(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048133
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】紙容器及び紙容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 5/32 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B65D5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154014
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規行
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060BA23
3E060BB01
3E060CF06
3E060DA30
3E060EA03
(57)【要約】
【課題】ハンドリング性の向上を図ることが可能な紙容器および紙容器の製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る紙容器は、第1及び第2シート部材を備える容器本体を備え、第1シート部材は天面領域と天面側側面領域を有し、第2シート部材は底面領域と底面側側面領域を有し、箱型の状態において、天面領域および底面領域は離間しており、天面側側面領域と底面側側面領域によって複数の側面部が形成されており、複数の側面部は複数のつなぎ片付き側面部を有し、各つなぎ片付き側面部における最厚部において、第1つなぎ片のうち側面本体に対向する面と最厚部の外面の間の部分である所定部分は複数の層を含み、複数の層それぞれは、天面側側面領域又は底面側側面領域における複数の領域によって形成されており、複数の層のうちの少なくとも1組の隣接する層の間には、所定部分の厚さが複数の層の合計厚さより大きくなるように隙間が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の状態と平坦な状態との間で変形可能である容器本体を備え、
前記容器本体は、
紙を材料とする紙層を有する第1シート部材と、
紙を材料とする紙層を有する第2シート部材と、
を有しており、
前記平坦な状態で、前記第1シート部材は、
多角形状の天面領域と、
前記天面領域を囲む天面側側面領域と、
を有しており、
前記平坦な状態で、前記第2シート部材は、
前記天面領域と対応するとともに、多角形状の底面領域と、
前記底面領域を囲む底面側側面領域と、
を有しており、
前記平坦な状態において、前記第1シート部材及び前記第2シート部材は、前記天面領域と前記底面領域が重なるように配置されており、
前記平坦な状態において、前記第1シート部材及び前記第2シート部材は、前記天面側側面領域または前記底面側側面領域の周縁の全周に渡って接合されており、
前記箱型の状態において、
前記天面領域および前記底面領域は離間しており、
前記天面側側面領域と前記底面側側面領域とによって、前記天面領域および前記底面領域を接続する複数の側面部が形成されており、
前記複数の側面部は、複数のつなぎ片付き側面部を有し、
前記複数のつなぎ片付き側面部それぞれは、
側面本体と、
前記側面本体のうち前記天面領域と前記底面領域とを繋ぐ一対の縁部のうちの第1縁部に連続して設けられた第1つなぎ片と、
を有し、
前記第1つなぎ片は、前記側面本体側に折り曲げられており、
前記複数のつなぎ片付き側面部それぞれにおける最も厚い最厚部において、前記第1つなぎ片のうち前記側面本体に対向する面と、前記最厚部の外面との間の部分である所定部分は、複数の層を含み、
前記複数の層それぞれは、前記天面側側面領域における複数の領域または前記底面側側面領域における複数の領域によって形成されており、
前記複数の層のうちの少なくとも1組の隣接する2つの層の間には、前記所定部分の厚さが前記複数の層の合計厚さより大きくなるように、隙間が設けられている、
紙容器。
【請求項2】
前記所定部分は、前記第1つなぎ片によって構成されており、
前記所定部分の厚さが、4.00mm以上且つ7.00mm以下である、
請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記複数のつなぎ片付き側面部それぞれは、前記一対の縁部のうち第2縁部に連続して設けられた第2つなぎ片を有し、
前記第2つなぎ片は、前記第1つなぎ片上に重なるように前記側面本体に向けて折り曲げられており、
前記所定部分は、前記第1つなぎ片と前記第2つなぎ片とによって構成されている、
請求項1に記載の紙容器。
【請求項4】
前記所定部分の厚さが、4.00mm以上且つ15.0mm以下である、
請求項3に記載の紙容器。
【請求項5】
前記所定部分が有する前記複数の層の合計厚さをTs[mm]とし、前記所定部分の厚さをT[mm]とし、空隙率を式(1)で定義した場合、空隙率が10%以上且つ70%以下である、
請求項1に記載の紙容器。
空隙率={(T-Ts)/T}×100・・・(1)
【請求項6】
前記天面領域に形成された開口部に取り付けられたスパウトと、
前記スパウトを介して前記容器本体に取り付けられるポンプディスペンサと、
を備え、
前記ポンプディスペンサは、
鉛直方向に押し下げることによって前記容器本体の内部に収容される液体をくみ出すためのポンプ部と、
前記ポンプ部から下方に延びており、前記容器本体の内部に配置される支持部材と、
前記スパウトに取り付けられる取付部と、
を有し、
前記スパウトのうち鉛直方向において前記取付部と接する上端部と前記底面領域との間の距離をX[mm]とし、
前記ポンプディスペンサにおける前記スパウトの前記上端部との接触部と前記支持部材の下端部との間の距離をY[mm]とした場合、前記Xと前記Yが式(2)を満たしている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の紙容器。
(X-7)<Y≦(X+3)・・・(2)
【請求項7】
箱型の状態と平坦な状態との間で変形可能である容器本体を備える紙容器の製造方法であって、
前記平坦な状態の容器本体を製造する第1工程と、
前記平坦な状態の前記容器本体から中間箱型状態の容器本体に成型する第2工程と、
前記中間箱型状態の容器本体から最終箱型状態の容器本体を形成する第3工程と、
を備え、
前記容器本体は、
紙を材料とする紙層を有する第1シート部材と、
紙を材料とする紙層を有する第2シート部材と、
を備え、
前記平坦な状態において前記第1シート部材は、
多角形状の天面領域と、
前記天面領域を囲む天面側側面領域と、
を有し、
前記天面側側面領域は、
前記天面領域が有する複数の辺に設けられた複数の第1側面領域と、
前記天面領域が有する複数の頂点に対応して設けられた複数の第2側面領域であって、前記複数の第2側面領域それぞれは、前記複数の頂点のうち各第1側面領域に対応する頂点を共有する前記天面領域の2つの辺に設けられた2つの第1側面領域を繋いでいる前記複数の第2側面領域と、
を有し、
前記平坦な状態において前記第2シート部材は、
前記天面領域と対応するとともに、多角形状の底面領域と、
前記底面領域を囲む底面側側面領域と、
を有し、
前記底面側側面領域は、
前記底面領域が有する複数の辺に設けられており前記第1側面領域に対応する複数の第3側面領域と、
前記底面領域が有する複数の頂点に対応して設けられており前記複数の第2側面領域と対応する複数の第4側面領域であって、前記複数の第4側面領域それぞれは、前記複数の頂点のうち各第3側面領域に対応する頂点を共有する前記底面領域の2つの辺に設けられた2つの第3側面領域を繋いでいる前記複数の第4側面領域と、
を有し、
前記第1工程では、前記第1シート部材と前記第2シート部材を、前記天面領域、前記複数の第1側面領域および前記複数の第2側面領域が、対応する前記底面領域、前記複数の第3側面領域および前記複数の第4側面領域と重なるように配置した後、前記第1シート部材と前記第2シート部材を、前記天面側側面領域の周縁または前記底面側側面領域の周縁の全周に渡って接合することによって、前記平坦な状態の容器本体を製造し、
前記第2工程は、
前記天面領域および前記底面領域を離間させながら、前記天面領域の前記複数の辺および前記底面領域の前記複数の辺に沿って前記第1シート部材および前記第2シート部材を折り曲げることによって、離間した前記天面領域および前記底面領域を接続する複数の側面部を形成する工程と、
前記複数の側面部を形成する工程を実施しながら、前記複数の第2側面領域および前記複数の第2側面領域に対応する前記複数の第4側面領域を、折り目予定線に沿って2つ折りすることで複数のつなぎ片を形成する工程と、
を有し、
前記第3工程では、前記複数の側面部のうち複数の所定側面部に対して前記複数のつなぎ片のうち1つまたは2つのつなぎ片を折り曲げることによって形成される複数のつなぎ片付き側面部を有する最終箱型状態の容器本体を形成し、
前記複数のつなぎ片を形成する工程では、前記複数のつなぎ片付き側面部それぞれにおいて最も厚い最厚部のうち前記1つまたは2つのつなぎ片によって構成される所定部分の厚さが、前記所定部分が有する複数の層の合計厚さより大きくなるように、前記複数のつなぎ片を形成し、
前記複数のつなぎ片を形成する工程では、前記所定部分を構成する前記1つまたは2つのつなぎ片の内側に隙間を有するように前記複数のつなぎ片を形成する、
紙容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器及び紙容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙容器の一例として、特許文献1に記載の包装容器が知られている。特許文献1に記載の包装容器は、紙、樹脂を含むシート材を箱型に折り曲げて形成された容器本体を備える。当該容器本体は、上面と、下面と、互いに対向する一対の第1の側面と、互いに対向する一対の第2の側面とを備える。第1の側面及び第2の側面の両側端のそれぞれには、三角形状に折り曲げられた状態で折り曲げ片(つなぎ片)が連接されている。当該折り曲げ片は、第2の側面に向かって折り曲げられ、ヒートシール、ホットメルト接着剤等により第2の側面の表面に張り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような紙容器では、紙を含むシート材を用いて構成されているため、紙容器の使用者が側面を把持した際に歪み又は凹みが生じ易い。この結果、使用者が紙容器を持ち運びにくい可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ハンドリング性の向上を図ることが可能な紙容器および紙容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一側面に係る紙容器は、箱型の状態と平坦な状態との間で変形可能である容器本体を備え、上記容器本体は、紙を材料とする紙層を有する第1シート部材と、紙を材料とする紙層を有する第2シート部材と、を有しており、上記平坦な状態で、上記第1シート部材は、多角形状の天面領域と、上記天面領域を囲む天面側側面領域と、を有しており、上記平坦な状態で、上記第2シート部材は、上記天面領域と対応するとともに、多角形状の底面領域と、上記底面領域を囲む底面側側面領域と、を有しており、上記平坦な状態において、上記第1シート部材及び上記第2シート部材は、上記天面領域と上記底面領域が重なるように配置されており、上記平坦な状態において、上記第1シート部材及び上記第2シート部材は、上記天面側側面領域または上記底面側側面領域の周縁の全周に渡って接合されており、上記箱型の状態において、上記天面領域および上記底面領域は離間しており、上記天面側側面領域と上記底面側側面領域とによって、上記天面領域および上記底面領域を接続する複数の側面部が形成されており、上記複数の側面部は、複数のつなぎ片付き側面部を有し、上記複数のつなぎ片付き側面部それぞれは、側面本体と、上記側面本体のうち上記天面領域と上記底面領域とを繋ぐ一対の縁部のうちの第1縁部に連続して設けられた第1つなぎ片と、を有し、上記第1つなぎ片は、上記側面本体側に折り曲げられており、上記複数のつなぎ片付き側面部それぞれにおける最も厚い最厚部において、上記第1つなぎ片のうち上記側面本体に対向する面と、上記最厚部の外面との間の部分である所定部分は、複数の層を含み、上記複数の層それぞれは、上記天面側側面領域における複数の領域または上記底面側側面領域における複数の領域によって形成されており、上記複数の層のうちの少なくとも1組の隣接する2つの層の間には、上記所定部分の厚さが上記複数の層の合計厚さより大きくなるように、隙間が設けられている。
