(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048168
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】成形材
(51)【国際特許分類】
C08F 283/01 20060101AFI20240401BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08F283/01
C08J5/04 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154057
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】萩原 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】福本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 崇之
【テーマコード(参考)】
4F072
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB27
4F072AD05
4F072AD38
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4F072AF24
4F072AG02
4F072AK20
4F072AL01
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB251
4J127BD131
4J127BE371
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4J127BF151
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4J127DA43
4J127DA45
4J127EA05
4J127FA02
(57)【要約】
【課題】MMD成形においてクラックが入りにくい成形材を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、MMD(Matched Metal Die)成形にてプリフォームと組み合わせて使用される成形材が提供される。この成形材は、不飽和ポリエステル樹脂(A)と、低収縮剤(B)と、を含む。不飽和ポリエステル樹脂(A)の1kg当たりのエチレン性不飽和基のmol数で表される二重結合濃度が、4.0~6.2[mol/kg]である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MMD(Matched Metal Die)成形にてプリフォームと組み合わせて使用される成形材であって、
不飽和ポリエステル樹脂(A)と、低収縮剤(B)と、を含み、
前記不飽和ポリエステル樹脂(A)の1kg当たりのエチレン性不飽和基のmol数で表される二重結合濃度が、4.0~6.2[mol/kg]である、成形材。
【請求項2】
請求項1に記載の成形材において、
前記低収縮剤(B)は、酢酸ビニルに由来する重合単位を含む樹脂を含む、成形材。
【請求項3】
請求項1に記載の成形材において、
前記低収縮剤(B)は、スチレンに由来する重合単位を含む樹脂を含む、成形材。
【請求項4】
請求項1に記載の成形材において、
さらにラジカル発生剤(C)を含む、成形材。
【請求項5】
請求項1に記載の成形材において、
さらに充填剤(D)を含む、成形材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化プラスチックの成形物を得るにあたって種々の成形手法が開発されてきた。そのような成形手法の中でも、MMD(Matched Metal Die)成形は、均一な性質を有する製品化するのに適し、多くの製品に適用されてきた。ここで、このMMD成形は、プリフォーム工程と、プレス工程とを組み合わせて行われる特徴がある。
これに関連する技術して、たとえば、特許文献1に開示された技術が知られている。この特許文献1には、繊維強化プリフォームの強度不足をなくす、プリフォームの製造方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らが検討したところ、MMD成形におけるプレス工程で用いられる組成物によっては成形体にクラックが入りやすいということが分かってきた。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、MMD成形においてクラックが入りにくい成形材を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、MMD(Matched Metal Die)成形にてプリフォームと組み合わせて使用される成形材が提供される。この成形材は、不飽和ポリエステル樹脂(A)と、低収縮剤(B)と、を含む。不飽和ポリエステル樹脂(A)の1kg当たりのエチレン性不飽和基のmol数で表される二重結合濃度が、4.0~6.2[mol/kg]である。
【0007】
上記態様によれば、MMD成形においてクラックが入りにくい成形材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタアクリレート」の双方を包含する概念を表す。また、本明細書中の「~」はとくに断りがなければ以上から以下を表す。
【0009】
[成形材]
まず、本実施形態の成形材について説明する。
本実施形態の成形材は以下に示されるものである。
【0010】
MMD(Matched Metal Die)成形にてプリフォームと組み合わせて使用される成形材であって、
