IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乗り物 図1
  • 特開-乗り物 図2
  • 特開-乗り物 図3
  • 特開-乗り物 図4
  • 特開-乗り物 図5
  • 特開-乗り物 図6
  • 特開-乗り物 図7
  • 特開-乗り物 図8
  • 特開-乗り物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048173
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】乗り物
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/12 20060101AFI20240401BHJP
   B62K 17/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61G5/12 705
B62K17/00
A61G5/10 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154067
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢田 渉
(72)【発明者】
【氏名】池田 鞠花
(72)【発明者】
【氏名】金森 聡史
(72)【発明者】
【氏名】小橋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 友和
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BB12
3D212BB22
3D212BB32
3D212BB36
3D212BB42
3D212BB54
3D212BB66
(57)【要約】
【課題】 搭乗者の下肢を効果的に支持することのできる乗り物を提供する。
【解決手段】 乗り物1であって、骨格を構成する車体フレーム3と、車体フレームを前方から覆うアウタシェル11と、車体フレームを移動可能に支持する車輪5と、車体フレームの上部に設けられ、搭乗者が着座する座面9Aを構成するシート9と、を有し、シートの前端は、アウタシェルの前面の上端よりも前方に延出している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格を構成する車体フレームと、
前記車体フレームを前方から覆うアウタシェルと、
前記車体フレームを移動可能に支持する車輪と、
前記車体フレームの上部に設けられ、搭乗者が着座する座面を構成するシートと、を有し、
前記シートの前端は、前記アウタシェルの前面の上端よりも前方に延出している乗り物。
【請求項2】
前記アウタシェルの前面には、物品を収納可能な収納部材が設けられている請求項1に記載の乗り物。
【請求項3】
前記収納部材の前面上端は、前記シートの下面前端に対して、前後方向に同じ位置、又は、後方に位置する請求項2に記載の乗り物。
【請求項4】
前記収納部材の前面は、前記シートの前面と面一をなす請求項2に記載の乗り物。
【請求項5】
前記収納部材の前後幅は上端から下端までの一定をなす請求項2~請求項4のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【請求項6】
前記収納部材の前面の左右幅は上端において、前記シートの前面下縁の左右幅と同一である請求項2~請求項4のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【請求項7】
前記搭乗者のふくらはぎを拘束するための拘束部材を備え、
前記拘束部材の少なくとも一部は、前記収納部材と前記アウタシェルの前面との間に収納可能である請求項2~請求項4のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。例えば、脆弱な立場にある人々も利用可能であり、かつ、より利便性の高い乗り物を実現しようとする研究開発が盛んに行われるようになっている。
【0003】
障碍がある方々も利用可能な一人用の移動装置であって、路面が悪路等に変わった場合でも切替操作無しに悪路等を走行可能としたものが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1の移動装置は、全方向車輪で成る左右の前輪と、左右の後輪と、前輪及び後輪を回転可能に支持するボディと、シートと、モータと、クローラと、を備えている。シートの前側には、ユーザが足を載せるための板状のフットレストが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-285087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムにおいては、乗る人それぞれに対応可能な乗り物が求められている。具体的には、例えば、下肢に障碍がある方々にとっては、下肢を支持することのできる乗り物が必要となる場合がある。特許文献1に記載の移動装置では、足を載せるためのフットレストが設けられているものの、搭乗者の下肢全体を支持することができない。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、搭乗者の下肢を効果的に支持することのできる乗り物を提供することを課題とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、乗り物(1)であって、骨格を構成する車体フレーム(3)と、前記車体フレームを前方から覆うアウタシェル(11)と、前記車体フレームを移動可能に支持する車輪(5)と、前記車体フレームの上部に設けられ、搭乗者が着座する座面(9A)を構成するシート(9)と、を有し、前記シートの前端は、前記アウタシェルの前面の上端よりも前方に延出している。
