(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048218
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】セルフレーム、セルスタック、及びレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240401BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0258
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154136
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】505389547
【氏名又は名称】株式会社岐阜多田精機
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 憲生
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA10
5H126BB10
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できること。
【解決手段】セルフレーム1は、枠体5に形成されマニホールド11,12,21,22と電極配設部105とを連通し電解液が流通する流路31,32,41,42を、マニホールド11,12,21,22側から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅に向かって幅広くし、その途中に電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が配設する電極配設部と、
前記電極配設部の周囲に形成され、表裏面を貫通し電解液が流通するマニホールドを設けた枠体と、
前記枠体に形成され、前記電極配設部と前記マニホールドを連通し、前記マニホールド側から前記電極配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって幅広とした前記電解液が流通する流路と、
前記流路の途中に設けられ、前記電解液の逆流を防止する逆流防止部と
を具備することを特徴とするセルフレーム。
【請求項2】
前記流路は、前記枠体の内周の幅方向と並行する前記枠体の下辺側から前記電極配設部に向かって溝底を上昇させていることを特徴とする請求項1に記載のセルフレーム。
【請求項3】
前記流路は、前記マニホールドとの接続側にリブを設けたことを特徴とする請求項1に記載のセルフレーム。
【請求項4】
前記逆流防止部は、前記枠体の面から切り起こされた起立片を形成することにより、その起立片の前記枠体との接続側の基端部とは反対側の自由端部側を開口し前記起立片の下方に行き止まり部を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のセルフレーム。
【請求項5】
前記流路は、前記マニホールドから前記枠体の内周に設けた前記電極配設部の幅方向と並行に延びる直線流路と前記直線流路から前記枠体の内周の幅に向かって幅広とした幅広流路とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセルフレーム。
【請求項6】
電極が配設する電極配設部及び前記電極配設部の周囲に形成され、表裏面を貫通し電解液が流通するマニホールドを設けた枠体からなるセルフレームと隔膜とを有する電池セルを複数積層してなるセルスタックであって、
前記セルフレームは、
前記枠体に形成され、前記電極配設部と前記マニホールドを連通し、前記マニホールド側から前記電極配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって幅広とした前記電解液が流通する流路と、
前記流路の途中に設けられ、前記電解液の逆流を防止する逆流防止部と
を具備することを特徴とするセルスタック。
【請求項7】
電極が配設する電極配設部及び前記電極配設部の周囲に形成され、表裏面を貫通し電解液が流通するマニホールドを設けた枠体からなるセルフレームと隔膜とを有する電池セルを複数積層してなるセルスタックを有するレドックスフロー電池であって、
前記セルフレームは、
前記枠体に形成され、前記電極配設部と前記マニホールドを連通し、前記マニホールド側から前記電極配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって幅広とした前記電解液が流通する流路と、
前記流路の途中に設けられ、前記電解液の逆流を防止する逆流防止部と
を具備することを特徴とするレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液を流通させるセルフレーム、それを使用したセルスタック及びレドックスフロー電池に関するもので、特に、循環させる電解液の圧力損失を少なくでき、かつ、シャント電流損失を低減できるセルフレーム、セルスタック及びレドックスフロー電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制、地球環境の保護から、太陽光発電や風力発電等の再生可能な自然エネルギを利用した発電技術の関心が急速に高まりその導入が推進されているところ、このような発電方法においては出力変動が生じることから、その出力変動を吸収し電力系統を安定化させる技術として電力貯蔵技術(蓄電技術)が注目されている。そして、その蓄電装置と一つとしてレドックスフロー電池が知られている。
レドックスフロー電池は、活物質を溶媒に溶解させた電解液をポンプで循環させ、電解液中のイオンの酸化還元反応によって充放電を行う蓄電池であり、電極や電解液が長寿命で安全性が高いものであるが、その普及のためには低コスト化が望まれており、コスト低減のためには高出力化が重要になってくる。
【0003】
このレドックスフロー電池においては、所定の電圧を得るために、複数の電池セル(単セル)を積層したセルスタックの構成を有するのが一般的である。概略的には、隣接するセルフレーム間に正負の電極が隔膜を介して配置されることで1つの電池セル(単セル)が構成され、かかる単セルを複数積層してセルスタックが構成される。
そして、セルスタックの電池セルの正極側には、正極電解液を収容した正極電解液タンクから正極電解液が供給され、また、負極側には、負極電解液を収容した負極電解液タンクから負極電解液が供給され、正負の電極上で酸化反応と還元反応が同時に進められることで充放電が行われる。このとき、正負の電解液は、循環ポンプを使用し電解液タンクと電池セルとの間で循環させている。
こうして、レドックスフロー電池は、電池セルへ循環ポンプで電解液を送給する構成であり、高出力化のためには、電池の内部抵抗が小さく、また、電極へ電解液を送液する際の圧力損失を小さくするのが望ましい。
【0004】
ここで、セルスタックにおける電極への電解液の供給は、電極を配設したセルフレームに電解液が流通する流路を形成することにより行われている。
例えば、特許文献1や特許文献2で開示されているように、セルフレームに貫通して形成されたマニホールド、及び、セルフレームの面に形成されたスリットによってセルフレームにおいて電解液の流路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開WO2019/234867号公報
【特許文献2】特開2020-129501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1や特許文献2に開示されているセルフレームにおける流路構造では、マニホールドより小径な流路幅の略L字状のスリットに電解液を流通させるものである。特許文献1や特許文献2のように電解液の流路となるスリットを小径としたり、また、スリット長を長くしたりするものでは、スリット内における電解液の電気抵抗を大きくできることによりシャント電流の損失の低減化が可能となる。しかしながら、スリットを小径とし、また、スリット長を長くすると、圧力損失が大きくなるから、循環ポンプの損失が大きくなり、電池効率、エネルギ効率が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できるセルフレーム、セルスタック及びレドックスフロー電池の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明のセルフレームは、電極が配設する電極配設部の周囲に設けた枠体において表裏を貫通するマニホールド、及び、当該マニホールドと前記電極配設部との間を連通し電解液が流通する流路を有し、前記流路を前記マニホールド側から前記電極配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって幅広に形成し、その途中に前記電解液の逆流を防止する逆流防止部を設けたものである。
【0009】
ここで、上記電極配設部は、双極板を介して正負の電極を収容する構造であってもよいし、電極を枠体一体に設けている構造であってもよい。
また、上記枠体は、電極配設部の周囲に設けられ、通常、全体が略矩形状を成し、例えば、塩化ビニル等で形成されるものである。
上記枠体のマニホールドは、互いに対向する2辺を同一長とした4辺を有する略長方形状に形成されたセルフレームの枠体において厚み(表裏)を貫通して形成された貫通孔であり、4箇所の貫通孔、即ち、正極電解液を正極に供給する正極電解液供給用の貫通孔、正極を通過した正極電解液を外部に排出する正極電解液排出用の貫通孔、負極電解液を負極に供給する負極電解液供給用の貫通孔、及び、負極を通過した負極電解液を外部に排出する負極電解液排出用の貫通孔である。例えば、枠体の角部、即ち、隣接する2辺が交差することによって形成される一方の対向する2角部と他方の対向する2角部との計4角部に設けられ、一方の対向する2角部に設けられたマニホールドには、正負の電解液の一方が流通し、他方の対向する2角部に設けられたマニホールドには正負の電解液の他方が流通する。その形状は特に問われないが、通常、真円等の円形状に形成されるものである。
【0010】
上記流路は、マニホールドと電極配設部側との間を連通して電解液が流通する溝状の凹部であり、枠体の正極電解液が流通する正極側及び負極電解液が流通する負極側に形成され、電極配設部を介して枠体の上下に形成されるものである。そして、この流路は、流路の枠体のマニホールド側から電極配設部を設けた内周の幅に向かって幅広に形成されたものである。
