(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048065
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】アルコール感改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240401BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20240401BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20240401BHJP
C12G 3/04 20190101ALN20240401BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/52
A23L2/00 B
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153911
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴仙
(72)【発明者】
【氏名】岩本 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】小林 宗隆
【テーマコード(参考)】
4B047
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG05
4B115LH11
4B117LC03
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】添加対象のアルコール感を改善する新規なアルコール感改善剤、アルコール感が改善された飲食品、および飲食品のアルコール感改善方法を提供する。
【解決手段】下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、アルコール感改善剤。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、アルコール感改善剤。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【請求項2】
下記A群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、アルコール感改善組成物。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
【請求項3】
請求項1に記載のアルコール感改善剤または請求項2に記載のアルコール感改善組成物を含む飲食品であって、
前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.0001ppt以上10ppm未満の範囲となる、飲食品。
【請求項4】
請求項1に記載のアルコール感改善剤または請求項2に記載のアルコール感改善組成物を、飲食品に添加する工程を含む、飲食品のアルコール感改善方法。
【請求項5】
請求項4に記載の飲食品のアルコール感改善方法において、
前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.0001ppt以上10ppm未満の範囲となるように、前記アルコール感改善剤または前記アルコール感改善組成物を前記飲食品に添加する、飲食品のアルコール感改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール感改善剤、アルコール感改善組成物、飲食品および飲食品のアルコール感改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料は代表的な嗜好品として多くの人に愛飲されている一方、自動車の運転手のようにアルコール摂取ができない人や、近年の健康志向によりアルコール摂取を控える人のため、ノンアルコール飲料(例えば、アルコール度数が0.00%の飲料のみを指す場合もアルコール度数が1%未満の飲料を指す場合もある。)および低アルコール飲料(例えば、アルコール度数が0.5%~1%の飲料を指す場合も、アルコール度数が1%~3%の飲料を指す場合も、アルコール度数が1%~5%の飲料を指す場合も、アルコール度数が7%以下の飲料を指す場合もある。)の需要が高まり、ひとつの大きなマーケットを形成している。
【0003】
しかしながら、ノンアルコール飲料および低アルコール飲料は、アルコール飲料に比べてエタノールの濃度が低いことから、エタノールの作用以外にもエタノール由来の刺激感や風味、すなわちアルコール感が不足し物足りないと感じることがある。
【0004】
そのため、ノンアルコール飲料または低アルコール飲料でありながら、アルコール感が付与乃至増強された飲料の需要が一段と高まっており、エタノール以外の素材によりアルコール感を付与乃至増強する技術の開発が強く求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、辛味付与成分と苦味付与成分とを含んでなる、アルコール感が付与された非アルコール飲料、および辛味付与成分および苦味付与成分を飲料に添加することを含んでなる非アルコール飲料にアルコール感を付与する方法等が記載されている。また、特許文献2には、2-(メチルチオ)エタノール、3-(メチルチオ)プロピルアセテート又は3-(メチルチオ)プロピオン酸の含有量が10ppb以上であることを特徴とする非アルコール飲料、2-(メチルチオ)エタノール、3-(メチルチオ)プロピルアセテート及び3-(メチルチオ)プロピオン酸からなる群より選択される少なくとも一種の低級脂肪族化合物を、製造される非アルコール飲料に対して10ppb以上となる添加量で配合する工程を含む非アルコール飲料へのアルコール感付与方法等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-128451号公報
【特許文献2】特開2017-012175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に記載の技術では、エタノール由来と遜色のないアルコ-ル感を付与乃至増強するには十分ではなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術における課題を解決し、添加対象のアルコール感を改善する新規なアルコール感改善剤、アルコール感改善組成物、アルコール感が改善された飲食品、および飲食品のアルコール感改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のエーテルがアルコール感を付与、増強および/または調整し、その結果アルコール感を改善することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0011】
[1] 下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、アルコール感改善剤。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
