IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図3
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図4
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図5
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図6
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図7
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図8
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図9
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図10
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図11
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図12
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図13
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図14
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図15
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図16
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図17
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図18
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図19
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図20
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048158
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
G03G15/20 525
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154043
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】石原 拓真
(72)【発明者】
【氏名】松原 崇史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 孝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 日菜
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033AA26
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA49
2H033BA54
2H033BA55
2H033BA56
2H033BA57
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB17
2H033BB21
2H033BB30
2H033BB33
2H033BE00
2H033CA01
2H033CA12
2H033CA16
2H033CA39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回復手段の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段を備えない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制する。
【解決手段】無端状の加熱ベルト51と、未定着画像を保持した記録媒体に加熱ベルト51を圧接し、未定着画像を記録用紙上に定着する加圧ロールと、定着後の加熱ベルト51表面に押圧されて当該ベルト表面を定着処理前の状態に回復させるリフレッシュロール90と、リフレッシュロール90の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段としての制御部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
未定着画像を保持した記録媒体に前記ベルトを圧接し、前記未定着画像を前記記録媒体上に定着する定着手段と、
前記定着後の前記ベルト表面に押圧されて当該ベルト表面を定着処理前の状態に回復させる回復手段と、
前記回復手段の押圧荷重を前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記記録媒体の特性に依存する請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記記録媒体の坪量によって決まる請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記定着手段の圧接状態に依存する請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記定着手段のニップ荷重によって決まる請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差として前記定着後の前記ベルト表面の光沢を検知する検知手段を備え、
前記変更手段は、前記検知手段の検知結果に応じて前記回復手段の押圧荷重を変更する請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記検知手段は、定着後の前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置する前記ベルト表面の光沢と、定着後の前記記録媒体の端部以外に位置する前記ベルト表面の光沢とを検知し、
前記変更手段は、前記検知手段の検知結果を閾値に応じて複数の領域に区分し、前記検知手段の検知結果の区分に応じて前記回復手段の押圧荷重を変更する請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記記録媒体の表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項1乃至7の何れかに記載の定着装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置に関する技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、定着ベルトに接触し、その接触面が維持部材における外周面との接触面の長手方向に沿って配置されている接触部材を備えるよう構成したものである。
【0004】
特許文献2は、定着部材の表面に接触して摺擦する摺擦部材と、所定のタイミングからの記録媒体の積算通過数に基づいて摺擦部材による摺擦時間を制御する制御手段を備える定着装置において、制御手段は、積算通過数に基づいて算出する摺擦時間算出用通過数に基づいて摺擦時間を決定するものであり、摺擦時間算出用通過数は、積算通過数に対して予め設定した閾値の前後で値が異なる調整係数を、通過枚数に乗じた値の総和によって算出し、制御手段は、閾値の前後で、摺擦部材の定着部材に対する接触圧を異ならせる制御を行うよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-107019号公報
【特許文献2】特開2020-086349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、回復手段の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段を備えない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、無端状のベルトと、
未定着画像を保持した記録媒体に前記ベルトを圧接し、前記未定着画像を前記記録媒体上に定着する定着手段と、
前記定着後の前記ベルト表面に押圧されて当該ベルト表面を定着処理前の状態に回復させる回復手段と、
前記回復手段の押圧荷重を前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段と、
