(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048164
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】パラシュート素材、それを用いたドローン用パラシュートおよびドローン
(51)【国際特許分類】
B64D 17/02 20060101AFI20240401BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240401BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240401BHJP
B64D 17/80 20060101ALI20240401BHJP
D06M 15/277 20060101ALI20240401BHJP
D06M 15/244 20060101ALI20240401BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B64D17/02
B64C27/08
B64C39/02
B64D17/80
D06M15/277
D06M15/244
D06M15/643
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154051
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西原 正勝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正行
(72)【発明者】
【氏名】埴田 修
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智栄子
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA08
4L033AB05
4L033AC03
4L033CA12
4L033CA22
4L033CA59
(57)【要約】
【課題】軽量で飛行性能や積載能力に影響を与えづらく、コンパクトに格納でき格納スペースの確保が容易で、かつ視認性が高いため落下中のドローンを目視で追尾しやすい、ドローン用パラシュートに使用されるパラシュート素材を提供する。
【解決手段】ドローン用パラシュートの天蓋に使用されるパラシュート素材であって、前記パラシュート素材は繊度が15~40dtexの脂肪族ポリアミド糸からなる織物であり、前記織物がJIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項を満たす蛍光色に染色されている、パラシュート素材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローン用パラシュートの天蓋に使用されるパラシュート素材であって、前記パラシュート素材は繊度が15~40dtexの脂肪族ポリアミド糸からなる織物であり、前記織物がJIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項を満たす蛍光色に染色されている、パラシュート素材。
【請求項2】
前記織物の目付が20~60g/m2である、請求項1に記載のパラシュート素材。
【請求項3】
前記織物が少なくとも分散染料を含む染料系で染色されている、請求項1に記載のパラシュート素材。
【請求項4】
JIS L1096(2010) A法(フラジール形法)にて測定した前記織物の通気性が、1~17cm3/cm2・sである、請求項1に記載のパラシュート素材。
【請求項5】
前記脂肪族ポリアミド糸の表面に撥水剤が付着している、請求項1に記載のパラシュート素材。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のパラシュート素材からなる天蓋を有する、ドローン用パラシュート。
【請求項7】
請求項6に記載のドローン用パラシュートを有する、ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン用パラシュートの天蓋に使用されるパラシュート素材、そのパラシュート素材からなる天蓋を有するドローン用パラシュートおよびドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと呼ばれる推進機構と自己制御機構とを備えた小型の無人飛行体の産業上の利用が加速しつつある。
【0003】
しかし、推進機構の故障、自己制御機構の異常、通信の切断、鳥や障害物などとの接触といった突発的なトラブルがドローンに発生すると、ドローン本体やドローンに積載した機器や荷物が損傷したり、墜落したドローンが地上の構造物や人などに直撃する危険性があったりする。
【0004】
そこで、落下するドローンを軟着陸させるため、緊急時に展開して落下速度を減速させるためのパラシュートが提案されている(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドローンは小型の飛行体であるため、可能な限り機体や装備を軽量化したりコンパクト化したりすることが望ましい。このように、ドローンでは、小型化と、積載可能重量や積載可能体積の向上とが図られている。このため、当然、ドローンの補助装備であるパラシュートも軽量化やコンパクト化が要求されている。