【0008】
この態様によれば、シートの前端が、アウタシェルの前面の上端よりも前方に延出するように構成される。これにより、搭乗者の下肢のひざ裏部分を安定して支持することができる。
【0009】
上記の態様において、好ましくは、前記アウタシェルの前面には、物品を収納可能な収納部材(69)が設けられている。
【0010】
この態様によれば、シートの前端下側の空間を有効に活用することができる。
【0011】
上記の態様において、好ましくは、前記収納部材の前面上端は、前記シートの下面前端に対して、前後方向に同じ位置、又は、後方に位置する。
【0012】
この態様によれば、収納部材によって、搭乗者のふくらはぎが押し出され難くなるため、乗り物の快適性が向上する。
【0013】
上記の態様において、好ましくは、前記収納部材の前面は、前記シートの前面と面一をなす。
【0014】
この態様によれば、搭乗者のふくらはぎを良好に支持することができる。
【0015】
上記の態様において、好ましくは、前記収納部材の前後幅は上端から下端までの一定をなす。
【0016】
この態様によれば、収納部材の前面がアウタシェルの前面と平行となる。そのため、収納部材が設けられた場合であっても、ふくらはぎを良好に支持することができる。
【0017】
上記の態様において、好ましくは、前記収納部材の前面の左右幅は上端において、前記シートの前面下縁の左右幅と同一である。
【0018】
この態様によれば、収納部材の前面において、搭乗者のふくらはぎを良好に支持することのできる領域を確保することできる。
【0019】
上記の態様において、好ましくは、前記搭乗者のふくらはぎを拘束するための拘束部材(67)を備え、前記拘束部材の少なくとも一部は、前記収納部材と前記アウタシェルの前面との間に収納可能である。
【0020】
この態様によれば、拘束部材を使用しないときに、拘束部材を収納することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成によれば、搭乗者の下肢を効果的に支持することのできる乗り物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】乗り物を左方向から見た側面図
図2】シートが低位置にあり、且つ、後シェルを外した状態の乗り物を左方向から見た側面図
図3】シートが低位置にあり、且つ、後シェルを外した状態の乗り物を前方向から見たときの模式図
図4】駆動ユニット及び駆動輪の左右方向断面図
図5】シートが高位置にあり、且つ、後シェルを外した状態の乗り物を左方向から見た側面図
図6】シートフレーム、第1脚及び第2脚を示す斜視図
図7】乗り物の平面図
図8】乗り物の正面図
図9】(A)操作レバーの後端をアウタシェルから取り外したときの状態を示す斜視図、及び(B)封止部材によって貫通孔を封止するときの状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗り物の実施形態について説明する。本実施形態では、乗り物は倒立振子型車両として構成されている。
【0024】
図1に示すように、乗り物1は一人が着座して乗ることのできる一人用の乗り物1であり、いわゆる電動の車椅子に相当する。
【0025】
図2に示すように、乗り物1は、車体フレーム3と、車体フレーム3に設けられた駆動輪5と、駆動輪5を駆動させる駆動ユニット7と、車体フレーム3に設けられた一つのシート9と、駆動輪5及び駆動ユニット7を覆うアウタシェル11(図1参照)と、を有している。車体フレーム3及びアウタシェル11によって乗り物1の車体12が構成される。
【0026】
以下、説明の便宜上、乗り物1の前方(詳細には、シート9に着座した搭乗者の前方)を基準として、前後、左右、上下の各方向を定めて、説明を行う。
【0027】
車体フレーム3は、乗り物1の骨格を形成する。車体フレーム3は、図3の概略図に示すように、左右方向に延びる下部フレーム3Aと、下部フレーム3Aの上部に接続された上部フレーム3Bとを有する。上部フレーム3Bは下部に上下方向に延びる中央フレーム3Cを備えている。中央フレーム3Cはその下部において、前後に延びる回動軸を中心として回動可能に下部フレーム3Aに接続されている。
【0028】
車体フレーム3には傾斜角センサ13が設けられている。傾斜角センサ13は車体フレーム3の傾斜角を検出する。傾斜角センサ13は、例えば、重力加速度の向きを用いて、上部フレーム3B及び下部フレーム3Aの傾斜角度をそれぞれ検出する1以上のMEMSセンサによって構成されていてもよい。傾斜角センサ13は検出した傾斜角を駆動ユニット7に出力する。
【0029】
駆動輪5は車体12に設けられた車輪であり、車体12を床面に沿って移動可能に支持する。駆動輪5は床面に沿って車体12を前後・左右の全方向に移動させることができる全方向車輪によって構成されている。本実施形態では、駆動輪5はオムニホイールによって構成されている。駆動輪5は、その他、キャスター式の車輪などによって構成されていてもよい。
【0030】
