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  • 特開-自動二輪車用転倒防止固定台 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048114
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】自動二輪車用転倒防止固定台
(51)【国際特許分類】
   B62H 3/02 20060101AFI20240401BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B62H3/02
E04H6/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153992
(22)【出願日】2022-09-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】514027665
【氏名又は名称】株式会社トレジャーアイランド
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 二郎
(57)【要約】
【課題】短時間で簡便に設定できる構成でありながら、地震の揺れに対しても従来より確実に自立姿勢を保持できる自動二輪車用転倒防止固定台の提供。
【解決手段】自動二輪車用転倒防止固定台として、乗り上げ方向の前後で互いに突き合わせ状態で連結されて一枚の長方形状の台を形成するアルミニウム製でそれぞれ凹凸状の滑り止め表面を有する第1の板部材と第2の板部材と、これら第1の板部材と第2の板部材とを左右両側面で連結する一対の連結手段と、第1の板部材と第2の板部材とのそれぞれに左右両側辺からその長手方向にわたって上方に立設されたフリンジ部と、を備え、フリンジ部には、一端部が自動二輪車の構体に固定された締め込み長尺部材の他端部のフックが前記長尺部材の緊張状態で掛止される複数個の掛止用貫通孔を有するものとした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車が自立姿勢を保持して固定される自動二輪車用転倒防止固定台であって、
乗り上げ方向の前後で互いに突き合わせ状態で連結されて一枚の長方形状の台を形成するアルミニウム製の第1の板部材と第2の板部材と、これら第1の板部材と第2の板部材とを左右両側面で連結する一対の連結手段と、前記第1の板部材と前記第2の板部材とのそれぞれに左右両側辺からその長手方向にわたって上方に立設されたフリンジ部と、を備え、
前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、それぞれ凹凸状の滑り止め表面を有し、
前記フリンジ部は、一端部が前記自動二輪車の構体に固定された締め込み長尺部材の他端部のフックが前記長尺部材の緊張状態で掛止される複数個の掛止用貫通孔を有し、
前記連結手段は、前後で突き合う前記第1の板部材のフリンジ部と前記第2の板部材のフリンジ部との双方にわたってフリンジ部外表面に当接される連結プレートと、該連結プレートを各フリンジ部にネジ止め固定する複数のネジ部材とを有するものであることを特徴とする自動二輪車用転倒防止固定台。
【請求項2】
前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、互いに同一形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用転倒防止固定台。
【請求項3】
前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、それぞれ連結側と対向する先端辺から外方へ下り勾配を形成する延在部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車用転倒防止固定台。
【請求項4】
前記滑り止め表面は、エポキシ樹脂のバインダー層に粒状の硬質骨材が散布されて固着された滑り止め層が前記第1と第2の板部材の上面に被覆されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用転倒防止固定台。
【請求項5】
