(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048157
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20240401BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240401BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240401BHJP
B41J 29/38 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
B65H5/06 F
G03G21/16 195
G03G21/14
B41J29/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154042
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】大石 竜我
(72)【発明者】
【氏名】玉井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】山路 亮典
【テーマコード(参考)】
2C061
2H171
2H270
3F049
【Fターム(参考)】
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061HJ02
2C061HK05
2C061HK07
2C061HK11
2C061HN08
2C061HN15
2H171FA04
2H171FA22
2H171GA02
2H171LA05
2H171QA04
2H171QA24
2H171QB02
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171QC22
2H171SA11
2H171SA12
2H171SA15
2H171SA19
2H171SA20
2H171SA22
2H171SA28
2H171SA31
2H270KA04
2H270KA32
2H270KA42
2H270LC02
2H270LC04
2H270MA38
2H270MB07
2H270MB43
2H270MC55
2H270MC72
2H270MD17
2H270MD29
2H270PA14
2H270ZC03
3F049AA01
3F049DA12
3F049DA19
3F049DB04
3F049EA24
3F049LA01
3F049LB03
3F049LB05
(57)【要約】
【課題】厚さの異なる媒体搬送を両立するために、媒体の搬送動作を一時停止することなく、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持する挟持圧を調整可能にする。
【解決手段】第1の搬送路11の第1の搬送手段1と、第1の搬送路11とは別の第2の搬送路12の第2の搬送手段2と、第1の搬送手段1を回転駆動する第1の回転駆動手段4と、第2の搬送手段2を回転駆動する第2の回転駆動手段5と、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2の少なくともいずれかに設けられ、対構成の回転体3の圧接力を調整する圧接力調整手段6と、を備え、圧接力調整手段6は、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2のいずれかが媒体Sを挟持して搬送するときに、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2に対して媒体Sを搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源を利用し、媒体Sを挟持して搬送する側の搬送手段の圧接力を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の搬送路に設けられ、対構成の回転体で媒体を挟持して搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送路とは別の第2の搬送路に設けられ、対構成の回転体で媒体を挟持して搬送する第2の搬送手段と、
前記第1の搬送手段の対構成の回転体を回転駆動する第1の回転駆動手段と、
前記第2の搬送手段の対構成の回転体を回転駆動する第2の回転駆動手段と、
前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段の少なくともいずれかに設けられ、前記対構成の回転体の圧接力を調整する圧接力調整手段と、
を備え、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段のいずれかが前記媒体を挟持して搬送するときに、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に対して前記媒体を搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源を利用し、前記媒体を挟持して搬送する側の搬送手段の前記圧接力を調整することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、前記薄い媒体以外である場合に比べて前記圧接力が小さくなるように調整するものであることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段の前記対構成の回転体が回転駆動を開始した以降に、前記圧接力を調整するものであることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段及び前記第2の搬送手段の両方の前記圧接力を調整することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記対構成の回転体を接触位置と非接触位置との間で接離させる接離動作をも含むものであることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に設けられ、前記圧接力を可変にする可変手段と、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に対して前記媒体を搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源の駆動力を前記可変手段に伝達する駆動伝達手段と、を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体搬送装置において、
前記駆動伝達手段は前記駆動源によって回転する回転要素を有し、
前記可変手段は前記回転要素に追従して回転するカム部材を介して前記圧接力を可変にすることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項6に記載の媒体搬送装置において、
前記第1の回転駆動手段又は前記第2の回転駆動手段は正逆回転可能な前記駆動源を有し、
