(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048223
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240401BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240401BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240401BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20240401BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240401BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240401BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/004 502
G03F7/031
G03F7/033
G03F7/40 521
H05K3/00 F
H01L23/30 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154141
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】石井 亮
(72)【発明者】
【氏名】富田 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】香村 和彦
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4M109
【Fターム(参考)】
2H196BA05
2H196EA02
2H196GA08
2H196HA27
2H225AC31
2H225AC38
2H225AC53
2H225AC58
2H225AC63
2H225AD05
2H225AD06
2H225AD07
2H225AM15P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AN23P
2H225AN72P
2H225AN86P
2H225AN87P
2H225AN89P
2H225BA09P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CA14
2H225CA22
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4M109AA02
4M109BA03
4M109CA10
4M109EA15
4M109GA01
(57)【要約】
【課題】未露光部分の白化を抑制することができ、かつ現像性および解像度に優れたレジストパターン膜を形成できる感光性樹脂組成物、前記レジストパターン膜を形成できるレジストパターン膜の製造方法、および前記レジストパターン膜を用いたメッキ造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性樹脂、(B1)(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とをそれぞれ1分子中に少なくとも2つ有し、かつ、環構造を有する重合性化合物、(C)光ラジカル重合開始剤、(D)窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)、チオール化合物(d2)、および重合禁止剤(d3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、および(F)溶剤を含有する、感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、
(B1)(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とをそれぞれ1分子中に少なくとも2つ有し、かつ、環構造を有する重合性化合物、
(C)光ラジカル重合開始剤、
(D)窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)、チオール化合物(d2)、および重合禁止剤(d3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、および
(F)溶剤
を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合性化合物(B1)が、1分子中に下記式(1)で表される構造を少なくとも2つ有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。*は結合手を示す。]
【請求項3】
前記重合性化合物(B1)が有する環構造が、脂環式炭化水素構造である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物(B1)以外の重合性化合物(B2)をさらに含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光ラジカル重合開始剤(C)が、オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記光ラジカル重合開始剤(C)が、非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)をさらに含む、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記化合物(D)が、前記含窒素複素環化合物(d1)を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物(B1)100質量部に対し、前記化合物(D)を0.05~20質量部の範囲で含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記式(2)で表されるフェノール性水酸基含有構造単位を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
[式(2)中、R
2は水素原子またはメチル基を示す。]
【請求項10】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)100質量%中の前記フェノール性水酸基含有構造単位の含有量が1~40質量%の範囲である、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して樹脂塗膜を形成する工程(1)、前記樹脂塗膜を露光する工程(2)、および、露光後の樹脂塗膜を現像する工程(3)を有する、レジストパターン膜の製造方法。
【請求項12】
銅膜上にレジストパターン膜を形成する、請求項11に記載のレジストパターン膜の製造方法。
【請求項13】
前記工程(1)で形成される樹脂塗膜の膜厚が250μm以上である、請求項11に記載のレジストパターン膜の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の製造方法によって製造されたレジストパターン膜をマスクにして、前記基板に対してメッキ処理を行う工程を有する、メッキ造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や、液晶ディスプレイやタッチパネル等の表示素子のバンプ等の接続素子は、基板上に高精度に配置することが必要とされている。
