(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048179
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】積層型フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
H01P 1/203 20060101AFI20240401BHJP
H01P 7/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01P1/203
H01P7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154078
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤口 修平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲三
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】立松 雅大
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】照井 智理
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HB05
5J006HB12
5J006HB14
5J006HB21
5J006HB22
5J006JA01
5J006JA13
5J006LA02
5J006LA21
5J006NA07
5J006NB07
5J006NC02
(57)【要約】
【課題】所望の特性を実現しながら、小型化が可能な積層型フィルタ装置を実現する。
【解決手段】フィルタ装置1は、共振器12と、共振器15と、回路構成上共振器12と共振器15との間に配置された共振器13,14とを含んでいる。共振器12~15のうちの少なくとも1つの共振器の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。共振器12と共振器15は、複数の誘電体層の積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。共振器13,14は、積層方向Tにおいて、共振器12および共振器15とは異なる位置に配置されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポートと、
第2のポートと、
回路構成上、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に配置された複数の共振器と、
前記第1のポート、前記第2のポートおよび前記複数の共振器を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層を含む積層体とを備え、
前記複数の共振器の各々は、第1の端部と第2の端部とを有し、
前記複数の共振器は、第1の共振器と、第2の共振器と、回路構成上前記第1の共振器と前記第2の共振器との間に配置された少なくとも1つの第3の共振器とを含み、
前記第1の共振器、前記第2の共振器および前記少なくとも1つの第3の共振器のうちの少なくとも1つの共振器の前記第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在せず、
前記第1の共振器と前記第2の共振器は、前記複数の誘電体層の積層方向において同じ位置に配置され、
前記少なくとも1つの第3の共振器は、前記積層方向において、前記第1の共振器および前記第2の共振器とは異なる位置に配置されていることを特徴とする積層型フィルタ装置。
【請求項2】
前記第1の共振器、前記第2の共振器および前記少なくとも1つの第3の共振器の各々の前記第2の端部は、前記グランドに接続され、
前記第1の共振器と前記第2の共振器の各々の前記第2の端部は、前記少なくとも1つの第3の共振器の各々の前記第2の端部よりも、前記少なくとも1つの第3の共振器の各々の前記第1の端部により近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ装置。
【請求項3】
前記第1の共振器、前記第2の共振器および前記少なくとも1つの第3の共振器のうちの2つの特定の共振器の各々の前記第1の端部と前記グランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在せず、
前記2つの特定の共振器は、前記積層方向において同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第3の共振器は、2つの第3の共振器を含むことを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ装置。
【請求項5】
前記2つの第3の共振器の一方の少なくとも一部は、前記積層方向から見たときに、前記第1の共振器の一部と重なり、
前記2つの第3の共振器の他方の少なくとも一部は、前記積層方向から見たときに、前記第2の共振器の一部と重なることを特徴とする請求項4記載の積層型フィルタ装置。
【請求項6】
前記2つの第3の共振器の一方の前記第1の端部は、前記2つの第3の共振器の他方の前記第2の端部よりも、前記2つの第3の共振器の他方の前記第1の端部により近い位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載の積層型フィルタ装置。
【請求項7】
前記第1の共振器の前記第1の端部の幅と、前記第1の共振器の前記第2の端部の幅は、互いに異なり、
前記第2の共振器の前記第1の端部の幅と、前記第2の共振器の前記第2の端部の幅は、互いに異なることを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ装置。
【請求項8】
更に、それぞれ前記第1の共振器の前記第2の端部の近傍部分と前記第2の共振器の前記第2の端部の近傍部分に接続された2つのスルーホールを備え、
前記第1の共振器の前記第2の端部の幅は、前記第1の共振器の前記第1の端部よりも小さく、
前記第2の共振器の前記第2の端部は、前記第2の共振器の前記第1の端部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項7記載の積層型フィルタ装置。
【請求項9】
前記第1の共振器は、回路構成上、前記第1のポートと前記少なくとも1つの第3の共振器との間に配置され、
前記第2の共振器は、回路構成上、前記第2のポートと前記少なくとも1つの第3の共振器との間に配置され、
前記複数の共振器は、更に、回路構成上前記第1のポートと前記第1の共振器との間に配置された第4の共振器と、回路構成上前記第2のポートと前記第2の共振器との間に配置された第5の共振器とを含むことを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ装置。
【請求項10】
前記第4の共振器と前記第5の共振器は、前記積層方向において同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項9記載の積層型フィルタ装置。
【請求項11】