前記第1の板部材と前記第2の板部材との裏面の少なくとも一部に、滑り止め用弾性体シートが積層されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用転倒防止固定台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレージ内等の駐車スペースに載置されて、その上面に乗り上げられた自動二輪車を、地震等の揺れに対しても自立姿勢を保持できるように固定する自動二輪車用の転倒防止固定台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の保管は、多くの場合、ガレージ等での屋内保管である。通常、所定の駐車スペース内にてサイドスタンドで自立状態とされているが、サイドスタンドは車体を若干の傾倒状態にて支えており、ハンドル及び前輪側が車体軸に対してスタンド側に傾いた状態となりやすい。このような傾きのない直立姿勢でより安定的に自立させるために、テコの原理を使って車体を持ち上げるセンタースタンドが用いられることもある。また、場合によっては、フロントホイールクランプあるいはフロントホイールチョックスタンドと呼ばれる前輪を挟んで固定する前輪固定具もある。
【0003】
しかしながら、日本国内では、大小の地震が頻発しており、上記のような各種スタンドで自立しているだけの自動二輪車は、地震の特に横揺れによって転倒することがある。特に排気量の大きい自動二輪車では、車体とその自重が大きいため転倒時の衝撃も大きく、破損の危険性が大きい。このような破損による損害は高額になってしまう。
【0004】
そこで、自動二輪車の地震等による転倒を防止できる装置も考えられている。例えば、特許文献1には、駐車場地面に設置されてモータの回転駆動により上方に露呈する係合部材が格納された函体と、自動二輪車のスタンドに連結されて地面に接地する棒状の連結接地バーを有するストッパーから構成され、連結接地バーが自動二輪車のスタンドに連結された状態でストッパーの嵌合孔と函体から上方の露呈された係合部材の係合孔とに挿入スティックが挿入されるパーキング装置が開示されている。
【0005】
このパーキング装置は、自動二輪車のスタンドにストッパーを連結することにより、自動二輪車の下方において棒状の連結接地バーが地面に接地するため、従来のスタンドが有する接地盤よりも地面との接触面積を広めることができ、さらに、挿入スティックを介して自動二輪車のスタンドに連結されたストッパーが函体に連結されることで自動二輪車が地面に連結されるため、スタンドによる接地状態がより安定し、自動二輪車の転倒が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-097839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような特殊なパーキング装置では、駐車場地面側にモータ電気系統を必要とする固定機構に加え、スタンド側にもストッパーと連結するためのベース部材が設けられており、必要な構成部品数が多く設計が複雑であると共に、地面側への設置工事も必要であるため、装置の設定工程が非常に繁雑である。しかも、車体の自立性の補強がスタンドのみに頼った構成であるため、電気系統あるいはスタンド側のいずれでも不具合が生じれば成り立たない機構である。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、必要部品数が従来より少なく且つ短時間で簡便に設定できる構成でありながら、スタンドのみに頼ることなくより確実に自立姿勢を保持できる自動二輪車用転倒防止固定台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る自動二輪車用転倒防止固定台は、自動二輪車が自立姿勢を保持して固定される自動二輪車用転倒防止固定台であって、乗り上げ方向の前後で互いに突き合わせ状態で連結されて一枚の長方形状の台を形成するアルミニウム製の第1の板部材と第2の板部材と、これら第1の板部材と第2の板部材とを左右両側面で連結する一対の連結手段と、前記第1の板部材と前記第2の板部材とのそれぞれに左右両側辺からその長手方向にわたって上方に立設されたフリンジ部と、を備え、
前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、それぞれ凹凸状の滑り止め表面を有し、
前記フリンジ部は、一端部が前記自動二輪車の構体に固定された締め込み長尺部材の他端部のフックが前記長尺部材の緊張状態で掛止される複数個の掛止用貫通孔を有し、