【0003】
一般的に、バンプなどはメッキ造形物であり、特許文献1に記載されているように、銅等の金属箔を有する基盤上に、厚膜のレジストパターンを形成し、厚膜のレジストパターンをマスク(鋳型)にし、メッキを行うことで製造される。
【0004】
厚膜のレジストパターンのなかでも特に、感光性樹脂組成物を基板上に3回塗布することが必要な膜厚領域(≧250μm)を有するレジストパターンに対する要望が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感光性樹脂組成物の3回塗布が必要な膜厚領域(≧250μm)になると、加熱乾燥する際に熱履歴の影響で未露光部分(本来現像工程で溶解する部分)が白化するという問題があることがわかった。
【0007】
本発明は、未露光部分の白化を抑制することができ、かつ現像性および解像度に優れたレジストパターン膜を形成できる感光性樹脂組成物、前記レジストパターン膜を形成できるレジストパターン膜の製造方法、および前記レジストパターン膜を用いたメッキ造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明は、例えば下記[1]~[14]に関する。
[1]
(A)アルカリ可溶性樹脂、
(B1)(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とをそれぞれ1分子中に少なくとも2つ有し、かつ、環構造を有する重合性化合物、
(C)光ラジカル重合開始剤、
(D)窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)、チオール化合物(d2)、および重合禁止剤(d3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、および
(F)溶剤
を含有する、感光性樹脂組成物。
【0009】
[2]
前記重合性化合物(B1)が、1分子中に下記式(1)で表される構造を少なくとも2つ有する、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。*は結合手を示す。]
【0010】
[3]
前記重合性化合物(B1)が有する環構造が、脂環式炭化水素構造である、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
[4]
前記重合性化合物(B1)以外の重合性化合物(B2)をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
[5]
前記光ラジカル重合開始剤(C)が、オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)を含む、請求項[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0013】
[6]
前記光ラジカル重合開始剤(C)が、非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)をさらに含む、[5]に記載の感光性樹脂組成物。
【0014】
[7]
前記化合物(D)が、前記含窒素複素環化合物(d1)を含む、請求項[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
[8]
前記重合性化合物(B1)100質量部に対し、前記化合物(D)を0.05~20質量部の範囲で含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
[9]
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記式(2)で表されるフェノール性水酸基含有構造単位を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
[式(2)中、R
2は水素原子またはメチル基を示す。]
【0017】
[10]
前記アルカリ可溶性樹脂(A)100質量%中の前記フェノール性水酸基含有構造単位の含有量が1~40質量%の範囲である、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0018】
[11]
[1]~[10]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して樹脂塗膜を形成する工程(1)、前記樹脂塗膜を露光する工程(2)、および、露光後の樹脂塗膜を現像する工程(3)を有する、レジストパターン膜の製造方法。
【0019】
[12]
銅膜上にレジストパターン膜を形成する、[11]に記載のレジストパターン膜の製造方法。
【0020】
[13]
前記工程(1)で形成される樹脂塗膜の膜厚が250μm以上である、[11]または[12]に記載のレジストパターン膜の製造方法。
【0021】
[14]
[11]~[13]のいずれかに記載の製造方法によって製造されたレジストパターン膜をマスクにして、前記基板に対してメッキ処理を行う工程を有する、メッキ造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、未露光部分の白化を抑制することができ、かつ現像性および解像度に優れたレジストパターン膜を好適に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、レジストパターン膜形成用樹脂組成物である。前記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)、(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とをそれぞれ1分子中に少なくとも2つ有し、かつ環構造を有する重合性化合物(B1)、光ラジカル重合開始剤(C)、窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)、チオール化合物(d2)、および重合禁止剤(d3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(D)、および溶剤(F)を含有し、さらに必要により、化合物(B1)以外の重合性化合物(B2)、および界面活性剤等を含有することができる。
【0024】
<アルカリ可溶性樹脂(A)>
アルカリ可溶性樹脂(A)は、目的とする現像処理が可能な程度にアルカリ性の現像液に溶解する性質を有する樹脂である。例えば、特開2008-276194号公報、特開2003-241372号公報、特表2009-531730号公報、WO2010/001691号公報、特開2011-123225号公報、特開2009-222923号公報、および特開2006-243161号公報等に記載のアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは2,000~50,000、特に好ましくは3,000~20,000の範囲にある。
【0025】