【0007】
また、ドローン用のパラシュートについては、制御を失い不時着するドローンの着地場所を確認するために目視で追尾したり、落下しているドローンの直下にいる人が気付いて避けやすくしたりするため、パラシュートの天蓋を目立つものにしたいという要望もある。
【0008】
これまでに、パラシュートを緊急時に展開する機構については様々な提案がなされているが、パラシュートの天蓋に用いる素材ついては十分な検討がなされておらず、改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、軽量で飛行性能や積載能力に影響を与えづらく、コンパクトに格納でき格納スペースの確保が容易で、かつ視認性が高いため落下中のドローンを目視で追尾しやすい、ドローン用パラシュートに使用されるパラシュート素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明の一態様を完成するに至った。
【0011】
(1)本発明にかかるパラシュート素材は、ドローン用パラシュートの天蓋に使用されるパラシュート素材であって、前記パラシュート素材は繊度が15~40dtexの脂肪族ポリアミド糸からなる織物であり、前記織物がJIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項を満たす蛍光色に染色されている、パラシュート素材である。
【0012】
(2)また、本発明にかかるパラシュート素材は、前記織物の目付が20~60g/m2であるとよい。
【0013】
(3)また、本発明にかかるパラシュート素材は、前記織物が少なくとも分散染料を含む染料系で染色されているとよい。
【0014】
(4)また、本発明にかかるパラシュート素材は、JIS L1096(2010) A法(フラジール形法)にて測定した前記織物の通気性が、1~17cm3/cm2・sであるとよい。
【0015】
(5)また、本発明にかかるパラシュート素材は、前記脂肪族ポリアミド糸の表面に撥水剤が付着しているとよい。
【0016】
また、本発明は以下のものも含む。
【0017】
(6)本発明にかかるドローン用パラシュートは、前記(1)~(5)に記載されたパラシュート素材からなる天蓋を有するドローン用パラシュートである。
【0018】
(7)本発明にかかるドローンは、前記(6)に記載されたパラシュートを有するドローンである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軽量で飛行性能や積載能力に影響を与えづらく、コンパクトに格納でき格納スペースの確保が容易で、かつ視認性が高いため落下中のドローンを目視で追尾しやすい、ドローン用パラシュートに使用されるパラシュート素材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。また、本発明は、以下の態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲において多くの変形が可能である。
【0021】
<パラシュート素材>
本実施の形態にかかるパラシュート素材は、ドローン用パラシュートの天蓋に使用されるパラシュート素材であって、前記パラシュート素材は繊度が15~40dtexの脂肪族ポリアミド糸からなる織物であり、前記織物がJIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項を満たす蛍光色に染色されている、パラシュート素材である。
【0022】
本実施の形態にかかるパラシュート素材は、脂肪族ポリアミド糸が用いられる。脂肪族ポリアミド糸は、脂肪族ポリアミドからなる糸である。脂肪族ポリアミド糸は、脂肪族ポリアミドのみによって構成されていてもよいし、脂肪族ポリアミドとそれ以外の高分子材料が含まれていてもよい。脂肪族ポリアミド糸は、脂肪族ポリアミドが主成分材料となっていればよい。本実施の形態において、脂肪族ポリアミド糸は、脂肪族ポリアミドのみによって構成されている。
【0023】
脂肪族ポリアミドは、機械強度に優れる一方、密度が低い。さらに、化学的安定性が高いため、格納されている間の劣化による強度低下のおそれが低い。このため、脂肪族ポリアミド糸を用いて、薄地で軽量、コンパクトな織物を作製し、その織物をパラシュートの天蓋として用いても、パラシュートが展開する際にかかる大きな膨張圧に耐える。つまり、脂肪族ポリアミド糸からなる織物は、パラシュート素材に適している。
【0024】
しかも、脂肪族ポリアミドのアルキル鎖は芳香環と比較してルーズで結晶性が低いため、脂肪族ポリアミドの分子鎖中に染料分子が入り込みやすい。このため、脂肪族ポリアミド糸からなる織物は、染色が容易で発色性が高い利点も有する。脂肪族ポリアミド糸の繊維素材としては、例えば、ラクタムの開環やアミノ酸の縮合重合で合成されるナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などや、ジカルボン酸とジアミンとの共縮重合で合成されるナイロン46、ナイロン66、ナイロン610などが挙げられる。安価でかつ機械強度にも優れるとの観点から、脂肪族ポリアミド糸の繊維素材としては、ナイロン66を用いるのが好ましい。また、本発明の趣旨に反しない範囲で、織物を構成する糸として他の繊維素材が混繊、混紡、交織されていてもよい。