を備える定着装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記記録媒体の特性に依存する請求項1に記載の定着装置である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記記録媒体の坪量によって決まる請求項2に記載の定着装置である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記定着手段の圧接状態に依存する請求項1に記載の定着装置である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記定着手段のニップ荷重によって決まる請求項4に記載の定着装置である。
【0012】
請求項6に記載された発明は、前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差として前記定着後の前記ベルト表面の光沢を検知する検知手段を備え、
前記変更手段は、前記検知手段の検知結果に応じて前記回復手段の押圧荷重を変更する請求項1に記載の定着装置である。
【0013】
請求項7に記載された発明は、前記検知手段は、定着後の前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置する前記ベルト表面の光沢と、定着後の前記記録媒体の端部以外に位置する前記ベルト表面の光沢とを検知し、
前記変更手段は、前記検知手段の検知結果を閾値に応じて複数の領域に区分し、前記検知手段の検知結果の区分に応じて前記回復手段の押圧荷重を変更する請求項6に記載の定着装置である。
【0014】
請求項8に記載された発明は、前記記録媒体の表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項1乃至7の何れかに記載の定着装置を用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、回復手段の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段を備えない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、記録媒体の特性に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、記録媒体の坪量に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、定着手段の圧接状態に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、定着手段のニップ荷重に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載された発明によれば、定着後のベルト表面の光沢を検知する検知手段を備えない場合に比べて、定着後のベルト表面の光沢差に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載された発明によれば、検知手段は、定着後の記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置するベルト表面の光沢と、定着後の記録媒体の端部以外に位置するベルト表面の光沢とを検知しない場合に比べて、定着後の記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部と端部以外のベルト表面の光沢との差に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載された発明によれば、定着手段として請求項1乃至7の何れかに記載の定着装置を用いない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
図3】加熱ベルトを示す断面構成図である。
図4】加熱ベルトの表面に発生するベルト傷を示す模式図である。
図5】加熱ベルトの表面に発生するベルト傷を示す平面模式図である。
図6】加熱ベルトの表面に発生するベルト傷を示す断面模式図である。
図7】リフレッシュロールを示す構成図である。
図8】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置の制御装置を示すブロック図である。
図9】記録用紙の坪量とリフレッシュロールの食い込み量との関係を示す図表である。
図10】記録用紙の坪量と加熱ベルト表面のグロス変化との関係を示す図表である。
図11】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置における記録用紙の累積定着枚数とリフレッシュロールの押圧力との関係を示すグラフである。
図12】この発明の実施の形態2に係る定着装置を示す構成図である。
図13】加熱ベルトの表面における非接触光沢計の配置を示す模式図である。
図14】この発明の実施の形態2に係る画像形成装置の制御装置を示すブロック図である。
図15】非接触光沢計によって検知された加熱ベルト表面のグロス差とリフレッシュロールの押圧力との関係を示す図表である。
図16】この発明の実施の形態3に係る定着装置を示す構成図である。
図17】定着ニップ荷重とリフレッシュロールの押圧力との関係を示す図表である。
図18】この発明の実施の形態4に係る定着装置を示す概略構成図である。
図19】この発明の実施の形態4に係る定着装置を示す概略構成図である。
図20】この発明の実施の形態4に係る定着装置の要部を示す模式図である。
図21】この発明の実施の形態4に係る定着装置における加熱ベルト表面の歪量をシミュレーションしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示す構成図である。
【0026】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。画像形成装置1は、図1に示されるように、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置20と、各作像装置20で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙6に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置30と、中間転写装置30の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙6を収容して搬送する給紙装置60と、中間転写装置30で二次転写された記録用紙6上のトナー像を定着させる定着手段の一例としての定着装置50等を備えている。符号1aは、支持構造部材や外装カバー等で形成される装置本体を示している。
【0027】
この実施の形態1では、複数の作像装置20と中間転写装置30が、記録用紙6にトナー像を形成する画像形成手段を構成している。なお、画像形成手段は、単一の作像装置を備え、中間転写装置を介さず作像装置から記録媒体にトナー像を直接形成するように構成したものであっても勿論良い。
【0028】
画像形成装置1は、図1に示されるように、装置本体1aの内部空間において水平方向に沿って1列に並べた状態で配置される4つの作像装置20を備えている。4つの作像装置20は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応したカラートナー像をそれぞれ専用に形成する作像装置20Y,20M,20C,20Kからなる。
【0029】
各作像装置20(Y,M,C,K)は、基本的に同様に構成されている。各作像装置20(Y,M,C,K)は、矢印Aで示す方向に沿って回転する像保持手段の一例としての感光体ドラム21と、感光体ドラム21の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置22と、感光体ドラム21の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光LBを照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光手段の一例としての露光装置23と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置24(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置30に転写する一次転写手段の一例としての一次転写装置25と、一次転写後における感光体ドラム21の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置26等を備えている。なお、図中の破線は、装置本体1aの内部において記録用紙6が搬送される主な搬送経路を示す。
