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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048078
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】荷卸し装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 59/02 20060101AFI20240401BHJP
   B65G 59/04 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B65G59/02 Z
B65G59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153929
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】味生 淳
(72)【発明者】
【氏名】清川 渉
【テーマコード(参考)】
3F030
【Fターム(参考)】
3F030AA04
3F030AB04
3F030BA02
3F030BB01
3F030BC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最上段の物品を適切に検出して物品群を吸着することにより、それ以下の段積み物品群から分離する荷卸し装置を提供する。
【解決手段】荷卸し装置は吸着部21を備えた吸着装置2と、移動装置と、制御装置と、物品検出装置5とを備え、制御装置は上下方向相対距離Mが物品高さH及び特定距離Lのいずれか大きい方より大きく且つ物品高さHに特定距離Lを加えた長さよりも小さく、検出ラインRが対象物品群Wsに対して特定方向第2側X2に位置する状態から検出ラインRが対象物品群Wsに対して特定方向第1側X1に位置するまで、吸着部21を載置部3に対して特定方向第1側X1へ移動させ、物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、吸着部21を対象物品群Wsに対して上下方向に接近させる動作を禁止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置であって、
前記対象物品群の上面を吸着して前記対象物品群を保持する吸着部を備えた吸着装置と、前記載置部と前記吸着部とを水平方向に沿う特定方向及び上下方向に相対的に移動させる移動装置と、前記吸着装置及び前記移動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記特定方向の一方側を特定方向第1側とし、前記特定方向の他方側を特定方向第2側とし、水平方向に沿うと共に前記特定方向に直交する方向を特定幅方向とし、前記対象物品群を構成する前記物品の上下方向の寸法を物品高さとし、前記吸着部における前記対象物品群の上面に接する面を吸着面として、
前記吸着面に対して下側に特定距離だけ離間していると共に、前記吸着面に対して前記特定方向第1側に隣接する位置において前記特定幅方向に沿うように設定された検出ラインに交差した前記物品を検出する物品検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記対象物品群の上面と前記吸着面との上下方向における相対距離である上下方向相対距離を演算するための制御用情報を取得し、当該制御用情報に基づく前記上下方向相対距離が前記物品高さ及び前記特定距離のいずれか大きい方より大きく且つ前記物品高さに前記特定距離を加えた長さよりも小さく、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第2側に位置する状態から、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第1側に位置するまで、前記吸着部を前記載置部に対して相対的に前記特定方向第1側へ移動させるように前記移動装置を動作させる特定方向移動処理を実行し、
前記特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させる前記移動装置の動作を禁止する、荷卸し装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出しなかった場合には、前記特定方向移動処理の実行後、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させるように前記移動装置を動作させ、前記吸着面が前記対象物品群の上面に接してから前記移動装置を停止させ、前記吸着部に前記対象物品群の上面を吸着させ、その後、前記載置部の上面と前記吸着面との距離を増加させるように前記移動装置を動作させて、前記段積み物品群から前記対象物品群を分離する、請求項1に記載の荷卸し装置。
【請求項3】
前記特定距離は、前記移動装置による、前記載置部と前記吸着部との上下方向の相対位置の誤差の最大値以上であって前記物品高さ以下に設定されている、請求項1又は2に記載の荷卸し装置。
【請求項4】
前記移動装置は、前記吸着部を前記特定方向、前記特定幅方向、及び上下方向に移動させるように構成され、
前記物品検出装置は、前記吸着部と一体的に移動するように連結され、
前記載置部が配置された場所を取出しエリアとして、前記取出しエリアに対して前記特定幅方向の一方側に隣接する場所に移載先エリアが設定され、前記取出しエリアに対して前記特定方向第2側に隣接する場所に待機エリアが設定され、
前記制御装置は、前記取出しエリアに配置された前記載置部の上の前記段積み物品群から前記対象物品群を分離した後、当該分離した前記対象物品群を前記移載先エリアへ移動させて前記移載先エリアに載置するように前記吸着部及び前記移動装置を動作させる移載処理を実行し、その後、次の前記特定方向移動処理を開始する前に、前記吸着部を前記待機エリアへ移動させるように前記移動装置を動作させる、請求項1又は2に記載の荷卸し装置。
【請求項5】
前記対象物品群の分離を1度も行っていない初期状態の前記段積み物品群の上下方向の寸法である初期状態高さを検出する高さ検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記初期状態の前記段積み物品群から最初の前記対象物品群の分離を行う場合、前記高さ検出装置により検出された前記初期状態高さを含む前記制御用情報を取得し、当該制御用情報に基づく前記上下方向相対距離がゼロより大きく且つ前記特定距離より小さく、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第2側に位置する状態から、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第1側に位置するまで、前記吸着部を前記載置部に対して相対的に前記特定方向第1側へ移動させるように前記移動装置を動作させる初期特定方向移動処理を実行し、
前記初期特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出しない領域が存在した場合には、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させる前記移動装置の動作を禁止する、請求項1又は2に記載の荷卸し装置。
【請求項6】
前記対象物品群の分離を1度も行っていない初期状態の前記段積み物品群の上下方向の寸法である初期状態高さを検出する高さ検出装置を更に備え、
前記制御用情報には、前記高さ検出装置により検出された前記初期状態高さの情報と、前記初期状態の前記段積み物品群の段数である初期段数の情報と、同じ前記段積み物品群から既に分離した前記対象物品群の段数である分離済段数の情報と、が含まれ、
前記制御装置は、前記初期状態高さを前記初期段数で除算した値を前記物品高さとし、前記物品高さに前記分離済段数を乗算した値を分離済高さとして、前記初期状態高さから前記分離済高さを差し引いた値を現時点の前記段積み物品群の上下方向の寸法として、前記上下方向相対距離を演算する、請求項1又は2に記載の荷卸し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような荷卸し装置の一例が、特開2002-128275号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の荷卸し装置(ピッキング装置1)は、クランプ機構(2)と昇降装置(リフター10)とを備えている。昇降装置には、パレット(P)を介して複数の物品(商品6)が段積みされており、最上段又は上から複数段の物品群がクランプ機構(2)によりピッキングされる。具体的には、昇降装置(10)の上昇により任意の段の物品群が、クランプ機構(2)の押圧具(7)に対応する位置に配置される。そして、この任意の段の物品群が2対の押圧具(7)により挟持される。その状態で昇降装置(10)が下降すると、最上段から任意の段までの物品群が、それより下の段の物品群から分離される。