図2に示すように、駆動ユニット7は、駆動輪5を駆動させ、且つ、その駆動を制御する。駆動ユニット7は、駆動輪5を駆動させる駆動源15と、駆動源15の駆動を制御する制御装置17と、駆動源15及び制御装置17に電力を供給するバッテリ(不図示)とを有する。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、乗り物1には2つの駆動輪5が下部フレーム3Aの左右の側部に設けられている。下部フレーム3Aの左右の側部にはまた、それぞれの駆動輪5を駆動する左右一対の駆動ユニット7が設けられている。
【0032】
図4に示すように、駆動ユニット7は、駆動源15のほか、下部フレーム3Aに回転可能に支持された一対のドライブディスク21と、ドライブディスク21のそれぞれに回転可能に支持された複数のドライブローラ23とを有している。駆動源15は、一対のドライブディスク21をそれぞれ独立して回転させる一対のアクチュエータ25(図2も参照)を備えている。一対のドライブディスク21は互いに同軸に配置され、それらの回転軸線は左右方向に延びている。複数のドライブローラ23は、ドライブディスク21の外周部に周方向に間隔をおいて配置され、それぞれドライブディスク21の周方向に対して傾斜した軸線を中心として回転可能に支持されている。
【0033】
図2に示すように、アクチュエータ25はそれぞれ、電動モータ27と、電動モータ27の回転力を対応するドライブディスク21に伝達する伝達機構29(図4も参照)とを有する。伝達機構29は、例えばベルト伝達機構であるとよい。電動モータ27はドライブディスク21の上方に配置されていてもよい。
【0034】
図2及び図4に示すように、駆動輪5は、環状をなし、一対のドライブディスク21の間にドライブディスク21と同軸に配置されている。駆動輪5は、複数のドライブローラ23に接触し、ドライブローラ23の駆動によって、中心軸線回り及び環状の軸線回りに回転する。よって、駆動ユニット7は、駆動輪5への接触による摩擦力を利用して動力を伝達する装置、すなわち、摩擦式駆動装置を構成する。
【0035】
本実施形態では、駆動輪5は、円環状の芯体31と、芯体31に回転可能に支持された複数のドリブンローラ33とを有する。ドリブンローラ33はそれぞれ、環状の芯体31の軸線を中心として回転可能に芯体31に支持されている。ドリブンローラ33はそれぞれドライブローラ23に当接し、ドライブディスク21から荷重を受けて芯体31に対して回転する。
【0036】
バッテリは車体フレーム3に支持されている。本実施形態では、バッテリは下部フレーム3Aの後部に支持されている。バッテリは公知のリチウムイオン電池であってよい。
【0037】
制御装置17は、中央演算処理装置(Central Processing Unit、CPU)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含む一又は複数の電子制御装置(ECU)によって構成される。制御装置17は、プロセッサがプログラムに従って演算処理を実行することで、各種の制御を実行する。制御装置17は、1つのハードウェアとして構成されてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されてもよい。制御装置17の各機能の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。制御装置17は下部フレーム3Aの内部又は後部に支持されている。制御装置17は傾斜角センサ13に接続され、傾斜角センサ13が検出した傾斜角を取得可能に構成されている。
【0038】
制御装置17は、左右の電動モータ27を独立に制御することができる。制御装置17(詳細には、制御装置17のプロセッサ)が左右の電動モータ27を対応するドライブディスク21を同じ回転速度で同じ方向に回転するように制御すると、左右の駆動輪5はそれぞれドライブディスク21と同じ回転速度で同じ方向に回転する。これにより、乗り物1には床面に対して前後方向に推進力が発生し、乗り物1は前後方向に移動する。
【0039】
左右の電動モータ27がそれぞれ、対応するドライブディスク21を異なる回転方向に回転させるか、回転速度に差があるように回転させると、駆動輪5のドリブンローラ33が芯体31に対して回転する。制御装置17による左右の電動モータ27の独立した駆動によって、乗り物1には床面に対して左右方向に推進力が発生する。これにより、乗り物1は床面に対して前後左右の全方向に移動可能となっている。
【0040】
本実施形態では、乗り物1は更に、シート9を低位置(図2参照)と、低位置よりも高い高位置(図5参照)の間で昇降させるための昇降装置35とを備えている。
【0041】
図2に示すように、昇降装置35は、車体フレーム3の上部フレーム3Bとシート9とに結合されている。昇降装置35は、上下方向に伸縮することによって、車体フレーム3の上部フレーム3Bに対してシート9を上下に変位させる。
【0042】
昇降装置35は、例えば、上部フレーム3Bに支持されたベースと、ベースに上下に移動可能に設けられ、シート9に結合された可動体と、ベースに対して可動体を移動させるボールねじ機構と、ボールねじ機構を駆動する電動モータとを有するとよい。
【0043】
昇降装置35は、その他、電動モータによって駆動されるラックアンドピニオン機構であってもよく、リニアモータであってもよい。また、昇降装置35は、コンプレッサからの圧縮空気によって伸縮するエアシリンダであってもよい。
【0044】