また、アルカリ可溶性樹脂(A)は、レジストパターン膜の現像性およびパターン形状が向上する点で、フェノール性水酸基を有することが好ましい。フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)としては、下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう)を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)が好ましい。
【0026】
【化3】
[式(2)中、R
2は水素原子またはメチル基を表す。]
【0027】
構造単位(2)を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)を用いることで、メッキ工程において膨潤しにくいレジストパターンを得ることができる。その結果、基材からのレジストパターンの浮きや剥れが発生しないため、メッキ工程を長時間実施した場合であってもメッキ液が基材とレジストパターンとの界面にしみ出すことを防ぐことができる。また、解像性を良好にすることもできる。
【0028】
構造単位(2)を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)中の構造単位(2)の含有量は、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%の範囲にある。構造単位(2)の含有量が前記範囲にある、すなわち構造単位(2)を導く単量体をこのような量で用いることにより、アルカリ可溶性樹脂(A1)の分子量を十分に上げることができる。また、メッキ工程において膨潤しにくいレジストパターンを得ることができる。
【0029】
≪単量体(2')≫
構造単位(2)を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)は、例えば、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノールなどの水酸基含有芳香族ビニル化合物(以下「単量体(2')」ともいう)を原料モノマーの一部に用いて重合することにより得ることができる。これらの単量体(2')は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
これら単量体(2')の中でも、長時間のメッキ処理耐性に優れたレジストパターンを形成できる樹脂組成物が得られる点で、p-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノールが好ましく、p-ヒドロキシスチレンがより好ましい。
【0031】
≪単量体(I)≫
構造単位(2)を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)は、さらに、単量体(2')と共重合可能なその他の単量体(以下「単量体(I)」ともいう)から誘導される構造単位を有してもよい。
【0032】
単量体(I)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどのヘテロ原子含有脂環式ビニル化合物;
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;
1,3-ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;
アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
p-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの単量体(I)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
これら単量体(I)の中では、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0034】
アルカリ可溶性樹脂(A1)は、例えば、ラジカル重合によって製造することができる。また、重合方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法が挙げられる。
【0035】
<重合性化合物(B1)>
重合性化合物(B1)(以下、「化合物(B1)」ともいう)は、本発明のネガ型である感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜に露光したとき、露光された部位において、光ラジカル重合開始剤(C)から発生するラジカルの作用により、ラジカル重合性不飽和二重結合基において重合し、架橋体を形成する。
【0036】
化合物(B1)は、(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とをそれぞれ1分子中に少なくとも2つ有し、かつ環構造を有する。化合物(B1)としては、1分子中に下記式(1)で表される構造を少なくとも2つ有する化合物(B1a)が、レジストパターン膜の形成方法において、現像速度を上げても基材、特に表面に銅膜を有する基材の銅膜が腐食されることなくレジストパターン膜を形成することが可能であるため好ましい。
【0037】
【化4】
[式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。*は結合手を示す。]
【0038】
レジストパターン膜の形成方法により、現像速度を上げても基材、特に表面に銅膜を有する基材の銅膜が腐食されることなくレジストパターン膜を形成することが可能になる。この効果については、基材に形成される樹脂膜に含まれる化合物(B1)が特徴的に作用していると考えられる。
【0039】
基材上にレジストパターン膜を形成する際、現像速度を上げると、樹脂膜に形成されたホール(孔)の下の基材部分が腐食しやすい。例えば、表面に銅膜を有する基材の場合、ホールの下の銅膜部分に針状の欠陥が生じる。特にTSV上にレジストパターンを形成する場合、顕著に欠陥が発生する。欠陥が発生する原因は、現像時に現像液がホール内に滞留してホールから排出されないため、銅膜がアルカリ性の現像液に長時間接触することになり、銅が腐食するためであると考えられる。
【0040】
銅膜上に残存する化合物(B1)は、例えば、現像後に洗浄操作、例えば水を接触させることにより容易に除去することができる。このため、化合物(B1)はその後のバンプ等のメッキ造形物の製造には影響を与えない。化合物(B1)が洗浄操作により容易に除去されるのは、化合物(B1)に占めるヒドロキシ基の比率が高くなく、化合物(B1)の銅膜に対する親和力が強すぎないためであると考えられる。特に化合物(B1a)においては、化合物(B1a)に占めるヒドロキシ基の比率が式(1)により一定範囲に規定されているため、現像時には一定量銅膜上に残存し、その後の洗浄により完全に除去される程度の銅膜に対する親和力の強さが実現されているものと考えられる。
【0041】
化合物(B1)は、環構造を少なくとも1つ含み、好ましくは1~3個含む。
化合物(B1)に含まれる環構造は、特に限定されないが、脂環式炭化水素構造であることが好ましい。
ここで、脂環式炭化水素構造とは、脂環式炭化水素化合物から誘導される環を意味し、該脂環式炭化水素化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、単環であっても多環であってもよい。
【0042】