上記流路の枠体のマニホールド側から電極配設部を設けた内周の幅に向かって幅広とは、電極配設部の周囲の枠体の内周の幅と一致する幅に流路が徐々に拡幅されていることにより、電極への供給側ではマニホールドからの電解液が拡散されて電極配設部の電極に供給され、また、それと対向側の電極を通過した電解液の排出側では、電極を通過した電解液が収束されてマニホールドに案内されることを意味し、枠体の内周の幅に向かってその両幅と一致する幅に流路が拡張されていれば、マニホールドと電極配設部との連通間で連続的に拡幅されていることまでは要求されず、マニホールド側で幅が一定の部分があってもよい。ここで、上記枠体の内周の幅とは、枠体の内周の対向する1対の内周端縁間を意味し、換言すると、枠体の内周に設けた電極配設部の横幅である。なお、この幅は、セルフレームを電解液が下から上に流通するときのその上下方向に対して直角方向である左右方向の幅を意味する。
【0011】
また、上記逆流防止部は、流路の途中に設けられ電解液の逆流を防止するものであればよく、例えば、その流路の溝内に弁膜や逆止弁を設けてもよいし、流路に段差、溝、傾斜等を設けるものであってもよいし、枠体の面から切り起こして起立片を形成し、その起立片の枠体との接続側の基端部とは反対側の自由端部側が開口し、起立片の下方に行き止まり部を形成することで構成してもよい。
【0012】
請求項2の発明のセルフレームの前記流路は、前記枠体の内周の幅方向と並行する前記枠体の下辺側から前記電極配設部に向かって溝底を上昇させているものであり、隣接する隔膜との間の電解液供給側における電解液を下から上に流通させる流路の断面積を、下側から電極配設部との境界の内周端縁部に向かって細くするものである。
上記流路の溝底を上昇とは、電解液供給側の流路の溝底が徐々に浅くなるように傾斜していることを意味する。なお、枠体の辺の上下方向は、電解液が下から上に流通するその上下方向に一致する。
【0013】
請求項3の発明のセルフレームの前記流路は、前記マニホールドとの接続側にリブが形成されているものである。
上記リブは、マニホールド付近に位置し、セルフレーム1の補強機能や、マニホールドを流通する電解液等の内圧で隣接する隔膜が流路に入り込むのを防止する機能や、隔膜を押える機能を有するものであれば、その形状、形態は特に問われず、例えば、直線状の突条に形成され、1つであってもよいし、複数設けてもよい。
【0014】
請求項4の発明のセルフレームの前記逆流防止部は、前記枠体の面から切り起こして起立片を形成することにより、その起立片の前記枠体との接続側の基端部とは反対側の自由端部側が開口して前記起立片の下方に行き止まり部を形成したものである。
上記逆流防止部は、前記枠体の面から切り起こして形成し、前記枠体と繋がっている一方の端部を基端部とし、反対側の他端部を自由端部とした起立片と、起立片の下方に形成された行き止まり部とから構成され、例えば、基端部側を折曲して基端部側から自由端部側に向かって上方に傾斜するように塑性変形させることにより、基端部から傾斜した起立片が形成され、その自由端部側が開口して起立片の下方に行き止まり部が形成される。これにより、電解液を電極に供給する供給側流路においては、起立片の一端部側の基端部が上流側、他端部側の自由端部側が下流側に対応し、マニホールド側から電極側に向かって電解液が供給される電解液の流通方向では、起立片の一端部側の基端部が枠体に接続していることにより、その起立片の上面を電解液が流通する。一方で、電極配設部側から逆流しようとする電解液は、起立片の自由端部側が開口していることにより、その開口に電解液が流れ込み、そこで行き止まるから、電解液の逆流が防止される。電解液を排出する排出側流路においては、起立片の一端部側の基端部が上流側、他端部側の自由端部側が下流側に対応し、電極側からマニホールド側に向かって電解液が排出される電解液の流通方向では、起立片の一端部側の基端部が枠体に接続していることにより、その起立片の上面を電解液が流通する。一方で、マニホールド側から逆流しようとする電解液は、起立片の自由端部側が開口していることにより、その開口に電解液が流れ込み、そこで行き止まるから、電解液の逆流が防止される。
【0015】
請求項5の発明のセルフレームの前記流路は、前記マニホールドから前記枠体の内周の幅方向に並行に延び前記マニホールドの径よりも幅狭な直線流路と、前記直線流路から前記枠体の内周の幅に向かって幅広くした幅広流路とから構成されているものである。
【0016】
請求項6の発明のセルスタックは、正負の電極と、前記政府の電極の間に配置される隔膜と、前記正負の電極が配設する電極配設部及び前記電極配設部の周囲に設けた枠体からなるセルフレームとから構成される電池セルを複数積層してなり、前記セルフレームは、前記電極配設部の周囲に設けた前記枠体において表裏を貫通するマニホールド、及び、当該マニホールドと前記電極配設部との間を連通し電解液が流通する流路を有し、前記流路を前記マニホールド側から前記電極配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって幅広に形成し、その途中に前記電解液の逆流を防止する逆流防止部を設けたものである。
【0017】
請求項7の発明のレドックスフロー電池は、正負の電極と、前記政府の電極の間に配置される隔膜と、前記正負の電極が配設する電極配設部及び前記電極配設部の周囲に設けた枠体からなるセルフレームとから構成される電池セルを複数積層してなるセルスタックを有し、前記電極配設部の周囲に設けた前記枠体において表裏を貫通するマニホールド、及び、当該マニホールドと前記電極配設部との間を連通し電解液が流通する流路を有し、前記流路を前記マニホールド側から前記電極配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって幅広に形成し、その途中に前記電解液の逆流を防止する逆流防止部を設けたものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係るセルフレームによれば、電極配設部の周囲に設けた枠体に形成されマニホールド及び前記電極配設部間を連通し電解液を流通させる溝状の流路は、前記マニホールド側から前記電極部配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって拡げられている。
したがって、マニホールドと電極配設部と間で電解液が流通する流路は、マニホールド側から電極配設部の周囲の枠体の内周の幅と一致する幅広に拡幅されていることにより、流路幅がマニホールドより径大となり、また、流路長も短くなるから、そこを流通する電解液の流体抵抗を小さくすることができ、セルフレームに流通させる電解液の圧力損失の低減化を可能とする。そのうえ、その流路の途中には電解液の逆流を防止する逆流防止部を設けたことで、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
したがって、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できる。
【0019】
請求項2の発明に係るセルフレームによれば、前記流路が、前記枠内の内周の幅方向と並行する前記枠体の下辺側から前記電極配設部に向かって徐々に溝底を上昇させていることから、電解液を電極に供給する供給側流路において、隣接する隔膜と間で電解液を流通させる流路の断面積が枠体の下辺側から電極配設部に向かって細くなる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、電極に供給する電解液の拡散性を高めることができ、電極へ効率的に電解液を供給できる。
【0020】
請求項3の発明に係るセルフレームによれば、前記流路に、前記マニホールドとの接続側にリブが形成されていることから、マニホールドの周囲が補強され、マニホールドを流通する電解液の内圧によるセルフレームの変形が防止される。また、セルスタックにおいて隣接するセルフレーム間に配置される隔膜を押えて隔膜の位置ずれを防止することが可能となる。更に、マニホールドを流通する電解液の内圧により隣接する隔膜が流路に落ち込むのを防止できる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、セルスタックの耐久性を向上できる。
【0021】
請求項4の発明に係るセルフレームによれば、前記逆流防止部は、前記枠体の面から切り起こして起立片を形成することにより、その起立片の前記枠体との接続側の基端部とは反対側の自由端部側を開口し前記起立片の下方に行き止まり部を形成したものであることから、上流から下流に向かって流通する電解液の重み等で起立片の起立状態を変化させることができ、上流から下流に向かって電解液が多く流れるとき起立片の起立状態が抑えられて流体抵抗を小さくできる一方、起立片の自由端部側が開口していることで、逆流しようとする電解液はその開口に流れ込んでそこで行き止まるから電解液の逆流を阻止できる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化の両立効果を向上できる。
【0022】
請求項5の発明に係るセルフレームによれば、前記流路は、前記マニホールドから前記枠体の内周の幅方向に並行に延び前記マニホールドの径よりも幅狭な直線流路と前記直線流路から前記枠体の内周の幅に向かって幅広とした幅広流路とから構成されていることから、請求項1に記載の効果に加えて、マニホールドを流通する電解液の内圧等によるマニホールド周囲のセルフレームの変形や、電解液の漏れを抑えることができる。また、直線流路に逆流防止部を設けることによって、電解液流通時の流体抵抗を小さく抑えながら逆流防止部を形成できる。
【0023】
請求項6の発明に係るセルスタックによれば、それを構成する各セルフレームにおいて、電極配設部の周囲に設けた枠体に形成されマニホールド及び前記電極配設部間を連通し電解液を流通させる溝状の流路は、前記マニホールド側から前記電極部配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって拡げられている。
したがって、マニホールドと電極配設部と間で電解液が流通する流路は、マニホールド側から電極配設部の周囲の枠体の内周の幅と一致する幅広に拡幅されていることにより、流路幅がマニホールドより径大となり、また、流路長も短くなるから、そこを流通する電解液の流体抵抗を小さくすることができ、セルフレームに流通させる電解液の圧力損失の低減化を可能とする。そのうえ、その流路の途中には電解液の逆流を防止する逆流防止部を設けたことで、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
したがって、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できる。
【0024】
請求項7の発明に係るレドックスフロー電池は、それを構成するセルスタックの各セルフレームにおいて、電極配設部の周囲に設けた枠体に形成されマニホールド及び前記電極配設部間を連通し電解液を流通させる溝状の流路は、前記マニホールド側から前記電極部配設部の周囲の前記枠体の内周の幅に向かって拡げられている。