図2及び図5に示すように、シート9の高位置は、シート9の低位置に対して鉛直上方に位置するとよい。他の実施形態では、シート9の高位置は、シート9の低位置に対して側方にオフセットしてもよい。
【0045】
図1及び図3に示すように、シート9は搭乗者が着座する面、すなわち、座面9Aを構成する。本実施形態では、シート9は、座面9Aを構成するシートクッション9Bと、シートクッション9Bの後端に設けられ、背凭れとして機能するシートバック9Cと、シートクッション9B及びシートバック9Cとを接続し、肘掛けとして機能するアームレスト9Dとを備えている。
【0046】
図2及び図3に示すように、シート9は、昇降装置35に支持されたシートフレーム39と、シートフレーム39の上部に支持されたパッド41とを有する。シート9はその上面において座面9Aを構成している。搭乗者はパッド41に上側から着座することができる。
【0047】
図6に示すように、シートフレーム39は、平面視において、四角形の枠形に形成されている。シートフレーム39は、昇降装置35の上端に結合されている。シートフレーム39は、パッド41を下方から支持する。
【0048】
図6図7及び図8に示すように、本実施形態では、シートフレーム39に下方に延びる少なくとも一つの支持部材43が設けられている。支持部材43の延出端には左右一対のフットレスト45が接続されている。フットレスト45はそれぞれ搭乗者の足裏を支持する。図2及び図5に示すように、支持部材43及びフットレスト45は、シート9の位置に関わらず床面から離れているとよい。
【0049】
図2に示すように、乗り物1は、シート9が低位置にあるときに、乗り物1を床面に対して移動可能とするための少なくとも一つの第1脚49と、乗り物1を床面に対して固定するための少なくとも1つの第2脚51と、を備えている。本実施形態では、第1脚49及び第2脚51はともに、シートフレーム39に結合され、昇降装置35を介して、車体フレーム3に支持されている。
【0050】
図6に示すように、第1脚49はそれぞれシートフレーム39から下方に延びている。第1脚49は下端にローラ53を備えている。第2脚51はそれぞれシートフレーム39から下方に延びている。第2脚51は下端に当接部材55を備えている。本実施形態では、乗り物1は、4つの第1脚49と、4つの第2脚51とを有する。第1脚49は上端においてそれぞれ、シートフレーム39に回動可能に結合されている。第1脚49はそれぞれ互いに同様の構成を有し、第2脚51はそれぞれ互いに同様の構成を有する。
【0051】
ローラ53は第1脚49の下端において回転可能に支持されている。ローラ53は、第1脚49に対して回転軸が鉛直軸回りに回転するキャスターであるとよい。他の実施形態では、ローラ53に代えてボールが第1脚49の下端に支持されてもよい。シート9が低位置にあるとき、第1脚49はそれぞれ、床面に押されて、上端において回転し、車体フレーム3から側方に離れた位置にあるとよい。
【0052】
第2脚51は、上下方向に伸縮可能であり、伸長方向に付勢されている。当接部材55は、第2脚51よりも高い摩擦係数を有する。当接部材55は、例えばゴム又はエラストマーによって形成されているとよい。当接部材55は、第2脚51よりも高い可撓性を有するとよい。
【0053】
乗り物1は、搭乗者からの乗り物1への操作に係る入力、すなわち操作入力を受け付ける入力装置59を備えている。シート9が低位置にあるときに搭乗者が入力装置59を操作すると、第2脚51は伸縮する。これにより、第2脚51は当接部材55が床面に当接する伸長位置と、当接部材55が床面から離れた収縮位置とに変位する。その他、制御装置17は、第2脚51が収縮状態にあるときに、入力装置59において、シート9を低位置及び高位置との間で変位させるための操作入力の受付を行うように構成されていてもよい。
【0054】
図5に示すように、シート9が高位置にあるときには、ローラ53及び当接部材55はそれぞれ床面から離れている。このとき、制御装置17(詳細にはプロセッサ)は、傾斜角センサ13によって検出された傾斜角に基づき、所定のプログラムを実行して駆動源15の駆動を制御(倒立振子制御)し、車体フレーム3を倒立した状態に維持する。これにより、搭乗者はシート9に着座した状態で自らの重心を移動させることによって、乗り物1を床面に対して前後左右に移動させることができる。
【0055】
図2に示すように、シート9が低位置にあり、且つ、第2脚51が伸長位置にあるときには、当接部材55と床面との間の摩擦力により、乗り物1は床面に対して移動不能な停止した状態(駐車状態)に維持(ロック)される。すなわち、第2脚51はローラ53による乗り物1の移動を規制し、乗り物1を移動できない駐車状態で維持するロック装置として機能する。
【0056】
シート9が低位置にあり、且つ、第2脚51が収縮位置にあるときには、第1脚49のローラ53が床面に当接している。このとき、制御装置17(詳細にはプロセッサ)は、入力装置59への入力に基づき、所定のプログラムを実行して、駆動源15の駆動を制御し、乗り物1を前後左右に移動させる。これにより、搭乗者は、入力装置59に入力操作を行うことによって、乗り物1を床面に対して前後左右に移動させることができる。本実施形態では、制御装置17は、乗り物1を床面に対して平行移動させる平行移動モードや、乗り物1を旋回させる旋回モード等、それぞれの走行モードに対応する制御を行うことが可能である。
【0057】
