(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048136
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】人工芝の排水構造
(51)【国際特許分類】
E01C 13/02 20060101AFI20240401BHJP
E01C 13/00 20060101ALI20240401BHJP
E01C 13/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E01C13/02
E01C13/00 A
E01C13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154020
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩
(72)【発明者】
【氏名】山下 英里
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】二澤 公尭
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA03
2D051AB04
2D051AF01
2D051AH05
2D051CA01
2D051CA04
2D051DA09
2D051HA00
(57)【要約】
【課題】人工芝由来のマイクロプラスチックの流出防止
【解決手段】
ここで開示される人工芝の排水構造30は、人工芝10が敷設される人工芝施設領域10aの周囲に設けられた排水路32と、排水路32に繋がっており、排水路32よりも深い集水枡34と、集水枡34に接続された地下排水管36とを有している。集水枡34は、排水路32が繋がった高さよりも下方に設けられた上部空間34aと、上部空間34aよりも下方に設けられた比重が1よりも重い細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層34bと、フィルター層34bよりも下方又はフィルター層34bの内部に配置され、細粒粒状物の流出を抑制しつつ水を通す透水部材で仕切られ、地下排水管36に接続された排水空間34dとを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝が敷設される人工芝施設領域の周囲に設けられた排水路と、
前記排水路に繋がっており、前記排水路よりも深い集水枡と、
前記集水枡に接続された地下排水管と、
を有し、
前記集水枡は、
前記排水路が繋がった高さよりも下方に設けられた上部空間と、
前記上部空間よりも下方に設けられた比重が1よりも重い細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層と、
前記フィルター層よりも下方又はフィルター層の内部に配置され、前記細粒粒状物の流出を抑制しつつ水を通す透水部材で仕切られ、前記地下排水管に接続された排水空間と
を有する人工芝の排水構造。
【請求項2】
前記集水桝は、前記透水部材で形成された周壁によって囲われた内部に排水空間を有し、一端が前記地下排水管に連通し、かつ、他端が閉塞された透水性排水管を有する、請求項1に記載された人工芝の排水構造。
【請求項3】
前記集水桝は、前記透水部材で形成された周壁によって囲われた内部に排水空間を有し、両端が前記地下排水管に連通した透水性排水管を有する、請求項1に記載された人工芝の排水構造。
【請求項4】
前記透水部材は、前記集水桝内に、前記地下排水管が接続された部位よりも高い位置に配置され、前記集水桝を上下に仕切るシート状の部材であり、
前記フィルター層は、前記シート状の透水部材の上に設けられ、
前記透水部材とフィルター層とは、前記集水枡に取り付けられた枠体に支持されており、
前記透水シートの下方に前記排水空間が形成された、
請求項1に記載された人工芝の排水構造。
【請求項5】
前記フィルター層の内部に透水シートで被覆された立体網目構造体が埋設されている、請求項1に記載された人工芝の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-38426号公報には、人工芝の周囲に設けられた人工芝の排水構造が開示されている。この排水構造は、底部に透水機能を有する側溝と、側溝内の底部に設置された透水性排水管と、側溝内で透水性排水管の上方まで充填された細砂と、細砂の流出を防ぐ堰の機能を有し、透水性排水管を通過可能に側溝の延在方向を仕切る仕切り板と、を備えている。これによって、清掃等のメンテナンスにかかる作業を軽減することができ、しかも雨水を運動場に流出させることなく、運動場から流れ込む小片を容易にかつ確実に回収することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人工芝が敷設された人工芝施設から人工芝由来のマイクロプラスチックが流出するのを防ぐとともに、人工芝の排水構造に用いられる材料の再利用も促進したい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される人工芝の排水構造は、人工芝が敷設される人工芝施設領域の周囲に設けられた排水路と、排水路に繋がっており、排水路よりも深い集水枡と、集水枡に接続された地下排水管とを有している。