【0030】
各作像装置20(Y,M,C,K)の下方の位置には、中間転写装置30が配置される。中間転写装置30は、各作像装置20(Y,M,C,K)の感光体ドラム21の下方に位置する一次転写位置T1を通過しながら矢印Bで示す方向に循環移動する中間転写ベルト31を備えている。一次転写位置T1においては、一次転写装置25(一次転写ロール)が中間転写ベルト31を介して感光体ドラム21の周面に接触している。一次転写装置25には、感光体ドラム21上のトナー像と逆極性の一次転写バイアス電圧が図示しない高圧電源により印加される。中間転写ベルト31は、複数のベルト支持ロール32~37によってその内周から所望の状態に保持して循環移動可能に支持されている。複数のベルト支持ロール32~37は、駆動ロールとしてのベルト支持ロール32と、中間転写ベルト31の走行位置などを保持する従動ロールとしてのベルト支持ロール33,35と、張力付与ロールとしてのベルト支持ロール34と、二次転写のバックアップロールとしてのベルト支持ロール36と、ベルト清掃装置38の支持ロールとしてのベルト支持ロール37から構成されている。
【0031】
ベルト支持ロール36に支持されている中間転写ベルト31の外周面(像保持面)には、中間転写ベルト31上のトナー像を記録用紙6に二次転写させる二次転写装置40が配置されている。二次転写装置40は、二次転写位置T2において中間転写ベルト31を支持するベルト支持ロール36と、当該ベルト支持ロール36に支持されている中間転写ベルト31の外周面部分に接触して回転するよう配置される二次転写ロール41とを備えた接触型の転写装置が採用される。この実施の形態1では、二次転写ロール41が接地処理されている。また、ベルト支持ロール36には、トナーの帯電極性と同極性であるマイナス極性の所要の二次転写バイアス電圧が、バイアス印加ロール39を介して図示しない高圧電源から供給される。中間転写ベルト31の二次転写装置40を通過した下流側には、その表面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置38が配置されている。なお、この実施の形態1では、二次転写ロール41を接地処理し、ベルト支持ロール36にトナーの帯電極性と同極性であるマイナス極性の所要の二次転写バイアス電圧を印加するように構成したが、これに限定されるものではなく、ベルト支持ロール36を接地処理し、二次転写ロール41にトナーの帯電極性と逆極性であるプラス極性の所要の二次転写バイアス電圧を印加するように構成しても良い。
【0032】
定着装置50は、表面温度が予め定められた温度に保持されるよう加熱手段(熱源)によって加熱される加熱ベルト51と、この加熱ベルト51に所要の圧力で接触して回転する加圧ロール52などを配置して構成されたものである。この定着装置50では、加熱ベルト51と加圧ロール52が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着ニップ部となる。なお、定着装置については、後に詳述する。
【0033】
給紙装置60は、中間転写装置30の下方の位置に存在するよう配置される。この給紙装置60は、所望のサイズ、種類等の記録用紙6を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体61と、用紙収容体61から記録用紙6を1枚ずつ送り出す送出装置62とで主に構成されている。用紙収容体61は、例えば、装置本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられている。
【0034】
記録用紙6としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙、あるいは合成樹脂(PETなど)製の透明なフィルム状の媒体からなるOHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録用紙6の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表裏両面又は表面を樹脂等でコーティングしたコート紙なども好適に使用することができる。
【0035】
また、記録用紙6としては、ユーザーのニーズの多様化に伴って、印刷用のアート紙等の坪量が相対的に大きい所謂厚紙や、表面に凹凸を有するエンボス紙、あるいはハガキなどの極厚い厚紙なども使用することが可能となっている。
【0036】
給紙装置60と二次転写装置40との間には、給紙装置60から送り出される記録用紙6を二次転写位置T2まで搬送する単数(又は複数)の用紙搬送ロール対63~66や図示しない搬送ガイド材で構成される給紙搬送路67が設けられている。給紙搬送路67において二次転写位置T2の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対66は、例えば記録用紙6の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。
【0037】
また、二次転写装置40と定着装置50との間には、二次転写装置40から送り出される記録用紙6を定着装置50まで搬送する複数(又は単数)の用紙搬送ベルト68,69,70で構成される用紙搬送路71が設けられている。
【0038】
定着装置50の下流側には、定着装置50によりトナー像が定着された記録用紙6を、装置本体1aの側面に配置された用紙排出部72に排出するための用紙排出ロール73を備えた排出搬送路74が設けられている。
【0039】
排出搬送路74の途中には、記録用紙6の表裏を反転させる反転搬送路75が下方へ向けて分岐されている。排出搬送路74の分岐位置には、記録用紙6の搬送方向を切り替える図示しない切替部材が設けられている。反転搬送路75には、回転方向が正転方向と逆転方向に切り替え可能な反転ロール対76が配置されている。反転搬送路75には、反転ロール対76の上部から左方に分岐した両面搬送路77が接続されている。両面搬送路77には、表裏が反転された記録用紙6を給紙搬送路67へと搬送する複数の両面搬送ロール対78~81や図示しない搬送ガイド材等が配置されている。
【0040】
図1中、符号100は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御手段の一例としての制御装置を、符号14は、画像形成装置1を操作する操作装置をそれぞれ示している。操作装置14は、記録用紙6の種類や記録枚数等を入力する操作パネル14aと、入力された記録用紙6の種類や記録枚数等を表示する表示パネル14bを備えている。
【0041】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0042】
ここでは、前記4つの作像装置20(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作について説明する。
【0043】
画像形成装置1は、操作装置14を介して画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、制御装置100の制御によって、4つの作像装置20(Y,M,C,K)、中間転写装置30、二次転写装置40、定着装置50、給紙装置60等が始動する。
【0044】
そして、各作像装置20(Y,M,C,K)においては、まず各感光体ドラム21が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置22が各感光体ドラム21の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置23が、帯電後の感光体ドラム21の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光LBを照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0045】
続いて、各現像装置24(Y,M,C,K)が、感光体ドラム21に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーをそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム21に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0046】
続いて、各作像装置20(Y,M,C,K)の感光体ドラム21上に形成された各色のトナー像が一次転写位置T1まで搬送されると、一次転写装置25が、その各色のトナー像を中間転写装置30の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト31に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。