脂環式炭化水素構造としては、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環、シクロヘキセン等のシクロアルケン環、ノルボルナン環等のビシクロアルカン環、及びノルボルネン等のビシクロアルケン環が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環、より好ましくは炭素数4~7のシクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環である。
【0043】
化合物(B1)としては、エポキシ(メタ)アクリレートとカルボン酸、アルコール性化合物、またはフェノール性化合物などとの反応によって得られる化合物およびジグリシジルエーテル、またはカルボン酸ジグリシジルエステルと(メタ)アクリル酸との反応物等が挙げられる。
【0044】
カルボン酸化合物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類トリメシン酸などの芳香族トリカルボン酸類、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、オキシジフタル酸などの芳香族テトラカルボン酸類が挙げられる。アルコール性、フェノール性化合物としては、例えば、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール、ビフェノールおよびその置換体、ビスフェノールAおよびその誘導体、ビフェノールエーテルおよびその誘導体、ノボラックオリゴマーおよびその誘導体、などのフェノール誘導体が挙げられる。
【0045】
ジグリシジルエーテルとしては、例えば、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの脂環式ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの芳香族ジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0046】
カルボン酸ジグリシジルエステルとしては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの反応は定法に従い行うことができる。
【0047】
化合物(B1)としては、具体的には、後述する実施例で用いた重合性化合物(B11)等を挙げることができる。化合物(B1)が、化合物(B11)のように、ヒドロキシ基と環構造を有する重合性化合物であると、良好な現像性を示しつつ、パターンの膨潤を抑えられるため、現像性およびパターン形状に優れたレジストパターン膜を形成することができる。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物における化合物(B1)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは1~50質量部、特に好ましくは1~20質量部である。化合物(B1)の含有量がこの範囲内であると、特に高膜厚で樹脂膜を形成した場合でもパターン形成時に良好な形状を保ちつつ、現像後残渣の発生を抑制することができる。
【0049】
<重合性化合物(B1)以外の重合性化合物(B2)>
本発明の感光性樹脂組成物は、前記重合性化合物(B1)以外の重合性化合物(B2)を含有することが好ましい。
感光性樹脂組成物に前記重合性化合物(B1)以外の重合性化合物(B2)(以下、「化合物(B2)」ともいう)を配合すると、樹脂膜の現像速度が低下するので、樹脂膜の現像速度を調節することができる。樹脂膜の現像速度が速すぎる場合に化合物(B2)の配合が有効である。
【0050】
化合物(B2)としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和二重結合を2つ有する化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物等のエチレン性不飽和二重結合を3つ有する化合物が挙げられる。
【0051】
化合物(B2)の市販品としては、例えば、アロニックスM-8060(東亞合成(株)製)、A9300-1CL(新中村化学工業(株)製)およびエポキシエステル70PA(共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
【0052】
化合物(B2)の配合量は、目的に応じて適宜決定でき、例えばアルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは5~50質量部、特に好ましくは15~50質量部である。化合物(B2)の含有量がこの範囲内であると、感光性樹脂組成物としての塗布性、現像性、感度、および解像度のバランスが良い。
【0053】
<光ラジカル重合開始剤(C)>
光ラジカル重合開始剤(C)は、光の照射によりラジカルを発生し、化合物(B1)のラジカル重合を開始させる化合物である。
【0054】
光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、重合性化合物(B1)100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは3~35質量部、特に好ましくは3~20質量部である。光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が前記範囲にあると、好適なラジカル量が得られ、優れた解像度が得られる。
【0055】
光ラジカル重合開始剤(C)としては、オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)と非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)に大別される。これらの中でも、感度の点から、オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)、特にオキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0056】
オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤にはオキシムの二重結合に起因する幾何異性体が存在しうるが、これらは区別されず、いずれも光ラジカル重合開始剤(C)に含まれる。
【0057】
オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤としては、例えば、WO2010/146883号公報、特開2011-132215号公報、特表2008-506749号公報、特表2009-519904号公報、および特表2009-519991号公報に記載光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0058】
オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤の具体例としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-エトキシカルボニルオキシ-1-フェニルプロパン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、およびN-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン等が挙げられる。
