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  • 特開-部材交換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048226
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】部材交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/12 20060101AFI20240401BHJP
   B23Q 3/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B23Q3/12 D
B23Q3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154147
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016AA03
3C016FA25
(57)【要約】
【課題】圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ部材交換装置を提供すること。
【解決手段】部材交換装置は、出力ロッド(5)の基端側端面に形成された凹部(8)に回転可能な状態で収容される操作部材(9)であって、出力ロッド(5)を軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(9)と、筒孔(6、7)の内部に配置され、または筒孔(6、7)の内部に充填され、出力ロッド(5)を軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(10)とを備える。操作部材(9)は、ガイド孔(23)に挿入されたカムロッド(24)が有するカム面(25a)で押されて移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)から突設される筒状のプラグ部(4)と、
前記プラグ部(4)のプラグ部筒孔(4a)に当該プラグ部筒孔(4a)の軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド(5)と、
前記プラグ部(4)の周壁に形成された貫通孔(15)に挿入される係合部材(16)であって、前記出力ロッド(5)が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔(15)内で移動され、前記プラグ部(4)が挿入可能となるようにクランプ対象物(T)に設けられる装着孔(40)が有する係止部(41)に当接可能となっている係合部材(16)と、
前記ハウジング(1)に形成された筒孔(6、7)であって、前記出力ロッド(5)が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔(6、7)と、
前記出力ロッド(5)の基端側端面に形成された凹部(8)に回転可能な状態で収容される操作部材(9)であって、前記出力ロッド(5)を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(9)と、
前記筒孔(6、7)の内部に配置され、または前記筒孔(6、7)の内部に充填され、前記出力ロッド(5)を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(10)と、
前記ハウジング(1)の基端部に形成されたガイド孔(23)であって、前記軸方向に対して交差する方向へ延びるガイド孔(23)と、
前記ガイド孔(23)に移動可能に挿入されるカムロッド(24)であって、前記操作部材(9)が嵌り込むカム溝(25)が外周面に形成されたカムロッド(24)と、
を備え、
前記カム溝(25)は、前記操作部材(9)を前記先端側方向へ押すためのカム面(25a)を有する、
部材交換装置。
【請求項2】
請求項1の部材交換装置において、
前記ハウジング(1)の側面側に、前記カムロッド(24)がリリース位置にあることを検出するリリースセンサ(30)が配置されている、
部材交換装置。
【請求項3】
請求項1または2の部材交換装置において、
前記ハウジング(1)の側面側に、前記カムロッド(24)がロック位置にあることを検出するロックセンサ(34)が配置されている、
部材交換装置。
【請求項4】
請求項1または2の部材交換装置において、
前記カムロッド(24)の、前記カム溝(25)が形成された側とは反対側の外周面に、当該カムロッド(24)の軸方向に延びるガイド溝(28)が形成されており、
前記ガイド溝(28)に配置される回り止め回転体(29)を収容する保持穴(23a)が、前記ガイド孔(23)における、前記操作部材(9)から前記基端側方向へ延ばした仮想の延長線(C)と交差する部分に設けられている、
部材交換装置。
【請求項5】
請求項1または2の部材交換装置において、