【0025】
脂肪族ポリアミド糸は、スパン糸、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸のいずれであってもよいし、無撚糸、撚糸、および加工糸のいずれであってもよい。加工糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、仮撚加工糸、押込加工糸、賦形加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、インターレース加工糸、捲縮糸、サイドバイサイド複合加工糸などを用いることができる。
【0026】
本実施の形態にかかる脂肪族ポリアミド糸の繊度は、15~40dtexである。脂肪族ポリアミド糸の繊度が15dtex以上であることにより、パラシュートが展開する際にかかる大きな膨張圧力に耐えうる強度を有するパラシュート素材が得られる。脂肪族ポリアミド糸の繊度の下限値は、20dtexであることがより好ましい。また、脂肪族ポリアミド糸の繊度が40dtex以下であることにより、軽量でコンパクトなパラシュート素材が得られる。脂肪族ポリアミド糸の繊度の上限値は、35dtexであることがより好ましい。ただし、後述するリップストップ生地の場合の補強糸の繊度はこれに限定されない。
【0027】
脂肪族ポリアミド糸の表面には、撥水剤が付着しているとよい。脂肪族ポリアミドは比較的吸湿性が高いため、脂肪族ポリアミド糸からなる織物をパラシュートの天蓋として用いると、パラシュートの天蓋は湿気を吸いやすい。この場合、パラシュートの天蓋が吸った湿気が寒冷地や高高度などの低温条件下にて結露や凍結の発生の原因になる可能性がある。結露した水の表面張力や凍結は、パラシュートの天蓋同士を貼り付かせ、緊急時にパラシュートが展開できなくなる不具合の原因となる。
【0028】
これに対して、表面に撥水剤が付着した脂肪族ポリアミド糸からなる織物をパラシュートの天蓋として用いることで、パラシュートの天蓋が湿気を吸うことを抑制することができ、パラシュートの天蓋に結露や凍結が発生することを抑制できる。これにより、緊急時にパラシュートが展開できなくなる不具合が発生しにくくなる。脂肪族ポリアミド糸の表面に付着させる撥水剤としては、フッ素系撥水剤、パラフィン系撥水剤、アクリル系撥水剤、シリコーン系撥水剤など、いかなる撥水剤を用いてもよい。
【0029】
なお、表面に撥水剤が付着している糸に対し、後述する蛍光色への染色加工を行うことは難しいため、糸の表面に撥水剤を付着させる撥水加工は、染色加工の後に行うのがよい。
【0030】
本実施の形態にかかるパラシュート素材は、織物である。織物の組織としては、平織、綾織、朱子織、変化組織などいかなる形態であってもよい。機械強度および寸法安定性が高く、展開するときの大きな膨張圧力を受けても破裂や通気度の変化が起こりにくいとの観点から、パラシュートの素材は、平織であることが好ましい。
【0031】
また、パラシュート素材の破裂や引き裂けと言った機械強度を向上させる目的で、周囲の糸よりも機械強度が強い糸、例えば、撚りが強い糸や繊度が大きい糸、脂肪族ポリアミド糸よりもより強度が強い素材の糸などを、数mm間隔で格子状に打ち込んだリップストップ生地であってもよい。
【0032】
本実施の形態にかかるパラシュート素材となる織物の目付は、20~60g/m2であるとよい。織物の目付が20g/m2以上であることにより、パラシュートが展開する際にかかる大きな膨張圧力に耐えうる強度と、落下するドローンを減速させるための高い気密性(低い通気性)とが得られやすい。織物の目付の下限値は、25g/m2であることがより好ましい。また、織物の目付が60g/m2以下であることにより、軽量でコンパクトなパラシュート素材が得られ、かつ後述する適度な通気性が得られやすい。織物の目付の上限値は、50g/m2であることがより好ましい。
【0033】
また、本実施の形態にかかるパラシュート素材となる織物の通気性は、1~17cm3/cm2・sであるとよい。織物の通気性が1cm3/cm2・s以上であることにより、パラシュートを展開した際に、適度に天蓋から空気が抜け、パラシュート展開時の急減速によるドローン本体や積載物への衝撃を抑えやすくなる。織物の通気性の下限値は、7cm3/cm2・sであることがより好ましい。また、織物の通気性が17cm3/cm2・s以下であることにより、落下するドローンを減速させるための高い気密性が得られやすい。織物の通気性の上限値は、13cm3/cm2・sであることがより好ましい。なお、織物の通気性は、JIS L1096(2010) A法(フラジール形法)にて測定することができる。
【0034】
前記織物の通気性を調整する手段としては、糸の繊度や織密度などの織物の設計、テンター加工による織密度の調整、カレンダー加工、樹脂のコーティング、ニードルパンチなどの穿孔加工などで行えばよい。カレンダー加工や樹脂のコーティング、穿孔加工を行うと織物の引裂強度が低下するので、織物の通気性は、織物の設計やテンター加工によって調整することが好ましい。
