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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048093
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】キャップユニット
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B65D41/04 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153956
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 慎二
(72)【発明者】
【氏名】村林 はるか
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA34
3E084AA37
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB02
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB08
3E084HB02
(57)【要約】
【課題】容器の初期開封時において過度な摩擦抵抗を受けず開栓トルクの上昇を抑制可能なキャップユニットを提供する。
【解決手段】合成樹脂キャップは、スカート壁とインナーリングとの間に設けられて、頂板部の下面から垂下すると共に周方向に沿って複数個所に配置され突出部に接触可能な複数のコンタクト突起部を備える。この合成樹脂キャップが容器口部に螺合されるとき複数のコンタクト突起が上記した外面上端に接触することで、肉抜き部よりも上側に配置された突出部が弾性変形すると共に肉抜き部よりも下側でインナーリングが筒状側壁の内面に密着する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部と、前記容器口部に螺合される合成樹脂キャップと、を備えたキャップユニットであって、
前記容器口部は、
内容物が注出される内面を備えた筒状側壁と、
前記筒状側壁の外面に形成された螺子部と、を有し、
前記筒状側壁の上端には径方向の外側に向かって突出する突出部が形成され、
前記容器口部は、前記突出部と前記螺子部との間には前記径方向に関して内側に窪んだ肉抜き部をさらに有し、
前記合成樹脂キャップは、
前記筒状側壁の内面に密着してシールを形成するインナーリングを下面に備えた頂板部と、
前記頂板部の周縁から降下するとともに、前記螺子部と螺合する螺条が形成されたスカート壁と、
前記スカート壁と前記インナーリングとの間に設けられて、前記頂板部の下面から垂下すると共に周方向に沿って複数個所に配置され前記突出部に接触可能な複数のコンタクト突起部と、を具備し、
前記合成樹脂キャップが前記容器口部に螺合されるとき、前記複数のコンタクト突起が前記突出部に接触することで、前記肉抜き部よりも上側に配置された前記突出部が弾性変形すると共に前記肉抜き部よりも下側で前記インナーリングが前記筒状側壁の内面に密着するキャップユニット。
【請求項2】
前記複数のコンタクト突起部は、前記周方向に沿って互いに等間隔となるようにそれぞれ配置されてなり、
前記コンタクト突起部の前記周方向における位置と、前記螺条を構成する周方向に沿って断続的に設けられた螺子山部の前記周方向における位置と、が重なるように、前記周方向で前記コンタクト突起部と前記螺子山部とが並置されてなる、請求項1に記載のキャップユニット。
【請求項3】
前記複数のコンタクト突起部の前記周方向における夫々の長さは、並置された前記螺子山部の前記周方向における長さ以下に設定されてなる、請求項2に記載のキャップユニット。
【請求項4】
前記複数のコンタクト突起部を前記周方向で連ねた場合における周方向長θは、全周に対して30°≦θ≦270°の割合となるように設定されてなる、請求項3に記載のキャップユニット。
【請求項5】
前記コンタクト突起部の径方向における幅は、前記肉抜き部の底面を基点として前記突出部が径方向に突出する突出量以下となるように設けられてなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のキャップユニット。
【請求項6】
前記肉抜き部の上部を構成する前記突出部の下面は、前記肉抜き部の底面を基準にして上方に向けて拡径するよう傾斜されてなる、請求項5に記載のキャップユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部を封止する技術に関し、より詳細には合成樹脂キャップを含むキャップユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
水やお茶あるいは清涼飲料水などの飲料用容器として、PETボトルなどのボトル容器やスパウト付き紙パック容器など開閉が可能なものが広く使用されている。これらの容器に使用されるキャップとしては、例えば樹脂を射出成形して所望の形状に成形した合成樹脂製のキャップ(以下、「合成樹脂キャップ」とも称する)などが用いられている。
【0003】
また、近年では、ゼリー状食品などを可撓性シートによって収容可能なパウチも広く使用されている。かようなパウチの口栓としては、容器本体と熱溶着したスパウトで容器口部を形成し、この容器口部に対して合成樹脂キャップを用いて開栓又は閉栓を行っている。
【0004】
このようなキャップには、容器口部に打栓によって嵌め込まれるタイプもあるが、容器口部の筒状側壁の外周面に形成された螺子部と螺子係合により装着される螺子タイプも多く存在する。
【0005】