[2] 下記A群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、アルコール感改善組成物。
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル
[3] [1]に記載のアルコール感改善剤または[2]に記載のアルコール感改善組成物を含む飲食品であって、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.0001ppt以上10ppm未満の範囲となる、飲食品。
[4] [1]に記載のアルコール感改善剤または[2]に記載のアルコール感改善組成物を、飲食品に添加する工程を含む、飲食品のアルコール感改善方法。
[5] [4]に記載の飲食品のアルコール感改善方法において、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の濃度が0.0001ppt以上10ppm未満の範囲となるように、前記アルコール感改善剤または前記アルコール感改善組成物を前記飲食品に添加する、飲食品のアルコール感改善方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、添加対象のアルコール感を改善する新規なアルコール感改善剤、アルコール感が改善された飲食品、および飲食品のアルコール感改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味する。本明細書において、「濃度(ppm、ppb、ppt)」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」を表すものとし、「濃度(%)」は、「アルコール分」および「アルコール度数」などの通常、「容量%(v/v%)」で表すものを除き、特に断りのない限り「質量%(w/w%)」を表すものとする。
【0014】
本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。また本明細書において「アルコール感」とは、エタノールを想起させる感覚であって、アルコール飲料を飲んだときに感じられる刺激感、辛味感、苦味感、ボリューム感、厚み、広がり、鼻抜け感、飲みごたえ感、熟成感、洋酒感などの香味・感覚が例示されるがこれに限定されない。また本明細書において「のどごし感」とは、嚥下された飲料が喉を通過する際に感じられる香味のボリューム感を意味し、喉で感じられる筋肉の動きや飲み込みの抵抗感等を含む総合的な感覚をいう。
【0015】
本明細書において、「香味改善(香味を改善する)」には、香味を付与する(新たに加える)、香味を増強する、および/または、香味を調整する(過度な香味を適度に抑える)ことを含み、香味を付与、増強乃至調整した結果、香味が改善されることを意味する。本明細書において、「香味改善(香味を改善する)」には、香味付与、香味増強および/または香味調整の結果、嗅覚および/または味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のどごし、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、炭酸や辛さなどの刺激感などを増強、抑制、または改善するものも含んでいる。また、本明細書において、飲食品の香味を「風味」と呼ぶこともある。また、本明細書において、「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0016】
本明細書において、「アルコール感改善(アルコール感を改善する)」には、アルコール感を付与する(アルコール感がないものに対しアルコール感を新たに加える)、アルコール感を増強する(既にアルコール感があるもののアルコール感を適度に増大させる)、および/または、アルコール感を調整する(過度なアルコール感を適度に抑える)ことを含み、アルコール感を付与、増強乃至調整した結果、アルコール感が改善されることを意味する。
【0017】
「ノンアルコール飲料」とは、一般に、エタノールを一切含まないアルコール度数が0.00%の飲料(「完全ノンアルコール飲料」という場合がある。)のみを指す場合と、エタノールを一切含まないアルコール度数が0.00%の飲料を含む、酒税法第2条の酒類に該当しないアルコール度数が1%未満の飲料を指す場合との両方があるが、本明細書においては、「低アルコール飲料」との区別のため、便宜上「ノンアルコール飲料」とは、エタノールを一切含まないアルコール度数が0.00%の飲料を指すこととする。同様に、「低アルコール飲料」とは、一般に、アルコール度数が11%未満の飲料、10%未満の飲料、7%以下の飲料、アルコール度数が1%~5%の飲料、アルコール度数が1%~3%の飲料、アルコール度数が0.5%~1%の飲料など様々な定義が存在するが、本明細書においては、「低アルコール飲料」とは、アルコール度数が0%を超えて11%未満の飲料を指すこととする。なお、後述するように、本件アルコール感改善剤の効果が高いという理由から、本件アルコール感改善剤の添加対象であるノンアルコール飲料および低アルコール飲料として、アルコール度数が0%~7%の飲料が好適な例として挙げられるが、本件アルコール感改善剤の添加対象としてはこれに限定されるものではない。
【0018】
(アルコール感改善剤)
本発明の一実施の形態に係るアルコール感改善剤(以下、本件アルコール感改善剤という場合がある。)は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物からなる。
【0019】
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル。
【0020】
本件アルコール感改善剤は、後述の実施例にその一例を示すように、各種添加対象に添加することでそのアルコール感を改善することができる。
【0021】
本件アルコール感改善剤の添加対象としては、特に限定されるものではないが、例えば香味付与組成物または消費財が挙げられる。香味付与組成物としては、例えば香料組成物、香味増強組成物、香味改善組成物、香味変調組成物、呈味付与組成物、呈味増強組成物、呈味改善組成物、または呈味変調組成物などが挙げられる。消費財としては、例えば飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などが挙げられる。
【0022】
したがって、本件アルコール感改善剤は、添加対象の各種香味付与組成物にアルコール感を付与し、または添加対象の各種香味付与組成物のアルコール感を増強乃至調整し、その結果、当該各種香味付与組成物のアルコール感を改善することができる。また、本件アルコール感改善剤は、添加対象の各種飲食品にアルコール感を付与し、または添加対象の各種飲食品のアルコール感を増強乃至調整し、その結果、当該各種飲食品のアルコール感を改善することができる。そのため、本件アルコール感改善剤は、アルコール感付与剤、アルコール感増強剤、および/またはアルコール感調整剤といいかえることができる。
【0023】