前記第1の共振器および前記第2の共振器の各々の前記第1の端部と前記グランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在せず、
前記第4の共振器と前記第5の共振器の各々の前記第1の端部と前記グランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在することを特徴とする請求項9記載の積層型フィルタ装置。
【請求項12】
前記複数の共振器は、複数の第1の種類の共振器と、複数の第2の種類の共振器とを含み、
前記複数の第1の種類の共振器の各々の前記第1の端部と前記グランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在せず、
前記複数の第2の種類の共振器の各々の前記第1の端部と前記グランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在し、
前記複数の第1の種類の共振器の数は、前記複数の第2の種類の共振器の数よりも多いことを特徴とする請求項9記載の積層型フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布定数線路よりなる共振器を備えた積層型フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に用いられる電子部品の一つには、複数の共振器を備えたバンドパスフィルタがある。複数の共振器の各々は、例えば、分布定数線路によって構成されている。分布定数線路は、所定の線路長を有するように構成される。
【0003】
特許文献1には、2つの共振器を備えた高周波フィルタが開示されている。この高周波フィルタでは、2つの共振器の各端部とグランドとの間にキャパシタを設けることによって、2つの共振器の物理的な長さを短くしている。
【0004】
特許文献2には、6つの共振器を備えた帯域通過フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-180632号公報
【特許文献2】特開2006-311306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に小型の通信装置に用いられるバンドパスフィルタには、小型化が求められる。これに対し、例えば、特許文献1に記載された技術を用いることにより、共振器の物理的な長さを短くすることが可能になる。ここで、その端部とグランドとの間にキャパシタを設けた共振器を第1の共振器と言い、第1の共振器と同じかほぼ同じ共振周波数を有し且つその端部とグランドとの間にキャパシタがない共振器を第2の共振器と言う。第1の共振器は、第2共振器に比べて、共振器のQ値が小さくなってしまう。複数の共振器がいずれも第1の共振器である場合、共振器のQ値が小さくなることによる影響は、複数の共振器の数が多くなるになって顕著になる。しかし、所望の特性を実現するため、複数の共振器の数を少なくすることができない場合があった。
【0007】
また、近年、10GHz以上の周波数帯域、特に、10~30GHzの準ミリ波帯や30~300GHzのミリ波帯の利用が進められている。準ミリ波帯やミリ波帯に使用されるバンドパスフィルタでは特に、高いQ値と適切な帯域幅を実現しながら、小型化することが難しかった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、所望の特性を実現しながら、小型化が可能な積層型フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層型フィルタ装置は、第1のポートと、第2のポートと、回路構成上、第1のポートと第2のポートとの間に配置された複数の共振器と、第1のポート、第2のポートおよび複数の共振器を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層を含む積層体とを備えている。複数の共振器の各々は、第1の端部と第2の端部とを有している。
【0010】
複数の共振器は、第1の共振器と、第2の共振器と、回路構成上第1の共振器と第2の共振器との間に配置された少なくとも1つの第3の共振器とを含んでいる。第1の共振器、第2の共振器および少なくとも1つの第3の共振器のうちの少なくとも1つの共振器の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。第1の共振器と第2の共振器は、複数の誘電体層の積層方向において同じ位置に配置されている。少なくとも1つの第3の共振器は、積層方向において、第1の共振器および第2の共振器とは異なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層型フィルタ装置では、第1の端部とグランドとの間にキャパシタ素子が存在しない共振器が設けられている。また、少なくとも1つの第3の共振器は、積層方向において、第1の共振器および第2の共振器とは異なる位置に配置されている。これにより、本発明によれば、所望の特性を実現しながら、小型化が可能な積層型フィルタ装置を実現することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の回路構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における4層目ないし6層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における7層目ないし10層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における11層目ないし13層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における14層目ないし17層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図8】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における18層目ないし23層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図9】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における24層目および25層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図10】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体の内部を示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体の内部の一部を示す平面図である。
【
図14】第1のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図15】第2のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置(以下、単にフィルタ装置と記す。)1の構成について説明する。
図1は、フィルタ装置1の回路構成を示す回路図である。フィルタ装置1は、所定の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして機能するように構成されている。