集水枡は、排水路が繋がった高さよりも下方に設けられた上部空間と、上部空間よりも下方に設けられた比重が1よりも重い細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層と、フィルター層よりも下方又はフィルター層の内部に配置され、細粒粒状物の流出を抑制しつつ水を通す透水部材で仕切られ、前記地下排水管に接続された排水空間とを有している。
【発明の効果】
【0006】
かかる人工芝の排水構造によれば、人工芝施設から人工芝由来のマイクロプラスチックが流出しにくくなり、人工芝の排水構造に用いられる材料、特に、フィルター層に用いられる細粒粒状物の再利用が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、人工芝10が敷設された人工芝施設20を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、人工芝の排水構造30の集水枡34の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、集水枡34の一例を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、集水枡34の他の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、集水枡34の他の一例を示す模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、集水枡34の他の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される人工芝の排水構造を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〈人工芝施設20〉
図1は、人工芝10が敷設された人工芝施設20を模式的に示す平面図である。
【0010】
人工芝施設20は、例えば、野球場、サッカー場、テニスコート等として用いられる人工芝が用いられた施設である。人工芝10は、舗装面に敷設される。人工芝10は、図示は省略するが、シート状の基布と、パイルとを有する。基布の材質および形態は、特に限定されない。例えば、基布は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる平織布として形成されうる。基布には、パイルが植設されている。基布の裏面には、バッキング層が形成されている。バッキング層は、バッキング剤が塗布された層であり、パイルが抜け落ちるのを防止している。バッキング層は、例えば、ポリエチレンとSBRラテラックスとの混合体によって構成されてもよい。なお、バッキング層は、適宜に省略されうる。
【0011】
パイルは、例えば、芝の葉を模した形状を有しており、基布から立ち上がっている。基布には、多数のパイルが植設されているとよい。パイルには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる扁平なフィラメント糸(ヤーン)が用いられる。パイルは、例えば、タフティングマシンを用いて、パイルとなるプラスチック糸(ヤーン)が基布に縫い込まれることによって、基布に固定されてもよい。基布の表面からパイルの先端までの長さも、特に限定されない。基布の表面からパイルの先端までの長さは、20mm≦W1<50mm程度と比較的短くすることもできるし(一般にショートパイルと呼ばれる)、50mm≦W1≦70mm程度と比較的長くすることもできる(一般にロングパイルと呼ばれる)。パイルの長手方向の断面形状は、三角形、矩形、円形、星形等とすることができる。ロングパイルの人工芝は、例えば、サッカーなどの競技場に用いられる。
【0012】
特に限定するものではないが、基布の表面上においてパイル間には、充填材が充填されてもよい。充填材は、例えば、プレーヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材としての役割と、パイルを保護する役割と、を有している。また、充填材は、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、走り易さを調整したりすることにも用いられており、人工芝施設20での競技のプレーのしやすさを向上させることができる。また、充填材が充填されることによって、人工芝10が全体として重たくなり、人工芝10が安定して設置されうる。