【0007】
上記紙容器では、箱型の状態において、複数のつなぎ片付き側面部を有する。つなぎ片付き側面部における最厚部に含まれる所定部分の厚さは、所定部分が有する複数の層の合計厚さより厚い。そのため、所定部分の厚さが、上記合計厚さと同じ場合より、複数のつなぎ片付き側面部は外側に膨らんでいる。その結果、上記複数のつなぎ片付き側面部を利用して紙容器の使用者が紙容器を持ち易いことから、紙容器のハンドリング性が向上する。
【0008】
[2]上記[1]に記載の紙容器において、上記所定部分は、上記第1つなぎ片によって構成されており、上記所定部分の厚さが、4.00mm以上且つ7.00mm以下でよい。この場合、容器本体の容量を確保しながら、紙容器のハンドリング性の向上を図れる。
【0009】
[3]上記[1]に記載の紙容器において、上記複数のつなぎ片付き側面部それぞれは、上記一対の縁部のうち第2縁部に連続して設けられた第2つなぎ片を有し、上記第2つなぎ片は、上記第1つなぎ片上に重なるように上記側面本体に向けて折り曲げられており、 上記所定部分は、上記第1つなぎ片と上記第2つなぎ片とによって構成されていてもよい。この場合、所定部分が、第1つなぎ片および第2つなぎ片を有するため、最厚部の厚さをより確保し易い。そのため、紙容器をよりハンドリングし易い。
【0010】
[4]上記[3]に記載の紙容器において、上記所定部分の厚さは、4.00mm以上且つ15.0mm以下でもよい。この場合、容器本体の容量を確保しながら、紙容器のハンドリング性の向上を図れる。
【0011】
[5]上記[1]~[4]のいずれかの紙容器において、上記所定部分が有する上記複数の層の合計厚さをTs[mm]とし、上記所定部分の厚さをT[mm]とし、空隙率を式(1)で定義した場合、空隙率が10%以上且つ70%以下でもよい。
空隙率={(T-Ts)/T}×100・・・(1)
この場合、紙容器のハンドリング性の向上を更に実現可能である。
【0012】
[6]上記[1]~[5]のいずれかの紙容器は、上記天面領域に形成された開口部に取り付けられたスパウトと、上記スパウトを介して上記容器本体に取り付けられるポンプディスペンサと、を備え、上記ポンプディスペンサは、鉛直方向に押し下げることによって上記容器本体の内部に収容される液体をくみ出すためのポンプ部と、上記ポンプ部から下方に延びており、上記容器本体の内部に配置される支持部材と、上記スパウトに取り付けられる取付部と、を有し、上記スパウトのうち鉛直方向において上記取付部と接する上端部と上記底面領域との間の距離をX[mm]とし、上記ポンプディスペンサにおける上記スパウトの上記上端部との接触部と上記支持部材の下端部との間の距離をY[mm]とした場合、上記Xと上記Yが式(2)を満たしてもよい。
(X-7)<Y≦(X+3)・・・(2)
この場合、ポンプディスペンサの横倒れを抑制しながら、紙容器の安定性の向上を図ることができる。
【0013】
[7] 本発明の他の側面に係る紙容器の製造方法は、箱型の状態と平坦な状態との間で変形可能である容器本体を備える紙容器の製造方法であって、上記平坦な状態の容器本体を製造する第1工程と、上記平坦な状態の上記容器本体から中間箱型状態の容器本体に成型する第2工程と、上記中間箱型状態の容器本体から最終箱型状態の容器本体を形成する第3工程と、を備え、上記容器本体は、紙を材料とする紙層を有する第1シート部材と、紙を材料とする紙層を有する第2シート部材と、を備え、上記平坦な状態において上記第1シート部材は、多角形状の天面領域と、上記天面領域を囲む天面側側面領域と、を有し、上記天面側側面領域は、上記天面領域が有する複数の辺に設けられた複数の第1側面領域と、上記天面領域が有する複数の頂点に対応して設けられた複数の第2側面領域であって、上記複数の第2側面領域それぞれは、上記複数の頂点のうち各第1側面領域に対応する頂点を共有する上記天面領域の2つの辺に設けられた2つの第1側面領域を繋いでいる上記複数の第2側面領域と、を有し、上記平坦な状態において上記第2シート部材は、上記天面領域と対応するとともに、多角形状の底面領域と、上記底面領域を囲む底面側側面領域と、を有し、上記底面側側面領域は、上記底面領域が有する複数の辺に設けられており上記第1側面領域に対応する複数の第3側面領域と、上記底面領域が有する複数の頂点に対応して設けられており上記複数の第2側面領域と対応する複数の第4側面領域であって、上記複数の第4側面領域それぞれは、上記複数の頂点のうち各第3側面領域に対応する頂点を共有する上記底面領域の2つの辺に設けられた2つの第3側面領域を繋いでいる上記複数の第4側面領域と、を有し、上記第1工程では、上記第1シート部材と上記第2シート部材を、上記天面領域、上記複数の第1側面領域および上記複数の第2側面領域が、対応する上記底面領域、上記複数の第3側面領域および上記複数の第4側面領域と重なるように配置した後、上記第1シート部材と上記第2シート部材を、上記天面側側面領域の周縁または上記底面側側面領域の周縁の全周に渡って接合することによって、上記平坦な状態の容器本体を製造し、上記第2工程は、上記天面領域および上記底面領域を離間させながら、上記天面領域の上記複数の辺および上記底面領域の上記複数の辺に沿って上記第1シート部材および上記第2シート部材を折り曲げることによって、離間した上記天面領域および上記底面領域を接続する複数の側面部を形成する工程と、上記複数の側面部を形成する工程を実施しながら、上記複数の第2側面領域および上記複数の第2側面領域に対応する上記複数の第4側面領域を、折り目予定線に沿って2つ折りすることで複数のつなぎ片を形成する工程と、を有し、上記第3工程では、上記複数の側面部のうち複数の所定側面部に対して上記複数のつなぎ片のうち1つまたは2つのつなぎ片を折り曲げることによって形成される複数のつなぎ片付き側面部を有する最終箱型状態の容器本体を形成し、上記複数のつなぎ片を形成する工程では、上記複数のつなぎ片付き側面部それぞれにおいて最も厚い最厚部のうち上記1つまたは2つのつなぎ片によって構成される所定部分の厚さが、上記所定部分が有する複数の層の合計厚さより大きくなるように、上記複数のつなぎ片を形成し、上記複数のつなぎ片を形成する工程では、上記所定部分を構成する上記1つまたは2つのつなぎ片の内側に隙間を有するように上記複数のつなぎ片を形成する。
【0014】
上記製造方法は、箱型の状態において、複数のつなぎ片付き側面部を有する紙容器を得ることができる。つなぎ片付き側面部における最厚部に含まれる上記所定部分の厚さは、所定部分が有する複数の層の合計厚さより厚い。そのため、所定部分の厚さが、上記合計厚さと同じ場合より、複数のつなぎ片付き側面部は外側に膨らんでいる。その結果、複数のつなぎ片付き側面部を利用して紙容器の使用者が紙容器を持ち易いことから、紙容器のハンドリング性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハンドリング性の向上を図ることが可能な紙容器および紙容器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る紙容器であって、箱型の状態の紙容器を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、平坦な状態における容器本体を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した容器本体が有する底面側シート部材を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、天面側シート部材および底面側シート部材の層構成の一例を説明するための図面である。
【
図5】
図5は、容器本体を平坦な状態から箱型の状態に変形させる一過程を示す模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、試作した紙容器を側面から見た場合の図面である。
【
図7】
図7は、
図6のVII―VII線で、
図6に示した紙容器をカットした場合の断面を示す図面である。
【
図8】
図8は、最厚部および所定部分を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る紙容器の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一符号を付する。重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る紙容器1を模式的に示す斜視図である。
図1に示した紙容器1は、内容物を収容する容器である。内容物の例は、液体または粉体若しくはその他の固体である。
図1に示されるように、紙容器1は容器本体10を備える。紙容器1は、スパウト20を備えてもよい。以下の説明では、紙容器1がスパウト20を備える形態を説明する。
【0019】
容器本体10は、全体として四角柱状(
図1の例では直方体形状)を呈する。容器本体10は、箱型の状態と平坦な状態との間で変形可能である。
図1では、箱型の容器本体10を示している。容器本体10は、箱型の状態において内容物を収容する収容空間(不図示)を形成する。
【0020】
容器本体10は、天面部(天面領域)11と、天面部11と対向する底面部(底面領域)12と、天面部11及び底面部12を互いに繋ぐ一対の第1側面部13及び一対の第2側面部14とを有している。一対の第1側面部13は、互いに対向している。一対の第2側面部14は、互いに対向している。
【0021】
以下では、一対の第1側面部13が対向する方向を第1方向D1と称し、一対の第2側面部14が対向する方向を第2方向D2と称し、天面部11及び底面部12が対向する方向を第3方向D3と称する。第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3のそれぞれは、互いに直交している。通常、紙容器1が静置された状態で、第3方向D3は鉛直方向である。
【0022】
紙容器1の第1方向D1の長さの例は、30mm以上且つ120mm以下であり、第2方向D2の長さの例は、30mm以上且つ120mm以下であり、第3方向D3の長さの例は、30mm以上且つ200mm以下である。
【0023】
天面部11には開口部11aが形成されている。開口部11aには、スパウト20が取り付けられている。スパウト20は、内容物の取り出し口として機能する。スパウト20は、開口部11aに繋がった筒部21と、筒部21のうち底面部12側の端部に設けられたフランジ部(
図1において不図示)を有する。筒部21はたとえば円筒状を呈する。スパウト20は、天面部11の内面に上記フランジ部が固定されることによって天面部11に取り付けられる。スパウト20には、たとえばポンプディスペンサ等の部材が取り付けられる。スパウト20にポンプディスペンサ等の部材を取り付けるため、筒部21の周面には、ねじ構造が形成されていてもよい。
【0024】
一対の第1側面部13それぞれは、側面本体(所定側面部)15と、2つのつなぎ片16を有する。したがって、第1側面部13は、つなぎ片付き側面部である。側面本体15は、第2側面部14と同様の構成を有する。2つのつなぎ片16は、側面本体15のうち天面部11と底面部12との間に延在する一対の縁部に設けられている。2つのつなぎ片16は、側面本体15に向けて折り畳まれている。
図1に示した例では、上記一対の縁部として、縁部15aと縁部15bを示している。
【0025】
図2および
図3を利用して容器本体10を更に説明する。
図2では、平坦な状態の容器本体10を示している。
図2および
図3に示したように、容器本体10は、天面側シート部材(第1シート部材)100Aと、底面側シート部材(第2シート部材)100Bとを有している。
図2は、容器本体10を天面側シート部材100A側からみた図面である。
図3は、底面側シート部材100Bを示すため、
図2に示した容器本体10において天面側シート部材100Aの図示を省略した図面である。
【0026】
天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bは、箱型の状態において内容物を収容する収容空間が形成されるように接合されている。第1実施形態では、底面側シート部材100Bの周縁部は、全周に渡って天面側シート部材100Aに対して接合されている。したがって、紙容器1は、天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bが接合された接合部17(
