(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004824
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】セラミック構造体
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240110BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03F7/20 521
F27D3/12 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104677
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】垰本 優樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 光
【テーマコード(参考)】
2H197
4K055
【Fターム(参考)】
2H197CD12
2H197HA03
2H197JA02
4K055AA05
4K055AA06
4K055HA02
4K055HA14
4K055HA18
4K055HA20
4K055HA27
(57)【要約】
【課題】軽量、高剛性、及び高固有振動数を実現するセラミック構造体を提供すること。
【解決手段】セラミック構造体において、複数のリブは、第1~第4側板のいずれに対しても傾斜する第1リブと、第1リブと平行であり、第1リブから第1距離離れて設けられた第2リブと、第1~第4側板のいずれに対しても傾斜し、上板及び第1~第4側板により区画される空間内において第1リブと交差する第3リブと、第3リブと平行であり、前記空間内において第2リブと交差し、且つ第3リブから第1距離離れて設けられた第4リブと、を少なくとも有する。第1リブと第4リブとの第1交差部、第2リブと第3リブとの第2交差部、第3リブと第1リブとの第3交差部、及び第4リブと第2リブとの第4交差部のうち少なくとも2つの交差部が、第1~第4側板のいずれとも接続せず、前記空間内に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が載置される上板と、
前記上板に交わるように設けられる第1~第4側板と、
前記上板及び前記第1~第4側板により区画される空間内において前記上板に接続される複数のリブであって、前記複数のリブのそれぞれが前記第1~第4側板のいずれかに接続する、前記複数のリブと、
を備えた、セラミックを主成分とするセラミック構造体であって、
前記第1側板及び前記第2側板は互いに平行であり、
前記第3側板及び前記第4側板は、互いに平行であり、且つ前記第1側板及び前記第2側板に垂直であり、
前記複数のリブは、
前記第1~第4側板のいずれに対しても傾斜する第1リブと、
前記第1リブと平行であり、前記第1リブから第1距離離れて設けられた第2リブと、
前記第1~第4側板のいずれに対しても傾斜し、前記空間内において前記第1リブと交差する第3リブと、
前記第3リブと平行であり、前記空間内において前記第2リブと交差し、且つ前記第3リブから前記第1距離離れて設けられた第4リブと、
を少なくとも有し、
前記第1リブと前記第4リブとの第1交差部、前記第2リブと前記第3リブとの第2交差部、前記第3リブと前記第1リブとの第3交差部、及び前記第4リブと前記第2リブとの第4交差部のうち少なくとも2つの交差部が、前記第1~第4側板のいずれとも接続せず、前記空間内に位置する、セラミック構造体。
【請求項2】
前記第1交差部、前記第2交差部、前記第3交差部、及び前記第4交差部のすべてが、前記第1~第4側板のいずれとも接続せず、前記空間内に位置する、請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】
前記空間の平面視において、前記第1側板の中心と前記第2側板の中心とを結ぶ第1対称線と、前記第3側板の中心と前記第4側板の中心とを結ぶ第2対称線とによって前記空間を第1~第4領域に分割すると、
前記第1~第4リブのそれぞれは、前記第1~第4領域のうち、前記第1対称線と前記第2対称線との交点を挟んだ対角位置にある2つの領域の一方の領域から他方の領域に延びる、請求項2に記載のセラミック構造体。
【請求項4】
前記第1リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、
前記第2リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続され、
前記第3リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、
前記第4リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続される、請求項3に記載のセラミック構造体。
【請求項5】
前記第1リブの一端は、前記第2側板と前記第3側板とが形成する第1角部に接続され、
前記第1リブの他端は、前記第1側板に接続され、
前記第2リブの一端は、前記第2側板に接続され、
前記第2リブの他端は、前記第1側板と前記第4側板とが形成する第2角部に接続され、
前記第3リブの一端は、前記第1側板と前記第3側板とが形成する第3角部に接続され、
前記第3リブの他端は、前記第2側板に接続され、
前記第4リブの一端は、前記第1側板に接続され、
前記第4リブの他端は、前記第2側板と前記第4側板とが形成する第4角部に接続される、請求項3に記載のセラミック構造体。
【請求項6】
前記第1側板の長さ及び前記第2側板の長さは、前記第3側板の長さ及び前記第4側板の長さよりも長く、
前記第1リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、
前記第2リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、
前記第3リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、
前記第4リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続される、請求項3に記載のセラミック構造体。