したがって、マニホールドと電極配設部と間で電解液が流通する流路は、マニホールド側から電極配設部の周囲の枠体の内周の幅と一致する幅広に拡幅されていることにより、流路幅がマニホールドより径大となり、また、流路長も短くなるから、そこを流通する電解液の流体抵抗を小さくすることができ、セルフレームに流通させる電解液の圧力損失の低減化を可能とする。そのうえ、その流路の途中には電解液の逆流を防止する逆流防止部を設けたことで、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
したがって、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態のレドックスフロー電池のセルスタックの構成を説明する部分構成図である。
【
図2】
図2は本発明の実施の形態のセルフレームを説明する構成図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態のセルフレームの一方面(正極面)側の説明図である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態のセルフレームの他方面(負極面)側の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0027】
[実施の形態]
まず、レドックスフロー電池の概略構成について説明する。
レドックスフロー電池は、活物質イオンが溶解した電解液のタンク、正負の電極と正負極を隔てる隔膜103とを備え電解液を反応させて充放電を行う電池セル部(流通型電解槽)、及び、タンクと電池セル部との間で電解液を循環させるポンプ、配管等から構成されており、正極側の電極に正極電解液を供給すると共に、負極側の電極に負極電解液を供給し、それら正負の電極上で酸化反応と還元反応を同時に進めることによって充放電を行うものである。
【0028】
電池反応を行う電池セル部は、実用的な電圧を得るために、電池セル(単セル)が複数個積層されたスタックから構成される。電池セルは、負極と正極の電極によりイオン交換膜からなる隔膜103を挟んで構成されおり、それぞれの電極に活物質を含んだ電解液がポンプによってタンクから供給されることにより、酸化還元反応を生じることで充放電を行う。
【0029】
電解液としては、特に限定されず、酸化還元反応を行うイオン性活物質を電気伝導する水系または非水系の溶媒に溶解させた溶液(懸濁、分散液を含み、液状またはスラリー状を問わない)が使用され、例えば、鉄-クロム系(Fe/Cr系)、バナジウム系(V/V系)、チタン-マンガン系(Ti/Mn系)等の金属イオン活物質を水系溶媒(例えば、硫酸、塩酸等の無機溶媒)に含んだ溶液や、臭素、ヨウ素、キノン系の有機物等の非金属イオンを活物質として水系溶媒(例えば、硫酸、塩酸等の無機溶媒)に含んだ溶液や、金属錯体系、ポリ酸等の金属イオン活物質を非水系溶媒(例えば、有機物溶媒)に含んだ溶液や、ラジカル系、キノン系の有機物等を活物質として水系溶媒(例えば、有機物溶媒)に含んだ溶液が使用できる。
【0030】
活物質がバナジウム系(V/V系)の電解液としては、例えば、硫酸バナジウム水溶液を用いることができ、バナジウム系電解液の場合には、充電時に正極に電流が流入して正極電解液の4価のVイオンが5価に酸化され、負極側の負極電解液の3価のVイオンが2価に還元されることにより充電される。放電時には、その逆の反応が生じ、電力として取り出される。
【0031】
電池セル部を形成するセルスタックは、
図1に示すように、正負の電極101と、正負の電極101に供給する電解液を流通させる流路を形成したセルフレーム1と、正負の電極101間に介在する隔膜103とを有する電池セル(最小単位の単セル)を繰り返し積層することにより構成されている。
【0032】
隔膜103を挟んで正極と負極に分けられる電極101は、不活性電極であり、炭素材料(カーボン材)が使用され、例えば、カーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー等の多孔質の炭素繊維集合体が用いられる。炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維等が使用される。しかし、粒状、球状、タブレット状、ペレット状等の炭素材料を使用することも可能である。
【0033】
セルフレーム1は、後述するように、内周に正極及び負極の電極101が配設される電極配設部105を有し、電極配設部105の周囲に樹脂製の枠体5が形成されたものであり、その枠体5には、正負の電極に供給する電解液を流通させる流路を設けている。
隔膜103としては、例えば、イオン交換膜が使用される。隔膜103は、電極101の面積以上であればよいが、セルフレーム1の面積と略同等面積に対応させる場合には、セルフレーム1のマニホールド11,12,21,22に対応して電解液が流通する孔が設けられる。なお、セルフレーム1の面積と略同等面積に対応させる場合には、隔膜103の周囲に図示しない保護材(支持材)を配置し、セルフレーム1の流路を保護してもよい。
【0034】
なお、通常、電池セル部を形成するセルスタックにおいては、電池セル(単セル)を複数積層したときの積層方向の両側には、正負の電極101と導通される1対の集電板が配置される。集電板は、電池セルと外部機器との間で電気の入出力を行うための導電部材である。なお、この集電板には、例えば、インバータ等の外部機器にリード線等を介して接続し、セルスタックと外部電源を電気的に接続するための通電端子(図示せず)が設けられる。
また、電池セルを複数積層し、その積層方向の両側に1対の集電板を配置した積層体は、例えば、1対のエンドプレートで挟み込み、締付治具を用いて締め付けることによりまとめることが可能である。このときの締付治具としては、例えば、積層した電池セルの周囲で1対のエンドプレート相互間を接続する締付軸と、その締付軸の両端に螺合されるナット等から構成される。そして、このような締め付けによってセルスタックを組み立てる場合には、通常、各セルフレーム1間に、電解液の漏洩を抑制するため、Oリングや平パッキン等の環状のシール部材が配置される。また、タンクから圧送されてきた電解液をセルフレーム1に送給し、また、セルフレーム1から排出された電解液をタンクに送排する給排板が適宜積層間に介在される。
しかし、本発明を実施する場合には、積層した電池セルを一体に組み立てることができれば、その手段は特に限定されない。
【0035】
ここで、こうしたレドックスフロー電池の電池セルを構成しているセルフレーム1の詳細を、
図2乃至
図5を参照して、説明する。
本実施の形態に係るセルフレーム1は、枠体5の中央部に電極101が配設する電極配設部105を有するものであり、全辺の対向する2辺を同一長さとした4辺E1,E2,E3,E4を有する略矩形状に形成されたものである。
【0036】
電極配設部105は、正極及び負極の電極101を配設し、正極及び負極間で電解液を混合させない構成であれば特に問われず、例えば、双極板を介して正負の電極101を配設する構造とすることもできるし、枠体5に電極101を一体に設けてもよい。
セルフレーム1の枠体5は、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素、エポキシ等の樹脂やゴム等の絶縁材料からなり、電解液に対する耐性(耐薬品性、耐酸性等)を有するものが使用される。
【0037】
本実施の形態のセルフレーム1は、電極配設部105の周囲の枠体5において、その矩形状の四隅の角部に、表裏を貫通した(厚みを貫通した)円形状の貫通孔であるマニホールド11,12,21,22が形成されている。具体的には、正極電解液が流通する正極側給液用マニホールド11及び正極側排液用マニホールド21と、負極電解液が流通する負極側給液用マニホールド12及び負極側排液用マニホールド22とを設けている。
これより、複数のセルフレーム1を積層した状態では、各セルフレーム1の枠体5のマニホールド11,12,21,22が連続した状態となることで、これらマニホールド11,12,21,22により積層方向に電解液の流路が形成される。
【0038】
なお、本実施の形態において、正極側給液用マニホールド11、負極側給液用マニホールド12、正極側排液用マニホールド21、負極側排液用マニホールド22は、何れも同一寸法形状に形成され、また、セルフレーム1の仮想縦中心線(図示せず)及び仮想横中心線(図示せず)を対称軸として、互いに左右及び上下の対称位置関係にある。正極側給液用マニホールド11及び正極側排液用マニホールド21はセルフレーム1の対角関係にあり、負極側給液用マニホールド12及び負極側排液用マニホールド22もセルフレーム1の他の対角関係にある。
【0039】
即ち、矩形状のセルフレーム1の対角する2角部(互いに隣接する2辺E1及びE4が交差することによって形成される角部と、互いに隣接する2辺E2とE3とが交差することによって形成される角部)に正極側給液用マニホールド11及び正極側排液用マニホールド21が位置し、別の対角する2角部(互いに隣接する2辺E1及びE2が交差することによって形成される角部と、互いに隣接する2辺E3とE4とが交差することによって形成される角部)に負極側給液用マニホールド12及び負極側排液用マニホールド22が位置する。
矩形状のセルフレーム1の下部において左右に対向する2角部に正極側給液用マニホールド11及び負極側給液用マニホールド12が位置し、上部において対向する2角部に正極側排液用マニホールド21及び負極側排液用マニホールド22が位置する。即ち、正極側給液用マニホールド11と負極側給液用マニホールド12とはセルフレーム1の縦中心線(図示しない)を対称軸として対称位置関係にあり、正極側排液用マニホールド21及び負極側排液用マニホールド22もセルフレーム1の縦中心線(図示しない)を対称軸として対称位置関係にある。
矩形状のセルフレーム1の左右の一方で上下に対向する2角部に正極側給液用マニホールド11及び負極側排液用マニホールド22が位置し、左右の他方で上下に対向する2角部に負極側給液用マニホールド12及び正極側排液用マニホールド21が位置する。
【0040】
また、セルフレーム1の枠体5の正極側の面には、電極配設部105と正極側給液用マニホールド11と間でそれらを連通する溝状(凹部状)の正極側導入流路31が形成され、更に、電極配設部105と正極側排液用マニホールド21との間にもそれらを連通する溝状(凹部)の正極側排出流路41が形成されている。
同様に、枠体5の負極側の面にも、電極配設部105と負極側給液用マニホールド12との間でそれらを連通する溝状(凹部状)の負極側導入流路32が形成され、また、電極配設部105と負極側排液用マニホールド22との間でそれらを連通する溝状の負極側排出流路42が形成されている。
【0041】