前記連結手段は、前後で突き合う前記第1の板部材のフリンジ部と前記第2の板部材のフリンジ部との双方にわたってフリンジ部外表面に当接される連結プレートと、該連結プレートを各フリンジ部にネジ止め固定する複数のネジ部材とを有するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る自動二輪車用転倒防止固定台は、請求項1に記載の自動二輪車用転倒防止固定台において、前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、互いに同一形状を有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る自動二輪車用転倒防止固定台は、請求項1又は2に記載の自動二輪車用転倒防止固定台において、前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、それぞれ連結側と対向する先端辺から外方へ下り勾配を形成する延在部を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る自動二輪車用転倒防止固定台は、請求項1に記載の自動二輪車用転倒防止固定台において、前記滑り止め表面は、エポキシ樹脂のバインダー層に粒状の硬質骨材が散布されて固着された滑り止め層が前記第1と第2の板部材の上面に被覆されて形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明に係る自動二輪車用転倒防止固定台は、請求項1に記載の自動二輪車用転倒防止固定台において、前記第1の板部材と前記第2の板部材との裏面の少なくとも一部に、滑り止め用弾性体シートが積層されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による自動二輪車用転倒防止固定台においては、アルミニウム製の第1の板部材と第2の板部材とを、連結プレートを介してネジ止め固定して連結するだけで組み立てることができ、短時間で容易に任意の駐車スペースに設定できる構成でありながら、第1の板部材と第2の板部材の左右両側に立設されたフリンジ部の貫通孔を利用して、タイベルトのような締め込み長尺部材で自動二輪車をその自立状態を強固に保持して固定することができるため、地震等の横揺れに対して簡便且つ確実に自動二輪車の転倒を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例による自動二輪車用転倒防止固定台を示す全体概略構成図であり、(a)は組立て前の部品構成を示す斜視図、(b)は組立て後の斜視図、(c)は連結手段による連結部を示す部分拡大図である。
図2図1の自動二輪車用転倒防止固定台の上に自動二輪車を固定した状態を示す概略模式図であり、(a)は左側面から見た斜視図、(b)は背面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の自動二輪車用転倒防止固定台は、自動二輪車が自立姿勢を保持して固定されるものであり、乗り上げ方向の前後で互いに突き合わせ状態で連結されて一枚の長方形状の台を形成するアルミニウム製の第1の板部材と第2の板部材と、これら第1の板部材と第2の板部材とを左右両側面で連結する一対の連結手段と、前記第1の板部材と前記第2の板部材とのそれそれに左右両側辺からその長手方向にわたって上方に立設されたフリンジ部と、を備え、前記第1の板部材と前記第2の板部材とは、それぞれ凹凸状の滑り止め表面を有し、前記フリンジ部は、一端部が前記自動二輪車の構体に固定された締め込み長尺部材の他端部のフックが前記長尺部材の緊張状態で掛止される複数個の掛止用貫通孔を有し、前記連結手段は、前後で突き合う前記第1の板部材のフリンジ部と前記第2の板部材のフリンジ部との双方にわたってフリンジ部外表面に当接される連結プレートと、該連結プレートを各フリンジ部にネジ止め固定する複数のネジ部材とを有するものである。
【0017】
以上の構成により、本発明においては、第1の板部材と第2の板部材とを前後に突き合わせて左右両側面のフリンジ部同士に連結プレートを当接してネジ部材でネジ止め固定するだけで、一枚の長方形状の台が組み立てられ、この組立て済みの台を、任意のスペースに載置するだけで自動二輪車用転倒防止固定台の設置が完了する。したがって、本発明による固定台は、電気駆動系もなく部品数の比較的少ない簡単な設計であって、駐車場地面への設置工事も必要ないため、その組立て及び設置は、短時間で簡便でしかも低コストで済む。
【0018】
また、本発明の自動二輪車用転倒防止固定台は、左右両側のフランジ部に貫通孔を備えているため、組立て後に所定の駐車スペースに載置して台上に自動二輪車を乗り上げ、スタンドを立てて自立姿勢にした後は、締め込み長尺部材として、例えば既存のタイダウンベルト等を利用して、少なくとも一対のタイダウンベルトでそれぞれ一端部を車体の構体に固定し、その各他端部のフックを左右両側下方の貫通孔に掛止してカムバックルやラチェット等の解除及びロック可能な締め込み機構を調整して下方へテンションを付与するように締め込むだけで、簡単に車体を左右方向の揺れに抗して確実に固定できる。