【0059】
オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、TR-PBG-3057(TRONLY(株)製)、およびアデカアークルズNCI-930(ADEKA(株)製)等が挙げられる。
【0060】
一方、非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)としては、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。これらの中でも、現像度の点から、アシルホスフィン(オキシド)化合物が好ましい。
【0061】
アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0062】
アシルホスフィン(オキシド)化合物の市販品としては、例えば、Omnirad TPO H(IGM Resins B.V.社製)、およびOmnirad 819(IGM Resins B.V.社製)等が挙げられる。
【0063】
これらの光ラジカル重合開始剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)と非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)をそれぞれ少なくとも1種以上使用することが、好ましい一形態である。オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)と非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)を併用すると、オキシム系光ラジカル重合開始剤(C1)によりパターン表層の硬化度があがり、非オキシム系光ラジカル重合開始剤(C2)によりパターン内部の硬化度があがることで、パターン全体の形状を良好にできるため、好ましい。
【0064】
<化合物(D)>
化合物(D)は、窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)、チオール化合物(d2)、および重合禁止剤(d3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの中でも、感光性樹脂組成物が含窒素複素環化合物(d1)を含有することが感度への影響が少ない点から好ましい。
【0065】
化合物(D)は、銅基板表面での熱重合を抑えることで熱架橋由来と推定される、未露光部分の白化を抑制することができると推定される。
【0066】
化合物(D)の含有量は、重合性化合物(B1)100質量部に対して、好ましくは0.05~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。前記化合物(D)の含有量が前記範囲にあると、未露光部分の白化を抑制することができる。
【0067】
窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)
窒素原子を2以上含む含窒素複素環化合物(d1)は、銅に配位し易い化合物であるため、銅表面に保護膜を形成することで、銅表面で重合性化合物が熱により架橋体を形成するのを防止することができると推定される。
【0068】
前記含窒素複素環化合物(d1)は、窒素原子を2以上含有し、好ましくは3以上含有する。窒素原子を1つ含有する複素環化合物では、銅との相互作用が弱くなり、保護膜を形成することによる保護剤としての効果が劣ると推測される。
【0069】
前記含窒素複素環化合物(d1)としては、特に限定されないが、例えばイミダゾール類、トリアゾール類、およびプリン誘導体等が挙げられ、イミダゾール類およびトリアゾール類が好ましい。これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0070】
イミダゾール類としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-t-ブチルイミダゾール、2-ペンチルイミダゾール、2-ヘキシルイミダゾール、2-ヘプチルイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)イミダゾール、2-オクチルイミダゾール、2-ノニルイミダゾール、2-デシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-トリデシルイミダゾール、2-テトラデシルイミダゾール、2-ペンタデシルイミダゾール、2-ヘキサデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-(1-メチルペンチル)イミダゾール、2-(1-エチルペンチル)イミダゾール、2-(1-ヘプチルデシル)イミダゾール、2-(5-ヘキセニル)イミダゾール、2-(9-オクテニル)イミダゾール、2-(8-ヘプタデセニル)イミダゾール、2-(4-クロロブチル)イミダゾール、2-(9-ヒドロキシノニル)イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-(1-ナフチル)イミダゾール、2-(1-ナフチル)-4-メチルイミダゾール、2-(2-ナフチル)イミダゾール、2-(2-ナフチル)-4-メチルイミダゾール、2-メチル-4-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、4-オクチルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。特に好ましくは、ベンゾイミダゾールである。
【0071】
トリアゾール類としては、特に限定されないが、例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-メチル-1,2,4-トリアゾール、1-エチル-1,2,4-トリアゾール、1-プロピル-1,2,4-トリアゾール、1-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、1-ブチル-1,2,4-トリアゾール、1-メチル-1,2,3-トリアゾール、1-エチル-1,2,3-トリアゾール、1-プロピル-1,2,3-トリアゾール、1-イソプロピル-1,2,3-トリアゾール、1-ブチル-1,2,3-トリアゾール、1-メチルベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。特に好ましくは、1,2,3-ベンゾトリアゾールである。
【0072】
プリン誘導体としては、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、イソグアニン、2,6-ジアミノプリン、9-メチルアデニン、2-ヒドロキシアデニン、2-メチルアデニン、1-メチルアデニン、N-メチルアデニン、N,N-ジメチルアデニン、2-フルオロアデニン、9-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、グアニンオキシム、N-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、8-アミノアデニン、6-アミノ-8-フェニル-9H-プリン、1-エチルアデニン、6-エチルアミノプリン、1-ベンジルアデニン、N-メチルグアニン、7-(2-ヒドロキシエチル)グアニン、N-(3-クロロフェニル)グアニン、N-(3-エチルフェニル)グアニン、2-アザアデニン、5-アザアデニン、8-アザアデニン、8-アザグアニン、8-アザプリン、8-アザキサンチン、8-アザヒポキサンチン等及びその誘導体が挙げられる。