前記駆動伝達手段は、前記第1の回転駆動手段又は前記第2の回転駆動手段の前記駆動源が逆回転駆動するときに、当該逆回転駆動に伴う駆動力を前記可変手段に伝達する断続要素を備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置にて搬送された前記媒体に対して予め決められた処理を施す処理手段と、
を備えたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の媒体処理装置において、
前記第1の搬送路及び前記第2の搬送路が前記媒体の搬送方向下流側で合流し、合流後の第3の搬送路中に前記媒体を位置合わせする位置合せ手段を備えていることを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さの異なる媒体を搬送する媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の媒体搬送装置としては、例えば特許文献1に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、加圧手段により相互に圧接する回転体の圧接ニップで、画像が担持された記録媒体を挟持搬送して画像を定着する定着装置において、加圧手段の加圧力を可変とする加圧力調整手段を備え、加圧力調整手段が回転体を駆動する駆動源で駆動される態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-201976号公報(発明の実施の形態、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、媒体の搬送動作を一時停止することなく、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持する挟持圧を調整可能にする媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の技術的特徴は、第1の搬送路に設けられ、対構成の回転体で媒体を挟持して搬送する第1の搬送手段と、前記第1の搬送路とは別の第2の搬送路に設けられ、対構成の回転体で媒体を挟持して搬送する第2の搬送手段と、前記第1の搬送手段の対構成の回転体を回転駆動する第1の回転駆動手段と、前記第2の搬送手段の対構成の回転体を回転駆動する第2の回転駆動手段と、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段の少なくともいずれかに設けられ、前記対構成の回転体の圧接力を調整する圧接力調整手段と、を備え、前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段のいずれかが前記媒体を挟持して搬送するときに、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に対して前記媒体を搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源を利用し、前記媒体を挟持して搬送する側の搬送手段の前記圧接力を調整することを特徴とする媒体搬送装置である。
【0006】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記圧接力調整手段は、前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、前記薄い媒体以外である場合に比べて前記圧接力が小さくなるように調整するものであることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第3の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段の前記対構成の回転体が回転駆動を開始した以降に、前記圧接力を調整するものであることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第4の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段及び前記第2の搬送手段の両方の前記圧接力を調整することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記圧接力調整手段は、前記対構成の回転体を接触位置と非接触位置との間で接離させる接離動作をも含むものであることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第6の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に設けられ、前記圧接力を可変にする可変手段と、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に対して前記媒体を搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源の駆動力を前記可変手段に伝達する駆動伝達手段と、を有することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第7の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記駆動伝達手段は前記駆動源によって回転する回転要素を有し、前記可変手段は前記回転要素に追従して回転するカム部材を介して前記圧接力を可変にすることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第8の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第1の回転駆動手段又は前記第2の回転駆動手段は正逆回転可能な前記駆動源を有し、前記駆動伝達手段は、前記第1の回転駆動手段又は前記第2の回転駆動手段の前記駆動源が逆回転駆動するときに、当該逆回転駆動に伴う駆動力を前記可変手段に伝達する断続要素を備えていることを特徴とする媒体搬送装置である。
【0007】
本発明の第9の技術的特徴は、第1乃至第8の技術的特徴のいずれかを備えた媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置にて搬送された前記媒体に対して予め決められた処理を施す処理手段と、を備えたことを特徴とする媒体処理装置である。
