーテル合成)や、原料となるアルコールを脱水縮合して得る方法などが挙げられる。入手した上記化合物は、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0027】
本件香味改善剤は、前記A群から選択される1種の化合物のみで構成しても、前記A群から選択される2種以上の化合物を併用して構成してもよく、上記した効果を奏する。なお、後述の実施例に示すように、本件香味改善剤のうち、エチルフルフリルエーテルが特に優れた香味改善効果を奏することがわかった。
【0028】
添加対象のバニラ香味付与組成物中の本件香味改善剤の濃度(1種の化合物を使用する場合にはその化合物の濃度を表し、2種以上の化合物を併用する場合にはその合計の濃度を表す。以下同じ。)は、バニラ香味付与組成物の香気特性および/またはバニラ香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、バニラ香味付与組成物の全体質量に対して、10ppt(0.01ppb)以上1%未満、より好ましくは100ppt(0.1ppb)~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0029】
本件香味改善剤を含有するバニラ香味付与組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財を例示できる。
【0030】
本件香味改善剤を含有するバニラ香味付与組成物を添加可能な飲食品の風味は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
【0031】
本件香味改善剤を含有するバニラ香味付与組成物の添加可能な飲食品の中で、最も好適な例としては、バニラ風味飲食品が挙げられる。バニラ風味飲食品とは、バニラビーンズでバニラの香味を付与した飲食品、またはバニラ香味付与組成物でバニラの香味を付与した飲食品を意味し、例えば、バニラアイスクリーム、バニラアイスキャンディー、バニラシャーベットなどのバニラ風味冷菓類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓)、バニラ風味牛乳(加糖・無糖、甘味料有無は問わない。)、バニラ風味プリン(一般的なカスタードプリン)、バニラ風味ヨーグルト、バニラ風味キャラメル、バニラ風味チョコレート、バニラ風味ホイップクリーム、バニラ風味カスタードクリーム、バニラ風味プロテイン(粉末)、バニラ風味プロテイン飲料、バニラ風味シロップ、バニラ風味クッキー、バニラ風味ケーキなどが挙げられる。なお、もともとバニラ風味を有していない飲食品に(a)本件化合物を含まないバニラ香味付与組成物を添加してバニラ風味飲食品とした後に、本件香味付与組成物を添加しても、(b)本件香味付与組成物を添加した後に、本件化合物を含まないバニラ香味付与組成物を添加しても、(c)本件化合物を含まないバニラ香味付与組成物と本件香味付与組成物とを同時に添加しても、バニラ風味飲食品としての趣旨は変わらない。したがって、本件香味付与組成物がバニラ香味付与組成物である場合、バニラ風味飲食品は、もともとバニラ風味を有していない飲食品に本件香味付与組成物を添加することによってバニラ風味飲食品となるものも含む(以下、本明細書において同じ。)。
【0032】
また、本件香味改善剤を含有するバニラ香味付与組成物の添加可能な飲食品の中で、バニラ風味飲食品以外にも、抹茶アイスクリーム、チョコレートアイスクリーム、キャラメル、コーヒー牛乳などの、バニラ風味ではないがバニラ香味付与組成物をいわゆる隠し味として添加することが行われる飲食品も好適な例として挙げられる。
【0033】
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類、その他穀類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
【0034】
本件香味改善剤を含有するバニラ香味付与組成物を添加可能な香粧品は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディ用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。
【0035】
さらに、本件香味改善剤を含有するバニラ香味付与組成物は、各種香料組成物に添加して、当該香料組成物に香味を付与し当該香料組成物の香味を改善することもできる。各種香料組成物の具体例としては、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)が挙げられる。添加対象となる物品の例としては、上述のように、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財が挙げられる。各種香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
【0036】
(香味付与組成物)
本発明の一実施の形態に係るバニラ風味飲食品用香味付与組成物(以下「本件香味付与組成物」という場合がある。)は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「本件化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する。