【0019】
また、左右両側のフランジ部に形成された貫通孔は、複数個あるため、上記のようなタイダウンベルトを用いた締め込み固定は、車体の前後方向の複数箇所で行える。特に、左右両ハンドルグリップを固定することによって、車体の前輪側が固定され、自立状態がより安定して維持できる。この場合、ソフトベルトを巻き付け絡めさせてタイダウンベルトの一端部を連結させてもよいが、ハンドルグリップに装着されたクリップ治具を介して固定することで、固定作業を容易にすることができる。本発明においては、最終的に車体の左右両側下方でテンションを掛けて貫通孔にフックを掛止できれば、上記のように車体側の固定手段としては種々のものが広く利用できる。
【0020】
本発明における第1の板部材と第2の板部材とは、アルミニウム製であるため、軽くて取り扱いやすいため、組立て作業が容易である。またこれら第1と第2の板部材が本発明の固定台の主構成部であるため、固定台全体も比較的軽量で済み、駐車スペースへの設置も容易であると共に、地面への負担も小さい。また、アルミニウム製の第1の板部材と第2の板部材とは、金型成形等により、簡便に低コストで製造できる。
【0021】
なお、連結プレートもアルミニウム製とすれば付加荷重も小さくて済むが、より機械的強度の大きいステンレス製とすれば、連結強度を高めることができる。
【0022】
また、第1と第2の板部材の左右両側辺から立設されるフランジ部は、各板部材の成形時に一体的に形成するものとしても、別体に成形したフランジ部をそれぞれの板部材の左右両側辺にネジ等により固定する構成としてもよい。
【0023】
さらに、第1の板部材と第2の板部材とは、それぞれ連結側と対向する先端辺から外方へ下り勾配を形成する延在部を備えていることが好ましい。この延在部によって、第1と第2の板部材の板厚による段差が解消されるため、固定作業前の台上への自動二輪車の乗り上げの際に段差による引っかかりがないため、車体の移動設置が容易となる。この延在部は、各板部材と一体成形により形成する構成とすることも、別体に成形したものを各板部材の先端辺に装着する構成とすることも可能である。
【0024】
第1の板部材と第2の板部材とを、互いに同一形状とすれば、実質的に一種類の板部材を二枚構成となるため、どちらが前後であっても問題なく、使用者にとって組立てがより簡単となる。また、金型成形による製造の場合、同じ金型で成形できるため、製造における手間とコストを更に低減できる。また、使用中に何らかの損傷が一方の板部材に発生しても、他方が問題なければ、連結を解消して損傷した板部材だけを交換すれば済むが、その場合の対応も一種類の板部材であるため、在庫管理も簡便となる。
【0025】
なお、第1と第2の板部材の凹凸状の滑り止め表面は、板部材成形時にその上面に直接突形状を形成する構成とすることができる。その他、より滑り止め効果の高い素材を各板部材の上面に被覆させることもできる。特に、車両タイヤに対する滑り止めとして様々な箇所で利用されてその有効性が発揮されている素材を利用することができる。例えば、エポキシ樹脂のバインダー層に粒状の硬質骨材が散布されて固着された滑り止め層が挙げられる。これは、骨材として、粒径数mm程度の粒子で、粉砕しても鋭利な角が生じることなく、また粒子面も平滑ではなくざらざらしているものを用いており、磁器質骨材や炭化珪素質骨材等の人工骨材、また天然骨材として鉱産物であるエメリーを用いたものが挙げられる。
【0026】
また、第1と第2の板部材の裏面にも少なくとも接地面となる一部に滑り止め用弾性体シートを積層しておくことが望ましい。例えば、表面に凹凸加工が施された天然あるいは合成ゴムからなるシートで十分である。このような滑り止めシートが裏面に施されていれば、固定台設置後の使用時、例えば自動二輪車は台上に乗り上げる際や、固定作業中に接地面からずれることがなく、作業がしやすくなる。また、固定状態での保管中の地震による揺れが生じても、自動二輪車を固定した台自体が接地面上を滑ってしまうことも防ぐことができ、より安定した固定状態が維持できる。
【実施例0027】
本発明の一実施例による自動二輪車用転倒防止固定台を図1の概略構成図に示す。図1(a)は組立て前の部品構成を示す斜視図であり、図1(b)は組立て後の斜視図、図1(c)は連結手段による連結部を示す部分拡大図である。
【0028】