不飽和ポリエステル樹脂(A)と、低収縮剤(B)と、を含み、
前記不飽和ポリエステル樹脂(A)の1kg当たりのエチレン性不飽和基のmol数で表される二重結合濃度が、4.0~6.2[mol/kg]である、成形材。
【0011】
本実施形態の成形材は、MMD成形にて、プリフォームと組み合わせて使用される。すなわち、MMD成形においては、通常、金型にプリフォームと称される繊維材料(ガラス繊維等)を含む型が配置される。続いて、金型内に、前述のプリフォームとは異なる樹脂コンパウンド(「成形材」と称してもよい。)を配置し、繊維材料を含む型に当該成形材を含浸させるように成形を行う。また、この結果、上述の繊維材料を含む成形体を得ることができる。なお、かかる成形体は、繊維材料で強化された樹脂であることから、FRP(Fiber Reinforced Plastics)成形体と称されることもある。
上述の樹脂コンパウンドは、得る成形品の用途によっては熱によって硬化する材料であってもよく、適宜、金型を加熱することによって所望の成形品を得ることができる。
【0012】
本実施形態の成形材は、かかるMMD成形の樹脂コンパウンドとして用いる際に、特定の要件を満たす不飽和ポリエステル樹脂(A)を用いることで、クラックの発生を抑制することができるという知見に基づいて実現したものである。
【0013】
以下、本実施形態の成形材に必須又は任意に含まれる成分について説明する。
【0014】
(不飽和ポリエステル樹脂(A))
本実施形態の成形材は、不飽和ポリエステル樹脂(A)を含む。
この不飽和ポリエステル樹脂(A)は、その化学構造の中にエチレン性不飽和基(典型的には炭素-炭素の不飽和結合であり、重合反応に寄与しうるもの)が含まれる化合物であり、公知の材料の中から適宜選択して用いればよい。
【0015】
本実施形態における不飽和ポリエステル樹脂(A)は、一例において、例えば、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸及びグリコール類を公知の脱水縮合反応により得ることができ、通常、2~40mg-KOH/gの酸価を有することができる。不飽和ポリエステル樹脂の製造において、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸の酸成分の選択や組合せ、及びグリコール類の選択や組合せ、それらの配合割合等を適宜選択することにより所望の不飽和ポリエステル樹脂とすることができる。
【0016】
不飽和多塩基酸類は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、グルタコン酸等を挙げることができる。
【0017】
飽和多塩基酸類は、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
【0018】
グリコール類は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、シクロヘキサンジメタノール、ジブロムネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
【0019】
本実施形態の不飽和ポリエステル樹脂(A)は上記の中でも、不飽和多塩基酸としてマレイン酸や無水マレイン酸、フマル酸等が用いられ、飽和多塩基酸としてフタル酸や無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸が用いられる。
本実施形態の不飽和ポリエステル樹脂(A)は上記の中でも、グリコール類として、エチレングリコールやプロピレングリコールが用いられる。
【0020】
また、本実施形態の不飽和ポリエステル樹脂(A)を得るにあたって、多塩基酸(不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸の合算量)とグリコール類の仕込み比(モル比)は、たとえば0.7~1.3の範囲であり、好ましくは0.8~1.2の範囲であり、より好ましくは0.9~1.1の範囲である。このような範囲に設定することで酸価を適正な範囲としつつ、成形工程に供しやすい樹脂が得られやすくなる。
【0021】
本実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂(A)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)の1kg当たりのエチレン性不飽和基のmol数で表される二重結合濃度が、4.0~6.2[mol/kg]であるという特徴を有する。
【0022】
この二重結合濃度は、例示的には以下の手順に沿って求められる。
すなわち、不飽和ポリエステル樹脂(A)を合成するにあたって用いられる各種原料に基づいて、得られる不飽和ポリエステル樹脂(A)の総重量を算出する。この算出した重量によって、樹脂中のエチレン性不飽和基を構成しうる原料の使用モル数を除することで上述の二重結合濃度を計算することができる。
なお、不飽和ポリエステル樹脂(A)を合成する際の各種原料の重量から、樹脂の総重量を求めるにあたっては、エステル化反応の際に生じる水の量を、不飽和ポリエステル樹脂(A)の重量から控除することで、この二重結合濃度を計算することができる。
【0023】
この二重結合濃度は、4.2~6.0[mol/kg]であることが好ましく、4.5~5.8[mol/kg]であることがより好ましく、4.8~5.6[mol/kg]であることがさらに好ましく、5.0~5.8[mol/kg]であることがいっそう好ましい。このような範囲に設定することにより、得られる成形体について、クラックの発生をより抑制しやすくなる。
【0024】