【0014】
フィルタ装置1は、第1のポート2と、第2のポート3と、複数の共振器とを備えている。第1のポート2と第2のポート3は、それぞれ、バンドパスフィルタの入出力ポートとして機能する。複数の共振器は、回路構成上、第1のポート2と第2のポート3との間に配置されている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0015】
複数の共振器の各々は、分布定数線路である。また、複数の共振器の各々は、線路の長手方向の両端に位置する第1の端部および第2の端部を有している。複数の共振器の各々は、第1の端部と第2の端部の一方が短絡され他方が開放された1/4波長共振器であってもよいし、第1の端部と第2の端部の両方が開放された1/2波長共振器であってもよい。
【0016】
本実施の形態では特に、複数の共振器は、6つの共振器11,12,13,14,15,16を含んでいる。6つの共振器11,12,13,14,15,16は、回路構成上、第1のポート2側からこの順に配置されている。共振器11~16は、共振器11,12が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器12,13が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器13,14が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器14,15が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器15,16が回路構成上隣接して電磁結合するように構成されている。
【0017】
共振器13,14は、回路構成上、共振器12と共振器15との間に配置されている。共振器13,14は、本発明における「第3の共振器」に対応する。共振器12,15は、それぞれ、本発明における「第1の共振器」、「第2の共振器」に対応する。
【0018】
共振器11は、回路構成上、第1のポート2と共振器12との間に配置されている。共振器16は、回路構成上、第2のポート3と共振器15との間に配置されている。共振器11,16は、それぞれ、本発明における「第4の共振器」、「第5の共振器」に対応する。
【0019】
本実施の形態では、共振器11~16の各々は、1/4波長共振器である。共振器11~16の各々の第2の端部は、グランドに接続される。
【0020】
フィルタ装置1は、更に、キャパシタC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8を備えている。キャパシタC1~C8は、いずれも、キャパシタ素子である。なお、キャパシタ素子とは、浮遊容量ではない、意図的に設けられたキャパシタのことである。キャパシタC1の一端は、第1のポート2に接続されている。キャパシタC2の一端は、キャパシタC1の他端に接続されている。キャパシタC3の一端は、キャパシタC2の他端に接続されている。キャパシタC4の一端は、キャパシタC3の他端に接続されている。キャパシタC5の一端は、キャパシタC4の他端に接続されている。キャパシタC5の他端は、第2のポート3に接続されている。
【0021】
共振器11と共振器12は、キャパシタC1を介して容量結合している。共振器12と共振器13は、キャパシタC2を介して容量結合している。共振器13と共振器14は、キャパシタC3を介して容量結合している。共振器14と共振器15は、キャパシタC4を介して容量結合している。共振器15と共振器16は、キャパシタC6を介して容量結合している。
【0022】
キャパシタC6の一端は、キャパシタC1とキャパシタC2の接続点に接続されている。キャパシタC6の他端は、キャパシタC4とキャパシタC5の接続点に接続されている。共振器12と共振器14は、キャパシタC6を介して容量結合している。
【0023】
キャパシタC7は、回路構成上、共振器11の第1の端部とグランドとの間に配置されている。キャパシタC8は、回路構成上、共振器16の第1の端部とグランドとの間に配置されている。すなわち、共振器11,16の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在している。
【0024】
共振器12~15のうちの少なくとも1つの共振器の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。本実施の形態では特に、共振器12~15の全てにおいて、第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。
【0025】
フィルタ装置1は、更に、インダクタL1,L2,L3を備えている。インダクタL1は、共振器11,12の各々の第2の端部とグランドとを接続している。インダクタL2は、共振器13,14の各々の第2の端部とグランドとを接続している。インダクタL3は、共振器15,16の各々の第2の端部とグランドとを接続している。
【0026】
なお、本出願において、「グランドに接続されている」という表現は、金属導体(インダクタを含む)を介して電気的にグランドに接続される場合を含むが、キャパシタ素子を介してグランドに接続される場合を含まない。
【0027】
次に、
図2を参照して、フィルタ装置1のその他の構成について説明する。
図2は、フィルタ装置1の外観を示す斜視図である。
【0028】
フィルタ装置1は、更に、積層体50を備えている。積層体50は、積層された複数の誘電体層と、この複数の誘電体層に形成された複数の導体層および複数のスルーホールとを含んでいる。第1のポート2、第2のポート3、共振器11~16、キャパシタC1~C8およびインダクタL1~L3は、積層体50に一体化されている。共振器11~16は、複数の導体層を用いて構成されている。
【0029】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する第1の面50Aおよび第2の面50Bと、第1の面50Aと第2の面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、第1の面50Aおよび第2の面50Bに対して垂直になっている。
【0030】
ここで、
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。なお、本出願において、「積層方向Tから見たとき」という表現は、Z方向または-Z方向に離れた位置から対象物を見ることを意味する。
【0031】
図2に示したように、第1の面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。第1の面50Aは、積層体50の底面でもある。第2の面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。第2の面50Bは、積層体50の上面でもある。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0032】
