(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048152
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/368 20060101AFI20240401BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K8/368
A61K8/60
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154037
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 崚
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB052
4C083AB312
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC152
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC532
4C083AD042
4C083AD201
4C083AD202
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC11
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、苛酷な保存条件下においても、アルコキシサリチル酸またはその塩の変色を抑制し、使用性に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】(A)特定の構造を有するアルコキシサリチル酸またはその塩、および(B)還元糖を含んでなる化粧料であって、(B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.003~8質量%である、化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(a)で表されるアルコキシサリチル酸またはその塩
【化1】
(式中、R
aは、炭素数1~6のアルキル基である)、および
(B)還元糖
を含んでなる化粧料であって、
(B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.003~8質量%である、化粧料。
【請求項2】
Raが、メチル基またはエチル基である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(A)成分が、4-メトキシサリチル酸カリウム塩である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
(B)成分が、グルコースまたはフルクトースである、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項5】
(A)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.1~10質量%である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項6】
(A)成分の配合量に対する(B)成分の配合量((B)/(A))が、質量比で、0.003~8である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項7】
pHが6~11である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項8】
(B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.1~3質量%である、請求項1または2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシサリチル酸またはその塩を含んでなる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシサリチル酸(またはその塩)には、メラニン生成抑制作用があり、これを含有する皮膚外用剤が優れた美白効果を発揮することが報告されている。しかし、アルコキシサリチル酸を含む組成物を、苛酷な条件下で長期にわたって保存した場合、変色することがある。
【0003】
アルコキシサリチル酸の変色を抑制する手段として、サポニン等を併用する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、ピロ亜硫酸ナトリウム等の無機塩と併用することも知られているが、ピロ亜硫酸酸ナトリウムは、不快な臭いを生じさせることもあり、特に、無香料化粧料には、配合量に制限がある。
【0004】
ハイドロキノンの安定性を向上させるために、多価アルコール、還元糖および糖アルコールから選択される1種以上と併用する技術が提案されており、これらはハイドロキノンとの間に緩い錯体を形成させることによりハイドロキノンを安定化させている(引用文献2)。
還元糖は、アミノ化合物等が共存すると、褐色物質を生成するメイラード反応を引き起こすことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-217660号公報
【特許文献2】特開2008-297217号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、アルコキシサリチル酸またはその塩と、特定の配合量の還元糖とを組み合わせることで、アルコキシサリチル酸またはその塩の変色を抑制することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1](A)式(a)で表されるアルコキシサリチル酸またはその塩
【化1】
(式中、R
aは、炭素数1~6のアルキル基である)、および
(B)還元糖
を含んでなる化粧料であって、
(B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.003~8質量%である、化粧料。
[2]R
aが、メチル基またはエチル基である、[1]に記載の化粧料。
[3](A)成分が、4-メトキシサリチル酸カリウム塩である、[1]または[2]に記載の化粧料。
[4](B)成分が、グルコースまたはフルクトースである、[1]~[3]のいずれかに記載の化粧料。
[5](A)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.1~10質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の化粧料。
[6](A)成分の配合量に対する(B)成分の配合量((B)/(A))が、質量比で、0.003~8である、[1]~[5]のいずれかに記載の化粧料。
[7]pHが6~11である、[1]~[6]のいずれかに記載の化粧料。
[8](B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.1~3質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の化粧料。
【0008】
本発明によれば、苛酷な保存条件下においても、アルコキシサリチル酸またはその塩を含む化粧料の変色を抑制し、使用性にも優れた化粧料を提供できる。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明は、(A)特定の構造を有するアルコキシサリチル酸またはその塩、および(B)還元糖を含んでなり、(B)還元糖の配合量が、化粧料の総量に対して、0.01~10質量%である、化粧料に関するものである。