図2において、2つの二点鎖線17a,17bの間の部分)を有する。第1実施形態では、天面側シート部材100Aにおける第1方向D1の長さは、底面側シート部材100Bにおける第1方向D1の長さと略一致している。天面側シート部材100Aにおける第2方向D2の長さは、底面側シート部材100Bにおける第2方向D2の長さよりも長い。
【0027】
図2を利用して天面側シート部材100Aを説明する。
【0028】
天面側シート部材100Aは、全体として長方形状を呈する。天面側シート部材100Aの第1方向D1の長さの例は80mm以上且つ800mm以下である。天面側シート部材100Aの第2方向D2の長さの例は80mm以上且つ1000mm以下である。天面側シート部材100Aの厚さの例は、200μm以上且つ2000μm以下である。天面側シート部材100Aの厚さは、300μm以上且つ1500μm以下でもよい。
【0029】
天面側シート部材100Aは、略中央に多角形状の天面領域(天面部)110と、天面領域110の周囲を囲む天面側側面領域120Aを有している。
【0030】
天面領域110は、箱型の状態において容器本体10の天面部11を形成する。第1実施形態では、天面領域110は正方形状である。すなわち、天面領域110は、4つの頂点111と、当該頂点111同士を繋ぐ4つの辺112とを有している。
【0031】
天面領域110には開口部11aが形成されている。開口部11aは、箱型の状態における容器本体10の収容空間の内部及び収容空間の外部を互いに連通する。開口部11aにはスパウト20が取り付けられている。
【0032】
天面側側面領域120Aは、天面領域110が有する各辺112に対して設けられた4つの第1領域(第1側面領域)を有する。具体的には、天面側側面領域120Aは、第2方向D2に延びる2つの辺112に対応して設けられた2つの第1領域121aと、第1方向D1に延びる2つの辺112に対応して設けられた2つの第1領域121bとを有する。2つの第1領域121aを区別して説明する場合、2つの第1領域121aを第1領域121a1及び第1領域121a2と称す場合もある。同様に、2つの第1領域121bを区別して説明する場合、2つの第1領域121bを第1領域121b1及び第1領域121b2と称す場合もある。
【0033】
天面側側面領域120Aは、天面領域110の各頂点111に対応して設けられた4つの第2領域(第2側面領域)122を有する。4つの第2領域122は、つなぎ片16を形成するための領域である。4つの第2領域122を区別して説明する場合、第1領域121a1及び第1領域121b1を繋ぐ第2領域122を、第2領域122aと称し、第1領域121a1及び第1領域121b2を繋ぐ第2領域122を、第2領域122bと称する場合もある。第1領域121a2及び第1領域121b2を繋ぐ第2領域122を、第2領域122cと称し、第1領域121a2及び第1領域121b1を繋ぐ第2領域124を、第2領域122dと称する場合もある。各第2領域122には、第2領域122を折り畳むための罫線(折り目予定線)123aが設けられている。
【0034】
天面側シート部材100Aでは、天面領域110の各辺112、第1領域121aとそれに隣接する第2領域122とが共有する辺、及び、第1領域121bとそれに隣接する第2領域122とが共有する辺にも、罫線123aが設けられていてもよい。
【0035】
図3を利用して底面側シート部材100Bを説明する。
【0036】
底面側シート部材100Bの第1方向D1の長さの例は80mm以上且つ800mm以下である。底面側シート部材100Bの第2方向D2の長さの例は80mm以上且つ800mm以下である。底面側シート部材100Bの厚さの例は、200μm以上且つ2000μm以下である。底面側シート部材100Bの厚さは、300μm以上且つ1500μm以下でもよい。
【0037】
底面側シート部材100Bは、天面領域110に対応する底面領域130を有する。第1実施形態では、底面側シート部材100Bは、略中央に多角形状の底面領域130を有している。底面領域130は、箱型の状態において容器本体10の底面部12を形成する。底面領域130の形状は、天面領域110の形状と略同形状である。第1実施形態では、底面領域130は正方形状である。すなわち、底面領域130は、4つの頂点131と、当該頂点131同士を繋ぐ辺132とを有している。第1実施形態では、底面領域130の大きさは、天面領域110の大きさと略同じである。したがって、第1実施形態では、底面領域130は、天面領域110と略合同である。底面領域130は、天面領域110と形状が同じである一方、大きさは異なっていてもよい。すなわち、底面領域130は、天面領域110と相似であってもよい。
【0038】
底面側シート部材100Bは、天面側側面領域120Aとともに、箱型の状態の容器本体10が有する第1側面部13および第2側面部14を形成する底面側側面領域120Bを有する。
【0039】
底面側側面領域120Bは、天面側側面領域120Aが有する2つの第1領域121a及び2つの第1領域121bに対応する2つの第3領域(第3側面領域)124a及び2つの第3領域(第3側面領域)124bを有する。2つの第3領域124aを区別して説明する場合、2つの第3領域124aを第3領域124a1及び第3領域124a2と称す場合もある。同様に、2つの第3領域124bを区別して説明する場合、2つの第3領域124bを第3領域124b1及び第3領域124b2と称す場合もある。第3領域124a1、第3領域124a2、第3領域124b1及び第3領域124b2は、天面側シート部材100Aが有する第1領域121a1、第1領域121a2、第1領域121b1及び第1領域121b2に対応する。
【0040】
底面領域130に対する2つの第3領域124a(第3領域124a1,124a2)及び2つの第3領域124b(第3領域124b1,124b2)の配置関係は、天面領域110に対する2つの第1領域121a(第1領域121a1,121a2)及び2つの第1領域121b(第1領域121b1,121b2)の場合と同様である。
【0041】
底面側側面領域120Bは、天面側側面領域120Aが有する4つの第2領域122に対応する4つの第4領域(第4側面領域)125を有する。4つの第4領域125の底面領域130、2つの第3領域124a(第3領域124a1,124a2)及び2つの第3領域124b(第3領域124b1,124b2)に対する配置関係は、4つの第2領域122の天面領域110、2つの第1領域121a(第1領域121a1,121a2)及び2つの第1領域121b(第1領域121b1,121b2)に対する配置関係と同じである。
【0042】
底面側シート部材100Bにおいても、第3領域124a1及び第3領域124b1を繋ぐ第4領域125を、第4領域125aと称し、第3領域124a1及び第3領域124b2を繋ぐ第4領域125を、第4領域125bと称する場合もある。第3領域124a2及び第3領域124b2を繋ぐ第4領域125を、第4領域125cと称し、第3領域124a2及び第3領域124b1を繋ぐ第4領域125を、第4領域125dと称する場合もある。
【0043】
4つの第4領域125は、つなぎ片16を形成するための領域である。各第4領域125には、第4領域125を折り畳むための罫線(折り目予定線)123bが設けられている。
【0044】
底面側シート部材100Bでは、底面領域130の各辺132、第3領域124aとそれに隣接する第4領域125とが共有する辺、及び、第3領域124bとそれに隣接する第4領域125とが共有する辺にも、罫線123bが設けられていてもよい。底面側シート部材100Bには、
図2に示した接合部17の天面領域110側の縁部(二点鎖線17b)に対応するように、罫線123cが設けられてもよい。この場合、底面側シート部材100Bの周縁と、罫線123cとの間の領域が接合部17となる領域である。
【0045】
図4を利用して、天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bの層構成を説明する。第1実施形態は、天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bは、同じ層構成を有する。そのため、天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bをシート部材100と称し、シート部材100の層構成を説明する。
図4は、シート部材100の層構成を説明するための図面である。
【0046】
図4に示したように、シート部材100は、紙層101を有する。紙層101は紙によって構成されている。紙層101の坪量は、例えば、120g/m
2以上且つ900g/m
2であってもよい。紙層101の密度は、例えば、0.6g/cm
3以上且つ1.1g/cm
3以下であってもよい。紙層101に使用される紙の例は、ノーコート紙、片面コート紙、両面コート紙等の板紙である。紙層101は、例えば、耐水性、耐油性を有した紙であって、紙パックに用いられるカートン用紙、カップ用紙(紙カップ用の紙)等でもよい。
【0047】
シート部材100は、少なくとも1つの樹脂層を更に備えてもよい。シート部材100が上記少なくとも1つの樹脂層を備える場合、シート部材100の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Poly Ethylene Terephthalate)、低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:Linear Low Density Polyethylene)等を含む。
【0048】
第1実施形態では、
図4に示したように、シート部材100が、紙層101の他、第1LDPE層102と、第2LDPE層103と、PET層104と、LLDPE層105とを有する場合を説明する。第1LDPE層102および第2LDPE層103の材料はLDPEである。PET層104の材料はPETである。LLDPE層105の材料はLLDPEである。
【0049】
紙層101、第1LDPE層102と、第2LDPE層103と、PET層104と、LLDPE層105は、
図4に示したように、LLDPE層105、PET層104層、第2LDPE層103、紙層101および第1LDPE層102の順に積層されている。第1実施形態では、第1LDPE層102の表面(
図4において第1LDPE層102の上面)がシート部材100(天面側シート部材100Aまたは底面側シート部材100B)の表面である。第1実施形態では、LLDPE層105の裏面(
図4においてLLDPE層105の下面)がシート部材100(天面側シート部材100Aまたは底面側シート部材100B)の裏面である。LLDPE層105は、シーラント層として機能し得る。
【0050】
紙容器1の製造方法の一例を説明する。ここでは、
図1に示したように、箱型の状態の紙容器1(容器本体10)を製造する場合を説明する。この場合、紙容器1の製造方法は、
図2に示した平坦な状態の容器本体10を製造する工程(以下、「第1工程」と称す)と、
平坦な状態の容器本体10を
図5に示した中間箱型状態の容器本体10に成型する工程(以下、「第2工程」と称す)と、
図5に示した中間箱型状態の容器本体10から
図1に示した最終箱型状態に変形する工程(以下、「第3工程」)と、
を有する。
以下、各工程の一例を説明する。
図5は、容器本体10を平坦な状態から箱型の状態に成型させる一過程を模式的に示す斜視図である。
【0051】
[第1工程]
第1工程では、天面側シート部材100Aと底面側シート部材100Bとを、それらが有する対応する領域が重なるように配置する。具体的には、天面領域110と、それに対応する底面領域130が互いに重なり、第1領域121a1,121a2及びそれらに対応する第3領域124a1,124a2が互いに重なり、第1領域121b1,121b2及びそれらに対応する第3領域124b1,124b2が互いに重なるように、天面側シート部材100Aと底面側シート部材100Bとが配置されている。この状態では、天面側シート部材100Aに形成された罫線123aと、底面側シート部材100Bに形成されており、天面側シート部材100Aに形成された罫線123aと対応する罫線123bも略重なっている。
【0052】
図2に示した形態では、天面側シート部材100Aの方が底面側シート部材100Bより第2方向D2の長さが長いことから、第2領域122と第4領域125とは部分的に重なっており、第1領域121b1及び第1領域121b2とそれらに対応する第3領域124b1及び第3領域124b2も部分的に重なっている。
【0053】
天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bを重ねる場合には、それらの裏面同士を対向させる。