【0035】
本実施の形態にかかるパラシュート素材は、前記織物がJIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項(ISO 20471(2013) 5.1.1 蛍光素材に対する要求事項と同一)を満たす蛍光色に染色されている。パラシュート素材となる織物が前記要求特性を満たす蛍光色に染色されていることにより、特に照度が非常に高い晴天において、展開したパラシュートが青空と高いコントラストにて視認しやすくなる。
【0036】
織物を染色するために用いられる着色剤としては、分散染料、酸性染料、カチオン染料、直接染料、反応染料、建染染料、硫化染料、顔料など、前記要求特性を満たす蛍光色に染色できれば、いかなる着色剤を用いてもよい。
【0037】
一般的に、脂肪族ポリアミドからなる繊維は、洗濯や摩擦、光などに対する堅牢性が高く、かつ移行昇華も発生しにくい酸性染料で染色されることが多いため、脂肪族ポリアミドからなる繊維に対しては、堅牢性が低く移行昇華も発生しやすい分散染料で染色することは避ける傾向にある。しかし、パラシュートの格納室内で外界から隔離された状態で長期保管されるパラシュート素材に対しては、堅牢性や移行昇華は特に問題になりにくいため、輝度が高くより視認性が高いパラシュート素材が得やすいとの観点から、パラシュート素材となる脂肪族ポリアミド糸からなる織物について、一般的な酸性染料ではなく、あえて分散染料で染色することが好ましい。この場合、織物は、少なくとも分散染料を含む染料系によって染色されているとよい。なお、少なくとも分散染料を含む染料系とは、分散染料単独、分散染料と他の染料の混合、さらに必要に応じた分散剤、均染剤、酸などの染色助剤が混合されているものを指す。より輝度を高くするとの観点から、染料系に含まれる染料は、分散染料のみであることが特に好ましい。
【0038】
織物を染色する方法は特に限定されず、例えば、脂肪族ポリアミド糸の紡糸の際に前記着色剤を練りこんだり、紡糸された糸の段階で染色したりして蛍光色に染色された脂肪族ポリアミド糸を準備し、その染色された脂肪族ポリアミド糸によって製織して織物を得てもよいし、脂肪族ポリアミド糸からなる無色の織物を蛍光色に染色してもよい。パラシュート素材に対して撥水加工も行う場合には、撥水剤により染色加工が阻害されないよう、撥水加工よりも先に染色加工を行うのがよい。
【0039】
<ドローン用パラシュート>
本実施の形態にかかるドローン用パラシュートは、前記パラシュート素材からなる天蓋を有するドローン用パラシュートである。前記パラシュート素材を天蓋に用いたドローン用パラシュートは、軽量で飛行性能や積載能力に影響を与えづらく、コンパクトに格納でき格納スペースの確保が容易で、かつ視認性が高いため落下中のドローンを目視で追尾しやすい。
【0040】
本実施の形態にかかるドローン用パラシュートは、キノコのような形状のマッシュルーム型であっても、翼のような形状のラムエアー型であってもよい。パラシュートの天蓋が潰れにくく安定して展開できるとの観点から、本実施の形態にかかるドローン用パラシュートはマッシュルーム型であることが好ましい。
【0041】
また、前記パラシュート素材の端部が直接ドローン本体と接続されていても、サスペンションラインを介して天蓋をなすパラシュート素材とドローン本体とが接続されていてもよい。パラシュートを展開した際にドローン本体の姿勢を安定させやすいとの観点から、サスペンションラインを介して天蓋とドローン本体とが接続されている形態が好ましい。
【0042】
本実施の形態にかかるパラシュート素材を用いたパラシュートの天蓋は、接続するドローン本体の質量や最高到達高度などによって適宜の形態に設計すればよい。例えば、パラシュートの天蓋は、前記パラシュート素材1枚で構成されていてもよいし、パラシュート素材を複数枚積層して用いてもよいし、複数枚のパラシュート素材をリブによって区画した複数のセルを有する形態であってもよい。
【0043】
<ドローン>
本実施の形態にかかるドローンは、前記ドローン用パラシュートを有するドローンである。前記ドローン用パラシュートを有するドローンは、パラシュート素材が軽量でコンパクトに格納でき、前記ドローン用パラシュートを積載しても飛行性能や積載能力に影響を受けにくく、格納スペースの確保が容易であり、かつ落下中のドローンを目視で追尾しやすい。
【0044】
(実施例)
以下、本実施の形態にかかるドローン用パラシュート素材について、実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更を施すことは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の例における各種性能の測定、試験および評価は次の方法で行った。
【0045】
<目付>
パラシュート素材の目付は、1m四方に切り出した試験片の質量を用いた。
【0046】
<格納体積>
パラシュート素材を格納した際のコンパクトさ(格納体積)を以下の方法で評価した。内径96mm、高さ50cmの透明アクリルパイプ中に、1m四方に切り出した試験片を手で丸めて詰めてパイプを垂直に立て、外径94mmの蓋と重り(合計1kg)をパイプ内に落とし、地面から蓋の下端までの距離を測定し、この値を高さとして円筒状に格納された試験片の体積を求め、格納体積の値とした。
