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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048115
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】レ-ザーハンダ付け装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240401BHJP
   B23K 1/005 20060101ALI20240401BHJP
   B23K 31/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H05K3/34 507E
B23K1/005 A
B23K31/02 310H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153993
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390014834
【氏名又は名称】株式会社ジャパンユニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】新谷 元啓
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】酒川 友一
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA02
5E319AA03
5E319BB04
5E319BB05
5E319CC46
5E319GG03
5E319GG11
(57)【要約】
【課題】レーザー光による基板の焼損を確実に防止しながら該基板と電子部品とを効率的にハンダ付けすることができる、簡単で消費電力も少ないレ-ザーハンダ付け方法及び装置を提供する。
【解決手段】基板30の電極ランド32と該基板30に搭載された電子部品31の端子33との接合部34を、レーザー光15,18の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け方法において、前記基板30の表面及び裏面にレ-ザー光15及び18を照射することにより前記接合部34をハンダ付け温度に加熱し、該接合部34に予め供給されるか又は加熱と共に供給されるハンダ21を溶融させてハンダ付けする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を、レーザー光の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け方法において、
前記基板の表面及び裏面にそれぞれレ-ザー光を照射することにより前記接合部をハンダ付け温度に加熱し、該接合部に予め供給されるか又は加熱と共に供給されるハンダを溶融させてハンダ付けする、
ことを特徴とするレーザーハンダ付け方法。
【請求項2】
前記基板の表面に照射される第1レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度まで加熱する本加熱用のレーザー光であり、
前記基板の裏面に照射される第2レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度より低い予熱温度まで予備的に加熱する予備加熱用のレーザー光であり、
前記第1レーザーと前記第2レーザー光とは、同時に照射されるか又は先後時間差をおいて照射され、その後、前記第2レーザー光は、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になる前に停止され、前記第1レーザーは、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になるまで照射される、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザーハンダ付け方法。
【請求項3】
前記第2レーザー光の照射エリアは、前記第1レーザー光の照射エリアに比べて同等か又はそれより広いことを特徴とする請求項2に記載のレーザーハンダ付け方法。
【請求項4】
前記接合部は、基板の表面に形成された電極ランドと、該基板の表面に搭載された電子部品の下面の端子とからなり、これら電極ランドと端子との間にハンダ材料が予め介設されており、
前記接合部は、前記第2レーザー光により前記基板を介して予備加熱されると共に、前記第1レーザー光により前記電子部品を介して本加熱される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のレーザーハンダ付け方法。
【請求項5】
前記接合部は、基板に形成された環状の電極ランドと、該基板の裏面に搭載された電子部品のピン状をした端子とからなり、該端子が前記電極ランドのスルーホール内に挿入されており、
前記第1レーザー光は、前記接合部を基板の表面側から直接加熱し、前記第2レーザー光は、前記接合部を基板の裏面側から直接加熱するか又は電子部品を介して間接的に加熱する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のレーザーハンダ付け方法。
【請求項6】