【0054】
上記のように配置された天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bを、底面側シート部材100Bの周縁において接合する。これによって、接合部17が形成されている。天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bは、例えば、ヒートシールによって接合されていてもよいし、接着剤を用いて接合されてもよい。
【0055】
[第2工程]
第2工程では、
図2に示した平坦な状態から
図5に示した中間箱型状態に成型する。
図2に示した平坦な状態において、天面側シート部材100Aの開口部11aにはスパウト20が取り付けられているとする。
【0056】
容器本体10を、
図2に示した平坦な状態から箱型の状態に成型させる場合、スパウト20から容器本体10内に空気を吹き込みながら、天面領域110の各辺112及び底面領域130の各辺132を部材表面に対して山折りにすると共に、4つの第2領域122及び4つの第4領域125を折り畳むことによって、中間箱型に成型する。
【0057】
図5に示した中間箱型状態において容器本体10は、天面部11と、底面部12と、一対の側面本体15と、一対の第2側面部14と、4つのつなぎ片16を有する。平坦な状態から中間箱型状態への成型を具体的に説明する。一対の側面本体15は、中間箱型状態において容器本体10の側面部を構成している。
【0058】
スパウト20から容器本体10内に空気を吹き込みながら、天面領域110の各辺112および底面領域130の各辺132を部材表面に対して山折りし、天面領域110と底面領域130とを離間させる。これによって、天面領域110によって天面部11が形成され、底面領域130によって底面部12が形成されるとともに、天面部11(天面領域110)と底面部12(底面領域130)との間に液体を収容するための収容空間が形成される。
【0059】
上記のように天面領域110の各辺112及び底面領域130の各辺132を部材表面に対して山折りすることによって、天面側シート部材100Aが有する2つの第1領域121a(第1領域121a1,121a2)及び2つの第1領域121b(第1領域121b1,121b2)並びに底面側シート部材100Bが有する2つの第3領域124a(第3領域124a1,124a2)及び2つの第3領域124b(第3領域124b1,124b2)が内側(収容空間側)に折れ曲がる。
【0060】
この際、接合部17を、接合部17のうち天面領域110(底面領域130)側の縁部に沿って折り曲げる。
図5の形態では、接合部17を底面部12側に折り曲げている。接合部17を底面部12側に折り曲げていることから、第1領域121a1、第1領域121a2、第1領域121b1、第1領域121b2は、対応する第3領域124a1、第3領域124a2、第3領域124b1、第3領域124b2の一部に被さっている。
【0061】
このように平坦な容器本体10を変形する場合、第1領域121a1及びそれに対応する第3領域124a1によって一対の第1側面部13のうちの一方の第1側面部13が有する側面本体15が形成され、第1領域121a2及びそれに対応する第3領域124a2によって一対の第1側面部13のうちの他方の第1側面部13が有する側面本体15が形成される。
同様に、第1領域121b1及びそれに対応する第3領域124b1によって一対の第2側面部14のうちの一方の第2側面部14が形成され、第1領域121b2及びそれに対応する第3領域124b2によって一対の第2側面部14のうちの他方の第2側面部14が形成される。
【0062】
上記のように、天面領域110の各辺112及び底面領域130の各辺132を部材表面に対して山折りしながら、天面側シート部材100Aの4つの第2領域122を罫線123aに沿って部材表面に対して山折りするとともに、底面側シート部材100Bの4つの第4領域125を罫線123bに沿って部材表面に対して山折りする。これによって、
図5に示したように、4つのつなぎ片16が形成される。つなぎ片16は、たとえばフィン状である。一例において、つなぎ片16はパネルである。よって、つなぎ片16は、フィン状パネルでもある。このようにつなぎ片16が所定の形状を有するようにつなぎ片16を形成するため、第2領域122(対応する第4領域125)を山折りした状態でそれらをプレスする。この際、後述するように、つなぎ片16内に一定の隙間が生じるように第2領域122(対応する第4領域125)をプレスする。
【0063】
4つのつなぎ片16を区別して説明する場合、第2領域122a(対応する第4領域125a)を山折りすることによって形成されたつなぎ片16をつなぎ片(第2つなぎ片)16Aと称す。同様にして、第2領域122b(対応する第4領域125b)によって形成されたつなぎ片16をつなぎ片(第1つなぎ片)16Bと称し、第2領域122c(対応する第4領域125c)によって形成されたつなぎ片16をつなぎ片16Cと称し、第2領域122d(対応する第4領域125d)によって形成されたつなぎ片16をつなぎ片16Dと称す。
【0064】
図5に示したように、つなぎ片16A,16B、16C,16Dは、中間箱型状態の容器本体10において、天面部11と底面部12の対応する4つの角部を繋ぐ4つの縁部に連続して設けられている。上記4つの縁部のうちの2つの縁部は、一対の側面本体15の一方の側面本体15が有する一対の縁部であり、上記4つの縁部のうちの残りの2つの縁部は、一対の側面本体15の他方の側面本体15の一対の縁部である。
図5において図示されている縁部(第1縁部)15aおよび縁部(第2縁部)15bに着目すれば、つなぎ片16Aは、縁部15aに連続して設けられており、つなぎ片16Bは、縁部15bに連続して設けられている。
【0065】
[第3工程]
続いて、上記中間箱型状態から、
図1に示した箱型(最終の箱型)の状態に成型する方法を説明する。
【0066】
4つのつなぎ片16のうち、隣接するつなぎ片16Aおよびつなぎ片16B(1組の隣接する2つのつなぎ片)を、それらの間に位置する側面本体15に向けて折り曲げる。具体的には、縁部15bに沿ってつなぎ片16Bを側面本体15に向けて折り曲げ、且つ、縁部15aに沿ってつなぎ片16Aを側面本体15に向けて折り曲げる。4つのつなぎ片16のうち、隣接するつなぎ片16Cおよびつなぎ片16Dについても同様に、それらの間に位置する側面本体15に向けて折り曲げる。
【0067】
その後、つなぎ片16Aおよびつなぎ片16Bを接合する。この接合は、ヒートシールによって実施されてもよいし、接着剤を利用して実施されてもよい。同様に、つなぎ片16Cおよびつなぎ片16Dを接合する。これによって、つなぎ片16Aおよびつなぎ片16Bが側面本体15に対して固定されるとともに、つなぎ片16Cおよびつなぎ片16Dが側面本体15に対して固定される。その結果、一対の第1側面部13が得られる。
【0068】
以上の工程を経て、容器本体10を平坦な状態から
図1に示した箱型の状態に変形させることができ、その結果、
図1に示した箱状の紙容器1が得られる。
【0069】
紙容器1において、一対の第1側面部13それぞれは、側面本体15に2つのつなぎ片16が接合されることよって構成されている。そのため、第1側面部13において、側面本体15に2つのつなぎ片16,16が重なっている部分では、第1側面部13がつなぎ片16,16を有しない場合より、第1側面部13の厚さは厚い。第1側面部13において最も厚さの厚い部分を最厚部30と称す。
【0070】
上記平坦な容器本体10は、天面側シート部材100Aと底面側シート部材100Bとを接合している接合部17を有する。上記平坦な容器本体10において接合部17は、天面部11(または底面部12)から離れており且つ天面部11(または底面部12)を囲むように形成されている。第1実施形態では、底面側シート部材100Bの周縁の全周にわたって接合部17が形成されている。そのため、
図5に示した中間箱型状態における一対の第2側面部14、一対の側面本体15、4つのつなぎ片16は接合部17を有する。更に、一対の第2側面部14、一対の側面本体15、4つのつなぎ片16における接合部17の位置は、第3方向D3において、天面部11(または 底面部12)から同じ距離である。そのため、2つのつなぎ片16がそれらの間に位置する側面本体15に向けて折り畳まれた場合、側面本体15および2つのつなぎ片16それぞれが有する接合部17は重なる。
【0071】
このように、側面本体15および2つのつなぎ片16それぞれが有する接合部17が重なっている部分は、厚さが厚くなるので、最厚部30の一例は、上記側面本体15および2つのつなぎ片16が重なっており、更に、上記側面本体15および2つのつなぎ片16それぞれが有する接合部17が重なっている部分である。接合部17では、天面側シート部材100Aと底面側シート部材100Bとが重なっているので、接合部17は2つの層を有する。更に、第1実施形態において、接合部17は、底面部12側に折り曲げられているので、側面本体15および2つのつなぎ片16それぞれが有する接合部17は、底面側側面領域120Bが有する複数の領域(第3領域124a,124b等)の一部と重なっている。更に、つなぎ片16は、第2領域122(対応する第4領域125)が2つ折りされた部分であるため、第2領域122(対応する第4領域125)の罫線123a(対応する罫線123b)によって分けられる2つの領域が重なっている。したがって、最厚部30は、複数の層を含む多層構造を有する。
【0072】
最厚部30を
図6,
図7および
図8を利用して更に説明する。
図6は、試作した紙容器1(容器本体10)の一例を示す図面である。
図6では、試作した紙容器1(容器本体10)を、2つのつなぎ片16(つなぎ片16Aおよびつなぎ片16B)を有する第1側面部13からみた状態を示している。
図7は、
図6に示した容器本体10のVII―VII線に沿った断面構成を示している。具体的には、
図6に示した容器本体を、VII―VII線に沿った断面構成がみえるように一部切断した場合の図面である。
図8は、最厚部30の一例の構成を模式的に示す図面である。
【0073】
図7に示したように、第1側面部13において、2つのつなぎ片16が重なっている領域で第1側面部13の厚さが最も厚いことが理解される。更に最厚部30が多層構造であることが
図7からも理解される。
【0074】
図8を用いて最厚部30の一例の構成を説明する。
図7に示したように、最厚部30を構成する各層は実際には一部曲がっているが、
図8では、最厚部30の特徴をより明示するため、各層を平坦な層として図示している。
図8では、側面本体15に対して側面本体15側から、つなぎ片16Bおよびつなぎ片16Aが順に重なっている場合を示している。
図8を用いて、2つのつなぎ片16としてつなぎ片16A,16Bを有する第1側面部13における最厚部30の場合を説明するが、つなぎ片16C,16Dを有する第1側面部13における最厚部30の場合も同様である。
【0075】
最厚部30は、
図8に示したように、第1層301、第2層302、第3層303、第4層304、第5層305、第6層306、第7層307、第8層308、第9層309、第10層310、第11層311、第12層312、第13層313、第14層314および第15層315を有する。
【0076】
第1層301、第2層302および第3層303は、側面本体15の一部である。
第1層301は、底面側側面領域120Bが有する第3領域124a1(
図3参照)によって形成されている。
第2層302および第3層303は、側面本体15に含まれる接合部17を構成している。よって、第2層302および第3層303は接合されている。
第2層302は、第3領域124a1によって形成されている。
第3層303は、天面側側面領域120Aが有する第1領域121a1(
図2参照)によって形成されている。
【0077】
第4層304、第5層305、第6層306、第7層307、第8層308および第9層309は、つなぎ片16Bの一部である。
【0078】
第4層304および第5層305は、つなぎ片16Bに含まれる接合部17を構成している。よって、第4層304および第5層305は接合されている。
第4層304は、天面側側面領域120Aが有する第2領域122b(
図2参照)によって形成されている。第4層304は、罫線123aに沿って折り曲げられた第2領域122bのうち罫線123aによって分けられた2つの領域の一方の領域に相当する。
第5層305は、底面側側面領域120Bが有する第4領域125b(
図3参照)によって形成されている。
【0079】