【0073】
チオール化合物(d2)
チオール化合物(d2)は、前記含窒素複素環化合物(d1)と同様に、銅に配位し易い化合物であるため、銅表面に保護膜を形成することで、銅表面で重合性化合物が熱により架橋体を形成するのを防止することができると推定される。
【0074】
チオール化合物(d2)は、単官能チオール化合物および多官能チオール化合物のいずれでもよいが、感光性樹脂組成物の露光光に対する感度をより高める観点から、多官能チオール化合物(d2-a)であることが好ましい。
単官能チオール化合物とは、チオール基(メルカプト基)を分子内に1個有する化合物である。単官能チオール化合物としては、例えばステアリル-3-メルカプトプロピオネート等を挙げることができる。
多官能チオール化合物(d2-a)とは、チオール基(メルカプト基)を分子内に2個以上有する化合物である。多官能チオール化合物としては、分子量100以上の低分子化合物が好ましく、具体的には、分子量100~1,500であることがより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
【0075】
多官能チオール化合物(d2-a)の官能基数としては、2~10官能が好ましく、2~8官能がより好ましく、2~4官能が更に好ましい。官能基数が大きくなると膜強度に優れる一方、官能基数が小さいと保存安定性に優れる。上記範囲の場合、これらを両立することができる。
【0076】
前記多官能チオール化合物(d2-a)としては、芳香族多官能チオール化合物および脂肪族多官能チオール化合物のどちらも用いることができ、芳香族多官能チオール化合物としては、ベンゾチアゾール構造を有する化合物がより好ましい。
【0077】
ベンゾチアゾール構造を有する化合物としては、例えばベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの中で、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0078】
脂肪族多官能チオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、及び、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等を挙げることができ、これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及び、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等がより好ましい。
【0079】
脂肪族多官能チオール化合物の市販品としては、例えば、C3TS-G(四国化成(株)製)、カレンズMT-PE-1、カレンズMT-BD-1、カレンズMT-NR-1、TPMB、TEMB(以上、昭和電工(株)製)、TMMP、TEMPIC、PEMP、EGMP-4、及び、DPMP(以上、堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0080】
これらのチオール化合物(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
重合禁止剤(d3)
重合禁止剤(d3)は、銅表面で重合性化合物の熱による架橋体形成を抑制していると推測される。また、重合禁止剤(d3)は、感光性樹脂組成物の保存安定性の向上にも寄与し得る。
【0082】
重合禁止剤(d3)としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N-ニトロソジフェニルアミン、ベンゾキノン、フェノチアジン、p-メトキシフェノール、p-t-ブチルカテコール、N-フェニルナフチルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-p-メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールが挙げられる。
【0083】
重合禁止剤(d3)としては、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、カテコール等のフェノール系重合禁止剤(d3-a)が好ましい。
フェノール系重合禁止剤(d3-a)としては、具体的には、後述する実施例で用いた(d31)や(d32)等が挙げられる。
これらの重合禁止剤(d3)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
<溶剤(F)>
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤(F)を含有することで、感光性樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度を調節したり、保存安定性を向上させたりすることができる。
【0085】
溶剤(F)としては、
メタノール、エタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸3-メトキシブチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。
【0086】
本発明におけるエチレングリコール系溶媒の使用量は、全溶媒100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。溶剤(F)としてエチレングリコール系溶媒を前記範囲で用いることにより、膜厚が大きく異なる樹脂膜を形成することがより容易となる。
【0087】
溶剤(F)の使用量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60~300質量部、特に好ましくは70~200質量部である。
【0088】
<その他の成分>
前記樹脂組成物は、上述の成分の他に、必要に応じて、樹脂組成物の保存安定性を向上させるための熱重合禁止剤、界面活性剤、樹脂膜と基板の接着性を改良するための接着助剤、感度を上げるための増感剤、樹脂膜の強度を改良するための無機フィラー等を、本発明の目的および特性を損なわない範囲で配合してもよい。
【0089】
≪界面活性剤≫
樹脂組成物に界面活性剤を配合すると、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させることができる。
【0090】