本発明による化粧料のpHは、好ましくは6~11であり、より好ましくは6.5~11である。本発明による化粧料はpHが7より大きいアルカリ性である場合により効果を発揮することができ、さらに好ましくは7.5~11であり、よりさらに好ましくは8~11であり、最も好ましくは9~11である。
【0010】
(A)アルコキシサリチル酸またはその塩
本発明による化粧料は、式(a)で表されるアルコキシサリチル酸またはその塩(以下、(A)成分と称することがある。他の成分についても同様である。)を含んでなる。
【化2】
式中、R
aは、炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖であっても分岐であってもよい。R
aとしては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ter-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基またはエチル基である。
置換基OR
aの位置は特に限定されないが、サリチル酸の3位、4位または5位であることが好ましく、より好ましくは4位である。
【0011】
式(a)で表されるアルコキシサリチル酸としては、例えば、3-メトキシサリチル酸、3-エトキシサリチル酸、4-メトキシサリチル酸、4-エトキシサリチル酸、4-プロポキシサリチル酸、4-イソプロポキシサリチル酸、4-ブトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、5-エトキシサリチル酸、5-プロポキシサリチル酸等が挙げられ、好ましくは4-メトキシサリチル酸である。
【0012】
アルコキシサリチル酸は既知の物質であり、例えば、5-メトキシサリチル酸は「Beil,10227」に、4-メトキシサリチル酸は「Beil,10379」に、それぞれ記載されている方法で容易に合成することができる。また、アルドリッチ社等から試薬として入手できる。
【0013】
(A)成分は、式(a)で表されるアルコキシサリチル酸の塩であることも好ましい。塩の種類は、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アミノ酸塩等が挙げられ、好ましくはカリウム塩であり、美容効果および入手容易性等の観点から、さらに好ましくは、4-メトキシサリチル酸カリウム塩である。
【0014】
(A)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(A)成分の配合量は、用途や他の配合成分との兼ね合いに応じて、適宜選択されるが、(A)成分がもつ機能・効果、特に美白効果、を発揮させるためには、化粧料の総量に対して、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.3~8質量%であり、さらに好ましくは0.5~3.5質量%である。
【0015】
(B)還元糖
本発明による化粧料は、(B)還元糖を含んでなる。(B)成分は、アルデヒド基、ケトン基当の還元性の官能基を有する単糖またはオリゴ糖であり、具体的には、グルコース、フルクトース、ラクトース、マンノース、ガラクトース糖が挙げられる。(B)成分は、好ましくは、グルコースまたはフルクトースである。
【0016】
(A)成分は光暴露等の条件下での長期保存により、変色し得ることが知られている。(B)成分は上記したようにメイラード反応を引き起こして褐変物質を生成し得ることが知られているため、化粧料において、他の変色を起こしやすい成分と併用しないようにすることが通常であった。本発明者は、驚くべきことに、(A)成分と(B)成分を組み合わせることで、上記したような知見に反して、変色を顕著に抑制することができることを発見した。
【0017】
(B)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(B)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.003~8質量%であり、より好ましくは0.005~4質量%であり、さらに好ましくは0.008~3質量%であり、よりさらに好ましくは0.5~2.5質量%である。この範囲とすることで、変色を抑制しつつ、(B)成分由来のべたつきを抑制することができる。
【0018】
(A)成分の配合量に対する(B)成分の配合量((B)/(A))は、質量比で、好ましくは0.003~8であり、より好ましくは0.007~4であり、さらに好ましくは0.1~3であり、よりさらに好ましくは0.5~2である。この範囲であることにより、変色をより効果的に抑制することができる。
【0019】
(C)水
本発明による化粧料は、好ましくは水を含んでなる。水としては、化粧品、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
水の配合量は、本発明による化粧料の総量に対して、好ましくは20~95質量%であり、より好ましくは60~90質量%である。
【0020】
本発明による化粧料には、上記成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、多価アルコール、粉末成分、合成樹脂エマルジョン、pH調製剤、酸化防止剤、防腐剤、薬剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0021】
本発明による化粧料は、例えば、ローション、液剤等の可溶化系;乳液、クリーム等の乳化系;メークアップ化粧料等の分散系の他、パック、ゼリー、軟膏等が挙げられる。
【0022】
本発明の化粧料は、常法に従って製造することができる。本発明による化粧料が乳化化粧料である場合に、乳化の方法は特に限定されるものではない。
【実施例0023】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、総量に対する質量%で示す。
【0024】
[実施例101~108、201、301および比較例101~105、201、301]
表1~3に示される配合で、実施例101~108、201、301および比較例101~105、201、301の化粧料を調製した。得られた化粧料のpHは表1~3のとおりである。
【表1】
【表2】
【表3】
【0025】
[色差評価]
実施例および比較例の化粧料を、調製直後に、それぞれ、色差計(「分光測色計CM-2002」、コニカミノルタ株式会社)を用いて、L、a、およびb値を測色し、測色値から、イオン交換水を用いた場合の測定値との色差ΔE0を算出した。さらに、それぞれ50mlのサンプル管に入れ、6000Lx以上の高照度環境下で1週間放置後に、上記と同様に測色し、イオン交換水を用いた場合の測定値との色差ΔE1wを算出した。そして、ΔE1w-ΔE0を計算した。これらの結果は表1~3に記載のとおりである。
【0026】
[変色率評価]
(A)成分の配合量が同じで、かつpHがほぼ同じ値で、(B)成分を含まない比較例を基準(基準は、表1では比較例101、表2では比較例201、表3では比較例301である)として、
(ΔE1w-ΔE0)/(基準の(ΔE1w-ΔE0))×100
を計算することにより、変色率を算出した。得られた結果は表1~3に記載のとおりである。
基準の変色率は100%となる。変色率の数値が低いほど、変色抑制効果が高いと考えられる。
【0027】
[使用性評価]
実施例および比較例の化粧料を、専門パネル10名が肌に塗布して、「べたつきのなさ」について評価した。各専門パネルの評価をもとに、以下の基準に従って、判定した。得られた結果は、表1~3に記載のとおりである。
A:パネル8~10名がべたつきがないと回答した。
B:パネル6~7名がべたつきがないと回答した。
C:パネル3~5名がべたつきがないと回答した。
D:パネル1~3名がべたつきがないと回答した。