【0037】
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル。
【0038】
本件香味付与組成物は、後述の実施例にその一例を示すように、各種バニラ風味飲食品に添加することでそのバニラ風味飲食品に良質な香味を付与することができる。より具体的には、本件香味付与組成物は、添加対象の各種バニラ風味飲食品にバニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを付与乃至増強し、当該バニラ風味飲食品の香味を改善することができる。
【0039】
本件香味付与組成物は、本件化合物のみで構成してもよいし、本件化合物を有効成分として所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。すなわち、前述した当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手した本件化合物(他の成分を含んでいてもよい)を、そのまま本件香味付与組成物として使用するか、溶媒または他の香味付与組成物に添加して本件香味付与組成物として使用することができる。また、本件香味付与組成物が本件化合物以外の成分として溶媒および/または他の香気成分を含む場合、本件香味付与組成物自体を香料組成物として使用することもできる。
【0040】
本件香味付与組成物中の本件化合物の濃度は、本件香味付与組成物の香気特性および/または本件香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、本件香味付与組成物の全体質量に対して、10ppt(0.01ppb)以上1%未満、より好ましくは100ppt(0.1ppb)~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0041】
本件香味付与組成物が使用可能な香調は限定されるものではなく、本件香味付与組成物によってバニラ風味飲食品に良好な香味を付与、増強乃至改善可能な任意の香調であってよい。ただし、本件香味付与組成物は、バニラ風味飲食品にバニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感を好適に付与することから、バニラ香味付与組成物、ラム(rum)香味付与組成物、ウイスキー香味付与組成物、ブランデー香味付与組成物、クリーム香味付与組成物、チョコレート香味付与組成物、ミルク香味付与組成物、卵香味付与組成物、コーヒー香味付与組成物、シュガー香味付与組成物、焦がしバター香味付与組成物などとして構成することが好ましい。
【0042】
本件香味付与組成物の添加対象のバニラ風味飲食品としては、前掲「香味改善剤」の項目で定義したバニラ風味飲食品であればよく、特に限定されないが、バニラアイスクリーム、バニラアイスキャンディー、バニラシャーベットなどのバニラ風味冷菓類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓)、バニラ風味牛乳(加糖・無糖、甘味料有無は問わない。)、バニラ風味プリン(一般的なカスタードプリン)、バニラ風味ヨーグルト、バニラ風味キャラメル、バニラ風味チョコレート、バニラ風味ホイップクリーム、バニラ風味カスタードクリーム、バニラ風味プロテイン(粉末)、バニラ風味プロテイン飲料、バニラ風味シロップ、バニラ風味クッキー、バニラ風味ケーキなどのバニラ風味飲食品が好適な例として挙げられる。なお、もともとバニラ風味を有していない飲食品に(a)本件化合物を含まないバニラ香味付与組成物を添加してバニラ風味飲食品とした後に、本件香味付与組成物を添加しても、(b)本件香味付与組成物を添加した後に、本件化合物を含まないバニラ香味付与組成物を添加しても、(c)本件化合物を含まないバニラ香味付与組成物と本件香味付与組成物とを同時に添加しても、バニラ風味飲食品としての趣旨は変わらない。したがって、本件香味付与組成物がバニラ香味付与組成物である場合、バニラ風味飲食品は、もともとバニラ風味を有していない飲食品に本件香味付与組成物を添加することによってバニラ風味飲食品となるものも含む(以下、本明細書において同じ。)。
【0043】
(香料組成物)
本発明の一実施の形態に係る香料組成物(以下、本件香料組成物という場合がある。)は、本件香味付与組成物の一態様であり、本件化合物を有効成分として含有し、着香を目的として各種バニラ風味飲食品に添加することができる。本件香料組成物は、添加対象の各種バニラ風味飲食品にバニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを付与乃至増強し、当該バニラ風味飲食品の香味を改善することができる。
【0044】
本件香料組成物中の本件化合物の濃度は、本件香料組成物の香気特性および/または本件香料組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、本件香料組成物の全体質量に対して、10ppt(0.01ppb)以上1%未満、より好ましくは100ppt(0.1ppb)~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0045】