前記先端側方向へ移動した前記操作部材(9)が嵌り込む凹面(26)が前記カム面(25a)と連なるように前記カムロッド(24)の外周面に形成されている、
部材交換装置。
【請求項6】
請求項1または2の部材交換装置において、
前記付勢手段(10)はバネ(10)であり、
前記出力ロッド(5)の基端部の外周面に、前記バネ(10)の一端を受け止めるリング状のバネ受け(11)が前記出力ロッド(5)と一体的に前記基端側方向へ移動するように配置されており、
前記バネ受け(11)は、前記バネ(10)の一端を受け止める受け部(13)と、前記筒孔(6)と摺動する筒壁部(14)とを有し、
前記筒壁部(14)の長さは、前記受け部(13)の径方向の幅よりも長い、
部材交換装置。
【請求項7】
請求項1または2の部材交換装置において、
前記カムロッド(24)において、前記出力ロッド(5)の基端部が入り込むロッド逃がし溝(27)が前記カム溝(25)と重なるように形成されている、
部材交換装置。
【請求項8】
請求項1または2の部材交換装置において、
前記操作部材(9)は球体である、
部材交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具、治具、機械加工対象物、パレットなどの部材を、ロボットアーム、搬送機械の可動部分、固定台としてのテーブルなどに着脱可能に固定するのに好適な部材交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記部材交換装置は、部材を着脱可能に固定するためのものであるため、機能の点でいわゆるクランプ装置に類似する。クランプ装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るそのクランプ装置は、次のように構成されている。
【0003】
クランプ装置は、ハウジングから突設される筒状のプラグ部、出力ロッド、係合用のボール、およびピストンなどから構成される。クランプ装置を構成するハウジングには、圧力流体が給排されるクランプ室およびアンクランプ室が設けられている。クランプ装置の駆動、すなわちピストンおよび出力ロッドの駆動には、例えば圧縮エアが用いられ、駆動のたびに、クランプ室およびアンクランプ室に圧縮エアが給排される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/177385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクランプ装置が多数設置されると、圧縮エアの供給設備として、規模が大きな設備が必要となる。また、圧縮エアを給排する配管設備は、数量が多く且つ複雑なものとなる。これらは、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない側面がある。そのため、駆動源として圧縮エアは不要である、または必要であるとしても最小限であることが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ部材交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る部材交換装置は、例えば、図1および図2に示すように、次のように構成される。
【0008】
(1)本願で開示する部材交換装置は、ハウジング1と、前記ハウジング1から突設される筒状のプラグ部4と、前記プラグ部4のプラグ部筒孔4aに当該プラグ部筒孔4aの軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド5と、前記プラグ部4の周壁に形成された貫通孔15に挿入される係合部材16であって、前記出力ロッド5が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔15内で移動され、前記プラグ部4が挿入可能となるようにクランプ対象物Tに設けられる装着孔40が有する係止部41に当接可能となっている係合部材16と、前記ハウジング1に形成された筒孔6、7であって、前記出力ロッド5が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔6、7と、前記出力ロッド5の基端側端面に形成された凹部8に回転可能な状態で収容される操作部材9であって、前記出力ロッド5を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材9と、前記筒孔6、7の内部に配置され、または前記筒孔6、7の内部に充填され、前記出力ロッド5を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段10と、前記ハウジング1の基端部に形成されたガイド孔23であって、前記軸方向に対して交差する方向へ延びるガイド孔23と、前記ガイド孔23に移動可能に挿入されるカムロッド24であって、前記操作部材9が嵌り込むカム溝25が外周面に形成されたカムロッド24と、を備える。前記カム溝25は、前記操作部材9を前記先端側方向へ押すためのカム面25aを有する。付勢手段10は、例えばバネまたは圧縮ガス(圧力ガス)である。