【0047】
また、一次転写が終了した各作像装置20では、ドラム清掃装置26が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム21の表面を清掃する。これにより、各作像装置20は次の作像動作が可能な状態にされる。
【0048】
続いて、中間転写装置30では、中間転写ベルト31の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置T2まで搬送する。一方、給紙装置60では、作像動作に合わせて所要の記録用紙6を給紙搬送路67に送り出す。給紙搬送路67では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対66が記録用紙6を転写時期に合わせて二次転写位置T2に送り出して供給する。
【0049】
二次転写位置T2においては、二次転写ロール41が、中間転写ベルト31上のトナー像を記録用紙6に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した後の中間転写装置30では、ベルト清掃装置38が、二次転写後の中間転写ベルト31の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0050】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙6は、中間転写ベルト31と二次転写ロール41から剥離された後に3連の用紙搬送ベルト68,69,70によって定着装置50まで搬送される。定着装置50では、回転する加熱ベルト51と加圧ロール52との間の定着ニップ部に二次転写後の記録用紙6を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙6に定着させる。
【0051】
定着処理が終了した後の記録用紙6は、排出搬送路74を介して用紙排出ロール73により、画像形成装置1の側面に設けられた用紙排出部72に排出される。
【0052】
また、画像形成装置1において、記録用紙6の両面に画像を形成する場合は、片面に画像が形成された記録用紙6を用紙排出ロール73によって用紙排出部72へ排出せずに、図示しない切替部材によって記録用紙6の搬送路が排出搬送路74から反転搬送路75へと切り替えられる。反転搬送路75へ導かれた記録用紙6は、反転ロール対76が記録用紙6の後端を挟持したままの状態で、当該反転ロール対76の回転方向が正転方向から逆転方向に切り替えられ、表裏が反転された状態で両面搬送路77へと搬送される。両面搬送路77へ搬送された記録用紙6は、複数の両面搬送ロール対78~81によって給紙搬送路67へ搬送され、中間転写ベルト31から裏面にトナー像が転写される。その後、記録用紙6は、定着装置50まで搬送されて、裏面に転写されたトナー像に対して定着装置50により定着処理(加熱及び加圧)が施され、排出搬送路74を経由して用紙排出ロール73により用紙排出部72へ排出される。
【0053】
以上の動作が行われることにより、4色のトナー(Y,M,C,K)からなるトナー像を組み合わせて形成されるフルカラー画像が記録用紙6の片面又は両面に形成される。また、複数枚の画像形成動作の要求指令を受けた場合は、その枚数分だけ上記画像形成動作が同様に繰り返して行われる。なお、上述したように、フルカラー画像以外に、1乃至3つの作像装置においてトナー像を形成することにより、モノクロ画像を含む1乃至3色のトナー像を適宜組み合わせた画像も、同様の画像形成動作によって記録用紙6上に形成される。
【0054】
<定着装置の構成>
上記の如く構成される画像形成装置1は、記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段の一例としての定着装置50を備えている。
【0055】
この実施の形態1に係る定着装置50は、図2に示されるように、大別して、無端状のベルトの一例としての加熱ベルト51と、加熱ベルト51に圧接する加圧手段の一例としての加圧ロール52を備えている。加熱ベルト51は、当該加熱ベルト51の内周に配置される複数の張架手段の一例としての内部加熱ロール53(第1張架ロール)と、ステアリングロール54(第2張架ロール)と、加圧パッド55(押圧部材)の外周に回転(循環移動)可能に所要の張力で張架されている。複数の張架手段は、内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55の3つに限定されるものではなく、内部加熱ロール53のみ、内部加熱ロール53とステアリングロール54の2つのみであっても、或いは他の内部加熱ロールや外部加熱ロール、及び張架ロールなどからなる4つ以上の張架手段から構成しても良い。なお、ステアリングロール54は、複数の張架手段のうち、変位させることで加熱ベルト51の片寄を補正する1つの張架手段に相当する。加熱ベルト51、内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55は、ベルト搬送装置の一例としての加熱ベルトモジュール56を構成している。張架手段としては、加圧パッド55の代わりに回転可能なロールを用いても良い。
【0056】
加熱ベルトモジュール56は、内部加熱ロール53とステアリングロール54の間において、加熱ベルト51の内周面に接触して清掃するとともに必要に応じて潤滑剤を供給するウィック等からなる接触部材57を備えている。
【0057】
加熱ベルト51は、可撓性を有する無端状ベルトとして構成されている。加熱ベルト51は、図3に示されるように、基材層510と、基材層510の表面に被覆された弾性体層511と、弾性体層511の表面に被覆された表面層512を備える。
【0058】
基材層510は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の耐熱性を有する合成樹脂や、ステンレス、ニッケル、銅等の金属によって形成される。基材層510の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることがより好ましい。
【0059】
弾性体層511は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性を有する弾性体からなる。弾性体層511の厚みは、30μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0060】
表面層512は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。表面層512の厚みは、100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0061】
加熱ベルト51は、例えば、その全体の厚さtが50~800μm程度に設定可能である。弾性体層511は、坪量が相対的に大きい厚紙や表面に凹凸を有するエンボス紙等の記録用紙6の多様化に伴って、相対的に厚く形成されるのが望ましい。この実施の形態1では、加熱ベルト51の全体の厚さをtとした場合、弾性体層511の厚さt1が0.6t≧t≧0.2tであることが望ましく、0.5t≧t≧0.3tであることがより望ましい。弾性体層511の厚さt1が0.6tを超えると、加熱ベルト51を所要の定着温度に加熱する熱量が増大し、弾性体層511の厚さt1が0.2t未満であると、坪量が相対的に大きい厚紙に対する定着性が低下する虞れがあるため望ましくない。
【0062】
なお、基材層510と弾性体層511の間には、必要に応じて図示しない接着層が介在される。
【0063】
加熱ベルト51は、加圧パッド55の外周面に巻き付けられた領域において加圧ロール52と圧接されている。加熱ベルト51と加圧パッド55が圧接する圧接部が未定着トナー像Tを保持した記録用紙6が通過する定着ニップ部Nを構成している。
【0064】
定着ニップ部Nの記録用紙6の搬送方向に沿った入口側には、未定着トナー像Tを保持した記録用紙6を定着ニップ部Nへと案内する平板状の第1の案内部材611が配置されている。また、定着ニップ部Nの記録用紙6の搬送方向に沿った出口側には、未定着トナー像Tが定着された記録用紙6を定着装置50の外部へと案内する平板状の第2の案内部材612が配置されている。
【0065】
定着ニップ部Nの出口は、加熱ベルト51と加圧パッド55が圧接する定着ニップ部Nによって定着された記録用紙6を、加熱ベルト51の曲率によって記録用紙6の“腰”(剛性)を利用して加熱ベルト51の表面から剥離するため、加熱ベルト51の圧接力が急激に変化するよう加圧ロール52の表面に対して凹形成に形成されている。
