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  • 特開-緩衝材および梱包用資材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048203
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】緩衝材および梱包用資材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/03 20060101AFI20240401BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240401BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B65D81/03 100A
B32B5/18
B32B25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154107
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 甫規
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 諒太
【テーマコード(参考)】
3E066
4F100
【Fターム(参考)】
3E066AA22
3E066BA01
3E066CA01
3E066DB01
3E066FA12
3E066HA01
3E066MA01
4F100AK41A
4F100AL09B
4F100AN01B
4F100BA02
4F100CB05B
4F100DD01A
4F100DJ01A
4F100JK11
4F100JL13B
(57)【要約】
【課題】気泡シートと粘着剤との接着性が十分な緩衝材を提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、緩衝材10である。当該緩衝材10は、気泡シート20および粘着層30を備える。気泡シート20は、第1シート22と第2シート24とが積層された構造を有する。第1シート22には、複数の凸部23が設けられており、第1シート22と第2シート24との間に、気泡室26が形成されている。粘着層30は、第2シート24の裏面側に積層されている。粘着層30は、自己粘着性を有する天然ゴムラテックスにより形成されることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立な複数の気泡室を有する気泡シートと、
前記気泡シートの少なくとも一方の側に設けられた粘着層と、
を備え、
前記気泡シートが脂肪族ポリエステルによって形成されている、緩衝材。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートである、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記粘着層が天然ゴム系エラストマーを含む、請求項1または2に記載の緩衝材。
【請求項4】
請求項1または2に記載の緩衝材が用いられた、梱包用資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材および梱包用資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を保護するための梱包用資材として、気泡シートに粘着剤を塗布した緩衝材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-114673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の緩衝材は、気泡シートと粘着剤との接着性が不十分な場合があり、たとえば、輸送時に、緩衝材の梱包対象となる内容物が脱落したりする等の問題が生じる場合があった。
本発明は上述のような課題を鑑みたものであり、気泡シートと粘着剤との接着性が十分な緩衝材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、緩衝材である。当該緩衝材は、互いに独立な複数の気泡室を有する気泡シートと、前記気泡シートの少なくとも一方の側に設けられた粘着層と、を備え、前記気泡シートが脂肪族ポリエステルによって形成されている。
【0006】
上記態様の緩衝材において、前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネートであってもよい。前記粘着層が天然ゴム系エラストマーを含んでもよい。
本発明の他の態様は、上述したいずれかの態様の緩衝材が用いられた梱包用資材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気泡シートと粘着剤との接着性が十分な緩衝材に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る緩衝材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0010】
図1は、実施形態に係る緩衝材10の概略断面図である。図1に示すように、緩衝材10は、気泡シート20および粘着層30を備える。
【0011】
気泡シート20は、第1シート22および第2シート24を含む。第1シート22、第2シート24は、それぞれ、キャップフィルム、バックフィルムと称される場合がある。
【0012】
第1シート22には、複数の凸部23が形成されている。凸部23の形状は特に制約されず、円柱、多角柱、円錐、多角錐、円錐台、多角錐台、半球等の各種の形状を取りうる。凸部23の高さは、1~40mmが好ましく、1.5~30mmがより好ましい。凸部23の底面積は10~1300mmが好ましく、20~1000mmがより好ましい。