これより、正極電解液を収容した正極電解液タンクからポンプによって送給される正極電解液は、管を介して、セルスタックの両側端部に設けられる電解液入出力部の流入口を通って各セルフレーム1の枠体5に形成された正極側給液用マニホールド11からなる流路を流通し、更に、その正極側給液用マニホールド11から各セルフレーム1の枠体5に形成された正極側給液用マニホールド11と電極配設部105とを連通する溝状の正極側導入流路31に流れ込み、正極側導入流路31を流通する。そして、正極側導入流路31を流通した正極電解液は、セルフレーム1の電極配設部105に配設する正極電極101に流れ込み、正極電極101上で電池反応する。また、正極電極101を下側から上側に通過した正極電解液は、各セルフレーム1の枠体5に形成された正極側排液用マニホールド21と電極配設部105とを連通する溝状の正極側排出流路41を流通し、正極側排液用マニホールド21から排出される。正極側排液用マニホールド21から排出された正極電解液は各セルフレーム1の枠体5に形成された正極側排液用マニホールド21からなる流路を流通し、電解液入出力部の流出口を通って正極電解液タンクに戻される。
【0042】
同様に、負極電解液を収容した負極電解液タンクからポンプによって送給される負極電解液においても、管を介して、セルスタックの両側端部に設けられる電解液入出力部の流入口を通って各セルフレーム1の枠体5に形成された負極側給液用マニホールド12からなる流路を流通し、更に、その負極側給液用マニホールド12から、各セルフレーム1の枠体5に形成された負極側給液用マニホールド12と電極配設部105とを連通する溝状の負極側導入流路32に流れ込み、負極側導入流路32を流通する。そして、負極側導入流路32を流通した負極電解液は、セルフレーム1の電極配設部105に配設する負極電極101に流れ込み、負極電極101上で電池反応する。また、負極電極101を下側から上側に通過した電解液は、各セルフレーム1の枠体5に形成された負極側排液用マニホールド22と電極配設部105とを連通する溝状の負極側排出流路42を流通し、負極側排液用マニホールド22から排出される。負極側排液用マニホールド22から排出された負極電解液は各セルフレーム1の枠体5に形成された負極側排液用マニホールド22からなる流路を流通し、電解液入出力部の流出口を通って負極電解液タンクに戻される。
【0043】
なお、正極側給液用マニホールド11と負極側給液用マニホールド12とは、正極電解液か負極電解液の流路の違いであり、基本的構造は同一であるから、以下、特段に区別しないときは、単に給液用マニホールド11,12とする。正極側排液用マニホールド21と負極側排液用マニホールド22についても、同様であるから、以下、特段に区別しないときは、単に排液用マニホールド21,22とする。
また、正極側導入流路31と負極側導入流路32についても、正極電解液か負極電解液の流路の違いであり、基本的構造は同一であるから、以下、特段に区別しないときは、単に導入流路31,32とする。正極側排出流路41と負極側排出流路42についても、同様であるから、以下、特段に区別しないときは、単に排出流路41,42とする。
【0044】
ここで、給液用マニホールド11,12と電極配設部105の間を連通する溝状の導入流路31,32、及び、排液用マニホールド21,22と電極配設部105の間を繋ぐ溝状の排出流路41,42について更に詳しく説明する。
【0045】
本実施の形態の枠体5の正極及び負極の両面に形成された溝状の導入流路31,32は、給液用マニホールド11,12から電極配設部105の幅方向に並行に延びる導入直線流路33と、直線流路33から連続し電極配設部105の横幅、即ち、電極配設部105を設けた枠体5の内周の対向する内周端縁53間の横幅まで下側から上側に向かって略テーパ状に流路を幅広くした導入幅広流路71とから形成されている。
【0046】
本実施の形態において、給液用マニホールド11,12と繋がる溝状の導入直線流路33は、その流路を形成する両側の1対の流路形成壁33a,33bが、電極配設部105の幅方向と並行に直線状に延びているもの、即ち、一方の給液用マニホールド11,12側から対向する他方の給液用マニホールド12,11側に向かって互いに平行して水平方向(横方向)に直線状に延びているものであり、略一定の流路幅のものである。
これより、給液用マニホールド11,12から導入直線流路33に流入した電解液は、一方の給液用マニホールド11,12側から対向する他方の給液用マニホールド12,11側に向かって案内される。
【0047】
なお、本実施の形態の導入直線流路33の長さ、即ち、一方の給液用マニホールド11,12側から対向する他方の給液用マニホールド12,11側に向かって延びている長さは、電極配設部105を設けた枠体5の対向する内周端縁53間の横幅W2の1/10~1/5、好ましくは、1/9~1/6程度の長さである。
また、導入直線流路33の幅、即ち、その流路を形成する両側の1対の流路形成壁33a,33b間の幅は、給液用マニホールド11,12の径よりも小さく幅狭に形成されている。
【0048】
ここで、本実施の形態の導入直線流路33には、給液用マニホールド11,12との接続端部に複数本のリブ151を形成している。これにより、給液用マニホールド11,12の周囲を補強し、給液用マニホールド11,12に流通する電解液の内圧によるセルフレーム1の変形を防止する。また、複数本のリブ151によって、セルスタック100において隣接するセルフレーム1間に配置される隔膜103を押え隔膜103の位置ずれを防止する。更に、電解液の内圧で流路31,32,41,42の凹部に隔膜103が落ち込むのを防止し、隔膜103の落ち込みよる損傷を防止し隔膜103を長持ちさせることができる。
【0049】
具体的に、本実施の形態のリブ151は、
図5(b)で示すように、導入直線流路33を複数に分割して突条に形成されており、給液用マニホールド11、12の周囲面よりも低い位置に形成された溝底に突設している。これより、導入直線流路33には、突条のリブ151による分割によって互いに平行な複数の分岐溝33cが形成されている。
このため、本実施の形態の導入直線流路33においては、給液用マニホールド11,12から導入された電解液が分岐溝33cに分岐して流通することで整流される。
なお、
図3乃至
図5においては、導入直線流路33を形成する流路形成壁33a,33bと略同じ高さで3本の突条のリブ151が導入直線流路33に形成されていることにより、給液用マニホールド11、12を形成する周囲壁の高さの1/2以下の深さの分岐溝33cが互いに並行に4本形成されている。よって、給液用マニホールド11,12から導入された電解液が四股に分岐して導入直線流路33の分岐溝33cに流通することになる。しかし、本発明を実施する場合には、3本のリブ151に限定されず、1本または2本、或いは4本以上であってもよい。
【0050】
そして、本実施の形態の導入直線流路33には、リブ151が設けられた給液用マニホールド11、12側とは反対側で、電解液の逆流を阻止する導入側逆流防止部60が設けられている。
導入側逆流防止部60は、
図2及び
図5(a)で示すように、分岐溝33cよりも更に深い溝底の深溝66と、その深溝66を覆うように形成された起立片65とから構成されている。起立片65は、枠体5の一部をスリット状に切り欠いて切り起こしたものであり、溝65の深さ分の厚みよりも薄厚の矩形状に形成されたものである。この起立片65は、矩形状の一辺の端部が枠体5に繋がったままの薄い厚みの切片であり、枠体5との接続側の基端部65a側を折曲して基端部65a側からそれとは反対側の自由端部65側に向かって上方に傾斜するように塑性変形させることにより、しかも、基端部65a側より自由端部65b側の厚みを若干薄くしていることにより、自由端部65b側が基端部65a側よりも立ち上がり(起立し)、基端部65a側から自由端部65b側に向かって上方に傾斜して起立する。
【0051】
ここで、起立片65の基端部65a側は給液用マニホールド11,12側から電極部配設部105側に向かって電解液が流れるときの上流側であってリブ151形成側であり、反対側の自由端部65b側は下流側であって導入幅広流路34側である。
そして、本実施の形態の導入側逆流防止部60は、その深溝66の溝底が、深溝66及び起立片65を設けた導入直線流路33に続く導入側幅広流路34の溝底34cよりも深く、深溝66の溝底の上方には導入側幅広流路34側に向かって上方に傾斜している起立片65が配設している。このとき、深溝66の溝底の上方に配設した起立片65は、その基端部65側が深溝66を形成する周壁に接続している一方、反対側の自由端部65b側は、導入側幅広流路34とは接触することなく、起立片65と深溝66間で開口67が形成されている。
【0052】
こうして、本実施の形態では、導入直線流路33において、枠体5から導入側幅広流路34側に向かって斜め上方に切り起こして起立片65を形成し、また、その下方に、導入側幅広流路34の溝底34cよりも深い深溝66を設け、起立片65の基端部65aでは深溝66を形成している周囲壁と連続し起立片65によって溝の開口が閉じられていることにより、分岐溝33cから導入側逆流防止部60に流れ込んだ電解液は、起立片65の上面を流通し、続く導入幅広流路34に流れ込む。
【0053】
一方で、起立片65の自由端部65b側、即ち、導入側幅広流路34側では、起立片65と深溝66間で開口67を形成したことにより、導入側幅広流路34側からの逆流する電解液は、導入直線流路33の起立片65の上面を通過して給液用マニホールド11,12側に流れることなく、起立片65と深溝66間の開口67に流れ、深溝66で行き止まることから、導入側幅広流路34側から給液用マニホールド11,12側に電解液が逆流するのが防止される。
【0054】
また、本実施の形態において、略一定の流路幅の導入直線流路33から連続して形成された導入幅広流路34は、導入直線流路33よりも流路幅を広くして、電極配設部105の周囲の枠体5の内周の対向する内周端縁53間の横幅まで広げ、導入直線流路33からの電解液を拡散させて電極配設部105の電極101に導く拡散路である。
【0055】
本実施の形態の溝状(凹部状)の導入幅広流路34は、それを形成する両側の1対の流路形成壁34a,34bのうちの一方の流路形成壁34aが、導入直線流路33を形成する両側の1対の流路形成壁33a,33bのうちの電極配設部105側から遠い方の流路形成壁33aと連続し、他方の流路形成壁34bが、導入直線流路33において電極配設部105側に近い方の他方の流路形成壁33bに連続している。
【0056】
導入幅広流路34の一方の流路形成壁34aは、電極配設部105の幅と並行し、一方の給液用マニホールド11、12側からその反対側の他方の給液用マニホールド12、11側に向かって導入直線流路33の流路形成壁33aから連続して直線状に延びる水平部34asと、水平部34asからカーブし、更に電極配設部105の周囲の枠体5の内周において左右方向で対向する1対の内周端縁53の一方に向かって直線状に延びる傾斜部34acとからなる。
【0057】
また、他方の流路形成壁34bは、導入直線流路33の流路形成壁33bに対して鋭角状に形成されて、即ち、導入直線流路33の流路形成壁33bから鋭角状に折れ、電極配設部105の周囲の枠体5の内周において左右方向で対向する1対の内周端縁53の他方に向かって直線状に延びたものであり、電極配設部105の幅と並行に水平に延びる流路形成壁33bに対して斜めに形成したものである。
