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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048154
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】フラックス用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C23G 5/024 20060101AFI20240401BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20240401BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20240401BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20240401BHJP
   C23G 5/036 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C23G5/024
C11D17/08
C11D7/32
C11D7/50
C23G5/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154039
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健太
【テーマコード(参考)】
4H003
4K053
【Fターム(参考)】
4H003BA12
4H003DA09
4H003DA15
4H003DB03
4H003EB07
4H003EB12
4H003EB20
4H003EB22
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA28
4K053PA06
4K053QA01
4K053RA32
4K053RA51
4K053RA59
4K053SA06
4K053SA18
4K053YA03
(57)【要約】
【課題】一態様において、200℃以上の加熱処理後の変色した金属及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、溶剤(成分A)、下記式(I)で表されるポリアミン化合物(成分B)、下記式(II)で表される化合物(成分C)、及び、水(成分D)を含む、フラックス用洗浄剤組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤(成分A)、下記式(I)で表されるポリアミン化合物(成分B)、下記式(II)で表される化合物(成分C)、及び、水(成分D)を含む、フラックス用洗浄剤組成物。
【化1】
式(I)において、R1、R2、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、アミノエチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はメチルエチレン基を示し、mは、0以上4以下の整数を示す。
【化2】
式(II)において、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基又は官能基を示すか、あるいは、式(II)において、R7、R8、R9、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基又は官能基を示し、R10とR11はa、b、c、dの炭素原子と共にベンゼン環を形成する。
【請求項2】
pHが6以上10以下である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分Bの含有量が、0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分Cの含有量が、0.1質量%以上8質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分Aの含有量が、60質量%以上99.5質量%以下である、請求項1から4のいずれかの洗浄剤組成物。
【請求項6】
成分Bは、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
成分Cは、2,2’-ビピリジル及び1,10-フェナントロリンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
成分Dの含有量が、5%質量以上35質量%以下である、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
フラックスを有する被洗浄物を、請求項1から8のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、
フラックスを有する被洗浄物は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程を経た基板である、洗浄方法。
【請求項10】
金属部材の金属が銅を含む、請求項9に記載の洗浄方法。
【請求項11】
被洗浄物の基板表面及び/又は金属部材は、金属が加熱により酸化した部分を含む、請求項9又は10に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フラックス用洗浄剤組成物、及び該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の電子基板の回路を形成する電極には、製造コストを低減する為に、銅、銅合金等の金属が用いられている。
【0003】
プリント配線板の実装方法として、実装密度を向上させた表面実装が広く採用されている。実装密度を向上するために、基板上の配線と電子素子の端子間にナノ金属ペーストを塗布し、加熱によりナノ金属を溶融及び固化させ、基板上の配線と電子素子の端子間を結合させる技術が知られている。
例えば、特許文献1には、特定の銀微粒子と特定の銀粉と珪素含有トリアジン化合物とを含み、さらに沸点が100~300℃の酸無水物であるカルボン酸化合物を焼結助剤として含むペースト組成物からなるダイアタッチ材料を介して接着し、基板上に固定された半導体素子が開示されている。同文献の0051段落には、カルボン酸化合物の沸点が300℃を超えると、焼結の際に揮発せず膜中にフラックス成分(有機酸等の有機物)が残存することとなるので好ましくないことが開示されている。
【0004】
一方、はんだ付け後の電子部品のはんだフラックスを洗浄する技術が知られている。例えば、特許文献2には、物品に付着した各種の工業汚れ、例えばソルダペースト、フラックス残渣、各種オイル等の除去力に優れ、かつ引火点を持たず、しかも常圧下でリサイクル(蒸留再生)可能な、グリコール系の工業用共沸洗浄剤として、特定のグリコール系溶剤(A)と、水(B)と、必要に応じて常圧下における沸点が160~230℃の3級アミン(C)とを特定比率で含み、常圧下の共沸点が90~100℃であるものを含有する、リサイクル可能な工業用共沸洗浄剤が開示されている。そして、実施例では、ジエチレングリコールジエチルエーテル、水及びN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミンからなる洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-35721号公報