フィルタ装置1は、更に、端子111,112,113,114を備えている。端子111は、第1の面50Aから側面50Cを経由して第2の面50Bにかけて配置されている。端子112は、第1の面50Aから側面50Dを経由して第2の面50Bにかけて配置されている。端子113は、第1の面50Aから側面50Eを経由して第2の面50Bにかけて配置されている。端子114は、第1の面50Aから側面50Fを経由して第2の面50Bにかけて配置されている。
【0033】
端子111は第1のポート2に対応し、端子112は第2のポート3に対応している。端子113,114は、グランドに接続される。
【0034】
次に、
図3(a)ないし
図9(b)を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体層の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された25層の誘電体層を有している。以下、この25層の誘電体層を、下から順に1層目ないし25層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし25層目の誘電体層を符号51~75で表す。
【0035】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、それぞれ端子111,112,113,114の一部を構成する導体層511,512,513,514が形成されている。
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52には、導体層およびスルーホールは形成されていない。
【0036】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、グランド用の導体層531が形成されている。また、誘電体層53には、それぞれ導体層531に接続されたスルーホール53T1,53T2,53T3,53T4,53T5,53T6が形成されている。
【0037】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、導体層541,542,543,544,545,546が形成されている。導体層541~543の各々は、
図2に示した端子113に接続されている。導体層544~546の各々は、
図2に示した端子114に接続されている。誘電体層53に形成されたスルーホール53T1,53T2,53T3,53T4,53T5,53T6は、それぞれ、導体層541,542,543,543,544,545,546に接続されている。
【0038】
図4(b)は、5層目の誘電体層55のパターン形成面を示している。誘電体層55には、導体層およびスルーホールは形成されていない。
【0039】
図4(c)は、6層目の誘電体層56のパターン形成面を示している。誘電体層56のパターン形成面には、導体層561,562が形成されている。導体層561,562の各々は、
図2に示した端子113に接続されている。また、誘電体層56には、それぞれ導体層561,562に接続されたスルーホール56T1,56T2が形成されている。
【0040】
図5(a)は、7層目および8層目の誘電体層57,58の各々のパターン形成面を示している。誘電体層57,58の各々には、スルーホール57T1,57T2が形成されている。誘電体層56に形成されたスルーホール56T1,56T2は、それぞれ、誘電体層57に形成されたスルーホール57T1,57T2に接続されている。また、誘電体層57,58では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0041】
図5(b)は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、導体層591,592,593が形成されている。導体層592,593の各々は、
図2に示した端子114に接続されている。また、誘電体層59には、スルーホール59T1,59T2,59T3,59T4が形成されている。誘電体層58に形成されたスルーホール57T1,57T2は、それぞれ、スルーホール59T1,59T2に接続されている。スルーホール59T3,59T4は、それぞれ、導体層592,593に接続されている。
【0042】
図5(c)は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、導体層601,602,603,604,605,606,607が形成されている。導体層605は、
図2に示した端子114に接続されている。導体層606,607の各々は、
図2に示した端子113に接続されている。誘電体層59に形成されたスルーホール59T3,59T4は、それぞれ、導体層603,604に接続されている。
【0043】
また、誘電体層60には、スルーホール60T1,60T2,60T3,60T4,60T5が形成されている。誘電体層59に形成されたスルーホール59T1,59T2は、それぞれ、スルーホール60T1,60T2に接続されている。スルーホール60T3,60T4,60T5は、それぞれ、導体層605,606,607に接続されている。
【0044】
図6(a)は、11層目の誘電体層61のパターン形成面を示している。誘電体層61のパターン形成面には、共振器用の導体層611A,612A,613A,614Aと、導体層611B,612B,613B,614B,615,616,617が形成されている。導体層611A,612A,613A,614Aは、それぞれ、一方向に長い形状を有している。導体層611Aは、長手方向の両端に位置する第1の端部E1aおよび第2の端部E1bを有している。導体層612Aは、長手方向の両端に位置する第1の端部E2aおよび第2の端部E2bを有している。導体層613Aは、長手方向の両端に位置する第1の端部E5aおよび第2の端部E5bを有している。導体層614Aは、長手方向の両端に位置する第1の端部E6aおよび第2の端部E6bを有している。
【0045】
導体層611Bは、導体層611Aの第2の端部E1bに接続されている。導体層612Bは、導体層612Aの第2の端部E2bに接続されている。導体層613Bは、導体層613Aの第2の端部E5bに接続されている。導体層614Bは、導体層614Aの第2の端部E6bに接続されている。導体層615は、第1の端部E1aと第2の端部E1bとの間の位置において導体層611Aに接続されている。導体層616は、第1の端部E6aと第2の端部E6bとの間の位置において導体層614Aに接続されている。
図6(a)では、2つの導体層の境界を、点線で示している。
【0046】
誘電体層60に形成されたスルーホール60T1,60T2は、それぞれ、導体層612B,613Bに接続されている。誘電体層60に形成されたスルーホール60T4,60T5は、それぞれ、導体層611B,614Bに接続されている。
【0047】
また、誘電体層61には、スルーホール61T1,61T2,61T3が形成されている。スルーホール61T1,61T2は、それぞれ、導体層615,616に接続されている。誘電体層60に形成されたスルーホール60T3と、スルーホール61T3は、導体層617に接続されている。
【0048】
図6(b)は、12層目の誘電体層62のパターン形成面を示している。誘電体層62のパターン形成面には、導体層621,622が形成されている。また、誘電体層62には、スルーホール62T1,62T2,62T3が形成されている。誘電体層61に形成されたスルーホール61T1,61T2,61T3は、それぞれ、スルーホール62T1,62T2,62T3に接続されている。