基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を、レーザー光の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け装置において、
前記レーザーハンダ付け装置は、前記基板の表面に第1レーザー光を照射する第1照射ヘッドと、前記基板の裏面に第2レーザー光を照射する第2照射ヘッドとを有する、
ことを特徴とするレーザーハンダ付け装置。
【請求項7】
前記第1レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度まで加熱する本加熱用のレーザー光であり、
第2レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度より低い予熱温度まで予備的に加熱する予備加熱用のレーザー光であり、
前記第1レーザーと前記第2レーザー光とは、同時に照射されるか又は先後時間差をおいて照射され、その後、前記第2レーザー光は、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になる前に停止され、前記第1レーザーは、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になるまで照射される、
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項8】
前記第2レーザー光の照射エリアは、前記第1レーザー光の照射エリアに比べて同等か又はそれより広い、
ことを特徴とする請求項7に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項9】
前記接合部は、基板の表面に形成された電極ランドと、該基板の表面に搭載された電子部品の下面の端子とからなり、これら電極ランドと端子との間にハンダ材料が予め介設されており、
前記接合部は、前記第2レーザー光により前記基板を介して予備加熱されると共に、前記第1レーザー光により前記電子部品を介して本加熱される、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項10】
前記接合部は、基板に形成された環状の電極ランドと、該基板の裏面に搭載された電子部品のピン状をした端子とからなり、前記電極ランドのスルーホール内に前記端子が基板の裏面側から挿入されており、
前記第1照射ヘッドは、前記第1レーザー光を前記接合部に直接照射し、前記第2照射ヘッドは、前記第2レーザー光を基板の裏面の前記接合部及び該接合部を取り巻くエリアに照射することを特徴とする請求項7又は8に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項11】
前記第1照射ヘッドは、前記接合部に線状ハンダを供給するためのハンダ供給ノズルと、接合部の温度を測定するための非接触温度計とを有し、前記第2照射ヘッドは、接合部の温度を測定するための非接触温度計を有することを特徴とする請求項6に記載のレーザーハンダ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を、レーザー光の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を、レーザー光の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け装置は、特許文献1に開示されているように公知である。
従来のレーザーハンダ付け装置により、例えば図8に示すように、基板50に形成した環状の電極ランド51と、該基板50に搭載された電子部品52のピン状をした端子53との接合部54をハンダ付けする場合には、照射ヘッド55からレーザー光56を前記接合部54に照射することにより、前記電極ランド51及び端子53を加熱し、昇温した電極ランド51又は端子53にハンダ供給ノズル57から線状ハンダ58を供給して溶融59させることにより、前記接合部54をハンダ付けするようにしている。
【0003】
ところが、前記電極ランド51及び端子53は、例えば電極ランド51は銅に錫メッキを施すことにより形成され、端子53は銅に金メッキを施すことにより形成されているというように、互いに異なる金属素材により形成されているため、レーザ-光56の吸収率が異なり、それらの温度を目標温度まで同時に上昇させることはできない。このため、レーザ-光56の吸収率が低い端子53を目標温度に上昇させるようにレーザー光の強度や照射時間等を設定すると、電極ランド51及び基板50が過加熱状態になり、場合によっては該電極ランド51及び基板50が焼損に至ることもある。
【0004】