例えば特許文献1乃至特許文献3では、ボトルキャップの頂面板の内壁にインナーリングとコンタクトリングを形成することで液漏れを抑制する螺子嵌合式のボトルキャップが開示されている。
また特許文献4では、頂面板の底面に形成されたコンタクト突起が容器口部に接触した以降の螺子の増し締めにおいて発生する開栓トルク上昇を抑制するために、筒状側壁の外周面上端には径方向の外側に向かって突出する突出部が形成されると共に、この容器口部には径方向に関して内側に窪んだ肉抜き部を備えた構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-40444号公報
【特許文献2】実公平5-31078号公報
【特許文献3】特許第4393092号公報
【特許文献4】特許第6885761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記した特許文献を含む技術では、いまだ市場のニーズを満たしているとは言えず、少なくとも以下に述べる課題が存在する。
すなわち、たしかに容器口部に対するキャップの密封性(シール性)を高めるためには、インナーリングに加えて上記したコンタクトリングなどを用いることは有効である。そしてこのようなコンタクトリングを備えた特許文献1~3の構造では上記した増し締め時における開栓トルクの上昇が発生し得ることから、特許文献4のように突出部を撓ませる構造を採用すれば使用者の利便性が向上するので更に有用とも言える。
【0008】
しかしながら従来の上記した構造では使用者による適正な開栓動作を促す構造とは必ずしもなっておらず、特許文献1~3の構造においては周方向に連続して形成されたコンタクトリングの摩擦によって例えば初期開封時における開栓トルクが上昇し易いという課題は残存したままである。また、特許文献4に開示された螺子とコンタクト突起の配置関係では、やはり初期開封時においてはキャップと容器口部の螺子同士が強く噛み合ってしまい開栓トルクが想定以上に高くなり得るという課題がある。
【0009】
本発明の目的の1つは、例えば使用者が最初に開栓を行う容器の初期開封時において過度な摩擦抵抗を受けず開栓トルクの上昇を抑制可能なキャップユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一形態における合成樹脂キャップは、(1)容器口部と、前記容器口部に螺合される合成樹脂キャップと、を備えたキャップユニットであって、前記容器口部は、内容物が注出される内面を備えた筒状側壁と、前記筒状側壁の外面に形成された螺子部と、を有し、前記筒状側壁の外面上端には径方向の外側に向かって突出する突出部が形成され、前記容器口部は、前記突出部と前記螺子部との間には前記径方向に関して内側に窪んだ肉抜き部をさらに有し、前記合成樹脂キャップは、前記筒状側壁の内面に密着してシールを形成するインナーリングを下面に備えた頂板部と、前記頂板部の周縁から降下するとともに、前記螺子部と螺合する螺条が形成されたスカート壁と、前記スカート壁と前記インナーリングとの間に設けられて、前記頂板部の下面から垂下すると共に周方向に沿って複数個所に配置され前記突出部に接触可能な複数のコンタクト突起と、を具備し、前記合成樹脂キャップが前記容器口部に螺合されるとき、前記複数のコンタクト突起が前記突出部に接触することで、前記肉抜き部よりも上側に配置された前記突出部が弾性変形すると共に前記肉抜き部よりも下側で前記インナーリングが前記筒状側壁の内面に密着することを特徴とする。
【0011】
また、上記した(1)に記載のキャップユニットにおいては、(2)前記複数のコンタクト突起は、前記周方向に沿って互いに等間隔となるようにそれぞれ配置されてなり、前記コンタクト突起の前記周方向における位置と、前記螺条を構成する周方向に沿って断続的に設けられた螺子山部の前記周方向における位置と、が重なるように、前記周方向で前記コンタクト突起と前記螺子山部とが並置されてなることが好ましい。
【0012】
また、上記した(2)に記載のキャップユニットにおいては、(3)前記複数のコンタクト突起の前記周方向における夫々の長さは、並置された前記螺子山部の前記周方向における長さ以下に設定されてなることが好ましい。
【0013】
また、上記した(3)に記載のキャップユニットにおいては、(4)前記複数のコンタクト突起を前記周方向で連ねた場合における周方向長θは、全周に対して30°≦θ≦270°の割合となるように設定されてなることが好ましい。
【0014】
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載のキャップユニットにおいては、(5)前記コンタクト突起の径方向における幅は、前記肉抜き部の底面を基点として前記突出部が径方向に突出する突出量以下となるように設けられてなることが好ましい。
【0015】
また、上記した(5)に記載のキャップユニットにおいては、(6)前記肉抜き部の上部を構成する前記突出部の下面は、前記肉抜き部の底面を基準にして上方に向けて拡径するよう傾斜されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のキャップユニットによれば、例えば初期開封時に螺子の上方で筒状側壁の上端周辺が放射状に拡径することをコンタクト突起で抑止することで、筒状側壁の螺子部と合成樹脂キャップの螺条とが強く密接して開栓トルクが上昇してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る増し締め前におけるキャップユニットの模式図である。
図2図1のキャップユニットのうちα部の拡大図である。
図3図1の状態から更に増し締めされた状態におけるキャップユニットのうちのA-A断面(図6参照)を示す模式図である。