上記A群を構成する化合物は、いずれもエーテルであり、具体的には以下の式(1)で表されるエチルフルフリルエーテル、式(2)で表されるベンジルエチルエーテル、式(3)で表されるsec-ブチルエチルエーテル、式(4)で表されるプレニルエチルエーテル、式(5)で表されるジベンジルエーテル、式(6)で表されるフルフリルメチルエーテル、式(7)で表されるベンジルメチルエーテルである。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
上記化合物は、当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手できる。上記化合物の合成例としては、原料となるアルコール(2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、3-メチル2-ブテン-1-オール(プレニルアルコール)、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール)を塩基によりアルコキシドとした後に、ハロゲン化アルキル(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化ベンジル、臭化メチル、臭化エチル、臭化ベンジル等)と求核置換反応により上記の各種エーテルを合成する方法(ウィリアムソンのエーテル合成)や、原料となるアルコールを脱水縮合して得る方法などが挙げられる。入手した上記化合物は、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0032】
本件アルコール感改善剤は、前記A群から選択される1種の化合物のみで構成しても、前記A群から選択される2種以上の化合物を併用して構成してもよく、上記した効果を奏する。なお、後述の実施例に示すように、本件アルコール感改善剤のうち、ベンジルエチルエーテルが特に優れたアルコール感改善効果を奏することがわかった。
【0033】
添加対象の香味付与組成物中の本件アルコール感改善剤の濃度(1種の化合物を使用する場合にはその化合物の濃度を表し、2種以上の化合物を併用する場合にはその合計の濃度を表す。以下同じ。)は、香味付与組成物の香気特性および/または香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、香味付与組成物の全体質量に対して、0.1ppt以上1%未満、より好ましくは1ppt~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0034】
本件アルコール感改善剤を含有する香味付与組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財を例示でき、中でも飲食品が好ましく、ノンアルコール飲料および低アルコール飲料が特に好ましい。
【0035】
本件アルコール感改善剤を含有する香味付与組成物を添加可能な飲食品の風味は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
【0036】
より具体的な飲料例としては、ノンアルコール飲料として炭酸飲料、果汁および/または野菜汁含有飲料、茶飲料、牛乳、豆乳その他植物性ミルク、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーター、麦芽飲料、リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料(アルコール度数1%未満で、ビールやハイボール、カクテルなどに似た味わいの飲み物)などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
【0037】
より具体的な食品例としては、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、などの菓子類(中でも風味づけに日本酒、洋酒などのアルコールを使用する菓子類が好適である。);パン類;奈良漬け、糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類(中でもこれら魚介類の粕漬け、西京漬けが好適である。);缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、ハンバーグ、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類(中でも調味料として日本酒、ワイン、紹興酒などのアルコールを使用する加工飲食物類が好適である。);醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;持ち帰り弁当の具や惣菜類;などを挙げることができる。
【0038】
さらに、本件アルコール感改善剤を含有する香味付与組成物は、各種香料組成物に添加して、当該香料組成物のアルコール感を改善することもできる。各種香料組成物の具体例としては、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)が挙げられる。各種香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
【0039】
(アルコール感改善組成物)
本発明の一実施の形態に係るアルコール感改善組成物(以下「本件アルコール感改善組成物」という場合がある。)は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「本件化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する。
【0040】
(A群)エチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル。
【0041】
本件アルコール感改善組成物は、後述の実施例にその一例を示すように、各種添加対象に添加することでそのアルコール感を改善することができる。
【0042】
本件アルコール感改善組成物の添加対象としては、特に限定されるものではないが、例えば香味付与組成物または消費財が挙げられる。香味付与組成物としては、例えば香料組成物、香味増強組成物、香味改善組成物、香味変調組成物、呈味付与組成物、呈味増強組成物、呈味改善組成物、または呈味変調組成物などが挙げられる。消費財としては、例えば飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などが挙げられる。
【0043】
したがって、本件アルコール感改善組成物は、添加対象の各種香味付与組成物にアルコール感を付与し、または添加対象の各種香味付与組成物のアルコール感を増強乃至調整し、その結果、当該各種香味付与組成物のアルコール感を改善することができる。また、本件アルコール感改善組成物は、添加対象の各種飲食品にアルコール感を付与し、または添加対象の各種飲食品のアルコール感を増強乃至調整し、その結果、当該各種飲食品のアルコール感を改善することができる。そのため、本件アルコール感改善組成物は、アルコール感付与組成物、アルコール感増強組成物、および/またはアルコール感調整組成物といいかえることができる。
【0044】