【0013】
充填材には、弾性充填材および硬質充填材の少なくとも一方を用いることができる。弾性充填材としては、比較的柔らかい充填材、例えば、天然有機質充填材(例えば、ヤシ殻を粉砕した材料)、廃タイヤの破砕品等からなるゴムチップを用いることができる。硬質充填材としては、例えば、砂を用いることができる。硬質充填材と弾性充填材は、両方が充填されていてもよい。
【0014】
〈排水構造30〉
人工芝10の排水構造30は、人工芝施設20の人工芝施設領域10aから水を排水するための構造である。ここで開示される排水構造30は、特に、人工芝施設領域10aの周りの排水構造に関するものであり、排水路32と、集水枡34と、地下排水管36とを備えている。人工芝施設領域10aには、周囲に設けられた排水路32に水が流れるように構成されていることが望ましい。例えば、人工芝10が舗装面に所要の勾配が設けているとよい。また、人工芝10の舗装面には、暗渠配管が埋設されており、地下の暗渠配管を通じて周囲に設けられた排水路32や集水枡34に水が流れるように構成されているとよい。かかる構成により、人工芝施設領域10aの水はけが良好な状態に保たれている。
【0015】
〈排水路32〉
排水路32は、人工芝施設20において、人工芝10が敷設される人工芝施設領域10aの周囲に設けられている。排水路32は、人工芝施設領域10aの全周を必ずしも囲っている必要は無い。排水路32は、人工芝10で生じるマイクロプラスチックを含む雨水が流出しないように、人工芝施設領域10aを概ね全周に亘って囲っていることが好ましい。排水路32には、例えば、U字溝と称される連結式のコンクリート成形品が用いられうる。
【0016】
〈集水枡34〉
集水枡34は、排水路32に繋がっており、排水路32よりも深い枡である。集水枡34は、人工芝施設領域10aの周りに間隔を空けて複数箇所設けられているとよい。集水枡34は、地下排水管36などに繋がっている。排水路32には、集水枡34に向かって水が流れるように所要の勾配が設けられているとよい。集水枡34は、排水路32よりも深いので、排水路32から雨水が流れ込む。集水枡34に流れ込んだ雨水は、地下排水管36に流出する。集水枡34から地下排水管36に雨水を流出させる流出部には、フィルターなどが設置されているとよい。集水枡34によって、排水路32を流れる雨水がスムーズに流れ、排水路32で水が溢れにくい。また、集水枡34に流れ込んだ雨水に含まれるゴミは、フィルターで捕捉され、集水枡34に留まる。このため、集水枡34を定期的にメンテナンスすることで、ゴミを回収できる。地下排水管36は、地下に埋設された排水管であり、雨水配管などでありうる。
【0017】
図2は、人工芝の排水構造30の集水枡34の模式的な断面図である。ここで開示される人工芝の排水構造30では、
図2に示されているように、集水枡34は、上部空間34aと、フィルター層34bと、透水部材34cと、排水空間34dと、接続部34eを備えている。
【0018】
〈上部空間34a〉
上部空間34aは、排水路32が繋がった高さよりも下方に設けられた空間である。上部空間34aには、排水路32から集水枡34に排水が流れ込む空間である。上部空間34aは、排水路32から排水の流入を受け入れられるように所要の容積を有しているとよい。上部空間34aの下方にフィルター層34bが設けられる。フィルター層34bの表層から排水路32までの高さは、5~10cm程度であるとよい。
【0019】
〈フィルター層34b〉
フィルター層34bは、上部空間34aよりも下方に設けられており、比重が1よりも重い細粒粒状物が敷き詰められた層である。比重が1よりも重い細粒粒状物は、例えば、目砂でありうる。目砂は、雨水に含まれる、人工芝から出るマイクロプラスチックを捕捉できうる程度の粒径で、なおかつ、人工芝から出るマイクロプラスチックによって目詰まりすることがない程度に程よく大きな粒径を有しているとよい。細粒粒状物には、例えば、人工芝工事や人工芝に補充される人工芝用の目砂が用いられうる。人工芝から出るマイクロプラスチックには、人工芝に用いられるパイルの摩耗屑やちぎれた破片や充填物として用いられているゴムチップなどがある。パイルの摩耗屑やちぎれた破片などのパイル片は、例えば、ロングパイルの人工芝などでは、破断長(又は長さ)が0.2mm以上70mm以下でありうる。パイルの主たる材料となるポリプロピレンの比重は、約0.90~0.95程度であり、ポリエチレンの比重は、0.90~0.97程度である。また、充填物として用いられているゴムチップは、粒径が0.5mm以上5.0mm以下であり、比重は大凡1.0~1.3でありうる。
【0020】