【0004】
ところで、複数の物品が積付けられた段積み物品群では、荷崩れ防止のために、隣り合う物品同士が、糊等で接着されている場合がある。このような場合、押圧具(7)に挟持された物品群のうちの一部の物品が、それより下の段積み物品群から分離されずに、昇降装置上に残留してしまうことがある。特許文献1の荷卸し装置では、押圧具(7)の下側に残留センサー(22)を設けることで、分離されずに残留した物品を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-128275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の荷卸し装置では、上記のようにクランプ機構(2)を備えており、任意の段の物品群を側方から挟持するように構成されている。一方、荷卸し装置には、最上段の物品群の上面を吸着部により吸着して、最上段の物品群をそれより下の段積み物品群から分離するように構成されたものもある。このような荷卸し装置では、最上段の一部の物品が分離せずに残留した場合、次の荷卸し動作において、段積み物品群に対して上側から接近する吸着部と残留した物品とが衝突する虞がある。また、このような一部の物品の残留が生じた場合以外にも、例えば、最上段の物品群と吸着部との位置関係を示す情報に誤りがある場合、すなわち、認識している段積み物品群の段数や、物品の高さ等に誤りがある場合にも、同様の問題が生じ得る。
【0007】
そこで、最上段の物品群を吸着してそれより下の段積み物品群から分離する荷卸し装置において、最上段の物品を適切に検出して荷卸し動作に反映させることができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る荷卸し装置は、載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置であって、
前記対象物品群の上面を吸着して前記対象物品群を保持する吸着部を備えた吸着装置と、前記載置部と前記吸着部とを水平方向に沿う特定方向及び上下方向に相対的に移動させる移動装置と、前記吸着装置及び前記移動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記特定方向の一方側を特定方向第1側とし、前記特定方向の他方側を特定方向第2側とし、水平方向に沿うと共に前記特定方向に直交する方向を特定幅方向とし、前記対象物品群を構成する前記物品の上下方向の寸法を物品高さとし、前記吸着部における前記対象物品群の上面に接する面を吸着面として、
前記吸着面に対して下側に特定距離だけ離間していると共に、前記吸着面に対して前記特定方向第1側に隣接する位置において前記特定幅方向に沿うように設定された検出ラインに交差した前記物品を検出する物品検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記対象物品群の上面と前記吸着面との上下方向における相対距離である上下方向相対距離を演算するための制御用情報を取得し、当該制御用情報に基づく前記上下方向相対距離が前記物品高さ及び前記特定距離のいずれか大きい方より大きく且つ前記物品高さに前記特定距離を加えた長さよりも小さく、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第2側に位置する状態から、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第1側に位置するまで、前記吸着部を前記載置部に対して相対的に前記特定方向第1側へ移動させるように前記移動装置を動作させる特定方向移動処理を実行し、
前記特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させる前記移動装置の動作を禁止する。
【0009】
本構成によれば、上下方向相対距離が、物品高さ及び特定距離のいずれか大きい方より大きく、且つ、物品高さに特定距離を加えた長さよりも小さい状態を保ちながら、検出ラインを対象物品群の上面に沿って特定方向に移動させるため、対象物品群の上面より上側に存在する物品の有無を適切に検出することができる。
そして、そのような物品を検出した場合、すなわち、物品が存在しないはずの位置に物品が存在した場合に、吸着部を対象物品群に対して上下方向に接近させる移動装置の動作が禁止される。従って、吸着部と当該物品とが衝突して吸着部及び物品の少なくとも一方が破損する可能性を低減できる。
このように本構成によれば、最上段の物品を適切に検出して荷卸し動作に反映させることができる。
【0010】
荷卸し装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】物品移載設備の平面図
図2】荷卸し装置及び段積み物品群の正面図
図3】吸着装置、物品検出装置、及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図4】特定方向移動処理における吸着装置、物品検出装置、及び段積み物品群を模式的に示す側面図
図5】荷卸し動作が正常に行われる場合における、対象物品群を吸着した状態の吸着装置を模式的に示す側面図
図6】対象物品群を吸着して持ち上げた状態の吸着装置を模式的に示す側面図
図7】特定方向移動処理における吸着装置、物品検出装置、及び段積み物品群を模式的に示す側面図
図8】初期特定方向移動処理における吸着装置、物品検出装置、及び段積み物品群を模式的に示す側面図
図9】吸着部の上下方向の位置の一例を示す側面図
図10】吸着部の上下方向の位置の別例を示す側面図
図11】制御ブロック図
図12】制御装置による制御を示すフローチャート
図13】制御装置による制御を示すフローチャート
図14】制御装置による制御を示すフローチャート
図15】その他の実施形態に係る物品移載設備の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.全体概要
以下に、荷卸し装置1を物品移載設備に適用した例について図面に基づいて説明する。本実施形態では、図1に示すように、物品移載設備は、荷卸し装置1と、搬送装置6と、自動倉庫(不図示)と、を備えている。本例では、荷卸し装置1は、自動倉庫から出庫された複数の物品Wを、取出しエリア7から移載先エリア8に移載する。搬送装置6は、自動倉庫から出庫された複数の物品Wを取出しエリア7に搬送すると共に、移載先エリア8にある複数の物品Wを、自動倉庫の外部へ搬出する。
【0013】
本例では、図1及び図2に示すように、搬送装置6は、第1コンベヤ6aと第2コンベヤ6bとを備えている。第1コンベヤ6aは、自動倉庫から取出しエリア7に複数の物品Wを搬送する。また、第1コンベヤ6aは、荷卸し装置1により移載されずに残った物品Wを、取出しエリア7から自動倉庫へ搬送する。第2コンベヤ6bは、取出しエリア7から移載先エリア8に移載された複数の物品Wを、移載先エリア8から物品移載設備の外部へ搬出する。なお、第2コンベヤ6bによる物品Wの搬送先が自動倉庫であっても良い。
【0014】
以下では、水平方向に沿う特定方向Xの一方側を特定方向第1側X1とし、特定方向Xの他方側を特定方向第2側X2とし、水平方向に沿うと共に特定方向Xに直交する方向を特定幅方向Yとする。また、本実施形態では、特定幅方向Yの一方側を特定幅方向第1側Y1とし、特定幅方向Yの他方側を特定幅方向第2側Y2として説明する。本明細書において、ある方向に沿うとは、当該方向と平行な場合に限らず、当該方向に対して傾斜している場合(具体的には、当該方向と実質的に平行な場合等のように、当該方向に対して多少傾斜している場合)も含む概念として用いている。
【0015】
本実施形態では、図1に示すように、載置部3が配置された場所を取出しエリア7として、取出しエリア7に対して特定幅方向Yの一方側に隣接する場所に移載先エリア8が設定され、取出しエリア7に対して特定方向第2側X2に隣接する場所に待機エリア9が設定されている。本例では、移載先エリア8は、取出しエリア7に対して特定幅方向第2側Y2に隣接している。図示の例では、移載先エリア8は、取出しエリア7に対して、後述する吸着装置2(具体的には、吸着支持部22)の特定幅方向Yの寸法よりも狭い間隔を空けて配置されている。また、移載先エリア8及び取出しエリア7は、荷卸し装置1(具体的には、後述する台座部41等の固定部分)に対して特定方向第2側X2に配置され、待機エリア9は、取出しエリア7及び移載先エリア8に対して特定方向第2側X2に配置されている。