図4図1の状態から更に増し締めされた状態におけるキャップユニットのうちのB-B断面(図6参照)を示す模式図である。
図5】キャップユニットのうち合成樹脂キャップの外観正面図(半断面)である。
図6】キャップユニットのうち合成樹脂キャップの底面図である。
図7図6の合成樹脂キャップのうちβ部の拡大図である。
図8】キャップユニットのうち容器口部の外観正面図(半断面)である。
図9】キャップユニットのうち容器口部の上面図である。
図10図9における容器口部のうち羽部をK方向(鉛直上方)から見た場合の模式図である。
図11】容器口部に合成樹脂キャップが再嵌合(リシール)されるときの状態遷移を示す模式図である。
図12】再嵌合(リシール)状態となったときのキャップユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明中において適宜X方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ規定したが、本発明の権利範囲を減縮するものでないことは言うまでもない。
なお、以下で詳述する本発明の特徴事項以外の事項については、例えば特許文献4として開示した特許第6885761号に開示されたキャップユニットの構成や他の公知のキャップ構造を適宜参照して製造することができる。
【0019】
[キャップユニット]
図1は、本実施形態に係るキャップユニット100を示している。
同図のとおり、キャップユニット100は、容器口部10と、合成樹脂キャップ20とを含んで構成されている。なお図1は、例えば工場などで内容物が充填された初期密封時における増し締め前のキャップユニット100を示している。従って図2に示すように、増し締め前の状態においては、合成樹脂キャップ20のコンタクト突起部23が容器口部10の外面上端11t(突出部11dの上面側にも相当)とちょうど接触した状態となっている。このときキャップユニット100では、突出部11dの下方には肉抜き部11eが設けられていることから、上記したコンタクト突起部23の押圧に対して筒状側壁11における上端側の弾性変形を許容している。この後に密封性を高めるため更に追加して巻き締め動作が継続されると、図3に示すように、コンタクト突起部23が筒状側壁11の上端面11tを押圧し、筒状側壁11における上端側が弾性変形した状態(増し締めの状態)となる。一方で、後述するとおり本実施形態のコンタクト突起部23は周方向で断続して設けられているため、コンタクト突起部23が形成されていない領域については、図4に示すように増し締めの状態においても筒状側壁11の上端面11tが押圧されず上端側は弾性変形していない状態となっている。なお、図3は後述する図6におけるA-A断面を示し、図4図6におけるB-B断面を示している。
【0020】
容器口部10は、例えば飲食物や薬品などの液体状又は固体状の内容物を収容する容器から内容物が注出される注出口が形成される部位である。この容器口部10は、例えば内容物が収容される容器本体と一体構造となっていてもよいし、当該容器本体とは別体となっていてもよい。また、かような容器本体としては、例えばPETに例示される樹脂製ボトルや紙製パックあるいは樹脂製パウチなど、本実施形態の容器口部10が適用可能な限りにおいて種々の公知の容器形態を適用してもよい。
【0021】
このうち容器本体と一体構造の容器口部10としては、例えばPETボトルなどのボトル容器の口部などが挙げられる。一方で容器本体と別体の容器口部10としては、例えばパウチや紙製容器に熱溶着されるスパウトなどが挙げられる。
以下では、容器口部10の一例としてスパウトを、容器本体として紙製パックをそれぞれ例にして説明するが、上述のとおり本発明はこの形態に限られるものではない。
【0022】
合成樹脂キャップ20は、第1樹脂で形成された容器口部10に螺合される機能を有するとともに、この第1樹脂よりも硬度が高い第2樹脂で形成されていることが好ましい。ここで、第1樹脂及び第2樹脂の具体例としては、上記のとおり第2樹脂のほうが第1樹脂よりも硬い限りにおいて公知の種々の樹脂が適用できる。かような樹脂としては、例えば低密度PE(ポリエチレン)、高密度PE、PP(ポリプロピレン)、あるいはPEとPPの混合樹脂などが例示される。
【0023】
非限定的な一例として、本実施形態に好適な第1樹脂と第2樹脂の組み合わせとしては、それぞれ、第1樹脂を低密度PEとし第2樹脂を高密度PEとする形態、第1樹脂を低密度PEとし第2樹脂をPEとPPの混合樹脂とする形態、第1樹脂を低密度PEとし第2樹脂をPPとする形態、あるいは第1樹脂を高密度PEとし第2樹脂をPPとする形態などが適用できる。
【0024】
[合成樹脂キャップ]
図5図7も参照しつつ、本実施形態における合成樹脂キャップ20の詳細な構造について説明する。
これらに図示されるとおり、本実施形態の合成樹脂キャップ20は、頂板部21、スカート壁22、及びラチェット部26を少なくとも含んで構成されている。また本実施形態の合成樹脂キャップ20は、コンタクト突起部23、アウターリング24、TE(タンパーエビデント)バンド25などをさらに含んで構成されていてもよい。なお図5に示すように、本実施形態のアウターリング24はスカート壁22と一体化しているが、公知例のようにアウターリング24がスカート壁22とは分離した形態となっていてもよい。
【0025】
頂板部21は、容器口部10における筒状側壁11の内周面11aに閉栓時において密着してシールポイントSPを形成するインナーリング21bを下面21aに備えている。
例えば図5などに示されるように、本実施形態におけるインナーリング21bの外周面は、頂板部21の下面21aから径方向外側に向かって中心軸からの距離(径)が拡径して張り出すように延び、後述する筒状側壁11の内周面11aとのシールポイントSP(図2図11参照)になる最外径部を頂点として弧状となるように下方に向かって漸次縮径していてもよい。