かかる観点で、細粒粒状物は、好ましくは、細粒粒状物は、平均粒径(D50)が0.5mm以上2mm以下であるとよい。つまり、細粒粒状物の粒径が小さいと、透水部材34cを目詰まりさせたり、透水部材34cから流出したりする。かかる観点で、細粒粒状物は、粒径が小さすぎず、また、粒度分布の幅は小さいほどよい。つまり、粒径のバラツキが小さいほどよい。かかる観点で、例えば、細粒粒状物の粒径の積算分布の値における10%の粒子径(D10)と90%の粒子径(D90)との差が、0.5mm以上1.5mm以下であるとよい。また、細粒粒状物として用いられる目砂のかさ比重は、1.5~1.7程度である。このように、フィルター層34bに敷き詰められる細粒粒状物は、比重が1よりも重く、かつ、透水部材34cを目詰まりしにくく、透水部材34cから流出しくいとよい。細粒粒状物は、ここで例示的に挙げられた粒径や粒度分布のものに限定されない。なお、排水路32からフィルター層34bに流入する水の勢いが大きいと、フィルター層34bに敷き詰められた細粒粒状物が掘れてしまう。このため、排水路32からフィルター層34bに水が流れ込む部分には、水の勢いを殺すための石やブロックなどの緩衝物38が置かれていてもよい。また、緩衝物38として、フィルター層34bの表面に、不織布がさらに敷設されていてもよい。
【0021】
排水空間34dは、フィルター層34bよりも下方又はフィルター層34bの内部に配置され、細粒粒状物の流出を抑制しつつ水を通す透水部材34cで仕切られ、地下排水管36に接続された空間である。
【0022】
図2に示された形態では、透水部材34cは、フィルター層34bを支持するように、集水枡34の内部に設置された部材であり、フィルター層34bに敷き詰められる細粒粒状物は通さないが、透水性が阻害されない程度の開口を有する部材である。ここで、透水性が阻害されない程度の開口とは、土に含まれるシルト分を排出できる程度であるとよい。土に含まれるシルトは、土壌または堆積物で粒子の大きさが砂よりも細かく、粘土よりも粗いものである。透水部材34cの開口が細かすぎると、土に含まれるシルトによって目詰まりが生じ、透水部材34cが機能しなくなり、メンテナンスの頻度が高くなる。このため、透水部材34cは、細粒粒状物を通過させないが、土に含まれるシルトは、雨水と一緒に流出しうるように構成されているとよい。
【0023】
例えば、透水部材34cは、細粒粒状物を通過させず、土に含まれるシルトは流出させる程度の開口や開口率を有しているとよい。透水部材34cは、細粒粒状物を通過させず、土に含まれるシルトは流出させる程度の開口や開口率を有しているとよい。例えば、細粒粒状物の平均粒径(D50)が0.5mm以上2mm以下である場合、細粒粒状物は通さないが、透水性が阻害されない程度の開口径を有しているとよい。例えば、透水部材34cは、土のシルト分で目詰まりしない程度の開口径を有しているとよい。細粒粒状物は通さない程度の開口は、例えば、開口径が0.2mm以下であるとよい。土のシルト分で目詰まりしない程度の開口径は、開口径が0.1mm以上であるとよい。また、透水部材34cは、所要の透水性が確保されるように、所要の開口率を有するとよい。
【0024】
かかる観点で、透水部材34cは、不織布のような透水性を有するシート材と、シート材を支持する枠体で構成されていてもよい。また、透水部材34cは、ボード状(板状)の部材であってもよい。透水部材34cには、多孔質のボード材、例えば、透水性を有するコンクリート成形品や多孔質のセラミックボードなどが用いられてもよい。透水部材34cは、例えば、集水枡34の内側面に突出した出っ張り39に支持されていてもよい。
【0025】
図2に示された形態では、集水枡34に透水部材34cが配置されることによって、フィルター層34bの下方に透水部材34cで仕切られた排水空間34dが形成されている。ここで、集水枡34に流れ込む雨水に含まれる人工芝10由来のマイクロプラスチック(パイル片やゴムチップ)は、細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層34bの表層で捕捉される。仮に、人工芝10由来のマイクロプラスチックが、フィルター層34bを通過した場合でも、不織布などで構成された透水部材34cで捕捉される。このため、透水部材34cを通じてマイクロプラスチックが排水空間34dに流出することが抑制される。透水部材34cに用いられる不織布などの透水性シートや透水性ボードは、市場で入手可能な市販品で、上記の機能を奏する上で適当な開口率や目開きを有するものが採用されるとよい。
【0026】
接続部34eは、集水枡34を地下排水管36に接続する部位である。排水空間34dは、接続部34eにおいて地下排水管36に接続されているため排水性がよく、フィルター層34bに流れ込んだ雨水をスムーズに排水させることができる。