【0016】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、取出しエリア7では、載置部3の上に段積みされた複数の物品W(以下、段積み物品群Wtと称する)が配置される。本例では、載置部3はパレットPとされている。すなわち、段積み物品群WtはパレットPの上に載置されている。また、本例では、移載先エリア8にも載置部3としてパレットPが配置される。そして、取出しエリア7から移載される物品Wは、移載先エリア8のパレットP上に積付けられる。図1及び図2の例では、取出しエリア7は、第1コンベヤ6aの搬送面上に設定されている。また、移載先エリア8は、第2コンベヤ6bの搬送面上に設定されている。なお、物品Wは、蓋を備える容器であり、例えば、食品や飲料水、機械部品等の様々な物が収容されている。本実施形態では、1つの段積み物品群Wtに属する複数の物品Wは、それぞれ同じ形状及び寸法の容器とされている。図示の例では、物品Wは、段ボール箱である。なお、載置部3は、パレットPに限られず、例えば、リフタの昇降台やコンベヤの搬送面であっても良い。つまり、物品Wは、必ずしもパレットPに載置されていなくても良い。
【0017】
2.荷卸し装置
図5及び図6に示すように、荷卸し装置1は、載置部3の上に段積みされた複数の物品Wである段積み物品群Wtから、最上段に属する複数の物品Wである対象物品群Wsを分離する。本実施形態では、荷卸し装置1は、取出しエリア7において、対象物品群Wsをそれより下の段積み物品群Wtに対して相対的に持ち上げる。これにより、対象物品群Wsは、それより下の段積み物品群Wtから分離される。本例では、荷卸し装置1は、対象物品群Wsに属する全ての物品Wを、それより下の段積み物品群Wtから分離する。以下では、荷卸し装置1の具体的な構成について説明する。
【0018】
図1図2図3、及び図11に示すように、荷卸し装置1は、対象物品群Wsの上面11を吸着して対象物品群Wsを保持する吸着部21を備えた吸着装置2と、載置部3と吸着部21とを水平方向に沿う特定方向X及び上下方向に相対的に移動させる移動装置4と、吸着装置2及び移動装置4を制御する制御装置100と、を備えている。本実施形態では、荷卸し装置1は、高さ検出装置10を更に備えている。
【0019】
2-1.高さ検出装置
本実施形態では、図1図3、及び図8に示すように、高さ検出装置10は、対象物品群Wsの分離を1度も行っていない初期状態の段積み物品群Wtの上下方向の寸法である初期状態高さを検出する。本実施形態では、高さ検出装置10は、第1コンベヤ6aによる搬送経路の途中に配置され、第1コンベヤ6aによって取出しエリア7に搬送される段積み物品群Wtの高さを検出する。従って、この高さ検出装置10により検出されるのは、段積み物品群Wtから物品W(対象物品群Ws)が分離される前の初期状態の高さである。そして、この段積み物品群Wtの初期状態の高さを示す初期状態高さの情報は、制御装置100に出力される。これにより、制御装置100は、高さ検出装置10から初期状態高さの情報を制御用情報101として取得する。制御装置100は、当該初期状態高さの情報に基づいて、吸着部21を、段積み物品群Wtのうちの対象物品群Wsに対応する位置に移動させる。
【0020】
2-2.移動装置
本実施形態では、図1及び図2に示すように、移動装置4は、吸着部21を特定方向X、特定幅方向Y、及び上下方向に移動させるように構成されている。これにより、移動装置4は、対象物品群Wsを吸着保持した吸着部21を、載置部3及び対象物品群Wsより下の段積み物品群Wtに対して持ち上げることができる。また、移動装置4は、吸着部21を取出しエリア7、移載先エリア8、及び待機エリア9との間で移動させることができる。本例では、図1及び図2に示すように、移動装置4は、台座部41と回転部42とロボットアーム46(第1アーム43、第2アーム44)とを備えている。台座部41は、架台39に固定されている。回転部42は、台座部41に上下方向に沿う軸心周りに回転自在に支持されている。第1アーム43の基端部が、回転部42に揺動自在に連結されている。第2アーム44の基端部が、第1アーム43の先端部に揺動自在に連結されている。そして、吸着装置2が第2アーム44の先端部に連結されている。
【0021】
2-3.吸着装置
本実施形態では、図2及び図3に示すように、吸着装置2は、吸着部21と、吸着支持部22と、連結部23と、を備えている。本例では、吸着支持部22は、吸着部21を支持している。本例では、吸着支持部22は、平面的に並ぶように配置された複数の吸着部21(吸着パッド)を上側から支持している。そして、連結部23は、吸着支持部22を移動装置4に接続している。図示の例では、連結部23の基端部が、移動装置4の第2アーム44の先端部に揺動自在に連結されている。連結部23の先端部は、吸着支持部22の上側を向く面に固定されている。吸着部21及び吸着支持部22は、移動装置4の回転部42の回転と、第1アーム43、第2アーム44、及び連結部23の揺動とにより、規定範囲内(図示の例では、ロボットアーム46の移動可能範囲内)において自在に移動できるようになっている。このような構成により、荷卸し装置1は、吸着部21により保持した対象物品群Wsを、取出しエリア7から移載先エリア8に移載できる。
【0022】
本実施形態では、図2図3、及び図4に示すように、複数の吸着部21が、吸着支持部22に支持されている。より具体的には、複数の吸着部21のそれぞれが、吸着支持部22の下側を向く面に沿って平面的に並ぶように設けられている。本実施形態では、吸着部21は、上下方向に弾性変形自在に構成されている。本例では、吸着部21は、吸着パッドである。つまり、吸着部21は、上下方向に伸縮可能な蛇腹形状に形成されている。この場合、吸着部21としての吸着パッドの下面が、対象物品群Wsの上面11に接する吸着面21aとなる。従って、本例では、吸着パッドの撓みに応じて、吸着面21aの位置が吸着支持部22や物品検出装置5に対して変動する。なお、本実施形態では、複数の吸着部21が平面的に配列されているため、当該複数の吸着部21の下面の集合により吸着面21aが形成されている。吸着部21には、不図示のチューブを介してバルブ(不図示)及びポンプ等の吸引装置(不図示)が接続されている。制御装置100は、バルブを制御することで、吸着部21の状態を、物品Wを吸着する吸着状態と物品Wを吸着しない吸着解除状態とに切り換える。本例では、複数の吸着部21のそれぞれは、互いに同じ構造を有している。なお、本例では、吸着部21は、上述のように吸着支持部22に固定されおり、吸着支持部22と一体として移動する。しかし、吸着部21が単独で移動する構成としても良い。その場合、例えば、吸着装置2が吸着支持部22及び連結部23を備えておらず、吸着部21が第2アーム44の先端部に直接連結されている構成としても良い。
【0023】
2-4.物品検出装置
図3及び図4に示すように、荷卸し装置1は、物品検出装置5を更に備えている。物品検出装置5は、吸着部21における対象物品群Wsの上面11に接する面を吸着面21aとして、吸着面21aに対して下側に特定距離Lだけ離間していると共に、吸着面21aに対して特定方向第1側X1に隣接する位置において特定幅方向Yに沿うように設定された検出ラインRに交差した物品Wを検出する。本実施形態では、物品検出装置5は、吸着部21と一体的に移動するように連結されている。また、物品検出装置5は、吸着支持部22に対する相対位置が固定されている。そのため、吸着部21の撓みを考慮しなければ、物品検出装置5と吸着部21との相対位置も固定されている。従って、物品検出装置5は、吸着部21と一体的に昇降するように連結されている。本例では、物品検出装置5は、吸着支持部22の特定方向第1側X1の端部に固定されている。また、物品検出装置5は、吸着部21に対して特定方向第1側X1に隣接する位置に配置されている。本例では、特定距離Lは、吸着部21の撓みがない状態での吸着面21aを基準とした距離とされている。特定距離Lの具体的な説明については後述する。
【0024】
本例では、図3に示すように、物品検出装置5は、透過型の光センサ50を用いて構成されている。従って、この光センサ50は、投光部51及び受光部52を備えている。投光部51と受光部52とは、複数の吸着部21を挟んだ特定幅方向Yの両外側に分かれて配置されている。更に、投光部51及び受光部52は、吸着面21aに対して下側に特定距離Lだけ離間すると共に特定幅方向Yに沿う検出ラインRを形成するように配置されている。なお、本例では、物品検出装置5は、透過型の光センサ50とされているが、投光部と受光部とが一体化した反射型の光センサ50を特定方向Xの一方側に設け、特定方向Xの他方側に反射板を設けるようにしても良い。また、例えば、物品検出装置5は、撮像装置や超音波センサ等、光センサ以外のセンサを用いて構成しても良い。