【特許文献2】国際公開第2015/060379号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸(フラックス成分)を含むナノ金属ペーストを塗布し、加熱によりナノ金属を溶融及び固化させて、基板上の配線と電子素子の端子間を結合させる際には、金属を溶融させるために基板を200℃以上の高温で保持する工程が必要となる。この工程を経た基板上に酸を主成分とするフラックスが残存すると、これを洗浄する必要がある。しかしながら、基板表面や金属部材の金属の種類によっては、200℃以上の高温で保持することによって表面が酸化して変色する場合がある。そのため、200℃以上の加熱処理により変色した部分、すなわち、酸化した金属(金属酸化物)を除去できる洗浄剤組成物が求められる。しかしながら、特許文献2の洗浄剤では、高温で酸化した金属の除去性が十分でない。
【0007】
そこで、本開示は、200℃以上の加熱処理後の変色した金属及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、溶剤(成分A)、下記式(I)で表されるポリアミン化合物(成分B)、下記式(II)で表される化合物(成分C)、及び、水(成分D)を含む、フラックス用洗浄剤組成物に関する。
【化1】
式(I)において、R1、R2、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、アミノエチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はメチルエチレン基を示し、mは、0以上4以下の整数を示す。
【化2】
式(II)において、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基又は官能基を示すか、あるいは、式(II)において、R7、R8、R9、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基又は官能基を示し、R10とR11はa、b、c、dの炭素原子と共にベンゼン環を形成する。
【0009】
本開示は、一態様において、フラックスを有する被洗浄物を、本開示のフラックス用洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、フラックスを有する被洗浄物は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程を経た基板である、洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、200℃以上の加熱処理後の変色した金属及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物及び洗浄方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、溶剤と式(I)のポリアミン化合物と式(II)の化合物とを組み合わせて用いることで、200℃以上の加熱処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックスの両方の除去性を向上できるという知見に基づく。
【0012】
すなわち、本開示は、一態様において、溶剤(成分A)、上記式(I)で表されるポリアミン化合物(成分B)、上記式(II)で表される化合物(成分C)、及び、水(成分D)を含む、フラックス用洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)に関する。
【0013】
本開示によれば、200℃以上の加熱処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物を提供できる。
【0014】
本開示の効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分はあるが、以下のように推察される。
本開示の洗浄剤組成物では、特定のポリアミン化合物(成分B)が、変色した金属(例えば、酸化銅等の金属酸化物)に対して吸着し、ポリアミン化合物金属錯体(例えば、ポリアミン化合物銅錯体)を形成する。これは、特定のポリアミン化合物(成分B)の金属酸化物(例えば、酸化銅)との反応活性化エネルギーが低いため、速度論に則り優先的に進行するからである。一方、ポリアミン化合物銅錯体等の錯体は、主成分となる溶剤(成分A)との親和性が低く、酸化銅等の金属酸化物表面からの拡散が進行せず酸化銅等の金属酸化物の除去が完結しない。しかし、本開示では、前記式(II)で表される化合物(成分C)が、ポリアミン化合物銅錯体等の錯体から銅イオン等の金属イオンを奪い、より溶剤(成分A)と親和性高いCu錯体等の錯体を形成し溶剤(成分A)中へ拡散が進行する。この逐次反応により溶解反応が進行し酸化銅等の金属酸化物の除去が完結する。式(II)化合物(成分C)がポリアミン化合物銅錯体から銅イオンを奪いやすくなり、溶剤(成分A)と親和性の高い錯体が形成され酸化銅等の金属酸化物の除去が進行すると考えられる。また、フラックス除去性においてはフラックス中に含有されるロジン酸とポリアミン化合物の中和反応によって溶解性を高めると考えられる。
ただし、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
本開示における「フラックス」とは、一又は複数の形態において、焼結工程(例えば、200℃以上の高温で保持する工程)により2つの部材間を接合するために用いられるフラックスであり、例えば、放熱板と半導体素子との接合や、放熱板と基板との接合に用いられる。フラックスは、一又は複数の実施形態において、酸を主成分とする接合助剤である。
本開示における「フラックス用洗浄剤組成物」は、一又は複数の実施形態において、焼結工程により2つの部材間を接合した後に残存するフラックスを除去するための洗浄剤組成物をいう。
【0016】
[成分A:溶剤]
本開示の洗浄剤組成物は、溶剤(以下、「成分A」ともいう)を含む。成分Aとしては、一又は複数の実施形態において、フラックス除去性向上の観点から、下記式(III)で表される化合物、下記式(IV)で表される化合物及び下記式(V)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の溶剤であることが好ましい。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0017】
<式(III)で表される化合物>
15-O-(AO)n-R16 (III)
【0018】
上記式(III)において、R15は、フェニル基又は炭素数1以上8以下のアルキル基を示し、フラックス除去性向上の観点から、フェニル基又は炭素数4以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数4以上6以下のアルキル基がより好ましい。R16は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、すすぎ容易性の観点から、水素原子が好ましく、フラックス除去性向上の観点から、炭素数2以上4以下のアルキル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)であり、同様の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。nは、AOの付加モル数であって、1以上3以下の整数を示し、同様の観点から、1又は2が好ましく、2がより好ましい。
【0019】
