(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048252
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20240401BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240401BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240401BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L29/91 K
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
H01L29/48 D
H01L29/44 S
H01L29/48 F
H01L29/91 F
H01L29/91 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154184
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 悠一
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB14
4M104BB19
4M104BB21
4M104BB39
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD33
4M104DD37
4M104DD84
4M104DD96
4M104FF03
4M104FF09
4M104FF10
4M104FF11
4M104FF13
4M104FF27
4M104FF35
4M104GG02
4M104GG03
4M104HH16
(57)【要約】
【課題】低抵抗のオーミック電極を形成することで、低いVf特性を維持しつつ、サージ電流耐量が高くでき、リーク電流を減少できる炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、活性領域10と、第1導電型領域12と、終端領域20とを備える。活性領域10に、トレンチ25内部の第1の第2導電型領域13a、第1シリサイド膜33aと、隣り合うトレンチ25間に第2の第2導電型領域13b、第2シリサイド膜33bと、第1電極14とを有し、終端領域20に第3の第2導電型領域21を有する。活性領域10は、第1電極14がシリサイド膜33a、33bとオーミック接合するオーミック領域、第1電極14が第2導電型領域13a、13bと接触する無効領域、第1電極14が第1導電型領域12とショットキー接合するショットキー領域から構成される。オーミック領域、無効領域およびショットキー領域はストライプ形状に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板に設けられた活性領域と、
前記半導体基板に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、
前記半導体基板の内部に設けられ、前記半導体基板の第1主面に露出された第1導電型領域と、
前記活性領域において前記第1導電型領域のおもて面から前記第1導電型領域の内部に設けられた第1トレンチと、
前記活性領域において前記第1導電型領域に接して前記第1トレンチの底部に設けられた第1の第2導電型領域と、
前記第1の第2導電型領域にオーミック接合する第1シリサイド膜と、
前記活性領域において前記第1導電型領域に接して、隣り合う前記第1トレンチ間に設けられた第2の第2導電型領域と、
前記第2の第2導電型領域にオーミック接合する第2シリサイド膜と、
前記第1シリサイド膜、前記第1の第2導電型領域、前記第2シリサイド膜、前記第2の第2導電型領域および前記第1導電型領域に接触する第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に設けられた第2電極と、
前記終端領域に設けられた、前記活性領域を囲む第3の第2導電型領域と、
を備え、
前記活性領域は、前記第1電極が前記第1シリサイド膜および前記第2シリサイド膜とオーミック接合するオーミック領域と、前記第1電極が前記第1の第2導電型領域および前記第2の第2導電型領域と接触する無効領域と、前記第1電極が前記第1導電型領域とショットキー接合するショットキー領域と、から構成され、
前記オーミック領域、前記無効領域および前記ショットキー領域は、ストライプ形状に設けられることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第3の第2導電型領域は、前記半導体基板の表面層に設けられ、
前記第3の第2導電型領域の側壁は、前記終端領域に最も近い前記第1トレンチの側壁を覆い、前記第1の第2導電型領域と接することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第3の第2導電型領域は、前記半導体基板の表面層に設けられ、
前記第3の第2導電型領域の前記第2主面側の面は、第2の第2導電型領域の前記第2主面側の面よりも深いことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記終端領域に最も近い前記第1トレンチは、他の前記第1トレンチよりも浅いことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記活性領域を囲み、前記第1トレンチと接続する第2トレンチを有し、
前記第3の第2導電型領域は、前記第2トレンチの底部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
、
前記第3の第2導電型領域は、前記第1の第2導電型領域に接続することを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記終端領域に第4の第2導電型領域が設けられ、
前記第4の第2導電型領域は、前記第2トレンチの底部に設けられることを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記終端領域に第4の第2導電型領域が設けられ、
前記第4の第2導電型領域は、前記半導体基板の表面層に設けられ、