【0025】
2-5.制御装置
本実施形態では、図11に示すように、制御装置100は、後述する演算処理や各制御を実行するように構成されている。制御装置100は、CPU等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御装置100の各機能が実現される。制御装置100は、吸着装置2、移動装置4、物品検出装置5、及び高さ検出装置10を制御する。本例では、制御装置100は、吸着装置2、移動装置4、物品検出装置5、高さ検出装置10、及び管理システム110のそれぞれから制御用情報101を取得する。なお、これらの制御用情報101は、制御装置100よりも上位のコントローラから取得される構成としても良い。
【0026】
本実施形態では、制御装置100は、初回の分離動作、すなわち対象物品群Wsの分離を1度も行っていない初期状態の段積み物品群Wtから対象物品群Wsを分離して移載先エリア8に移載する動作である第1移載処理(図8図12図13)を実行する。また、制御装置100は、2回目以降の分離動作、すなわち初期状態の段積み物品群Wtを基準として上から2段目以降の段の対象物品群Wsを分離して移載先エリア8に移載する動作である第2移載処理(図4図7図12図14)を実行する。以下では、先ず、第2移載処理の詳細について説明する。
【0027】
2-5-1.第2移載処理
図11に示すように、制御装置100は、対象物品群Wsを構成する物品Wの上下方向の寸法を物品高さHとして、対象物品群Wsの上面11と吸着面21aとの上下方向における相対距離である上下方向相対距離Mを演算するための制御用情報101を取得する。制御装置100は、吸着装置2、移動装置4、物品検出装置5、及び高さ検出装置10のそれぞれから制御用情報101を取得する。本実施形態では、制御装置100は、移動装置4から吸着部21の吸着面21aの上下方向の位置を示す吸着面位置情報を制御用情報101として取得する。この吸着面位置情報は、移動装置4の制御情報としての第2アーム44の先端部の位置と、当該先端部から吸着面21aまでの距離(定数)とから求められる。また、制御装置100は、物品検出装置5から検出情報、具体的には光センサ50により物品Wの検出の有無の情報を制御用情報101として取得する。また、本実施形態では、制御用情報101には、高さ検出装置10により検出された初期状態高さの情報と、初期状態の段積み物品群Wtの段数である初期段数の情報と、同じ段積み物品群Wtから既に分離した対象物品群Wsの段数である分離済段数の情報と、が含まれている。本例では、上述したように、制御装置100は、高さ検出装置10から初期状態高さの情報を制御用情報101として取得する。また、制御装置100は、物品移載設備において複数の段積み物品群Wtの情報を管理する管理システム110から、取出しエリア7にある段積み物品群Wtの段数を示す段数情報を制御用情報101として取得する。初期段数の情報は、この段数情報に含まれる。分離済段数は、初期状態の段積み物品群Wtから荷卸し装置1により既に分離した対象物品群Wsの段数である。分離済段数の情報は、制御装置100が備える荷卸し装置1の動作履歴から取得される。
【0028】
そして、図3図4、及び図7に示すように、制御装置100は、初期状態高さを初期段数で除算した値を物品高さHとし、物品高さHに分離済段数を乗算した値を分離済高さとして、初期状態高さから分離済高さを差し引いた値を現時点の段積み物品群Wtの上下方向の寸法として、上下方向相対距離Mを演算する。本例では、更に、制御装置100は、移動装置4による載置部3と吸着部21との相対位置の情報を用いて上下方向相対距離Mを演算する。具体的には、制御装置100は、吸着面位置情報から載置部3の上面と吸着面21aとの上下方向の距離を取得し、当該距離から上記のように算出した現時点の段積み物品群Wtの上下方向の寸法を減算した値を、上下方向相対距離Mとして算出する。このように上下方向相対距離Mを演算することで、載置部3の上の段積み物品群Wtの上下方向の寸法を随時検出するためのセンサ等を不要にすることが可能となっている。
【0029】
図4に示すように、制御装置100は、制御用情報101に基づく上下方向相対距離Mが物品高さH及び特定距離Lのいずれか大きい方より大きく且つ物品高さHに特定距離Lを加えた長さよりも小さく、検出ラインRが対象物品群Wsに対して特定方向第2側X2に位置する状態から、検出ラインRが対象物品群Wsに対して特定方向第1側X1に位置するまで、吸着部21を載置部3に対して相対的に特定方向第1側X1へ移動させるように移動装置4を動作させる特定方向移動処理を実行する。そして、図7及び図14に示すように、制御装置100は、特定方向移動処理の実行中に物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、吸着部21を対象物品群Wsに対して上下方向に接近させる移動装置4の動作を禁止する。
【0030】
本実施形態では、図4に示すように、制御用情報101に基づく上下方向相対距離Mが、物品高さH及び特定距離Lのいずれか大きい方に余裕距離Bを加算した値より大きく、且つ、物品高さHに特定距離Lを加えた長さから余裕距離Bを減算した値よりも小さい状態で、特定方向移動処理を実行する。余裕距離Bは、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差(言い換えれば、移動装置4による吸着面21aの上下方向の位置誤差)の最大値以上に設定されると好適である。本実施形態では、高さ検出装置10により初期状態の段積み物品群Wtの上下方向の寸法を検出する。そのため、例えば、余裕距離Bを、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値と、高さ検出装置10による段積み物品群Wtの上下方向の寸法の検出誤差の最大値との合計に相当する値に設定することができる。
【0031】
図9の例では、上下方向相対距離Mが、物品高さH及び特定距離Lよりも大きく、物品高さHに特定距離Lを加えた長さよりも小さい状態を示している。ここで、対象物品群Wsの上に存在しないはずの物品W(以下「異常物品Wa」(図9の二点鎖線))が存在した場合に、当該異常物品Waの上面と吸着面21aとの距離を仮物品相対距離M´とする。図9の例では、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置に誤差が生じていない場合を想定しているが、仮に、吸着面21aの上下方向の位置が、誤差がない場合の位置よりも誤差分低くなっており、且つ、図中の仮物品相対距離M´が当該誤差よりも小さいと、特定方向移動処理の実行中に、異常物品Waと吸着部21とが干渉する。従って、上記誤差が最大となった場合でも異常物品Waと吸着部21とが干渉しないようにするために、余裕距離Bを、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値以上とし、上下方向相対距離Mが物品高さH及び特定距離Lのいずれか大きい方に余裕距離Bを加算した値より大きい状態で、特定方向移動処理を実行するようにしている。
【0032】
図10の例では、上下方向相対距離Mが、物品高さHに特定距離Lを加えた値と同じになる状態を示している。すなわち、異常物品Wa(図10の2点鎖線)の上面と物品検出装置5の検出ラインRとの上下方向の位置が同じ位置になっている。図10では、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置に誤差が生じていない場合を想定しているが、仮に、図中の検出ラインRの上下方向の位置が、誤差がない場合の位置よりも誤差分だけ高くなると、検出ラインRの位置が異常物品Waの上面の位置よりも高くなり、特定方向移動処理の実行中に、検出ラインRと異常物品Waとが交差しない。従って、上記誤差が最大となった場合でも異常物品Waと検出ラインRとが交差しない事態とならないようにするために、余裕距離Bを、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値以上とし、上下方向相対距離Mが物品高さHに特定距離Lを加えた長さから余裕距離Bを減算した値よりも小さい状態で、特定方向移動処理を実行するようにしている。このように、制御装置100は、上下方向相対距離Mが余裕距離Bを考慮して設定される範囲内である状態で特定方向移動処理を実行するため、異常物品Waが存在した場合に、当該異常物品Waと吸着部21とが干渉したり、異常物品Waと検出ラインRとが交差しなかったりする事態を回避できる。