本発明の第10の技術的特徴は、第9の技術的特徴を備えた媒体処理装置において、前記第1の搬送路及び前記第2の搬送路が前記媒体の搬送方向下流側で合流し、合流後の第3の搬送路中に前記媒体を位置合わせする位置合せ手段を備えていることを特徴とする媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、媒体の搬送動作を一時停止することなく、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持する挟持圧を調整可能にすることができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体を挟持して搬送するに際し、媒体に対する挟持圧を調整し易くすることができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、第1の搬送手段又は第2の搬送手段による媒体搬送動作と並行して媒体に対する挟持圧を調整することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、第1の搬送路、第2の搬送路とも挟持圧を調整することができ、いずれの搬送路も厚さの異なる媒体を搬送することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体を挟持して搬送するに際し、媒体に対して適切な挟持圧を調整できることに加え、対構成の回転体を接離することもできる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、圧接力調整手段を可変手段と駆動伝達手段とに機能分離して構築することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、圧接力調整手段を機能分離して構築するに当たって、駆動伝達手段、可変手段を容易に実現することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、圧接力調整手段を機能分離して構築するに当たって、第1の回転駆動手段又は第2の回転駆動手段の逆回転駆動を有効に利用して容易に構築することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持して搬送する挟持圧を調整可能にする媒体搬送装置を含む媒体処理装置を提供することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、複数の搬送路が合流して媒体の位置合せ可能な搬送路において、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持して搬送する挟持圧を調整可能な媒体搬送装置を組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明が適用される媒体搬送装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【
図2】実施の形態1に係る媒体処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1で用いられる媒体搬送装置及びその周辺部を示す説明図である。
【
図4】(a)は実施の形態1で用いられる駆動伝達機構及びニップ圧調整機構の一例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
【
図5】(a)は
図4(a)中V方向から見た矢視図で、媒体搬送時の駆動伝達機構の挙動を示す説明図、(b)はニップ圧調整時の駆動伝達機構及びニップ圧調整機構の挙動を示す説明図である。
【
図6】実施の形態1に係る媒体搬送装置による媒体搬送制御を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示す搬送ロールのニップ圧調整の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る媒体搬送装置の動作例(1)を示す説明図である。
【
図9】実施の形態1に係る媒体搬送装置の動作例(2)を示す説明図である。
【
図10】変形の形態1に係る媒体搬送装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された媒体搬送装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、媒体搬送装置は、第1の搬送路11に設けられ、対構成の回転体3(3a,3b)で媒体Sを挟持して搬送する第1の搬送手段1と、第1の搬送路11とは別の第2の搬送路12に設けられ、対構成の回転体3(3a,3b)で媒体Sを挟持して搬送する第2の搬送手段2と、第1の搬送手段1の対構成の回転体3を回転駆動する第1の回転駆動手段4と、第2の搬送手段2の対構成の回転体3を回転駆動する第2の回転駆動手段5と、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2の少なくともいずれかに設けられ、対構成の回転体3の圧接力を調整する圧接力調整手段6と、を備え、圧接力調整手段6は、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2のいずれかが媒体Sを挟持して搬送するときに、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2に対して媒体Sを搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段(
図1では例えば第2の回転駆動手段5)の駆動源を利用し、媒体Sを挟持して搬送する側の搬送手段(
図1では例えば第1の搬送手段1)の圧接力を調整するものである。
尚、
図1中では、第1の搬送手段1が回転駆動される場合を図示しているが、例えば第2の搬送手段2が回転駆動される場合には、圧接力調整手段6は、第1の搬送手段1に対して媒体Sを搬送する駆動力を付与していない側の第1の回転駆動手段4の駆動源を利用し、第2の搬送手段2の圧接力を調整するようにすればよい。
【0011】
そして、この種の媒体搬送装置は、媒体Sに対して予め決められた処理を施す図示外の処理手段を備えた媒体処理装置に組み込まれ、処理手段に対して媒体Sを搬送し、あるいは、処理手段で処理された媒体Sを搬送する機能を具現化する装置として用いられる。
尚、ここでいう処理手段には、媒体Sに対して画像を形成する作像手段のほか、媒体Sに対して孔開け処理、裁断処理、仕分け処理、折り処理等の各種処理を施すものを広く含む。
【0012】
このような技術的手段において、薄い媒体Sとしては、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2で搬送する場合に、しわを発生する可能性のあるものを適用対象とすればよく、例えば60gsm以下の媒体を薄い媒体Sとする等適宜選定して差し支えない。
また、第1の搬送手段1、第2の搬送手段2はいずれも対構成の回転体3(3a,3b)を備えていればよい。ここで、回転体3としては、ロール状部材、ベルト状部材のいずれをも含み、ロール状部材とベルト状部材との組み合わせでもよい。また、対構成の回転体3としては、一方を駆動回転体として駆動し、他方を駆動回転体に接触して従動回転する従動回転体として構成すればよい。
更に、第1の搬送路11と第2の搬送路12とは別の搬送路であればよく、途中で合流する態様に限らず、合流しない態様も含む。
更にまた、第1の回転駆動手段4、第2の回転駆動手段5は対構成の回転体3を回転駆動させるものであればよく、駆動源と駆動源からの駆動力を駆動回転体に伝達する駆動伝達系とを備えたものが代表的である。
【0013】
また、圧接力調整手段6は、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2のいずれか一方に設けてもよいし、両方に設けてもよい。また、圧接力の調整については、媒体Sの厚さに対して適切な圧接力を実験的に求めておき、媒体Sの種類に応じて適切な圧接力を選定可能な圧接力選定テーブルなどを作成するようにすればよい。