前記第4の第2導電型領域は、前記第2トレンチの側壁を覆い、前記第3の第2導電型領域に接続することを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記ショットキー領域は、前記第1トレンチの側壁で前記第1電極が前記第1導電型領域と接触する領域であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記第1の第2導電型領域は、長手方向で前記第3の第2導電型領域との間に、前記第1シリサイド膜を設けない第2導電型無効領域を有することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記炭化珪素半導体装置はダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)半導体は、近年、シリコン(Si)半導体を用いた半導体装置の限界を超える半導体装置(以下、炭化珪素半導体装置とする)を作製(製造)可能な半導体材料として注目されている。特に、炭化珪素半導体は、シリコン半導体と比べて、絶縁破壊電界強度が大きい、熱伝導率が高いという特長を活かして高耐圧(例えば1700V以上)半導体装置への応用が期待されている。
【0003】
炭化珪素半導体装置がダイオード(以下、炭化珪素ダイオードとする)である場合、n-型ドリフト領域を構成するn-型エピタキシャル層の設計仕様を薄い厚さおよび高い不純物濃度に設定可能であることから、耐圧3300Vクラス程度までの炭化珪素ダイオードはショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)構造とすることが一般的である。
【0004】
通常、SBD構造では、半導体基板とおもて面電極との接合面での電界強度が高く、逆方向電圧印加時にショットキー障壁を電子がトンネリングすることに起因する逆方向リーク電流増大、または炭化珪素固有の表面欠陥に起因する逆方向リーク電流増大という問題がある。このため、半導体基板のおもて面側にショットキー接合とpn接合とを混在させたJunction Barrier Schottky(JBS)構造を採用した炭化珪素ダイオードが提案されている。
【0005】
従来のSBD構造の炭化珪素ダイオードの構造について、JBS構造を採用した炭化珪素ダイオードの構造について説明する。
図27は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【0006】
図27に示す従来の炭化珪素半導体装置140は、活性領域110において半導体基板130のおもて面側に、n
-型ドリフト領域112とおもて面電極114を構成するチタン膜131とのショットキー接合によるSBD構造と、p
+型領域113とn
-型ドリフト領域112とのpn接合と、を混在させたJBS構造の縦型の炭化珪素ダイオードである。また、おもて面電極114の最下層としてニッケルシリサイド膜133がp
+型領域113上に設けられる。
【0007】
従来の炭化珪素半導体装置140のショットキー接合は、半導体基板130のおもて面に露出されたn-型ドリフト領域112と、半導体基板130のおもて面上に設けられたチタン膜131とアルミニウム合金膜132で構成されるおもて面電極114と、で形成されている。半導体基板130は、炭化珪素からなるn+型出発基板111のおもて面上に、n-型ドリフト領域112となるn-型エピタキシャル層を積層したエピタキシャル基板である。n+型出発基板111は、n+型カソード領域である。半導体基板130の裏面の全面に裏面電極119が設けられ、n+型出発基板111に電気的に接続されている。符号115、120、121、122は、それぞれ、フィールド酸化膜、エッジ終端領域、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)およびJTE構造を構成するp-型領域である。
【0008】
p+型領域113は、活性領域110において半導体基板130のおもて面の表面領域に選択的に設けられている。隣り合うp+型領域113間において半導体基板130のおもて面には、n-型ドリフト領域112が露出されている。p+型領域113とn-型ドリフト領域112とで半導体基板130のおもて面にpn接合が形成されている。隣り合うp+型領域113間のn-型ドリフト領域112は、半導体基板130のおもて面上に設けられたおもて面電極114の最下層のチタン膜131とのショットキー接合を形成する。
【0009】
図28は、従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図28に示すように、活性領域110においてp
+型領域113およびニッケルシリサイド膜133は、ストライプ形状に設けられ、端部で、p
+型領域113はFLR121に接続し、活性領域110のニッケルシリサイド膜133は、FLR121上のニッケルシリサイド膜133に接続する。
【0010】
このような構造とすることで、順方向に定格電流が流れる場合、p+型領域113以外のn-型ドリフト領域112のショットキー接合領域で電流が流れる。さらに、落雷などでサージ電流が流れる場合、ショットキー接合領域だけでは電流を流すことができないため、p+型領域113がバイポーラ動作を行い、電流が流れるようになる。また、p+型領域113上に、オーミック領域となるニッケルシリサイド膜133を設けることにより、p+型領域113のみのストライプ構造より、バイポーラ動作が容易になる。
【0011】
また、逆バイアス時の素子破壊の抑制を可能とするため、素子領域に形成されたトレンチの底部にp型領域を設けるトレンチ型JBSを有する半導体装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0012】
また、側壁に内蔵SBDを形成したコンタクトトレンチの幅を狭化でき、オン抵抗を低減するため、ショットキー金属は、コンタクトトレンチの内部に埋め込まれ、コンタクトトレンチの側壁にn-型ドリフト層とのショットキー接合を形成し、コンタクトトレンチの底部にp+型領域を設ける半導体装置が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第6400544号公報