図7及び図8に示すように、乗り物1には、乗り物1の状態を搭乗者に通知する通知装置60が設けられていてもよい。通知装置60が通知する乗り物1の状態には例えば、バッテリの残量や、シート9の位置(低位置、高位置)、乗り物1の走行モード等が含まれているとよい。本実施形態では、通知装置60は右側のアームレスト9Dの前部に設けられ、アームレスト9Dの前部上面の対応する部分を発光させることにより、搭乗者に乗り物1の状態を通知する。
【0058】
図1図7及び図8に示すように、アウタシェル11は、駆動輪5、駆動ユニット7、車体フレーム3、第1脚49及び第2脚51を前後左右から覆い、乗り物1の外殻を構成している。車体フレーム3と、アウタシェル11とは、乗り物1の車体12を構成する。すなわち、車体12には車体フレーム3と、アウタシェル11とが含まれている。駆動輪5、駆動ユニット7、及び、シート9は、車体12に支持されている。
【0059】
アウタシェル11によって、駆動輪5、駆動ユニット7、車体フレーム3、第1脚49及び第2脚51にそれぞれ外部からの荷重が加わり難くなる。これにより、駆動輪5、駆動ユニット7、車体フレーム3、第1脚49及び第2脚51の保護が図られる。
【0060】
本実施形態では、アウタシェル11は、駆動輪5、駆動ユニット7、車体フレーム3、第1脚49及び第2脚51を左右外方及び後方から覆う後シェル61と、駆動輪5、駆動ユニット7、車体フレーム3、第1脚49及び第2脚51を前方から覆う前シェル63とを有している。後シェル61は乗り物1の左右及び後部の外殻を構成し、前シェル63は乗り物1の前部の外殻を構成している。
【0061】
本実施形態では、アウタシェル11は上縁においてシートフレーム39に結合されている。シート9の昇降時には、アウタシェル11はシート9とともに昇降する。
【0062】
図7に示すように、アウタシェル11には搭乗者の脚を拘束するための拘束部65が設けられている。拘束部65は左右一対のニーベルト67を含む。ニーベルト67は布製の帯状部材であり、搭乗者の脚を乗り物1の前部に固定する拘束部材として機能する。本実施形態では、ニーベルト67は一端において、後シェル61の前面左右端にそれぞれ固定されている。
【0063】
図2に示すように、前シェル63はシート9の下方において、前方に向き、略上下方向に延びる前面63Aを備えている。本実施形態では、前シェル63の前面63Aは下方に向かって斜め前方に傾斜していてもよい。その他、前シェル63の前面63Aは下方に向かって斜め前方に傾斜するとともに、側面視で前方に突出するように緩やかに湾曲していてもよい。前シェル63の前面63Aは、搭乗者のふくらはぎを後方から支持するふくらはぎ支持部を構成する。
【0064】
本実施形態では、前シェル63の前面63A(ふくらはぎ支持部)の左右幅は、シート9の左右幅と同一に設定されている。これにより、シート9に着座した搭乗者のふくらはぎを前シェル63の前面63Aによって効果的に支持することができる。但し、この態様には限定されず、前シェル63の前面63Aは、シート9の左右幅に比べて若干大きくなるように設定されていてもよい。
【0065】
図2に示すように、前シェル63の前面63Aは上端において、シート9の前端部分の下面に当接している。シート9の前端は前シェル63の上端よりも前方に延出している。換言すれば、シート9(詳細には、シートクッション9B)は、前シェル63の前面63Aの上端よりも前方に延出する延出部9Fを備えている。
【0066】
前シェル63の前面63Aの上部には収納部材69が設けられている。収納部材69は、シート9の前端と、前シェル63の前面63Aの上端との間(詳細には、前後方向において、シート9の下面の前縁と、前シェル63の前面63Aの上端との間)に位置している。
【0067】
次に、図面を参照して、入力装置59の詳細について説明する。
【0068】
図7に示すように、入力装置59は、シート9の左側部及び右側部の少なくとも一方に設けられた操作スイッチ71と、ジョイスティック73と、乗り物1の左右側面の少なくとも一方に設けられた操作レバー75と、を含む。
【0069】
操作スイッチ71は搭乗者からの乗り物1の操作に係る入力、すなわち操作入力を受け付ける。操作スイッチ71によって受け付けられた操作入力に基づき、制御装置17は駆動ユニット7や、昇降装置35を制御する。操作スイッチ71はメンブレンスイッチによって構成されてもよく、また、操作スイッチ71はタッチパネルによって表示されたボタン等によって構成されてもよい。
【0070】
本実施形態では、入力装置59は、操作スイッチ71として、電源スイッチ、昇降スイッチ、移動方向スイッチを備える。電源スイッチは乗り物1の電源をオン・オフするための入力を受け付ける。昇降スイッチは、シート9を昇降することによって、シート9を低位置と高位置との間で切り替えるための入力を受け付ける。移動方向スイッチは、搭乗者からの乗り物の移動モード(平行移動モード、旋回モード等)の選択に係る操作入力を受け付ける。
【0071】
ジョイスティック73は、搭乗者から乗り物1の移動方向と、移動量とに係る操作入力を受け付ける。ジョイスティック73は、昇降装置35を制御するための操作ボタンを備えていてもよい。本実施形態では、ジョイスティック73は、左側に位置するアームレスト9Dの前端に設けられている。但し、ジョイスティック73は、右側に位置するアームレスト9Dに設けられていてもよく、また、アウタシェル11(例えば、アウタシェル11の前部上縁)に設けられていてもよい。シート9が低位置にあり、且つ、第2脚51が収縮位置あるときに、制御装置17はジョイスティック73の操作入力に基づいて、駆動ユニット7を制御し、乗り物1を走行させる。