【0066】
なお、定着ニップ部Nの出口には、加熱ベルト51の表面から記録用紙6を強制的に剥離する図示しない剥離爪等の剥離補助部材を設けても良い。
【0067】
内部加熱ロール53は、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状の芯金531と、芯金531の外周に一様な厚さに被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や耐熱性を有する合成樹脂等からなる被覆層532を有している。内部加熱ロール53は、その外周面の形状が円筒形状に形成されている。なお、内部加熱ロール53の被覆層532の表面には、必要に応じて、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層を設けても良い。内部加熱ロール53の内部には、加熱部(加熱源)の一例として複数(図示例では3本)のハロゲンランプ533a,533b,533cが配置されている。3本のハロゲンランプ533a,533b,533cは、例えば、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて加熱領域が適宜設定される。
【0068】
内部加熱ロール53は、第1付勢手段としての第1のコイルスプリング534によって加熱ベルト51を内側から半径方向の外側へ向けて押圧されており、加熱ベルト51に所要の張力を付与している。
【0069】
ステアリングロール54は、内部加熱ロール53と同様、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状の芯金541と、芯金541の外周に一様な厚さに被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる弾性体や耐熱性を有する合成樹脂等からなる被覆層542を有している。ステアリングロール54は、その外周面の形状が円筒形状に形成されている。ステアリングロール54の被覆層542の表面には、必要に応じて、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層を設けても良い。ステアリングロール54の内部には、加熱部(加熱源)の一例として複数(図示例では2本)のハロゲンランプ543a,543bが配置されている。2本のハロゲンランプ543a,543bは、例えば、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて適宜加熱領域が設定される。ステアリングロール54の外径は、内部加熱ロール53より小さく設定されている。なお、ステアリングロール54は、加熱部(加熱源)の一例としてのハロゲンランプを備えないものであっても勿論良い。
【0070】
加圧パッド55は、図2に示されるように、例えば、アルミニウムやステンレス、鉄あるいは合成樹脂等の剛性を有する材料からなり、断面形状が略角筒状や略角柱状に形成された部材である。加圧パッド55は、例えば、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等からなる金属によって一体的に形成される。但し、加圧パッド55としては、これに限定されるものではなく、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等からなる金属と金属との組合せや、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等からなる金属と合成樹脂との組合せなど、2以上(複数)の部材を組み合わせて構成しても良い。なお、この実施の形態では、加圧パッド55をアルミニウムやステンレスあるいは鉄等の金属からなる略断面角筒形状のパッド本体551と、パッド本体551の加圧ロール52側に配置された加圧部材552とから構成している。
【0071】
加圧部材552は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性及び剛性を有する合成樹脂、あるいは鉄やアルミニウム、ステンレス等の金属を材料として形成することができる。
【0072】
加圧パッド55の内部には、加熱部(加熱源)の一例として複数(図示例では2本)のハロゲンランプ553a,553bが配置されている。2本のハロゲンランプ553a,553bは、例えば、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて適宜加熱領域が設定される。
【0073】
加圧パッド55は、第2の付勢手段としてのコイルスプリング554によって加熱ベルト51を内側から加圧ロール52の外周面へ向けて所要の押圧力で圧接されている。
【0074】
内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55は、各々の表面温度が温度検出手段の一例としての図示しない複数の温度センサによってそれぞれ検知される。内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55は、温度センサの検知結果に基づいてハロゲンランプ533a,533b,533c、ハロゲンランプ543a,543b及びハロゲンランプ553a,553bへの通電を図示しないトライアック等を用いた温度制御回路によって制御することにより、加熱ベルト51の表面が所要の定着温度(例えば、170℃~190℃)となるよう加熱される。
【0075】
加圧ロール52は、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状又は円柱形状の芯金521と、芯金521の外周に被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる弾性体層522と、弾性体層の外周に被覆されたパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層523とを備えている。
【0076】
加圧ロール52は、定着装置50の図示しないフレームに軸受部材を介して回転可能に支持されている。加圧ロール52は、図示しない駆動手段によって矢印方向Cに沿って回転駆動される。また、加圧ロール52は、図示しない接離手段によって加熱ベルトモジュール56の加圧パッド55に対して接触及び離間する方向に移動可能に構成されている。
【0077】
なお、加熱ベルト51は、加圧ロール52の外周面に圧接された状態で加圧ロール52の回転に伴い矢印方向Dに沿って同一の速度で従動回転する。
【0078】
このように構成される定着装置50では、図4に示されるように、加熱ベルト51と加圧ロール52が圧接する定着ニップN部において、加熱ベルト51が記録用紙6の表面に圧接して当該記録用紙6の表面に形成された未定着トナー像Tを定着する。その際、加熱ベルト51は、記録用紙6の搬送方向と交差する幅方向の両端部(エッジ部)において、記録用紙6の表面と加圧ロール52の表面との間に当該記録用紙6の厚さに応じた段差が存在する。そのため、加熱ベルト51は、記録用紙6の厚さに応じて圧縮された当該加熱ベルトの主に表面層512及び弾性体層511の押圧力が記録用紙6の端部で急激に開放されることで、加熱ベルト51の表面が不均一に変形した所謂ベルト傷DMと呼ばれる損傷が所要の幅Wにわたり発生する。
【0079】
加熱ベルト51の表面に発生するベルト傷DMは、特に、同一サイズの記録用紙6を連続して複数枚にわたり定着する場合に顕著に発生する傾向がある。連続して定着する記録用紙の枚数は、数10枚~数100枚と増加するとよりベルト傷DMが一層顕著に発生する。
【0080】
定着処理後の加熱ベルト51の表面にベルト傷DMが発生すると、当該ベルト傷DMの影響が次に定着される記録用紙6の画像上にスジ状の光沢ムラなどとして現れることで画質を低下させる。
【0081】
そこで、この実施の形態1に係る定着装置50では、図2に示されるように、定着後の加熱ベルト51の表面に押圧されて当該加熱ベルト51の表面を定着処理前の状態に回復させる回復手段の一例としてのリフレッシュロール90を備えるように構成されている。
【0082】
加熱ベルト51は、図3に示されるように、基材層510と、弾性体層511と、表面層512を備える。加熱ベルト51は、定着ニップ部Nを通過する際に、その表面に沿った方向において一様な押圧力を受けたとき、たとえ押圧力が相対的に大きい場合であっても、主に弾性体層511が一様に圧縮されて弾性変形し、定着ニップ部Nを通過した後に、弾性体層511等が弾性復元力によって元の形状に復元される。
【0083】