第6層306は、第4領域125bによって形成されている。第6層306は、罫線123bに沿って折り曲げられた第4領域125bのうち罫線123bによって分けられた2つの領域の一方の領域に相当する。
【0080】
第7層307は、第4領域125bによって形成されている。第7層307は、罫線123bに沿って2つ折りされた第4領域125bのうち罫線123bによって分けられた2つの領域の他方の領域に相当する(一方は第6層306に相当)。
【0081】
第8層308および第9層309は、つなぎ片16Bに含まれる接合部17を構成している。よって、第8層308および第9層309は、接合されている。
第8層308は、底面側側面領域120Bが有する第4領域125bによって形成されている。
第9層309は、天面側側面領域120Aが有する第2領域122bによって形成されている。第9層309は、罫線123aに沿って折り曲げられた第2領域122bのうち罫線123aによって分けられた2つの領域のうち他方の領域に相当する(一方は第4層304に相当)。
【0082】
第10層310、第11層311、第12層312、第13層313、第14層314および第15層315は、つなぎ片16Aの一部である。
【0083】
第10層310および第11層311は、つなぎ片16Aに含まれる接合部17を構成している。よって、第10層310および第11層311は接合されている。
第10層310は、天面側側面領域120Aが有する第2領域122a(
図2参照)によって形成されている。第10層310は、罫線123aに沿って折り曲げられた第2領域122aのうち罫線123aによって分けられた2つの領域の一方の領域に相当する。
第11層311は、底面側側面領域120Bが有する第4領域125a(
図3参照)によって形成されている。
【0084】
第12層312は、第4領域125aによって形成されている。第12層312は、罫線123bに沿って折り曲げられた第4領域125aのうち罫線123bによって分けられた2つの領域のうち一方の領域に相当する。
【0085】
第13層313は、第4領域125aによって形成されている。第13層313は、罫線123bに沿って折り曲げられた第4領域125aのうち罫線123bによって分けられた2つの領域のうち他方の領域に相当する(一方は第12層312に相当)。
【0086】
第14層314および第15層315は、つなぎ片16Aに含まれる接合部17を構成している。よって、第14層314および第15層315は、接合されている。
第14層314は、底面側側面領域120Bが有する第4領域125aによって形成されている。
第15層315は、天面側側面領域120Aが有する第2領域122aによって形成されている。第15層315は、罫線123aに沿って折り曲げられた第2領域122aのうち罫線123aによって分けられた2つの領域のうち他方の領域に相当する(一方は第10層310に相当)。
【0087】
最厚部30において、最厚部30の外面と、2つのつなぎ片16,16のうち側面本体15に近いつなぎ片16(
図8ではつなぎ片16B)の側面本体15に対向する面との間の部分を、所定部分31と称す。
図8に示した形態では、所定部分31は、2つのつなぎ片16,16によって構成されている。具体的には、所定部分31は、つなぎ片16A(第2つなぎ片)と、つなぎ片16B(第1つなぎ片)とによって構成されている。この場合、最厚部30の外面は、第15層315の外面であり、つなぎ片16Bの側面本体15に対向する面は、第4層304における第3層303側の面である。所定部分31は、所定部分31が有する複数の層のうち少なくとも1つの隣接する層の間に隙間gを有するように構成されている。
図8に示した形態では、つなぎ片16Bに含まれる第5層305、第6層306、第7層307および第8層308のうち互いに隣接する層の間それぞれに隙間gが設けられている。同様に、つなぎ片16Aに含まれる第11層311、第12層312、第13層313および第14層314のうち互いに隣接する層の間それぞれに隙間gが設けられている。
【0088】
このような隙間gは、たとえば、次のようにして確保できる。すなわち、つなぎ片16Aを形成する工程において、つなぎ片16Aの形状を所定の形状に成型するために、折り曲げられた第2領域122a(対応する第4領域125a)をプレスする際、2つ折りされた第2領域122a(対応する第4領域125a)において最厚部30に含まれる領域内に隙間gを有するように(換言すれば、膨らみを有するように)、上記第2領域122a(対応する第4領域125a)をプレスすることによって確保される。つなぎ片16Bを形成する場合も同様である。
【0089】
所定部分31は、その内側に上記のように隙間gを有する。そのため、所定部分31の厚さTは、所定部分31を構成する複数の層の合計厚さより大きい。したがって、厚さTが、所定部分31を構成する複数の層の合計厚さと同じである場合より、第1側面部13では、上記所定部分31を含む最厚部30の領域で外側に張り出している。その結果、紙容器1(容器本体10)を使用者が使用する際、最厚部30の箇所で紙容器1を把持し易く、紙容器1のハンドリング性の向上が図れている。
図8に示した例では、厚さTは、2つのつなぎ片16,16が重なっている部分における最大厚さに相当する。
【0090】
所定部分31は、上記のように複数の層を有することから、剛性の向上も図れている。そのため、紙容器1において、最厚部30を把持し易い。この点でも、紙容器1をハンドリングし易い。
【0091】
第1実施形態では、対向する一対の第1側面部13それぞれが上記所定部分31を有するため、使用者は、一対の第1側面部13を利用して紙容器1を持ちやすい。その結果、紙容器1のハンドリング性の向上が更に図れている。
【0092】
所定部分31の厚さTは、4.00mm以上且つ15.0mm以下でもよい。この場合、収容空間の容量を確保しながら第1側面部13に一定の膨らみを実現できる。厚さTは、5.00mm以上10.0mm以下でもよい。これによって、容量を確保しながら、ハンドリング性の向上を更に実現できる。
【0093】
所定部分31が有する複数の層の合計厚さをTS[mm]とし、空隙率を、式(1)で定義した場合、空隙率は、たとえば10%以上且つ70%以下でよい。空隙率は、12%以上且つ66%以下でもよい。この場合、ハンドリング性の向上を更に実現できる。
空隙率(%)={(T-TS)/T}×100・・・(1)
【0094】
一実施形態において、紙容器1は、上記所定部分31の厚さTの範囲および空隙率の範囲の両方を満たしてよい。たとえば、所定部分31の厚さTは、4.00mm以上且つ15.0mm以下であり、且つ、上記空隙率は、10%以上且つ70%以下でもよい。この場合も、容量を確保しながら、ハンドリング性の向上を実現できる。
【0095】
第3方向D3における天面部11と底面部12の間の距離に対して、最厚部30は、上記天面部11から30%以上且つ70%以下の範囲に形成されていてもよい。このような範囲では、最厚部30が第1側面部13の中央近傍に位置するので、使用者による紙容器1のハンドリング性の向上を更に図れる。
【0096】
上記最厚部30の位置は、天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの大きさによって調整され得る。上記最厚部30の位置は、接合部17の形成位置によっても調整される。更に、2つのつなぎ片16の重なり状態などは、たとえば、
図1の第2方向D2(側面本体15が有する一対の縁部のうち一方から他方に向かう方向)におけるつなぎ片16の長さによって調整され得る。つなぎ片16の上記長さは、
図2及び
図3の例では、つなぎ片16となるべき第2領域122および第4領域125の第2方向D2の長さで調整され得る。
【0097】
図8に示した最厚部30では、第3層303と第4層304との間にも隙間gが生じている。これは、側面本体15に含まれる接合部17を第1層301に対して接合していないこと、および、つなぎ片16Bを側面本体15に接合していないためである。具体的には、つなぎ片16Bに含まれる第4層304および第5層305で構成される接合部17が第3層303にヒートシールなどによって接合されていないため、第3層303と第4層304との間にも隙間gが生じている。すなわち、側面本体15に向けて折り畳まれた2つのつなぎ片16を接合することによって、側面本体15に対して2つのつなぎ片16を固定する方法は、最厚部30の厚さをより厚くする観点から有効である。
図8に示した最厚部30では、第1層301と第2層302との間にも隙間gが生じている。これは、側面本体15に含まれる接合部17を、ヒートシールなどによって第1層301に対して接合していないためである。
【0098】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る紙容器1Aの分解斜視図である。紙容器1Aは、第1実施形態で説明した容器本体10と、スパウト20と、ポンプディスペンサ40とを備える。容器本体10は、第1実施形態で説明した容器本体10と同じである。すなわち、紙容器1Aは、第1実施形態で説明した容器本体10にスパウト20およびポンプディスペンサ40を取り付けた紙容器である。
【0099】
第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3を使用して説明する場合もある。第2実施形態において、第3方向D3は鉛直方向である。
【0100】
第2実施形態において、紙容器1A内に収容される内容物は液体である。上記液体は、例えば水、化粧水等の低い粘性を有する液体に限らず、例えばシャンプー、リンス等の高い粘性を有する液体でもよい。第2実施形態では、「液体」は、ポンプディスペンサ40によって吐出できる程度の粘性を有するものであればよい。
【0101】
容器本体10は、第1実施形態で説明した容器本体10と同じであることから、容器本体10の説明を省略する。スパウト20は、第1実施形態の場合と同様に、筒部21とフランジ部22(
図10参照)を有する。筒部21はたとえば円筒状を呈する。スパウト20は、天面部11の内面に上記フランジ部22が固定されることによって天面部11に取り付けられる。第2実施形態では、スパウト20が有する筒部21の外周には、ポンプディスペンサ40を取り付けるためのねじ構造が形成されている。
【0102】
ポンプディスペンサ40は、容器本体10内に収容された液体(内容物)を汲み出すための部材である。ポンプディスペンサ40は、ポンプ部41と、支持部材43と、取付部44とを有する。
【0103】
ポンプ部41は、鉛直方向(第3方向D3)に沿って底面部12側に押し下げられることによって、支持部材43を通して液体を吸い上げるための部材である。
【0104】
ポンプ部41の一例は、
図9に示したように、ポンプヘッド411と、円筒状のピストン部412と、円筒状のシリンダ部413と、吐出ノズル414とを有する。ピストン部412は、ポンプヘッド411の下側に設けられている。シリンダ部413は、シリンダ部413内において、ピストン部412が第3方向D3に摺動可能に構成されている。シリンダ部413は、内部にポンプ機構(不図示)を有する。
【0105】
支持部材43は、ポンプ部41の下端部からポンプヘッド411と反対側に向かって延びている円筒状の部材である。第2実施形態では、支持部材43は、液体を吸い出すための吸引チューブとしての機能を有する。支持部材43は、ポンプディスペンサ40が容器本体10に取り付けられた状態で、容器本体10内に配置される。支持部材43の下端部43a(最も底面部12側の端部)には、液体がより確実に吸引されるように切欠き43bが形成されていてもよい。支持部材43の下端部43aの直径の例は、5mm以上且つ40mm以下である。
【0106】
取付部44は、ポンプディスペンサ40をスパウト20に取り付けるための部材である。第2実施形態では、取付部44は、スパウト20に螺合によって着脱可能な部材である。取付部44は、ポンプディスペンサ40のうちシリンダ部413の位置に設けられている。取付部44は、キャップ状を呈する。取付部44は、筒部441と、筒部441の上側開口を塞ぐ端壁442を有する。筒部441の内面には、筒部441と、スパウト20の筒部21とが螺合可能なようにねじ構造が形成されている。端壁442には、シリンダ部413が通されている。端壁442の下面(内面)442aは、取付部44がスパウト20に装着された状態で、スパウト20が有する筒部21の上端部21aに接する。
【0107】