【0072】
図7及び図9に示すように、操作レバー75は棒状(ロッド状)をなしている。操作レバー75は、図1に示すように、乗り物1の側面に設けられている。操作レバー75は、乗り物1の左右側面に設けられていることが好ましい。本実施形態では、操作レバー75は、車体12の左側面及び右側面(詳細には、後シェル61の左側面及び右側面)の少なくとも一方において、前下がりに延在する(すなわち、前下方に延びる)ように配置されている。操作レバー75は後部において、第2脚51に後部を通過し左右に延びる軸線を中心とする回転可能に結合されている。本実施形態では、操作レバー75は、車体12の左側面(詳細には、後シェル61の左側面)に設けられている。
【0073】
シート9が低位置にあり、且つ、第2脚51が伸長位置にあるときに、搭乗者が操作レバー75の前端を持ち上げると、第2脚51を収縮位置に移動する。これにより、当接部材55が床面から離れ、乗り物1が走行可能になる。一方、シート9が低位置にあり、且つ、第2脚51が収縮位置にあるときに、搭乗者が操作レバー75の前端を押し下げると、第2脚51を収縮位置に移動し、乗り物1は床面に対して移動不能な状態(駐車状態)となる。すなわち、操作レバー75は、搭乗者から、乗り物1(車体12)を移動不能な駐車状態と、移動可能な走行可能状態とを切り替えるべく、第2脚51を操作するための操作入力を受け付ける。
【0074】
本実施形態では、図2に示すように、第2脚51の上端に、第2脚51を伸長位置と収縮位置とに変位させるための入力部77が設けられている。図9に示すように、入力部77は乗り物1の左右外方向に突出する六角柱状の軸部79(ロッド)を備えている。軸部79は突出方向を軸線する回転可能に構成されている。第2脚51は、入力部77への入力、詳細には突出方向を軸線とする軸部79の回転によって、伸長位置と収縮位置との間で変位する。但し、軸部79の形状は、六角柱状には限定されず、四角柱状や、五角柱状であってもよく、また、横断面が十字状をなす柱状であってもよい。本実施形態では、第2脚51には、軸部79の回転運動を伸縮運動に変換するための公知のリンク機構80が設けられている。
【0075】
後シェル61には、操作レバー75後端の軸部79に対応する(整合する)位置において、左右方向に貫通する貫通孔81が設けられている。操作レバー75の後端には左右方向内側に突出する接続部83が設けられている。接続部83は円筒状をなし、その左右内端に左右外方に凹む受容凹部85を備えている。受容凹部85は、軸部79に整合する横断面(本実施形態では、六角形の横断面)を有している。
【0076】
操作レバー75が乗り物1に取り付けられているときには、接続部83が後シェル61の貫通孔81を介して突出し、受容凹部85に受容されている。これにより、操作レバー75は第2脚51に貫通孔81を介して連結する。これにより、操作レバー75がその後端を通過し、左右方向に延びる枢軸X(軸線ともいう。図1参照)を中心とする回転可能となっている。このとき、操作レバー75は自重によっては回転せず、その姿勢が維持されるように第2脚51に支持されていてもよい。これにより、搭乗者が荷重を加えたときに操作レバー75が回転するように構成される。
【0077】
図1には第2脚51が収縮位置にあるときの操作レバー75の位置が実線で示されている。第2脚51が収縮位置にあるときには、操作レバー75は前下がりに延在している。このとき、搭乗者が操作レバー75の前端を持ち上げると、操作レバー75がその後端と中心として図1の紙面右回りに回転する。これにより、軸部79が回転し、第2脚51は収縮位置となる。このとき、操作レバー75は概ね前後方向に延在している。操作レバー75の回転範囲は、図1の実線に示す操作レバー75が前下がりに延在する状態から、紙面右回りに回転して、操作レバー75が概ね前後方向に延在する状態となるまでの角度範囲に設定されていてもよい。
【0078】
その後、搭乗者が操作レバー75の前端を押し下げると、操作レバー75がその後端と中心として図1の紙面左回りに回転し、軸部79が回転する。これにより、第2脚51は伸長位置となる。図1には第2脚51が伸長位置にあるときの操作レバー75の位置が二点鎖線で示されている。
【0079】
図1に示すように、操作レバー75の回動範囲全領域において、操作レバー75の前端は、駆動輪5と左右方向(車幅方向)に見て重ならないように設定されている。すなわち、第2脚51を伸縮位置から収縮位置に変位させるときの操作レバー75の前端の軌跡(破線参照)は、側面視で駆動輪5を避けるように構成されている。これにより、操作レバー75を操作する時の乗り物1の安全性が高められる。その他、操作レバー75の回動範囲全領域において、操作レバー75は前端後端を含む全ての部分が、駆動輪5と左右方向(車幅方向)に見て重ならないように設定されていてもよい。
【0080】
本実施形態では、接続部83と軸部79とは結合・分離可能に構成され、操作レバー75は後端において第2脚51(すなわち、ロック装置)に結合・分離可能に構成されている。また、操作レバー75の前部に設けられた磁石89はアウタシェル11に結合・分離可能となっている。これにより、操作レバー75は車体12に対して着脱可能に構成され、搭乗者は必要に応じて、操作レバー75を車体12に着脱することができる。
【0081】