なお、成形材全体における不飽和ポリエステル樹脂(A)の含有量は適宜設定することができるが、成形材全体の重量を100質量部としたときに、不飽和ポリエステル樹脂(A)の含有量は、好ましくは1~60質量部であり、より好ましくは3~50質量部であり、さらに好ましくは5~40質量部である。
なお、明細書において、不飽和ポリエステル樹脂(A)や、後述する低収縮剤(B)等の、各種材料の含有量は、成形材中に存在する当該材料の純粋な成分量を指す。そのため、不飽和ポリエステル樹脂(A)を、各種溶媒や、他の重合性モノマー(スチレンモノマー等)で希釈して取り扱い、成形材中に配合した場合であっても、「不飽和ポリエステル樹脂(A)の含有量」は不飽和ポリエステル樹脂(A)単体としての含有量を指すものとする。
【0025】
(低収縮剤(B))
本実施形態の成形材は、低収縮剤(B)を含む。
この低収縮剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、スチレン-ブタジエン系ゴム等の低収縮剤として一般に使用されている熱可塑性ポリマーを単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
この中でも、低収縮剤(B)が、酢酸ビニルに由来する重合単位を含む樹脂(ポリ酢酸ビニル)を含むことが好ましく、スチレンに由来する重合単位を含む樹脂(ポリスチレン)を含むことが好ましい。なお、ここでの「ポリ酢酸ビニル」や「ポリスチレン」は、酢酸ビニルやスチレンのホモポリマーのみを指すものでなく、酢酸ビニルやスチレン以外のモノマーとの共重合体も包含する概念である。また、本実施形態の成形材は、低収縮剤(B)として、酢酸ビニルとスチレンとの共重合体を含んでもよい。
なお、低収縮剤(B)の含有量は適宜設定することができるが、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して好ましくは3~80質量部であり、より好ましくは5~70質量部であり、さらに好ましくは10~60質量部である。
【0026】
(ラジカル発生剤(C))
また、本実施形態の成形材は、ラジカル発生剤(C)を含んでもよい。
前述したように、不飽和ポリエステル樹脂(A)はその構造中に二重結合を有する。すなわち、このようにラジカル発生剤(C)を成形材中に含ませることにより、成形材としての硬化性を向上させることができる。なお、このラジカル発生剤(C)としては、熱ラジカル発生剤(C1)、レドックス開始剤(C2)等が例示される。
【0027】
熱ラジカル発生剤(C1)としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート等の有機過酸化物;2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0028】
レドックス開始剤(C2)は、低温でラジカルを発生させることができる剤の組み合わせを指す。
レドックス開始剤(C2)としては、パーメックN〔商品名、メチルエチルケトンパーオキサイド、日油株式会社製〕と、ナフテン酸コバルトやオクテン酸コバルト等のコバルト化合物と、の組み合わせ;パーブチルZ〔商品名、ターシャリーブチルパーベンゾエート、日油株式会社製〕と、ナフテン酸コバルトやオクテン酸コバルト等のコバルト化合物と、の組み合わせ;パークミルH〔商品名、クメンヒドロパーオキサイド、日油株式会社製〕と、五酸化バナジウム等のバナジウム化合物と、の組み合わせ;ナイパーBMT〔商品名、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド+ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド+ジベンゾイルパーオキサイド、日油株式会社製〕と、ジメチルアニリンとの組み合わせ;ナイパーPMB〔商品名、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、日油株式会社製〕と、ジメチルアニリンと、の組み合わせ;ナイパーBW〔商品名、ジベンゾイルパーオキサイド、日油株式会社製〕と、ジメチルアニリンと、の組み合わせ等が挙げられる。
【0029】
成形材にラジカル発生剤(C)が含まれる場合、その含有量は、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して好ましく0.1~10質量部であり、より好ましくは0.2~8質量部であり、さらに好ましくは0.3~5質量部である。
このような範囲に設定することにより、成形材の硬化性と、硬化後の機械特性とのバランスを取りやすくなる。
【0030】
(充填剤(D))
また、本実施形態の成形材は、さらに充填剤(D)を含んでもよい。
この充填剤(D)としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化チタン、シリカ、溶融シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、石こう、硫酸バリウム、クレー、タルク等の無機充填剤が挙げられる。
なお、この無機充填剤は完全な真球である必要はなく、一部に楕円形等の変形物が含まれていてもよい。ただし、一般には、球形度が、0.8以上のものが好ましい。
また、無機充填剤として、上で列記した無機充填剤を粉砕して得られる粉砕物を用いてもよい。粉砕手段は特に限定されず、公知の粉砕手段を制限なく採用することができる。例えば、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いた粉砕が挙げられ、粉砕により得られた粉砕物は必要により分級して使用される。
【0031】