【0026】
一方で本実施形態におけるインナーリング21bの内周面は、頂板部21の下面2aから径方向外側に向かって中心軸からの距離(径)が若干拡径するように延びるか、又はほぼ下方に向けて垂下するように延びていてもよい。
なお、インナーリング21bのシールポイントSPは、高さ方向(Z方向)において肉抜き部11eよりも下方に配置されていることが好ましい。これにより、上記した筒状側壁11の上端部における弾性変形がシールポイントSPを形成する部位に影響を与えず、容器のシール状態を適正に維持することが可能となっている。
【0027】
スカート壁22は、頂板部21の周縁から降下するとともに、後述する筒状側壁11の外周面11bに形成された螺子部11cと螺合する螺条22aを内周面に有するように形成されている。なお、図5に示すとおり、このスカート壁22の外周面には、例えば軸方向(Z方向)に延在する公知のナール部22n(縦リブやローレットとも称される)が周方向(θz方向)に亘って複数形成されていてもよい。
【0028】
コンタクト突起部23は、頂板部21の下面21aであってスカート壁22とインナーリング21bとの間で当該下面21aから突出(垂下)するように形成されている。本実施形態におけるコンタクト突起部23は、図6に示すように、周方向(θz方向)に沿って複数個所に配置されてなり、前記した突出部11d(より具体的には突出部11dの一部を構成する筒状側壁11の外面上端11t)に接触可能なように構成されている。このように本実施形態における合成樹脂キャップ20は、コンタクト突起部23が周方向に沿って複数個所に配置されている。そのため、容器口部10における突出部11dと合成樹脂キャップ20におけるコンタクト突起部23との接触面積が低減され、これによりキャップの初期開栓時および再開栓時における開栓トルクの上昇を抑制することが可能となっている。
【0029】
より具体的に本実施形態のコンタクト突起部23は、図6などに示すように、上記した周方向に沿って断続的に下面21aから下方へ突出するように設けられている。また本実施形態のコンタクト突起部23は、軸周り(周方向θz)沿って間隔がQ°毎で等間隔となるように断続的に配置されている。図示から理解されるとおり、本実施形態のコンタクト突起部23は頂板部21の下面21aにおいて合計12個設けられていることから、上記したQの値は30°となっている。
【0030】
さらに本実施形態においては、図6に示すように、コンタクト突起部23の周方向における位置と、螺条22aを構成する周方向に沿って断続的に設けられた1つ1つの螺子山部の周方向における位置と、が重なるように、周方向でコンタクト突起部23と螺子山部とが並置されている。換言すれば、本実施形態の合成樹脂キャップ20においては、周方向におけるコンタクト突起部23の個数と、螺条22aを構成する螺子山部の個数とが、同数となるようにそれぞれ設けられていてもよい。
【0031】
上述のとおり、容器口部10は比較的軟質な樹脂を射出成形することで製造されることが好ましいことから、例えば使用者が最初に容器の開栓を行う初期開封時においてインナーリング21bなどの作用によって筒状側壁11の突出部11dを含む上端周辺がラッパ状(放射状)に外開いて拡径することが想定される。このように筒状側壁11の上端周辺が外開くことで、筒状側壁11の螺子部11cと合成樹脂キャップ20の螺条22aとが強く密接するように噛み合ってしまい初期開封時における開栓トルクが上昇してしまう。
【0032】
これに対して本実施形態では、上記したとおり周方向でコンタクト突起部23と螺条22aの螺子山部とが並置されていることから、筒状側壁11の上端周辺が上記の外開きをしてコンタクト突起部23に接触した際に、コンタクト突起部23が径方向外側から内側下方向きへの反力を発生することができる。
このとき図3に示すように、コンタクト突起部23と螺条22aの螺子山部とが並置されている領域では、上記初期開封時においてインナーリング21bとコンタクト突起部23が筒状側壁11の上端周辺を挟み込むように作用し、これにより螺条22aの螺子山部の上方で筒状側壁11の上端周辺が外開いて螺子同士が強く噛み合ってしまうことを回避できる。他方で、図4に示すように、上記した周方向に関してコンタクト突起部23が形成されていない領域(螺条22aの螺子山部も形成されていない)では、図3に示す部位と比較すると筒状側壁11の上端部が若干拡径する傾向にはあるものの、螺条22aの螺子山部も形成されていないため、当該螺子山部と螺子部11cとがこの領域内において接触することなく、これによっても開栓トルク上昇を抑制することが可能となっている。
このように本実施形態では、コンタクト突起部23と螺条22aの螺子山部とが並置されている領域(図3)と、コンタクト突起部23と螺条22aの螺子山部とが形成されていない領域(図4)との双方において、上記したそれぞれ異なる作用を以って初期開封時などにおいて開栓トルクが上昇してしまうことを抑制している。
【0033】
なお、本実施形態では合計12個のコンタクト突起部23が設けられているがこの形態に限られず、上記した螺条22aに対応して周方向に断続的に形成される限りにおいて12個以外の例えば6つや8つなど任意の数であってもよい。かようなコンタクト突起部23の個数に応じて上記した間隔Qの値も調整することができる。
【0034】