本実施例による自動二輪車用転倒防止固定台1は、互いに同一形状でアルミニウム製の第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとが、自動二輪車100の乗り上げ方向(図中矢印)の前後で互いに突き合わせ状態にて、左右両側が一対の連結手段20によって連結され、一枚の長方形状の台を形成している。
【0029】
第1の板部材10Aと第2の板部材10Bは、1cm程度の厚みを有するが、それぞれ連結側と対向する先端辺(12A,12B)から外方へ延びる延在部(14A,14B)が一体的に設けられている。この延在部(14A,14B)は、先端側に向かって徐々に厚みが小さくなっており、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bの先端辺(12A,12B)から外方へ下り勾配を形成して、各板部材(10A,10B)の厚みによる段差を解消するものである。
【0030】
以上のように、それぞれ先端辺(12A,12B)から延びる延在部(14A,14B)を備えた第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとは、互いに反対向きに後端部同士が突き合わされて連結されるものである。
【0031】
また、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bのそれぞれには、左右両側辺からその長手方向にわたって上方に立設されたフリンジ部(11A,11B)が設けられており、各フリンジ部(11A,11B)には、後述のフックが掛止される複数個の貫通孔(13A、13B)が形成されており、また連結領域の予め定められた数カ所には連結用の二種のボルト孔(15A,16A,15B,16B)が形成されている。第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとは同一形状であり、互いに反対向きに突き合わされた状態では、第1の板部材10A側のボルト孔(15A,16A)と、第2の板部材10B側のボルト孔(15B,16B)とは、連結境界線を中心にして対象位置に配置されることになる。
【0032】
連結手段20は、連結プレート21とネジ締め付け固定のためのボルト(27,28)とで主に構成される。連結プレート21は、突き合わせ状態の第1の板部材10Aと第2の板部材10Bのフリンジ部同士(11A,11B)に渡ってフリンジ部外表面の所定位置に当接され、該当接状態で各フリンジ部のボルト孔(15A,16A,15B,16B)の相当位置にそれぞれ重なるプレート側ボルト孔(25,26)が形成されている。
【0033】
従って、反対向きに突き合わせ状態にある第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとの左右両側でそれぞれフリンジ部外表面の連結領域に連結プレート21を当接させ、フリンジ側のボルト孔(15A,16A,15B,16B)とプレート側ボルト孔(25,26)をそれぞれ重ね合わせて、対応するボルト(27,28)を差し込み、ナットに対して締め込めば、連結プレート21がフリンジ部(11A,11B)にネジ止め固定される。これによって、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとが連結プレートを介して連結され、自動二輪車用転倒防止固定台1の組立ては完了する。
【0034】
なお、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとの上面には、全面的に、エポキシ樹脂のバインダー層に粒状のエメリー骨材が散布されて固着された滑り止め層(30A,30B)が被覆されている。この滑り止め層は、バインダー層となるエポキシ樹脂を各板部材(10A,10B)上面に直接塗布して骨材を散布・固着させる方法、即ち、板部材上面で滑り止め層を形成する方法、あるいは予め形成した滑り止め層を各板部材上面に接着剤を介して積層する方法で第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとの上面に被覆することができる。
【0035】
また、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとの裏面の一致部領域には、接地面に対する滑り止め用の弾性体シート(31A,31B)としての合成ゴムシートが接着積層されている。この弾性体シート(31A,31B)の表面には、多数の突起及び又は複数本の縞状突条(不図示)が形成された凹凸加工が施されている。
【0036】