成形材に充填剤(D)が含まれる場合、その含有量は、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して好ましく20~1000質量部であり、より好ましくは40~900質量部であり、さらに好ましくは60~800質量部である。
このような範囲に設定することにより、成形材の硬化性と、硬化後の機械特性とのバランスを取りやすくなる。
【0032】
(離型剤(E))
その他、本実施形態の成形材は、離型剤(E)を含んでもよい。
この離型剤(E)としては、いわゆる内添離型剤として用いられる各種材料が例示される。より具体的には、離型剤(E)として、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0033】
成形材に離型剤(E)が含まれる場合、その含有量は、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して好ましく1~40質量部であり、より好ましくは2~35質量部であり、さらに好ましくは5~30質量部である。
このような範囲に設定することにより、成形物の金型からの離型性と、硬化後の機械特性とのバランスを取りやすくなる。
【0034】
(その他の樹脂またはモノマー(F))
本実施形態の成形材は、上述した成分以外の樹脂やモノマーを含んでもよい。
たとえば、この樹脂またはモノマー(F)としては、前述の不飽和ポリエステル樹脂(A)とともに架橋しうる成分が挙げられる。
【0035】
より具体的には、樹脂またはモノマー(F)として、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂のような樹脂成分を含むことができる。
その他、樹脂またはモノマー(F)として、ラジカル重合性モノマーや、このラジカル重合性モノマーの多量体を含むことができる。
成形材に対するこれらの配合量は任意である。
【0036】
・ウレタン(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールとジイソシアネートとを反応させた分子末端のイソシアネート、および/または一分子中に1個以上のイソシアネートに、アルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を反応させることで得ることができる樹脂である。
または、まずアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物とジイソシアネートとをイソシアネート基が残るように反応させ、残ったイソシアネート基と一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールとを反応させて得ることができる樹脂である。
ウレタン(メタ)アクリレートの製造において、イソシアネートと、ポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールの組み合わせ、及びアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を適宜選択する事により、樹脂の物性を調整することができる。
【0037】
上記アルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0038】
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールには、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等を用いることができる。
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールには、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等のポリアルコールと、アジピン酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多塩基酸との脱水縮合反応から得られる分子量1000~2000の飽和ポリエステルポリオールを用いることができる。
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールには、エチレンオキシド或いはプロピレンオキシドの開環反応により得られる分子量300~2000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール類又は、カプロラクトンの開環反応で得られるポリカプロラクトン等を用いることができる。
これらは、単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0039】
上記一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、芳香族及び/又は脂肪族ポリイソシアネート化合物が用いられ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート、市販されているポリオールで変性されたイソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。
これらは単独または2種類以上を混合して用いることができる。
【0040】
・エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、公知の方法で製造することができる。たとえば、公知の禁止剤、公知のエステル化触媒の存在下又は非存在下、不活性ガス気流中又は空気雰囲気下にてエポキシ樹脂、及び不飽和一塩基酸を適宜選択することにより所望のエポキシ(メタ)エポキシアクリレート樹脂とすることができる。必要に応じて反応系の溶融粘度を下げる目的で他のラジカル重合性モノマーや有機溶剤を入れて反応させることができる。なお、本エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は「ビニルエステル樹脂」と称することもできる。