そして、導入幅広流路34の一方の流路形成壁34aの傾斜部34acと、他方の流路形成壁34bとは、互いに対向し、電極配設部105側に向かってそれら対向間隔を徐々に拡げたテーパ状を形成している。即ち、導入幅広流路34では、電極配設部105の幅方向と並行する枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって1対の流路形成壁34a,34b間の流路幅が幅広に形成されている。
【0058】
更に、本実施の形態では、
図5(c)に示すように、導入幅広流路34は、その溝底34cが電極配設部105の幅方向と並行する枠体5の下辺E1側から電極配設部105側の内周端縁に向かって上昇、即ち、電極配設部105側の内周端縁で溝底が最も浅くなるように傾斜している。これより、セルフレーム1と隔膜130の間でセルフレーム1の導入流路33,34を流通する電解液の流路の断面積が枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって徐々に細くなることから、電解液の流速が徐々に速くなることにより電極配設部105の電極101に供給される電解液の拡散性を高めることができる。故に、電極101に電解液を均一に供給できることになり、電池効率を高めることが可能となる。
【0059】
なお、例えば、導入幅広流路34は、その縦方向の最大長さL1、即ち、電極配設部105の左右方向に平行な水平部34as及び電極配設部105間の距離L1が、電極配設部105の周囲の枠体5の内周の左右方向に直角な上下方向で対向する1対の内周端縁間の縦幅L2の0.2~0.6倍、好ましくは、0.2~0.5倍の範囲内であり、また、枠体5の縦方向(上下方向)のフレーム幅の0.5~0.9倍、好ましくは、0.6~0.8倍の範囲内であり、更に、枠体5の内周の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の幅W2の0.1倍~0.4倍の範囲内である。なお、導入幅広流路34を形成する互いに対向してテーパを形成する流路形成壁34aの傾斜部34acと流路形成壁34bとの間で構成される導入幅広流路34の最大幅は、電極配設部105の周囲の枠体5の内周の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の幅W2と一致する。
【0060】
したがって、導入幅広流路34では、その流路の縦方向の最大幅L1が、例えば、枠体5の縦方向のフレーム幅の0.5~0.9倍、好ましくは、0.6~0.8倍の範囲内で短い流路長さであるも、その流路幅は、給液用マニホールド11,12の径よりも大きく広がって電極配設部105側に向かって略テーパ状に幅広であり、その最大幅が、枠体5の1対の内周端縁53間の幅W2と一致するから、導入直線流路33から流れ込んだ電解液が電極配設部105側に向かって拡散し、そこを流通する電解の流体抵抗は小さいものとなる。
【0061】
こうした導入直線流路33及び導入幅広流路34からなる導入流路31,32の構成によって、給液用マニホールド11,12から流入した電解液は、まず、導入流路31,32における給液用マニホールド11,12の径よりも狭い一定幅の導入直線流路33の分岐溝33cで分岐して流通し、続く導入側逆流防止部60に流れ込む。なお、給液用マニホールド11,12から導入直線流路33に流入した電解液の流れは、分岐してから、それらがまとめて導入側逆流防止部60に流れ込むことになる。導入側逆流防止部60においては深溝66の上側に起立片65が設けられ、給液用マニホールド11,12側とは反対側の端部、即ち、導入幅広流路34側の起立片65の自由端部65b側では深溝66と起立片65の間に開口67があるも、給液用マニホールド11,12側の起立片65の基端部65a側では、深溝66に起立片65が接続し、溝が閉じられている。これより、分岐溝33cから導入側逆流防止部60に流れ込んだ電解液は、起立片65の上面を流通し導入幅広流路34に流れ込む。なお、切り起こして形成された起立片65では、そこに流れ込む電解液の重み、流量、流速、内圧等で、起立状態を変化できるから、電解液は起立片65の上面をスムーズに通過して導入幅広流路34に流れ込むことができる。
【0062】
そして、導入直線流路33に続く導入幅広流路34では、それを形成している一方の流路形成壁34aが、導入直線流路33の流路形成壁33aから連続して電極配設部105の幅方向と並行に延びる水平部34as及び水平部34asからカーブして電極配設部105の周囲の枠体5の内周の左右方向で対向する1対の内周端縁53の一方に向かって直線状に延びる傾斜部34acから構成され、また、他方の流路形成壁34bが、導入直線流路33の流路形成壁33bから連続して鋭角状に折れ枠体5の内周面の1対の内周端縁53の他方に向かって直線状に延びている。これより、導入幅広流路34では、給液用マニホールド11,12の径よりも狭い一定幅の導入直線流路33よりも流路幅が広がっていることにより、導入直線流路33の起立片65を通過して導入幅広流路34に流れ込んだ電解液は、枠体5の幅方向、即ち、下から上に向かって流れる電解液の流通方向である上下方向に対して直角な幅方向で拡散して、電極配設部105に向かって流れ込む。
【0063】
こうして、本実施の形態のセルフレーム1では、導入幅広流路34が、最大で枠体5の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の幅まで広げられ、給液用マニホールド11,12の径よりも幅広な流路幅で、電極配設部105の幅方向に電解液を拡散して流通させるものであり、短い流路長であることから、少ない流体抵抗で電解液を流通させることができる。
また、導入側幅広流路34においてその流路形成壁34bの傾斜部34acがカーブしていることでも、電解液の向きを円滑に変えることができるから、流体抵抗を少なくてできる。
よって、少ない圧力損失でセルスタックと電解液タンクの間で電解液を循環でき、電解液タンクからセルスタックに電解液を送給するポンプの負荷も低減できる。故に、少ないポンプ負荷で電解液の流速を高めて電解液の反応効率を向上し、エネルギ効率を高めることができる。
【0064】
特に、本実施の形態では、導入幅広流路34の溝底34cを電極配設部105の幅方向と並行する枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって上昇させていることにより、セルフレーム1と隔膜130の間でセルフレーム1の導入流路33,34を流通する電解液の流路の断面積を枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって徐々に細くしている。これより、枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって電解液の流速を徐々に速くすることができるから、電極配設部105の電極101に供給する電解液の拡散性を高めることができ、電極配設部105の幅方向に電解液をより拡散させることが可能となる。即ち、電極101の幅方向に電解液をムラなく均一に供給できることになる。故に、電解液の反応効率を高めることが可能となる。
【0065】
しかも、導入幅広流路34では電極配設部105側に向かって電解液が拡散し、その最大幅が電極配設部105の周囲の枠体5の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の幅W2と一致していることで、電極配設部105の電極101の幅方向に対して均一に供給できることで、電極101の広範囲に均一に拡散、浸透させることが可能となる。そして、電極の広範囲で電池反応が均一に行われやすいので、電解液の反応効率を高くでき、また、内部抵抗を少なくできる。
したがって、レドックスフロー電池の出力を向上できる。
【0066】
更に、本実施の形態のセルフレーム1では、導入直線流路33に設けた導入側逆流防止部60において、枠体5から導入側幅広流路34側に向かって斜め上方に切り起こして起立片65を形成し、また、その下方に、導入側幅広流路34の溝底34cよりも深い深溝66を設け、導入幅広流路34側の起立片65の自由端部65bでは深溝66と起立片65の間に開口67が形成されていることにより、導入側幅広流路34側から逆流しようとする電解液は、深溝66と起立片65の間の開口67から深溝66に落ち込みそこで行き止まりとなり、起立片65の上面を通って給液用マニホールド11,12側に逆流することはない。特に、本実施の形態では、起立片65の反対側の自由端部65bは、その水平状態でも導入側幅広流路34とは接触することなくそれとの間に僅かに間隙を設けることで、導入側幅広流路34側から逆流しようとする電解液の流速、圧力が大きくなっても、起立片65の上面を逆流する電解液が流れないようにしている。
【0067】
よって、こうした導入側逆流防止部60の形成により、循環ポンプの圧力が低くなっても導入側幅広流路34側からの電解液が給液用マニホールド11,12側に逆流する事態は防止される。更に、起立片65の下方では、導入側幅広流路34の導入直線流路33側の溝底34cよりも深さのある深溝66が形成されていることで流路外に電解液が漏れる事態も防止される。
こうして本実施の形態では、電解液の逆流が防止できることで、シャント電流損失も少なく、逆流により短絡電流が電池セル間に流れにくいものでもある。
【0068】
そして、本実施の形態のセルフレーム1において、給液用マニホールド11,12から流入し、導入直線流路33及び導入幅広流路34からなる導入流路をセルフレーム1の下側から上側に流通して、電極配設部105の電極101の下部に流れ込んだ電解液は、電極101をその下側から上側に流通し、電極101の上部から導入流路31,32と対向する排出流路41,42に流れ込む。
【0069】
ここで、本実施の形態の排出流路41,42は、導入流路31,32と対称的な流路構造となっている。即ち、枠体5の表裏面に形成され、排液用マニホールド21,22と電極配設部105側とを連通する溝状の排出流路41,42は、排液用マニホールド21,22から電極配設部105の幅方向に並行に延びる排出直線流路33と、排出直線流路33から連続し電極配設部105の周囲の枠体5の内周の対向する内周端縁53間の横幅まで、即ち、上側から下側に向かって略テーパ状に流路を幅広くした排出幅広流路44とから形成されている。電解液の流通方向からすれば、下側から上側に向かってテーパ状に流路を幅狭く収束した排出幅広流路44と、排出幅広流路44から連続し、排出幅広流路44からの電解液を排液用マニホールド21,22に導く排出直線流路43とから形成されている。
【0070】