乗り物1は、操作レバー75が取り外された後に、貫通孔81を封じるための封止部材87(キャップ)を備えている。操作レバー75が取り外されたときに、封止部材87を貫通孔81に嵌め込むことによって、貫通孔81を封じることができ、それにより、軸部79を隠すことができる。
【0082】
本実施形態では、操作レバー75は前端において後シェル61に当接している。操作レバー75は前端及び後端との間で左右外側に膨出するアーチ状をなしている。これにより、乗り物1に左右側方から荷重が加わったときに、操作レバー75がその荷重に抗して、車体フレーム3やシート9、制御装置17などに伝わる荷重を低減するバンパとして機能する。このように、アーチ状をなすように操作レバー75を構成することで、乗り物1の保護を図ることができる。更に、アーチ状をなすように操作レバー75を構成することで、乗り物1が周辺に位置する人や物に衝突したときに、その周辺に位置する人や物に伝わる荷重を低減することができる。
【0083】
操作レバー75の前端は車幅方向に丸みを持つように構成されているとよい。本実施形態では、操作レバー75の前端の左右車外側の角部75AにはR面が設けられている。これにより、操作レバー75の左右外面前端は、上面視で弧状をなす。このように、操作レバー75の前端に車幅方向に丸みを持たせることによって、乗り物1の走行時に、操作レバー75が乗り物の周辺に位置する人や物体に引っ掛かり難くなる。操作レバー75の後端の左右車外側の角部75BにもまたR面が設けられ、操作レバー75の後端もまた、車幅方向に丸みを持つように構成されていてもよい。
【0084】
後シェル61は磁性を有する金属製の薄板によって構成されているときには、操作レバー75の左右内面であって、後シェル61に当接する部分に磁石89が設けられているとよい。その他、後シェル61は非磁性の材料(例えば、プラスチック)等によって構成されているときには、後シェル61の左右内面であって、操作レバー75に設けられた磁石89と対応する位置に、操作レバー75に設けられた磁石89を引き付けるように磁石91や金属製の部材(金属部材)が設けられていてもよい。
【0085】
磁石89が後シェル61(又は、後シェル61に設けられた磁石91)に引き付けられることによって、操作レバー75を後シェル61に固定することができる。よって、操作レバー75の自重による回動防止を図ることができ、操作レバー75のぶらつきが防止できる。
【0086】
本実施形態では、操作レバー75は前端において後シェル61に当接しているため、操作レバー75に設けられる磁石89は操作レバー75の左右内面前端に配置されている。但し、この態様には限定されず、磁石89は、操作レバー75の左右内面の複数箇所において後シェル61(アウタシェル11)に当接するときには、その複数箇所のいずれかに設けられていてもよい。
【0087】
次に、収納部材69の詳細について説明する。
【0088】
収納部材69はクッション性を有する布によって構成されたバックであり、内部に収容空間を備えた袋状をなしている。収納部材69は前後方向を向く面を有する四角箱状をなしている。図2に示すように、収納部材69は後面において、前シェル63の前面63Aに結合されている。収納部材69は後面の上縁及び下縁において、前シェル63の前面63Aに固定されているとよい。収納部材69は前シェル63の前面63Aに着脱可能に構成されていてもよい。
【0089】
図8に示すように、収納部材69の前面69Aには線ファスナ93が設けられている。線ファスナ93を開くと、収納部材69の内部の収納空間に開口が形成される。搭乗者は線ファスナ93を開閉することによって、収納部材69の内部の収納空間に物品を収納することができる。
【0090】
図2に示すように、収納部材69は前後方向に所定の厚みを有している。収納部材69は上面において、シート9の前端下面に当接している。
【0091】
収納部材69の前面69Aの上端は、シート9の下面前端に対して、前後方向に同じ位置、又は、後方に位置している。本実施形態では、収納部材69の前面69Aの上端は、シート9の下面前端に対して、前後方向に同じ位置に位置している。収納部材69の前面69Aの上端は、シート9の前面下縁に連続している。これにより、収納部材69の前面69Aと、シート9の前面9Eとは面一をなしている。
【0092】
収納部材69の前後幅は上下方向に一定をなすように構成されている。また、収納部材69の前面上端の左右幅(左右方向の幅)は、シート9の前面下縁の左右幅と同一に設定されている。
【0093】
図8に示すように、ニーベルト67の少なくとも一部は、収納部材69と前シェル63の前面63Aとの間に収容可能に構成されている。本実施形態では、収納部材69と前シェル63との間に、ニーベルト67の他端側が挿入可能となっている。これにより、ニーベルト67を使用しないときに、ニーベルト67の他端を収納部材69と前シェル63との間に挿入して収納することができる。よって、ニーベルト67を使用しないときに、ニーベルト67がばたつくことを防止することができる。
【0094】
次に、乗り物1の効果について説明する。
【0095】
図1に示すように、操作レバー75は、アウタシェル11の左右側面の少なくとも一方に設けられている。そのため、操作レバー75が搭乗者の肘の位置にある場合に比べて、操作レバー75を操作するときの姿勢が制限され難くなる。また、操作レバー75が搭乗者の肘の位置にある場合や、操作レバー75の代わりに搭乗者の肘の位置にジョイスティックが設けられた場合に比べて、搭乗者はより大きな動作によって操作レバー75を操作することができ、乗り物1の操作が容易になる。