【0049】
図6(c)は、13層目の誘電体層63のパターン形成面を示している。誘電体層63のパターン形成面には、導体層631,632が形成されている。導体層631は、
図2に示した端子111に接続されている。導体層632は、
図2に示した端子112に接続されている。誘電体層62に形成されたスルーホール62T1,62T2は、それぞれ、導体層631,632に接続されている。
【0050】
また、誘電体層63には、スルーホール63T3が形成されている。誘電体層62に形成されたスルーホール62T3は、スルーホール63T3に接続されている。
【0051】
図7(a)は、14層目および15層目の誘電体層64,65の各々のパターン形成面を示している。誘電体層64,65の各々には、スルーホール64T3が形成されている。誘電体層63に形成されたスルーホール63T3は、誘電体層64に形成されたスルーホール64T3に接続されている。誘電体層64に形成されたスルーホール64T3は、誘電体層65に形成されたスルーホール64T3に接続されている。
【0052】
図7(b)は、16層目の誘電体層66のパターン形成面を示している。誘電体層66のパターン形成面には、共振器用の導体層661,662と、導体層663が形成されている。導体層661,662は、それぞれ、一方向に長い形状を有している。導体層661は、長手方向の両端に位置する第1の端部E3aおよび第2の端部E3bを有している。導体層662は、長手方向の両端に位置する第1の端部E4aおよび第2の端部E4bを有している。
【0053】
導体層663は、導体層661の第2の端部E3bと導体層662の第2の端部E4bに接続されている。
図7(b)では、導体層661と導体層663との境界と、導体層662と導体層663との境界を、それぞれ点線で示している。誘電体層65に形成されたスルーホール64T3は、導体層663に接続されている。
【0054】
図7(c)は、17層目の誘電体層67のパターン形成面を示している。誘電体層67のパターン形成面には、導体層671が形成されている。
【0055】
図8(a)は、18層目ないし21層目の誘電体層68~71の各々のパターン形成面を示している。誘電体層68~71の各々には、導体層およびスルーホールは形成されていない。
【0056】
図8(b)は、22層目の誘電体層72のパターン形成面を示している。誘電体層72のパターン形成面には、導体層721,722,723,724,725,726が形成されている。導体層721~723の各々は、
図2に示した端子113に接続されている。導体層724~726の各々は、
図2に示した端子114に接続されている。
【0057】
また、誘電体層72には、それぞれ導体層721,722,723,724,725,726に接続されたスルーホール72T1,72T2,72T3,72T4,72T5,72T6が形成されている。
【0058】
図8(c)は、23層目の誘電体層73のパターン形成面を示している。誘電体層73のパターン形成面には、グランド用の導体層731が形成されている。誘電体層72に形成されたスルーホール72T1~72T6の各々は、導体層731に接続されている。
【0059】
図9(a)は、24層目の誘電体層74のパターン形成面を示している。誘電体層74には、導体層およびスルーホールは形成されていない。
図9(b)は、25層目の誘電体層75のパターン形成面を示している。誘電体層75には、マーク751が形成されている。
【0060】
図2に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の第1の面50Aになり、25層目の誘電体層75のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の第2の面50Bになるように、1層目ないし25層目の誘電体層51~75が積層されて構成される。
【0061】
図10は、1層目ないし25層目の誘電体層51~75が積層されて構成された積層体50の内部を示している。
図10に示したように、積層体50の内部では、
図3(a)ないし
図8(c)に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、
図10では、マーク751を省略している。
【0062】
以下、
図1に示したフィルタ装置1の回路の構成要素と、積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。共振器11は、共振器用の導体層611Aによって構成されている。導体層611Aは、導体層615、スルーホール61T1,62T1および導体層631を介して端子111に接続されている。
【0063】
導体層611Aの第1の端部E1aおよび第2の端部E1bは、それぞれ、共振器11の第1の端部および第2の端部に対応する。以下の説明では、共振器11の第1の端部および第2の端部についても、それぞれ符号E1a,E1bを用いて表す。共振器11(導体層611A)の第2の端部E1bは、導体層606、スルーホール60T4および導体層611Bを介して端子113に接続されている。
【0064】
共振器12は、共振器用の導体層612Aによって構成されている。導体層612Aの第1の端部E2aおよび第2の端部E2bは、それぞれ、共振器12の第1の端部および第2の端部に対応する。以下の説明では、共振器12の第1の端部および第2の端部についても、それぞれ符号E2a,E2bを用いて表す。共振器12(導体層612A)の第2の端部E2bは、導体層561、スルーホール56T1,57T1,59T1,60T1および導体層612Bを介して端子113に接続されている。
【0065】
共振器13は、共振器用の導体層661によって構成されている。導体層661の第1の端部E3aおよび第2の端部E3bは、それぞれ、共振器13の第1の端部および第2の端部に対応する。以下の説明では、共振器13の第1の端部および第2の端部についても、それぞれ符号E3a,E3bを用いて表す。
【0066】
共振器14は、共振器用の導体層662によって構成されている。導体層662の第1の端部E4aおよび第2の端部E4bは、それぞれ、共振器14の第1の端部および第2の端部に対応する。以下の説明では、共振器14の第1の端部および第2の端部についても、それぞれ符号E4a,E4bを用いて表す。
【0067】
共振器13(導体層661)の第2の端部E3bと、共振器14(導体層662)の第2の端部E4bは、導体層663に接続されている。導体層663は、導体層605、スルーホール60T3、導体層617およびスルーホール61T3,62T3,63T3,64T3を介して端子114に接続されている。
【0068】
共振器15は、共振器用の導体層613Aによって構成されている。導体層613Aの第1の端部E5aおよび第2の端部E5bは、それぞれ、共振器15の第1の端部および第2の端部に対応する。以下の説明では、共振器15の第1の端部および第2の端部についても、それぞれ符号E5a,E5bを用いて表す。共振器15(導体層613A)の第2の端部E2bは、導体層562、スルーホール56T2,57T2,59T2,60T2および導体層613Bを介して端子113に接続されている。
【0069】