【0041】
本実施形態におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、一例として、例えば、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂にアクリル酸またはメタクリル酸を付加反応させて得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂とすることができる。
上記1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、あるいはこれらの誘導体からのビスフェノール型エポキシ樹脂;ビキシレノールおよびその誘導体からのビキシレノール型エポキシ樹脂;ビフェノールおよびその誘導体からのビフェノール型エポキシ樹脂;あるいはナフタレンおよびその誘導体からのナフタレン型エポキシ樹脂;さらにはノボラック型エポキシ樹脂などの芳香環を含むエポキシ樹脂であってよい。
また、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪鎖又は脂環を構造中に有するポリオールのグリシジルエーテル体であってもよい。
これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。エポキシ樹脂の分子量の目安になるエポキシ当量は80~2000eq/gのものが好ましい。
【0042】
・ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリエステルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸とのエステル化によって得られる樹脂である。
あるいは、酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの反応により得られる樹脂であってもよい。
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の製造において、ポリエステルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸、あるいは酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートを適宜選択する事によりポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の特性を調整することができる。
【0043】
・ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂
本実施形態におけるポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリエーテルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸とのエステル化によって得られる樹脂である。
あるいは、酸末端ポリエーテルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの反応により得られる樹脂であってもよい。
ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂の製造において、ポリエーテルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸、あるいは酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートを適宜選択する事によりポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の特性を調整とすることができる。
【0044】
・ラジカル重合性モノマー等
本実施形態におけるラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、ラジカル重合性モノマーは、常温(25℃)で固体のモノマー、常温(25℃)で液体のモノマーのいずれであってもよい。また、このラジカル重合性モノマーの多量体(オリゴマー)が成形材に含まれていてもよい。
【0045】
なお、本実施形態の成形材は、前述のラジカル重合性モノマー(スチレン等)を含むことが好ましい。このようにラジカル重合性モノマーを含む場合、その含有量は、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して好ましく30~600質量部であり、より好ましくは50~500質量部であり、さらに好ましくは80~400質量部である。このような範囲に設定することにより、成形材の重合性の向上に寄与しやすくなる。
【0046】
(その他の成分)
なお、本実施形態の成形材は、本発明の目的を損なわない範囲で、ジブチルスズラウレート等の各種触媒(スズ触媒等);シランカップリング剤;緑、赤、青、黄、および黒等の染料、黒色顔料等の顔料、色素からなる群から選択される一種以上を含む着色剤;低応力剤;酸化防止剤;イオン捕捉剤等の上記の成分以外の添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、配合量も任意である。
【0047】
(成形材の製造方法)
本実施形態の成形材は、上述した各材料を混合することによって製造することができる。