【請求項7】
前記第1交差部と前記第2交差部とを結ぶ第1仮想線は、前記第3側板及び前記第4側板と平行である、請求項1~6のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
【請求項8】
前記複数のリブは、前記第1側板及び前記第2側板と接続される第5リブをさらに有する、請求項1~6のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
【請求項9】
前記第5リブは、前記第3側板及び前記第4側板と平行である、請求項8に記載のセラミック構造体。
【請求項10】
前記第5リブは、前記第1交差部及び前記第2交差部と交わる、請求項9に記載のセラミック構造体。
【請求項11】
前記複数のリブは、
前記第1側板及び前記第2側板と接続される第5リブと、
前記第1リブ及び前記第2リブと平行であり、前記第1リブ及び前記第2リブから離れて設けられた第6リブと、
前記第6リブと平行であり、前記第6リブから第2距離離れて設けられた第7リブと、
前記第3リブ及び前記第4リブと平行であり、前記空間内において前記第6リブ及び前記第7リブと交差する第8リブと、
前記第8リブと平行であり、前記空間内において前記第6リブ及び前記第7リブと交差し、且つ前記第8リブから前記第2距離離れて設けられた第9リブと、
をさらに有し、
前記第1リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、
前記第2リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第5リブとそれぞれ接続され、
前記第3リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、
前記第4リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第5リブとそれぞれ接続され、
前記第6リブの一端は前記第5リブと、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、
前記第7リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続され、
前記第8リブの一端は前記第5リブと、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、
前記第9リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続される、請求項1または2に記載のセラミック構造体。
【請求項12】
前記上板の厚さは、前記第1~第4側板の厚さ、および前記複数のリブの厚さと同じ、または大きいことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、セラミック構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやFDP(Flat Panel Display)の微細化に伴い、それらの製造装置には高精度化が求められる。例えば、露光装置などにおいて重要な要素であるエアスライドステージに高精度化が求められる。従来、エアスライドステージを構成する部材には、金属よりも軽量で剛性の高いセラミックを用いることで高精度化が図られている。近年IoTの発展に伴い、半導体デバイスやFDPの性能は急速に進化しており、更なる微細化に加えて、低コストが求められている。そのため、製造装置においても、更なる高精度化及び高スループット化が要求される。特にエアスライドステージは、高精度化及び高スループット化の実現に重要な役割を担い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-163257号公報
【特許文献2】特開2016-509539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高スループットを実現する手段として、エアスライドステージを駆動させるモーターの出力を上げることでステージの加速度を上げる方法がある。しかし、加速度を上げると、エアスライドステージを構成する部材にかかる力が大きくなり、部材が変形して所望の運動精度を達成できなくなるおそれがある。また、ステージの高速移動により高周波振動が発生し得るが、この振動数がエアスライドステージを構成する部材の固有振動数と一致した場合には共振を生じる。この共振によって、エアスライドステージを構成する部材の振動が増幅されるため、所望の運動精度を達成できなくなるおそれがある。これを解決するために、部材の高剛性化及び固有振動数の向上が考えられる。部材の高剛性化には単純に部材の重量を増加させる方法があるが、固有振動数の向上には重量の削減が有効であるため、重量の増加による高剛性化と固有振動数の向上は相反する。加えて、部材の重量が増加すると、スループットの低下が懸念される。
【0005】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、軽量、高剛性、及び高固有振動数を実現するセラミック構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被処理物が載置される上板と、前記上板に交わるように設けられる第1~第4側板と、前記上板及び前記第1~第4側板により区画される空間内において前記上板に接続される複数のリブであって、前記複数のリブのそれぞれが前記第1~第4側板のいずれかに接続する、前記複数のリブと、を備えた、セラミックを主成分とするセラミック構造体であって、前記第1側板及び前記第2側板は互いに平行であり、
前記第3側板及び前記第4側板は、互いに平行であり、且つ前記第1側板及び前記第2側板に垂直であり、前記複数のリブは、前記第1~第4側板のいずれに対しても傾斜する第1リブと、前記第1リブと平行であり、前記第1リブから第1距離離れて設けられた第2リブと、前記第1~第4側板のいずれに対しても傾斜し、前記空間内において前記第1リブと交差する第3リブと、前記第3リブと平行であり、前記空間内において前記第2リブと交差し、且つ前記第3リブから前記第1距離離れて設けられた第4リブと、を少なくとも有し、前記第1リブと前記第4リブとの第1交差部、前記第2リブと前記第3リブとの第2交差部、前記第3リブと前記第1リブとの第3交差部、及び前記第4リブと前記第2リブとの第4交差部のうち少なくとも2つの交差部が、前記第1~第4側板のいずれとも接続せず、前記空間内に位置する、セラミック構造体である。