【0009】
本願で開示する部材交換装置は次の作用効果を奏する。当該部材交換装置は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該部材交換装置では、内蔵された上記のカムロッドが手動、または外力によって動かされることで、軸方向のうちの先端側方向へ操作部材を介して出力ロッドは駆動される。軸方向のうちのもう一方の方向である基端側方向へは、上記の付勢手段によって出力ロッドは駆動される。したがって、当該部材交換装置は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ。
【0010】
(2)(1)の部材交換装置において、前記ハウジング1の側面側に、前記カムロッド24がリリース位置にあることを検出するリリースセンサ30が配置されてもよい。
【0011】
この構成によると、部材交換装置がリリース状態にあることを容易に把握できる。
【0012】
(3)(1)または(2)のクランプ装置において、前記ハウジング1の側面側に、前記カムロッド24がロック位置にあることを検出するロックセンサ34が配置されてもよい。
【0013】
この構成によると、部材交換装置がロック状態にあることを容易に把握できる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれかの部材交換装置において、前記カムロッド24の、前記カム溝25が形成された側とは反対側の外周面に、当該カムロッド24の軸方向に延びるガイド溝28が形成されており、前記ガイド溝28に配置される回り止め回転体29を収容する保持穴23aが、前記ガイド孔23における、前記操作部材9から前記基端側方向へ延ばした仮想の延長線Cと交差する部分に設けられてもよい。
【0015】
この構成によると、操作部材がカム面で押されて先端側方向へ移動しているときの、カムロッドが操作部材から受ける反力を上記の回り止め回転体で受けることができる。また、先端側方向へ操作部材が移動完了したとき、および操作部材がカム溝に嵌り込んでいるときの、カムロッドが操作部材から受ける力も上記の回り止め回転体で受けることができる。これらの結果、カムロッドの外周面との摺動でガイド孔が傷つくことなどを防止でき、スムーズなカムロッドの動きを長く維持できる。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれかの部材交換装置において、前記先端側方向へ移動した前記操作部材9が嵌り込む凹面26が前記カム面25aと連なるように前記カムロッド24の外周面に形成されてもよい。
【0017】
この構成によると、先端側方向へ操作部材が移動完了したときの操作部材の状態保持が安定する。
【0018】
(6)(1)から(5)のいずれかの部材交換装置において、前記付勢手段10はバネ10であり、前記出力ロッド5の基端部の外周面に、前記バネ10の一端を受け止めるリング状のバネ受け11が前記出力ロッド5と一体的に前記基端側方向へ移動するように配置されており、前記バネ受け11は、前記バネ10の一端を受け止める受け部13と、前記筒孔6と摺動する筒壁部14とを有し、前記筒壁部14の長さは、前記受け部13の径方向の幅よりも長くされてよい。
【0019】
この構成によると、バネ受けによって出力ロッドが支持され、出力ロッドの軸方向の動きが安定する。
【0020】
(7)(1)から(6)のいずれかの部材交換装置において、前記カムロッド24において、前記出力ロッド5の基端部が入り込むロッド逃がし溝27が前記カム溝25と重なるように形成されてもよい。
【0021】
出力ロッドの軸方向の移動距離を十分に確保しようとすると、カム溝の深さをある程度深いものとする必要がある。この場合に、出力ロッドの基端部がカムロッドに衝突することが危惧されるところ、上記の構成によると、出力ロッドがカムロッドに衝突することを防止できる。言い換えれば、上記の構成によると、出力ロッドの軸方向の移動距離を十分に確保できる。
【0022】
(8)(1)から(7)のいずれかの部材交換装置において、前記操作部材9は球体とされてよい。
【0023】
この構成によると、先端側方向へ出力ロッドをスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ部材交換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態を示し、部材交換装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図2図2は、図1に示す部材交換装置のロック状態における側面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態の説明では、ロボットアームRAの先端部に部材交換装置を取り付けて、クランプ対象物である工具などのツールTを当該部材交換装置によってロボットアームRAに着脱可能に固定するという、部材交換装置の使用例を例示している。このような用途の部材交換装置は、ツールチェンジャーと呼ばれる。