本件香料組成物は、それ自体をバニラ風味飲食品に添加してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料(平成12年1月14日発行)」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)」に記載される香料化合物)から選択される1種または2種以上と併せてバニラ風味飲食品に添加してもよい。
【0046】
(バニラ香味付与組成物の香味改善方法)
本発明の一実施の形態に係るバニラ香味付与組成物の香味改善方法は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物(本件化合物)をバニラ香味付与組成物に添加する工程を含む。
【0047】
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル。
【0048】
後述の実施例にその一例を示すように、本件化合物をバニラ香味付与組成物に添加することで、そのバニラ香味付与組成物の香味を改善することができる。より具体的には、本件化合物は、添加対象の各種バニラ香味付与組成物に天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを付与乃至増強し、当該バニラ香味付与組成物の香味を改善することができる。
【0049】
本件化合物をバニラ香味付与組成物に添加する際の、本件化合物の濃度は、バニラ香味付与組成物の香気特性および/またはバニラ香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、バニラ香味付与組成物の全体質量に対して、10ppt(0.01ppb)以上1%未満、より好ましくは100ppt(0.1ppb)~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0050】
本実施の形態に係るバニラ香味付与組成物の香味改善方法において、本件化合物をバニラ香味付与組成物に添加する方法は特に限定されない。また、本件化合物をバニラ香味付与組成物に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0051】
(バニラ風味飲食品)
本発明の一実施の形態に係るバニラ風味飲食品(以下、本件バニラ風味飲食品という場合がある。)は、本件香味付与組成物を所定量含むものである。本件バニラ風味飲食品は、後述の実施例にその一例を示すように、本件化合物を有効成分として含有する本件香味付与組成物が有効量添加されているため、香味が改善される。より具体的には、本件バニラ風味飲食品は、本件香味付与組成物が添加されているため、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などが付与乃至増強され、当該バニラ風味飲食品の香味が改善される。本件バニラ風味飲食品は、トップ、ミドル、ラストのいずれか1以上の香味のうち、特にトップ~ミドルの香味が改善される。
【0052】
本件バニラ風味飲食品に対する本件香味付与組成物の添加量は、有効成分として含まれる本件化合物による香味改善効果の程度、本件香味付与組成物による香味付与の程度、および/またはバニラ風味飲食品自体の香味などに応じて任意に決定できる。ただし、本件香味付与組成物に含まれる本件化合物の濃度が、バニラ風味飲食品の全体質量に対して、0.01ppt以上10ppm未満、より好ましくは0.1ppt~1ppmの範囲内であることが好ましい。より具体的には、下限値を0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm(未満)、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0053】
(バニラ風味飲食品の香味付与方法)
本発明の一実施の形態に係るバニラ風味飲食品の香味付与方法は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物(本件化合物)を有効成分として含有する香味付与組成物を、バニラ風味飲食品に添加する工程を含む。
【0054】
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル。
【0055】
後述の実施例にその一例を示すように、本件香味付与組成物をバニラ風味飲食品に添加することで、そのバニラ風味飲食品の香味を改善することができる。より具体的には、本件香味付与組成物は、添加対象のバニラ風味飲食品に天然感、高級感および/またはバニラエキス感、より具体的には洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを付与乃至増強し、当該バニラ風味飲食品の香味を改善することができる。
【0056】
本件香味付与組成物をバニラ風味飲食品に添加する際の、本件香味付与組成物の濃度は、本件香味付与組成物および/またはバニラ風味飲食品の香味特性に応じて任意決定できる。ただし、本件香味付与組成物に含まれる本件化合物の濃度が、バニラ風味飲食品の全体質量に対して、0.01ppt以上10ppm未満、より好ましくは0.1ppt~1ppmの範囲内となるように、本件香味付与組成物を添加することが好ましい。より具体的には、下限値を0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm(未満)、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0057】