【0033】
また、図4図9、及び図10に示すように、本実施形態では、特定距離Lは、移動装置4による、載置部3と吸着部21との上下方向の相対位置の誤差の最大値以上であって物品高さH以下に設定されている。本例では、特定距離Lは、余裕距離B以上であって物品高さH以下に設定されている。余裕距離Bは上述したように設定することができ、例えば、余裕距離Bを、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値と、高さ検出装置10による段積み物品群Wtの上下方向の寸法の検出誤差の最大値との合計に相当する値とすることができる。この場合、特定距離Lは、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値と、高さ検出装置10による段積み物品群Wtの上下方向の寸法の検出誤差の最大値との合計値以上であって、物品高さH以下に設定される。仮に、特定距離Lが余裕距離B未満であって、吸着面21aの上下方向の位置が、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差がない場合の位置よりも余裕距離B分低くなると、特定方向移動処理の実行中に、異常物品Waと吸着部21とが干渉する恐れがある。また、仮に、特定距離Lが物品高さHよりも大きければ、吸着面21aの上下方向の位置によっては、検出ラインRが、異常物品Waとは交差せずに、異常物品Waよりも下側の段積み物品群Wtと交差してしまう恐れがある。これに対して、本実施形態では、特定距離Lが上記のように設定されるため、異常物品Waと吸着部21とが干渉してしまう恐れや、検出ラインRが異常物品Waよりも下側の正常な物品Wと交差してしまう恐れを回避しつつ、特定方向移動処理の完了後、対象物品群Wsの吸着のために吸着部21を下降させる距離をできるだけ小さくして荷卸し動作のタイムサイクルを短く抑え易くできる。図示の例では、特定距離Lは、物品高さHの半分に余裕距離Bを加えた距離に設定されている。上下方向の寸法が異なる複数種類の物品Wがある場合には、そのうちの最も上下方向の寸法の小さい物品Wの高さを物品高さHとすると好適である。
【0034】
本例では、図4及び図7に示すように、特定方向移動処理の実行前は、吸着部21は、待機エリア9の待機位置P0に配置されている。例えば、待機位置P0は、最も上下方向の寸法が大きい段積み物品群Wtが載置部3に載置された場合における、後述する第2基準位置P2と同じ位置とされる。
【0035】
制御装置100は、制御用情報101に基づいて上下方向相対距離Mの演算処理を行うと共に、吸着部21を待機エリア9の待機位置P0から第2基準位置P2に移動(図4及び図7の例では、下降)させるように移動装置4を制御する。ここで、第2基準位置P2は、待機エリア9において、段積み物品群Wtの上下方向の寸法によって上下方向の位置が変化する位置であり、第2基準位置P2は、段積み物品群Wtの最上段の対象物品群Wsの上面11よりも吸着面21aの位置が上下方向相対距離M高くなる位置である。
【0036】
そして、制御装置100は、上下方向相対距離Mを維持しつつ、吸着部21を、載置部3及び段積み物品群Wtに対して特定方向第2側X2から特定方向第1側X1へ水平移動するように移動装置4を制御する。これにより、物品検出装置5は、待機エリア9における対象物品群Wsに対して特定方向第2側X2に位置する状態から、対象物品群Wsに対して特定方向第1側X1に移動する。すなわち、本実施形態では、制御装置100は、吸着部21を特定方向第2側X2から特定方向第1側X1に移動させることで、特定方向移動処理を実行する。特定方向移動処理の実行中及び完了後では、複数の吸着部21と、載置部3及び段積み物品群Wtとが上下方向視で重複する。
【0037】
本実施形態では、図7に示すように、特定方向移動処理の実行中に、検出ラインRが対象物品群Wsの上に存在する物品W(異常物品Wa)と交差した場合、すなわち、物品検出装置5が物品Wを検出した場合、制御装置100は、特定方向移動処理の完了後、吸着部21が対象物品群Wsに対して接近移動(ここでは下降)しないように移動装置4を制御する。本例では、このように制御装置100が吸着部21の下降を禁止した場合、荷卸し動作が異常となったものとして、異常の報知を行う。異常の報知は、例えば、異常発報音をスピーカやブザーから出力する、異常表示灯を点灯させる、ユーザが操作する端末に異常情報を通知する、等により行われる。このように構成されているため、対象物品群Wsに属する一部の物品Wが、それより下の段の段積み物品群Wtから分離せずに残留してしまった場合でも、次の荷卸し動作において残留した物品Wを検出して吸着部21の下降を停止できる。従って、吸着部21と異常物品Waとが衝突する事態を回避できる。また、制御用情報101に誤りがあった場合にも、このような事態を回避できる。例えば、初期段数が「M段」であり、荷卸し装置1による分離済段数が正しくは「N段」であるところ「N+1段」との誤った情報として制御装置100が認識していた場合、制御装置100は、段積み物品群Wtの段数を実際の「M-N段」よりも少ない「M-N-1段」と認識する。そのような場合であっても、制御装置100は、荷卸し動作において「M-N段」(最上段)目の物品Wを検出して吸着部21の下降を停止できる。なお、制御装置100が認識する分離済段数が誤った値となる要因としては、例えば、停電等の異常事態の後の復旧処理に起因する場合等が考えられる。
【0038】
一方、本実施形態では、図5に示すように、制御装置100は、特定方向移動処理の実行中に物品検出装置5が物品Wを検出しなかった場合には、特定方向移動処理の実行後、吸着部21を対象物品群Wsに対して上下方向に接近させるように移動装置4を動作させる。そして、制御装置100は、吸着面21aが対象物品群Wsの上面11に接してから移動装置4を停止させ、吸着部21に対象物品群Wsの上面11を吸着させ、その後、載置部3の上面と吸着面21aとの距離を増加させるように移動装置4を動作させて、段積み物品群Wtから対象物品群Wsを分離する。本例では、制御装置100は、特定方向移動処理を実行しても物品検出装置5が物品Wを検出しなかった場合、複数の吸着部21を対象物品群Wsの側に下降させるように移動装置4を制御する。そして、制御装置100は、複数の吸着部21のそれぞれの吸着面21aが対象物品群Wsを構成する物品Wの上面11に接してから吸着部21の下降を停止するように移動装置4を制御する。その後、制御装置100は、複数の吸着部21が吸着解除状態から吸着状態になるように吸着装置2を制御する。そして、制御装置100は、吸着部21が対象物品群Wsを吸着保持した状態で、当該吸着部21を対象物品群Wsよりも下の段積み物品群Wtに対して上昇させるように吸着装置2及び移動装置4を制御する。これにより、対象物品群Wsがそれより下の段積み物品群Wtから分離されて、載置部3及び当該段積み物品群Wtに対して持ち上げられる。図4の例では、対象物品群Wsの上に物品Wが存在していないため、物品検出装置5は物品Wを検出しない。その場合、制御装置100は、吸着部21を下降させる。制御装置100は、吸着面21aと対象物品群Wsの上面11とが当接すると、吸着部21の下降速度を徐々に減少させてゼロとする。その後、吸着部21が当該対象物品群Wsを吸着すると、移動装置4により対象物品群Wsがそれより下の段積み物品群Wtに対して持ち上げられて分離される(図6参照)。なお、図7の例では、このような動作を行った後に対象物品群Wsのうちの一部の物品Wが分離されずに段積み物品群Wtの上に残留してしまっており、このような場合は、次回の分離動作の前に実行される特定方向移動処理により当該物品Wが検出されるため、吸着部21は下降せずに停止し、次回の分離動作は行われない。
【0039】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、制御装置100は、取出しエリア7に配置された載置部3の上の段積み物品群Wtから対象物品群Wsを分離した後、当該分離した対象物品群Wsを移載先エリア8へ移動させて移載先エリア8に載置するように吸着部21及び移動装置4を動作させる移載処理を実行する。本例では、制御装置100は、分離した対象物品群Wsと、これを吸着保持する吸着部21とを、取出しエリア7から移載先エリア8に移動するように吸着装置2及び移動装置4を制御する。具体的には、制御装置100は、吸着保持した対象物品群Wsを、移載先エリア8のパレットPの上、又は、パレットPに既に段積み物品群Wtが載置されている場合は、当該段積み物品群Wtの上に載置するように移動装置4を制御する。その後、制御装置100は、吸着装置2を制御して、吸着部21を吸着状態から吸着解除状態にする。これにより、取出しエリア7に配置された段積み物品群Wtから分離した対象物品群Wsが、取出しエリア7から移載先エリア8に移載される。