また、圧接力調整手段6は、媒体Sを挟持して搬送する側の搬送手段(第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2)の圧接力を調整するタイミングについては、媒体Sを直接搬送している動作の間に限られず、媒体Sの搬送動作を開始する前をも含むものである。
【0014】
次に、本実施の形態に係る媒体搬送装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、圧接力調整手段6の代表的態様としては、媒体Sが予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、薄い媒体以外である場合に比べて圧接力が小さくなるように調整するものであることが挙げられる。これは、薄い媒体に対して薄い媒体以外の媒体と同様の圧接力に調整すると、薄い媒体にしわが発生し易いことを踏まえ、これを回避することを企図したものである。
また、圧接力調整手段6の代表的態様としては、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2の対構成の回転体3が回転駆動を開始した以降に、圧接力を調整するものであることが挙げられる。本例は、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2の回転駆動前に圧接力を調整する必要がない態様を示す。
【0015】
更に、圧接力調整手段6の好ましい態様としては、第1の搬送手段1及び第2の搬送手段2の両方の圧接力を調整することが挙げられる。本例では、第1の搬送路11、第2の搬送路12のいずれも薄い媒体を適切な圧接力で搬送させることが可能である。
また、圧接力調整手段6の別の好ましい態様としては、対構成の回転体3を接触位置と非接触位置との間で接離させる接離動作をも含むものが挙げられる。本例は、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2の対構成の回転体3の圧接力を接触状態のまま調整することに加えて、対構成の回転体3を非接触位置に退避させ、接触状態を一時的に解除することも可能である。
【0016】
更に、圧接力調整手段6の好ましい構成例としては、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2に設けられ、圧接力を可変にする可変手段7と、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2に対して媒体Sを搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段(
図1中例えば第2の回転駆動手段5)の駆動源の駆動力を可変手段7に伝達する駆動伝達手段8と、を有する態様が挙げられる。
本例の圧接力調整手段6の代表的態様としては、駆動伝達手段8は駆動源によって回転する回転要素を有し、可変手段7は回転要素に追従して回転するカム部材を介して圧接力を可変にする態様が挙げられる。
また、本例の別の代表的態様としては、第1の回転駆動手段4又は第2の回転駆動手段5は正逆回転可能な駆動源を有し、駆動伝達手段8は、第1の回転駆動手段4又は第2の回転駆動手段5の駆動源が逆回転駆動するときに、当該逆回転駆動に伴う駆動力を可変手段7に伝達する断続要素を備えている態様が挙げられる。
【0017】
また、媒体搬送装置のレイアウトとしては、第1の搬送路11及び第2の搬送路12が媒体Sの搬送方向下流側で合流し、合流後の第3の搬送路13中に媒体Sを位置合わせする位置合せ手段14を備えている態様が挙げられる。本例では、第1の搬送手段1又は第2の搬送手段2は媒体Sの位置合せに当たって接離動作を必要とすることから、対構成の回転体3に対して圧接力調整に加えて、接離動作も可能に構築することが好ましい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る媒体処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置の基本的構成は、装置筐体20内に例えば複数の色成分画像を作製するための作像エンジン21を搭載し、この作像エンジン21の下方には作像エンジン21に対して媒体を搬送する媒体搬送系80と、作像エンジン21にて作製された画像を媒体に定着させる定着装置70とを備えたものである。
そして、本例では、作像エンジン21は、複数の色成分(本実施の形態ではイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22d)と、各画像形成部22にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)して保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体(用紙又はフィルム)に二次転写(一括転写)する二次転写装置(一括転写装置)50と、を備えている。尚、
図2中、符号40は画像形成装置を操作するための操作パネルである。
【0019】
-画像形成部-
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22d)は、夫々ドラム状の感光体23を有し、各感光体23の周囲には、感光体23が帯電されるコロトロンや転写ロール等の帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像が書き込まれるレーザ走査装置等の露光装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像がYMCKの各色成分トナーにて現像される現像装置26、感光体23上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置27及び感光体23上の残留トナーが除去される感光体清掃装置28を夫々配設したものである。
また、中間転写体30は、複数(本実施の形態では三つ)の張架ロール31~33に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、張架ロール31,33間には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置35が設けられている。
【0020】
-二次転写装置(一括転写装置)-
更に、二次転写装置(一括転写装置)50は、例えば中間転写体30の張架ロール33に対向した部位に転写ロール55を圧接配置すると共に、中間転写体30の張架ロール33を転写ロール55の対向電極をなす対向ロール56としたものである。ここで、本例では、転写ロール55は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっている。対向ロール56(本例では張架ロール33を兼用)には導電性の給電ロール(図示せず)を介して転写電源(図示せず)からの転写電圧を印加し、一方、転写ロール55を接地することで、転写ロール55及び対向ロール56間に所定の転写電界を形成し、転写ロール55と対向ロール56との間で挟持した中間転写体30のニップ領域を二次転写域(一括転写域)TRとして機能するようにしたものである。尚、二次転写装置50は転写ロール55を使用した態様であるが、これに限られるものではなく、転写ロール55を張架ロールの一つとして転写ベルトを掛け渡した転写ベルトモジュール等を用いてもよいことは勿論である。