また、基板の電極ランドと該基板に搭載した電子部品の端子とを、リフロー方式によりハンダ付けする場合は、リフロー炉を使用し、基板を炉内に収容して、熱風や遠赤外線ヒーター等により該炉全体を加熱することで基板全体を加熱し、前記電極ランドと端子との間にハンダクリームあるいはハンダボールとして介在させたハンダ材料を溶融させてハンダ付けするようにしているが、非常に大がかりな装置を必要とするだけでなく、リフロー路内の温度コントロールも煩雑であり、消費電力も非常に多いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-198670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、レーザー光による基板の焼損を確実に防止しながら該基板と電子部品とを効率的にハンダ付けすることができる、簡単で消費電力も少ないレ-ザーハンダ付け方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を、レーザー光の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け方法において、前記基板の表面及び裏面にそれぞれレ-ザー光を照射することにより前記接合部をハンダ付けの温度に加熱し、該接合部に予め供給されるか又は加熱と共に供給されるハンダを溶融させてハンダ付けすることを特徴とするレーザーハンダ付け方法が提供される。
【0008】
本発明において、前記基板の表面に照射される第1レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度まで加熱する本加熱用のレーザー光であり、前記基板の裏面に照射される第2レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度より低い予熱温度まで予備的に加熱する予備加熱用のレーザー光であり、前記第1レーザーと前記第2レーザー光とは、同時に照射されるか又は先後時間差をおいて照射され、その後、前記第2レーザー光は、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になる前に停止され、前記第1レーザーは、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になるまで照射される。
この場合、前記第2レーザー光の照射エリアは、前記第1レーザー光の照射エリアに比べて同等か又はそれより広いことが望ましい。
【0009】
本発明の一つの実施態様において、前記接合部は、基板の表面に形成された電極ランドと、該基板の表面に搭載された電子部品の下面の端子とからなり、これら電極ランドと端子との間にハンダ材料が予め介設されており、前記接合部は、前記第2レーザー光により前記基板を介して予備加熱されると共に、前記第1レーザー光により前記電子部品を介して本加熱される。
【0010】
本発明の他の実施態様によれば、前記接合部は、基板に形成された環状の電極ランドと、該基板の裏面に搭載された電子部品のピン状をした端子とからなり、該端子が前記電極ランドのスルーホール内に挿入されており、前記第1レーザー光は、前記接合部を基板の表面側から直接加熱し、前記第2レーザー光は、前記接合部を基板の裏面側から直接加熱するか又は電子部品を介して間接的に加熱する。
【0011】
また、本発明によれば、基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を、レーザー光の照射によりハンダ付けするレーザーハンダ付け装置において、前記レーザーハンダ付け装置は、前記基板の表面に第1レーザー光を照射する第1照射ヘッドと、前記基板の裏面に第2レーザー光を照射する第2照射ヘッドとを有することを特徴とするレーザーハンダ付け装置が提供される。
【0012】
本発明において、前記第1レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度まで加熱する本加熱用のレーザー光であり、第2レーザー光は、前記接合部を前記ハンダ付け温度より低い予熱温度まで予備的に加熱する予備加熱用のレーザー光であり、前記第1レーザーと前記第2レーザー光とは、同時に照射されるか又は先後時間差をおいて照射され、その後、前記第2レーザー光は、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になる前に停止され、前記第1レーザーは、前記接合部の温度が前記ハンダ付け温度になるまで照射される。
前記第2レーザー光の照射エリアは、前記第1レーザー光の照射エリアに比べて同等か又はそれより広いことが望ましい。
【0013】
本発明の一つの実施態様において、前記接合部は、基板の表面に形成された電極ランドと、該基板の表面に搭載された電子部品の下面の端子とからなり、これら電極ランドと端子との間にハンダ材料が予め介設されており、前記接合部は、前記第2レーザー光により前記基板を介して予備加熱されると共に、前記第1レーザー光により前記電子部品を介して本加熱される。
【0014】
本発明の他の実施態様において、前記接合部は、基板に形成された環状の電極ランドと、該基板の裏面に搭載された電子部品のピン状をした端子とからなり、前記電極ランドのスルーホール内に前記端子が基板の裏面側から挿入されており、前記第1照射ヘッドは、前記第1レーザー光を前記接合部に直接照射し、前記第2照射ヘッドは、前記第2レーザー光を基板の裏面の前記接合部及び該接合部を取り巻くエリアに照射する。
【0015】
また、本発明において、前記第1照射ヘッドは、前記接合部に線状ハンダを供給するためのハンダ供給ノズルと、接合部の温度を測定するための非接触温度計とを有し、前記第2照射ヘッドは、接合部の温度を測定するための非接触温度計を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板の電極ランドと該基板に搭載された電子部品の端子との接合部を基板の表裏両面側からレーザー光を照射して加熱することにより、基板の片面だけからレーザー光を照射する場合に比べて効率的且つ迅速に加熱することができ、また、基板の片面だけから高出力のレーザー光を集中的に照射する場合に比べ、基板や電子部品等の焼損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るレーザーハンダ付け装置を概略的に示す正面図である。