界面活性剤としては、市販されている界面活性剤を用いることができる。市販されている界面活性剤の具体例としては、例えば、NBX-15、FTX-204D、FTX-208D、FTX-212D、FTX-216D,FTX-218、FTX-220D、FTX-222D(以上、(株)ネオス製)、BM-1000、BM-1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC-135、同FC-170C、同FC-430、同FC-431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-112、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145(以上、旭硝子(株)製)、SH-28PA、同-190、同-193、SZ-6032、SF-8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0091】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明の感光性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより調製することができる。また、ゴミを取り除くために、各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルター等で濾過しても良い。
【0092】
[レジストパターン膜の製造方法]
本発明のレジストパターン膜の製造方法は、下記工程1~工程3を有することを特徴とする。
工程1:前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布して樹脂塗膜を形成する工程
工程2:前記樹脂塗膜を露光する工程
工程3:露光後の樹脂塗膜を現像する工程
【0093】
〔工程(1)〕
工程(1)においては、前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布して樹脂塗膜を形成する。
基板としては、半導体基板、ガラス基板、シリコン基板および半導体板、ガラス板、シリコン板の表面に各種金属膜(とりわけ、銅膜が好ましい。)などを設けて形成される基板などを挙げることができる。基板の形状には特に制限はない。平板状であってもシリコンウェハーのように平板に凹部(穴)を設けてなる形状であってもよい。凹部を備え、さらに表面に銅膜を有する基板の場合、TSV構造のように、その凹部の底部に銅膜が設けられてもよい。
【0094】
感光性組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法を採用することができ、特にスピンコート法が好ましい。スピンコート法の場合、回転速度は好ましくは800~3000rpm、より好ましくは800~2000rpmであり、回転時間は好ましくは1~300秒間、より好ましくは5~200秒間である。感光性組成物をスピンコートした後は、好ましくは50~180℃、より好ましくは60~150℃、特に好ましくは70~130℃で1~30分間程度、得られた樹脂塗膜を加熱乾燥する。
【0095】
樹脂塗膜の膜厚は、好ましくは200~400μmであり、特に未露光部分の白化や現像後残渣が顕著になってくる250μm以上の高膜厚でパターンを形成する時、本発明の効果が発揮されるため好ましい。
【0096】
〔工程(2)〕
工程(2)では、前記樹脂塗膜を露光する。すなわち、工程(3)においてレジストパターン膜が得られるように前記樹脂塗膜を選択的に露光する。
【0097】
露光は、通常、所望のフォトマスクを介して、例えばコンタクトアライナー、ステッパーまたはスキャナーを用いて、前記樹脂塗膜に対して露光を行う。露光光としては、波長200~500nmの光(例:i線(365nm))を用いる。露光量は、樹脂塗膜中の成分の種類、配合量、塗膜の厚さなどによって異なるが、露光光にi線を使用する場合、好ましくは1~10,000mJ/cm2である。
【0098】
また、露光後に加熱処理を行うこともできる。露光後の加熱処理の条件は、樹脂塗膜中の成分の種類、配合量、樹脂塗膜の厚さなどによって適宜決められるが、好ましくは70~180℃、1~60分間である。
【0099】
〔工程(3)〕
工程(3)では、露光後の樹脂塗膜を現像する。これによりレジストパターン膜が形成される。
【0100】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノナンなどを含む水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノールなどの水溶性溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0101】
現像時間は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗膜の厚さなどによって異なるが、好ましくは10~1200秒間、より好ましくは30~1000秒間、特に好ましくは60~900秒間である。現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー法、シャワー現像法などのいずれでもよい。
【0102】
上記現像時間によっては、樹脂塗膜のうち未露光部に含まれていた化合物(B1)は完全には除去されず、一定量基材に付着して基材上に残存していると考えられる。そこで、工程(3)において、樹脂塗膜にアルカリ類の水溶液を接触させる操作をした後に、基材上に残存している化合物(B1)を除去するために、洗浄を行ってもよい。洗浄は、例えば水を基材に接触させることにより行うことができる。水を接触させる時間は例えば60~600秒間である。水の接触は、例えば流水を当てたり、水を噴霧することにより行うことができる。
その後、エアーガンなどを用いて風乾させたり、ホットプレート、オーブンなど加熱下で乾燥させてもよい。
【0103】
[メッキ造形物の製造方法]
本発明のメッキ造形物の製造方法は、前述のレジストパターン膜の製造方法によって形成したレジストパターン膜をマスクにして、前記基板に対してメッキ処理を行う工程を有することを特徴とする。
【0104】
前記メッキ造形物としては、バンプ、配線等が挙げられる。
レジストパターン膜の形成は、前述のレジストパターン膜の製造方法に従って行う。
前記メッキ処理としては、電解メッキ処理、無電解メッキ処理、および溶融メッキ処理等の湿式メッキ処理、化学気層蒸着、およびスパッタ等の乾式メッキ処理が挙げられる。ウエハーレベルでの加工における配線や接続端子を形成する場合、メッキ処理は通常、電解メッキ処理により行われる。
【0105】
電解メッキ処理を行う前に、レジストパターンの内壁表面とメッキ液との親和性を高めるため、レジストパターンの内壁表面にアッシング処理、フラックス処理、およびデスミア処理等の前処理を行うことができる。
【0106】
電解メッキ処理の場合、スパッタまたは無電解メッキ処理によりレジストパターン内壁に形成した層をシード層として用いることができ、また、表面に金属膜を有する基板を基板に用いる場合は、前記金属膜をシード層として用いることもできる。
【0107】
シード層を形成する前にバリア層を形成してもよく、シード層をバリア層として用いることもできる。
電解メッキ処理に使用されるメッキ液としては、例えば、硫酸銅、またはピロリン酸銅等を含む銅メッキ液;シアン化金カリウムを含む金メッキ液処理;および硫酸ニッケルまたは炭酸ニッケルを含むニッケルメッキ液;が挙げられる。
【0108】
メッキ処理は、異なるメッキ処理を順次行うことができる。例えば、はじめに銅メッキ処理を行い、次にニッケルメッキ処理を行い、次に溶融はんだメッキ処理を行うことで、はんだ銅ピラーバンプを形成することができる。