【0007】
第1の発明において、第1~第4リブは、各辺が第1~第4側板に対して傾斜した菱形を形成し、第1~第4交差部のそれぞれは、第1~第4リブによって形成される菱形の頂点に位置する。また、リブのそれぞれが第1~第4側板のいずれかに接続するため、リブによって側板を支えることができる。第1の発明によれば、第1~第4側板のいずれかに平行に格子状にリブを設ける場合に比べて、軽量化のためリブの数を制限しつつも、高剛性及び高固有振動数を実現できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1交差部、前記第2交差部、前記第3交差部、及び前記第4交差部のすべてが、前記第1~第4側板のいずれとも接続せず、前記空間内に位置する、セラミック構造体である。
【0009】
第2の発明によれば、交差部が第1~第4側板のいずれとも接続しないということは、異なるリブの端どうしが側板における同じ位置で接続しない。これにより、応力が分散され、剛性を高くできる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記空間の平面視において、前記第1側板の中心と前記第2側板の中心とを結ぶ第1対称線と、前記第3側板の中心と前記第4側板の中心とを結ぶ第2対称線とによって前記空間を第1~第4領域に分割すると、
前記第1~第4リブのそれぞれは、前記第1~第4領域のうち、前記第1対称線と前記第2対称線との交点を挟んだ対角位置にある2つの領域の一方の領域から他方の領域に延びる、セラミック構造体である。
【0011】
第3の発明によれば、リブが、第1対称線と第2対称線との交点を挟まずに隣接する領域間を延びる場合に比べて、ねじれに対して強くできる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記第1リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、前記第2リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続され、前記第3リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、前記第4リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続される、セラミック構造体である。
【0013】
第4の発明によれば、菱形を形成する第1~第4リブの延長部が、それぞれ、側板に接続して側板を支えることで、側板のねじれや変形を抑制することができる。
【0014】
第5の発明は、第3の発明において、前記第1リブの一端は、前記第2側板と前記第3側板とが形成する第1角部に接続され、前記第1リブの他端は、前記第1側板に接続され、前記第2リブの一端は、前記第2側板に接続され、前記第2リブの他端は、前記第1側板と前記第4側板とが形成する第2角部に接続され、前記第3リブの一端は、前記第1側板と前記第3側板とが形成する第3角部に接続され、前記第3リブの他端は、前記第2側板に接続され、前記第4リブの一端は、前記第1側板に接続され、前記第4リブの他端は、前記第2側板と前記第4側板とが形成する第4角部に接続される、セラミック構造体である。
【0015】
第5の発明によれば、菱形を形成する第1~第4リブの延長部が、それぞれ、側板に接続して側板を支えることで、側板のねじれや変形を抑制することができる。
【0016】
第6の発明は、第3の発明において、前記第1側板の長さ及び前記第2側板の長さは、前記第3側板の長さ及び前記第4側板の長さよりも長く、前記第1リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、前記第2リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、前記第3リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、前記第4リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続される、記載のセラミック構造体である。
【0017】
第6の発明によれば、菱形を形成する第1~第4リブの延長部が、それぞれ、側板に接続して側板を支えることで、側板のねじれや変形を抑制することができる。
【0018】
第7の発明は、第1~第6の発明のいずれか1つにおいて、前記第1交差部と前記第2交差部とを結ぶ第1仮想線は、前記第3側板及び前記第4側板と平行である、セラミック構造体である。
【0019】
第7の発明によれば、比剛性低下を抑制することができる。
【0020】
第8の発明は、第1~第6の発明のいずれか1つにおいて、前記複数のリブは、前記第1側板及び前記第2側板と接続される第5リブをさらに有する、セラミック構造体である。
【0021】
第8の発明によれば、特に1次モードの振動に対して剛性をより高くすることができる。
【0022】
第9の発明は、第8の発明において、前記第5リブは、前記第3側板及び前記第4側板と平行である、セラミック構造体である。
【0023】
第9の発明によれば、特に1次モードの振動に対して剛性をより高くすることができる。
【0024】
第10の発明は、第9の発明において、前記第5リブは、前記第1交差部及び前記第2交差部と交わる、セラミック構造体である。
【0025】
第10の発明によれば、特に1次モードの振動に対して剛性をより高くすることができる。
【0026】