【0021】
-定着装置-
定着装置70は、媒体の画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール71と、当該加熱定着ロール71に対向して圧接配置され、加熱定着ロール71に追従して回転する加圧定着ロール72とを有し、両定着ロール71,72間の定着領域に媒体上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。
ここで、加熱定着ロール71は例えばロール本体内にヒータを内蔵したり、あるいは、ロール本体外周面に外部ヒータを接触させることでロール本体を加熱するようになっており、また、加圧定着ロール72には必要に応じてヒータを付加するようにしてもよいことは勿論である。尚、本例はロール対構成例を示すものであるが、これに限られるものではなく、加熱定着ロール71を例えば電磁誘導加熱方式を採用した加熱定着ベルトで構成するなど適宜選定して差し支えない。
【0022】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、複数段(本例では二段)の媒体供給容器81,82を有し、媒体供給容器81,82のいずれかから供給される媒体を略鉛直方向に延びる鉛直搬送路83から略水平方向に延びる水平搬送路84を経て二次転写域TRへと至り、その後、転写された画像が保持された媒体を、搬送ベルト85を経由して定着装置70による定着部位に至り、装置筐体20の側方に設けられた媒体排出受け86に排出するものである。
そして更に、媒体搬送系80は、水平搬送路84のうち定着装置70の媒体搬送方向下流側に位置する部分から下方に向かって分岐する反転可能な分岐搬送路87を有し、当該分岐搬送路87で反転された媒体を戻し搬送路88を経て再び鉛直搬送路83から水平搬送路84へと戻し、二次転写域TRにて媒体の裏面に画像を転写し、定着装置70を経て媒体排出受け86へ排出するようになっている。尚、分岐搬送路87には途中から分岐し且つ反転された媒体を媒体排出受け86側に搬送する分岐戻し搬送路89が設けられている。
【0023】
また、装置筐体20の媒体排出受け86の反対側には、鉛直搬送路83と合流して水平搬送路84に向かって側方搬送路90が設けられ、この側方搬送路90の端部には手差し媒体が供給可能な手差し媒体供給器92が設けられている。
そして、水平搬送路84の二次転写域TRの手前には、媒体の位置を整合して二次転写域TRに供給する位置合せ手段としての位置整合ロール95が設けられるほか、各搬送路83,84,87~90には適宜数の搬送手段としての搬送ロール101~110が設けられている。
【0024】
-紙しわ対策の必要性-
この種の画像形成装置においては、媒体として厚さの異なる用紙(厚紙から薄紙まで)を広く用いたいという要請がある。このような要請の中で、例えば80gsm以下の薄紙、特には60gsm以下の薄紙を使用する場合に、紙しわの発生が懸念されている。
ここで、紙しわの発生要因について検討してみるに、薄紙搬送時には、例えば対構成のロール部材からなる搬送ロールの軸方向両端部の僅かな外径差によって紙しわが発生したり、薄紙以外の厚紙搬送を実施する上で、厚紙に対して適切になるように搬送ロールによる搬送力(圧接力に相当)を高く設定する手法が採用されているため、薄紙の場合には、搬送ロールによる搬送力に伴う接触域での押圧に負けてしまい、紙しわの発生が懸念される。
【0025】
従前にあっては、厚さの異なる用紙に合わせて搬送力を調整する調整機構を追加し、紙しわの発生を抑制する技術が既に提案されている。また、個別対応で薄紙専用に媒体搬送装置をチューニングすることで対応する機種も既に提案されている。
しかしながら、前者の対策にあっては、搬送力の調整機構を導入するには、モータやセンサ等の各種部品が必要になり、構成が煩雑でかつ部品点数が増加すると共に、調整機構を設置するためのスペースを確保することが必要になってしまう。このため、比較的大型の高機能機種にはこの種の調整機構を導入することは可能であるが、安価かつ小型の機種に導入することは困難であった。
また、後者の対策にあっては、個別対応で薄紙に対応するために媒体搬送装置のチューニングを実施してしまうと、厚紙搬送性能が著しく低下してしまい、厚紙搬送が困難になるばかりか、厚紙搬送を可能にするためには、別途専門作業員による修復作業が必要になるという虞れもある。
【0026】
そこで、本実施の形態では、既存の媒体搬送装置の構成例を前提とし、簡易な構成で、厚さの異なる媒体の搬送性能を両立する方式を採用することを検討したものである。
-媒体搬送装置の基本構成-
本例では、媒体搬送装置120は、
図2及び
図3に示すように、従前から薄紙に対して紙しわが発生し易い箇所を想定し、第1の搬送路11としての側方搬送路90と、第2の搬送路12としての鉛直搬送路83とが合流して水平搬送路84につながる箇所に設けられる。
つまり、媒体搬送装置120は、側方搬送路90に設けられる第1の搬送手段1としての搬送ロール101と、鉛直搬送路83に設けられる第2の搬送手段2としての搬送ロール102と、を備えている。
本例では、搬送ロール101は、対構成の回転体として、金属製の回転軸の周囲にロール本体を有する駆動ロール111と、この駆動ロール111に接触して従動回転し、金属製の周囲にロール本体を有する従動ロール112とを備え、駆動ロール111及び従動ロール112間に媒体Sを保持する接触域(ニップ域)を形成したものである。ここで、各ロール本体はポリウレタンゴム等の円筒状の弾性体を回転軸の周囲に積層すると共に、弾性体の表面を保護層(フッ素系樹脂の離型層など)で被覆したものである。
また、搬送ロール102も、略同様の構成からなり、対構成の回転体として、駆動ロール113と、従動ロール114とを備えている。
【0027】
更に、媒体搬送装置120は、搬送ロール101を回転駆動する第1の回転駆動手段としての第1の回転駆動機構130と、搬送ロール102を回転駆動する第2の回転駆動手段としての第2の回転駆動機構135と、搬送ロール101の接触域のニップ圧(媒体Sを挟持する圧接力に相当)を調整するニップ圧調整機構140と、搬送ロール102の接触域のニップ圧を調整するニップ圧調整機構145とを備えている。
【0028】
-回転駆動機構の構成例-
本例において、第1の回転駆動機構130は、搬送ロール101の駆動ロール111を駆動回転する正逆回転可能な駆動モータ131(図中M
1と表示)と、この駆動モータ131の正回転駆動力を搬送ロール101の駆動ロール111に伝達する駆動伝達機構132とを備えている。
一方、第2の回転駆動機構135は、第1の回転駆動機構130と略同様に、搬送ロール102の駆動ロール113を駆動回転する正逆回転可能な駆動モータ136(図中M
2と表示)と、この駆動モータ136の正回転駆動力を搬送ロール102の駆動ロール113に伝達する駆動伝達機構137とを備えている。
ここで、駆動伝達機構132,137は、
図4(a)及び