上記ポンプディスペンサ40の構成では、ポンプディスペンサ40を用いて次のようにして液体が容器本体10内部から取り出される。容器本体10に取り付けた状態で、ポンプ部41が有するポンプヘッド411を鉛直下方に押し下げる。これにより、ピストン部412がシリンダ部413の内側を摺動する。その結果、シリンダ部413内のポンプ機構(不図示)によって、吸引チューブとして機能する支持部材43を通して容器本体10内部の液体が吸い上げられる。吸い上げられた液体は、シリンダ部413、ピストン部412およびポンプヘッド411の内部を通って吐出ノズル414から外部に吐出される。
【0108】
図10に示したように、スパウト20の上端部21aと底面部12の間の距離をX[mm]とし、
図11に示したように、取付部44が有する端壁442の下面442aと支持部材43の下端部43aとの間の距離をY[mm]とした場合、第2実施形態において、距離Xと距離Yとは、式(2)を満たす。
(X-7)<Y≦(X+3)・・・(2)
上記下面442aは、取付部44におけるスパウト20の上端部44aとの接触部に相当する。距離Xは、
図10に示したように、スパウト20にポンプディスペンサ40が取り付けられていない状態における上端部21aと底面部12の間の距離である。距離Yは、
図11に示したように、ポンプディスペンサ40自体(スパウト20に取り付けられていない状態)における端壁442の下面442aと支持部材43の下端部43aとの間の距離である。
【0109】
上記式(2)を満たす距離Xおよび距離Yは、ポンプディスペンサ40、容器本体10およびスパウト20の少なくとも1つの大きさを調整することによって実現され得る。距離Yの上限は(X+2)mmでもよい。
【0110】
ポンプヘッド411は、通常、鉛直下方に向けて押し下げられるが、斜め方向に押し下げられる場合もある。このように斜め方向に押し下げられることを「斜め押し」と称す。距離Yが(X-7)mm以下である場合(すなわち、支持部材43の下端部43aと底面部12までの距離が7mm以上である場合)、上記のように斜め押しが実施されると、支持部材43の下端部43aが底面部12に接触する前に、ポンプディスペンサ40自体が鉛直方向に対して斜めに傾き、ポンプディスペンサ40の横倒れが生じる。
【0111】
これに対して、距離Yが(X-7)mmより大きい場合、ポンプディスペンサ40自体が上記のように斜めに傾く前に支持部材43が底面部12に接触し易い。そのため、ポンプディスペンサ40の横倒れが生じにくい。そのため、ポンプディスペンサ40の横倒れに起因した天面部11の変形を防止できる。ポンプディスペンサ40の横倒れが生じていないことから、汲み出し操作も適切に実施可能である。
【0112】
距離Yが、(X+2)mmより大きい場合、支持部材43の下端部43aは底面部12に接触しており且つその接触部分において紙容器の底面部12は外側に膨張する。その膨張した部分を起点として紙容器の揺れ、回転などが生じる。
【0113】
これに対して、距離Y[mm]が、(X+3)mm以下である場合、下端部43aが底面部12に接触した部分の膨張が抑制されるので、上記揺れ、回転などが生じ難い。距離Yが(X+2)mm以下である場合、上記揺れ、回転などを一層抑制できる。
【0114】
以上のことから、XおよびYが、式(2)を満たす場合,ポンプディスペンサ40の横倒れを抑制しながら、紙容器1Aの安定性を向上できる。
【0115】
以上、本発明の一側面に係る紙容器および紙容器の製造方法の種々の実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれることが意図されるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0116】
天面側シート部材(第1シート部材)の天面領域(天面部)及び底面側シート部材(第2シート部材)の底面領域(底面部)は、正方形状に限定されず、矩形状でもよいし、三角形状、五角形以上の多角形(六角形状、八角形状等)であってもよい。この場合、天面側シート部材(第1シート部材)及び底面側シート部材(第2シート部材)の形状は、天面領域及び底面領域の形状に応じたものである。
【0117】
天面側シート部材(第1シート部材)及び底面側シート部材(第2シート部材)は、紙層を有していれば、例示した層構成に限定されない。たとえば、天面側シート部材(第1シート部材)及び底面側シート部材(第2シート部材)は、バリア層を有してもよい。
【0118】
つなぎ片付き側面部が有するつなぎ片16の数は、1つでもよい。たとえば、箱型の紙容器における4つの側面部それぞれが1つのつなぎ片(第1つなぎ片)16を有してもよい。換言すれば、箱型の紙容器における4つの側面部それぞれが、
図5に示した側面本体15と同様の構成を有する側面本体と1つのつなぎ片16とを有するつなぎ片付き側面部でもよい。この場合、所定部分31は、1つのつなぎ片16によって構成される。このような紙容器は、
図5において、中間箱型状態の紙容器の各側面につなぎ片16が配置されるように4つのつなぎ片16を折り曲げ、折り曲げられたつなぎ片16と対応する側面とを接合することによって製造される。
【0119】
上記のように所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される形態では、所定部分31の厚さTは、4.00mm以上且つ7.00mm以下でよい。所定部分31の厚さTは5.00mm以上でもよい。所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される形態では、式(1)によって算出される空隙率は、10%以上且つ70%以下でよい。空隙率は、たとえば、37%以上且つ64%以下でもよい。
【0120】
第2実施形態では、ポンプディスペンサ40は、支持部材43内に配置される吸引チューブを有してもよい。
【0121】
天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bは、紙製のシート部材であってもよい。紙製のシート部材の主成分は、例えば紙である。紙製のシート部材は、一例として、シート部材の合計質量のうち、紙の質量が50%を超えているシート部材を言う。
【0122】
上記実施形態および変形例は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組合わされてもよい。
【実施例0123】
実施例を用いて本発明を更に説明する。本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。説明の便宜のため、以下の実施例及び比較例の説明では、上記実施形態における各構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0124】
<ハンドリング性評価>
ハンドリング性評価に関する実施例及び比較例を説明する。
【0125】
(実施例1a)
実施例1aでは、天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bを用いて紙容器を製造した。
【0126】
天面側シート部材100Aは、
図2に示したように、正方形状の天面領域110と、2つの第1領域121a、2つの第1領域121b及び4つの第2領域122を有していた。天面側シート部材100Aには、
図2を用いて説明したように、天面領域110の各辺112、各第1領域121aとそれに隣接する第2領域122とが共有する辺、及び、各第1領域121bとそれに隣接する第2領域122とが共有する辺に罫線123aが設けられると共に、各第2領域122内に罫線123aが設けられていた。
【0127】
天面領域110には、開口部11aが形成されており、開口部11aには、スパウト20が取り付けられていた。
【0128】
底面側シート部材100Bは、
図3に示したように、正方形状の底面領域130と、2つの第3領域124a、2つの第3領域124b及び4つの第4領域125を有していた。底面領域130の大きさは、天面領域110の略同一であった。底面側シート部材100Bには、
図3を用いて説明したように、底面側シート部材100Bにおいて、底面領域130の各辺132、各第3領域124aとそれに隣接する第4領域125とが共有する辺、及び、各第3領域124bとそれに隣接する第4領域125とが共有する辺に罫線123bが設けられると共に、各第4領域125内に罫線123bが設けられていた。底面側シート部材100Bには、
図3に示したように、罫線123cも設けられていた。
【0129】
天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの層構成は同じであり、
図4を用いて説明した場合と同様に以下の層構成を有していた。
<層構成>
第1LDPE層/紙層/第2LDPE層/PET層/LLDPE層
【0130】
実施例1aにおいて、上記層構成の各層の厚さは次のとおりであった。
第1LDPE層の厚さ:23μm
紙層の厚さ:280μm
第2LDPE層の厚さ:25μm
PET層の厚さ:12μm
LLDPE層の厚さ:80μm
したがって、実施例1aの天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは420μmであった。
【0131】
実施例1aでは、上記天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bを、
図2を用いて説明したように、互いに重ねてヒートシールによって接合することによって、平坦な状態の紙容器を製造した。その後、上記実施形態において説明した製造方法と同様の方法によって、最終箱型状態の紙容器を得た。紙容器では、
図1に示したように、2つのつなぎ片16と側面本体15を含むつなぎ片付き側面部(
図1における第1側面部13)と、つなぎ片16を有しない側面部(
図1における第2側面部14)とが周方向において交互に形成されていた。
【0132】
実施例1aにおいて製造した紙容器が有するつなぎ片付側面部において最も厚い最厚部30のうちの所定部分31は、
図8に示したように、2つのつなぎ片16,16によって構成されていた。実施例1aにおいて所定部分31の厚さTは、15.0mmであった。所定部分31は、
図8に示した層構造において、側面本体15を構成する3層を除いた12層を有していた。各層は、天面側シート部材100Aまたは底面側シート部材100Bの領域であることから各層の厚さは、天面側シート部材100Aまたは底面側シート部材100Bの厚さ、すなわち、420μmであった。したがって、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、5040μm(5.04mm)であった。
【0133】
(実施例1b)
つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外は、実施例1aと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0134】
実施例1bの紙容器において、所定部分31の厚さTは、10.0mmであった。
【0135】
実施例1bにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1aの場合と同じであることから、実施例1bにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、5040μm(5.04mm)であった。
【0136】
(実施例1c)
つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外は、実施例1aと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0137】
実施例1cの紙容器において、所定部分31の厚さTは、7.00mmであった。
【0138】
実施例1cにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1aの場合と同じであることから、実施例1cにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、5040μm(5.04mm)であった。
【0139】
(実施例1d)
実施例1dでは、第1LDPE層、紙層、第2LDPE層及びLLDPE層の厚さを以下のように変更した点以外は、実施例1cと同様にして箱型の紙容器を得た。
第1LDPE層の厚さ:18μm
紙層の厚さ:200μm
第2LDPE層の厚さ:20μm
LLDPE層の厚さ:42μm
したがって、実施例1の天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは292μmであった。
【0140】