共振器16は、共振器用の導体層614Aによって構成されている。導体層614Aは、導体層616、スルーホール61T2,62T2および導体層632を介して端子112に接続されている。
【0070】
導体層614Aの第1の端部E6aおよび第2の端部E6bは、それぞれ、共振器16の第1の端部および第2の端部に対応する。以下の説明では、共振器16の第1の端部および第2の端部についても、それぞれ符号E6a,E6bを用いて表す。共振器16(導体層614A)の第2の端部E6bは、導体層607、スルーホール60T5および導体層614Bを介して端子113に接続されている。
【0071】
キャパシタC1は、導体層601,611A,612A,621と、これらの導体層の間の誘電体層60,61とによって構成されている。キャパシタC2は、導体層612A,661と、これらの導体層の間の誘電体層61~65とによって構成されている。キャパシタC3は、導体層661,662,671と、これらの導体層の間の誘電体層66とによって構成されている。キャパシタC4は、導体層613A,662と、これらの導体層の間の誘電体層61~65とによって構成されている。キャパシタC5は、導体層602,613A,614A,622と、これらの導体層の間の誘電体層60,61とによって構成されている。
【0072】
キャパシタC6は、導体層591,612A,613Aと、これらの導体層の間の誘電体層59,60とによって構成されている。キャパシタC7は、導体層611A,603と、これらの導体層の間の誘電体層60とによって構成されている。キャパシタC8は、導体層614A,604と、これらの導体層の間の誘電体層60とによって構成されている。
【0073】
キャパシタC7を構成する導体層603は、導体層592およびスルーホール59T3を介して端子114に接続されている。キャパシタC8を構成する導体層604は、導体層593およびスルーホール59T4を介して端子114に接続されている。
【0074】
インダクタL1は、導体層561,606,611B,612B、スルーホール56T1,57T1,59T1,60T1,60T4および端子113によって構成されている。インダクタL2は、導体層605,617,663、スルーホール60T3,61T3,62T3,63T3,64T3および端子114によって構成されている。インダクタL3は、導体層562,607,613B,614B、スルーホール56T2,57T2,59T2,60T2,60T5および端子113によって構成されている。
【0075】
次に、
図2ないし
図13を参照して、本実施の形態に係るフィルタ装置1の構造上の特徴について説明する。
図11および
図12は、積層体50の内部の一部を示す斜視図である。
図11には、主に、1層目ないし11層目の誘電体層51~61に形成された複数の導体層および複数のスルーホールを示している。
図12には、主に、1層目ないし16層目の誘電体層51~66に形成された複数の導体層および複数のスルーホールを示している。
図13は、積層体50の内部の一部を示す平面図である。
【0076】
始めに、共振器12~15に関わる特徴について説明する。共振器12~15のうちの2つの特定の共振器の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。2つの特定の共振器は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。本実施の形態では、共振器12,15の組と共振器13,14の組が、それぞれ2つの特定の共振器に対応する。すなわち、
図6(a)、
図10および
図11に示したように、共振器12,15(導体層612A,613A)は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。共振器12は、側面50Dよりも側面50Cにより近い位置に配置されている。共振器15は、側面50Cよりも側面50Dにより近い位置に配置されている。
【0077】
また、
図7(b)、
図10および
図12に示したように、共振器13,14(導体層661,662)は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。共振器13は、側面50Dよりも側面50Cにより近い位置に配置されている。共振器14は、側面50Cよりも側面50Dにより近い位置に配置されている。
【0078】
また、共振器13,14は、積層方向Tにおいて、共振器12,15とは異なる位置に配置されている。本実施の形態では特に、共振器13,14は、共振器12,15と積層体50の第2の面50Bとの間に配置されている。また、
図13に示したように、共振器13の一部は、積層方向Tから見たときに、共振器12の一部と重なっている。共振器14の一部は、積層方向Tから見たときに、共振器15の一部と重なっている。
【0079】
また、
図13に示したように、共振器12の第1の端部E2aと共振器15の第1の端部E5aは、それぞれ、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置に配置されている。共振器12の第2の端部E2bと共振器15の第2の端部E5bは、それぞれ、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置に配置されている。
【0080】
共振器13の第1の端部E3aと共振器14の第1の端部E4aは、それぞれ、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置に配置されている。共振器13の第2の端部E3bと共振器14の第2の端部E4bは、それぞれ、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置に配置されている。すなわち、本実施の形態では、共振器13,14は、積層方向Tから見たときに、第1の端部と第2の端部の位置が揃うように配置されている。第1の端部と第2の端部の位置が揃うように共振器13,14を配置した場合、共振器13と共振器14との間の結合は、第1の端部と第2の端部の位置が逆になるように共振器13,14を配置した場合に比べて強くなる。
【0081】
共振器12の第2の端部E2bは、共振器13の第2の端部E3bよりも共振器13の第1の端部E3aにより近い位置に配置されている。すなわち、本実施の形態では、共振器12,13は、積層方向Tから見たときに、第1の端部と第2の端部の位置が逆になるように配置されている。同様に、共振器15の第2の端部E5bは、共振器14の第2の端部E4bよりも共振器14の第1の端部E4aにより近い位置に配置されている。すなわち、本実施の形態では、共振器14,15は、積層方向Tから見たときに、第1の端部と第2の端部の位置が逆になるように配置されている。
【0082】
ここで、積層方向Tから共振器を見たときに、共振器の短手方向における共振器の寸法を、幅と言う。
図6(a)および
図13に示したように、共振器12の第1の端部E2aの幅と共振器12の第2の端部E2bの幅は、互いに異なっている。本実施の形態では特に、共振器12の第2の端部E2bの幅は、共振器12の第1の端部E2aの幅よりも小さい。
【0083】