本実施の形態に係るバニラ風味飲食品の香味改善方法において、本件香味付与組成物をバニラ風味飲食品に添加する方法は特に限定されない。また、本件香味付与組成物をバニラ風味飲食品に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0058】
前述したように、バニラ風味飲食品には、もともとバニラ風味を有していない飲食品にバニラ香味付与組成物を添加してバニラ風味飲食品とする場合を含む。そのため、本発明の第二の実施の形態に係るバニラ風味飲食品の香味付与方法は、(a1)バニラ風味を有しない飲食品に、バニラ香味付与組成物を添加する工程、(b1)前記(a1)工程の前、前記(a1)工程と同時、または前記(a1)工程の後のいずれかにおいて、本件化合物を有効成分として含有する香味付与組成物を添加する工程を含む、とすることができる。また、本発明の第三の実施の形態に係るバニラ風味飲食品の香味付与方法は、バニラ風味を有しない飲食品に、本件化合物を有効成分として含有するバニラ香味付与組成物を添加し、前記飲食品をバニラ風味飲食品とし、かつ、バニラ香味を改善する工程を含む、とすることができる。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]本件香味改善剤のバニラフレーバー(1)への添加効果
バニラ香味付与組成物の一例であるバニラフレーバーとして、天然のバニラを含まないバニラフレーバー(1)に本件香味改善剤を添加した例について説明する。
【0061】
下記表1の処方1に従い、バニラフレーバー(1)の原料であるバニラベース(基本調合香料)を調製した(このバニラベースを以下「参考品1」とする。)。
【0062】
【表1】
【0063】
続いて、表2に示す処方2に従い、バニラフレーバー(1)を調製した。
【0064】
【表2】
【0065】
市販のエチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテルおよびベンジルメチルエーテル(以下まとめて「各種化合物」とする。)の1%エタノール溶液をそれぞれ調製し、バニラフレーバー(1)に対して、香味改善剤としての上記各種化合物が以下の表3に示す各濃度になるように添加し、本発明品1-1~1-77のバニラフレーバーを調製した。
【0066】
一方、上記各種化合物と構造が類似する化合物として、以下の式(91)で表される2-フェニルエチルメチルエーテル、式(92)で表されるp-クレジルメチルエーテル、式(93)で表されるジフェニルエーテル(以下まとめて「比較化合物」とする。)の1%エタノール溶液をそれぞれ調製し、バニラフレーバー(1)に対して、上記比較化合物が以下の表3に示す各濃度になるように添加し、比較品1-1~1-3のバニラフレーバーを調製した。
【0067】
【化8】
【0068】
【化9】
【0069】
【化10】
【0070】
そして、得られた本発明品1-1~1-77および比較品1-1~1-3のバニラフレーバーについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、上記各種化合物を添加していないバニラフレーバー(1)を対照品1として、実施例1-1~1-77および比較品1-1~1-3を対照品1と比べた際の香気についてコメントさせるとともに、対照品1と比べた洋酒感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0071】
<洋酒感に関する評価基準>
対照品1に比べて著しく増加した:5点
対照品1に比べて大きく増加した:4点
対照品1に比べてある程度増加した:3点
対照品1に比べてわずかに増加した:2点
対照品1と同等である:1点
【0072】
官能評価の結果を下記表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3に示すように、上記各種化合物は、バニラ香味付与組成物(天然のバニラ抽出物を含まないもの)に洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを良好に付与し、バニラ香味付与組成物の、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感を改善することが確認され、上記各種化合物は香味改善剤として有用であることがわかった。中でもエチルフルフリルエーテルはバニラ香味付与組成物に対する香味改善の効果が最も高いことが確認された。一方、上記各種化合物と構造が類似する比較化合物では、上記各種化合物と同様の香味改善効果は得られず、上記各種化合物の有用性が確認できた。
【0075】
[実施例2]本件香味改善剤のバニラフレーバー(2)への添加効果
バニラ香味付与組成物の一例であるバニラフレーバーとして、今度は天然のバニラ抽出物を含むバニラフレーバー(2)に本件香味改善剤を添加した例について説明する。
【0076】
<実施例2-1>バニラ抽出物の製造方法