図2図1のレーザーハンダ付け装置により基板と電子部品とをリフロー方式でハンダ付けする場合の要部拡大図である。
図3図2における基板の要部平面図である。
図4図2における基板の要部底面図である。
図5】複数の電子部品を基板に同時にハンダ付けする場合の要部拡大図である。
図6図1のレーザーハンダ付け装置により基板と電子部品とをハンダ供給方式でハンダ付けする場合の要部拡大断面図である。
図7図6におけるハンダ付け後の接合部の状態を示す要部断面図である。
図8】従来のハンダ付け方法を説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るレーザーハンダ付け装置の一実施形態を図に基づいて詳細に説明する。図1に示すハンダ付け装置1は、基板30と該基板30に搭載された電子部品31とを、該基板30の表裏両面側からレーザー光を照射してハンダ付けするように構成されたもので、後述するように、リフロー方式のハンダ付けと、線状ハンダを供給してハンダ付けするハンダ供給方式のハンダ付けとの、両方に使用することができるものである。
【0019】
図1において、前記ハンダ付け装置1の機体は、ベース部2と、該ベース部2の左右の側端部から垂直に立ち上がった左右の側壁部3a,3bと、該左右の側壁部3a,3bの上端部間に掛け渡された天板部4と、前記左右の側壁部3a,3bの高さ方向の中間部付近に設けられた中間壁部5とを有している。
【0020】
前記中間壁部5には、ハンダ付けする前記基板30を支持するための基板支持部6が形成され、前記天板部4には、第1スライド部材7が該天板部4に形成された不図示のガイドに沿って図の左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に変位可能なるように取り付けられ、前記第1スライド部材7には、基板30の表面側に第1レーザー光15を照射するための第1照射ヘッド8が、第1支持アーム9により図の上下方向(Z方向に)変位自在なるように取り付けられている。
【0021】
また、前記ベース部2には、第2スライド部材10が、該ベース部2に形成された不図示のガイドに沿って図の左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に変位可能なるように取り付けられ、該第2スライド部材10に、基板30の裏面側に第2レーザー光18を照射するための第2照射ヘッド11が、第2支持アーム12により図の上下方向(Z方向に)変位自在なるように取り付けられている。
【0022】
前記第1スライド部材7には、第1レーザー発振器13からの第1光ファイバー14が接続され、該第1光ファイバー14は、前記第1スライド部材7及び第1支持アーム9内に設けられた不図示の光ファイバーを介して前記第1照射ヘッド8に接続され、前記第1レーザー発振器13からのレーザー光が、前記第1光ファイバー14から前記第1スライド部材7及び第1支持アーム9を通じて前記第1照射ヘッド8に導入され、該第1照射ヘッド8に内蔵された光学機構によって照射形状及び照射面積を照射対象に合わせて調整された状態で、該第1照射ヘッド8から前記第1レーザー光15として照射されるようになっている。
【0023】
一方、前記第2スライド部材10には、第2レーザー発振器16からの第2光ファイバー17が接続され、該第2光ファイバー17は、前記第2スライド部材10及び第2支持アーム12内に設けられた不図示の光ファイバーを介して前記第2照射ヘッド11に接続され、前記第2レーザー発振器16からのレーザー光が、前記第2光ファイバー17から前記第2スライド部材10及び第2支持アーム12を通じて前記第2照射ヘッド11に導入され、該第2照射ヘッド11に内蔵された光学機構により照射形状及び照射面積を照射対象に合わせて調整した状態で、該第2照射ヘッド11から前記第2レーザー光18として照射されるようになっている。
【0024】
前記第1照射ヘッド8から基板30の表面に照射される第1レーザー光15は、基板30と電子部品31との接合部34を、ハンダ付け温度(例えば300-350℃)まで加熱する本加熱用のレーザー光であり、前記第2照射ヘッド11から基板30の裏面に照射される第2レーザー光18は、該基板30を前記ハンダ付け温度より低い予熱温度(例えば240-260℃)まで予備加熱する予備加熱用のレーザー光であり、この第2レーザー光18で基板30を裏面側から予備加熱することにより、前記第1レーザー光15を基板30の表面に照射した際の該基板30による熱の吸収及び拡散等を防いで前記接合部34を基板30の表裏両面側から効率良く加熱することが可能となり、該接合部34の温度上昇を早めることができる。また、基板30の表面側のみから高出力のレーザー光を集中的に照射する場合に生じる該基板30や電子部品31等の焼損を防止することもできる。
【0025】
なお、前記第1レーザー光15と第2レーザー光18とは、互いに同波長及び同出力であっても良いが、第2レーザー光18の出力は、基板30の焼損を防止するため第1レーザー光15の出力より少し低くしても良い。