【0040】
その後、制御装置100は、次の特定方向移動処理を開始する前に、吸着部21を待機エリア9へ移動させるように移動装置4を動作させる。本例では、制御装置100は、対象物品群Wsを移載先エリア8に移載した後の吸着部21を、取出しエリア7に対して特定方向第2側X2に隣接する待機エリア9の待機位置P0に移動するように移動装置4を制御する。このように、待機エリア9が取出しエリア7に対して特定方向第2側X2に隣接しているため、移載処理によって移載先エリア8に段積みされた複数段の対象物品群Ws(段積み物品群Wt)の高さが、取出しエリア7の段積み物品群Wtの高さよりも高くなった場合であっても、吸着部21の吸着面21aを対象物品群Wsの上面11に対して適切な高さにして特定方向移動処理を実行することができる。なお、制御装置100は、対象物品群Wsを移載先エリア8に移載した後の吸着部21を、待機エリア9の待機位置P0ではなく、第2基準位置P2に直接移動させるようにしても良い。
【0041】
2-5-2.第1移載処置
次に、第1移載処理について説明する。ここでは、第2移載処理と共通する構成については説明を省略する。本実施形態では、図8に示すように、制御装置100は、初期状態の段積み物品群Wtから最初の対象物品群Wsの分離を行う場合、高さ検出装置10により検出された初期状態高さを含む制御用情報101を取得する。そして、制御装置100は、当該制御用情報101に基づく上下方向相対距離Mがゼロより大きく且つ特定距離Lより小さく、検出ラインRが対象物品群Wsに対して特定方向第2側X2に位置する状態から、検出ラインRが対象物品群Wsに対して特定方向第1側X1に位置するまで、吸着部21を載置部3に対して相対的に特定方向第1側X1へ移動させるように移動装置4を動作させる初期特定方向移動処理を実行する。本例では、制御装置100は、吸着部21を待機エリア9の待機位置P0から第1基準位置P1に移動(図8の例では、下降)させるように移動装置4を制御する。第1基準位置P1は、待機エリア9において、高さ検出装置10により検出された初期状態高さによって上下方向の位置が変化する位置であり、対象物品群Wsの上面11よりも吸着面21aの位置が上下方向相対距離M高くなる位置である。なお、初期特定方向移動処理は、特定方向移動処理の実行時に比べて上下方向相対距離Mが短い状態で実行される。具体的には、制御用情報101に基づく上下方向相対距離Mがゼロより大きく且つ特定距離Lより小さい状態で、初期特定方向移動処理が実行される。そのため、物品検出装置5の検出ラインRは、初期特定方向移動処理の実行中において、特定幅方向Y視で対象物品群Wsと重複するようになっている。本例では、図8に示すように、制御用情報101に基づく上下方向相対距離Mが、余裕距離Bより大きく、且つ、特定距離Lから余裕距離Bを減算した値よりも小さい状態で、初期特定方向移動処理を実行する。これにより、吸着面21aの位置が、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値分下側にずれている場合でも、初期特定方向移動処理の実行中に、対象物品群Wsと吸着部21とが衝突してしまう事態を回避できる。また、吸着面21aの位置が、移動装置4による載置部3と吸着面21aとの上下方向の相対位置の誤差の最大値分上側にずれている場合でも、初期特定方向移動処理の実行中に対象物品群Wsと検出ラインRとが交差しない事態を回避できる。本実施形態では、初期特定方向移動処理の実行中に、検出ラインRが物品Wと交差しない領域があると、制御装置100は、段積み物品群Wtの最上段の一部に物品Wが存在しないことを認識する。本例では、検出ラインRが特定方向Xに沿うように形成されているため、制御装置100は、段積み物品群Wtの最上段において、特定方向Xに沿う1列又は複数列分の物品Wが配置されていない領域があることを認識することができる。
【0042】
そして、本実施形態では、図8及び図13に示すように、初期特定方向移動処理の実行中に物品検出装置5が物品Wを検出しない領域が存在した場合には、吸着部21を対象物品群Wsに対して上下方向に接近させる移動装置4の動作を禁止する。具体的には、制御装置100は、初期特定方向移動処理の実行後、吸着部21を対象物品群Wsに対して接近移動(ここでは下降)しないように移動装置4を制御する。このように、制御装置100が吸着部21の下降を禁止した場合、荷卸し動作が異常となったものとして、異常の報知を行う。異常の報知は、例えば、異常発報音をスピーカやブザーから出力する、異常表示灯を点灯させる、ユーザが操作する端末に異常情報を通知する、等により行われる。
【0043】
3.荷卸し方法
以下では、本実施形態における荷卸し方法について、図12図13、及び図14に示すフローチャートに基づいて説明する。本例では、荷卸し装置1により、取出しエリア7の段積み物品群Wtから対象物品群Wsを分離し、移載先エリア8に対象物品群Wsを移載する。
【0044】
制御装置100は、取出しエリア7の段積み物品群Wtが初期状態の段積み物品群Wt、すなわち対象物品群Wsの分離を1度も行っていない段積み物品群Wtであるか否かを判定する(S01)。そして、制御装置100は、当該段積み物品群Wtが初期状態であると判定した場合(S01:Yes)、第1移載処理を実行する(S02)。一方、制御装置100は、当該段積み物品群Wtが初期状態ではないと判定した場合(S02:Nо)、第2移載処理を実行する(S03)。
【0045】
制御装置100は、第1移載処理を実行するに際し、吸着装置2、移動装置4、物品検出装置5、高さ検出装置10、及び管理システム110から制御用情報101を取得する(S11)。そして、制御装置100は、制御用情報101に基づいて吸着部21を第1基準位置P1に移動させる(S12)。その後、制御装置100は、第1基準位置P1の高さにおいて、吸着部21を載置部3(段積み物品群Wt)に対して特定方向第1側X1から特定方向第2側X2にスライド移動させる初期特定方向移動処理を実行する(S13)。制御装置100は、初期特定方向移動処理の実行中に物品検出装置5が段積み物品群Wtの最上段の物品Wを検出しない領域が存在したか否かを判定する(S14)。制御装置100は、当該物品Wを検出しない領域が存在すると判定した場合(S14:Yes)、吸着部21の下降を禁止する(S21)。例えば、図8に示す状態では、最上段の一部の列に物品Wが検出されない領域があるため、吸着部21は下降されない。一方、制御装置100は、最上段に物品Wを検出しない領域が存在しないと判定した場合(S14:Nо)、すなわち、段積み物品群Wtの最上段に対象物品群Wsとして全ての物品Wが載せられている場合、吸着部21を下降させるように移動装置4を制御する(S15)。そして、制御装置100は、吸着部21が対象物品群Wsの上面11に接触すると、吸着部21の下降を停止して、吸着部21を吸着解除状態から吸着状態に切り換えて当該対象物品群Wsを吸着させる(S16)。その後、制御装置100は、吸着部21を上昇させて、対象物品群Wsをそれより下の段積み物品群Wtから分離する(S17)。制御装置100は、対象物品群Wsを吸着保持した状態の吸着部21を、取出しエリア7から移載先エリア8のパレットPの上、又はパレットPの上に段積み物品群Wtが載せられている場合は当該段積み物品群Wtの上に移動させる(S18)。その後、制御装置100は、吸着部21を吸着状態から吸着解除状態に切り換えて(S19)、吸着部21を待機エリア9の待機位置P0に移動させる(S20)。
【0046】