第11の発明は、第1または第2の発明において、前記複数のリブは、前記第1側板及び前記第2側板と接続される第5リブと、前記第1リブ及び前記第2リブと平行であり、前記第1リブ及び前記第2リブから離れて設けられた第6リブと、前記第6リブと平行であり、前記第6リブから第2距離離れて設けられた第7リブと、前記第3リブ及び前記第4リブと平行であり、前記空間内において前記第6リブ及び前記第7リブと交差する第8リブと、前記第8リブと平行であり、前記空間内において前記第6リブ及び前記第7リブと交差し、且つ前記第8リブから前記第2距離離れて設けられた第9リブと、をさらに有し、前記第1リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、前記第2リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第5リブとそれぞれ接続され、前記第3リブの一端は前記第3側板と、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、前記第4リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第5リブとそれぞれ接続され、前記第6リブの一端は前記第5リブと、他端は前記第1側板とそれぞれ接続され、前記第7リブの一端は前記第2側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続され、前記第8リブの一端は前記第5リブと、他端は前記第2側板とそれぞれ接続され、前記第9リブの一端は前記第1側板と、他端は前記第4側板とそれぞれ接続される、セラミック構造体である。
【0027】
第11の発明によれば、リブの数を多くすることで、より剛性を高めることができる。
【0028】
第12の発明は、第1~6の発明のいずれか1つにおいて、前記上板の厚さは、前記第1~第4側板の厚さ、および前記複数のリブの厚さと同じ、または大きいことを特徴とする、セラミック構造体である。
【0029】
第12の発明によれば、前記上板の厚さを、前記第1~第4側板の厚さ、および前記複数のリブの厚さより大きくすることで、直接的に力がかかる上板の剛性を高めることができる。これにより、断面二次モーメントが増加し、変形しにくくなる。また、前記第1~第4側板の厚さ、および前記複数のリブの厚さを前記上板の厚さより大きくする場合と比べて、重量の増加を抑制しつつ、剛性を高めることができる。これにより、高剛性化と軽量化とをさらにバランスよく両立できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の態様によれば、軽量、高剛性、及び高固有振動数を実現するセラミック構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態のセラミック構造体の斜視図である。
【
図2】(a)は第1実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第1実施形態のセラミック構造体の上面の平面図である。
【
図3】(a)は第2実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第3実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図4】(a)は第4実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第5実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図5】(a)は第1比較例のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第2比較例のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図6】(a)は第3比較例のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第4比較例のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図7】(a)は第10実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第11実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図8】(a)は第12実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第13実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図9】(a)は第5比較例のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第6比較例のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【
図10】(a)は第7比較例のセラミック構造体の空間側の平面図であり、(b)は第8比較例のセラミック構造体の空間側の斜視図である。
【
図11】第1~第9実施形態、及び第1~第4比較例のシミュレーション結果を示す表である。
【
図12】第12~第13実施形態、及び第5~第9比較例のシミュレーション結果を示す表である。
【
図13】第6~9実施形態のセラミック構造体の空間側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0033】
[第1実施形態]
第1実施形態のセラミック構造体1について、
図1、
図2(a)及び(b)を参照して説明する。なお、
図2(b)に示すセラミック構造体1の上面図は、後述する他の実施形態のセラミック構造体及び比較例の構造体にも適用される。
【0034】
セラミック構造体1は、セラミックを主成分とする。セラミック構造体1は、例えば、アルミナ(Al2O3)、コージエライト(Mg2Al3(AlSi5O18)等の酸化物、窒化アルミ(AlN)、窒化珪素(SiN)等の窒化物、あるいは、珪素(Si)と炭化珪素(SiC)との混合物(SiSiC)、炭化珪素(SiC)等の炭化物を主成分とする。
ここで主成分とは、例えばセラミック構造体1のX線回折(X-ray Diffraction:XRD)による定量又は準定量分析により、セラミック構造体1に含まれる他の化合物よりも相対的に多く含まれる化合物をいう。例えば、主成分は、セラミック構造体中に最も多く含まれる化合物であり、セラミック構造体において主成分が占める割合は、体積比又は質量比で50%よりも大きい。主成分が占める割合は、より好ましくは70%より大きく、90%より大きいことも好ましい。主成分が占める割合が100%であってもよい。