【0026】
また、前記第1照射ヘッド8及び第2照射ヘッド11には、放射温度計やサーモグラフィ等からなる非接触式の温度計19が取り付けられ、この温度計19で基板30や電子部品31あるいは接合部34等の温度を測定することができるようになっている。前記温度計19は、前記第1レーザー発振器13及び第2レーザー発振器16と共に制御装置20に接続され、該温度計19からの測定信号に基づいて、前記制御装置20で前記第1レーザー発振器13及び第2レーザー発振器16を制御することにより、前記第1照射ヘッド8及び第2照射ヘッド11からのレーザー光の強度や、その照射及び停止等の制御が行われるようになっている。
【0027】
更に、前記第1照射ヘッド8には、ハンダ供給方式のハンダ付けを行う場合に、前記接合部34に線状ハンダ21を供給するためのハンダ供給ノズル22が付設され、該ハンダ供給ノズル22は、ハンダ送りチューブ23を介してハンダ供給装置24に接続されている。このハンダ供給装置24及びハンダ供給ノズル22は、リフロー方式のハンダ付けを行う場合には使用されない。また、前記第1照射ヘッド8には、ハンダ付けする部分を可視光で照明するためのランプが付設されているが、その図示は省略されている。これに対し、前記第2照射ヘッド11には、前記ハンダ供給ノズル22及びランプは付設されていないが、前記第1照射ヘッド8と同様に、ハンダ供給ノズル22及びランプを付設することもでき、その場合には、基板30の裏面にある接合部に対し、ハンダ供給方式のハンダ付けを行うことができる。
【0028】
前記基板30は、リフロー方式のハンダ付けを行うための基板30であって、図2に示すように、該基板30の表面に形成された電極ランド32と、該基板30の表面に搭載された半導体パッケージ等の電子部品31の下面の端子33とからなる接合部34を有し、この接合部34をハンダ付けするものである。このため、前記電極ランド32と前記電子部品31の端子33との間には、ハンダ材料材料が予め介設されている。詳細には、前記電極ランド32の表面にクリーム状ハンダが塗布され、前記電子部品31の端子33にハンダボール35が接着されている。
【0029】
前記構成を有するハンダ付けレーザーハンダ付け装置1によって前記基板30をハンダ付けする場合には、図2図3図4及びに示すように、先ず、前記第2照射ヘッド11から第2レーザー光18が、前記基板30の裏面の前記電子部品31が搭載されている部分に向けて照射され、続いて、前記第1照射ヘッド8から第1レーザー光15が、前記基板30の表面の前記電子部品31と該電子部品31の回りの基板面に向けて照射される。このとき前記第2レーザー光18が前記基板30の裏面に照射されるエリアB(照射面積)は、前記第1レーザー光15が前記基板30の表面に照射されるエリアA(照射面積)より広く、このように前記第2レーザー光18の照射エリアBを広くしてエネルギー密度を小さくすることにより、表裏両面からレーザー光を照射することによる前記基板30や電子部品31等の焼損を防止することができる。
【0030】
この場合、前記第1レーザー光15と第2レーザー光18とは、必ずしも同心状に照射する必要はなく、第2レーザー光18を第1レーザー光15に対して偏心状態に照射しても良い。また、前記第1レーザー光15及び第2レーザー光18の照射形状は、電子部品31や接合部34等の形状に合わせて、円形や楕円形、リング形、矩形など、任意の形状に成形することができ、例えば、前記第1レーザー光15の照射形状を電子部品の形状に合わせて矩形とし、第2レーザー光18の照射形状を円形又は楕円形等とすることもできる。
【0031】
また、前記第2レーザー光18を照射したあとに前記第1レーザー光15を照射するタイミングは、前記第2レーザー光18の照射により前記基板30の温度が例えば150-160℃程度になるタイミングである。そのタイミングは、前記第2照射ヘッド11に取り付けられた温度計19で基板30の裏面温度を測定し、その測定温度が150-160℃になった時点で前記第1レーザー光15を照射するように設定しても良いが、前記第2レーザー光18の照射時間と基板30の温度上昇との関係を、予め実験やシミュレーション等を行うことによってデータとして入手し、そのデータに基づいて、前記第2レーザー光18を照射したあと、前記基板30の温度が150-160℃程度になる時間をおいて前記第1レーザー光15を照射するように設定することもできる。
【0032】
このように、前記基板30にその表裏両面側からレーザー光を照射することにより、該基板30と前記電子部品31との接合部34は、前記基板30及び電子部品31を介して間接的に加熱され、ハンダ付け温度に向けて昇温する。そして、前記基板30の温度が前記予熱温度になったところで、前記第2レーザー光18の照射が停止されて予備加熱は終了し、その後は、前記第1レーザー光15だけが基板30の表面に照射される。そして、前記接合部34の温度が前記ハンダ付け温度に達する辺りで、前記電極ランド32と前記電子部品31の端子33との間に介設されたハンダ材料が溶融して前記基板30に前記電子部品31がハンダ付けされ、それと同時に前記第1レーザー光15の照射は停止される。
【0033】
なお、前述した例では、前記第2レーザー光18を第1レーザー光15より先に照射しているが、第1レーザー光15と第2レーザー光18とを同時に照射することもでき、あるいは、第1レーザー光15を先に照射し、そのあと僅かな時間差をおいて第2レーザー光18を照射するようにしても良い。