共振器12は、第1の端部E2aを含む第1の部分と、第2の端部E2bを含む第2の部分とを含んでいてもよい。第1の部分の幅は、共振器12の長手方向の位置によらずに一定か、ほぼ一定であってもよい。第2の部分の幅は、第1の部分から遠ざかるに従って小さくなっていてもよい。
【0084】
また、共振器15の第1の端部E5aの幅と共振器15の第2の端部E5bの幅は、互いに異なっている。本実施の形態では特に、共振器15の第2の端部E5bの幅は、共振器15の第1の端部E5aの幅よりも小さい。
【0085】
共振器15は、第1の端部E2aを含む第3の部分と、第2の端部E2bを含む第4の部分とを含んでいてもよい。第3の部分の幅は、共振器15の長手方向の位置によらずに一定か、ほぼ一定であってもよい。第4の部分の幅は、第3の部分から遠ざかるに従って小さくなっていてもよい。
【0086】
共振器13の第1の端部E3aの幅の大きさと共振器13の第2の端部E3bの幅の大きさは、互いに等しいか、ほぼ等しくてもよい。また、共振器13の幅は、共振器15の長手方向の位置によらずに一定か、ほぼ一定であってもよい。
【0087】
共振器14の第1の端部E4aの幅の大きさと共振器14の第2の端部E4bの幅の大きさは、互いに等しいか、ほぼ等しくてもよい。また、共振器14の幅は、共振器14の長手方向の位置によらずに一定か、ほぼ一定であってもよい。
【0088】
次に、共振器11,16に関わる特徴について説明する。
図6(a)、
図10および
図11に示したように、共振器11,16(導体層611A,614A)は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。共振器11は、側面50Dよりも側面50Cにより近い位置に配置されている。共振器16は、側面50Cよりも側面50Dにより近い位置に配置されている。
【0089】
本実施の形態では特に、共振器11,12,15,16は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。共振器11は、側面50Cと共振器12との間に配置されている。共振器16は、側面50Dと共振器15との間に配置されている。
【0090】
図13に示したように、共振器11の第1の端部E1aと共振器16の第1の端部E6aは、それぞれ、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置に配置されている。共振器11の第2の端部E1bと共振器16の第2の端部E6bは、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置に配置されている。
【0091】
また、共振器11の第1の端部E1aは、共振器12の第2の端部E2bよりも共振器12の第1の端部E2aにより近い位置に配置されている。すなわち、本実施の形態では、共振器11,12は、積層方向Tから見たときに、第1の端部と第2の端部の位置が揃うように配置されている。同様に、共振器16の第1の端部E6aは、共振器15の第2の端部E5bよりも共振器15の第1の端部E5aにより近い位置に配置されている。すなわち、本実施の形態では、共振器15,16は、積層方向Tから見たときに、第1の端部と第2の端部の位置が揃うように配置されている。
【0092】
共振器11の第1の端部E1aの幅の大きさと共振器11の第2の端部E1bの幅の大きさは、互いに等しいか、ほぼ等しくてもよい。また、共振器11の幅は、共振器11の長手方向の位置によらずに一定か、ほぼ一定であってもよい。
【0093】
共振器16の第1の端部E6aの幅の大きさと共振器16の第2の端部E6bの幅の大きさは、互いに等しいか、ほぼ等しくてもよい。また、共振器16の幅は、共振器16の長手方向の位置によらずに一定か、ほぼ一定であってもよい。
【0094】
次に、本実施の形態に係るフィルタ装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、共振器13の第1の端部E3aは、グランドに接続されておらず、共振器13の第1の端部E3aとグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。また、共振器14の第1の端部E4aは、グランドに接続されておらず、共振器14の第1の端部E4aとグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。これにより、本実施の形態によれば、共振器13の第1の端部E3aとグランドとの間にキャパシタ素子が存在し、共振器14の第1の端部E4aとグランドとの間にキャパシタ素子が存在する場合に比べて、共振器13,14の各々のQ値を大きくすることができる。
【0095】
共振器13,14の各々のQ値についての説明は、共振器12,15にも当てはまる。すなわち、本実施の形態によれば、共振器12の第1の端部E2aとグランドとの間にキャパシタ素子が存在し、共振器15の第1の端部E5aとグランドとの間にキャパシタ素子が存在する場合に比べて、共振器12,13の各々のQ値を大きくすることができる。
【0096】
また、本実施の形態では、共振器13,14は、積層方向Tにおいて、共振器12,15とは異なる位置に配置されている。これにより、本実施の形態によれば、積層体50のX方向に平行な方向における寸法を小さくすることができる。本実施の形態では特に、共振器13は、積層方向Tから見たときに、共振器12の一部と重なり、共振器14は、積層方向Tから見たときに、共振器15の一部と重なっている。これより、本実施の形態によれば、共振器12,13が重ならず、共振器14,15が重ならない場合に比べて、積層体50のX方向に平行な方向における寸法をより小さくすることができる。
【0097】
また、共振器13,14を、積層方向Tにおいて共振器12,15とは異なる位置に配置することにより、積層体50のX方向に平行な方向における寸法を大きくすることなく、共振器12と共振器13との間隔を調整して、共振器12と共振器13との間の結合を調整することが可能になると共に、共振器14と共振器15との間隔を調整して、共振器14と共振器15との間の結合を調整することが可能になる。本実施の形態では特に、共振器12と共振器13との間隔を大きくすることによって、共振器12と共振器13との間の結合を弱くすることができる。共振器12,13についての上記の説明は、共振器14,15にも当てはまる。
【0098】
以上のことから、本実施の形態によれば、所望の特性を実現しながら、フィルタ装置1を小型化することができる。
【0099】
また、本実施の形態では、共振器12~15の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しないが、共振器11,16の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在する。すなわち、本実施の形態では、第1の端部とグランドとの間にキャパシタ素子が存在しない共振器の数は、第1の端部とグランドとの間にキャパシタ素子が存在する共振器の数よりも多い。これにより、本実施の形態によれば、フィルタ装置1の通過帯域の挿入損失を小さくすることができる。
【0100】