制御装置100は、第2移載処理を実行するに際し、吸着装置2、移動装置4、物品検出装置5、高さ検出装置10、及び管理システム110から制御用情報101を取得する(S31)。そして、制御装置100は、制御用情報101に基づいて吸着部21を第2基準位置P2に移動させる(S32)。その後、制御装置100は、第2基準位置P2の高さにおいて、吸着部21を載置部3(段積み物品群Wt)に対して特定方向第1側X1から特定方向第2側X2にスライド移動させる特定方向移動処理を実行する(S33)。制御装置100は、特定方向移動処理の実行中に物品検出装置5が物品Wを検出したか否かを判定する(S34)。制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出したと判定した場合(S34:Yes)、吸着部21の下降を禁止する(S41)。図7に示す例では、物品検出装置5により対象物品群Wsの上に残留した物品Wが検出されるため、吸着部21は下降されない。制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出しないと判定した場合(S34:Nо)、吸着部21を下降させるように移動装置4を制御する(S35)。例えば、図4に示す状態から吸着部21を次第に下降させる。そして、制御装置100は、吸着部21が対象物品群Wsの上面11に接触してから、吸着部21の下降を停止し、吸着部21を吸着解除状態から吸着状態に切り換えて、吸着部21に当該対象物品群Wsを吸着させる(S36)。図5の例では、吸着部21が下降して、対象物品群Wsを吸着している状態を示している。その後、制御装置100は、対象物品群Wsを吸着した状態の吸着部21を上昇させて、対象物品群Wsをそれより下の段積み物品群Wtから分離する(S37)。図6では、図5において吸着した対象物品群Wsが、それより下の段積み物品群Wtに対して持ち上げられている状態、すなわち分離された状態を示している。制御装置100は、対象物品群Wsを吸着した状態の吸着部21を、取出しエリア7から移載先エリア8のパレットPの上又は、パレットPの上に段積み物品群Wtが載せられている場合は当該段積み物品群Wtの上に、移動させる(S38)。その後、制御装置100は、吸着部21を吸着状態から吸着解除状態に切り換えて(S39)、当該吸着部21を待機エリア9の待機位置P0に移動させる(S40)。
【0047】
4.その他の実施形態
次に、荷卸し装置のその他の実施形態について説明する。
【0048】
(1)上記の実施形態では、吸着部21が吸着パッド等の上下方向に伸縮可能な構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、吸着部21が、上下方向に変形しない構成としても良い。例えば、吸着部21は、蛇腹形状ではなく、吸着面21aが撓まない吸着パッドとしても良い。また例えば、物品Wが鉄などの磁性材料で構成された部分を有している場合、吸着部21は、磁力により物品Wを吸着する構成であっても良い。この場合、吸着部21は、永久磁石又は電磁石を備えた構成とされると好適である。
【0049】
(2)上記の実施形態では、制御装置100は、載置部3(段積み物品群Wt)の水平方向の位置を固定したまま、吸着部21を載置部3(段積み物品群Wt)に対して特定方向第2側X2から特定方向第1側X1へ移動させる構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、例えば、吸着部21の水平方向の位置を固定したまま、載置部3(段積み物品群Wt)を吸着部21に対して特定方向第2側X2から特定方向第1側X1へ移動させる構成としても良い。
【0050】
(3)上記の実施形態では、制御装置100は、載置部3(段積み物品群Wt)の上下方向の位置を固定したまま、吸着部21を下降させることにより、載置部3と吸着部21とを相対的に接近させる構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、例えば、吸着部21の上下方向の位置を固定したまま、載置部3(段積み物品群Wt)を上昇させることにより、載置部3と吸着部21とを相対的に接近させる構成としても良い。この場合、例えば、取出しエリア7にリフタを設置し、当該リフタ上に載置部3としてのパレットP及び段積み物品群Wtを載置し、これらを昇降させる構成とすることができる。
【0051】
(4)上記の実施形態では、特定距離Lは、移動装置4による、載置部3と吸着部21との上下方向の相対位置の誤差の最大値以上であって物品高さH以下に設定されている構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、特定距離Lは、物品高さHより大きく設定されていても良い。また、移動装置4による、載置部3と吸着部21との上下方向の相対位置の誤差が無視できる程度に小さい場合には、このような誤差を考慮せずに特定距離Lを設定しても良い。
【0052】
(5)上記の実施形態では、移動装置4は、ロボットアーム46(第1アーム43、第2アーム44、及び第3アーム45)を備えており、これにより吸着部21を特定方向X、特定幅方向Y、及び上下方向に移動させる構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、移動装置4は、吸着部21を特定方向X、特定幅方向Y、及び上下方向の3方向のそれぞれに移動させる移動機構を備えた3軸ロボットを用いて構成されていても良い。
【0053】
(6)上記の実施形態では、取出しエリア7に対して特定幅方向Yの一方側に隣接する場所に移載先エリア8が設定され、取出しエリア7に対して特定方向第2側X2に隣接する場所に待機エリア9が設定される構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されない。例えば、図15に示す例のように、取出しエリア7に対して特定方向第2側X2に移載先エリア8が設定され、取出しエリア7と移載先エリア8との特定方向Xの間に、待機エリア9が設定される構成としても良い。なお、図15に示す例では、図1に示す例とは異なり、図中左右方向が特定方向Xとなっている。この場合、吸着装置2(具体的には、吸着支持部22)の特定方向Xの寸法以上の間隔を空けて、移載先エリア8を取出しエリア7に対して特定方向第2側X2に設定することで、取出しエリア7と移載先エリア8との特定方向Xの間に待機エリア9を適切に設定することができる。
【0054】
(7)上記の実施形態では、制御装置100は、初期状態の段積み物品群Wtから最初の対象物品群Wsの分離を行う場合、初期特定方向移動処理を実行する構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、移動装置4は、初期状態の段積み物品群Wtに対し、初期特定方向移動処理を実行しなくても良い。この場合、例えば、初期状態の段積み物品群Wtの最上段に、物品Wが存在しない領域があったとしても、吸着部21が最上段に存在する全ての物品Wを吸着して、移載先エリア8とは異なるエリアにこれらの物品Wを移載する構成としても良い。
【0055】
(8)上記の実施形態では、制御装置100は、初期状態高さを初期段数で除算した値を物品高さHとし、物品高さHに分離済段数を乗算した値を分離済高さとして、初期状態高さから分離済高さを差し引いた値を現時点の段積み物品群Wtの上下方向の寸法として、上下方向相対距離Mを演算する構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されない。例えば、吸着装置2に距離測定センサを設けて、これにより上下方向相対距離Mを測定する構成とすることができる。
【0056】
(9)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0057】
5.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した荷卸し装置の概要について説明する。
【0058】
本開示に係る荷卸し装置は、載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置であって、
前記対象物品群の上面を吸着して前記対象物品群を保持する吸着部を備えた吸着装置と、前記載置部と前記吸着部とを水平方向に沿う特定方向及び上下方向に相対的に移動させる移動装置と、前記吸着装置及び前記移動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記特定方向の一方側を特定方向第1側とし、前記特定方向の他方側を特定方向第2側とし、水平方向に沿うと共に前記特定方向に直交する方向を特定幅方向とし、前記対象物品群を構成する前記物品の上下方向の寸法を物品高さとし、前記吸着部における前記対象物品群の上面に接する面を吸着面として、
前記吸着面に対して下側に特定距離だけ離間していると共に、前記吸着面に対して前記特定方向第1側に隣接する位置において前記特定幅方向に沿うように設定された検出ラインに交差した前記物品を検出する物品検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記対象物品群の上面と前記吸着面との上下方向における相対距離である上下方向相対距離を演算するための制御用情報を取得し、当該制御用情報に基づく前記上下方向相対距離が前記物品高さ及び前記特定距離のいずれか大きい方より大きく且つ前記物品高さに前記特定距離を加えた長さよりも小さく、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第2側に位置する状態から、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第1側に位置するまで、前記吸着部を前記載置部に対して相対的に前記特定方向第1側へ移動させるように前記移動装置を動作させる特定方向移動処理を実行し、