5Lの4つ口フラスコに、約1cmにカットしたマダガスカルバニラビーンズ400g、95%エタノール1160g、および水840gを仕込み、フラスコ内の温度60~65℃で4時間撹拌しながら抽出し、抽出終了後、25℃に冷却して一夜放置した。この抽出液をサラシ布でデカント分離することにより、バニラ抽出物1500gを得た(このバニラ抽出物を以下「参考品2」とする。)。
【0077】
<実施例2-2>バニラフレーバー(2)(バニラ香味付与組成物)の調製
次に、表4に示す処方3に従い、バニラフレーバー(2)を調製した。
【0078】
【表4】
【0079】
<実施例2-3>バニラフレーバー(2)への添加例
実施例2-2で調製したバニラフレーバー(2)に対して、実施例1で調製した上記各種化合物の1%エタノール溶液を、香味改善剤としての上記各種化合物が以下の表5に示す各濃度になるように添加し、本発明品2-1~2-7のバニラフレーバーを調製した。
【0080】
そして、得られた本発明品2-1~2-7のバニラフレーバーについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、上記各種化合物のいずれも添加していないバニラフレーバー(2)を対照品2として、本発明品2-1~2-7を対照品2と比べた際の香気についてコメントさせるとともに、対照品2と比べたバニラの洋酒感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0081】
<バニラの洋酒感に関する評価基準>
対照品2に比べて著しく増加した:5点
対照品2に比べて大きく増加した:4点
対照品2に比べてある程度増加した:3点
対照品2に比べてわずかに増加した:2点
対照品2と同等である:1点
【0082】
本発明品2-1~2-7のバニラフレーバーに対する官能評価の結果を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
表5に示すように、上記各種化合物は、バニラ香味付与組成物(天然のバニラ抽出物を含むもの)に洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などを良好に付与し、バニラ香味付与組成物の、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感を改善することが確認され、上記各種化合物は香味改善剤として有用であることがわかった。中でもエチルフルフリルエーテルはバニラ香味付与組成物に対する香味改善の効果が最も高いことが確認された。
【0085】
[実施例3]本件香味付与組成物のバニラ風味加糖牛乳(バニラ風味飲食品)への添加効果
以下の表6に示す処方4によりバニラ風味加糖牛乳を調製した。なお、表6中、「本発明品1-1~1-77」および「対照品1」とあるのは、実施例1で調製した本発明品1-1~1-77および対照品1であり、「バニラフレーバー(2)」とあるのは、実施例2-2で調製したバニラフレーバー(2)である。表6に示す処方4により本発明品1-1~1-77を添加して調製したバニラ風味加糖牛乳をそれぞれ本発明品3-1~3-77のバニラ風味加糖牛乳とし、同処方4により対照品1を添加して調製したバニラ風味加糖牛乳を対照品3のバニラ風味加糖牛乳とした。
【0086】
【表6】
【0087】
そして、得られた本発明品3-1~3-77のバニラ風味加糖牛乳について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品3-1~3-77を対照品3と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3と比べたバニラの洋酒感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0088】
<バニラの洋酒感に関する評価基準>
対照品3に比べて著しく増加した:5点
対照品3に比べて大きく増加した:4点
対照品3に比べてある程度増加した:3点
対照品3に比べてわずかに増加した:2点
対照品3と同等である:1点
【0089】
本発明品3-1~3-77のバニラ風味加糖牛乳に対する官能評価の結果を表7に示す。
【0090】
【表7】
【0091】
表7に示すように、上記各種化合物を有効成分として含む香味付与組成物を添加した加糖牛乳は、洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などが良好に付与されており、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感が改善されていることが確認され、その結果、上記各種化合物を含む香味付与組成物が有用であることがわかった。中でもエチルフルフリルエーテルを含む香味付与組成物はバニラ風味飲食品に対する香味改善の効果が最も高いことが確認された。
【0092】
[実施例4]本件香味付与組成物のバニラアイスクリーム(バニラ風味飲食品)への添加効果
バニラ風味飲食品の一例であるバニラアイスクリームに、本件香味付与組成物の一例であるバニラフレーバーを添加した例について説明する。
【0093】