たとえば、各材料について、ニーダーを用いて混練することによって、所定の成形材が得られる。混合する際の温度条件や、混練条件等は使用する材料に応じて適宜設定すればよい。
【0048】
[成形体]
上述した成形材はMMD成形に供され、種々の成形体を与えることができる。この成形体の種類はとくに制限されることはないが、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品であってもよい。
【0049】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0050】
(1)MMD(Matched Metal Die)成形にてプリフォームと組み合わせて使用される成形材であって、不飽和ポリエステル樹脂(A)と、低収縮剤(B)と、を含み、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)の1kg当たりのエチレン性不飽和基のmol数で表される二重結合濃度が、4.0~6.2[mol/kg]である、成形材。
【0051】
(2)上記(1)に記載の成形材において、前記低収縮剤(B)は、酢酸ビニルに由来する重合単位を含む樹脂を含む、成形材。
【0052】
(3)上記(1)又は(2)に記載の成形材において、前記低収縮剤(B)は、スチレンに由来する重合単位を含む樹脂を含む、成形材。
【0053】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の成形材において、さらにラジカル発生剤(C)を含む、成形材。
【0054】
(5)上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の成形材において、さらに充填剤(D)を含む、成形材。
もちろん、この限りではない。
【0055】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0056】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0057】
[使用原料]
まず、本実施例で用いた使用原料について説明する。
本実施例項目で用いた各種使用原料は以下の通りである。
(不飽和ポリエステル樹脂(A))
・A-1: 以下の合成例1で得られた樹脂
・A-2: 以下の合成例2で得られた樹脂
・A-3: 以下の合成例3で得られた樹脂
・A-4: 以下の合成例4で得られた樹脂
(低収縮剤(B))
・B-1: ポリスチレン(重量平均分子量Mw=24万;PSジャパン株式会社製、商品名「PS679」)
・B-2: スチレン/酢酸ビニル共重合体(重量平均分子量Mw=27万;日油株式会社製、商品名「モディパーSV30B」)
(ラジカル発生剤(C))
・C-1: ターシャリーブチルパーベンゾエート〔日油株式会社製、商品名「パーブチルZ」〕
・C-2: オクテン酸コバルト溶液
(充填剤(D))
・D-1: 炭酸カルシウム
(離型剤(E))
・E-1: ステアリン酸亜鉛
・E-2: ステアリン酸
(その他のモノマー(F))
・F-1:スチレンモノマー
【0058】
[合成例1]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、プロピレングリコール495質量部、無水フタル酸96質量部、無水マレイン酸514質量部、ハイドロキノン0.05質量部を仕込んだ。次に窒素雰囲気下で撹拌しながら170℃~215℃の温度範囲で内容物の酸価が32mgKOH/g以下になるまで反応を行い不飽和ポリエステル樹脂(樹脂(A-1))を得た。なお、この樹脂(A-1)の二重結合濃度は固形分基準で5.24[mol/kg]であった。
【0059】
[合成例2]
合成例1について、用いるプロピレングリコール、無水フタル酸、無水マレイン酸の量比を変更させることで、樹脂(A-2)を得た。なお、この樹脂(A-2)の二重結合濃度は4.5[mol/kg]であった。
【0060】
[合成例3]
合成例1について、用いるプロピレングリコール、無水フタル酸、無水マレイン酸の量比を変更させることで、樹脂(A-3)を得た。なお、この樹脂(A-3)の二重結合濃度は6.0[mol/kg]であった。
【0061】
[合成例4]
合成例1について、用いるプロピレングリコール、無水フタル酸、無水マレイン酸の量比を変更させることで、樹脂(A-4)を得た。なお、この樹脂(A-4)の二重結合濃度は3.91[mol/kg]であった。
【0062】
[成形材の調製]
以下の表1に示す配合比で各材料を混合し、成形材を得た。なお、表1に示される配合比は固形分基準で記載している。
【0063】
[評価]
得られた成形材について、以下の手法に沿って試験片を作製し、擬似的にMMD成形におけるクラックの発生リスクを見積もった。
まず、目付が450g/m2のガラスチョップドストランドマットを準備し、このマットをプレス成形機の金型に配置した。この金型を130-140℃に加熱し、続いて、各実施例および比較例で得た成形材を金型の前述のガラスチョップドストランドマットの上に配置し、15-20kgf/cm2、10分間の条件でプレス成形した。
得られた成形体(試験片)について目視確認し、以下の評価に沿って、クラックの発生リスクを見積もった。
◎:試験片の表面にクラックが確認されない。
○:試験片の表面に僅かなクラックが確認される。
×:試験片の表面にクラックが確認される。
【0064】
本実施例項で作製した成形材と、成形材中の不飽和ポリエステル樹脂の二重結合濃度と、評価結果について、以下の表1にまとめた。
【0065】
【0066】
以上の実施例の結果から、不飽和ポリエステル樹脂の二重結合濃度を調整することで、MMD成形におけるクラック発生のリスクが緩和させることが確認された。