前記特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させる前記移動装置の動作を禁止する。
【0059】
本構成によれば、上下方向相対距離が、物品高さ及び特定距離のいずれか大きい方より大きく、且つ、物品高さに特定距離を加えた長さよりも小さい状態を保ちながら、検出ラインを対象物品群の上面に沿って特定方向に移動させるため、対象物品群の上面より上側に存在する物品の有無を適切に検出することができる。
そして、そのような物品を検出した場合、すなわち、物品が存在しないはずの位置に物品が存在した場合に、吸着部を対象物品群に対して上下方向に接近させる移動装置の動作が禁止される。従って、吸着部と当該物品とが衝突して吸着部及び物品の少なくとも一方が破損する可能性を低減できる。
このように本構成によれば、最上段の物品を適切に検出して荷卸し動作に反映させることができる。
【0060】
ここで、前記制御装置は、前記特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出しなかった場合には、前記特定方向移動処理の実行後、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させるように前記移動装置を動作させ、前記吸着面が前記対象物品群の上面に接してから前記移動装置を停止させ、前記吸着部に前記対象物品群の上面を吸着させ、その後、前記載置部の上面と前記吸着面との距離を増加させるように前記移動装置を動作させて、前記段積み物品群から前記対象物品群を分離すると好適である。
【0061】
本構成によれば、段積み物品群の最上段に残留した物品がなく、制御用情報も正しい場合に、適切に対象物品群をそれより下の段積み物品群から分離させることができる。
【0062】
また、前記特定距離は、前記移動装置による、前記載置部と前記吸着部との上下方向の相対位置の誤差の最大値より大きく前記物品高さ以下に設定されていると好適である。
【0063】
本構成によれば、特定距離を載置部と吸着部との上下方向の相対位置の誤差の最大値以より大きく設定したことにより、当該誤差が最大となった場合であっても、特定方向移動処理の実行中に、対象物品群の上面より上側に存在する物品と吸着部とが干渉することを回避し易い。
また、特定距離を物品高さ以下に設定したことにより、特定方向移動処理の完了後、対象物品群を吸着するために吸着部を接近させるための移動距離を短く抑え易く、荷卸し動作におけるタイムサイクルが長くなることを回避し易い。
【0064】
また、前記移動装置は、前記吸着部を前記特定方向、前記特定幅方向、及び上下方向に移動させるように構成され、
前記物品検出装置は、前記吸着部と一体的に移動するように連結され、
前記載置部が配置された場所を取出しエリアとして、前記取出しエリアに対して前記特定幅方向の一方側に隣接する場所に移載先エリアが設定され、前記取出しエリアに対して前記特定方向第2側に隣接する場所に待機エリアが設定され、
前記制御装置は、前記取出しエリアに配置された前記載置部の上の前記段積み物品群から前記対象物品群を分離した後、当該分離した前記対象物品群を前記移載先エリアへ移動させて前記移載先エリアに載置するように前記吸着部及び前記移動装置を動作させる移載処理を実行し、その後、次の前記特定方向移動処理を開始する前に、前記吸着部を前記待機エリアへ移動させるように前記移動装置を動作させる。
【0065】
本構成によれば、吸着部により吸着した対象物品群を移動装置により移載先エリアへ移動させて、吸着部による吸着を解除することで、複数段に段積みされた段積み物品群から、1段ずつ対象物品群を分離して移載先エリアに移載する移載処理を適切に実行することができる。
そして、移載処理の実行後、吸着部を待機エリアへ移動させるため、迅速に、次の特定方向移動処理を開始することができる。
また、本構成によれば、待機エリアが取出しエリアに対して特定方向第2側に設定されているため、取出しエリアと移載先エリアとの間隔を小さく設定し易い。これにより、荷卸し動作を行うのに必要なスペースを小さくし易くできると共に、取出しエリアから移載先エリアへの吸着部の移動に要する時間を短縮して、荷卸し動作のサイクルタイムを短く抑え易い。
更に、本構成によれば、待機エリアが取出しエリアに対して特定方向第2側に設定されているため、取出しエリアと移載先エリアとの間隔が小さく設定されている場合において、移載処理によって移載先エリアに段積みされた複数段の対象物品群の高さが取出しエリアの段積み物品群の高さよりも高くなった場合でも、移載先エリアを利用して、吸着部と移載先エリアの複数段の対象物品群との干渉を避けつつ吸着部の吸着面を対象物品群の上面に対して適切な高さにして、特定方向移動処理を実行できる。
【0066】
また、前記対象物品群の分離を1度も行っていない初期状態の前記段積み物品群の上下方向の寸法である初期状態高さを検出する高さ検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記初期状態の前記段積み物品群から最初の前記対象物品群の分離を行う場合、前記高さ検出装置により検出された前記初期状態高さを含む前記制御用情報を取得し、当該制御用情報に基づく前記上下方向相対距離がゼロより大きく且つ前記特定距離より小さく、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第2側に位置する状態から、前記検出ラインが前記対象物品群に対して前記特定方向第1側に位置するまで、前記吸着部を前記載置部に対して相対的に前記特定方向第1側へ移動させるように前記移動装置を動作させる初期特定方向移動処理を実行し、
前記初期特定方向移動処理の実行中に前記物品検出装置が前記物品を検出しない領域が存在した場合には、前記吸着部を前記対象物品群に対して上下方向に接近させる前記移動装置の動作を禁止すると好適である。
【0067】
本構成によれば、初期状態の段積み物品群の最上段の対象物品群の一部に物品の不足がある場合、すなわち、対象物品群に属する物品として存在するはずの位置に当該物品がない場合に、それを適切に検出し、吸着部を対象物品群に対して上下方向に接近させる移動装置の動作を禁止することができる。従って、対象物品群に属する物品として存在するはずの位置に当該物品がないにも拘らず、当該対象物品群の分離のための動作が行われることを回避できる。
【0068】
また、前記対象物品群の分離を1度も行っていない初期状態の前記段積み物品群の上下方向の寸法である初期状態高さを検出する高さ検出装置を更に備え、
前記制御用情報には、前記高さ検出装置により検出された前記初期状態高さの情報と、前記初期状態の前記段積み物品群の段数である初期段数の情報と、同じ前記段積み物品群から既に分離した前記対象物品群の段数である分離済段数の情報と、が含まれ、
前記制御装置は、前記初期状態高さを前記初期段数で除算した値を前記物品高さとし、前記物品高さに前記分離済段数を乗算した値を分離済高さとして、前記初期状態高さから前記分離済高さを差し引いた値を現時点の前記段積み物品群の上下方向の寸法として、前記上下方向相対距離を演算すると好適である。
【0069】
本構成によれば、最初に初期状態の段積み物品群の上下方向の寸法を検出するだけで、その後は、段積み物品群の上下方向の寸法を検出することなく、複数段の対象物品群の分離を順次行うことができる。
【0070】
本開示に係る荷卸し装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0071】
2 :吸着装置
3 :載置部
4 :移動装置
5 :物品検出装置
7 :取出しエリア
8 :移載先エリア
9 :待機エリア
10 :高さ検出装置
11 :上面
21 :吸着部
21a :吸着面
46 :ロボットアーム
100 :制御装置
101 :制御用情報
G :初期状態高さ
H :物品高さ
L :特定距離
M :上下方向相対距離
R :検出ライン
W :物品
Ws :対象物品群
Wt :段積み物品群
X :特定方向
X1 :特定方向第1側
X2 :特定方向第2側
Y :特定幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15