また、前記第1レーザー光15の照射エリアAと前記第2レーザー光18の照射エリアBとは、同じ大きさにすることもでき、基板や電子部品の材質等に応じて、前記第2レーザー光18のエネルギー密度を第1レーザー光15のエネルギー密度と同等か又はそれ以上にすることも可能である。り、基板の表面に搭載された電子部品を第1レーザー光15の照射でハンダ付けし、基板の裏面に搭載された電子部品を第2レーザー光15の照射でハンダ付けすることも可能である。
【0034】
図2に示す例は、基板30に1つの電子部品31をハンダ付けする場合であるが、基板30に複数の電子部品31が搭載されている場合には、各電子部品について同様の処理を施すことにより、複数の電子部品31をハンダ付けすることができる。あるいは、図5に示すように、複数の電子部品31を含むエリアに前記第1レーザー光15及び第2レーザー光18を照射することにより、該複数の電子部品31を同時に基板30にハンダ付けすることもできる。
【0035】
一つの基板30のハンダ付けが終了すると、この基板30は前記基板支持部6から搬出され、新たな基板が搬入されて同様の処理が施される。
【0036】
次に、前記レーザーハンダ付け装置1により、接合部34に線状ハンダ21を供給してハンダ付けするハンダ供給方式のハンダ付けを行う場合について説明する。
この場合の前記接合部34は、図6に示すように、基板30に形成された環状の電極ランド32と、該基板30の裏面に搭載された電子部品31のピン状をした端子33とからなっていて、該端子33が前記電極ランド32のスルーホール32a内に基板30の裏面側から挿入されている。従って、前記電極ランド32は基板30の表裏両面に露出し、前記端子33の先端部分は基板30の表面側に露出し、該端子33の基端部分は基板30の裏面側に露出している。
【0037】
前記接合部34をハンダ付けする場合には、図6に示すように、前記第1照射ヘッド8から本加熱用の第1レーザー光15が、前記基板30の表面の前記接合部34を構成する電極ランド32及びピン状端子33に向けて照射されると同時に、前記第2照射ヘッド11から予備加熱用の第2レーザー光18が、前記基板30の裏面の前記接合部34及び該接合部34周辺の基板30及び電子部品31の一部を含む広い範囲に照射される。
【0038】
これにより、前記接合部34の温度は、基板30の表面側のみからレーザー光を照射する場合よりも速やかにハンダ付け温度まで上昇する。そして、前記接合部34の温度が前記予熱温度になった辺りで前記第2レーザー光18の照射は停止されると共に、前記第1照射ヘッド8に付設されたハンダ供給ノズル22から線状ハンダ21が、加熱された前記接合部34の電極ランド32又は端子33に供給されて溶融され、図7に示すように、溶融ハンダ21aがスルーホール32aの内部を通じて電極ランド32の裏面まで拡散して前記接合部34がはんだ付けされ、それと同時に前記第1レーザー光15の照射が停止されるか、あるいは、該第1レーザー光15の出力が徐々に減少されることにより前記接合部34が徐冷される。
【0039】
この場合、前記接合部34の温度上昇は非常に早いため、前記線状ハンダ21の供給は、前記第1レーザー光15の照射とほぼ同時か又は照射から僅かに遅れるタイミングで行うようにしても良い。
【0040】
なお、図示した実施形態のレーザーハンダ付け装置では、前記第1照射ヘッド8及び第2照射ヘッド11がそれぞれ個別のレーザー発振器13又は16に接続されているが、1つのレーザー発振器を使用し、この1つのレーザー発振器から出力される1本のレーザー光を分光器で2本に分光し、分光したレーザー光を前記第1照射ヘッド8と第2照射ヘッド11とに供給するように構成することもできる。この場合、前記第1照射ヘッド8に供給されるレーザー光と第2照射ヘッド11に供給されるレーザー光との出力配分は、例えば50:50あるいは60:40等に設定することができる。
【0041】
また、前記実施形態では、前記第1レーザー光15を主加熱用とし、前記第2レーザー光18を予備加熱用としているが、両方のレーザー光を主加熱用とすることもでき、このようにすることにより、基板30の表面に搭載された電子部品31を第1レーザー光15の照射でハンダ付けし、基板30の裏面に搭載された電子部品31を第2レーザー光18の照射でハンダ付けすることが可能になる。
【0042】
更に、図示した実施形態では、前記基板30を水平に支持し、該基板30の表裏面に該基板30の上下からレーザー光を照射するようにしているが、前記基板30を垂直に支持し、該基板30の表裏面に該基板の左右からレーザー光を照射するように構成することもできる。この場合、レーザーハンダ付け装置は、例えば図1のレーザーハンダ付け装置を90度回転させたような構造になり、垂直を向く基板の左右両側に第1照射ヘッドと第2照射ヘッドとが配設されることになる。
【符号の説明】
【0043】
1 ハンダ付け装置
8 第1照射ヘッド
11 第2照射ヘッド
15 第1レーザー光
18 第2レーザー光
19 温度計
21 線状ハンダ
22 ハンダ供給ノズル
30 基板
31 電子部品
32a スルーホール
33 端子
34 接合部
35 ハンダボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8