図5(a)(b)に示す駆動モータ131,136の駆動力を搬送ロール101,102の駆動ロール111,113に伝達する駆動伝達ギア列で構成されている。本例では、駆動伝達ギア列の入力側伝達ギアINが夫々駆動モータ131,136の回転軸と同軸に設けられ、また、出力側伝達ギアOUTが夫々駆動ロール111,113の回転軸と同軸に設けられている。
【0029】
-ニップ圧調整機構の構成例-
本例において、ニップ圧調整機構140は、
図4(a)(b)及び
図5に示すように、搬送ロール101の従動ロール112側に設けられ、駆動ロール111に従動ロール112を押し付ける圧接力を変化させる可変機構150(
図1の可変手段7に相当)と、第2の回転駆動機構135の駆動伝達機構137につながるように設けられ、搬送ロール102の第2の回転駆動機構135の駆動モータ136の駆動力を可変機構150に伝達する駆動伝達部160(
図1の駆動伝達手段8に相当)と、を備えている。
また、ニップ圧調整機構145は、ニップ圧調整機構140と略同様に構成されており、第1の回転駆動機構130の駆動モータ131が逆回転駆動するときに、当該逆回転駆動に伴う駆動力を駆動伝達部160を介して可変機構150に伝達し、搬送ロール102のニップ圧を適切に調整するものである。
【0030】
ここで、可変機構150は、搬送ロール101,102の従動ロール112,114の両端部に対応して一対設けられる偏心した円板状のカム部材151と、このカム部材151と搬送ロール101,102の従動ロール112,114の軸受ホルダ116との間に介在され、カム部材151のカム周面に接触して予め決められた方向に進退するコロ部材152と、保持ブラケット154を介して予め決められた位置に保持され、コロ部材152と従動ロール112の軸受ホルダ116との間に介在され、カム部材151のカム周面にコロ部材152を付勢する付勢バネ153と、を備え、カム部材151の回転位置に伴って従動ロール112の軸受ホルダ116の位置を変化させ、駆動ロール111に対する従動ロール112の圧接力を変化させるものである。
尚、カム部材151の回転軸155に遮光板156を取付け、図示外の光学センサにて遮光板156の領域を検出することで、カム部材151の回転量を規制するようにしてもよい。また、遮光板156に所定角度間隔毎に図示外のスリットを形成し、図示外の光学センサにてスリット数を計数することでカム部材151の回転量を複数選定し、媒体種に応じてニップ圧を複数種選定し得るようにしてもよい。
【0031】
また、駆動伝達部160は、
図4(a)に示すように、駆動伝達機構132,137を構成する駆動伝達ギア列の入力側伝達ギアINに噛合し、駆動モータ131,136が正回転駆動したときの入力側伝達ギアINの回転方向をm1とすると、入力側伝達ギアINが予め決められた方向m1に回転駆動するときに、入力側伝達ギアINに追従する回転動作を遮断し、入力側伝達ギアINの回転方向がm1とは逆の回転方向m2である場合には入力側伝達ギアINに追従して回転させる断続要素としての一方向クラッチギア161と、カム部材151の回転軸と同軸に設けられ、一方向クラッチギア161に噛合し、一方向クラッチギア161の回転に伴ってカム部材151を回転させる伝達ギア162とを備えたものである。
【0032】
このような駆動伝達部160を備えた態様では、
図5(a)に示すように、例えば第2の搬送路としての鉛直搬送路83の搬送ロール102で媒体Sを搬送する場合には、第2の回転駆動機構135の駆動モータ136(図中M
2で表示)を正回転駆動することで、駆動伝達機構137の駆動伝達ギア列を通じて搬送ロール102の駆動ロール113を正回転駆動させ、搬送ロール102による媒体Sの搬送動作を実施するようにすればよい。
このとき、駆動伝達ギア列の入力側伝達ギアINは回転方向m1に回転するため、駆動伝達部160の一方向クラッチギア161は回転することはなく、ニップ圧調整機構140が駆動モータ136によって作動することはない。
【0033】
また、搬送ロール101では薄紙を搬送対象とするため、搬送ロール101のニップ圧を薄紙仕様にする必要がある。このとき、
図5(b)に示すように、第2の回転駆動機構135の駆動モータ136を逆回転駆動することで、駆動伝達機構137の駆動伝達ギア列の入力側伝達ギアINは回転方向m2に所定角度だけ回転する。すると、ニップ圧調整機構140の駆動伝達部160の一方向クラッチギア161が入力側伝達ギアINに追従して回転し、伝達ギア162を介して可変機構150のカム部材151を所定角度だけ回転させる。この結果、カム部材151の回転位置に伴って駆動ロール111に対する従動ロール112の圧接力が変化し、搬送ロール101のニップ圧を薄紙仕様に調整する。
【0034】
本例では、搬送ロール101は、
図5(b)に示すように、第1の回転駆動機構130の駆動モータ131(図中M
1で表示)の正回転駆動を受け、駆動伝達機構132の駆動伝達ギア列を介して駆動ロール111が回転駆動される。
一方、搬送ロール101は、
図5(b)に示すように、第2の回転駆動機構135の駆動モータ136の逆回転駆動を受け、駆動伝達機構137を介して伝達された回転駆動力がニップ圧調整機構140に伝達され、駆動ロール111と従動ロール112との圧接力が変化し、ニップ圧が薄紙仕様に調整される。
このとき、搬送ロール101のニップ圧調整のタイミングは、媒体Sの搬送動作が開始される前に行われ、搬送ロール101による媒体Sの搬送動作が開始されるようにすればよい。但し、媒体Sの搬送動作の途中であっても、例えば媒体種が変更されたような場合にあっては、搬送ロール101のニップ圧調整を行い、しかる後、媒体Sの搬送動作を再開するようにすればよい。
【0035】
-媒体搬送装置の制御系-
本例では、
図3に示すように、厚さの異なる媒体Sを適切に位置合わせし、かつ、適切に搬送するための制御装置170が設けられている。
この制御装置170は、各種プロセッサを含むマイクロコンピュータにて構成されている。ここでいう「プロセッサ」とは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
更に、本例では、例えば
図3に示すように、媒体種判別器180が設けられている。この媒体種判別器180は、媒体Sとしての用紙が例えば60gsm以下の薄紙であるか、薄紙以外の厚紙であるかを直接検出する厚み検出器や、制御装置170内のメモリに使用可能な媒体種テーブルを用意しておき、この媒体種テーブルから使用する媒体を指定する媒体指定器(例えば
図2の操作パネル40に具備)などを含むものである。
【0036】
本例において、制御装置170は、図示外のメモリに、「媒体搬送制御プログラム(
図6、
図7参照)」等の必要なプログラムを予めインストールしておき、媒体種判別器180からの媒体判別情報に基づいて、媒体搬送制御プログラムを実行し、例えば側方搬送路90の搬送ロール101や鉛直搬送路83の搬送ロール102に適切なニップ圧調整を行い、厚さの異なる媒体Sを適切な搬送力で搬送し、搬送対象である薄紙にしわ等が発生しないようにしたものである。
【0037】
-媒体搬送装置の制御動作-
図6に示すように、制御装置170は、先ず媒体経路が第1の搬送路11(本例では側方搬送路90に相当)を使用するか否かを判別する。例えば