枠体5の表裏面に形成された溝状の排出幅広流路44は、電極配設部105周囲の枠体5の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の横幅W2に対応する最大の流路幅から上側に向かって、即ち、枠体の上辺E3側に向かって徐々に幅狭くして、電極配設部105の電極101を通過した電解液を収束させて略一定の流路幅の排出直線流路43側に導く流路である。
【0071】
本実施の形態の排出幅広流路44においても、それを形成する両側の1対の流路形成壁44a,44bのうちの一方の流路形成壁44aが、排出直線流路43を形成する両側の1対の流路形成壁43a,43bのうちの電極配設部105側から遠い方の流路形成壁43aと連続し、他方の流路形成壁44bが、排出直線流路43において電極配設部105側に近い方の他方の流路形成壁44bと連続したものである。
【0072】
導入側幅広流路34のときと同様に、排出幅広流路44の一方の流路形成壁44aは、電極配設部105の幅と並行し、一方の排液用マニホールド21,22側からその反対側の他方の給液用マニホールド22、21側に向かって排出直線流路43の流路形成壁43aから連続して直線状に延びる水平部44asと、水平部44asからカーブし更に電極配設部105の周囲の枠体5の内周において左右方向で対向する1対の内周端縁53の一方に向かって直線状に延びる傾斜部44acとからなる。
即ち、排出幅広流路44の一方の流路形成壁44aは、電極配設部105の周囲の枠体5の左右方向で対向する1対の内周端縁53の一方側から上側に延び左右方向の中中央側に向かって直線状に斜めに延びてからカーブした傾斜部44acと、傾斜部44acから連続し、排液用マニホールド21,22側に向かって横方向に直線状に延びた水平部44asとからなる。
【0073】
また、排出幅広流路44の他方の流路形成壁44bは、排出直線流路43の流路形成壁43bに対して鋭角状に形成され、即ち、排出直線流路43の流路形成壁43bから鋭角状に折れ、電極配設部105の周囲の枠体5の内周において左右方向で対向する1対の内周端縁53の他方に向かって直線状に延びたものであり、電極配設部105の幅と並行に水平に延びる流路形成壁43bに対して斜めに形成したものである。
即ち、排出幅広流路44の他方の流路形成壁44bは、電極配設部105の横方向の他端部側から幅方向中中央側に向かって上側に直線状に斜めに延び、排出直線流路43の流路形成壁43bに対し鋭角状に形成されたものである。
【0074】
そして、排出幅広流路44の一方の流路形成壁44aの傾斜部44acと、他方の流路形成壁44bとは、互いに対向し、電極配設部105側に向かってそれら対向間隔を徐々に幅広くしたテーパ状を形成している。即ち、排出幅広流路44では、電極配設部105側から電極配設部105の幅方向と並行する枠体5の上辺E3側に向かって1対の流路形成壁44a,44b間の流路幅が徐々に幅狭くしたテーパ状に形成されている。なお、排出幅広流路44の流路幅も、導入幅広流路34の寸法と同様とされる。
【0075】
したがって、排出幅広流路44では、その最大幅が枠体5の1対の内周端縁53間の幅に対応し、電極配設部105側とは反対側の枠体5の上辺E3側に向かって略テーパ状に徐々に幅狭に形成されていることにより、電極配設部105の電極101の上部から排出幅広流路44に流れ込んだ電解液は、収束して排出直線流路43側に流れ込むことになるが、その最大幅が枠体5の1対の内周端縁53間の幅に対応し、流路が幅広であることで、また、流路が短いことにより、そこを流通する電解液の流体抵抗は小さいものとなる。
【0076】
また、本実施の形態において、排出幅広流路44から連続して形成され、排液用マニホールド21,22に接続する排出直線流路43は、その流路を形成する両側の1対の流路形成壁43a,43bが、電極配設部105の幅方向と並行に直線状に延びている、即ち、一方の排液用マニホールド21,22側から対向する他方の排液用マニホールド22,21側に向かって互いに平行して水平方向(横方向)に直線状に延びているものであり、略一定の流路幅のものである。
これより、排出幅広流路44から排出直線流路43に流入した電解液は、排液用マニホールド21,22側に向かって案内される。
【0077】
なお、本実施の形態の排出直線流路43の長さも、導入直線流路33の長さと同様であり、一方の排液用マニホールド21,22側から対向する他方の排液用マニホールド22,21側に向かって延びている長さは、電極配設部105を設けた枠体5の対向する内周端縁53間の横幅W2の1/10~1/5、好ましくは、1/9~1/6程度の長さである。
また、排出直線流路43の幅、即ち、その流路を形成する両側の1対の流路形成壁43a,43b間の幅は、排液用マニホールド21,22の径よりも小さく幅狭に形成されている。
【0078】
ここで、本実施の形態の排出直線流路43も、導入直線流路33と同様に、電解液の逆流を阻止する排出側逆流防止部70が設けられている。
排出側逆流防止部70は、導入側逆流防止部60と同様の構成であり、
図2及び
図5(a)で示すように、分岐溝43cよりも更に深い溝底の深溝76と、その深溝76を覆うように形成された起立片75とから構成されている。この起立片75も、枠体5の一部をスリット状に切り欠いて切り起こしたものであり、溝75の深さ分の厚みよりも薄厚の矩形状に形成されたものである。この起立片75は、矩形状の一辺の端部が枠体5に繋がったままの薄い厚みの切片であり、枠体5との接続側の基端部75a側を折曲して基端部75a側からそれとは反対側の自由端部75側に向かって上方に傾斜するように塑性変形させることにより、しかも、基端部75a側より自由端部75b側の厚みを若干薄くしていることにより、自由端部75b側が基端部75a側よりも立ち上がり(起立し)、基端部75a側から自由端部75b側に向かって上方に傾斜して起立する。
【0079】
排出側逆流防止部70において、起立片75の基端部65a側は、電極配設部105側から排液用マニホールド22,21側に向かって電解液が流れるときの上流側でであって排出幅広流路44側であり、反対側の自由端部75b側は下流側であってリブ151形成側である。
そして、本実施の形態の排出側逆流防止部70は、その深溝76の溝底が、排出側幅広流路44の排出直線流路43側の溝底よりも深く、深溝76の溝底の上方には排液用マニホールド22,21側に向かって上方に傾斜している起立片75が配設している。このとき、深溝76の上方に配設した起立片75は、その基端部75側が深溝76を形成する周壁に接続している一方、反対側の自由端部75b側は、リブ151形成側の分岐溝43c側とは接触することなく、起立片75と深溝76間で開口77が形成されている。
【0080】
こうして、本実施の形態では、排出直線流路43において、枠体5から排液用マニホールド22,21側に向かって斜め上方に切り起こして起立片75を形成し、また、その下方に、下流の分岐溝43cの溝底よりも深い深溝76を設け、起立片75の基端部75aでは深溝76を形成している周囲壁と連続し起立片75によって溝の開口が閉じられていることにより、排出側幅広流路44から排出直線流路43に流れ込んだ電解液は、起立片75の上面を流通し、続く分岐溝43cに流れ込む。
【0081】
一方で、排出側幅広流路44側とは反対側の起立片75の自由端部75b側では、起立片75と深溝76間で開口77を形成したことにより、排液用マニホールド22,21側からの逆流する電解液は、排出直線流路43の起立片75の上面を通過して排出側幅広流路44側に流れることなく、起立片75と深溝76間の開口77に流れ、深溝76で行き止まることから、排液用マニホールド22,21側から排出側幅広流路44側に電解液が逆流するのが防止される。
【0082】
また、本実施の形態の排出直線流路43においても、排液用マニホールド22,21と排出側逆流防止部70との間で、即ち、排液用マニホールド22,21との接続端部側で複数のリブ151を形成している。これにより、排液用マニホールド22,21の周囲を補強し、排液用マニホールド22,21を流通する電解液の内圧によるセルフレーム1の変形を防止している。また、セルスタックにおいて隣接するセルフレーム1間に配置される隔膜103が、電解液等の内圧で排出直線流路43の凹部に落ち込むことによる損傷を防止し隔膜103を長持ちさせることができる。更に、セルスタックにおいて隣接するセルフレーム1間に配置される隔膜10を押えて隔膜103の位置ずれを防止することができることにより、正負の電解液の混合による充放電率の低下を防止できる。
【0083】
排出直線流路43においても、リブ151は、
図5(b)で示すように、排出直線流路43を複数に分割して突条に形成されており、排液用マニホールド22,21の周囲面よりも低い位置に形成された溝底に突設している。これより、排出直線流路43には、突条のリブ151による分割によって互いに平行な複数の分岐溝43cが形成されている。
このため、本実施の形態の排出直線流路43においては、排出側逆流防止部70の起立片75の上面を通過した電解液が分岐溝43cに分岐して流通することで整流され、排液用マニホールド22,21から排出される。
なお、
図3乃至
図5においては、排出直線流路43を形成する流路形成壁43a,43bと略同じ高さで3本の突条のリブ151が排出直線流路43に形成されていることにより、排液用マニホールド22,21を形成する周囲壁の高さの1/2以下の深さの分岐溝43cが互いに並行に4本形成されている。よって、排出側逆流防止部70の起立片75の上面を通過した電解液が四股に分岐して排出直線流路43の分岐溝43cに流通することになる。
【0084】
こうしたセルフレーム1の表裏面に形成された排出側幅広流路44及び排出直線流路43からなる排出流路41,42の構成によって、電極配設部105の電極101を下側から上側に向かって通過した電解液は、最大幅が枠体5の1対の内周端縁53間の幅W2に対応する排出側幅広流路44に流れ込む。
排出側幅広流路44では、枠体5の1対の内周端縁53の一方から枠体5の上辺E3側に向かって斜めに直線状に延びてからカーブした傾斜部44acと傾斜部44acから連続して電極配設部105の幅方向と並行に延びる水平部44asとから構成され、また、他方の流路形成壁44bが、枠体5の1対の内周端縁53の他方から斜めに直線状に延びて排出直線流路43の流路形成壁43aに対して鋭角状に形成されている。これより、排出側幅広流路44では、排液用マニホールド22,21の径よりも幅広であるが、枠体5の1対の内周端縁53間の幅から枠体5の上辺E3側に向かって徐々に幅狭とする流路であることにより、電極101を通過した電解液は、排出側幅広流路44において収束しながら電極配設部105側から上側に向かって案内され、排出側幅広流路44に連続し排液用マニホールド22,21の径よりも狭い一定幅の排出直線流路43の排出側逆流防止部70に流れ込む。
【0085】