しかしながら、加熱ベルト51は、図4に示されるように、記録用紙6の幅方向に沿った両端部において、定着ニップ部Nを通過する際に、記録用紙6の端部で剪断力を受けて、表面層512並びに弾性体層511が不均一に変形することで一部が変形を起こし、図6に示されるように、定着処理後の表面状態S1が定着処理前の表面状態S2と異なる。加熱ベルト51の定着処理前の表面状態S2は、表面が平滑であり、鏡面に近い状態となっている。一方、加熱ベルト51の定着処理後の表面状態S1は、平滑な表面状態から変化して、微小な凹凸が所要の幅Wにわたり生じている。
【0084】
この加熱ベルト51に生じる定着処理前と定着処理後の表面状態の変化は、記録用紙6の坪量、記録用紙6の材質(弾性率等)、記録用紙6の表面状態など、種々の要因によって変化する。
【0085】
リフレッシュロール90は、図2に示されるように、定着ニップ部Nの加熱ベルト51の移動方向に沿った上流側に配置されている。この実施の形態1では、リフレッシュロール90が内部加熱ロール53と加圧パッド55との間に配置されている。リフレッシュロール90と対向する加熱ベルト51の裏面側には、図2及び図7に示されるように、バックアップロール91が固定した状態で設けられている。リフレッシュロール90は、駆動モータ92によって加熱ベルト51の移動方向と逆方向又は同一の方向に所要の回転速度で回転駆動される。
【0086】
リフレッシュロール90は、図7に示されるように、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱形状のロール芯材901の表面に予め定められた表面粗さとなるよう粗面化処理された粗面化層902を設けることによって構成されている。リフレッシュロール90の粗面化層902は、ロール芯材901の表面が予め定められた表面粗さとなるよう粗面化処理することによって形成される。また、リフレッシュロール90の粗面化層902は、ロール芯材901の表面に砥粒を密に接着することにより予め定められた表面粗さを有するよう形成される。
【0087】
リフレッシュロール90は、加熱ベルト51の表面を研磨することで、当該加熱ベルト51の表面状態を定着処理前の状態である鏡面に近い状態に復元させるものである。ただし、リフレッシュロール90は、加熱ベルト51の表面状態を定着処理前の状態に完全に復元させるものである必要はなく、加熱ベルト51表面の微小な凹凸を除去又は減少させることで、定着処理前の鏡面状態に近づけものであれば良い。
【0088】
リフレッシュロール90は、図7に示されるように、バックアップロール91によって裏面が指示された加熱ベルト51の表面に押圧機構93によって所要の押圧力が圧接するよう構成されている。押圧機構93は、例えば、リフレッシュロール90の回転軸を回転可能に支持する軸受部材を偏心カム等によって加熱ベルト51の表面に圧接する方向に変位させ、且つ押圧力(圧接量)を制御可能となるよう構成されている。なお、押圧機構93は、リフレッシュロール90を加熱ベルト51の表面に押圧するとともに、当該押圧力を変更(調節)可能なものであれば、上記のものに限定されるものではなく、その構成は任意である。
【0089】
ところで、リフレッシュロール90は、加熱ベルト51の表面を微小に研磨することにより、定着処理前の状態に復元させるものであるため、当該リフレッシュロール90の押圧力が相対的に過小であると、当該加熱ベルト51の表面を十分に平滑化することができず、次に定着される記録用紙6の画像上にスジ状の光沢ムラなどが現れる虞れがある。
【0090】
一方、リフレッシュロール90は、当該リフレッシュロール90の押圧力が相対的に過大であると、当該加熱ベルト51の表面を過剰に研磨して、加熱ベルト51の寿命を短くする虞れがある。
【0091】
上述した特許文献2には、定着部材の表面に接触して摺擦する摺擦部材と、所定のタイミングからの記録媒体の積算通過数に基づいて摺擦部材による摺擦時間を制御する制御手段を備える定着装置において、制御手段は、積算通過数に基づいて算出する摺擦時間算出用通過数に基づいて摺擦時間を決定するものであり、摺擦時間算出用通過数は、積算通過数に対して予め設定した閾値の前後で値が異なる調整係数を、通過枚数に乗じた値の総和によって算出し、制御手段は、閾値の前後で、摺擦部材の定着部材に対する接触圧を異ならせる制御を行う構成が開示されている。
【0092】
しかしながら、特許文献2は、その図3に示されるように、記録用紙の累積的な通紙枚数がおおよそ10000枚を超えてから、摺擦部材の接触圧を変化させることで、定着不良を抑制しつつ、定着部材の寿命低下を抑制するものであり、記録用紙の累積的な通紙枚数が10000枚に達する以前における定着不良の発生を十分抑制することができないという技術的課題を有している。また、特許文献2は、記録用紙の累積的な通紙枚数が10000枚に達する以前においても、加熱ベルト51の表面状態に応じてリフレッシュロール90の押圧力を変化させることはできないという技術的課題を有している。
【0093】
そこで、この実施の形態1に係る定着装置は、記録用紙の累積的な通紙枚数に応じて摺擦部材の接触圧を変化させるのではなく、回復手段の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段を備えるように構成したものである。
【0094】
ここで、ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差は、1枚の記録用紙を定着する毎であっても良いし、予め定められた枚数の記録用紙を定着する毎であっても良い。
【0095】
また、この実施の形態1に係る定着装置は、ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が記録媒体の特性に依存するものである。
【0096】
さらに、この実施の形態1に係る定着装置は、ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が記録媒体の坪量によって決まるものである。
【0097】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置50が適用された画像形成装置1では、画像形成動作を開始する際に、ユーザーが操作装置14等のユーザーインターフェイスを操作することにより、画像形成する記録用紙6のサイズや種類、プリント枚数、片面か両面などの画像形成条件が設定される。
【0098】
図8は画像形成装置の制御装置100を示すブロック図である。
【0099】
図において、符号101は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御装置100の制御手段(変更手段)の一例としての制御部を示している。制御部101は、画像形成動作を統括的に制御するとともに変更手段として機能するCPU(Central Processing Unit)102や、CPU102が実行する制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)103、CPU102が実行する制御プログラム等で使用するパラメータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)104、あるいはこれらCPU102やROM103等を接続する図示しないバス、外部のパーソナルコンピュータや画像読取装置などと通信する通信インターフェイス105などを備える。
【0100】
制御部101には、操作装置14から画像を形成する記録用紙6のサイズや種類、プリント枚数、片面か両面などの画像形成条件が適宜入力される。また、制御部101は、リフレッシュロール90の押圧力を変化させる押圧機構93やリフレッシュロール90を回転駆動する駆動モータ92を制御する。
【0101】
ROM103には、図9に示されるように、記録用紙6の坪量と、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)との関係を示すテーブルが予め記憶されている。
【0102】
記録用紙6の坪量が82gsm以下の場合には、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)が相対的に低く設定され、記録用紙6の坪量が82gsmを超えて200gsm以下の場合には、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)が中程度に設定され、記録用紙6の坪量が200gsmを超える場合には、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)が相対的に高く設定される。
【0103】
図10は、記録用紙6の坪量と当該坪量の記録用紙6を定着した場合における加熱ベルト51上のグロス変化を示したグラフである。
【0104】
