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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004820
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/184 20060101AFI20240110BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B62D1/184
B62D1/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104671
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二宮 和生
(72)【発明者】
【氏名】田中 清司
(72)【発明者】
【氏名】今村 謙二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 留意
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚広
(72)【発明者】
【氏名】冨増 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智一
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 雅治
(72)【発明者】
【氏名】閏間 健雄
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC16
3D030DC17
3D030DD02
3D030DD26
3D030DD65
3D030DD74
3D030DD77
3D030DE06
3D030DE23
(57)【要約】
【課題】部品の破損を効果的に防止できるステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置10は、ロアジャケット30と、アッパジャケット20と、前記アッパジャケット20に固着された梯子状のロックプレート22と、ロックプレート22と係合する係合位置と、係合解除される離脱位置と、の間で樹脂軸48を中心に揺動可能なツース50と、伝達軸42ととともに前記チルト解除角度まで回転する場合に、前記ツース50を前記離脱位置に近づく方向に押圧するカム44と、を備え、前記ツース50は、前記ツース50が係合位置にある場合に、前記仕切りバー24と軸方向に向かい合う面であって、前記樹脂軸48を中心とする円弧に略平行な円弧面である当接面56と、前記ツース50が前記係合位置にある場合に、前記アッパジャケット20に向かって突出する突起54と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアジャケットと、前記ロアジャケットに対して軸方向に進退可能なアッパジャケットと、を有するステアリングコラムと、
前記アッパジャケットに固着され、複数の仕切りバーと仕切り穴とが軸方向に交互に並ぶ、梯子状のロックプレートと、
前記ロアジャケットに対して揺動可能に取り付けられ、前記仕切り穴に入り込んでロックプレートと係合する係合位置と、前記仕切り穴から離脱する離脱位置と、の間で樹脂軸を中心に揺動可能なツースと、
伝達軸を有し、前記伝達軸を規定のチルト解除角度まで回転させることで、前記ステアリングコラムのチルト角度および/または軸方向位置の変更を可能にするチルト調整部材と、
前記伝達軸に固着され、前記伝達軸ととともに前記チルト解除角度まで回転する場合に、前記ツースを前記離脱位置に近づく方向に押圧するカムと、
を備え、前記ツースは、
前記ツースが係合位置にある場合に、前記仕切りバーと軸方向に向かい合う面であって、前記樹脂軸を中心とする円弧に略平行な円弧面である当接面と、
前記ツースが前記係合位置にある場合に、前記アッパジャケットに向かって突出する突起と、
を有する、ことを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両に搭載されるステアリング装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置は、通常、操舵部材(例えばステアリングホイール)と、操舵部材の動きをステアリング機構に伝達するステアリングシャフトと、ステアリングシャフトを取り囲むステアリングコラムと、が設けられている。特許文献1には、こうしたステアリング装置が開示されている。
【0003】