また、コンタクト突起部23の周方向における大きさ(周方向に占める角度θ)も、例えば出荷前の初期密封時などに行われる増し締め時における抵抗の大きさなどを考慮して、任意の大きさに設計することができる。一例として、複数のコンタクト突起部23の周方向における角度θは、それぞれ5°~30°となっていることが好ましい。例えば1つのコンタクト突起部23の角度θが10°となる場合には、本実施形態では上記した軸周り(周方向θz)に関して総計で120°分がコンタクト突起部23が占める領域となる。
【0035】
上記したコンタクト突起部23が周方向で占める領域はコンタクト突起部23の個数と周方向における角度θとで規定されることになるが、複数のコンタクト突起部23を周方向で連ねた場合における周方向長θは、全周に対して30°≦θ≦270°の割合となるように設定されてなることが好ましい。
また、本実施形態ではコンタクト突起部23と螺条22a(個々の螺子山部)とが並置されることから、複数のコンタクト突起部23の周方向における夫々の長さは、図6などに示すように、並置された螺子山部の周方向における長さ以下に設定されてなることが好ましい。
【0036】
なお本実施形態のコンタクト突起部23における各々の周方向長さは、互いに同じ長さとなるように下面21a上に設けられている。しかしながら本発明はこの形態に限られず、複数のコンタクト突起部23における各々の周方向長さが互いに異なっていてもよい。
また、本実施形態のコンタクト突起部23における下面21aからの突出量(下面21aからの高さ、垂下する量)は、互いに同じ高さ(同じ突出量)となるように下面21a上に設けられている。しかしながら本発明はこの形態に限られず、複数のコンタクト突起部23における各々の上記高さが互いに異なっていてもよい。なお、コンタクト突起部23の上記高さは、例えばインナーリング21bよりも低くなるように設定されている。
また、図2に示すように、コンタクト突起部23の径方向における幅W1は、肉抜き部11eの底面を基点として突出部11dが径方向に突出する突出量W2以下となるように構成されていることが好ましい。
【0037】
また図1に示すように、本実施形態の合成樹脂キャップ20においては、スカート壁22の下端で破断可能なブリッジなどの公知の破断部WPを介してTEバンド(タンパーエビデントバンド)25と係止突起25aが設けられていてもよい。かような場合には、内容物を初期充填した後で容器口部10に合成樹脂キャップ20を装着する際にTEバンド25の係止突起25aが容器口部10の収容フック11gを乗り越えた状態となる。これにより合成樹脂キャップ20が初めて容器口部10から開栓されたときは、係止突起25aと収容フック11gとが係止し破断部WPを破断して、このTEバンド25は容器口部10の収容フック11g下の空間に残留することとなる(図12参照)。
【0038】
なお、本実施形態のTEバンド25における係止突起25aは、周方向に沿って断続的に複数設けられた公知の構造を採用してもよいし、この形態に限られず周方向に沿って連続していてもよい。また、かようなTEバンド25は、それ自体も必須でなく容器の用途に応じて適宜省略してもよい。また、TEバンド25や破断部WPの構造も本実施形態に限定されず公知の他の構造を適用してもよい。
【0039】
ラチェット部26は、図5に示すように、スカート壁22の内周面から径方向内側へ突出する突起であり、スカート壁22の内周面であって螺条22aの始端よりも下方において少なくとも1つ形成されている。なお図6に示すように、本実施形態のラチェット部26は、軸周り(周方向θz)に沿って角度P°を隔てて複数形成されていてもよい。より具体的に、一例として、本実施形態のラチェット部26は、軸周り(周方向θz)に関して等間隔で3つ設けられていることから、角度Pは120°となっている。
【0040】
また、図5に示すように、本実施形態のラチェット部26は、スカート壁22に設けられた螺条22aのリード角(角度R)と対応するように斜めに傾斜してスカート壁22の内周面に設けられてなることが好ましい。より具体的に本実施形態のラチェット部26は、螺条22aのリード角(角度R)と同じ角度で斜めに傾斜して設けられていてもよい。これによりリシールなどの閉栓時において、後述する羽部11fがラチェット部26をスムーズに乗り越えることが可能となっている。
【0041】
さらに図6に示すように、本実施形態のラチェット部26は、前記した螺条22aの条数と同じ個数となるように、スカート壁22の内周面において周方向に沿って複数形成されていてもよい。より具体的に、一例として本実施形態の螺条22aは公知の3条ねじで構成されていることから、周方向に沿って合計3つのラチェット部26がスカート壁22に設けられている。これにより、使用者がラチェット部26と羽部11fとの位置関係を特段意識することなく、開栓時や閉栓時において羽部11fがいずれかのラチェット部26を乗り越えることが可能となっている。
【0042】
また、図7に示すように、ラチェット部26の周方向において占める大きさ(周方向に関する角度θ)は、例えば螺条22aを構成する1つのねじ山の半分よりも大きく、1つのねじ山よりも小さく設定されていることが好ましい。本実施形態における個々のラチェット部26の周方向に占める角度θは、一例として、それぞれ5°~15°となっていることが好ましい。
【0043】
また、同図に示すように、ラチェット部26の周方向に占める角度θは、上記したコンタクト突起部23の周方向に占める角度θと概ね同じとなっていてもよい。
また、ラチェット部26のスカート壁22から径方向内側に突出する高さh1(径方向突出量)は、螺条22aのスカート壁22から径方向内側に突出する高さh2よりも小さくなっていることが好ましい。これによりリシールなどの閉栓時においてラチェット部26が筒状側壁11の外周面11bに意図せず干渉してしまうことが抑制される。
【0044】
[容器口部]