【0035】
セラミック構造体1は、上板10と、上板10に交わるように設けられる第1~第4側板11~14と、上板10及び第1~第4側板11~14により区画される空間S内に配置された複数のリブ21~24とを備える。
本明細書において「リブ」とは、空間S内に配置された板状の部材である。リブは、セラミックを主成分とする。リブを構成する材料は上板、第1~第4側板と同じ材料である。あるいは、リブを構成する材料は上板、第1~第4側板と異なる材料としてもよい。例えば、リブの厚さ(リブの延びる方向に直交する方向の長さ)は、上板の厚さより薄くてもよい。例えば、リブの厚さは、第1~4側板のいずれかの厚さより薄くてもよい。
【0036】
第1側板11及び第2側板12は互いに平行である。第3側板13及び第4側板14は、互いに平行であり、且つ第1側板11及び第2側板12に垂直である。第1側板11及び第2側板12が延びる方向を、第1方向Xとする。第3側板13及び第4側板14が延びる方向を、第2方向Yとする。第1方向X及び第2方向Yに直交する方向を、第3方向Zとする。第1~第4側板11~14は、4つの角部41~44を有する。
本明細書において「平行」「垂直」とは、厳密に「平行」「垂直」である場合のみならず、セラミック構造体の用途、例えばステージ、において利用可能な範囲であれば多少のずれを許容するものである。例えば角部41~44の角度は90°である場合だけでなく、±数°を許容するものである。
【0037】
上板10は、
図1及び
図2(a)に示す第1面10aと、第3方向Zにおいて第1面10aの反対側に位置する
図2(b)に示す第2面10bとを有する。第3方向Zは、第1面10a及び第2面10bに垂直である。上板10の第1面10aが被処理物が載置される載置面となる。
【0038】
空間Sは、上板10の第2面10b、第1側板11の内側面、第2側板12の内側面、第3側板13の内側面、及び第4側板14の内側面によって区画される。平面視において、第1側板11、第2側板12、第3側板13、及び第4側板14は、空間Sを連続して囲んでいる。各側板の内側面及び外側面は、第3方向Zに平行である。
【0039】
第1実施形態では、第1側板11の第1方向Xの長さと第2側板12の第1方向Xの長さとは同じである。第3側板13の第2方向Yの長さと第4側板14の第2方向Yの長さとは同じである。第1側板11の第1方向Xの長さ及び第2側板12の第1方向Xの長さは、第3側板13の第2方向Yの長さ及び第4側板14の第2方向Yの長さよりも長い。上板10の第1面10a及び第2面10bは、例えば長方形である。なお、第1側板11の第1方向Xの長さ、第2側板12の第1方向Xの長さ、第3側板13の第2方向Yの長さ、及び第4側板14の第2方向Yの長さは同じであり、上板10の第1面10a及び第2面10bは、正方形であってもよい。第1側板11の第1方向Xの長さ、第2側板12の第1方向Xの長さ、第3側板13の第2方向Yの長さ、及び第4側板14の第2方向Yの長さは、それぞれ、例えば1000mm以上である。該長さはそれぞれ、300mm以上でもよい。
【0040】
複数のリブは、第1リブ21と、第2リブ22と、第3リブ23と、第4リブ24とを有する。各リブ21~24の側面は、第3方向Zに平行である。各リブ21~24の第3方向Zにおける上板10側の端部は、空間S内において、上板10の第2面10bに接続されている。
【0041】
第1リブ21は、第1~第4側板11~14のいずれに対しても傾斜する。第1リブ21の一端21aは、第2側板12と第3側板13とが形成する第1角部41に接続されている。第1リブ21の他端21bは、第1側板11に接続されている。
【0042】
第2リブ22は、第1リブ21と平行であり、第1リブ21から第1距離d1離れて設けられている。本明細書において、特定的な記載がない限りは、「距離」は2つの対象間を結ぶ最短距離を表す。第2リブ22の一端22aは、第2側板12に接続されている。第2リブ22の他端22bは、第1側板11と第4側板14とが形成する第2角部42に接続されている。
【0043】
第3リブ23は、第1~第4側板11~14のいずれに対しても傾斜し、空間S内において第1リブ21と交差する。第1実施形態では、第3リブ23は、空間S内において第2リブ22とも交差する。第3リブ23の一端23aは、第1側板11と第3側板13とが形成する第3角部43に接続されている。第3リブ23の他端23bは、第2側板12に接続されている。
【0044】
第4リブ24は、第3リブ23と平行であり、空間S内において第2リブ22と交差し、且つ第3リブ23から第1距離d1離れて設けられている。第1実施形態では、第4リブ24は、空間S内において第1リブ21とも交差する。第4リブ24の一端24aは、第1側板11に接続されている。第4リブ24の他端24bは、第2側板12と第4側板14とが形成する第4角部44に接続されている。
【0045】
第1リブ21と第4リブ24との交差部を第1交差部31、第2リブ22と第3リブ23との交差部を第2交差部32、第3リブ23と第1リブ21との交差部を第3交差部33、及び第4リブ24と第2リブ22との交差部を第4交差部34とする。第1~第4交差部31~34のうち少なくとも2つの交差部が、第1~第4側板11~14のいずれとも接続せず、空間S内に位置する。第1実施形態では、第1交差部31、第2交差部32、第3交差部33、及び第4交差部34のすべてが、第1~第4側板11~14のいずれとも接続せず、空間S内に位置する。第1~第4交差部31~34は、第1~第4リブ21~24が形成する菱形の頂点に位置する。
【0046】
図2(a)に示すように、空間Sの平面視において、第1側板11の第1方向Xの中心と第2側板12の第1方向Xの中心とを結ぶ直線を第1対称線L1とし、第3側板13の第2方向Yの中心と第4側板14の第2方向Yの中心とを結ぶ直線を第2対称線L2とする。第1対称線L1及び第2対称線L2は、互いに直交する。第1対称線L1及び第2対称線L2によって空間Sを第1~第4領域S1~S4に分割すると、第1~第4リブ21~24のそれぞれは、第1~第4領域S1~S4のうち、第1対称線L1と第2対称線L2との交点を挟んだ対角位置にある2つの領域の一方の領域から他方の領域に延びる。第1領域S1と第2領域S2が、第1対称線L1と第2対称線L2との交点を挟んだ対角位置にあり、第3領域S3と第4領域S4が、第1対称線L1と第2対称線L2との交点を挟んだ対角位置にある。