排出側逆流防止部70においては、深溝76の上方に起立片75が設けられ、排液用マニホールド22,21側の起立片75の自由端部75b側では深溝76と起立片75の間に開口77があるも、排出側幅広流路44側の基端部75a側では、深溝76に起立片75が接続し、溝が閉じられている。これより、排出側幅広流路44からの電解液は、起立片75の上面を流通し分岐溝43c側に流れ込む。なお、切り起こして形成された起立片75では、そこに流れ込む電解液の重み、流量、流速、内圧等で、起立状態を変化できるから、電解液は起立片75の上面をスムーズに通過して分岐溝43c側に流れ込むことができる。
そして、排出直線流路43の起立片75の上面を通過した電解液は、続く分岐溝43cで分岐し、それらがまとめて排液用マニホールド22,21から排出される。
【0086】
こうして、本実施の形態のセルフレーム1では、排出側幅広流路44においても、その最大幅が、電極配設部105の周囲の枠体5の内周の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の幅に対応し、排液用マニホールド22,21の径よりも幅広な流路幅で、また、短い流路長で、電極配設部105側から排液用マニホールド21,22に向かって流通させるものであることから、少ない流体抵抗で電解液を流通させることができる。
また、排出側幅広流路44でもその流路形成壁44bの傾斜部44acがカーブしていることで電解液の向きを円滑に変えることができるから、流体抵抗を少なくてできる。
【0087】
よって、少ない圧力損失でセルスタックと電解タンクの間で電解液を循環でき、電解液タンクからセルスタックに電解液を送給するポンプの負荷も低減できる。故に、少ないポンプ負荷で電解液の流速を高めて電解液の反応効率を向上し、エネルギ効率を高めることができる。
【0088】
しかも、排出側幅広流路44ではその最大幅が電極配設部105の周囲の枠体5の左右方向で対向する1対の内周端縁53間の幅W2と一致していることで、電極101での電池反応後の電解液が排出側幅広流路44に速やかに排出されることになるから充放電効率が向上する。
【0089】
更に、本実施の形態のセルフレーム1では、排出直線流路43に設けた排出側逆流防止部70において、枠体5から排液用マニホールド21,22側に向かって斜め上方に切り起こして起立片75を形成し、また、その下方に、分岐溝43cの溝底よりも深い深溝76を設け、排液用マニホールド21,22側の起立片75の自由端部75bでは深溝76と起立片75の間に開口77が形成されていることにより、排液用マニホールド21,22側から逆流しようとする電解液は、深溝76と起立片75の間の開口77から深溝76に落ち込みそこで行き止まりとなり、起立片75の上面を通って排出側幅広流路44側に逆流することはない。特に、本実施の形態では、起立片75の反対側の自由端部75bは、その水平状態でも分岐溝43cとは接触することなくそれとの間に僅かに間隙を設けることで、排液用マニホールド21,22側から逆流しようとする電解液の流速、圧力が大きくなっても、起立片75の上面を逆流する電解液が流れないようにしている。
【0090】
よって、こうした排出側逆流防止部70の形成により、循環ポンプの圧力が低くなっても排液用マニホールド21,22側からの電解液が排出側幅広流路44側に逆流する事態は防止される。更に、起立片75の下方では、分岐溝43cの溝底よりも深さのある深溝77が形成されていることで流路外に電解液が漏れる事態も防止される。
こうして、本実施の形態では、電解液の逆流が防止できることで、シャント電流損失も少ないものとなり、逆流により短絡電流が電池セル間に流れにくいものでもある。
【0091】
このように、本実施の形態のセルフレーム1によれば、電極配設部105の周囲の枠体5の表裏の各面に形成され、枠体5の四隅の角部に設けたマニホールド11,12,21,22と電極配設部105との間を連通し電解液を流通させる溝状の導入流路31,32及び排出流路41,42は、マニホールド11,12,21,22側から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅に向かって拡げられている。よって、導入流路31,32では、給液用マニホールド11,12の径よりも幅広な流路幅で、給液用マニホールド11,12から流入した電解液を電極配設部105の幅方向に向かって拡散して流通させるものであることから、少ない流体抵抗で電解液を流通させることができる。また、排出流路41,42でも、その最大幅が電極配設部105周囲の枠体5の内周の幅に対応し、排液用マニホールド22,21の径よりも幅広な流路幅で、電極配設部105側から排液用マニホールド21,22に向かって流通させるものであることから、少ない流体抵抗で電解液を流通させることができる。
よって、少ない圧力損失でセルスタック100の各セルフレーム1と電解液タンクの間で電解液を循環でき、電解液タンクからセルスタックに電解液を送給するポンプの負荷も少なくできる。故に、少ないポンプ負荷で電解液の流速を高めて電解液の反応効率を向上し、エネルギ効率を高めることができる。
【0092】
そして、導入流路31,32及び排出流路41,42の途中には、枠体5の面から切り起こして形成し、枠体5との接続側の基端部65a,75aとは反対側の自由端部65b,75b側が開口67,77し起立片65、75の下方に行き止まり部としての深溝66,76を形成してなる逆流防止部60,70を設けている。これにより、導入流路31,32においては、給液用マニホールド11,12から電極配設部105の電極101に供給する電解液の流通方向では、起立片65の上面を基端部65a側から自由端部65b側に向かって電解液を流通させることができる一方で、起立片65の自由端部65b側で開口67して起立片65の下方に行き止まり部66,76を形成していることにより、逆流しようとする電解液は、その開口67に流れこんで起立片65の下方の行き止まり部66で行き止まることから、起立片65の上面の自由端部65b側から基端部65a側に向かって流れることはなく、電解液の逆流が防止される。また、排出流路41,42においても、電極101を通過した電解液が排液用マニホールド21,22に向かって排出される電解液の流通方向では、起立片75の自由端部75b側を排液用マニホールド21,22側に設定することで起立片75の上面を基端部75a側から自由端部75b側に向かって電解液を流通させることができる一方で、起立片75の自由端部75b側で開口77して起立片75の下方に行き止まり部76を形成していることにより、逆流しようとする電解液は、その開口77から電解液が流れこみ、そこで行き止まることから、起立片75の上面の自由端部75b側から基端部75a側に向かって流れることはなく、逆流が防止される。特に、本実施の形態では、起立片65,75の基端部65a,75a側から傾斜する方向の塑性変形によって、起立片65,75の自由端部65b,75b側の開口67,77が閉じられ難いものであり、負圧下でも逆流しようとする電解液が起立片66,75の下方の開口67,77から深溝66,76に流れ込み、起立片65,75の上面を自由端部65a,75a側から基端部65a,75a側に通過するのを確実に防止できる。
よって、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
【0093】
更に、本実施の形態の行き止まり部66は、起立片65の自由端部65b側の導入幅広流路34の溝底34cよりも深い深溝66からなり、また、行き止まり部76においても、起立片75の自由端部75側の分岐溝43cよりも溝底が深い深溝76で構成されていることにより、逆流しようとする電解液が逆流防止部60,70において流路外から漏れ難いものとなっている。
【0094】
こうして、本実施の形態のセルフレーム1によれば、循環させる電解液の圧力損失を少なくでき、かつ、シャント電流損失を少なくできるものである。
そして、このように導入流路31,32及び排出流路41,42を流通させる電解液の流体抵抗を少なくできることで、ポンプを高出力としなくとも電解液の高い流量を確保でき、また、導入流路31,32及び排出流路41,42が電極配設部105の幅に対応する幅まで拡幅されていることで電解液の供給側では電解液が拡散し、また、電解液の排出側では、電池反応後の電解液が排出流路41,42に速やかに排出されることになるから、
電極101を通る電解液の流れを均一にでき、電池の反応効率を高めることができる。故に、電池の高出力化が可能となる。更に、ポンプを高出力としなくともよいことでレドックスフロー電池としての全体のエネルギ効率を向上できる。
【0095】
加えて、本実施の形態のセルフレーム1によれば、電解液を流通させる導入流路31,32において、電極配設部105の幅方向と並行する枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって溝底を上昇させていることにより、セルフレーム1と隔膜130の間でセルフレーム1の導入流路33,34を流通する電解液の流路の断面積が枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって徐々に細くなる。これより、枠体5の下辺E1側から電極配設部105側に向かって電解液の流速を徐々に速くすることができるから、電極配設部105の電極101に供給する電解液の拡散性を高めることができ、電極配設部105の幅方向に電解液をより拡散させることができる。よって、電極101の幅方向に電解液をムラなく均一に供給でき、電解液の反応効率を高めることが可能となる。
【0096】
以上説明してきたように、上記実施の形態のセルフレーム1は、正負の電極を配設する電極配設部105と、電極配設部105の周囲に設けた枠体5とからなるセルフレーム1であって、枠体5は、その4隅の角部に貫通して形成されたマニホールド11,12,21,22と電極配設部105とを連通し電解液が流通する流路31,32,41,42を有し、流路31,32,41,42は、枠体のマニホールド11,12,21,22側から電極配設部105を設けた内周の幅に向かって幅広くし、その途中に電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたものである。
【0097】
上記実施の形態のセルフレーム1によれば、電極配設部105の周囲に設けた枠体5に形成され、マニホールド11,12,21,22と電極配設部105との間を連通し電解液を流通する溝状の流路31,32,41,42は、前記マニホールド11,12,21,22から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅に向かって拡げられている。
このようにマニホールド11,12,21,22と電極配設部105と間で電解液を流通させる流路31,32,41,42は、マニホールド11,12,21,22側から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅と一致する幅広に拡幅されていることにより、流路31,32,41,42の幅がマニホールド11,12,21,22より径大であり、また、流路長も短いものであるから、そこを流通する電解液の流体抵抗を小さくでき、セルフレーム1に送給する電解液の圧力損失の低減化を可能とする。そのうえ、その流路31,32,41,42の途中には電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたことで、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