次に図8~10も参照しつつ、本実施形態における容器口部10の詳細な構造について説明する。
本実施形態における容器口部10は、一例として、容器本体とは分離して形成された合成樹脂製のスパウトである。この容器口部10は、例えば図8などから理解されるとおり、筒状側壁11、フランジ部12とを含んで構成されている。
【0045】
筒状側壁11は、その内部が中空となって内容物が注出される注出口を構成する内周面11aを備えた筒状の部位である。なお図8などから明らかなとおり、本実施形態の筒状側壁11は、所定の開口径を有する上部筒状側壁11Uと、この上部筒状側壁11Uからフランジ部12に向けて漸次拡径した末広がりの開口径を有する下部筒状側壁11Lと、で構成されていてもよい。
【0046】
このように本実施形態では、フランジ部12から筒状側壁11の外面上端11tまでにおいて開口径が一様でないが、この形態に限られずフランジ部12から筒状側壁11の外面上端11tまで開口の直径が一様となっていてもよい。また、筒状側壁11の外周面11bについても、上部筒状側壁11Uと下部筒状側壁11Lのようになっている必要は必ずしもなく、その外径が一様となっていてもよい。
【0047】
一方で筒状側壁11の外周面11bには螺子部11cが形成されており、この螺子部11cは、キャップ閉栓時に後述する合成樹脂キャップ20の螺条22aと螺合する。
かような螺子部11cは、本実施形態では、イージーオープン性を確保する観点などから、多条ねじの構造を有していることが好ましい。なお上述のとおり、本実施形態では螺子部11cとして3条螺子が適用されているが、螺子部11cは多条ねじとなっておらずともよく1条ねじの構造を有していてもよい。
【0048】
図2及び図8などに示すように、本実施形態では、筒状側壁11の外周面上端には径方向の外側(図2図8ではX軸方向)に向かって突出する突出部11dが形成されている。より具体的に本実施形態の突出部11dは、筒状側壁11の外面上端11tを上面として径方向外側に延在するように全周に亘って設けられている。なお、内容物を容器に充填した後の初期密封時に合成樹脂キャップ20を容器口部10に螺合する際に、この突出部11dの上面(すなわち筒状側壁11の外面上端11t)に対して合成樹脂キャップ20のコンタクト突起部23と接触することが可能となっている。
【0049】
このように本実施形態の突出部11dは、筒状側壁11の外周面上端から水平に外側へ延びた形状となっている。しかしながら、突出部11dの頂面側(Z方向上側の面)は、筒状側壁11の外周面上端から水平に延びてもよいし、先端がZ方向下側に垂れ下がるような曲面となっていてもよいし、あるいは先端がZ方向上側に傾斜するような曲面となっていてもよい。
【0050】
さらに図2に示すように、突出部11dの下面11dgは、肉抜き部11eの上端を基点にして上方へ向かうにつれて外側に拡径するように傾斜されている。このように突出部11dの下面11dgが肉抜き部11eの底面を基準に上方に向けて(例えばラッパ状に)傾斜していることから、例えば容器口部10を射出成形するときに離型抵抗を抑制することが可能となっている。
また、突出部11dは、筒状側壁11における螺子部11cの上端(螺子が形成される領域の上端)よりも上方に配置されるとよい。
【0051】
なお図2及び図8に示すように、この突出部11dの高さ方向(Z方向)における厚みについては、後述する肉抜き部11eが形成された部位における筒状側壁11の径方向(図2図8でX方向)の側壁厚よりも小さい厚さであることが好ましい。いずれにせよ、この突出部11dのZ方向における厚みは、コンタクト突起部23が接触した後で突出部11dが撓む(弾性変形する)ことが可能な範囲で適宜設定することができる。
【0052】
この突出部11dの径方向外側への突出量(径方向における根元からの大きさであり、本実施形態では肉抜き部11eの底面からの高さ)は、図2図8に示すように、螺子部11cのネジ山の頂部(高さ)よりも突出しない程度としてもよい。
【0053】
本実施形態では、筒状側壁11の外周面11bのうち螺子部11cと突出部11dとの間には肉抜き部11eが形成されていることが好ましい。この肉抜き部11eは、外周面11bから内側(筒状側壁11の中心方向)に向かって凹状に窪んで底面を有するように切り欠かれた形状の部位である。このように容器口部10は、突出部11dと螺子部11cとの間に径方向に関して内側に窪んだ肉抜き部11eを有していてもよい。
【0054】
なお、肉抜き部11eの形成方法としては、例えば容器口部10を形成する射出成形時に同時に形成されるようにしてもよいし、射出成形後に容器口部10における外周の一部を削り取って肉抜き部11eを形成してもよい。また、肉抜き部11eの深さ(図中の水平XY方向に関する凹部の深さ)については、特に制限はなく、コンタクト突起部23が接触した後で突出部11dが撓む(弾性変形する)ことが可能な範囲で適宜設定してもよい。また、肉抜き部11eのZ方向の大きさ(すなわち底面の大きさ)は、キャップの増し締めを行った際に、弾性変形した突出部11dが肉抜き部11eの側面に接触しない寸法であることが好ましい。
【0055】
また、図8~10に示されるように、本実施形態の容器口部10は、筒状側壁11の外周面に形成された少なくとも1つの羽部11fを有する。かような羽部11fは、前記した筒状側壁11における外周面11bのうち螺子部11cの終端よりも下方(例えば図8ではマイナスZ方向)に形成されてなる。これにより、例えばリシール時など合成樹脂キャップ20が容器口部10に螺合されるとき、この羽部11fが弾性変形しながらラチェット部26を乗り上げた後にインナーリング21bが筒状側壁11の内周面11aに密着して肉抜き部11eよりも下側でシールポイントSPが形成される(図11など参照)。