さらに、各フランジ部(11A,11B)の外表面には、貫通孔(13A,13B)及びボルト孔(15A,16A,15B,16B)の位置を避けて把手(32A,32B)が備え付けられている。この把手(32A,32B)により、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとを組み立て場所へ搬送するのが容易になる。また、組立て後の設置箇所への載置の際の位置決め調整、また設置箇所の変更に伴う移動も容易になる。
【0037】
なお、自動二輪車の駐車スペースとしては、概ね幅90cm、奥行き220cmの区画が一般的であることから、本実施例において、第1の板部材10Aと第2の板部材10Bとは、互いに連結されて組み立てられた後の自動二輪車用転倒防止固定台1の平面面積が上記区画内に収まる寸法設計とした。即ち各板部材(10A,10B)は、延在部(14A,14B)を含めて幅90cm未満、奥行き110cm未満の矩形状とした。
【0038】
以上のように組み立てられた本実施例による自動二輪車用転倒防止固定台1においては、以下の手順で自動二輪車100を短時間で簡単に固定することができる。即ち、所定の駐車スペースに載置された自動二輪車用転倒防止固定台1に固定対象の自動二輪車100を乗り上げ、車体全体が自動二輪車用転倒防止固定台1の平面内に収まる位置でスタンド101を立てて自立させる。
【0039】
この自立状態において、図2に示すように、前後二カ所で自動二輪車100を左右両側下方にタイダウンベルト(40,50)で固定する。まず、前方側は、左右両側のハンドルグリップ102にクリップ治具43を装着し、このクリップ治具43にタイダウンベルト40の一端部側フック41を掛止固定する。クリップ治具43は、ねじりコイルばねの付勢により一対の挟持部が互いに閉じてハンドルグリップ102を挟み込むことで装着されるものである。一対の挟持部は、この挟み込み装着状態で重なり合う平板部が延設されており、この平板部に設けられている掛止穴44に一端部側フック41が掛止されることによって、クリップ治具43のハンドルグリップ102に対する挟み込みをより確実に固定する。
【0040】
このように二本のタイダウンベルト40の各一端部側フック41を左右の各ハンドルグリップ102にクリップ治具43を介して掛止固定した状態で、各他端部側フック42を前方側の各フリンジ部11Aの一つの貫通孔13Aにそれぞれ掛止させる。そして各タイダウンベルト40をラチェットで締め込んでテンションをかける。これによって、左右両側のハンドルグリップ102が、タイダウンベルト40で左右下方へ強く引っ張られた緊張状態で固定台1に固定される。従って、車体の前方側は横方向の揺れに抗して強固な自立状態が保持される。
【0041】
さらに、車体の後方側は、後輪の左右上方の構体に二本のタイダウンベルト50の各一端部側フック51を掛止固定した状態で、各他端部側フック52の後方側の各フリンジ部11Bの一つの貫通孔13Bにそれぞれ掛止させる。そして各タイダウンベルト50をラチェットで締め込んでテンションをかける。これによって車体前方側に加え、後方側もタイダウンベルト50で左右下方へ強く引っ張られた緊張状態で固定台1に固定され、横方向の揺れに抗して強固な自立状態が保持される。なお、フリンジ部(11A,11B)に形成されている別の貫通孔(13A,13B)と別のタイダウンベルトを用いて、さらに別の箇所で車体を固定することも可能である。
【0042】
上記の固定作業の間、滑り止め層(30A,30B)によって、自動二輪車100は、固定台1上を滑ることがなく、且つ裏面の弾性体シート(31A,31B)によって固定台1自体も接地面に対してずれることがないため、効率的に作業が進められる。
【0043】
以上のような簡単な手順によって、自動二輪車100は、本実施例の自動二輪車用転倒防止固定台1に確実に固定され、左右方向の外力に対して強固な自立状態が維持されるため、地震による大きな横揺れが生じても転倒は防止され、転倒による損傷及び損害も回避される。
【符号の説明】
【0044】
1:自動二輪車用転倒防止固定台
10A,10B:板部材
11A,11B:フリンジ部
12A,12B:(板部材の)先端辺
13A,13B:貫通孔
14A,14B:延在部
15A,15B,16A,16B:ボルト孔
20:連結手段
21:連結プレート
25,26:プレート側ボルト孔
27,28:ボルト
30A,30B:滑り止め層
31A,31B:弾性体シート
32A,32B:把手
40,50:タイダウンベルト
41,51:一端部側フック
42,52:他端部側フック
43:クリップ治具
44:掛止穴
100:自動二輪車
101:スタンド
102:ハンドグリップ
図1
図2