【0096】
搭乗者は操作レバー75の前端を持ち上げて、操作レバー75を回転させることによって、乗り物1を駐車状態から走行可能状態に切り替えることができる。その後、搭乗者は操作レバー75の前端を押し下げて、操作レバー75を回転させることによって、乗り物1を走行可能状態から駐車状態に切り替えることができる。このように、搭乗者は操作レバー75の回転によって操作入力ができるため、乗り物1の操作が容易である。
【0097】
図2に示すように、シート9の前端は前シェル63の前面63Aの上端よりも前方に位置している。これにより、シート9の前端が前シェル63の前面63Aの上端と同じ位置にあるまで後退している場合に比べて、搭乗者の下肢であって、特にひざ裏部分を良好に支持することができる。
【0098】
また、前シェル63の前面63Aがシート9の前端よりも後方に位置しているため、搭乗者は自らの脚を後方に引くことができる。また、その引き具合を調整することによって、搭乗者はふくらはぎに加わりうる圧力を低減することができ、シート9に着座したときの乗り物1の快適性が向上する。
【0099】
このように、本発明は、乗り物1の快適性を向上させることにより、脆弱な立場にある人々に配慮した交通手段を提供することができるため、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【0100】
一方、搭乗者の下肢の状態によっては、脚を後方に引くことを可能とするよりも、ふくらはぎを強く支持することが求められる場合がある。その場合には、シート9の前端と、前シェル63の前面63Aとの間を埋める必要がある。
【0101】
本実施形態では、シート9の前端と、前シェル63の前面63Aとの間には、物品を収納可能な収納部材69が設けられている。搭乗者のふくらはぎを支持することが必要な場合に、収納部材69の前面69Aにおいて、搭乗者のふくらはぎを支持することができる。更に、シート9の前端と、前シェル63の前面63Aとの間の空間を有効に活用することができる。
【0102】
また、収納部材69の前面上端は、シート9の下面前端に対して、前後方向に同じ位置、又は、後方に位置する。そのため、収納部材69によって、搭乗者のふくらはぎが押し出され難くなり、乗り物1の快適性が向上する。
【0103】
更に、本実施形態では、収納部材69の前面69Aは、シート9の前面9Eと面一をなす。収納部材69を設けることによって、ふくらはぎをより強く支持する必要がある搭乗者が乗り物1に搭乗するときに、収納部材69によって搭乗者のふくらはぎを良好に支持することができる。
【0104】
収納部材69の前後幅は上下方向に一定をなすように構成されている。そのため、収納部材69が設けられている場合においても、収納部材69の前面69Aが側面視で、概ね前シェル63の前面63Aと同様の形状をなす。これにより、収納部材69が設けられている場合においても、搭乗者のふくらはぎが収納部材69の前面69Aによって良好に支持される。
【0105】
収納部材69の前面69Aの左右幅は上端において、シート9の前面9E下縁の左右幅と同一に設定されている。そのため、収納部材69の前面69Aに、搭乗者のふくらはぎを良好に支持することのできる十分な領域を確保することできる。
【0106】
本実施形態では、第1脚49、第2脚51、アウタシェル11、及び、操作レバー75はシートフレーム39とともに昇降するように構成されている。そのため、シート9の昇降によって、シート9と、第1脚49及び第2脚51と、アウタシェル11と、操作レバー75との相対位置が変化しない。これにより、シート9の昇降によらず、搭乗者に対する操作レバー75の位置や、収納部材69の位置が一定に保たれる。また、操作レバー75と貫通孔81との相対位置が変化せず、シート9の昇降による操作レバー75の脱落等が防止できる。
【0107】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0108】
上記実施形態では、乗り物1にシート9を昇降させる昇降装置35が設けられ、制御装置17は倒立振子制御可能に構成されていたが、この態様には限定されない。乗り物1には昇降装置35が設けられておらず、制御装置17は入力装置59への入力に基づき、駆動輪5を駆動させて、乗り物1を床面に沿って移動させる構成であってもよい。
【0109】
上記実施形態では、入力装置59が操作スイッチ71と、ジョイスティック73とを含んでいたが、入力装置59は搭乗者から操作入力を受付可能な構成であれば、いかなる構成であってもよい。乗り物1に通知装置60が設けられていたが、通知装置60が設けられていない態様であってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、乗り物1が電動の車椅子に適用された例について記載したが、本発明は、その他、ステアリングホイールを備えた、カート等の一人用の乗り物1や、内燃機関を備えたバイク等にも適用可能である。
【0111】
その他、本発明は駆動装置が設けられておらず、搭乗者が自ら駆動輪5を回転させることによって走行するように構成された乗り物1にも適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 :乗り物
3 :車体フレーム
9 :シート
11 :アウタシェル
67 :ニーベルト(拘束部材の一例)
69 :収納部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9