【0013】
各凸部23間の距離は1~40mmが好ましく、1.5~30mmがより好ましい。凸部23の配列は特に制限がないが、たとえば、気泡シート20の長手方向において複数の凸部23が直線的に配列され、上記長手方向と直交する方向(幅方向)では複数の凸部23が千鳥状に配列されていてもよく、またその逆のパターンで配列されていてもよい。
【0014】
第1シート22の厚さは特に制限がないが、10~350μmが好ましく、15~150μmがより好ましく、25~65μmがさらに好ましい。
【0015】
第2シート24は、第1シート22に形成された凸部23の開口を塞ぐように、第1シート22に積層されている。
これにより、第1シート22と第2シート24との間に、互いに独立な複数の気泡室26が形成されている。
【0016】
第2シートの厚さは特に制限がないが、5~350μmが好ましく、10~50μmがより好ましく、15~25μmがさらに好ましい。
【0017】
第1シート22および第2シート24は、それぞれ、脂肪族ポリエステルによって形成されている。第1シート22および第2シート24を脂肪族ポリエステルで形成することにより、後述する粘着層30との接着性を高めることができる。
【0018】
脂肪族ポリエステルとしては、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリラクチド、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート等が挙げられる。上述した脂肪族ポリエステルは生分解性を有するが、これらのうち、成形性をより高くする観点から、ポリブチレンサクシネート(PBS)が好適に用いられる。気泡シート20を生分解性を有する材料で形成することにより、廃棄後における環境への負荷を抑制することができる。また、PBSはポリエチレン(PE)に比べて、SP値が高いため、後述する粘着剤との濡れ性が良好であるため、粘着剤の塗布量を多くすることができる。また、気泡シート20と粘着剤との接着性が向上し、ひいては、梱包対象となる内容物が脱落することを抑制することができる。
【0019】
気泡シート20の製造方法は、特に制限されないが、一例を以下に記載する。
まず、押し出し機に取り付けられたフラットダイから脂肪族ポリエステルを押し出し、脂肪族ポリエステルからなる樹脂フィルムを得る。多数のキャビティ孔が設けられた成形ロールの外周面に溶融状態で接触するように当該樹脂フィルムを供給する。上記成形ロールに設けられたキャビティ孔のそれぞれに、真空ポンプが接続される。キャビティ孔内を当該真空ポンプにより減圧して成形ロールの外周面に接触する樹脂フィルムを真空成形する。これにより、中空状に膨出する多数の凸部23が成形された第1シート22が形成される。この場合、成形ロールの温度は、たとえば、30~100℃である。次に、成形ロール上において、第1シート22の裏面上(凸部23の開口側)に第2シート24用となる脂肪族エステルフィルムを軟化状態で重ねる。具体的には、押し出し機に取り付けられたフラットダイから脂肪族エステルフィルム(第2シート24)が押し出され、成形ロールに密着した第1シート22と押圧ロールとの間に溶融状態で供給される。第2シート24は、熱融着によって第1シート22と一体化される。これによって所望の気泡シート20を得ることができる。
【0020】
粘着層30は、第1シート22と接する側に対して反対側となる、第2シート24の一方の主表面に積層されている。
【0021】
粘着層30は、水系粘着剤により形成されていることが好ましい。水系粘着剤とは、水系媒体中に、粘着剤成分である高分子材料を溶解させた水溶性タイプ又は粘着剤成分である高分子材料を分散させたエマルジョン(ラテックス)タイプの液状組成物であり、液状組成物を乾燥させることで、固形分が残留して、粘着剤層が形成される。水系粘着剤により形成された粘着層を用いることで、環境負荷を低減しつつ、所望の剥離強度を得やすい。
【0022】
粘着層の主成分である粘着剤成分(高分子材料)としては、ゴム系(合成ゴム系エラストマー、天然ゴム系エラストマー)、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、シリコーン系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等が挙げられる。これらのうち、生分解性を有する天然ゴム系エラストマーを用いることが好ましい。
【0023】
また、粘着層30は、自己粘着性を有する粘着剤で構成されていることが好ましい。自己粘着性とは、同じ粘着剤同士については粘着性を発揮し、異なる相手については粘着性を発揮しない性質をいう。自己粘着性を有する粘着剤の場合、同じ粘着剤同士を重ねて軽く押圧することによって粘着し、少々の引き剥がし力や剪断力では離れにくくなり、引き剥がすのに適度な引き剥がし力を必要とする。
【0024】
粘着層30が自己粘着性を有することにより、緩衝材10の梱包対象となる内容物等への汚染を抑制することができる。
粘着層30による粘着力は、0.6~10N/25mmが好ましく、0.7~5N/25mmがより好ましく、0.8~3N/25mmがさらに好ましい。なお、粘着力については、以下の手順により測定される。
(粘着力測定手順)
23℃の条件下、気泡シートに粘着層が積層された試験片(25×155mm)を2枚用意する。粘着層同士を貼り合わせた状態で、2kgのローラーで一往復させ、23℃、50%RHの条件下で一晩養生する。その後、引張り試験にて、引張速度300mm/分でT字剥離試験を行い、粘着力を測定する。
【0025】