特許文献1において、ステアリングコラムは、ロアジャケットと、ロアジャケットより軸方向先端側(操舵部材に近い方向)に位置するとともにロアジャケットに対して軸方向に進退可能なアッパジャケットと、を有している。アッパジャケットには、梯子状のロックプレートが固着され、ロアジャケットには、揺動可能なロック部材が設けられている。ロック部材は、当該ロック部材が揺動することでロックプレートに係合または係合解除するツースを有している。そして、ツースとロックプレートの係合を解除することで、アッパジャケットの軸方向の移動、ひいては、操舵部材の軸方向位置を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-144810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のようなステアリング装置では、操舵部材の軸方向位置だけでなく、チルト角度も変更できる。チルト角度および軸方向位置を変更する場合は、所定の解除レバーを操作する。しかしながら、アッパジャケットが軸方向後端側に押され、ロックプレートがツースに押し付けられた状態では、解除レバーが適切に動かせない場合があった。かかる場合に、ユーザが、解除レバーの回転操作を強引に続けると、解除レバーに固着された伝達軸に過大な負荷がかかり、伝達軸が破損するおそれがあった。
【0006】
そこで、本明細書では、部品の破損を効果的に防止できるステアリング装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示するステアリング装置は、ロアジャケットと、前記ロアジャケットに対して軸方向に進退可能なアッパジャケットと、を有するステアリングコラムと、前記アッパジャケットに固着され、複数の仕切りバーと仕切り穴とが軸方向に交互に並ぶ、梯子状のロックプレートと、前記ロアジャケットに対して揺動可能に取り付けられ、前記仕切り穴に入り込んでロックプレートと係合する係合位置と、前記仕切り穴から離脱する離脱位置と、の間で樹脂軸を中心に揺動可能なツースと、伝達軸を有し、前記伝達軸を規定のチルト解除角度まで回転させることで、前記ステアリングコラムのチルト角度および/または軸方向位置の変更を可能にするチルト調整部材と、前記伝達軸に固着され、前記伝達軸ととともに前記チルト解除角度まで回転する場合に、前記ツースを前記離脱位置に近づく方向に押圧するカムと、を備え、前記ツースは、前記ツースが係合位置にある場合に、前記仕切りバーと軸方向に向かい合う面であって、前記樹脂軸を中心とする円弧に略平行な円弧面である当接面と、前記ツースが前記係合位置にある場合に、前記アッパジャケットに向かって突出する突起と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示するステアリング装置によれば、部品の破損を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ステアリング装置の斜視図である。
図2】ステアリング装置の模式図である。
図3】ロック部材周辺の拡大図である。
図4】チルト角度のロックが解除された状態における図3のA部拡大図である。
図5】従来のツースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してステアリング装置10の構成について説明する。図1はステアリング装置10の斜視図である。また、図2は、ステアリング装置10の構成を示す模式図である。
【0011】
ステアリング装置10は、車両の運転席の前方に配置される。ステアリング装置10は、全体としては、後上がり姿勢で配置される。以下では、ステアリング装置10の長尺方向を「軸方向」と呼び、ステアリング装置10の後上側の端部を「先端」、前下側の端部を「基端」と呼ぶ。
【0012】
ステアリング装置10は、操舵部材12(例えばステアリングホイール)を有し、この操舵部材12の動きは、ステアリングシャフト14を介して、ステアリング機構16に伝達される。ステアリングシャフト14は、後上がり姿勢で配置される軸部材であり、軸方向に伸縮可能である。
【0013】
ステアリングコラム18は、ステアリングシャフト14の周囲を取り囲むもので、ロアジャケット30と、ロアジャケット30より先端側に配されるアッパジャケット20と、を有している。アッパジャケット20は、ステアリングシャフト14の周囲を取り囲む筒状部材である。アッパジャケット20の周面には、梯子状のロックプレート22(図1では見えず)が固着されているが、これについては後述する。
【0014】