【0047】
第1リブ21は、第1領域S1から第2領域S2に延びている。第2リブ22は、第1領域S1から第2領域S2に延びている。第3リブ23は、第3領域S3から第4領域S4に延びている。第4リブ24は、第3領域S3から第4領域S4に延びている。
【0048】
第1交差部31と第2交差部32とを結ぶ直線を第1仮想線L3とすると、第1仮想線L3は第3側板13及び第4側板14と平行である。第1実施形態では、第1仮想線L3は、第1対称線L1に一致する。
【0049】
以下、他の実施形態について、第1実施形態と異なる構成について主に説明する。なお、他の実施形態のそれぞれにおける記載及び図面と矛盾がない限り、第1実施形態で説明した事項は、他の実施形態にも適用される。
【0050】
[第2実施形態]
図3(a)に示す第2実施形態のセラミック構造体2によれば、第1リブ21の一端21aは、第2側板12に接続されている。第2リブ22の他端22bは、第1側板11に接続されている。第3リブ23の一端23aは、第1側板11に接続されている。第4リブ24の他端24bは、第2側板12に接続されている。
【0051】
[第3実施形態]
図3(b)に示す第3実施形態のセラミック構造体3によれば、第1リブ21の他端21bと第4リブ24の一端24aとが、第1側板11において互いに接続している。換言すると、第1リブ21と第4リブ24との第1交差部31が、第1側板11に接続している。
【0052】
また、第3リブ23の他端23bと第2リブ22の一端22aとが、第2側板12において互いに接続している。換言すると、第2リブ22と第3リブ23との第2交差部32が、第2側板12に接続している。
【0053】
[第4実施形態]
図4(a)に示す第4実施形態のセラミック構造体4によれば、第1リブ21の一端21aは、第3側板13に接続されている。第2リブ22の他端22bは、第4側板14に接続されている。第3リブ23の一端23aは、第3側板13に接続されている。第4リブ24の他端24bは、第4側板14に接続されている。
【0054】
[第5実施形態]
図4(b)に示す第5実施形態のセラミック構造体5によれば、第1リブ21の一端21aは、第3側板13に接続されている。第1リブ21の他端21bは、第1側板11と第4側板14との間の第2角部42に接続されている。第2リブ22の一端22aは、第2側板12と第3側板13との間の第1角部41に接続されている。第2リブ22の他端22bは、第4側板14に接続されている。第3リブ23の一端23aは、第3側板13に接続されている。第3リブ23の他端23bは、第2側板12と第4側板14との間の第4角部44に接続されている。第4リブ24の一端24aは、第1側板11と第3側板13との間の第3角部43に接続されている。第4リブ24の他端24bは、第4側板14に接続されている。
【0055】
[第6~9実施形態]
第6~9実施形態のセラミック構造体は、
図13に示すように、平面視において、第1交差部31と第2交差部32とを結ぶ第1仮想線L3が、第3側板13及び第4側板14に対して傾斜している点で、第4実施形態のセラミック構造体4と異なる。
【0056】
第6~9実施形態において、4つのリブ21~24によって形成される菱形の重心を通り、第1側板11及び第2側板12に垂直な線L5と、第2側板12の平面視における最も外側に位置する外縁との交点を第1交点P1とする。第1交差部31と第2交差部32とを結ぶ第1仮想線L3と、第2側板12の上記外縁との交点を第2交点P2とする。第6~9実施形態においては、第1交点P1と第2交点P2とが第1方向Xにおいて、一致せず、離れて位置する。
【0057】
第6実施形態においては、第1交点P1と第2交点P2との間の第1方向Xの距離が、25mmである。
第7実施形態においては、第1交点P1と第2交点P2との間の第1方向Xの距離が、50mmである。
第8実施形態においては、第1交点P1と第2交点P2との間の第1方向Xの距離が、100mmである。
第9実施形態においては、第1交点P1と第2交点P2との間の第1方向Xの距離が、135mmである。
【0058】
次に、前述した第1~第9実施形態、及び
図5(a)~
図6(b)に示す第1~第4比較例について、固有振動数、変形量、比剛性をシミュレーションした結果について説明する。
【0059】
図5(a)に示す第1比較例のセラミック構造体101によれば、第1リブ21と第4リブ24との第1交差部31、第2リブ22と第3リブ23との第2交差部32、第3リブ23と第1リブ21との第3交差部33、及び第4リブ24と第2リブ22との第4交差部34のすべてが、空間S内に位置しない。
図6(b)に示す第4比較例では、各リブの交差部が存在しない。
【0060】
図5(b)に示す第2比較例のセラミック構造体102によれば、第1交差部31と第2交差部32は空間S内に位置するが、第3交差部及び第4交差部が存在しない。
図6(a)に示す第3比較例のセラミック構造体103によれば、第3交差部33と第4交差部34は空間S内に位置するが、第1交差部及び第2交差部が存在しない。
【0061】
第1~第9実施形態及び第1~第4比較例において、第1側板11及び第2側板12の第1方向Xの長さを2000mm、第3側板13及び第4側板14の第2方向Yの長さを1000mmとした。また、各側板の延びる方向に直交する方向の厚さを10mm、各リブの延びる方向に直交する方向の厚さを5mmとした。また、各側板及び各リブの第3方向Zにおける厚さを10mmとした。
【0062】
【0063】
固有振動数[Hz]は、セラミック構造体を第1方向X、第2方向Y、及び第3方向Zのいずれの方向においても拘束しない状態で、1次モードの固有振動数を表す。1次モードは、第1対称線L1または第2対称線L2で折れ曲がるような振動モードである。
【0064】
固有振動数観点の比剛性[Hz/kg]は、固有振動数[Hz]/質量[kg]により計算した。
【0065】
変形量[μm]は、セラミック構造体を第1~第4角部の四隅で4点支持した状態で、第3方向Zにおける自重変形量を表す。
【0066】