実施例1dの紙容器において、所定部分31の厚さTは、7.00mmであった。
【0141】
実施例1dでは、天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さが292μmであることから、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、3504μm(3.504mm)であった。
【0142】
(実施例1e)
つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外は、実施例1dと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0143】
実施例1eの紙容器において、所定部分31の厚さTは、5.00mmであった。
【0144】
実施例1eにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1dの場合と同じであることから、実施例1dにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、3504μm(3.504mm)であった。
【0145】
(実施例1f)
つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外は、実施例1dと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0146】
実施例1fの紙容器において、所定部分31の厚さTは、4.00mmであった。
【0147】
実施例1fにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1dの場合と同じであることから、実施例1fにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、3504μm(3.504mm)であった。
【0148】
(比較例1a)
つなぎ片16内に隙間を有しないように第2領域122および第4領域125を折り曲げた点以外は、実施例1dと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0149】
比較例1aの紙容器において、所定部分31の厚さTは、3.50mmであった。
【0150】
比較例1aにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1dの場合と同じであることから、比較例1aにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、3504μm(3.504mm)であった。
【0151】
(実施例1g)
実施例1gでは、箱状の紙容器が有する4つの側面部それぞれが1つのつなぎ片を有する点以外は、実施例1aの紙容器と同様の紙容器を得た。具体的には、実施例1aの場合と同じ平坦な状態の紙容器を準備した。したがって、実施例1gにおける平坦な状態の紙容器も実施例1aの場合と同じ天面側シート部材100A及び底面側シート部材100Bを有していた。上記のように準備した平坦な状態の紙容器から
図5に示した中間状態の紙容器を得た。続いて、中間箱型状態の紙容器の各側面に1つのつなぎ片16が配置されるように4つのつなぎ片16を折り曲げ、折り曲げられたつなぎ片16と対応する側面とを接合することによって実施例1gの紙容器を得た。
【0152】
実施例1gにおいて製造した紙容器の4つの側面部は、1つのつなぎ片16と側面本体とを有するつなぎ片付き側面部であった。実施例1gにおけるつなぎ片付き側面部が有する側面本体は、
図5に示した側面本体15と同じ構成を有していた。したがって、説明の便宜のため、実施例1gにおけるつなぎ片付き側面部が有する側面本体も側面本体15と称す。実施例1gにおけるつなぎ片付き側面部における最厚部30および所定部分31は、最厚部30および所定部分31に含まれるつなぎ片16の数が1つである点以外は、実施例1aと同じ構成を有していた。実施例1gにおける所定部分31の厚さTは、7.00mmであった。つなぎ片16の層構成は、
図8に示したつなぎ片16と同じであることから、つなぎ片16は6層を有していた。各層は、天面側シート部材100Aまたは底面側シート部材100Bの領域であることから各層の厚さは、天面側シート部材100Aまたは底面側シート部材100Bの厚さ、すなわち、420μmであった。したがって、所定部分31を構成する複数の層の合計厚さTsは、2520μm(2.52mm)であった。
【0153】
(実施例1h)
つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外は、実施例1gと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0154】
実施例1hの紙容器において、所定部分31の厚さTは、5.00mmであった。
【0155】
実施例1hにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1gの場合と同じであることから、実施例1hにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、2520μm(2.52mm)であった。
【0156】
(実施例1i)
つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外は、実施例1gと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0157】
実施例1iの紙容器において、所定部分31の厚さTは、4.00mmであった。
【0158】
実施例1iにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1gの場合と同じであることから、実施例1iにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、2520μm(2.52mm)であった。
【0159】
(比較例1b)
つなぎ片16内に隙間を有しないように第2領域122および第4領域125を折り曲げた点以外は、実施例1gと同様にして箱型の紙容器を得た。
【0160】
比較例1bの紙容器において、所定部分31の厚さTは、2.52mmであった。
【0161】
比較例1bにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、実施例1gの場合と同じであることから、比較例1bにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、2520μm(2.52mm)であった。
【0162】
(比較例1c)
比較例1cでは、第1LDPE層、紙層、第2LDPE層及びLLDPE層の厚さを以下のように変更するとともに、つなぎ片16を形成する場合の第2領域122および第4領域125の折り曲げの程度を調整した点以外はは、比較例1bと同様にして箱型の紙容器を得た。
第1LDPE層の厚さ:18μm
紙層の厚さ:200μm
第2LDPE層の厚さ:20μm
LLDPE層の厚さ:42μm
【0163】
比較例1cの紙容器において、所定部分31の厚さTは、1.75mmであった。
【0164】
比較例1cにおける天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さは、292μmであった。したがって、比較例1cにおいても、所定部分31が有する複数の層の合計厚さTsは、1752μm(1.752mm)であった。
【0165】
(試験及び評価方法)
実施例1a~1iおよび比較例1a~1cで製造した紙容器内に内容物として600mlの液体を収容した。スパウト20のキャッピングをしていない状態で、紙容器の持ち運び性(ハンドリング性)を評価した。具体的には、液体が収容された紙容器を10人のモニターが持ち運んだ場合において、各モニターが持ち運びし易いか否かを評価した。その結果、持ち運びし易いと評価したモニターの人数が8人以上の場合を評価「A」とし、持ち運び易いと評価したモニターの人数が5人以上7人以下の場合を評価「B」とし、持ち運びし易いと評価したモニターの人数が4人以下の場合を評価「C」とした。
【0166】
所定部分31が2つのつなぎ片16で構成されていた実施例1a~1fおよび比較例1aに対する評価結果は、表1のとおりであった。所定部分31が1つのつなぎ片16で構成されていた実施例1g~1iおよび比較例1b,1cに対する評価結果は、表2のとおりであった。
【0167】
表1および表2の「部材厚さ」は、天面側シート部材100Aおよび底面側シート部材100Bの厚さである。表1および表2の「合計厚さTs」は、所定部分31が有する複数の層の合計厚さである。具体的には、表1の「合計厚さTs」は、所定部分31を構成する2つのつなぎ片16,16が有する複数の層の合計厚さであり、表2の「合計厚さTs」は、所定部分31を構成する1つのつなぎ片16が有する複数の層の合計厚さである。表1および表2における実施例1d~1fおよび比較例1a,1cにおける厚さT[mm]は、小数第3位を四捨五入した値が示されている。表1および表2の空隙率は、表1および表2における厚さTおよび合計厚さTsを、上述した式(1)に代入することによって算出された値である。表1および表2の「適正評価モニター数」は、持ち運び易いと評価したモニターの人数である。
【表1】
【表2】
【0168】
表1および表2に示されているように、比較例1a~1cでは、厚さTは合計厚さTsと同じであった。すなわち、比較例1a~1cでは、所定部分31内に実質的に隙間を有しなかった。このような比較例1a~1cでは、紙容器を持ち運び易いと評価したモニターはいなかった。これに対して、実施例1a~1iでは厚さTは合計厚さTsより大きかった。すなわち、実施例1a~1iでは所定部分31内に隙間が形成されていた。実施例1a~1iでは、モニター10人のうち7人以上が紙容器を持ち運び易いと評価した。したがって、所定部分31内に隙間を有する場合、すなわち、所定部分31が有する複数の層のうちの少なくとも1組の隣接する2つの層の間に隙間を有する場合、紙容器のハンドリング性が向上していることが確認された。
【0169】
表1および表2に示された結果より、所定部分31が2つのつなぎ片16で構成される場合(表1の場合)および所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される場合(表2の場合)の何れにおいても、厚さTが4.00mm以上であれば、評価はAまたはBであり、厚さTが5.00mm以上であれば、評価はAであった。すなわち、厚さTが、4.00mm以上であれば、紙容器を持ち運び性(すなわち、ハンドリング性)が向上し、厚さTが5.00mm以上であれば、更に持ち運び性が向上することが理解できる。
【0170】
表1は所定部分31が2つのつなぎ片16で構成される場合の結果を示している。表1に示された結果より、所定部分31が2つのつなぎ片16で構成される場合、厚さTが15.0mmにおいても、紙容器の持ち運び性は向上しており、厚さTが大きい方が持ち運び易いと考えられる。しかしながら、15.0mmより大きい厚さTを実現する場合、シート部材(天面側シート部材および底面側シート部材)の厚さが増加し易い。シート部材(天面側シート部材および底面側シート部材)の厚さが増加すると、紙容器の容量が確保し難い。そのため、厚さTは15.0mm以下が有効である。よって、所定部分31が2つのつなぎ片16で構成される場合、厚さTが、4.00mm以上且つ15.0mm以下であれば、紙容器の容量を確保しながら、紙容器のハンドリング性の向上を図ることができることが理解され得る。更に、厚さTが、5.00mm以上且つ15.0mm以下であれば、紙容器の容量を確保しながら更に紙容器のハンドリング性の向上を図れる。
【0171】
表2は所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される場合の結果を示している。表2に示された結果より、所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される場合、厚さTが7.00mmにおいても、紙容器の持ち運び性は向上しており、厚さTが大きい方が持ち運び易いと考えられる。所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される場合において、7.00mmより大きい厚さTを実現する場合、シート部材(天面側シート部材および底面側シート部材)の厚さが増加し易い。シート部材(天面側シート部材および底面側シート部材)の厚さが増加すると、紙容器の容量を確保し難い。そのため、所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される場合厚さTは7.00mm以下が有効である。よって、所定部分31が1つのつなぎ片16で構成される場合、厚さTが、4.00mm以上且つ7.00mm以下であれば、紙容器の容量を確保しながら、紙容器のハンドリング性の向上を図ることができることが理解され得る。更に、厚さTが、5.00mm以上且つ7.00mm以下であれば、紙容器の容量を確保しながら更に紙容器のハンドリング性の向上を図れる。