図2に示すように、手差し媒体供給器92を用いて媒体を手差し供給する場合には、制御装置170は第1の搬送路11を使用すると判断する。逆に、媒体供給容器81,82を用いて媒体を供給する場合には、制御装置170は第1の搬送路11を使用せず、第2の搬送路12(本例では鉛直搬送路83に相当)を使用すると判断する。
ここで、第1の搬送路11(側方搬送路90)を使用すると仮定すると、第1の回転駆動機構130により第1の搬送ロール(本例では搬送ロール101)が正回転駆動される。一方、第2の搬送路12(鉛直搬送路83)を使用すると仮定すると、第2の回転駆動機構135により第2の搬送ロール(本例では搬送ロール102)が正回転駆動される。
【0038】
この後、制御装置170は、媒体種判別器180からの情報に基づいて搬送される媒体が予め決められた薄紙か否かを判別する。
ここで、搬送される媒体が薄紙である場合には、使用する搬送ロール101又は102のニップ圧を薄紙仕様に調整する。一方、搬送される媒体が薄紙以外の厚紙(通常用紙も含む)である場合には、使用する搬送ロール101又は102のニップ圧を厚紙仕様に調整する。
本例において、搬送ロール101又は102のニップ圧調整は、例えば
図7に示すように実施される。
同図において、制御装置170は、使用する搬送ロールが第1の搬送ロール(搬送ロール101)か否かを判別し、仮に、第1の搬送ロールを使用する場合には、未使用の第2の搬送ロール(搬送ロール102)の駆動モータ136を逆回転駆動する。一方、第2の搬送ロールを使用する場合には、未使用の第1の搬送ロール(搬送ロール101)の駆動モータ131を逆回転駆動する。
【0039】
そして、制御装置170は、ニップ圧調整に当たって、使用する媒体種から薄紙仕様か否かを判断する。
ここで、薄紙仕様にする場合には、未使用の搬送ロールの回転量を薄紙仕様に選定する。一方、厚紙仕様にする場合には、未使用の搬送ロールの回転量を厚紙仕様に選定する。本例では、薄紙仕様は厚紙仕様に比べて低いニップ圧に調整するものである。
この後、薄紙仕様を選定した場合には、使用する搬送ロール101又は102のニップ圧を薄紙仕様に調整する。一方、厚紙仕様を選定した場合には、使用する搬送ロール101又は102のニップ圧を厚紙仕様に調整する。
【0040】
このように、使用する搬送ロール101又は102のニップ圧調整が行われた後、
図6に示すように、媒体の搬送動作が実施される。
一つの媒体搬送ジョブのうち、媒体の搬送動作が実施されている途中に異なる厚さの媒体が混在しているような場合には、媒体種が変更される時点で、媒体種に応じて使用する搬送ロール101又は102のニップ圧の調整処理が実施された後、媒体の搬送動作が再開される。
このような動作は、媒体搬送ジョブが終了するまで繰り返される。
【0041】
-媒体搬送装置の動作例-
<第1の搬送路を使用する動作例>
今、
図8に示すように、第1の搬送路11(側方搬送路90)を使用する場合には、第1の回転駆動機構130にて搬送ロール101を正回転駆動し、未使用の第2の搬送路12(鉛直搬送路83)の搬送ロール102の第2の回転駆動機構135の駆動モータ136を利用し、媒体種に伴って搬送ロール101のニップ圧を調整する。このとき、第2の回転駆動機構135では、駆動モータ136が逆回転駆動し、この逆回転駆動に伴う駆動力がニップ圧調整機構140に伝達され、搬送ロール101のニップ圧が調整される。尚、駆動モータ136の逆回転駆動時には、搬送ロール102は未使用であるため、駆動伝達機構137の入力側伝達ギアINと出力側伝達ギアOUTとは駆動接続しないようになっている。
【0042】
<第2の搬送路を使用する動作例>
今、
図9に示すように、第2の搬送路12(鉛直搬送路83)を使用する場合には、第2の回転駆動機構135にて搬送ロール102を正回転駆動し、未使用の第1の搬送路11(側方搬送路90)の搬送ロール101の第1の回転駆動機構130の駆動モータ131を利用し、媒体種に伴って搬送ロール102のニップ圧を調整する。このとき、第1の回転駆動機構130では、駆動モータ131が逆回転駆動し、この逆回転駆動に伴う駆動力がニップ圧調整機構145に伝達され、搬送ロール102のニップ圧が調整される。尚、駆動モータ131の逆回転駆動時には、搬送ロール101は未使用であるため、駆動伝達機構132の入力側伝達ギアINと出力側伝達ギアOUTとは駆動接続されないようになっている。
【0043】
◎変形の形態1
図10は変形の形態1に係る媒体搬送装置120を示す。
同図において、媒体搬送装置120の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、更に、第1の搬送路11(側方搬送路90に相当)と第2の搬送路12(鉛直搬送路83に相当)とが下流側で合流し、合流後の第3の搬送路13(水平搬送路84に相当)の搬送ロール103にも本発明を適用するようにしたものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
本例において、水平搬送路84には、二次転写域TRの手前に配設される位置整合ロール95と、この位置整合ロール95の手前で、側方搬送路90及び鉛直搬送路83の合流箇所の直後に形成された湾曲経路部分に配設される搬送ロール103と、を備えている。
【0044】
ここで、位置整合ロール95は、駆動ロール191と、この駆動ロール191に接触して従動する従動ロール192とを備えている。駆動ロール191は駆動伝達機構194を介して駆動モータ193(図中M3と表示)が駆動連結され、また、従動ロール192はニップリリース機構195に支持され、駆動ロール191に対して接離(ニップリリース)可能に移動し、駆動ロール191との間に媒体Sを挟持する接触域(ニップ域)を形成する一方、接触域から離れたリトラクト位置に移動するようになっている。
また、搬送ロール103は、位置整合ロール95と同様に、駆動ロール201及び従動ロール202を備え、駆動ロール201は駆動伝達機構204を介して駆動モータ203(図中M4と表示)が駆動連結され、従動ロール202はニップリリース機構205により支持されている。
本例では、位置整合ロール95にて媒体Sの先端が位置整合のため一時的にせき止められたとき、位置整合ロール95と搬送ロール103との間に掛け渡された媒体Sは逆U字状に変形した状態になるため、位置整合ロール95が媒体Sを位置整合後に送出する場合には、搬送ロール103はニップリリース機構205により媒体Sからリリースすることが必要である。
【0045】
特に、本例では、搬送ロール103は、例えば側方搬送路90の搬送ロール101の近くに配置されていることを踏まえ、搬送ロール103のニップリリース機構205は、専用の駆動源を有しておらず、例えばニップ圧調整機構140又は145と同様な構成を備えるようにしたものである。
この場合、例えば側方搬送路90の搬送ロール101が媒体Sの搬送に使用されないときに、第1の回転駆動機構130の駆動モータ131を利用し、媒体種に伴って搬送ロール103のニップ圧を調整することに加え、カム部材151の形状を工夫することで、搬送ロール103の従動ロール202のリリース動作をも可能になるようにしたものである。
このとき、第1の回転駆動機構130では、駆動モータ131が逆回転駆動し、この逆回転駆動に伴う駆動力がニップリリース機構205に伝達され、搬送ロール103のニップ圧が媒体種に応じて調整されることに加え、従動ロール202のリリース動作が行われる。