本件アルコール感改善組成物は、本件化合物のみで構成してもよいし、本件化合物を有効成分として所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。すなわち、前述した当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手した本件化合物(他の成分を含んでいてもよい)を、そのまま本件アルコール感改善組成物として使用するか、溶媒または他の香味付与組成物に添加して本件アルコール感改善組成物として使用することができる。また、本件アルコール感改善組成物が本件化合物以外の成分として溶媒および/または他の香気成分を含む場合、本件アルコール感改善組成物自体を香料組成物として使用することもできる。なお、本件アルコール感改善組成物が本件化合物以外の成分として溶媒を含む場合、この溶媒としてエタノールを使用することに何ら問題はないが、本件アルコール感改善組成物の添加対象に溶媒由来のエタノールも添加されるため、添加後のアルコール濃度に留意する必要がある。後述の実施例においては、アルコール感の評価に影響が出ないよう、本件アルコール感改善組成物にエタノールが含まれない条件(溶媒にエタノールではなくプロピレングリコールを使用している。)で官能評価を行った。
【0045】
本件アルコール感改善組成物中の本件化合物の濃度は、本件アルコール感改善組成物の香気特性および/または本件アルコール感改善組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、本件アルコール感改善組成物の全体質量に対して、0.1ppt以上1%未満、より好ましくは1ppt~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0046】
(香料組成物)
本発明の一実施の形態に係る香料組成物(以下、本件香料組成物という場合がある。)は、本件アルコール感改善組成物の一態様であり、本件化合物を有効成分として含有し、着香を目的として各種飲食品に添加することができる。本件香料組成物は、添加対象の各種飲食品にアルコール感を付与し、または添加対象の各種飲食品のアルコール感を増強乃至調整し、その結果、当該各種飲食品のアルコール感を改善することができる。すなわち、本件香料組成物は、飲食品用香料組成物であることが好ましい。
【0047】
本件香料組成物が使用可能な香調は限定されるものではなく、本件香料組成物によって飲食品に良好な香味を付与、増強乃至改善可能な任意の香調であってよい。ただし、本件香料組成物は、飲食品のアルコール感を改善することから、レモン香味付与組成物、グレープフルーツ香味付与組成物、オレンジ香味付与組成物、グレープ香味付与組成物、ピーチ香味付与組成物、アップル香味付与組成物、パインアップル香味付与組成物、ベリー香味付与組成物、ビール香味付与組成物、ワイン香味付与組成物、バニラ香味付与組成物、ラム(rum)香味付与組成物、ウイスキー香味付与組成物、ブランデー香味付与組成物、チョコレート香味付与組成物、ミルク香味付与組成物、コーヒー香味付与組成物などとして構成することが好ましい。
【0048】
本件香料組成物中の本件化合物の濃度は、本件香料組成物の香気特性および/または本件香料組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、本件香料組成物の全体質量に対して、0.1ppt以上1%未満、より好ましくは1ppt~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれかとし、上限値を1%(未満)、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0049】
本件香料組成物は、以下に例示する化合物または成分を含有し得る。その例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。
【0050】
香料化合物等の例としては、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されているものを挙げることができる。
【0051】
合成香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0052】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノールなどの飽和アルコール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、α-ターピネオール、テルピネン-4-オール、ボルネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0053】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの飽和アルデヒド、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0054】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトイン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(メチルヘプテノン)などの飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0055】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0056】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、酢酸ネリルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0057】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0058】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0059】
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
【0060】
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトヘキサノール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸3-メルカプトヘキシル、p-メンタ-8-チオール-3-オンおよびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0061】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0062】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼまたはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0063】
本件香料組成物の形態としては、本件化合物およびその他の成分を水溶性もしくは油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、またはその他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