【実施例0109】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法におけるポリスチレン換算により算出した値である。
・カラム:東ソー株式会社製TSKgel SuperMultiporeHZ-M
・溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・検出方法:屈折率法
・標準物質:ポリスチレン
・GPC装置:東ソー株式会社製、装置名「HLC-8320-GPC」
【0110】
<感光性樹脂組成物の製造>
[実施例1A~16A、および比較例1A~11A]
溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて、下記表1に示す量の各成分を前記溶剤に、表1に示す固形分濃度となるよう加えて、混合し、カプセルフィルター(孔径1μm)で濾過して、実施例1A~16A、および比較例1A~11Aの感光性樹脂組成物を製造した。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
なお、表1中に示す各成分の詳細は以下の通りである。
【0115】
アクリル可溶性樹脂(A11)
下記式(A11)に示す、記号a~eを付した構造単位を有するアクリル系樹脂(Mw:12000、構造単位a~eの含有割合:a/b/c/d/e=10/15/25/20/30(質量%))
【0116】
【0117】
アクリル可溶性樹脂(A12)
下記式(A12)に示す、記号a~eを付した構造単位を有するアクリル系樹脂(Mw:10000、構造単位a~eの含有割合:a/b/c/d/e=10/12/25/19/34(質量%))
【0118】
【0119】
アクリル可溶性樹脂(A13)
下記式(A13)に示す、記号a~eを付した構造単位を有するアクリル系樹脂(Mw:10000、構造単位a~eの含有割合:a/b/c/d/e=10/10/25/20/35(質量%))
【0120】
【0121】
アクリル可溶性樹脂(A14)
下記式(A14)に示す、記号a~eを付した構造単位を有するアクリル系樹脂(Mw:10000、構造単位a~eの含有割合:a/b/c/d/e=10/20/25/15/30(質量%))
【0122】
【0123】
重合性化合物(B11):下記式(B11)に示す化合物
【0124】
【0125】
重合性化合物(B21):ポリエステルアクリレート(製品名「アロニックスM-8060」、東亞合成(株)製)
重合性化合物(B22):製品名「A9300-1CL」、新中村化学工業(株)製
重合性化合物(B23):製品名「エポキシエステル70PA」、共栄社化学(株)製
【0126】
光ラジカル重合開始剤(C11):製品名「TR-PBG-3057」、TRONLY(株)製
光ラジカル重合開始剤(C12):製品名「アデカアークルズNCI-930」、ADEKA(株)製
光ラジカル重合開始剤(C21):2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(製品名「Omnirad 651」、IGM Resins B.V.社製)
光ラジカル重合開始剤(C22):2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins B.V.社製)
光ラジカル重合開始剤(C23):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)
【0127】
含窒素複素環化合物(d11):1,2,3-ベンゾトリアゾール
含窒素複素環化合物(d12):ベンゾイミダゾール
【0128】
チオール化合物(d21):2-メルカプトベンゾチアゾール
チオール化合物(d22):製品名「C3TS-G」、四国化成(株)製
チオール化合物(d23):ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(製品名「カレンズMT PE1」、昭和電工(株)製)
【0129】
重合禁止剤(d31):下記式(d31)に示す化合物
【0130】
【0131】
重合禁止剤(d32):下記式(d32)に示す化合物
【0132】
【0133】
その他成分(E1):製品名「フタージェントFTX-218」、ネオス(株)製
【0134】
<レジストパターン膜の製造>
[実施例1B]
12インチシリコンウエハ上に銅スパッタ膜を備える基板に、実施例1Aの感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布し、ホットプレートにて120℃または130℃で、1層目を300秒間、2層目および3層目をそれぞれ600秒間加熱する作業を行い、350μmの膜厚を有する樹脂塗膜を形成した。
前記塗膜を、ステッパー(キヤノン社製、型式「FPA-5520iV」)を用い、パターンマスクを介して露光し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に720秒間浸漬して現像し、その後、純水で480秒間洗浄することで、縦180μm×横180μm×深さ340μmおよび縦200μm×横200μm×深さ340μmのレジストパターン膜の形成を試みた。
【0135】
感光性樹脂組成物の「現像度」を下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:130℃×3回の加熱で成膜した膜の現像速度が50μm/分以上であった。
B:130℃×3回の加熱で成膜した膜の現像速度が40μm/分以上50μm/分未満であった。
C:130℃×3回の加熱で成膜した膜の現像速度が40μm/分未満であった。
【0136】
レジストパターン膜の「パターン形状」を下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:パターンが矩形であり、パターン上部の張りやパターン下部のえぐれがみられない。
B:パターンが矩形であるが、わずかにパターン上部の張りやパターン下部のえぐれがみられる。
C:パターンの矩形性が損なわれており、パターン上部の張りやパターン下部のえぐれが顕著にみられる。
【0137】
未露光部分の白化に関して、下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:130℃×3回の加熱でも白化が見られなかった。
B:120℃×2回+130℃×1回の加熱では白化が見られなかったが、130℃×3回の加熱では一部白化が見られた。
C:120℃×2回+130℃×1回の加熱でも白化が見られた。
【0138】
また、形成を試みたレジストパターン膜のうち、形成できた最小のレジストパターン膜を求めた。感光性樹脂組成物の「解像度」を下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:縦180μm×横180μm×深さ340μmのパターンまで解像した。
B:縦200μm×横200μm×深さ340μmのパターンまで解像した。
C:縦200μm×横200μm×深さ340μmのパターンが解像しなかった。
【0139】
[実施例2B~16B、比較例1B~11B]
実施例1Aの感光性樹脂組成物の代わりに、下記表2に示す感光性樹脂組成物を用いた以外は実施例1Bと同じ操作にて、実施例2B~16Bおよび比較例1B~11Bのレジストパターン膜を形成し、現像度、パターン形状、未露光部分の白化および解像度を評価した。評価結果を表2に示す。
【0140】