【0027】
図1および図2に基づいて、本発明の一実施形態に係る部材交換装置の構成を説明する。
【0028】
ロボットアームRAの先端部に部材交換装置のハウジング1が固定される。ハウジング1は、基端側(ロボットアームRA側)の第1ハウジング2と、先端側の第2ハウジング3とを備える。第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、複数のボルト(図示せず)によって固定される。なお、部材交換装置の組み立てにおいて問題がない場合は、第1ハウジング2と第2ハウジング3とは一体であってもよい。
【0029】
第2ハウジング3から筒状のプラグ部4が先端側方向へ一体に突設される。プラグ部4のプラグ部筒孔4aに出力ロッド5のロッド先端部分5aが上下方向(プラグ部筒孔4aの軸方向)へ移動可能に挿入される。出力ロッド5の軸方向とプラグ部筒孔4aの軸方向とは同じ方向である。
【0030】
第2ハウジング3の基端側に筒孔6が形成され、筒孔6内に出力ロッド5のロッド基端部分5bが上下方向へ移動可能に挿入される。筒孔6は、プラグ部筒孔4aよりも径が大きい孔である。筒孔6とプラグ部筒孔4aとの間に中径筒孔7が形成されている。筒孔6、中径筒孔7、およびプラグ部筒孔4aの各軸方向は同じ方向である。中径筒孔7の径は、筒孔6の径よりも小さく、プラグ部筒孔4aの径よりも大きい。なお、中径筒孔7の径は、筒孔6の径と同じにされてもよい。
【0031】
ロッド基端部分5bの基端側端面に形成された凹部8に、操作部材としてのボール9(球体、回転体)が回転可能な状態で収容される。なお、操作部材としてボール9に代えてローラ(不図示)などの回転体を用いることも可能である。ボール9は凹部8によって支持される。ここで、ロッド基端部分5bの基端側端面に凹部8を設けずに当該基端側端面を平らな面としたまま、ボール9を第1ハウジング2または第2ハウジング3から支持するという構造も考えられる。しかしながら、この構造によると、部材交換装置の軸方向の長さが大きくなってしまう。すなわち、本実施形態のように、ロッド基端部分5bの基端側端面に凹部8を設け、凹部8にボール9を収容するという構造を採用したことで、部材交換装置の軸方向の長さを短くすることができ、コンパクトな部材交換装置となる。
【0032】
筒孔6および中径筒孔7の内部に、出力ロッド5を上方(基端側方向)へ押す付勢手段としてのバネ10が配置される。バネ10は圧縮コイルバネである。ロッド基端部分5bの基端部の外周面に、バネ10の一端を受け止めるリング状のバネ受け11が配置される。バネ10の他端は、プラグ部筒孔4aと中径筒孔7との間の段差部で受け止められる。バネ受け11は、リング状のストッパ12(止め輪)によって上方(基端側方向)への移動が規制されている。そのため、バネ受け11は、出力ロッド5と一体的に上方(基端側方向)へ移動する。バネ受け11は、バネ10の一端を受け止める受け部13と、筒孔6内で摺動する筒壁部14とを有する。筒壁部14の軸方向の長さは、受け部13の径方向の幅よりも長い。筒壁部14の軸方向の長さが長いことで、筒壁部14と筒孔6との摺動面積が大きくなり出力ロッド5の軸方向の動きが安定する。
【0033】
なお、出力ロッド5を基端側方向へ押す付勢手段として、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である。また、部材交換装置の組み立てにおいて問題がない場合は、出力ロッド5とバネ受け11とは一体であってもよい。
【0034】
プラグ部4の周壁の先端寄り部分に複数の貫通孔15が周方向へ所定間隔をあけて形成される。各貫通孔15に、係合部材としてのボール16(係合ボール)が挿入される。貫通孔15によって、径方向の内方の図1に示す位置と径方向の外方の図2に示す位置(外側位置)との間で各ボール16が移動可能に支持される。
【0035】
出力ロッド5のロッド先端部分5aの外周壁には、各ボール16に対応させて、押圧面17と退避溝18とが上下に連ねて形成される。押圧面17は、先端側方向へ向かうにつれて広がるように形成される。押圧面17がボール16に対面する位置に移動することにより、ボール16がプラグ部4の外周面よりも径方向の外方へ突出するように外側位置へ移動される。また、退避溝18がボール16に対面する位置であって、ボール16が挿入可能となる退避位置に移動することにより、ボール16がプラグ部4の外周面よりも径方向の内方へ移動可能となる。本実施形態では、4つのボール16が各貫通孔15にそれぞれ1つずつ挿入されているが、ボール16は4つに限定されない。
【0036】