自己粘着性を有する粘着剤は、ベース樹脂となる天然ゴムラテックスに、粘着助剤を配合したもので構成される。粘着助剤としては、タッキファイヤー(粘着付与剤)としてテルペン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油系樹脂(脂肪族系、芳香族系等)と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤等)と、溶剤としてトルエン等の有機溶剤とが挙げられる。粘着剤の製造は、ホモミキサータンク内に粘着助剤等を仕込んだ後、4500回転/分程度の回転速度で、正回転と逆回転をそれぞれ30分程度行ない、その後に所定量の天然ゴムラテックスを配合することにより行うことができる。
【0026】
天然ゴムラテックスは、気泡シート20に対する塗工性が良好なため、十分な接着強度を得ることができ、ひいては、たとえば、輸送時に内容物が脱落することを抑制することができる。また、天然ゴムラテックスは生分解性を有するとされており、廃棄後における緩衝材10の環境への負荷を抑制することができる。
【0027】
粘着層30の厚さは特に制限がないが、5~50μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。また、粘着層30の目付量は特に制限がないが、5~100g/mが好ましく、5~50g/mがより好ましい。
【0028】
緩衝材10は、内容物を保護する梱包用資材として用いられうる。内容物を保護する場合、粘着層30を内容物に密着させた状態で、緩衝材10で内容物を取り囲み、緩衝材10の端部同士を合掌状とし、緩衝材10の両端部の粘着層30同士を密着させてもよい。また、緩衝材10の端部同士を積層させ、一方の端部の第1シート22の表面(凸部23側)に他方の端部の粘着層30を密着させてもよい。
【0029】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0030】
上述の実施形態では、第1シート22の裏面側に第2シート24が積層された2層構造となっているが、第1シート22の表面側(凸部23側)にも、別途、第2シート24と同様な第3シートを積層した3層構造としてもよい。この場合、粘着層30は、第2シート24の裏面側、第3シートの表面側のいずれに積層されてもよい。
【実施例0031】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
ポリブチレンサクシネート(PBS)を用いて、上述した気泡シートの製造方法に準拠し、図1に示すような気泡シートを作製した。凸部の形状・サイズ・配置を以下のように設定した。
凸部の形状:円柱状
凸部の高さ:3mm
凸部の底面積:78.5mm
凸部間の距離:2mm
また、第1シートの厚さ、第2シートの厚さをそれぞれ、50μm、40μmとした。
【0033】
得られた気泡シートを形成する第2シートの裏面に粘着剤として天然ゴム(NR)ラテックスを塗布し、緩衝材を得た。
具体的には、ロールコーターのロール間のクリアランスを3mmに調整し、ロールの回転速度5m/min、粘着剤の粘度(B型粘度)300mPa・sの条件下で、第2シートの裏面に粘着剤を塗布し、粘着層を形成した。得られた粘着層の目付量は19.01(g/m)であった。
天然ゴム(NR)ラテックス粘着剤の配合は、以下のとおりである。
・天然ゴムラテックス(固形分60%):67.6質量%
・クレイ(BASF社製、ASP-900):4.5質量%
・粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製、タマノル E100):3.1質量%
・界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのグリコール水溶液):0.1質量%
・粘度調整剤(ポリビニルピロリドン):0.6質量%
・加硫促進剤(ジチオカルバメート系加硫促進剤):1.3質量%
・老化防止剤(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)):1.1質量%
【0034】
(比較例1)
ポリブチレンサクシネート(PBS)に代えて、ポリエチレン(PE)を用いたこと、を除き、実施例1と同様にして緩衝材を作製した。得られた粘着層の目付量は9.26(g/m)であった。
このように、実施例1と同様な塗工方法および条件にて粘着剤を塗布したところ、気泡シートがPBSである実施例1に比べて、気泡シートがPEである比較例1の方が目付量が少なくなった。PBSはPEに比べて、SP値が高いため、上述の粘着剤との濡れ性が良好であるため、粘着剤の目付量(塗布量)を多くすることができたためと考えられる。
【0035】
<粘着力測定>
実施例1または比較例1の緩衝材について、上述した粘着力の測定手順に従い、粘着力を測定した。粘着力に関して得られた結果を表1に示す。
【0036】
<有効塗布面積率>
気泡シートの裏面(凸部とは反対側の面)に、粘着剤を塗布した直後の表面の有効塗布面積率を以下の手順により算出した。
走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社キーエンス製、VHX-D510)を用いて、画像全面が粘着層の表面となるように撮影する。
撮影した画像を付属の画像処理ソフトを用いて粘着層と非粘着層のコントラストの違いから、粘着層のみを選別し、その面積を算出する(粘着層の面積(A))。
粘着層の面積を算出するために用いた画像の全面の面積を全面積(B)とする。
有効塗布面積率は、下記の式を用いて算出する。
有効塗布面積率(%)=粘着層面積(A)/全面積(B)×100
有効塗布面積率を以下の評価基準により評価した。有効塗布面積率の値および評価結果を表1に示す。
(評価基準)
粘着剤の有効塗付面積率が70%以上:A
粘着剤の有効塗布面積率が70%未満:C
【0037】
【表1】
【符号の説明】
【0038】
10 緩衝材、20 気泡シート、22 第1シート、23 凸部、24 第2シート、26 気泡室、30 粘着層
図1