ロアジャケット30も、筒状部材である。ただし、図1に示す通り、ロアジャケット30の先端側の一部は、筒状ではなく、下向きに開口したU字状となっている。以下では、ロアジャケット30のうち、筒状部分を「円筒部32」、U字状部分を「U字部34」と呼ぶ。図2に示す通り、アッパジャケット20の基端側の一部は、ロアジャケット30の内部に入り込んでいる。
【0015】
ロアジャケット30の後端には、チルト用軸孔38が形成されている。チルト用軸孔38には、チルト軸(図示せず)が挿通され、このチルト軸は、固定部材100(図2参照)に固定される。そして、これにより、ロアジャケット30を含むステアリング装置10は、チルト用軸孔38を中心に揺動でき、操舵部材12のチルト角度を変更できる。
【0016】
U字部34は、上述した通り、下向きに開口したU字状であり、その内部には、アッパジャケット20の一部が入り込んでいる。別の言い方をすれば、U字部34は、アッパジャケット20を左右から挟み込む一対の挟持板36を有している。このU字部34は、一対の固定板102で挟まれている。固定板102は、車体に固定された板状部材である。
【0017】
ステアリング装置10は、さらに、ユーザの操作を受け付ける解除レバー40を有している。解除レバー40の基端には、伝達軸42が固着されており、解除レバー40は、この伝達軸42を中心に揺動する。伝達軸42は、車両左右方向に延びる軸部材であり、挟持板36および固定板102に対して回転可能な軸である。固定板102には、伝達軸42が通過するチルト孔104(図1参照)が形成されている。チルト孔104は、チルト角度変更に伴う伝達軸42の移動を許容する円弧状の孔である。
【0018】
ステアリング装置10には、伝達軸42を規定のチルト解除角度まで回転させることで、ステアリング装置10のチルト角度および軸方向位置の変更を可能にするチルト調整機構(図示せず)も設けられている。チルト調整機構は、例えば、解除レバー40と固定板102との間に配される第一ブッシュおよび第二ブッシュを含む。第一ブッシュは、伝達軸に固着され、第二ブッシュは、固定板102に固着されている。第一ブッシュおよび第二ブッシュには、部分的に凸部および凹部が形成されている。そして、伝達軸42の回転に伴い第一ブッシュが回転し、第一、第二ブッシュの相対的な回転位相が変化する、この凸部と凹部との当たり関係も変化する。そして、これにより、第一ブッシュが、第二ブッシュを介して固定板102を押圧する力、ひいては、固定板102が、U字部34を挟み込む力が変化する。
【0019】
本例では、伝達軸42が所定の初期角度にある場合、U字部34は、一対の固定板102で強く挟み込まれる。そのため、初期角度において、ロアジャケット30は、固定板102に対して動くことができず、ステアリング装置10のチルト角度は変更できない。しかし、解除レバー40を、所定の解除方向Aに揺動させ、伝達軸42が所定のチルト解除角度まで回転すると、固定板102による挟持力が軽減され、ロアジャケット30が、チルト用軸孔38を中心に揺動できるようになる。そして、これにより、操舵部材12のチルト角度が変更できる。
【0020】
一対の挟持板36の間には、ロックプレート22、カム44およびロック部材46が設けられている。図3は、ロック部材46周辺の拡大図である。ロックプレート22は、伝達軸42と略平行な方向に延びる仕切りバー24と、仕切り穴26と、が軸方向に交互に並ぶ梯子状部材である。このロックプレート22は、アッパジャケット20の周面に固着されている。カム44は、ロックプレート22と干渉しない位置に設けられている。カム44は、伝達軸42に固着されており、伝達軸42とともに回転する。
【0021】
ロック部材46は、カム44よりも基端側に配されている。ロック部材46は、樹脂軸48を中心として回転し、樹脂軸48は、一対の挟持板36に取り付けられている。ロック部材46は、ロックプレート22に係合するツース50と、カム44に当接する受圧部60と、を有する。ツース50および受圧部60は、樹脂軸48から離れるに従い、両者の間隔が広がるような配置となっている。したがって、ロック部材46全体としては、ステアリング装置10の先端側に向かって開いた略V字形状となっている。
【0022】
ロック部材46は、係合位置と、離脱位置と、の間で揺動可能である。係合位置において、ロック部材46のツース50は、仕切り穴26に入り込み、ロックプレート22と係合する。図2は、ロック部材46が係合位置にある状態を示している。この場合、ロックプレート22、ひいては、アッパジャケット20のロアジャケット30に対する軸方向移動が禁止される。離脱位置において、ロック部材46のツース50は、仕切り穴26から完全に離脱する。この場合、ロックプレート22、ひいては、アッパジャケット20のロアジャケット30に対する軸方向移動が許容される。