図10から明らかなように、記録用紙6の坪量が82gsm以下と相対的に小さい場合は、定着処理後における加熱ベルト51上のグロス変化が小さく、それに応じてリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)も相対的に低く設定される。また、記録用紙6の坪量が82gsmを超えて200gsm以下の場合は、定着処理後における加熱ベルト51上のグロス変化が中程度であり、それに応じてリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)も中程度に設定される。さらに、記録用紙6の坪量が200gsmを超える場合は、定着処理後における加熱ベルト51上のグロス変化が大きく、それに応じてリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)も相対的に高く設定される。
【0105】
以上の構成において、この実施の形態1に係る定着装置では、次のようにして、回復手段の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段を備えない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制することが可能となっている。
【0106】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置50が適用された画像形成装置1では、図1に示されるように、画像形成動作に先立って、ユーザーが操作装置14を操作することによって、画像形成する記録用紙6のサイズや種類、プリント枚数、片面か両面などの画像形成条件が設定される。
【0107】
すると、制御装置100のCPU102は、操作装置14によって指定された記録用紙6の種類(坪量)に応じて、定着装置50におけるリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)を押圧機構93を駆動することにより切り替えるよう制御する。
【0108】
そして、画像形成装置1では、図1に示されるように、画像形成動作の開始に伴って、給紙装置60によって指定された記録用紙6を給紙し、記録用紙6上に未定着トナー像Tを形成して、記録用紙6上に形成された未定着トナー像Tが定着装置50によって定着される。
【0109】
図11は、画像形成装置1において累積的に定着された記録用紙6の枚数と、定着装置50におけるリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)の関係を示すグラフである。
【0110】
画像形成装置1では、図11に示されるように、例えば、坪量が82gsmを超えて200gsm以下の所謂普通紙からなる記録用紙6に累積的に1000枚程度にわたり画像を形成した後、坪量が82gsm以下の所謂薄通紙からなる記録用紙6に累積的に400枚程度にわたり画像を形成し、更に坪量が200gsmを超える所謂厚紙からなる記録用紙6に累積的に同じく400枚程度にわたり画像を形成した状態を示している。
【0111】
なお、実際の画像形成装置1では、通常、数枚~数10枚程度で記録用紙6の種類が変更されるが、図11では便宜上、数100枚単位で記録用紙6の種類を変更して画像を形成した場合を示している。
【0112】
このように、この実施の形態1に係る画像形成装置1では、リフレッシュロール90の押圧力を、加熱ベルト51表面の定着処理前と定着処理後の状態の差を決定する要因である記録用紙6の坪量に応じて変更するよう構成しているので、加熱ベルト15の寿命を維持しつつ、定着処理後に加熱ベルト51表面に損傷が発生するのを抑制することが可能となっている。
【0113】
図11において、グラフで囲まれた面積は、リフレッシュロール90の押圧力と記録用紙6の累積的な定着枚数との積からなる加熱ベルト51の表面が受けるリフレッシュロール90による摩耗量を示している。そのため、リフレッシュロール90の押圧力を記録用紙6の坪量に応じて変更することにより、記録用紙6の坪量の違いに応じた定着処理後に加熱ベルト51表面に損傷が発生するのを抑制することができるのは勿論のこと、加熱ベルト51表面の摩耗量を抑制することで、加熱ベルト51の寿命を維持することを同時に達成している。
【0114】
実施の形態2
図12はこの発明の実施の形態2に係る定着装置を示すものであり、この実施の形態2では、ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差として定着後の前記ベルト表面の光沢を検知する検知手段を備え、変更手段は、検知手段の検知結果に応じて回復手段の押圧荷重を変更するよう構成されている。
【0115】
また、この実施の形態2では、検知手段は、定着後の記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置するベルト表面の光沢と、定着後の記録媒体の端部以外に位置するベルト表面の光沢とを検知し、変更手段は、検知手段の検知結果を閾値に応じて複数の領域に区分し、検知手段の検知結果の区分に応じて回復手段の押圧荷重を変更するよう構成されている。
【0116】
すなわち、この実施の形態2に係る定着装置50では、図12に示されるように、定着ニップ部Nの加熱ベルト51の移動方向に沿った下流側で、加圧パッド55とステアリングロール54の間において、定着後の加熱ベルト51表面の光沢を検知する検知手段の一例としての非接触光沢計200を備えている。
【0117】
非接触光沢計200は、定着後の記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置するベルト表面の光沢を検知する第1の非接触光沢計201と、定着後の記録用紙6の端部以外である記録用紙6の搬送方向と交差する方向における中央部に位置するベルト表面の光沢を検知する第2の非接触光沢計202とから構成されている。なお、図示の実施の形態では、第1の非接触光沢計201として、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿った両端部にそれぞれ位置する2つの第1の非接触光沢計201を備えている。
【0118】
第1及び第2の非接触光沢計201,202からの検知信号は、図14に示されるように、制御部101に入力されている。制御部101のCPUは、2つの第1の非接触光沢計201によって検知された加熱ベルト51表面の光沢を平均するとともに、第2の非接触光沢計202によって検知された加熱ベルト51の中央部の光沢値から平均化された2つの第1の非接触光沢計201によって検知された加熱ベルト51の記録用紙6端部の光沢値を減算して差分を求める。
【0119】
ROMには、図15に示されるように、第1及び第2の非接触光沢計201,202からの光沢値の差分と、リフレッシュロール90の押圧力との関係を示すテーブルが予め記憶されている。
【0120】
第1及び第2の非接触光沢計201,202からの光沢値の差分が第1の閾値である3以下と小さい場合(領域1)には、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)が相対的に小さく設定され、第1及び第2の非接触光沢計201,202からの光沢値の差分が第1の閾値である3を超えて第2の閾値である9以下と中程度ある場合(領域2)には、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)が中程度に設定され、第1及び第2の非接触光沢計201,202からの光沢値の差分が第2の閾値を超える大きな値である場合(領域3)には、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)が相対的に大きく設定される。
【0121】
このように、この実施の形態2に係る定着装置50では、定着後の加熱ベルト51の表面状態として当該加熱ベルト51の光沢を実際に検知することにより、リフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)を変更することで、定着後の加熱ベルト51の表面状態に実際に即した食い込み量(押圧力)の変更が可能となる。
【0122】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0123】
実施の形態3
図16はこの発明の実施の形態2に係る定着装置を示すものであり、この実施の形態3では、ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が定着手段の圧接状態に依存するように構成されている。
【0124】
また、この実施の形態3では、ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が定着手段のニップ荷重によって決まるよう構成されている。