【0172】
表1および表2の結果より空隙率が10%以上(より具体的には12%以上)且つ70%以下(より具体的には、66%以下)であれば、紙容器のハンドリンク性の向上がより図られていると理解できる。
【0173】
表1に示された空隙率にのみ着目した場合、すなわち、所定部分31が2つのつなぎ片16で構成されている場合は、上記のように、空隙率が10%以上(より具体的には12%以上)且つ70%以下(より具体的には、66%以下)であれば、紙容器のハンドリンク性の向上がより図られていると理解できる。
【0174】
表2に示された空隙率にのみ着目した場合、すなわち、所定部分31が2つのつなぎ片16で構成されている場合は、空隙率が35%以上(より具体的には37%以上)且つ65%以下(より具体的には、64%以下)であれば、紙容器のハンドリンク性の向上がより図られていると理解できる。
【0175】
<横倒れ抑制評価試験>
横倒れ抑制評価試験では、ポンプディスペンサを斜め押しした場合におけるポンプディスペンサの横倒れの抑制効果を検証した。
【0176】
(実施例2a)
実施例2aでは、
図9に示したように、四角柱状の容器本体10と、ポンプディスペンサ40とを備えた紙容器を準備した。ポンプディスペンサ40が有する支持部材43の下端部43aは、直径が約19mmの円形であった。
【0177】
実施例2aでは、
図10に示したように、スパウト20の上端部21aと底面部(底面部)12までの距離をX[mm]とし、
図11に示したように、取付部44における下面442aと支持部材43の下端部43aとの間の距離をY[mm]とした場合、距離Xは138mmであり、距離Yは131.0mmであった。すなわち、実施例2aにおいて、距離Yは、(X-6)mmであった。
【0178】
(実施例2b)
実施例2bでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを133.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例2bでは、距離Yは、(X-5)mmであった。
【0179】
(実施例2c)
実施例2cでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを133.5mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例2cでは、距離Yは、(X-4.5)mmであった。
【0180】
(実施例2d)
実施例2dでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを136.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例2dでは、距離Yは、(X-2)mmであった。
【0181】
(実施例2e)
実施例2eでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを137.5mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例2eでは、距離Yは、(X-0.5)mmであった。
【0182】
(実施例2f)
実施例2fでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを138.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例2fでは、距離Yは、距離Xと同じあった。
【0183】
(参考例2a)
参考例2aでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを131.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。参考例2aでは、距離Yは、(X-7)mmであった。
【0184】
(試験及び評価方法)
実施例2a~2fおよび参考例2aで準備した紙容器(ポンプディスペンサ付き紙容器)内に内容物として20mlのシャンプーを収容した。ポンプディスペンサ40のポンプヘッド411(
図9参照)に対して斜め押しを実施してポンプディスペンサ40の横倒れが発生するか否かを評価した。具体的には、10人のモニターがポンプヘッド411に対する斜め押しを実施して、ポンプディスペンサ40が横倒れしたか否かを各モニターが評価した。その結果、横倒れが発生したと評価したモニターの人数が3人以下の場合の評価を「A」とし、横倒れが発生したと評価したモニターの人数が4人または5人の場合の評価を「B」とし、横倒れが発生したと評価したモニターの人数が6人以上の場合の評価を「C」とした。
【0185】
評価結果は、表3のとおりであった。表3の「横倒れ発生数」は、ポンプディスペンサ40の横倒れが発生したと評価したモニターの人数である。
【表3】
【0186】
距離Yが(X-7)mmである参考例2aでは、モニター全員が、ポンプディスペンサ40の横倒れの発生が生じたと評価した。これに対して、距離Yが(X-6)mm以上である実施例2a~2fでは、ポンプディスペンサ40の横倒れが発生したと評価した人数は半分以下となった。更に、距離Yが(X-4.5)mm以上である実施例2c,2d,2e,2fでは、ポンプディスペンサ40の横倒れが発生したモニターはいなかった。
【0187】
したがって、距離Yが(X-7)mmより大きく、X[mm]以下である場合、ポンプディスペンサ40の横倒れを抑制できることが理解できる。更に、距離Yが、(X-4.5)[mm]以上且つX[mm]以下である場合にポンプディスペンサ40の横倒れを一層抑制できることが理解できる。
【0188】
<安定性評価試験>
安定性価試験では、ポンプディスペンサ付き紙容器を移動させた場合の安定性を検証した。
【0189】
(実施例3a)
実施例3aでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを140.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例3aでは、距離Yは、(X+2)mmであった。
【0190】
(実施例3b)
実施例3bでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを139.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例3bでは、距離Yは、(X+1)mmであった。
【0191】
(実施例3c)
実施例3cでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを138.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例3cでは、距離Yは、距離Xと同じであった。
【0192】
(実施例3d)
実施例3dでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを137.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例3dでは、距離Yは、(X-1)mmであった。
【0193】
(実施例3e)
実施例3eでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを141.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。実施例3eでは、距離Yは、(X+3)mmであった。
【0194】
(参考例3a)
参考例3aでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを143.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。参考例3aでは、距離Yは、(X+5)mmであった。
【0195】
(参考例3b)
参考例3aでは、実施例2aで使用した支持部材43と長さが異なる支持部材43を使用することによって、距離Yを142.0mmに変更した点以外は、実施例2aと同様の紙容器を準備した。参考例3bでは、距離Yは、(X+4)mmであった。
【0196】
(試験及び評価方法)
実施例3a~3eおよび参考例3a,3bで準備した紙容器(ポンプディスペンサ付き紙容器)に内容物として、20mlのシャンプーを収容した。その紙容器を持ち上げて横方向に15cm水平移動させた後に、紙容器を使用した場合の揺れおよび回転の有無を評価した。具体的には、10人のモニターが上記のように紙容器の水平移動を実施した後に紙容器を使用した場合の揺れの有無および回転の有無を評価した。その結果、揺れおよび回転が発生したと評価したモニターの人数が両方とも1人以下の場合の評価を「A」とし、揺れおよび回転が発生したと評価したモニターの人数が両方とも2人以上且つ5人未満の場合の評価を「B」とし、揺れが発生したと評価したモニタ-の人数または回転が発生したと評価したモニターの人数が5人以上の場合の評価を「C」とした。
【0197】
評価結果は、表4のとおりであった。表4の「揺れ」の欄は、揺れが発生したと評価したモニターの人数であり、「回転」の欄は、回転が発生したと評価したモニターの人数である。
【表4】
【0198】
表4に示されているように、参考例3a,3bでは、5人以上のモニターが、気になる揺れまたは回転を感じた。特に、参考例3aでは、モニター全員が、揺れを感じていた。これに対して、実施例3eでは、気になる揺れおよび回転を感じたモニターの人数は5人未満に減少した。よって、距離Yが(X-1)mm以上且つ(X+3)mm以下である場合、紙容器(ポンプディスペンサ付き紙容器)が安定し易いことが理解できる。更に、実施例3a~3dでは、揺れおよび回転を感じたモニターはいなかった。そのため、距離Yが(X-1)mm以上且つ(X+2)mm以下である場合、紙容器(ポンプディスペンサ付き紙容器)がより安定することが理解できる。
【0199】
<横倒れ抑制評価試験>および <安定性評価試験>の結果より、距離Yが(X-7)mmより大きく且つ(X+3)mm以下である場合、ポンプディスペンサ40の横倒れを抑制しながら、紙容器の安定性を向上できることが理解できる。更に、距離Yが(X-7)mmより大きく且つ(X+2)mm以下である場合、ポンプディスペンサ40の横倒れを抑制しながら、紙容器の安定性をより向上できることが理解できる。
1,1A…紙容器、10…容器本体、11…天面部(天面領域)、11a…開口部、12…底面部(底面領域)、13…第1側面部(つなぎ片付き側面部)、14…第2側面部、15…側面本体(所定側面部)、16,16A,16B,16C,16D…つなぎ片、15a…縁部(第1縁部)、15b…縁部(第2縁部)、17…接合部、20…スパウト、21…筒部、21a…上端部(取付部と接する端部)、30…最厚部、40…ポンプディスペンサ、41…ポンプ部、43…支持部材、43a…下端部、44…取付部、100A…天面側シート部材、100B…底面側シート部材、100…シート部材(天面側シート部材、底面側シート部材)、101…紙層、110…天面領域、111…頂点、112…辺、120A…天面側側面領域、120B…底面側側面領域、121a,121a1,121a2,121b,121b1,121b2…第1領域(第1側面領域)、122,122a,122b,122c,122d…第2領域(第2側面領域)、123a,123b…罫線、124a,124a1,124a2,124b,124b1,124b2…第3領域(第3側面領域)、125,125a,125b,125c,125d…第4領域(第4側面領域)、130…底面領域、131…頂点、132…辺、301…第1層、302…第2層、303…第3層、304…第4層、305…第5層、306…第6層、307…第7層、308…第8層、309…第9層、310…第10層、311…第11層、312…第12層、313…第13層、314…第14層、315…第15層、442a…下面(取付部におけるスパウトとの接触部)、g…隙間。