図2に示された形態では、接続部34eには、不織布の仕切り34e1が設けられている。かかる仕切り34e1によって、細粒粒状物などが排水空間34dに流出した場合でも、細粒粒状物が接続部34eを地下排水管36に流出するのが抑止される。
【0027】
このように排水構造30は、排水路32に繋がるように集水枡34が設けられているので、排水路32がオーバーフローすることが防止され、排水路32から外部に人工芝由来のマイクロプラスチックが流出しにくい。集水枡34は、排水に含まれるゴミを捕捉し、ゴミの流出するのを防止する機能を有する。さらに、集水枡34の表層は、細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層34bであり、フィルター層34bの下層は排水空間34dである。フィルター層34bに入り込んだ雨水は、スムーズに排水空間34dに染み込んでいき、排水空間34dから接続部34eを通じて地下排水管36に流出される。
【0028】
フィルター層34bの下は、排水空間34dになっているので、よほどの大雨で大量の雨水が流れ込まない限り、フィルター層34bに水は浮きにくい。また、フィルター層34bで水が多少浮いても、フィルター層34bの上に上部空間34aがあるため、排水路32が溢れることは生じにくく、集水枡34への水の流入が収まると、すぐに水位が下がる。このため、集水枡34で水が溢れて、集水枡34に流れ込んだ雨水が外部に流れ出にくい。
【0029】
集水枡34には、排水路32を通じて人工芝由来のマイクロプラスチックが流れ込む。集水枡34に流れ込んだ雨水に含まれる人工芝由来のマイクロプラスチックは、フィルター層34bに敷き詰められた細粒粒状物で捕捉されるため、細粒粒状物の表層に溜まる。つまり、フィルター層34bに敷き詰められた細粒粒状物の表層では、水が浮きにくく、下方に染み込んでいくので、人工芝由来のマイクロプラスチックは、順次表層に溜まっていく。このため、集水枡34に流れ込んだ、人工芝由来のマイクロプラスチックは、集水枡34の外に流出しない。
【0030】
人工芝由来のマイクロプラスチックは、フィルター層34bに敷き詰められた細粒粒状物で捕捉される。このため、フィルター層34bに敷き詰められた細粒粒状物の表層、数センチ(例えば、1~2cm)の層を、定期的にそぎ取るように取り除くとよい。そして、取り除かれた表層の細粒粒状物を、水を溜めた容器において水に浸漬させるとよい。これにより、細粒粒状物に含まれる人工芝由来のマイクロプラスチックのうちパイル片のように水よりも比重の軽いものは水に浮き、水に沈む細粒粒状物と分離できる。水に浮遊するパイル片や落ち葉やゴミなどは、目の細かい網で掬うなどすることで、回収することができる。
【0031】
容器に残った細粒粒状物は、さらにふるいに掛け、水洗処理するなどして、ゴミを取り除くとよい。人工芝由来のマイクロプラスチックやゴミが取り除かれた細粒粒状物は、フィルター層34bの材料として、集水枡34のフィルター層34bに戻されるとよい。このようにフィルター層34bの細粒粒状物は、何度でも再利用できる。また再利用のたびに、細粒粒状物の粒度分布のバラツキが小さくなるので、フィルター層34bの機能が向上していく。なお、メンテナンス時は、フィルター層34bの表層の細粒粒状物をそぎ取った際に、フィルター層34bの表層に細粒粒状物を補充するとよいので、人工芝の排水構造30への水の流れ込みを止めて作業する必要は必ずしもない。また、容器に残った細粒粒状物には、比重が1よりも大きな、人工芝に充填されていたゴムチップが含まれうる。ゴムチップは、細粒粒状物との粒度差や、真比重の差を利用する事で容易に分離回収することができる。例えば、ゴムチップの平均粒度が3mmである場合、細粒粒状物の平均粒度が1mmであれば、開口2mmの篩いを使うことによって、両者を分離することができる。また真比重の差を利用して分離することも可能である。粉体分離機として、例えば、気体もしくは液体中に混じった粉末状の固体を分離するための分級機などが利用されうる。なお、細粒粒状物に、人工芝工事や人工芝に補充される人工芝用の目砂が用いられている場合には、人工芝に充填されるゴムチップが残留していても人工芝用の目砂としての再利用が可能である。
【0032】
〈集水枡34の構造例〉
以下、集水枡34の構造例を種々例示する。
【0033】
図3は、集水枡34の一例を示す模式的な断面図である。
図3に示された形態では、集水枡34に枠体42が設置されている。枠体42は、排水路32よりも下側で集水枡34の内側面に合わせた形状で、集水枡34の内側に設置される部材であり、全体として透水性を有しているとよい。例えば、枠体42は、集水枡34の内側に装着される内容器であるとよい。この際、枠体42は、パンチングメタルなどで構成されているとよく、枠体42の内側面と外側面の少なくとも一方が細粒粒状物の流出を抑制しうる透水性のシートで覆われているとよい。フィルター層34bは、かかる枠体42内に敷き詰められている。また、フィルター層34bには、立体網目構造体34b1が埋設されている。枠体42の下方には、排水空間34dが形成されている。ここで、枠体42は、フィルター層34bと排水空間34dとを仕切る透水部材34cとして機能している。