上記式(III)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル等のモノフェニルエーテル;炭素数1以上8以下のアルキル基を有するエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルキルエーテル;炭素数1以上8以下のアルキル基及び炭素数1以上4以下のアルキル基を有するエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル等のジアルキルエーテル;フェニル基及び炭素数1以上4以下のアルキル基を有するエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、ジエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、トリエチレングリコールフェニルアルキルエーテル等のフェニルアルキルエーテル;等が挙げられる。これらのなかでも、上記式(III)で表される化合物としては、フラックス除去性向上の観点から、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びトリエチレングリコールジブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールジブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DBDG)、及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0020】
<式(IV)で表される化合物>
17-CH2OH (IV)
【0021】
上記式(IV)において、R17は、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基を示し、フラックス除去性向上の観点から、フェニル基、シクロヘキシル基又はテトラヒドロフリル基が好ましく、フェニル基又はテトラヒドロフリル基がより好ましい。
【0022】
上記式(IV)で表される化合物としては、例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキサンメタノール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記式(IV)で表される化合物としては、フラックス除去性向上の観点から、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ベンジルアルコール(BzOH)及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0023】
<式(V)で表される化合物>
【化3】
【0024】
上記式(V)において、R18、R19、R20、R21はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基又は水酸基を示し、フラックス除去性向上の観点から、R18、R19、R20、R21のいずれか一つが炭素数1以上8以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下の炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、ビニル基のいずれかであることが更に好ましい。
【0025】
上記式(V)で表される化合物としては、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン、3-ヒドロキシプロピル-2-ピロリドン、4-ヒドロキシ-2-ピロリドン、4-フェニル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。上記式(V)で表される化合物としては、フラックス除去性向上の観点から、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロ
リドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン、及び5-メチル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン及び1-ビニル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)が更に好ましい。
【0026】
成分Aは、1種類、2種類の組合せ、又はそれ以上の組合せであってもよい。成分Aが2種類の組合せである場合、成分Aとしては、例えば、上記式(III)で表される化合物から選ばれる2種の組合せ、上記式(III)で表される化合物と上記式(IV)で表される化合物との組合せ、上記式(III)で表される化合物と上記式(V)で表される化合物との組合せなどが挙げられる。
【0027】
成分Aとしては、フラックス除去性向上の観点から、上記式(III)で表される化合物である、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DBDG);上記式(IV)で表される化合物である、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール;及び上記式(V)で表される化合物である、1-メチル-2-ピロリドン(NMP);から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、及び1-メチル-2-ピロリドン(NMP)から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0028】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は、フラックス除去性向上の観点から、60質量%以上が好ましく、62質量%以上がより好ましく、64質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、99.5質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、77質量%以下が更に好ましい。本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は、60質量%以上99.5質量%以下が好ましく、62質量%以上80質量%以下がより好ましく、64質量%以上77質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0029】
[成分B:式(I)で表されるポリアミン化合物]
本開示の洗浄剤組成物は、下記式(I)で表されるポリアミン化合物(以下、「成分B」ともいう)を含む。
【化4】
【0030】
式(I)において、R1、R2、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、アミノエチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はメチルエチレン基(-CH2CH(CH3)-)を示し、mは、0以上4以下の整数を示す。
式(I)において、R1、R2、R5及びR6はそれぞれ独立に、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、水素原子が好ましい。R3及びR4はそれぞれ独立に、同様の観点から、エチレン基、プロピレン基又はメチルエチレン基が好ましい。mは、同様の観点から、0以上3以下が好ましく、0以上2以下がより好ましい。
【0031】