プラグ部4の周壁の基端部(根本部)に環状のコレット19が外嵌される。コレット19は先端側すぼまりのテーパ外周面19aを備え、上下方向へ延びる1つのスリット19bによって弾性的に縮径されるようになっている。コレット19は止め輪20によってプラグ部4から抜けないようにされている(先端側方向への移動が規制されている)。第2ハウジング3の上面3aに、複数の穴22が周方向へ所定間隔をあけて形成される。穴22に、コレット19を先端側方向へ押す付勢手段としてのバネ21が挿入される。バネ21は圧縮コイルバネである。コレット19はバネ21によって先端側方向へ付勢されている。そのため、止め輪20によって先端側方向への移動が規制されているコレット19は、僅かではあるが、上下方向へ移動可能である。本実施形態では、3本のバネ21が各穴22にそれぞれ1本ずつ挿入されているが、バネ21は3本に限定されない。また、コレット19を先端側方向へ押す付勢手段として、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である。
【0037】
第1ハウジング2に、出力ロッド5の軸方向に対して交差する方向へ延びるガイド孔23が形成される。なお、本実施形態におけるガイド孔23は、出力ロッド5の軸方向に対して直交する方向へ延びる。ガイド孔23に、カムロッド24が移動可能に挿入される。
【0038】
カムロッド24の外周面に、ボール9が嵌り込むカム溝25が形成される。カム溝25は、ボール9を先端側方向へ押すためのカム面25aを有する。カム面25aは、カムロッド24の軸方向に対して傾斜する面である。また、先端側方向へ移動したボール9が嵌り込む凹面26がカム面25aと連なるように形成される。また、カム溝25と重なるようにして、カム溝25よりも浅いロッド逃がし溝27が、カム溝25と同じ側のカムロッド24の外周面に形成される。
【0039】
出力ロッド5の軸方向の移動距離を十分に確保しようとすると、カム溝25の深さをある程度深いものとする必要がある。この場合に、出力ロッド5の基端部がカムロッド24の外周面に衝突することが危惧されるところ、上記の構成によると、ロッド逃がし溝27によって出力ロッド5がカムロッド24に衝突することを防止できる。言い換えれば、上記の構成によると、出力ロッド5の軸方向の移動距離を十分に確保できる。
【0040】
カムロッド24において、カム溝25およびロッド逃がし溝27が形成された側とは反対側の外周面に、カムロッド24の軸方向に延びるガイド溝28が形成される。ガイド溝28に、回り止め回転体としてのボール29が配置される。ボール29は、前記のガイド孔23に形成された保持穴23aに回転可能な状態で収容される。保持穴23aは、ボール9の中心部(出力ロッド5の軸心部)から出力ロッド5の軸方向のうちの基端側方向へ延ばした仮想の延長線Cと、ガイド孔23とが交差する部分に設けられている。
【0041】
上記構成によると、ボール9がカム面25aで押されて先端側方向へ移動しているときの、カムロッド24がボール9から受ける反力を上記のボール29で受けることができる。また、先端側方向へボール9が移動完了したとき、およびボール9がカム溝25に嵌り込んでいるときの、カムロッド24がボール9から受ける力も上記のボール29で受けることができる。これらの結果、カムロッド24の外周面との摺動でガイド孔23が傷つくことなどを防止でき、スムーズなカムロッド24の動きを長く維持できる。なお、上記反力等は、基本的には、ガイド溝28の図中左側に位置するカムロッド24の外周面(径が大きい部分の外周面)と接触するガイド孔23の内周面、およびガイド溝28部分におけるカムロッド24の外周面のうちのガイド溝28が形成されていない部分と接触するガイド孔23の内周面で受け止められる。
【0042】
カムロッド24の動きをより滑らかなものとするために、その外周面には周方向に延びる溝24aが形成されている。溝24aは複数形成されている。当該溝24a部分に油だまりが形成されることにより、カムロッド24とガイド孔23との間に働く摩擦力を小さくすることができ、カムロッド24の動きを滑らかなものとすることができる。カムロッド24は小径部24bを有し、小径部24bの外周にバネ36が装着されている。なお、バネ36の付勢力は、バネ10の付勢力よりも十分小さい。ボール9が押し付けられているカムロッド24がバネ36の付勢力のみで動くというものではない。
【0043】
第1ハウジング2の側面側に、カムロッド24が図1に示すリリース位置にあることを検出するリリースセンサ30が配置される。第1ハウジング2の側面にセンサ取付部材31が固定される。このセンサ取付部材31の側面にリリースセンサ30が取り付けられる。センサ取付部材31は筒孔31aを有し、筒孔31aにカムロッド24が移動可能に挿入される。リリースセンサ30は磁気センサである。カムロッド24の外周面に、カムロッド24がリリース位置にあることを検出するためのリング状の磁石32が装着される。リリースセンサ30が磁石32を検出することで、カムロッド24がリリース位置にあることを検出できる。
【0044】
センサ取付部材31が固定された側とは反対側の、第1ハウジング2の側面にもう1つのセンサ取付部材33が固定される。このセンサ取付部材33の側面にロックセンサ34が取り付けられる。センサ取付部材33は筒孔33aを有し、筒孔33aにカムロッド24が移動可能に挿入される。ロックセンサ34は磁気センサである。カムロッド24の外周面に、カムロッド24がロック位置にあることを検出するためのリング状の磁石35が装着される。ロックセンサ34が磁石35を検出することで、カムロッド24がロック位置にあることを検出できる。