【0034】
立体網目構造体34b1は、熱可塑性樹脂を、繊維状に押出成形しつつ所定の立体形状に成形したものでありうる。この場合、繊維状の熱可塑性樹脂が絡み合った立体形状体が形成される。かかる立体網目構造体34b1は、繊維状の樹脂に間隙が残り、当該部分を通じて透水性が確保される。このような立体網目構造体34b1には、例えば、新光ナイロン株式会社製のプラスチック立体網状成形品からなる透水マットなどが採用されうる。立体網目構造体34b1は、フィルター層34bに敷き詰められる細粒粒状物よりも比重が軽く構成できる。フィルター層34bに立体網目構造体34b1が埋められていることによって、フィルター層34bを軽く構成できるとともに、細粒粒状物の使用量を少なくできる。
【0035】
立体網目構造体34b1は、図示は省略するが、支持体を介して集水枡34に設置されていてもよい。立体網目構造体34b1は、細粒粒状物が流出しない程度の開口率で形成されているとよい。立体網目構造体34b1は、不織布などの透水性シート37で覆われた状態で、フィルター層34bに設置されていてもよい。この場合、フィルター層34bの細粒粒状物と立体網目構造体34b1との境界に透水性シート37が配置されていてもよい。また、立体網目構造体34b1の外周面全体が不織布で覆われていてもよい。立体網目構造体34b1が、不織布のような透水性シート37で覆われていることによって、立体網目構造体34b1へ細粒粒状物が入り込むのを防止でき、立体網目構造体34b1の目詰まりを抑止でき、フィルター層34bの細粒粒状物が流出するのを抑止できる。
【0036】
図4は、集水枡34の他の一例を示す模式的な断面図である。
図4に示された形態では、透水性排水管34d3を有している。透水性排水管34d3は、透水部材34cで形成された周壁によって囲われた内部に排水空間34dを有している。
図4に示された形態では、透水性排水管34d3の一端は、地下排水管36に連通し、かつ、透水性排水管34d3の他端は閉塞されている。この実施形態では、透水性排水管34d3は、フィルター層34bの下方に埋設されている。透水性排水管34d3は、例えば、側周面に透水性を有する中空の配管である。かかる中空の透水性排水管34d3は、メッシュ状の側面を有するフレキシブルな暗渠排水管を採用することができる。中空の透水性排水管34d3は、さらに、螺旋状に延びる高剛性の樹脂(高密度ポリエチレンやポリプロピレン)製の補強体で外周が補強された構造を備えていてもよい。かかる中空の透水性排水管34d3は、例えば、太陽工業株式会社や、東拓工業株式会社の市販の暗渠排水管を採用しうる。これら市販の暗渠排水管は、所定の長さに加工しやすくまた、フレキシブルであるから折りたたんで集水枡34に設置できる。
図4に示された形態では、複数の中空の透水性排水管34d3が、集水枡34に折り曲げられた状態で設置されている。
【0037】
透水性排水管34d3の一端61は、集水枡34の接続部34eから地下排水管36に出されている。透水性排水管34d3の他端62は、不織布など透水性シート62aで閉じられているとよい。この場合、透水性排水管34d3は、一端を接続部34eから地下排水管36に出した状態で、折り曲げられた状態で集水枡34の底部に設置される。その上に、フィルター層34bに用いる細粒粒状物を堆積させるとよい。これにより、接続部34eを通じて地下排水管36に繋がった中空の透水性排水管34d3がフィルター層34bに埋設された状態となる。中空の透水性排水管34d3の一端61は、接続部34eにおいて、集水枡34に繋がった地下排水管36に接続されている。中空の透水性排水管34d3の一端61が、集水枡34に繋がった地下排水管36に接続されていることで、中空の透水性排水管34d3の内部に入り込んだ雨水がスムーズに排出される。
図4に示された形態では、透水性を有する透水性排水管34d3の周壁が、透水部材34cとして機能している。透水性排水管34d3の内部は排水空間34dとなる。このように、集水枡34は、透水部材34cで形成された周壁によって囲われた内部に排水空間34dを有し、一端が地下排水管36に連通し、かつ、他端が閉塞された透水性排水管34d3を有していてもよい。
【0038】