【0047】
<通気性>
パラシュート素材の通気性は、JIS L1096(2010)に規定されるA法(フラジール形法)に準じて測定した。
【0048】
<引張強さ>
パラシュート素材の引張強さは、JIS L1096(2010)に規定されるA法(ストリップ法)に準じて測定した。試験片の幅50mm、つかみ間隔200mm、引張速度200mm/minの定速伸長の条件で、経、緯それぞれについて測定した。
【0049】
<撥水度>
パラシュート素材の撥水度は、JIS L1092(2009)に規定されるはっ水度試験(スプレー試験)に準じて測定した。
【0050】
<色度座標および輝度率>
パラシュート素材の色度座標および輝度率は、JIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項に規定される測定法に準じて、分光測色計(CM-2600C(コニカミノルタ株式会社製))を用いてCIE 1931 XYZ色空間上での色度座標(xおよびy)、輝度率β(=Y/100)を測定した。また、JIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項に規定される蛍光イエローおよび蛍光オレンジレッドの色度座標の範囲および輝度率の下限値と比較し、適合性を判定した。
【0051】
<視認性>
晴天の日の正午ごろ、枠に入れた1m四方の試験片を建物の屋上に設置し、約400m離れた別の建物の屋上に被験者を立たせ、試験片を素早く見つけられるかどうかの試験を行った。試験片を素早く見つけられた場合は〇、試験片を見つけるのに時間がかかった場合は×と評価を行った。
【0052】
(実施例1)
繊度が33dtexでナイロン66製の糸からなる織物(織密度:経123本/2.54cm×緯90本/2.54cm)を準備した。
【0053】
前記織物を、染料としてTwintex Brill. Flavin GN200(二葉産業株式会社製、蛍光分散染料)を用いて105℃で30分間染色した後、水洗し、120℃×30秒乾燥し、蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
繊度が44dtexでナイロン66製の糸からなる平織物(織密度:経128本/2.54cm×緯92本/2.54cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
繊度が11dtexでナイロン66製の糸からなる平織物(織密度:経120本/2.54cm×緯102本/2.54cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
繊度が33dtexでポリエチレンテレフタレート(PET)製の糸からなる平織物(織密度:経110本/2.54cm×緯90本/2.54cm)を準備した。
【0057】
前記織物を、染料としてTwintex Brill. Flavin GN200(二葉産業株式会社製、蛍光分散染料)を用いて135℃で30分間染色した後、水洗し、120℃×30秒乾燥し、蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0058】
(比較例4)
実施例1で用いた織物をそのまま(染色せず)パラシュート素材とした。評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2)
実施例1で用いた織物を、染料としてTwintex Brill. Flavin GN200(二葉産業株式会社製、蛍光分散染料)、およびKayacyl Rhodamine FB(日本化薬株式会社製、蛍光酸性染料)を用いて105℃で30分間染色した後、水洗し、120℃×30秒乾燥し、蛍光オレンジレッドに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
繊度が22dtexでナイロン66製の糸からなる織物(織密度:経163本/2.54cm×緯147本/2.54cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例4)
繊度が22dtexでナイロン66製の糸からなる織物(織密度:経206本/2.54cm×緯163本/2.54cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
実施例4で得られたパラシュート素材を、アサヒガード AG-E081(AGC株式会社製、フッ素系撥水剤)の3質量%水分散液に浸漬後マングルロールを用いて絞り、さらに170℃×1分乾燥することで、ナイロン66製の糸の表面に撥水剤が付着している、蛍光イエローに染色されたパラシュート素材を得た。得られたパラシュート素材の評価結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
表1から、以下のことが分かる。すなわち、繊度が15~40dtexの脂肪族ポリアミド糸からなる織物であり、JIS T8127(2020) 5.1.1 蛍光生地に対する要求事項を満たす蛍光色に染色されているパラシュート素材は、軽量でコンパクトに格納でき、かつ視認性が高いことが分かる。