したがって、電解液を低圧力損失で電極に供給でき、かつ、シャント電流損失も低減化できる。よって、レドックスフロー電池の高出力化を可能とする。
【0098】
また、上記実施の形態のセルフレーム1によれば、流路31,32は、枠体5の内周の幅方向と並行する枠体5の下辺E1側から電極配設部105に向かって溝底を上昇させていることから、電解液を電極101に供給する導入流路31,32において、隣接する隔膜103と間で電解液を流通させる流路の断面積が枠体5の下辺E1側から電極配設部105に向かって細くなる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、電極101に供給する電解液の拡散性を高めることができ、電極へ効率的に電解液を供給できる。
【0099】
更に、上記実施の形態のセルフレーム1によれば、流路31,32,41,42には、マニホールド11,12,21,22との接続側にリブ151が形成されていることにより、マニホールド11,12,21,22の周囲が補強され、マニホールド11,12,21,22を流通する電解液の内圧等によるセルフレーム1の変形が防止される。また、マニホールド11,12,21,22を流通する電解液の内圧等により隣接する隔膜103が流路31,32,41,42に落ち込んで損傷するのを防止できる。よって、セルスタックの耐久性を向上できる。更に、セルスタックにおいて隣接するセルフレーム1間に配置される隔膜103を押えて隔膜103の位置ずれを防止することが可能となる。よって、正負の電解液の混合による充放電率の低下を防止できる。更に、異物が電極101に到達するのを阻止できる。
【0100】
加えて、上記実施の形態のセルフレーム1によれば、逆流防止部60,70は、枠体5の面から切り起こして起立片65,75を形成することにより、その起立片65,75の枠体5との接続側の基端部65a,75aとは反対側の自由端部65b,75b側を開口し起立片65,75の下方に行き止まり部としての深溝66,67を形成したものであることから、上流から下流に向かって流通する電解液の重み等で起立片6575の起立状態を変化させることができ、上流から下流に向かって電解液が多く流れるとき起立片65,75の起立状態が抑えられて流体抵抗を小さくできる一方、起立片65,75の自由端部65b,75b側が開口67,77を形成していることで、逆流しようとする電解液はその開口67,77に流れ込んでそこで行き止まるから電解液の逆流を阻止できる。よって、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化の両立効果を向上できる。
【0101】
また、上記実施の形態のセルフレーム1によれば、流路31,32,41,42は、マニホールド11,12,21,22から枠体5の内周の幅方向に並行に延びマニホールド11,12,21,22の径よりも幅狭な直線流路33,43と直線流路33,43から枠体5の内周の幅に向かって幅広とした幅広流路34,44とから構成されていることから、マニホールド11,12,21,22を流通する電解液の内圧等によるマニホールド11,12,21,22周囲のセルフレーム1の変形や、電解液の漏れを押えることができる。また、直線流路33,43に逆流防止部60,70を設けることによって、電解液流通時の流体抵抗を小さく抑えながら逆流防止部60を形成できる。
【0102】
上記実施の形態は、正負の電極101が配設する電極配設部105及び電極配設部105の周囲に設けた枠体5からなるセルフレーム1と隔膜103を有する電池セルを複数積層してなるセルスタックであって、セルフレーム1の枠体5は、その4隅の角部に貫通して形成されたマニホールド11,12,21,22と電極配設部105とを連通し電解液が流通する流路31,32,41,42を有し、流路31,32,41,42は、枠体のマニホールド11,12,21,22側から電極配設部105を設けた内周の幅に向かって幅広くし、その途中に電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたセルスタックの発明と捉えることもできる。
【0103】
上記実施の形態のセルスタックによれば、それを構成するセルフレーム1において、電極配設部105の周囲に設けた枠体5に形成され、マニホールド11,12,21,22と電極配設部105との間を連通し電解液を流通する溝状の流路31,32,41,42は、前記マニホールド11,12,21,22から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅に向かって拡げられている。
このようにマニホールド11,12,21,22と電極配設部105と間で電解液を流通させる流路31,32,41,42は、マニホールド11,12,21,22側から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅と一致する幅広に拡幅されていることにより、流路31,32,41,42の幅がマニホールド11,12,21,22より径大であり、また、流路長も短いものであるから、そこを流通する電解液の流体抵抗を小さくでき、セルフレーム1に送給する電解液の圧力損失の低減化を可能とする。そのうえ、その流路31,32,41,42の途中には電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたことで、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
したがって、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できる。よって、レドックスフロー電池の高出力化を可能とする。
【0104】
また、上記実施の形態は、正負の電極101が配設する電極配設部105及び電極配設部105の周囲に設けた枠体5からなるセルフレーム1と隔膜103を有する電池セルを複数積層してなるセルスタックを有するレドックスフロー電池であって、セルフレーム1の枠体5は、その4隅の角部に貫通して形成されたマニホールド11,12,21,22と電極配設部105とを連通し電解液が流通する流路31,32,41,42を有し、流路31,32,41,42は、枠体のマニホールド11,12,21,22側から電極配設部105を設けた内周の幅に向かって幅広くし、その途中に電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたレドックスフロー電池の発明と捉えることもできる。
【0105】
上記実施の形態のレドックスフロー電池によれば、それを構成するセルスタックのセルフレーム1において、電極配設部105の周囲に設けた枠体5に形成され、マニホールド11,12,21,22と電極配設部105との間を連通し電解液を流通する溝状の流路31,32,41,42は、前記マニホールド11,12,21,22から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅に向かって拡げられている。
このようにマニホールド11,12,21,22と電極配設部105と間で電解液を流通させる流路31,32,41,42は、マニホールド11,12,21,22側から電極配設部105の周囲の枠体5の内周の幅と一致する幅広に拡幅されていることにより、流路31,32,41,42の幅がマニホールド11,12,21,22より径大であり、また、流路長も短いものであるから、そこを流通する電解液の流体抵抗を小さくでき、セルフレーム1に送給する電解液の圧力損失の低減化を可能とする。そのうえ、その流路31,32,41,42の途中には電解液の逆流を防止する逆流防止部60,70を設けたことで、電解液を通じでの電流損失(シャントカレントロス)を小さくすることができる。
したがって、循環させる電解液の圧力損失の低減化とシャント電流損失の低減化を両立できる。よって、レドックスフロー電池の高出力化を可能とする。
【0106】
ところで、本発明を実施する場合には、逆流防止部60,70の構成は、電解液の逆流を防止するものであれば上記実施の形態に限定されるものでなく、その流路31,32,41,42の溝内に弁膜や逆止弁を設けてもよいし、流路に段差、溝、傾斜等を設けるものであってもよい。
例えば、電解液が流通する上流側の一端部側から反対側の下流側の他端部側に向かって上方に傾斜している傾斜部(段差部)を設けることによって、電解液の逆流を防止してもよい。この場合は、枠体5の厚みを変化させる簡単な構成で安価に形成できる。
【0107】
また、上記実施の形態では、導入流路31,32及び排出流路41,42は、その断面が略凹部状であるが、それを形成する流路壁、溝底は、平面状(直線状)に限定されず、曲面状(曲線状)であってもよいし、対向する流路壁が並行状であってもよいし、テーパ状に形成されていてもよい。流路壁と溝底との角部を略直角状に限定されず、R状に形成してもよい。
【0108】
上記実施の形態では、複数の電池セルは、電解液が各電池を並列に流れるように互いに接続されている説明としたが、本発明を実施する場合には、複数の電気セルの接続形態はこれに限定されず、例えば、電解液が複数の電池セルを直列に流れるように互いに接続されていてもよい。
そして、上記説明では、本発明のセルスタックについて、レドックスフロー電池に適用する例で説明したが、本発明を実施する場合には、レドックスフロー電池に限定されるものではなく、その他の蓄電池や燃料電池に適用することができる。
【0109】
なお、本発明を実施する場合には、セルフレーム1、セルスタック、レドックスフロー電池のその他の部分の構成、材料、製造工程等について、上記実施の形態の説明に限定されるものではない。また、上記実施の形態で上げている数値は、実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更しても実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0110】
1 セルフレーム
5 枠体
11 正極側給液用マニホールド
12 負極側給液用マニホールド
13 正極側排液用マニホールド
14 負極側排液用マニホールド
31 正極側導入流路
32 負極側導入流路
33 導入直線流路
34 導入幅広流路
41 正極側排出流路
42 負極側排出流路
43 排出直線流路
44 排出幅広流路
60 導入側逆流防止部
66,76 深溝(行き止まり部)
67,77 開口
65,75 起立片
65a,75a 基端部
65b,75b 自由端部
70 排出側逆流防止部
101 電極
103 隔膜
105 電極配設部
151 リブ