【0064】
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、プロピレングリコール、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
【0065】
また、乳化製剤とするためには、香味付与組成物を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。香味付与組成物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、またはカゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができる。また、乳化状態を安定させるため、係る乳化液には水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0066】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0067】
香料組成物は、上記以外に、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
【0068】
本件香料組成物は、それ自体を各種飲食品に添加してもよいし、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている1種または2種以上の水溶性・油溶性香料、乳化香料組成物、天然精油、天然香料、合成香料(香料化合物))から選択される1種または2種以上と併せて各種飲食品に添加してもよい。
【0069】
(飲食品)
本発明の一実施の形態に係る飲食品(以下、本件飲食品という場合がある。)は、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物を所定量含むものである。本件飲食品は、後述の実施例にその一例を示すように、本件化合物からなる本件アルコール感改善剤、または本件化合物を有効成分として含有する本件香味付与組成物が有効量添加されているため、アルコール感が改善される。
【0070】
より具体的には、本件飲食品は、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物が添加されているため、アルコール感が付与、増強または調整され、その結果、当該飲食品のアルコール感を改善される。
【0071】
本件飲食品に対する本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物の添加量は、本件化合物によるアルコール感改善効果の程度、および/または飲食品自体の香味などに応じて任意に決定できる。ただし、本件飲食品に含まれる本件化合物の濃度が、飲食品の全体質量に対して、0.0001ppt以上10ppm未満、より好ましくは0.001ppt~1ppmの範囲内であることが好ましい。より具体的には、下限値を0.0001ppt、0.001ppt、0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm(未満)、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1ppt、0.01ppt、0.001pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0072】
(飲食品のアルコール感改善方法)
本発明の一実施の形態に係る飲食品のアルコール感改善方法は、本件化合物からなるアルコール感改善剤、または本件化合物を有効成分として含有するアルコール感改善組成物を、飲食品に添加する工程を含む。
【0073】
後述の実施例にその一例を示すように、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物を各種飲食品に添加することで、その飲食品のアルコール感を改善することができる。
【0074】
本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物を飲食品に添加する際の、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物の濃度は、飲食品の香味特性に応じて任意に決定できる。ただし、本件化合物の濃度が、飲食品の全体質量に対して、0.0001ppt以上10ppm未満、より好ましくは0.001ppt~1ppmの範囲内となるように、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物を添加することが好ましい。より具体的には、下限値を0.0001ppt、0.001ppt、0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm(未満)、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1ppt、0.01ppt、0.001pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0075】
本実施の形態に係る飲食品の香味改善方法において、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物を飲食品に添加する方法は特に限定されない。また、本件アルコール感改善剤または本件アルコール感改善組成物を飲食品に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【実施例0076】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]レモン風味完全ノンアルコール飲料への添加効果
市販のエチルフルフリルエーテル、ベンジルエチルエーテル、sec-ブチルエチルエーテル、プレニルエチルエーテル、ジベンジルエーテル、フルフリルメチルエーテルおよびベンジルメチルエーテル(以下まとめて「各種化合物」とする。)の1%プロピレングリコール溶液をそれぞれ調製した。また各種化合物の1%プロピレングリコール溶液を適宜プロピレングリコールで希釈して、各種化合物の0.1%~0.1pptプロピレングリコール溶液をそれぞれ調製した(各種化合物の1%~0.1pptプロピレングリコール溶液は、以下の実施例でも使用した)。
【0078】
一方、上記各種化合物と構造が類似する化合物として、以下の式(91)で表される2-フェニルエチルメチルエーテル、式(92)で表されるp-クレジルメチルエーテル、式(93)で表されるジフェニルエーテル(以下まとめて「比較化合物」とする。)の1%プロピレングリコール溶液をそれぞれ調製した。そして、比較化合物の1%プロピレングリコール溶液をプロピレングリコールで希釈して、1ppmプロピレングリコール溶液をそれぞれ調製した。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
また、下記表1の処方1に従い、基本レモンフレーバー(基本調合香料)を調製した。
【0083】
【0084】