尚、本例では、ニップリリース機構205は搬送ロール101の第1の回転駆動機構130の駆動モータ131を駆動源として利用するものであるが、例えば第2の搬送路12の搬送ロール102が媒体Sの搬送に未使用な場合には、搬送ロール102の第2の回転駆動機構135の駆動モータ136を駆動源として利用するようにしてもよい。
【0046】
(付記)
(((1)))
第1の搬送路に設けられ、対構成の回転体で媒体を挟持して搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送路とは別の第2の搬送路に設けられ、対構成の回転体で媒体を挟持して搬送する第2の搬送手段と、
前記第1の搬送手段の対構成の回転体を回転駆動する第1の回転駆動手段と、
前記第2の搬送手段の対構成の回転体を回転駆動する第2の回転駆動手段と、
前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段の少なくともいずれかに設けられ、前記対構成の回転体の圧接力を調整する圧接力調整手段と、
を備え、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段のいずれかが前記媒体を挟持して搬送するときに、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に対して前記媒体を搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源を利用し、前記媒体を挟持して搬送する側の搬送手段の前記圧接力を調整することを特徴とする媒体搬送装置。
(((2)))
(((1)))に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、前記薄い媒体以外である場合に比べて前記圧接力が小さくなるように調整するものであることを特徴とする媒体搬送装置。
(((3)))
(((1)))又は(((2)))に記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段の前記対構成の回転体が回転駆動を開始した以降に、前記圧接力を調整するものであることを特徴とする媒体搬送装置。
(((4)))
(((1)))乃至(((3)))のいずれかに記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段及び前記第2の搬送手段の両方の前記圧接力を調整することを特徴とする媒体搬送装置。
(((5)))
(((1)))乃至(((4)))のいずれかに記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記対構成の回転体を接触位置と非接触位置との間で接離させる接離動作をも含むものであることを特徴とする媒体搬送装置。
(((6)))
(((1)))乃至(((5)))のいずれかに記載の媒体搬送装置において、
前記圧接力調整手段は、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に設けられ、前記圧接力を可変にする可変手段と、前記第1の搬送手段又は前記第2の搬送手段に対して前記媒体を搬送する駆動力を付与していない側の回転駆動手段の駆動源の駆動力を前記可変手段に伝達する駆動伝達手段と、を有することを特徴とする媒体搬送装置。
(((7)))
(((6)))に記載の媒体搬送装置において、
前記駆動伝達手段は前記駆動源によって回転する回転要素を有し、
前記可変手段は前記回転要素に追従して回転するカム部材を介して前記圧接力を可変にすることを特徴とする媒体搬送装置。
(((8)))
(((6)))に記載の媒体搬送装置において、
前記第1の回転駆動手段又は前記第2の回転駆動手段は正逆回転可能な前記駆動源を有し、
前記駆動伝達手段は、前記第1の回転駆動手段又は前記第2の回転駆動手段の前記駆動源が逆回転駆動するときに、当該逆回転駆動に伴う駆動力を前記可変手段に伝達する断続要素を備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
(((9)))
(((1)))乃至(((8)))のいずれかに記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置にて搬送された前記媒体に対して予め決められた処理を施す処理手段と、
を備えたことを特徴とする媒体処理装置。
(((10)))
(((9)))に記載の媒体処理装置において、
前記第1の搬送路及び前記第2の搬送路が前記媒体の搬送方向下流側で合流し、合流後の第3の搬送路中に前記媒体を位置合わせする位置合せ手段を備えていることを特徴とする媒体処理装置。
【0047】
(((1)))に係る媒体搬送装置によれば、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、媒体の搬送動作を一時停止することなく、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持する挟持圧を調整可能にすることができる。
(((2)))に係る媒体搬送装置によれば、厚さの異なる媒体を挟持して搬送するに際し、媒体に対する挟持圧を調整し易くすることができる。
(((3)))に係る媒体搬送装置によれば、第1の搬送手段又は第2の搬送手段による媒体搬送動作と並行して媒体に対する挟持圧を調整することができる。
(((4)))に係る媒体搬送装置によれば、第1の搬送路、第2の搬送路とも挟持圧を調整することができ、いずれの搬送路も厚さの異なる媒体を搬送することができる。
(((5)))に係る媒体搬送装置によれば、厚さの異なる媒体を挟持して搬送するに際し、媒体に対して適切な挟持圧を調整できることに加え、対構成の回転体を接離することもできる。
(((6)))に係る媒体搬送装置によれば、圧接力調整手段を可変手段と駆動伝達手段とに機能分離して構築することができる。
(((7)))に係る媒体搬送装置によれば、圧接力調整手段を機能分離して構築するに当たって、駆動伝達手段、可変手段を容易に実現することができる。
(((8)))に係る媒体搬送装置によれば、圧接力調整手段を機能分離して構築するに当たって、第1の回転駆動手段又は第2の回転駆動手段の逆回転駆動を有効に利用して容易に構築することができる。
(((9)))に係る媒体処理装置によれば、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持して搬送する挟持圧を調整可能にする媒体搬送装置を含む媒体処理装置を提供することができる。
(((10)))に係る媒体処理装置によれば、複数の搬送路が合流して媒体の位置合せ可能な搬送路において、媒体の搬送動作と並行して媒体を挟持して搬送する挟持圧を調整可能な媒体搬送装置を組み込むことができる。
【符号の説明】
【0048】
1…第1の搬送手段,2…第2の搬送手段,3(3a,3b)…回転体,4…第1の回転駆動手段,5…第2の回転駆動手段,6…圧接力調整手段,7…可変手段,8…駆動伝達手段,11…第1の搬送路,12…第2の搬送路,13…第3の搬送路,14…位置合せ手段,S…媒体