【0056】
なお図8及び図9から理解されるとおり、本実施形態では周方向に関して1つの羽部11fが筒状側壁11における外周面11bに形成されているが、この態様には限らない。すなわち、本実施形態の羽部11fは、軸周り(周方向θz)に関して複数設けられていてもよい。また、羽部11fが軸周りに複数設けられる場合には、これら複数の羽部11fは互いに軸周りに関して等間隔で外周面11bに形成されていることが好ましい。
いずれにせよ上記したラチェット部26も含め、本実施形態におけるラチェット部26と羽部11fの少なくとも一方は、軸周り(周方向θz)に沿って等間隔となるように複数設けられてなることが好ましい。
【0057】
また図8から理解されるとおり、本実施形態の羽部11fは、軸方向(Z方向)において、螺子部11cの終端よりも下方であって、且つ、筒状側壁11のうちタンパーエビデントバンド収容領域BAよりも上方に設けられてなることが好ましい。これにより、リシール時などの閉栓時において、リシールが完了するタイミングに合わせて羽部11fがいずれかのラチェット部26を乗り越えることが可能となっている。
【0058】
なお図10などから理解されるとおり、本実施形態における羽部11fの外周面11bからの突出量Dは前記した螺子部11cにおけるねじ山の高さ以下とされていてもよい。また、本実施形態における羽部11fの軸方向(Z方向)における長さLzは、螺子部11cのピッチPt以下とされていてもよい。さらに図10に示すように、本実施形態における羽部11fの軸周り(θz方向)における長さLθは、上記した弾性変形可能な限りにおいて特に制限はなく、例えば軸方向(Z方向)における長さLzよりも小さく設定されていてもよい。
【0059】
フランジ部12は、上記した容器本体と熱溶着される部位であり、例えば溶着面12aに対して紙製容器(樹脂が被覆された紙容器など)やパウチなどの容器本体の一部が密着される。なお、容器本体とフランジ部12の溶着態様に特に制限はなく、公知の溶着態様を適用してもよい。例えば、フランジ部12の上面(Z方向上側)で容器本体と溶着されてもよいし、下面で溶着されてもよいし、あるいはZ方向に長さのある場合は側面で容器本体と溶着される形態であってもよい。
【0060】
<使用者に対する「閉めた感」を付与する構造>
本実施形態においては、上記した増し締めがリシール時に行われる場合においても、肉抜き部11eを介した突出部11dの変形作用によってコンタクト突起部23と突出部11dとの間に生じる摩擦力は抑制されている。一方で、肉抜き部11eを介した突出部11dの変形作用によって上記した摩擦力が減少すると、上記増し締めの際において使用者による過度な増し締めを増長することにつながりかねない。
【0061】
そこで本実施形態におけるキャップユニット100においては、容器口部10の筒状側壁11に設けられた羽部11fと、合成樹脂キャップ20のスカート壁22に設けられたラチェット部26と、が協働することで、使用者に対して感応的な「締めた感」を付与することが可能となっている。より具体的には、上記したリシール時などの閉栓時において、ラチェット部26上を羽部11fが弾性変形しながら乗り越えることで適正な抵抗が発生すると共に、その後に羽部11fがラチェット部26を乗り越えた際に羽部11fが弾性復元してラチェット部26の端面に接触して発音されることになる。なお上記した「締めた感」は必ずしも発音によって実現される必要はなく、例えば上記した抵抗の変化を使用者が感じることで実現されていてもよい。換言すれば、本実施形態のキャップユニット100においては、上記した「締めた感」を実現するため羽部11fによる発音は好ましいが必須ではない。
【0062】
そして本実施形態におけるキャップユニット100では、前記した合成樹脂キャップ20が容器口部10に螺合されるとき、筒状側壁11に形成された羽部11fが弾性変形しながらキャップ側のラチェット部26を乗り上げた後にインナーリング21bが筒状側壁11の内周面11aに密着して肉抜き部11eよりも下側でシールポイントSPが形成される。これにより、肉抜き部11eの状態に依らずに上記したシールポイントSPによって容器の密封性が担保されることになる。
【0063】
<リシール時における容器口部とキャップの状態遷移>
次に、図11及び図12も参照して、本実施形態の容器口部10に合成樹脂キャップ20が装着されるときの状態およびその遷移の態様について説明する。なお、一例として以下では、使用者が初期密封からいったん開栓した後に再び合成樹脂キャップ20で容器口部10を閉栓する「リシール時」の状態遷移について説明する。
【0064】
まず使用者が合成樹脂キャップ20で容器口部10を閉栓するとき、合成樹脂キャップ20をθz方向の閉栓方向RD(時計回り)に回転させることでスカート壁22の螺条22aが容器口部10の螺子部11cと螺合していく。このとき合成樹脂キャップ20のインナーリング21bは、容器口部10における筒状側壁11の内周面11aに接しながら下方へ押し下げられる。
【0065】
そして螺条22aが螺子部11cに対して螺合を続けると、図11(a)に示すように、上記した羽部11fがラチェット部26の側面に当接する。その後に使用者がさらに合成樹脂キャップ20を巻き締めると、図11(b)に示すように、羽部11fが弾性変形しながらラチェット部26の上面に乗り上がる。このとき羽部11fがラチェット部26の上面を滑りながら動くため、この滑りによる摩擦抵抗が使用者に対して感応的な刺激として伝達され得る。
【0066】