そして、果糖ブドウ糖液糖(Bx75°)1.3kg、クエン酸(結晶)0.014kg、クエン酸三ナトリウム0.004kg、基本レモンフレーバー0.02kgにイオン交換水を加えて溶解し全体が10Lとし、レモン風味飲料原液を調製した。
【0085】
このレモン風味飲料原液に各種化合物が下記表2の本発明品1-1~1-84に対応する各濃度となるように、各種化合物の1%~0.1pptプロピレングリコール溶液を添加し各調製液を調製した。各調製液を缶に入れた後に、炭酸ガスを2.0kg/cm2となるように添加し、缶シーマ(巻締機)で密封し、温水中で缶中心部温度が65℃に達した後に10分間65℃で維持して殺菌した後、冷水で冷却し本発明品1-1~1-84のレモン風味飲料を製造した。同様に、比較化合物が下記表2の比較品1-1~1-3に対応する各濃度となるように、比較化合物の1ppmプロピレングリコール溶液を添加し各調製液を調製し、同様の工程を経て、比較品1-1~1-3のレモン風味飲料を製造した。また、レモン風味飲料原液に各種化合物のプロピレングリコール溶液および比較化合物のプロピレングリコール溶液を添加しない以外は同様の工程で製造したレモン風味飲料を対照品1のレモン風味飲料とした。
【0086】
そして、得られた本発明品1-1~1-84および比較品1-1~1-3のレモン風味飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-84および比較品1-1~1-3を対照品1と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品1と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0087】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品1に比べて著しく増加した:5点
対照品1に比べて大きく増加した:4点
対照品1に比べてある程度増加した:3点
対照品1に比べてわずかに増加した:2点
対照品1と同等である:1点
【0088】
本発明品1-1~1-84および比較品1-1~1-3のレモン風味飲料に対する官能評価の結果を下記表2に示す。
【0089】
【0090】
表2に示すように、上記各種化合物を添加したレモン風味飲料は、これらの化合物が無添加のレモン風味飲料と比較して、アルコール感が付与されることが確認できた。一方、上記各種化合物と構造が類似する比較化合物では、上記各種化合物と同様のアルコール感改善効果は得られず、上記各種化合物の有用性が確認できた。
【0091】
なお、実施例1では基本レモンフレーバーを用いてレモン風味飲料原液を調製し、その後レモン風味飲料原液に上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加して本発明品のレモン飲料を調製したが、例えば、基本レモンフレーバーに上記各種化合物そのものまたはプロピレングリコール溶液を添加して、上記各種化合物を所定の濃度で含む本発明品のレモンフレーバーを調製し、これを任意の基材に添加して本発明品のレモン風味飲料を調製してもよい。本発明者らは、このように調製したレモン風味飲料も、実施例1のレモン風味飲料と比較してアルコール感を含む香味に何ら差がないことを確認している。
【0092】
[実施例2]レモン風味アルコール飲料への添加効果
実施例1のレモン風味飲料原液を調製する際に、イオン交換水の一部を市販の甲類焼酎に置き換えて、アルコール度数5%のレモン風味アルコール飲料原液(以下「レモン風味アルコール飲料原液」という。)を調製した。
【0093】
このレモン風味アルコール飲料原液に上記各種化合物が下記表3の本発明品2-1~2-84に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1%~0.1pptプロピレングリコール溶液を添加し各調製液を調製した。各調製液を缶に入れた後に、炭酸ガスを2.0kg/cm2となるように添加し、缶シーマ(巻締機)で密封し、温水中で缶中心部温度が65℃に達した後に10分間65℃で維持して殺菌した後、冷水で冷却し本発明品2-1~2-84のレモン風味アルコール飲料を製造した。また、レモン風味アルコール飲料原液に上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加しない以外は同様の工程で製造したレモン風味飲料を対照品2のレモン風味アルコール飲料とした。
【0094】
そして、得られた本発明品2-1~2-84のレモン風味アルコール飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品2-1~2-84を対照品2と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品2と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0095】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品2に比べて著しく増加した:5点
対照品2に比べて大きく増加した:4点
対照品2に比べてある程度増加した:3点
対照品2に比べてわずかに増加した:2点
対照品2と同等である:1点
【0096】
官能評価の結果を下記表3に示す。
【0097】
【0098】
表3に示すように、上記各種化合物を添加したレモン風味アルコール飲料は、これらの化合物が無添加のレモン風味アルコール飲料と比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0099】
なお、実施例2では基本レモンフレーバーを用いてレモン風味アルコール飲料原液を調製し、その後レモン風味アルコール飲料原液に上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加して本発明品のレモン風味アルコール飲料を調製したが、例えば、基本レモンフレーバーに上記各種化合物そのものまたはプロピレングリコール溶液を添加して、上記各種化合物を所定の濃度で含む本発明品のレモンフレーバーを調製し、これを任意の基材に添加して本発明品のレモン風味アルコール飲料を調製してもよい。本発明者らは、このように調製したレモン風味アルコール飲料も、実施例2のレモン風味アルコール飲料と比較してアルコール感を含む香味に何ら差がないことを確認している。
【0100】
[実施例3]グレープフルーツ風味アルコール飲料への添加効果
市販のグレープフルーツ風味アルコール飲料(アルコール度数5%、原材料:グレープフルーツ果汁、焼酎、炭酸水;いわゆるグレープフルーツサワー)に、上記各種化合物が下記表4の本発明品3-1~3-84に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1%~0.1pptプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品3-1~3-84のグレープフルーツ風味アルコール飲料を調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のグレープフルーツ風味アルコール飲料を対照品3とした。
【0101】