【0023】
ロック部材46は、付勢部材により、係合位置に近づく方向に付勢されている。この付勢力に抗して、ロック部材46を離脱位置まで回転させたい場合、すなわち、操舵部材12の軸方向位置を変更したい場合、ユーザは、解除レバー40を解除方向Aに揺動する。これにより、伝達軸42とともにカム44が解除方向Aに回転し、当該カム44と当接するロック部材46は、離脱方向Bに回転する。
【0024】
ここで、本例のツース50は、係合位置において、上面52からアッパジャケット20に向かって突出する突起54と、仕切りバー24と軸方向に向かい合う当接面56と、を有している。当接面56は、樹脂軸48を中心とする円弧と略平行な円弧面である。かかる構成とする理由について説明する。
【0025】
図5は、従来のツース50*の一例を示す図である。図5に示す通り、従来のツース50*には、仕切りバー24と軸方向に向かい合うような円弧面は存在していなかった。ツース50*の先端面は、仕切りバー24の基端面とほぼ平行である。この場合、状況によっては、伝達軸42が破損するおそれがあった。
【0026】
すなわち、上述した通り、ユーザは、操舵部材12のチルト角度を変更したい場合、解除レバー40ひいては伝達軸42を解除方向Aに回転させる。伝達軸42には、カム44が固着されているため、伝達軸42の回転に伴い、カム44も回転し、カム44に当接するロック部材46も回転する。
【0027】
ここで、ユーザが操舵部材12に体重を掛けるなどして、アッパジャケット20が軸方向基端側に押されていたとする。この場合、ロックプレート22は、図5に示すように、ツース50*の先端面が、仕切りバー24の後端面に当接する位置まで軸方向移動する。この状態になると、ツース50*と仕切りバー24との当接関係により、ロック部材46を離脱方向Bに揺動させようとしても、揺動できない。そして、ツース50*が、揺動できない以上、カム44および伝達軸42も回転できない。
【0028】
この図5の状態であることに気づかないまま、操舵部材12のチルト角度を変更するために、ユーザが、解除レバー40を解除方向Aに強引に回転させようとすると、伝達軸42に過大な負荷がかかり、伝達軸42が破損することがある。
【0029】
こうした伝達軸42の破損を防止するために、本例では、ツース50の先端に、仕切りバー24と軸方向に向かい合う円弧面である当接面56を設けている。アッパジャケット20が軸方向基端側に押圧された場合には、この当接面56が、仕切りバー24に当接する。この当接面56は、樹脂軸48を中心とする円弧と平行であるため、アッパジャケット20が軸方向基端側に押圧されていたとしても、ツース50は、離脱方向Bに容易に揺動できる。その結果、アッパジャケット20が軸方向基端側に押圧されている場合でも、伝達軸42およびカム44を、チルト解除角度まで回転させることができ、伝達軸42の破損を防止しつつチルト角度および軸方向位置のロックを解除できる。
【0030】
ただし、ロック部材46が無制限に回転すると様々な問題が生じる。例えば、本例では、車両衝突等で、ステアリング装置10に軸方向圧縮の強い力がかかった場合には、その衝突の力を、ロアジャケット30から、ロックプレート22、ツース50を介して樹脂軸48に伝達し、樹脂軸48が優先的に破壊されるように設計されている。かかる場合において、ロック部材46が無制限に回転し、衝突時に、ツース50が、仕切り穴26から完全離脱すると、樹脂軸48への衝突荷重の伝達ができない。
【0031】
そこで、本例では、ツース50に、さらに、上面52からアッパジャケット20に向かって突出する突起54を設けている。かかる突起54を設けることで、図4に示すように、ツース50が、仕切り穴26から完全に離脱する前に、当該突起54が、仕切りバー24の基端面に当接し、引っ掛かる。これにより、ロック部材46が無制限に回転することが防止される。そして、結果として、衝突時には、衝突荷重を、樹脂軸48に確実に伝達できる。
【符号の説明】
【0032】
10 ステアリング装置、12 操舵部材、14 ステアリングシャフト、16 ステアリング機構、18 ステアリングコラム、20 アッパジャケット、22 ロックプレート、24 仕切りバー、26 仕切り穴、30 ロアジャケット、32 円筒部、34 U字部、36 挟持板、38 チルト用軸孔、40 解除レバー、42 伝達軸、44 カム、46 ロック部材、48 樹脂軸、50,50* ツース、52 上面、54 突起、56 当接面、60 受圧部、100 固定部材、102 固定板、104 チルト孔。
図1
図2
図3
図4
図5