図4に示された形態では、排水路32から集水枡34に流れ込んだ雨水は、細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層34bに染み込んでいく。雨水は、フィルター層34bに埋設された透水性排水管34d3内に入り込み、接続部34eから排水される。この際、雨水に含まれる人工芝由来のマイクロプラスチックは、フィルター層34bの表面で細粒粒状物に捕捉される。また、透水性排水管34d3の周壁は、透水性を有する透水部材34cとして機能するので、フィルター層34bの細粒粒状物は、透水性排水管34d3内部の排水空間34dに流出しない。かかる形態では、フィルター層34bに埋め込まれた透水性排水管34d3の内部が空洞に保たれている。フィルター層34bに染み込んだ雨水は、透水性排水管34d3を通じて排水されるので、フィルター層34bに水が浮きにくい。このため、フィルター層34bの表面において人工芝由来のマイクロプラスチックが速やかに捕捉されようになる。
【0039】
なお、
図4に示された形態では、透水性排水管34d3の一端61は、接続部34eから抜け出たりすることがないように、支持プレート63などで支持されていてもよい。この場合、透水性排水管34d3の一端61は、支持プレート63を貫通して地下排水管36に接続されているとよい。これにより、透水性排水管34d3が安定した状態で集水枡34に設置できる。中空の透水性排水管34d3は、不織布で覆われていることにより、細粒粒状物が入り込みにくくなり、また、目詰まりが生じにくくなり、透水性を高く維持しやすくなる。なお、透水性排水管34d3の周壁自体が不織布/メッシュシートで構成されており、細粒粒状物が十分に入り込みにくくなっている場合には、透水性排水管自体をさらに不織布で覆う必要はない。また、透水性排水管34d3は、必ずしもフィルター層34bに埋まっていなくてもよい。例えば、透水性排水管34d3は、不織布で覆われた状態で設置されてもよい。この場合、細粒粒状物を堆積させる前に、折り曲げられた状態で集水枡34内に設置された透水性排水管34d3の上を透水性シートで覆うとよく、その上に細粒粒状物を堆積させてフィルター層34bを形成するとよい。これにより、透水性排水管34d3が細粒粒状物に埋まった状態とならず、透水性排水管34d3の周壁に細粒粒状物が入り込みにくくなる。
【0040】
図5は、集水枡34の他の一例を示す模式的な断面図である。
図5に示された形態では、集水枡34は、透水性排水管34d4を有している。透水性排水管34d4は、透水部材34cで形成された周壁によって囲われた内部に排水空間34dを有している。
図5に示された形態では、透水性排水管34d4の両端が地下排水管36に連通している。
図5に示された形態では、集水枡34の底部には、一対の地下排水管36が接続されている。フィルター層34bに埋められた透水性排水管34d4は、かかる一対の地下排水管36に接続されている。透水性排水管34d4は、地下排水管36に合わせて大径の管が用いられているとよい。透水性排水管34d4は、折りたたまれないので、フレキシブル性は、必ずしも求められない。図示は省略するが、中空の透水性排水管34d4の周囲は、不織布などの透水性シートで覆われていてもよい。中空の透水性排水管34d4の両端には、中空の透水性排水管34d4の端部を地下排水管36に接続するための支持プレート64,65が取付けられている。この場合も、細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層34bを染み込んだ雨水は、フィルター層34bにおいて中空の透水性排水管34d4に入り込み、スムーズに地下排水管36に流出していく。このため、フィルター層34bにおいて高い透水性が保たれ、フィルター層34bの水はけがよくなり、フィルター層34bの表層において人工芝由来のマイクロプラスチックが速やかに捕捉されようになる。ここで、透水性排水管34d4の周壁は、透水性を有する透水部材34cとして機能するので、フィルター層34bの細粒粒状物は、透水性排水管34d4内部の排水空間34dに流出しない。
【0041】
図6は、さらに集水枡34の他の一例を示す模式的な断面図である。この実施形態では、集水枡34は、フィルター層34bが設けられたフィルターユニット50を備えている。フィルターユニット50は、集水枡34に設置される枠体52を有している。フィルター層34bは、枠体52の内側の上部に設けられている。ここで、枠体52は、例えば、金網で構成されてよく、集水枡34に収められるように集水枡34の内側面に沿った形状を有している。枠体52は、パンチングメタルで構成されていてもよい。
図6に示された形態では、枠体52の内側に透水性シート54が取付けられている。透水性シート54は、枠体52の内側の全周を覆っているとよい。かかる透水性シート54は、フィルター層34bと排水空間34dを仕切る透水部材34cとして機能する。ここで、フィルター層34bは、細粒粒状物が敷き詰められているとよい。また、フィルター層34bには、立体網目構造体34b1が埋設されているとよい。
【0042】