成分Bとしては、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ネオペンタンジアミン、3-メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N-(β―アミノエチル)エタノールアミン、アミノエチルイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらのなかでも、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、成分Bは、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ネオペンタンジアミン、3-メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、及びトリエチレンテトラミンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0032】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.75質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.75質量%以上8質量%以下が更に好ましく、0.75質量%以上5質量%以下が更に好ましく、1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種類以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0033】
本開示の洗浄剤組成物において、成分Bと成分Aとの質量比(B/A)は、フラックス除去性向上の観点から、0.005以上が好ましく、0.009以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、そして、変色した金属の除去性向上の観点から、0.1以下が好ましく、0.07以下がより好ましく、0.03以下が更に好ましい。より具体的には、質量比(B/A)は、0.005以上0.1以下が好ましく、0.009以上0.07以下がより好ましく、0.01以上0.03以下が更に好ましい。
【0034】
[成分C:式(II)で表される化合物]
本開示の洗浄剤組成物は、下記式(II)で表される化合物(以下、「成分C」ともいう)を含む。
【化5】
【0035】
式(II)において、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基又は官能基を示すか、あるいは、式(II)において、R7、R8、R9、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基又は官能基を示し、R10とR11はa、b、c、dの炭素原子と共にベンゼン環を形成する。炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。官能基としては、例えば、水酸基が挙げられる。
式(II)において、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、変色した金属の除去性向上の観点から、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。式(II)において、R10とR11はa、b、c、dの炭素原子と共にベンゼン環を形成する場合、R7、R8、R9、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、同様の観点から、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0036】
成分Cとしては、変色した金属の除去性向上の観点から、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン、2,6-ビス-[ピリジル-(2)]-ピリジン、2,2’-ビキノリン、2,2’-ビピリジン-5-カルボン酸、2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸、及び4,7-ジヒドロキシ-1,10-フェナントロリンから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、変色した金属の除去性向上の観点から、2,2'-ビピリジル、及び1,10-フェナントロリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0037】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、変色した金属の除去性向上の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.35質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.8質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.35質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上4質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以上4質量%以下が更に好ましい。成分Cが2種類以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0038】
本開示の洗浄剤組成物において、成分Bと成分Cとの質量比(B/C)は、変色した金属の除去性向上の観点から、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、そして、フラックス除去性向上の観点から、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、3以下が更に好ましい。より具体的には、質量比(B/C)は、0.1以上8以下が好ましく、0.5以上6以下がより好ましく、0.8以上5以下がさらに好ましく、0.8以上3以下が更に好ましい。
【0039】
[成分D:水]
本開示の洗浄剤組成物は、水(以下、「成分D」ともいう)を含む。成分Dとしては、イオン交換水、RO水(逆浸透膜処理水)、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量は、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、そして、フラックス除去性向上の観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物における成分Dの含有量は、5質量%以上35質量%以下が好ましく、8質量%以上30質量%以下がより好ましく、15質量%以上30質量%以下が更に好ましく、15質量%以上25質量%以下が更に好ましい。
【0040】
[その他の成分]
本開示の洗浄剤組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常洗浄剤に用いられる、キレート剤、ベンゾトリアゾール(BTA)等の防錆剤、増粘剤、分散剤、成分B以外の塩基性物質、pH調整剤、高分子化合物、アルキルグルコシド等の界面活性剤、可溶化剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消泡剤、酸化防止剤を適宜含有することができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるその他の成分の含有量は、0質量%以上25質量%以下が好ましく、0質量%以上20質量%以下がより好ましく、0質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