市販のバニラアイスクリームに、本件香味付与組成物の一例である実施例2-3で調製した本発明品2-1~2-7のバニラフレーバー(各種化合物をそれぞれ10ppm含むもの)を賦香率(バニラアイスクリームに対するバニラフレーバーの割合)0.1%で添加し、本発明品4-1~4-7のバニラアイスクリーム(各種化合物をそれぞれ10ppb含むもの)を調製した。また、上記市販のバニラアイスクリームに、実施例2-3で調製したバニラフレーバー(2)(参考品4;上記各種化合物を添加していないもの)を賦香率0.1%で添加し、対照品4のバニラアイスクリームを調製した。
【0094】
そして、得られた本発明品4-1~4-7のバニラアイスクリームについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品4-1~4-7を対照品4と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品4と比べたバニラの洋酒感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0095】
<バニラの洋酒感に関する評価基準>
対照品4に比べて著しく増加した:5点
対照品4に比べて大きく増加した:4点
対照品4に比べてある程度増加した:3点
対照品4に比べてわずかに増加した:2点
対照品4と同等である:1点
【0096】
本発明品4-1~4-7のバニラアイスクリームに対する官能評価の結果を下記表8に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
表8に示すように、上記各種化合物を有効成分として含む香味付与組成物を添加したバニラアイスクリームは、洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などが良好に付与されており、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感が改善されていることが確認され、その結果、上記各種化合物を含む香味付与組成物が有用であることがわかった。中でもエチルフルフリルエーテルを含む香味付与組成物はバニラ風味飲食品に対する香味改善の効果が最も高いことが確認された。
【0099】
[実施例5]本件香味付与組成物のチョコレート(バニラ風味飲食品)への添加効果
本件香味付与組成物の一例であるバニラフレーバーをチョコレートに添加し、バニラ風味飲食品の一例であるバニラ風味チョコレートを調製し、かつ、バニラの香味改善を試みた例について説明する。
【0100】
表9に示す処方5に従い、バニラフレーバー(3)を調製した。表9中、「MCT」とは炭素数8~12の脂肪酸からなる中性脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を意味し(以下同じ。)、「バニラベース(参考品1)」とあるのは、実施例1で調製したバニラベース(参考品1)である。
【0101】
【表9】
【0102】
市販のエチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテルおよびベンジルメチルエーテル(以下まとめて「各種化合物」とする。)の1%MCT溶液をそれぞれ調製し、バニラフレーバー(3)に対して、上記各種化合物が10ppmになるように上記各種化合物の1%MCT溶液をそれぞれ添加し、本発明品5-1~5-7のバニラフレーバーを調製した。
【0103】
そして、市販のチョコレートに、本件香味付与組成物の一例である本発明品5-1~5-7のバニラフレーバーを賦香率(チョコレートに対するバニラフレーバーの割合)0.1%で添加し、本発明品5-8~5-14のバニラ風味チョコレート(各種化合物をそれぞれ10ppb含むもの)を調製した。また、上記市販のチョコレートに、上記各種化合物を添加していないバニラフレーバー(3)を賦香率0.1%で添加し、対照品5のバニラ風味チョコレートを調製した。
【0104】
そして、得られた本発明品5-8~5-14のバニラ風味チョコレートについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品5-8~5-14を対照品5と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品5と比べたバニラの洋酒感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0105】
<バニラの洋酒感に関する評価基準>
対照品5に比べて著しく増加した:5点
対照品5に比べて大きく増加した:4点
対照品5に比べてある程度増加した:3点
対照品5に比べてわずかに増加した:2点
対照品5と同等である:1点
【0106】
本発明品5-8~5-14のバニラ風味チョコレートに対する官能評価の結果を下記表10に示す。
【0107】
【表10】
【0108】
表10に示すように、上記各種化合物を有効成分として含む香味付与組成物を添加したチョコレートは、洋酒感、甘い香味、熟成感、濃厚感および/またはキュアリングを経たバニラビーンズのさや感などが良好に付与されており、バニラの天然感、高級感および/またはバニラエキス感が改善されていることが確認され、その結果、上記各種化合物を含む香味付与組成物が有用であることがわかった。中でもエチルフルフリルエーテルを含む香味付与組成物はバニラ風味飲食品に対する香味改善の効果が最も高いことが確認された。