図6に示されているように、フィルター層34bは、ユニット化されて集水枡34に設置されるように構成されていてもよい。この場合、フィルター層34bがユニット化された枠体52を集水枡34から取り出すことができる。このため、集水枡34の接続部34eや集水枡34に繋がった地下排水管36にトラブルが生じた場合のメンテナンスが容易になる。
【0043】
図6に示されているように、透水部材34cは、集水枡34内に、地下排水管36が接続された部位よりも高い位置に配置され、集水枡34を上下に仕切るシート状の部材(透水性シート54)であってもよい。フィルター層34bは、かかるシート状の透水部材34cの上に設けられているとよい。透水部材34cとフィルター層34bとは、集水枡34に取り付けられた枠体52に支持されているとよい。そして、シート状の透水部材34cの下方に排水空間34dが形成されているとよい。かかる集水枡34では、シート状の透水部材34cおよび透水部材34cの上に設けられたフィルター層34bが枠体52に支持されている。透水部材34cの下方に形成された排水空間34dは、接続部を通じて地下排水管36に連通している。
【0044】
かかる構成によれば、枠体52に支持されたフィルター層34bの下方に広い排水空間34dが確保されている。集水枡34に流れ込む排水は、細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層34bを染み込み、排水空間34dに流れて、接続部34eを通じて地下排水管36に排水される。フィルター層34bは、シート状の透水部材の上に設けられており、細粒粒状物が流出しにくい。フィルター層34bの下方は、透水部材34cで仕切られた排水空間34dであり、フィルター層34bの水はけがよい。このため、フィルター層34bの水はけがよく、集水枡34から水が溢れにくい。また、フィルター層34bに細粒粒状物が敷き詰められているため、集水枡34に流れ込む排水に含まれうる人工芝由来のマイクロプラスチックが、フィルター層34bの表層において速やかに捕捉される。
【0045】
以上、ここでの開示について、種々説明したが、ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0046】
本発明(1)は、人工芝の排水構造に関する。
ここで、本発明(1)における人工芝の排水構造は、
人工芝が敷設される人工芝施設領域の周囲に設けられた排水路と、
前記排水路に繋がっており、前記排水路よりも深い集水枡と、
前記集水枡に接続された地下排水管と、
を有し、
前記集水枡は、
前記排水路が繋がった高さよりも下方に設けられた上部空間と、
前記上部空間よりも下方に設けられた比重が1よりも重い細粒粒状物が敷き詰められたフィルター層と、
前記フィルター層よりも下方又はフィルター層の内部に配置され、前記細粒粒状物の流出を抑制しつつ水を通す透水部材で仕切られ、前記地下排水管に接続された排水空間と
を有する。
【0047】
本発明(2)は、本発明(1)における人工芝の排水構造において、
前記集水桝は、前記透水部材で形成された周壁によって囲われた内部に排水空間を有し、一端が前記地下排水管に連通し、かつ、他端が閉塞された透水性排水管を有する。
【0048】
本発明(3)は、本発明(1)における人工芝の排水構造において、
前記集水桝は、前記透水部材で形成された周壁によって囲われた内部に排水空間を有し、両端が前記地下排水管に連通した透水性排水管を有する。
【0049】
本発明(4)は、本発明(1)における人工芝の排水構造において、
前記透水部材は、前記集水桝内に、前記地下排水管が接続された部位よりも高い位置に配置され、前記集水桝を上下に仕切るシート状の部材であり、
前記フィルター層は、前記シート状の透水部材の上に設けられ、
前記透水部材とフィルター層とは、前記集水枡に取り付けられた枠体に支持されており、
前記透水シートの下方に前記排水空間が形成されている。
【0050】
本発明(5)は、本発明(1)における人工芝の排水構造において、
前記フィルター層の内部に透水シートで被覆された立体網目構造体が埋設されている。
【符号の説明】
【0051】
10 人工芝
10a 人工芝施設領域
20 人工芝施設
30 人工芝の排水構造
32 排水路
34 集水枡
34a 上部空間
34b フィルター層
34b1 立体網目構造体
34c 透水部材
34d 排水空間
34d3 透水性排水管
34d4 透水性排水管
34e 接続部
34e1 仕切り
36 地下排水管
37 透水性シート
38 緩衝物
42 枠体
50 フィルターユニット
52 枠体
52a 脚部
52b 支承部
52c スペーサ
52d 取っ手
54 透水性シート
61 透水性排水管34d3の一端
62 透水性排水管34d3の他端
62a 透水性シート
63 支持プレート
64,65 支持プレート