そして、得られた本発明品3-1~3-84のグレープフルーツ風味アルコール飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品3-1~3-84を対照品3と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品3と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0102】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品3に比べて著しく増加した:5点
対照品3に比べて大きく増加した:4点
対照品3に比べてある程度増加した:3点
対照品3に比べてわずかに増加した:2点
対照品3と同等である:1点
【0103】
本発明品3-1~3-84のグレープフルーツ風味アルコール飲料に対する官能評価の結果を下記表4に示す。
【0104】
【0105】
表4に示すように、上記各種化合物を添加したグレープフルーツ風味アルコール飲料は、上記各種化合物が無添加のグレープフルーツ風味アルコール飲料と比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0106】
[実施例4]オレンジ風味アルコール飲料への添加効果
市販のオレンジ風味アルコール飲料(アルコール度数5%、原材料:オレンジ果汁、焼酎、炭酸水;いわゆるオレンジサワー)に、上記各種化合物が下記表5の本発明品4-1~4-84に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1%~0.1pptプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品4-1~4-84のオレンジ風味アルコール飲料を調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のオレンジ風味アルコール飲料を対照品4とした。
【0107】
そして、得られた本発明品4-1~4-84のオレンジ風味アルコール飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品4-1~4-84を対照品4と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品4と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0108】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品4に比べて著しく増加した:5点
対照品4に比べて大きく増加した:4点
対照品4に比べてある程度増加した:3点
対照品4に比べてわずかに増加した:2点
対照品4と同等である:1点
【0109】
本発明品4-1~4-84のオレンジ風味アルコール飲料に対する官能評価の結果を下記表5に示す。
【0110】
【0111】
表5に示すように、上記各種化合物を添加したオレンジ風味アルコール飲料は、上記各種化合物が無添加のオレンジ風味アルコール飲料と比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0112】
[実施例5]ピーチ風味アルコール飲料への添加効果
市販のピーチ風味アルコール飲料(アルコール度数3%、原材料:ピーチ果汁、焼酎、炭酸水;いわゆるピーチサワー)に、上記各種化合物が下記表6の本発明品5-1~5-14に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1ppmまたは10ppbプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品5-1~5-14のピーチ風味アルコール飲料を調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のピーチ風味アルコール飲料を対照品5とした。
【0113】
そして、得られた本発明品5-1~5-14のピーチ風味アルコール飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品5-1~5-14を対照品5と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品5と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0114】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品5に比べて著しく増加した:5点
対照品5に比べて大きく増加した:4点
対照品5に比べてある程度増加した:3点
対照品5に比べてわずかに増加した:2点
対照品5と同等である:1点
【0115】
本発明品5-1~5-14のピーチ風味アルコール飲料に対する官能評価の結果を下記表6に示す。
【0116】
【0117】
表6に示すように、上記各種化合物を添加したピーチ風味アルコール飲料は、上記各種化合物が無添加のピーチ風味アルコール飲料と比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0118】
[実施例6]ビールテースト完全ノンアルコール飲料への添加効果
市販のビールテースト飲料(アルコール度数0.00%)に、上記各種化合物が下記表7の本発明品6-1~6-14に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1ppmまたは10ppbプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品6-1~6-14のビールテースト飲料を調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のビールテースト飲料を対照品6とした。
【0119】
そして、得られた本発明品6-1~6-14のビールテースト飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品6-1~6-14を対照品6と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品6と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0120】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品6に比べて著しく増加した:5点
対照品6に比べて大きく増加した:4点
対照品6に比べてある程度増加した:3点
対照品6に比べてわずかに増加した:2点
対照品6と同等である:1点
【0121】
本発明品6-1~6-14のビールテースト飲料に対する官能評価の結果を下記表7に示す。
【0122】
【0123】
表7に示すように、上記各種化合物を添加したビールテースト飲料は、上記各種化合物が無添加のビールテースト飲料と比較して、アルコール感が付与されることが確認できた。
【0124】
[実施例7]ハイボールへの添加効果