【0045】
リリースセンサ30が配置されることで、部材交換装置がリリース状態にあることを容易に把握できる。また、ロックセンサ34が配置されることで、部材交換装置がロック状態にあることを容易に把握できる。なお、リリースセンサ30およびロックセンサ34は磁気センサに限定されない。
【0046】
ツールTの基端にツールアダプタ37が固定される。ツールアダプタ37に凹部38が開口される。凹部38にリング部材39が装着され、リング部材39は複数のボルト(図示せず)によってツールアダプタ37に固定される。リング部材39の内周孔によって装着孔40が構成され、装着孔40にプラグ部4が挿入可能になっている。装着孔40は、クランプ対象物であるツールTに設けられた装着孔に相当する。
【0047】
リング部材39の装着孔40に係止部41が凹部38の底方向へ向かうにつれて広がるようにテーパ状に形成される。また、係止部41よりも開口側に近い部分に、コレット19のテーパ外周面19aに係合するテーパ内周面42が形成される。テーパ内周面42は、凹部38の底方向へ向かうにつれて狭まるように形成された面である。
【0048】
なお、本実施形態では、装着孔40をリング部材39に形成するようにしたが、ツールアダプタ37の凹部38の内周孔によって装着孔40を構成するようにしてもよい。すなわち、ツールアダプタ37の凹部38の内周孔自体に、上記係止部41およびテーパ内周面42が形成されてもよい。さらには、ツールT自体に、上記係止部41およびテーパ内周面42を有する装着孔40が設けられてもよい。
【0049】
装着孔40がツールTに設けられるとは、ツールT自体に装着孔40が設けられる形態だけでなく、ツールアダプタ37に装着孔40が設けられたり、本実施形態のようにリング部材39に装着孔40が設けられたりする形態を含む。すなわち、装着孔40がツールTに設けられるとは、ツールT自体に装着孔40が設けられる形態に加えて、ツールTに直接的に(ツールアダプタ37の場合)または間接的に(リング部材39の場合)固定される部材に装着孔40が設けられる形態を含む。
【0050】
上記構成の部材交換装置は次のように動作する。
【0051】
図1に示すリリース状態では、ボール9は、カムロッド24に形成された凹面26に嵌り込んでいるとともに、図2に示すロック状態のときよりも第2ハウジング3の筒孔6内に押し込まれている。これにより、バネ10の付勢力に抗してボール9が出力ロッド5を先端側方向へ押して下降させた状態となっている。出力ロッド5が下降しているので、プラグ部4のボール16が退避溝18内の退避位置に移動可能となっている。ロボットアームRAを操作して、ツールアダプタ37を介してツールTに固定されたリング部材39の上方に、出力ロッド5などを備える部材交換装置が取り付けられたロボットアームRAの先端部を位置させる。
【0052】
ツールTをロボットアームRAに取り付けるときは、まず、ロボットアームRAの先端部を下降させて、リング部材39の装着孔40にプラグ部4が挿入された状態とする。このとき、装着孔40に形成されているテーパ内周面42に、拡径状態のコレット19のテーパ外周面19aが当たり、第2ハウジング3の上面3a(着座面)とリング部材39との間に少しの隙間が形成された状態にある。その後、ロボットアームRAの先端部を水平方向に移動させるなどして、センサ取付部材31から突出しているカムロッド24の端部24cを、静止している物体(不図示)に当て、当該物体からの反力でカムロッド24の端部24cをガイド孔23内に押し込む。カムロッド24の端部24cがガイド孔23内に押し込まれると、カムロッド24に形成された凹面26からボール9は外れる。そしてボール9は、バネ10の付勢力によって押されてカム面25aに沿ってカム溝25に入り込んでいく。また、バネ10がバネ受け11を介して出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させるので、出力ロッド5は上昇する。出力ロッド5が上昇すると、出力ロッド5に形成されている退避溝18の一部を構成する押出し部18aがプラグ部4のボール16を径方向の外方の突出位置へ押し出す。そして、出力ロッド5に形成されている押圧面17がボール16を介してツールT(リング部材39)の係止部41を上向きに押圧していく。これにより、コレット19は縮径しツールTとともに少しばかり上昇する。その結果、リング部材39が第2ハウジング3の上面3aに受け止められ、ツールTはロボットアームRAの先端部に部材交換装置を介して強固に固定される。部材交換装置は、図1に示すリリース状態から図2に示すロック状態へ切換えられる。
【0053】