【0125】
すなわち、この実施の形態3に係る定着装置50では、図16に示されるように、加圧ロール52の加圧パッド55に対する定着ニップ荷重を第2の押圧機構300によって変更可能となるよう構成されている。
【0126】
第2の押圧機構300は、記録用紙6が薄紙等の場合には定着ニップ荷重が相対的に小さな値に設定され、記録用紙6が普通紙等の場合には定着ニップ荷重が相対的に中程度に設定され、記録用紙6がエンボス紙等の表面に凹凸を有する用紙や厚紙等の場合には定着ニップ荷重を相対的に大きく設定されている。
【0127】
そして、この実施の形態3に係る定着装置50では、図17に示されるように、加圧ロール52の定着ニップ荷重に応じてリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)を変更する。
【0128】
加熱ベルト51の表面に発生するベルト傷は、加圧ロール52の定着ニップ荷重に応じて変化し、加圧ロール52の定着ニップ荷重が大きいほど、ベルト傷も大きくなる。
【0129】
このように、この実施の形態3に係る定着装置50では、加圧ロール52の定着ニップ荷重に応じてリフレッシュロール90の食い込み量(押圧力)を変更することにより、加圧ロール52の定着ニップ荷重に応じて変化する加熱ベルト51表面のベルト傷に応じて、リフレッシュロール90による加熱ベルト51表面の復元程度を適切に制御することが可能となる。
【0130】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0131】
実施の形態4
図18及び図19はこの発明の実施の形態4に係る定着装置を示すものであり、この実施の形態4では、回復手段の一例としてのリフレッシュロール90を押圧機構93によって加熱ベルト51を介してバックアップロール91に圧接するのではなく、バックアップロール91を用いることなく、リフレッシュロール90を押圧機構93によって内部加熱ロール53の表面に圧接するよう構成されている。
【0132】
すなわち、この実施の形態4では、図18又は図19に示されるように、バックアップロール91を内部加熱ロール53の加熱ベルト51の移動方向に沿った下流側、あるいは上流側の端部に圧接することにより、加熱ベルト51をバックアップロール91と内部加熱ロール53の表面において略S字形状に湾曲させるよう構成されている。
【0133】
このように、この実施の形態4では、バックアップロール91を内部加熱ロール53が加熱ベルト51を張架する位置の下流側の端部あるいは上流側の端部に圧接することで、加熱ベルト51を略S字形状に湾曲させ、図20に示されるように、加熱ベルト51の表面とリフレッシュロール90の間のスリップ量が増大し、リフレッシュロール90が加熱ベルト51の表面と接触する面積を増加させることができる。図21はこの発明の実施の形態4に係る定着装置における加熱ベルト表面の歪量をシミュレーションしたグラフを示すものである。
【0134】
その結果、リフレッシュロール90を加熱ベルト51を介してバックアップロール91に単に圧接する場合に比べて、加熱ベルト51の表面を定着処理前の状態に回復させるリフレッシュ性を向上することができる。
【0135】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0136】
なお、前記実施の形態では、記録用紙上に未定着トナー像を定着する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、未定着トナー像以外の定着に使用するものであっても良いことは勿論である。
【0137】
(付記)
(((1)))
無端状のベルトと、
未定着画像を保持した記録媒体に前記ベルトを圧接し、前記未定着画像を前記記録媒体上に定着する定着手段と、
前記定着後の前記ベルト表面に押圧されて当該ベルト表面を定着処理前の状態に回復させる回復手段と、
前記回復手段の押圧荷重を前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段と、
を備える定着装置。
【0138】
(((2)))
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記記録媒体の特性に依存する(((1)))に記載の定着装置。
【0139】
(((3)))
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記記録媒体の坪量によって決まる(((2)))に記載の定着装置。
【0140】
(((4)))
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記定着手段の圧接状態に依存する(((1)))に記載の定着装置。
【0141】
(((5)))
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差が前記定着手段のニップ荷重によって決まる(((4)))に記載の定着装置。
【0142】
(((6)))
前記ベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差として前記定着後の前記ベルト表面の光沢を検知する検知手段を備え、
前記変更手段は、前記検知手段の検知結果に応じて前記回復手段の押圧荷重を変更する(((1)))に記載の定着装置。
【0143】
((7)))
前記検知手段は、定着後の前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置する前記ベルト表面の光沢と、定着後の前記記録媒体の端部以外に位置する前記ベルト表面の光沢とを検知し、
前記変更手段は、前記検知手段の検知結果を閾値に応じて複数の領域に区分し、前記検知手段の検知結果の区分に応じて前記回復手段の押圧荷重を変更する(((6)))に記載の定着装置。
【0144】
(((8)))
前記記録媒体の表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として(((1)))乃至(((7)))の何れかに記載の定着装置を用いた画像形成装置。
【0145】
(((1)))に係る定着装置によれば、回復手段の押圧荷重をベルト表面の定着処理前と定着処理後の状態の差に応じて変更する変更手段を備えない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制することができる。
【0146】
(((2)))に係る定着装置によれば、記録媒体の特性に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0147】
(((3)))に係る定着装置によれば、記録媒体の坪量に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0148】
(((4)))に係る定着装置によれば、定着手段の圧接状態に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0149】
(((5)))に係る定着装置によれば、定着手段のニップ荷重に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0150】
(((6)))に係る定着装置によれば、定着後のベルト表面の光沢を検知する検知手段を備えない場合に比べて、定着後のベルト表面の光沢差に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0151】
(((7)))に係る定着装置によれば、検知手段は、定着後の記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部に位置するベルト表面の光沢と、定着後の記録媒体の端部以外に位置するベルト表面の光沢とを検知しない場合に比べて、定着後の記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿った端部と端部以外のベルト表面の光沢との差に応じて回復手段の押圧荷重を変更することが可能となる。
【0152】
(((8)))に係る画像形成装置によれば、定着手段として(((1)))乃至(((7)))の何れかに記載の定着装置を用いない場合に比べて、ベルトの寿命を維持しつつ、定着処理後にベルト表面に損傷が発生するのを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0153】
1…画像形成装置
50…定着装置
51…加熱ベルト
90…リフレッシュロール
93…押圧機構
101…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21