市販のハイボール(アルコール度数9%、原材料:ウイスキー、炭酸水)に、上記各種化合物が下記表8の本発明品7-1~7-14に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1ppmまたは10ppbプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品7-1~7-14のハイボールを調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のハイボールを対照品7とした。
【0125】
そして、得られた本発明品7-1~7-14のハイボールについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品7-1~7-14を対照品7と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品7と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0126】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品7に比べて著しく増加した:5点
対照品7に比べて大きく増加した:4点
対照品7に比べてある程度増加した:3点
対照品7に比べてわずかに増加した:2点
対照品7と同等である:1点
【0127】
本発明品7-1~7-14のハイボールに対する官能評価の結果を下記表8に示す。
【0128】
【0129】
表8に示すように、上記各種化合物を添加したハイボールは、上記各種化合物が無添加のハイボールと比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0130】
[実施例8]ワイン風味アルコール飲料(サングリア)への添加効果
市販のワイン風味アルコール飲料(アルコール度数6%、原材料:赤ワイン、オレンジ果汁、ラズベリー果汁;いわゆるワイン風味アルコール飲料)に、上記各種化合物が下記表9の本発明品8-1~8-14に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1ppmまたは10ppbプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品8-1~8-14のハイボールを調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のワイン風味アルコール飲料を対照品8とした。
【0131】
そして、得られた本発明品8-1~8-14のワイン風味アルコール飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品8-1~8-14を対照品8と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品8と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0132】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品8に比べて著しく増加した:5点
対照品8に比べて大きく増加した:4点
対照品8に比べてある程度増加した:3点
対照品8に比べてわずかに増加した:2点
対照品8と同等である:1点
【0133】
本発明品8-1~8-14のワイン風味アルコール飲料に対する官能評価の結果を下記表9に示す。
【0134】
【0135】
表9に示すように、上記各種化合物を添加したワイン風味アルコール飲料は、上記各種化合物が無添加のワイン風味アルコール飲料と比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0136】
[実施例9]コーヒー風味アルコール飲料への添加効果
市販のコーヒー風味アルコール飲料(アルコール度数6%、原材料:コーヒーリキュール、牛乳;いわゆるカルーア(登録商標)ミルク)に、上記各種化合物が下記表10の本発明品9-1~9-14に対応する各濃度となるように、上記各種化合物の1ppmまたは10ppbプロピレングリコール溶液を添加し、本発明品9-1~9-14のコーヒー風味アルコール飲料を調製した。一方、上記各種化合物のプロピレングリコール溶液を添加していない上記市販のコーヒー風味アルコール飲料を対照品9とした。
【0137】
そして、得られた本発明品9-1~9-14のコーヒー風味アルコール飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品9-1~9-14を対照品9と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品9と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0138】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品9に比べて著しく増加した:5点
対照品9に比べて大きく増加した:4点
対照品9に比べてある程度増加した:3点
対照品9に比べてわずかに増加した:2点
対照品9と同等である:1点
【0139】
本発明品9-1~9-14のコーヒー風味アルコール飲料に対する官能評価の結果を下記表10に示す。
【0140】
【0141】
表10に示すように、上記各種化合物を添加したコーヒー風味アルコール飲料は、上記各種化合物が無添加のコーヒー風味アルコール飲料と比較して、アルコール感が増強されることが確認できた。
【0142】
[実施例10]チョコレートへの添加効果
市販のチョコレート(アルコール度数0.00%)を一度湯煎で溶かし、溶かしたチョコレートに、上記各種化合物が下記表11の本発明品10-1~10-7に対応する各濃度となるように、市販の各種化合物の10ppmMCT(炭素数8~12の脂肪酸からなる中性脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド))溶液を添加し、再度冷却して固化させることで、本発明品10-1~10-7のチョコレートを調製した。一方、上記各種化合物のMCT溶液を添加していない上記市販のチョコレートを対照品10とした。
【0143】
そして、得られた本発明品10-1~10-7のチョコレートについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品10-1~10-7を対照品10と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品10と比べたアルコール感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0144】
<アルコール感に関する評価基準>
対照品10に比べて著しく増加した:5点
対照品10に比べて大きく増加した:4点
対照品10に比べてある程度増加した:3点
対照品10に比べてわずかに増加した:2点
対照品10と同等である:1点
【0145】
本発明品10-1~10-7のチョコレートに対する官能評価の結果を下記表11に示す。
【0146】
【0147】
表11に示すように、上記各種化合物を添加したチョコレートは、上記各種化合物が無添加のチョコレートと比較して、アルコール感が付与されることが確認できた。