部材交換装置を図2に示すロック状態から図1に示すリリース状態へ切換えるときは、ロボットアームRAを操作して、センサ取付部材33から突出しているカムロッド24の端部24dを、静止している物体(不図示)に当て、当該物体からの反力でカムロッド24の端部24dをガイド孔23内に押し込む。カムロッド24の端部24dがガイド孔23内に押し込まれると、カムロッド24に形成されたカム面25aがボール9を押し、ボール9はカム面25aに沿って移動して凹面26に乗り上がる。これにより、バネ10の付勢力に抗してボール9が出力ロッド5を先端側方向へ押して、出力ロッド5は下降する。出力ロッド5が下降すると、出力ロッド5に形成されている退避溝18がプラグ部4のボール16に対面する位置となり、ボール16は退避溝18内(出力ロッド5の径方向の内方)へ移動可能となる。その結果、図1に示すように、ツールT(リング部材39)をロボットアームRAから円滑に取り外すことが可能となる。
【0054】
なお、ボール9が回転することで、ボール9とカム面25aとの間の摩擦力が低減される。このため、ボール9が出力ロッド5を介してバネ受け11の筒壁部14を筒孔6の内周面に押し付ける力が軽減されて、筒壁部14の外周面および筒孔6の内周面に部分的なすべり摩耗や破損が生じることが軽減される。また、プラグ部4のプラグ部筒孔4aの内周面と出力ロッド5の外周面との間に生じる部分的な摩耗や破損も軽減される。その結果、出力ロッド5を先端側方向へスムーズに移動させることができる。
【0055】
本実施形態の部材交換装置は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該部材交換装置では、内蔵されたカムロッド24を介してボール9が外力によって動かされることで、出力ロッド5はボール9で押されて先端側方向へ駆動される。先端側方向とは逆方向である基端側方向へは、バネ10によって出力ロッド5は駆動される。したがって、当該部材交換装置は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない。なお、カムロッド24を物体に当てて動かすのではなく、カムロッド24を人の手で押して動かしてもよい。
【0056】
上記の部材交換装置では、筒孔6および中径筒孔7の内部にバネ10を配置し、バネ10が出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させるようにしている。これに代えて、筒孔6および中径筒孔7内の空間を圧ガス室とし、当該圧ガス室のガス圧で、出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させるようにしてもよい。圧ガス室とは、内部に圧力ガスが充填された室のことである。圧ガス室は、室外部へ圧力ガスが漏れ出ないように室外部に対して封止される。圧ガス室に充填された圧力ガスが、出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させる、バネ10に代わる付勢手段となる。圧力ガスは、圧縮空気、圧縮窒素ガスなどである。
【0057】
圧ガス室は、上記のとおり、室外部へ圧力ガスが漏れ出ないように封止されるが、充填された圧力ガスによって出力ロッド5を駆動すると、少量ではあるが、圧ガス室から圧力ガスが漏れ出てしまうことがある。そのため、出力ロッド5を動かすのに必要な圧ガス室のガス圧を維持するために、圧ガス室から漏れ出た量の圧縮空気のみが圧ガス室に充填されるように部材交換装置が構成されるとよい。
【0058】
上記構成によると、圧ガス室には、当該圧ガス室から漏れ出た量の圧力ガスが供給されることとなるが、圧力ガスの使用量は極めて少ない。よって、空気圧縮機などの圧力ガスの供給設備は必要であるものの、その設備規模は極めて小さくてすむ。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0060】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0061】
部材交換装置の姿勢は、例示した上下姿勢に対して、上下逆にされたり、横向きにされたり、さらには斜め向きにされたりしてもよい。
【0062】
部材交換装置は、搬送機械の可動部分、固定台としてのテーブルなどに固定されてもよい。クランプ対象物は、治具、機械加工対象物、パレットなどであってもよい。
【0063】
リリースセンサ30およびロックセンサ34の両方、またはリリースセンサ30およびロックセンサ34のうちの一方が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:ハウジング、4:プラグ部、4a:プラグ部筒孔、5:出力ロッド、6:筒孔、7:中径筒孔(筒孔)、8:凹部、9:ボール(操作部材)、10:バネ(付勢手段)、11:バネ受け、13:受け部、14:筒壁部、15:貫通孔、16:ボール(係合部材)、23:ガイド孔、23a:保持穴、24:カムロッド、25:カム溝、25a:カム面、26:凹面、27:ロッド逃がし溝、28:ガイド溝、29:ボール(回り止め回転体)、30:リリースセンサ、34:ロックセンサ、40:装着孔、41:係止部、C:延長線、T:ツール(クランプ対象物)
図1
図2