次に、共振器13,14の位置によって特性を調整できることを示すシミュレーションの結果について説明する。始めに、シミュレーションで用いた第1のモデルと第2のモデルについて説明する。第1のモデルと第2のモデルは、それぞれ、本実施の形態に係るフィルタ装置1のモデルである。第1のモデルでは、共振器13,14を、共振器12,15から180μmだけZ方向の先の位置に配置している。第2のモデルでは、共振器13,14を、共振器12,15から80μmだけZ方向の先の位置に配置している。
【0101】
ここで、積層体50のX方向に平行な方向における寸法を第1の寸法と言い、積層体50のY方向に平行な方向における寸法を第2の寸法と言う。第2のモデルにおける第1の寸法と第2の寸法は、それぞれ、第1のモデルにおける第1の寸法と第2の寸法と同じである。
【0102】
図14は、第1のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
図15は、第2のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
図14および
図15において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。
図14および
図15に示したように、第1のモデルでは、第2のモデルに比べて、通過帯域が狭くなることが分かる。また、第1のモデルでは、第2のモデルに比べて、高域側の遮断周波数に近い通過帯域における減衰量の絶対値が小さくなることが分かる。このように、本実施の形態によれば、第1の寸法と第2の寸法を変えることなく、特性を調整することができる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、共振器の数や構成は、各実施の形態に示したものに限らず、特許請求の範囲を満たすものであればよい。回路構成上、共振器12と共振器14との間に位置する第3の共振器の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。第3の共振器の数が1つの場合、第3の共振器は、積層方向Tから見て、共振器12と共振器14の両方と重なっていてもよい。また、共振器11,16は、フィルタ装置1の必須の構成要素ではなく、設けられていなくてもよい。
【0104】
以上説明したように、本発明の積層型フィルタ装置は、第1のポートと、第2のポートと、回路構成上、第1のポートと第2のポートとの間に配置された複数の共振器と、第1のポート、第2のポートおよび複数の共振器を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層を含む積層体とを備えている。複数の共振器の各々は、第1の端部と第2の端部とを有している。
【0105】
複数の共振器は、第1の共振器と、第2の共振器と、回路構成上第1の共振器と第2の共振器との間に配置された少なくとも1つの第3の共振器とを含んでいる。第1の共振器、第2の共振器および少なくとも1つの第3の共振器のうちの少なくとも1つの共振器の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しない。第1の共振器と第2の共振器は、複数の誘電体層の積層方向において同じ位置に配置されている。少なくとも1つの第3の共振器は、積層方向において、第1の共振器および第2の共振器とは異なる位置に配置されている。
【0106】
本発明の積層型フィルタ装置において、第1の共振器、第2の共振器および少なくとも1つの第3の共振器の各々の第2の端部は、グランドに接続されていてもよい。第1の共振器と第2の共振器の各々の第2の端部は、少なくとも1つの第3の共振器の各々の第2の端部よりも、少なくとも1つの第3の共振器の各々の第1の端部により近い位置に配置されていてもよい。
【0107】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1の共振器、第2の共振器および少なくとも1つの第3の共振器のうちの2つの特定の共振器の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しなくてもよい。2つの特定の共振器は、複数の誘電体層の積層方向において同じ位置に配置されていてもよい。
【0108】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、少なくとも1つの第3の共振器は、2つの第3の共振器を含んでいてもよい。2つの第3の共振器の一方の少なくとも一部は、積層方向から見たときに、第1の共振器の一部と重なっていてもよい。2つの第3の共振器の他方の少なくとも一部は、積層方向から見たときに、第2の共振器の一部と重なっていてもよい。2つの第3の共振器の一方の第1の端部は、2つの第3の共振器の他方の第2の端部よりも、2つの第3の共振器の他方の第1の端部により近い位置に配置されていてもよい。
【0109】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1の共振器の第1の端部の幅と、第1の共振器の第2の端部の幅は、互いに異なっていてもよい。第2の共振器の第1の端部の幅と、第2の共振器の第2の端部の幅は、互いに異なっていてもよい。
【0110】
また、本発明の積層型フィルタ装置は、更に、それぞれ第1の共振器の第2の端部の近傍部分と第2の共振器の第2の端部の近傍部分に接続された2つのスルーホールを備えていてもよい。第1の共振器の第2の端部の幅は、第1の共振器の第1の端部よりも小さくてもよい。第2の共振器の第2の端部は、第2の共振器の第1の端部の幅よりも小さくてもよい。
【0111】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1の共振器は、回路構成上、第1のポートと少なくとも1つの第3の共振器との間に配置されていてもよい。第2の共振器は、回路構成上、第2のポートと少なくとも1つの第3の共振器との間に配置されていてもよい。複数の共振器は、更に、回路構成上第1のポートと第1の共振器との間に配置された第4の共振器と、回路構成上第2のポートと第2の共振器との間に配置された第5の共振器とを含んでいてもよい。第4の共振器と第5の共振器は、積層方向において同じ位置に配置されていてもよい。第1の共振器および第2の共振器の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しなくてもよい。第4の共振器と第5の共振器の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在していてもよい。
【0112】
複数の共振器が第4および第5の共振器を含んでいる場合、複数の共振器は、複数の第1の種類の共振器と、複数の第2の種類の共振器とを含んでいてもよい。複数の第1の種類の共振器の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在しなくてもよい。複数の第2の種類の共振器の各々の第1の端部とグランドとの間には、回路構成上、キャパシタ素子が存在していてもよい。複数の第1の種類の共振器の数は、複数の第2の種類の共振器の数よりも多くてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…フィルタ装置、2…第1のポート、3…第2のポート、11~16…共振器、50…積層体、50A…第1の面、50B…第2の面、50C~50F…側面、111~114…端子、C1~C8…キャパシタ、L1~L3…インダクタ。