変形観点の比剛性[1/(m・kg)]は、1/(変形量[m]×質量[kg])により計算した。
【0067】
固有振動数・変形観点の比剛性[Hz/(m・kg)]は、固有振動数[Hz]/{変形量[m]×質量[kg]}により計算した。
【0068】
図11の結果より、第1~第9実施形態の固有振動数・変形観点の比剛性は、第1~第4比較例の固有振動数・変形観点の比剛性よりも高い。すなわち、第1~第9実施形態のセラミック構造体によれば、軽量化のため4本のリブだけとしても、その配置を工夫することで、高剛性及び高固有振動数を実現できる。
【0069】
第1~第9実施形態のセラミック構造体は、以下の共通の特徴をすべて備える。
特徴1.4つのリブ21~24によって形成される菱形の頂点に位置する4つの交差部31~34を有する。
特徴2.4つの交差部31~34のうち少なくとも2つの交差部が、第1~第4側板11~14のいずれとも接続せず、空間S内に位置する。
【0070】
第1~第4比較例のうち、上記特徴1と特徴2の両方を兼ね備えたものはない。したがって、上記特徴1と特徴2の両方を兼ね備えることで、軽量、高剛性、及び高固有振動数を実現するセラミック構造体を提供することができる。
【0071】
また、第1~第9実施形態によれば、各リブ21~24において、菱形を形成する部分から交差部を越えて延びる部分(各リブ21~24の少なくとも一端)が、第1側板~第4側板11~14のいずれか(角部41~44も含む)に接続する。菱形のリブの延長部が側板を支えることで、側板のねじれや変形を抑制することができる。
【0072】
また、第1~第9実施形態によれば、第1~第4リブ21~24のそれぞれは、第1~第4領域S1~S4のうち、第1対称線L1と第2対称線L2との交点を挟んだ対角位置にある2つの領域の一方の領域から他方の領域に延びる。これにより、リブが、第1対称線L1と第2対称線L2との交点を挟まずに、第1方向Xまたは第2方向Yにおいて隣接する領域間を延びる場合に比べて、ねじれに対して強くできる。
【0073】
また、第1~第5実施形態によれば、第1交差部31と第2交差部32とを結ぶ第1仮想線L3は、第3側板13及び第4側板14と平行である。これにより、第1仮想線L3が第3側板13及び第4側板14に非平行であり傾斜している第6~9実施形態に比べて、特に固有振動数の低下を抑制し、結果として比剛性の低下を抑制することができる。
【0074】
各交差部31~34が第1~第4側板11~14のいずれとも接続しないということは、異なるリブの端どうしが側板における同じ位置で接続しない。これにより、応力が分散され、剛性を高くできる。また、第1側板11の長さ及び第2側板12の長さが、第3側板13の長さ及び第4側板14の長さよりも長い場合、第1実施形態のように、4つの交差部31~34のすべてを空間S内に位置させ且つ各リブ21~24の端を長辺側の側板11、12若しくは角部41~44に接続させる、または、第2実施形態のように、4つの交差部31~34のすべてを空間S内に位置させ且つ各リブ21~24の端をすべて長辺側の側板11、12に接続させることで、他の実施形態よりも固有振動数・変形観点の比剛性を高くすることができる。
【0075】
[第10実施形態]
図7(a)に示す第10実施形態のセラミック構造体6によれば、複数のリブは第5リブ25をさらに有する。第5リブ25の一端25aは第1側板11と接続され、第5リブ25の他端25bは第2側板12と接続されている。第5リブ25により、特に1次モードの振動に対して剛性をより高くすることができる。
【0076】
剛性を高くするため、第5リブ25は第3側板13及び第4側板14と平行であることが好ましい。また、剛性を高くするため、第5リブ25は、第1交差部31及び第2交差部32と交わることが好ましい。
【0077】
[第11実施形態]
図7(b)に示す第11実施形態のセラミック構造体7によれば、複数のリブは、前述した第1~第5リブ21~25に加えて、第6~第9リブ26~29をさらに有する。第1~第4リブ21~24は第1領域S1及び第3領域S3に位置し、第6~第9リブ26~29は第2領域S2及び第4領域S4に位置する。第5リブ25は、第1対称線L1上に位置する。
【0078】
第1リブ21の一端21aは第3側板13と、他端21bは第1側板11とそれぞれ接続されている。第2リブ22の一端22aは第2側板12と、他端22bは第5リブ25とそれぞれ接続されている。第3リブ23の一端23aは第3側板13と、他端23bは第2側板12とそれぞれ接続されている。第4リブ24の一端24aは第1側板11と、他端24bは第5リブ25とそれぞれ接続されている。
【0079】
第6リブ26は、第1リブ21及び第2リブ22と平行であり、第1リブ21及び第2リブ22から離れて設けられている。第6リブ26の一端26aは第5リブ25と、他端26bは第1側板11とそれぞれ接続されている。
【0080】
第7リブ27は、第6リブ26と平行であり、第6リブ26から第2距離d2離れて設けられている。第2距離d2は、前述した第1距離d1と同じである。第7リブ27の一端27aは第2側板12と、他端27bは第4側板14とそれぞれ接続されている。
【0081】
第8リブ28は、第3リブ23及び第4リブ24と平行であり、空間S内において第6リブ26及び第7リブ27と交差する。第8リブ28の一端28aは第5リブ25と、他端28bは第2側板12とそれぞれ接続されている。
【0082】
第9リブ29は、第8リブ28と平行であり、空間S内において第6リブ26及び第7リブ27と交差し、且つ第8リブ28から第2距離d2離れて設けられている。第9リブ29の一端29aは第1側板11と、他端29bは第4側板14とそれぞれ接続されている。
【0083】
第6リブ26と第9リブ29との第5交差部35、第7リブ27と第8リブ28との第6交差部36、第8リブ28と第6リブ26との第7交差部37、及び第9リブ29と第7リブ27との第8交差部38は、第1~第4側板11~14のいずれとも接続せず、空間S内に位置する。第5~第8交差部35~38は、第6~第9リブ26~29が形成する菱形の頂点に位置する。第3交差部33、第4交差部34、第7交差部37、及び第8交差部38は、第2対称線L2上に位置する。第5交差部35と第6交差部36とを結ぶ第2仮想線L4は、第1仮想線L3及び第1対称線L1に平行である。