【0041】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、珪素含有トリアジン化合物を実質的に含まない。例えば、本開示の洗浄剤組成物の使用時における珪素含有トリアジン化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、金属ナノ粒子を分散させる分散剤を実質的に含まない。例えば、本開示の洗浄剤組成物の使用時における金属ナノ粒子を分散させる分散剤の含有量は、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0042】
[洗浄剤組成物の製造方法]
本開示の洗浄剤組成物は、例えば、成分A、成分B、成分C、成分D、及び、必要に応じて上述したその他の成分を公知の方法で配合することにより製造できる。一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物は、少なくとも成分Aと成分Bと成分Cと成分Dとを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも成分A、成分B、成分C及び成分Dを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、成分C、成分D及び必要に応じてその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量と同じとすることができる。本開示において「洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量」とは、洗浄時、すなわち、洗浄剤組成物の洗浄への使用を開始する時点での各成分の含有量をいう。
【0043】
[洗浄剤組成物のpH]
本開示の洗浄剤組成物のpHは、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、6以上が好ましく、7以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、そして、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。また、本開示の洗浄剤組成物のpHは、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、pH6以上10以下が好ましく、pH7以上10以下がより好ましく、pH8以上9以下が更に好ましい。pHは、必要により、硝酸、硫酸等の無機酸;モノカルボン酸、オキシカルボン酸、多価カルボン酸、アミノポリカルボン酸、アミノ酸、パラトルエンスルホン酸(PTS)、カプリル酸等の有機酸;及びそれらの金属塩やアンモニウム塩、アルカリ剤等のpH調整剤を用いて調整することができる。本開示において洗浄剤組成物のpHは、25℃における洗浄剤組成物の使用時のpHである。
【0044】
[被洗浄物]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、フラックスを有する被洗浄物の洗浄に使用される。
フラックスを有する被洗浄物は、一又は複数の実施形態において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(加熱工程)を経た基板が挙げられる。したがって、本開示は、一態様において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(加熱工程)を経た基板の洗浄における、本開示のフラックス用洗浄剤組成物の使用に関する。
前記加熱工程において、加熱温度は、例えば、200℃~350℃が挙げられる。加熱時間は、例えば、3分~5時間が挙げられる。フラックスの熱による変性に対する洗浄性を発揮する観点から、1時間以上加熱された被洗浄物が好ましい。被洗浄物の基板表面及び/又は金属部材は、一又は複数の実施形態において、金属が加熱により変色した部分、すなわち、酸化した部分(金属酸化物)を含む。
前記フラックスは、一又は複数の実施形態において、主成分として酸を含む。酸としては、例えば、アビエチン酸等の有機酸が挙げられる。
前記フラックスを含有するスラリーは、一又は複数の実施形態において、金属粒子をさらに含むことができる。金属粒子は、焼結温度(硬化温度)が300℃以下の金属粒子が好ましく、例えば、錫、銅、銀、又はそれらの混合金属等が挙げられ、銅、銀、又はそれらの混合金属が好ましく、銀がより好ましい。金属粒子は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材間を接合可能な接合材となる。前記フラックスを含有するスラリーは、一又は複数の実施形態において、ダイアタッチペーストとして使用できる。前記フラックスを含有するスラリーが金属粒子をさらに含む場合、前記スラリーは、一又は複数の実施形態において、導電型ダイアタッチペーストとして使用できる。
前記金属部材は、一又は複数の実施形態において、基板上に固定されている。
前記金属部材の金属は、一又は複数の実施形態において、銅、鉄等の金属を含む。前記金属部材としては、例えば、放熱板、電気回路等が挙げられる。
前記基板としては、一又は複数の実施形態において、金属表面を有する基板が挙げられ、例えば、銅板、鋼板、ステンレス鋼板等が挙げられる。
【0045】
[洗浄方法]
本開示は、一態様において、フラックスを有する被洗浄物を、本開示の洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含む、洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。前記フラックスを有する被洗浄物としては、上述した被洗浄物が挙げられる。前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、フラックスを有する被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に接触させることを含む。本開示の洗浄方法によれば、200℃以上の高温処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックスの両方を効率よく除去できる。
前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、本開示のフラックス用洗浄剤組成物を用いて変色した金属を除去することを含む。したがって、本開示は、一態様において、本開示のフラックス用洗浄剤組成物の、変色した金属及びフラックスの除去への使用に関する。変色した金属は、一又は複数の実施形態において、金属が加熱により酸化した部分(金属酸化物)を含む。
被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する方法、又は、被洗浄物に本開示の洗浄剤組成物を接触させる方法としては、例えば、超音波洗浄装置の浴槽内で接触させる方法、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)等が挙げられる。本開示の洗浄剤組成物は、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。
前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、前記被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に浸漬する工程である。浸漬温度は、変色した金属及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましく、そして、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。浸漬時間は、同様の観点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、そして、3時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましく、1時間以下が更に好ましい。