そしてさらに使用者が合成樹脂キャップ20を巻き締めると、図11(c)及び(d)に示すように、羽部11fは、ラチェット部26の上面に乗り越え、その後に弾性復元することでラチェット部26の端面に衝突する。このように本実施形態では、羽部11fがラチェット部26を乗り越えた際に、羽部11fが弾性復元してラチェット部26の端面に接触して発音がなされることになる。なお図11(d)に示すように、ラチェット部26のうち周方向における端面は、羽部11fの側面と平面で接触するように、スカート壁22の内周面から中心に向けて直角壁となるように設けられてなることが好ましい。これにより羽部11fの側面とラチェット部26の端面とが正面衝突することで、上記した乗り越え時において使用者に認知可能な程度の発音が実現される。
【0067】
なお本実施形態では、上記したリシールなどの閉栓時において羽部11fがラチェット部26を乗り越えた際に発音がなされるように、ラチェット部26のうち閉栓方向RDに関して後ろ側の端面が上記した直角壁となっている。
しかしながら本実施形態では閉栓時における羽部11fの発音作用に限定されず、開栓時において羽部11fがラチェット部26を乗り越えた際にも発音が為される態様であってもよい。この場合、本実施形態のように、ラチェット部26のうち閉栓方向RDに関して前側の端面も上記した直角壁となっていることが望ましい。
一方で開栓時における発音が不要であれば、ラチェット部26のうち閉栓方向RDに関して前側の端面は必ずしも直角壁となっている必要はなく、例えばスカート壁22の内周面から開栓方向に沿って内周面からの高さが徐々に高くなるように傾斜して延びるテーパー壁としてもよい。
【0068】
羽部11fがラチェット部26を乗り越えてリシールが完了したときの状態を、図12に示す。同図に示すように、羽部11fは、ラチェット部26を乗り越えた後に弾性復元してラチェット部26の端面と衝突する。この後、使用者は上記した発音など感応的な刺激を受けてリシールが完了した状態であることを認知する。また、図示されるとおり、羽部11fがラチェット部26を乗り越えた直後においては、合成樹脂キャップ20のインナーリング21bが筒状側壁11の内周面11aに密着して肉抜き部11eよりも下側でシールポイントSPが形成されると共に、コンタクト突起部23と筒状側壁11の外面上端11tとの間には所定の間隙が形成される。この状態の後は、使用者による更なる若干の巻き締めは許容され得る。
【0069】
なお本実施形態では、コンタクト突起部23が突出部11dに接触して突出部11dが弾性変形している状態を「増し締め」と称している。かような増し締めをリシール時にも行ってもよく、このような場合には初期密封時に対しても遜色のない程度の強固な密封性を確保できる。ただし本実施形態では、この増し締めを行う前にインナーリング21bと内周面11aとが既に密着してシールポイントSPが形成されることから、リシール時には必ずしも増し締めで得られる程度の密封性は必要でなく、増し締めは必須ではない。
【0070】
なお、本実施形態において筒状側壁11は、上述した上部筒状側壁11Uと下部筒状側壁11Lとで構成することができる。このような場合には、合成樹脂キャップ20で容器口部10を巻き締める際に、筒状側壁11が径方向外側に向けて比較的倒れ易くなることから、上記した「閉めた感」は喪失してしまう方向に作用する可能性がある。しかしながら本実施形態のキャップユニット100は、上記した羽部11fとラチェット部26の組み合わせを具備していることから、この「閉めた感」を有効に発出させることが可能となっている。
【0071】
なお、例えば容器口部10がスパウトである場合には、高さ方向に十分な設計高さを確保できない場合もあることから多条ねじが用いられることが考えられる。このとき、上記した増し締めが行われる際には、コンタクト突起部23と突出部11dとの接触に起因して螺条22aと螺子部11cとの間で生じる径方向の圧力も上昇しやすくなってしまう。
これに対して本実施形態によれば、増し締めがさらに行われても突出部11dが弾性変形可能であるのでコンタクト突起部23と突出部11dとの間で過大な圧力が発生することを最終的に抑制しつつ、上記した羽部11fとラチェット部26の組み合わせを設けたことで適正な「締めた感」を使用者に付与することでリシール時の過大な巻き締めをも抑制することが可能となっている。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
また、上記した実施形態では、羽部11fがラチェット部26を乗り越えた直後は、図12に示すように、コンタクト突起部23と筒状側壁11の外面上端11tとの間には所定の間隙が形成されていた。しかしながら本発明はこの形態に限られず、羽部11fがラチェット部26を乗り越えてリシールが完了したときに上記した所定の間隙は形成されておらずともよい。すなわち羽部11fがラチェット部26を乗り越えた直後は、(1)突出部11dが弾性変形するほどではないがコンタクト突起部23が突出部11d(外面上端11t)と接触している状態となってもよいし、(2)初期密封時ほどに弾性変形することを要しないがコンタクト突起部23が接触した突出部11dが弾性変形している状態となってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明の合成樹脂キャップとキャップユニットは、筒状側壁の螺子部と合成樹脂キャップの螺条とが強く密接して開栓トルクが上昇してしまうことを抑制するのに適している。
【符号の説明】
【0075】
100 キャップユニット
10 容器口部
11 筒状側壁
11f 羽部
12 フランジ部
20 合成樹脂キャップ
21 頂板部
22 スカート壁
23 コンタクト突起部
24 アウターリング
25 TEバンド
26 ラチェット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12