【0084】
第11実施形態のセラミック構造体7によれば、第1~第10実施形態に比べてリブの数を多くすることで、より剛性を高めることができる。
【0085】
側板11~14どうしは、直接つながることに限らず、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、突出部51~54を介してつながってもよい。第2側板12と第3側板13とは、第1突出部51を介してつながる。第1側板11と第4側板14とは、第2突出部52を介してつながる。第1側板11と第3側板13とは、第3突出部53を介してつながる。第2側板12と第4側板14とは、第4突出部54を介してつながる。
【0086】
第1突出部51は第2側板12の一端から第2方向Yに突出し、第4突出部54は第2側板12の他端から第2方向Yに突出する。第3突出部53は第1側板11の一端から第1突出部51の突出方向の反対方向に突出し、第2突出部52は第1側板11の他端から第4突出部54の突出方向の反対方向に突出する。
【0087】
[第12実施形態]
図8(a)に示す第12実施形態のセラミック構造体8によれば、複数のリブが、第1~第4リブ21~24及び第6~第9リブ26~29を有する点で、第11実施形態と共通する。なお、第12実施形態のセラミック構造体8は、第5リブ25を有さない。
【0088】
また、第2リブ22が第1領域S1から第2領域S2に延びている点、第4リブ24が第3領域S3から第4領域S4に延びている点、第6リブ26が第1領域S1から第2領域S2に延びている点、及び第8リブ28が第3領域S3から第4領域S4に延びている点で、第11実施形態と異なる。第2リブ22の一端22aは第1領域S1において第2側板12に接続され、第2リブ22の他端22bは第2領域S2において第1側板11に接続されている。第4リブ24の一端24aは第3領域S3において第1側板11に接続され、第4リブ24の他端24bは第4領域S4において第2側板12に接続されている。第6リブ26の一端26aは第1領域S1において第2側板12に接続され、第6リブ26の他端26bは第2領域S2において第1側板11に接続されている。第8リブ28の一端28aは第3領域S3において第1側板11に接続され、第8リブ28の他端28bは第4領域S4において第2側板12に接続されている。
【0089】
[第13実施形態]
図8(b)に示す第13実施形態のセラミック構造体9によれば、複数のリブの構成は第11実施形態と同じである。
【0090】
次に、第12実施形態、第13実施形態、及び第5~第9比較例について、固有振動数、変形量、比剛性をシミュレーションした結果について説明する。
【0091】
図9(a)に示す第5比較例のセラミック構造体105によれば、第2リブ22の他端22b、第4リブ24の他端24b、第6リブ26の一端26a、及び第8リブ28の一端28aが、第1~第4側板11~14のいずれとも接続していない。
【0092】
図9(b)に示す第6比較例のセラミック構造体106及び
図10(a)に示す第7比較例のセラミック構造体107によれば、第1リブ21の両端、第2リブ22の両端、第4リブ24の他端24b、第6リブ26の一端26a、第8リブ28の両端、及び第9リブ29の両端が、第1~第4側板11~14のいずれとも接続していない。
【0093】
図10(b)に示す第8比較例のセラミック構造体108によれば、複数のリブ71が第1方向X及び第2方向Yに格子状に設けられている。
【0094】
第9比較例のセラミック構造体は、リブを有さず、上板10、第1~第4側板11~14、及び第1~第4突出部51~54のみからなる。
【0095】
第12実施形態、第13実施形態、及び第5~第9比較例において、第1側板11及び第2側板12の第1方向Xの長さを2000mm、第3側板13及び第4側板14の第2方向Yの長さを1000mmとした。また、各側板の延びる方向に直交する方向の厚さを10mm、各リブの延びる方向に直交する方向の厚さを10mmとした。また、各側板及び各リブの第3方向Zにおける厚さを10mmとした。
【0096】
図12に、シミュレーション結果を示す。
固有振動数[Hz]、固有振動数観点の比剛性[Hz/kg]、変形量[μm]、変形観点の比剛性[1/(m・kg)]、及び固有振動数・変形観点の比剛性[Hz/(m・kg)]は、前述した
図11に結果が示されるシミュレーションと同様に計算した。
【0097】
図12の結果より、第12実施形態及び第13実施形態の固有振動数・変形観点の比剛性は、第5~第9比較例の固有振動数・変形観点の比剛性よりも高くすることができる。第12実施形態及び第13実施形態のセラミック構造体によれば、
図10(b)に示す第8比較例に比べてリブの数を減らして大幅な軽量化を実現しつつも、リブの配置を工夫することで、高剛性及び高固有振動数を実現できる。
【0098】
以上説明した各実施形態のセラミック構造体は、例えば、半導体デバイスやFPDの製造装置(例えば露光装置など)に具備されるエアスライドステージに用いることができる。セラミック構造体の上板10の第1面10aに、半導体ウェーハやガラス基板などの被処理物が載置される。各実施形態のセラミック構造体によれば、軽量、高剛性、及び高固有振動数を実現できるため、各実施形態のセラミック構造体をエアスライドステージに用いた場合にはエアスライドステージの位置決め精度を高くできる。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1~9…セラミック構造体、10…上板、10a…第1面、10b…第2面、11…第1側板、12…第2側板、13…第3側板、14…第4側板、21…第1リブ、22…第2リブ、23…第3リブ、24…第4リブ、25…、第5リブ、26…第6リブ、27…第7リブ、28…第8リブ、29…第9リブ、31…第1交差部、32…第2交差部、33…第3交差部、34…第4交差部、35…第5交差部、36…第6交差部、37…第7交差部、38…第8交差部、41…第1角部、42…第2角部、43…第3角部、44…第4角部、51…第1突出部、52…第2突出部、53…第3突出部、54…第4突出部、S…空間、S1…第1領域、S2…第2領域、S3…第3領域、S4…第4領域、L1…第1対称線、L2…第2対称線、L3…第1仮想線