本開示の洗浄方法は、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水及び/又はメタノール等のアルコールでリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。
本開示の洗浄方法は、本開示の洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示の洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的強いものであることがより好ましい。前記超音波の周波数としては、同様の観点から、26~72Hz、80~1500Wが好ましく、36~72Hz、80~1500Wがより好ましい。
【0046】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法に使用するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物を製造するためのキットである。
本開示のキットとしては、一又は複数の実施形態において、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分B及び成分Cを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されていない状態で含み、第1液と第2液とが使用時に混合されるキット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。前記第1液及び第2液には、各々必要に応じて上述したその他の成分が含まれていてもよい。前記第1液及び第2液の少なくとも一方は、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物の調製に用いられる水(成分D)の一部又は全部を含有することができる。一又は複数の実施形態において、前記第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて水(成分D)で希釈されてもよい。
【実施例0047】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
1.洗浄剤組成物の調製(実施例1~21、比較例1~2)
100mLガラスビーカーに、下記表1-1、表1-2及び表2に記載の組成となるように各成分を配合し、下記条件で混合することにより、実施例1~21及び比較例1~2の洗浄剤組成物を調製した。表1-1、表1-2及び表2中の各成分の数値は、断りのない限り、調製した洗浄剤組成物における含有量(質量%)を示す。表1-1、表1-2及び表2中の各洗浄剤組成物のpHは、25℃における洗浄剤組成物のpHであり、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM-30G)の電極を洗浄剤組成物に浸漬して3分後の数値を測定した。
<混合条件>
液温度:25℃
攪拌機:マグネチックスターラー(50mm回転子)
回転数:300rpm
攪拌時間:10分
【0049】
洗浄剤組成物の成分として下記のものを使用する。
(成分A)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)[日本乳化剤株式会社製]
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG) [日本乳化剤株式会社製]
ジエチレングリコールジブチルエーテル(DBDG) [日本乳化剤株式会社製]
ベンジルアルコール(BzOH) [富士フイルム和光純薬株式会社製]
テトラヒドロフルフリルアルコール[富士フイルム和光純薬株式会社製]
1-メチル-2-ピロリドン(NMP)[富士フイルム和光純薬株式会社製]
(成分B)
エチレンジアミン[東京化成工業株式会社製]
1,2-プロパンジアミン[東京化成工業株式会社製]
ジエチレントリアミン[東京化成工業株式会社製]
トリエチレンテトラミン[東京化成工業株式会社製]
(成分C)
2,2'-ビピリジル[東京化成工業株式会社製]
1,10-フェナントロリン[東京化成工業株式会社製]
(成分D)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
(その他の成分)
カプリル酸[東京化成工業株式会社製](pH調整剤)
PTS(パラトルエンスルホン酸)[東京化成工業株式会社製](pH調整剤)
【0050】
2.洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1~21及び比較例1~2の洗浄剤組成物を用いてフラックス除去性及び変色した金属(金属酸化物)の除去性について試験を行い、評価した。
【0051】
<テスト基板>
50mm×20mmのタフピッチ銅板上にアビエチン酸(フラックス)を0.05g塗布し、ホットプレートにて250℃で1時間加熱することで、テスト基板を作製した。アビエチン酸は銅板表面の一部に乗った状態である。
ここで作製された基板は、加熱温度並びに、保持時間から、基板上の金属同士を接合することを模したモデルである。例えば、特許文献1の実施例では200℃で60分保持している。
また、ナノ粒子接合材により接合された半導体素子を有する半導体装置に関する特開2020―74498号公報の[0025]段落には、ナノ粒子接合材は、概ね300℃以下の低温で接合可能な接合材であり、ナノ粒子接合材が焼結された銀すなわち焼結銀である場合、その焼結温度すなわち硬化温度はおよそ210℃であることが記載されている。
【0052】
[フラックス除去性の評価]
60℃に加温した各洗浄剤組成物100g中にテスト基板を浸漬し、38kHz、400Wの出力で超音波により10分間洗浄を行った。その後、洗浄剤組成物からテスト基板を引き上げ、水すすぎを行い、エアブローにて乾燥し、洗浄後の基板を得た。フラックス除去性の評価は、外観を観察し、洗浄前の外観と同様になった部分の面積(フラックスが付着した面積)を洗浄可能な面積から除去率を算出した。除去率は下記式により算出した。
除去率=洗浄後にフラックス除去された面積/洗浄前のフラックスが付着している面積×100
【0053】
[変色した金属(金属酸化物)の除去性]
銅板上にアビエチン酸を乗せずに行ったこと以外は、フラックス洗浄性の評価と同様にして、洗浄後基板を得た。銅板は、高温で処理されたことにより表面が酸化し、茶褐色化する。変色した金属(金属酸化物)の除去性の評価は、外観を観察し、洗浄前の外観と同様になった部分の面積を洗浄可能な面積から除去率を算出した。除去率は下記式により算出した。
変色した金属除去率=洗浄後に変色した金属が除去された面積/洗浄前の変色した金属が付着している面積×100
【0054】
【表1-1】
【0055】
【表1-2】
【0056】
【表2】
【0057】
上記表1-1、表1-2及び表2に示すとおり、実施例1~21の洗浄剤組成物は、比較例1~2に比べて、変色した金属及びフラックスの両方の除去性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示の洗浄剤組成物を用いることにより、変色した金属及びフラックスの両方を効率よく除去できることから、例えば、半導体装置の製造プロセスにおけるフラックスの洗浄工程の短縮化及び製造される半導体装置の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。