【特許文献2】特許第6930197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、p+型領域113にサージ電流が流れる場合、p+型領域113のコンタクト抵抗により、p+型領域113のバイポーラ動作が遅れ、半導体素子が発熱して、破壊されてしまう場合がある。さらに、通常のp+型領域113のストライプ構造とは別に、p+型領域を設ける場合、n-型ドリフト領域112のショットキー接合領域の面積が減少し、定格電流時の順方向電圧Vfが大きくなり、オン電圧が高くなってしまう。このように、サージ電流耐量(IFSM)確保のため、p+型領域113の面積を増やすと、Vfが増加してしまうというトレードオフがある。さらに、ドット構造等の半導体素子上のオーミック領域がそれぞれ独立している構造では、抵抗の偏りがあり、局所的に発熱しやすくサージ耐量の確保が難しいという課題がある。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、低抵抗のオーミック電極を形成することで、低いVf特性を維持しつつ、サージ電流耐量が高くでき、リーク電流を減少できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素からなる半導体基板に活性領域が設けられる。前記半導体基板に、前記活性領域の周囲を囲む終端領域が設けられる。前記半導体基板の内部に、前記半導体基板の第1主面に露出された第1導電型領域が設けられる。前記活性領域において前記第1導電型領域のおもて面から前記第1導電型領域の内部に第1トレンチが設けられる。前記活性領域において前記第1導電型領域に接して前記第1トレンチの底部に第1の第2導電型領域が設けられる。前記第1の第2導電型領域にオーミック接合する第1シリサイド膜が設けられる。前記活性領域において前記第1導電型領域に接して、隣り合う前記第1トレンチ間に第2の第2導電型領域が設けられる。前記第2の第2導電型領域にオーミック接合する第2シリサイド膜が設けられる。前記第1シリサイド膜、前記第1の第2導電型領域、前記第2シリサイド膜、前記第2の第2導電型領域および前記第1導電型領域に接触する第1電極が設けられる。前記半導体基板の第2主面に第2電極が設けられる。前記終端領域に、前記活性領域を囲む第3の第2導電型領域が設けられる。前記活性領域は、前記第1電極が前記第1シリサイド膜および前記第2シリサイド膜とオーミック接合するオーミック領域と、前記第1電極が前記第1の第2導電型領域および前記第2の第2導電型領域と接触する無効領域と、前記第1電極が前記第1導電型領域とショットキー接合するショットキー領域と、から構成される。前記オーミック領域、前記無効領域および前記ショットキー領域は、ストライプ形状に設けられる。
【0017】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3の第2導電型領域は、前記半導体基板の表面層に設けられ、前記第3の第2導電型領域の側壁は、前記終端領域に最も近い前記第1トレンチの側壁を覆い、前記第1の第2導電型領域と接することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3の第2導電型領域は、前記半導体基板の表面層に設けられ、前記第3の第2導電型領域の前記第2主面側の面は、第2の第2導電型領域の前記第2主面側の面よりも深いことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記終端領域に最も近い前記第1トレンチは、他の前記第1トレンチよりも浅いことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記活性領域を囲み、前記第1トレンチと接続する第2トレンチを有し、前記第3の第2導電型領域は、前記第2トレンチの底部に設けられることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3の第2導電型領域は、前記第1の第2導電型領域に接続することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記終端領域に第4の第2導電型領域が設けられ、前記第4の第2導電型領域は、前記第2トレンチの底部に設けられることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記終端領域に第4の第2導電型領域が設けられ、前記第4の第2導電型領域は、前記半導体基板の表面層に設けられ、前記第4の第2導電型領域は、前記第2トレンチの側壁を覆い、前記第3の第2導電型領域に接続することを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記ショットキー領域は、前記第1トレンチの側壁で前記第1電極が前記第1導電型領域と接触する領域であることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1の第2導電型領域は、長手方向で前記第3の第2導電型領域との間に、前記第1シリサイド膜を設けない第2導電型無効領域を有することを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記炭化珪素半導体装置はダイオードであることを特徴とする。
【0027】
上述した発明によれば、トレンチ間のn-型ドリフト領域(第1導電型領域)の表面部および底部にp+型領域(第1、第2の第2導電型領域)が設けられている。このように、オーミック領域の面積を広げることで、サージ時にp+型領域へ電流が流れやすくなり、サージ耐量(IFSM)を確保することが可能になっている。また、FLR(第3の第2導電型領域)の側壁は、エッジ終端領域に最も近いトレンチの側壁を覆い、第1p+型領域(第1の第2導電型領域)と接する。これにより、エッジ終端領域に最も近いトレンチから、逆バイアス時にショットキー領域から電流が漏れることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、低抵抗のオーミック電極を形成することで、低いVf特性を維持しつつ、サージ電流耐量を高くでき、リーク電流を減少できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図2のA-A’断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図3】
図1および
図2の破線Sに囲まれた領域Sの詳細構造を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図2のB-B’断面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図2のC-C’断面図である。
【
図6】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図11】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図12】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図13】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その7)。
【
図14】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その8)。
【
図15】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その9)。
【
図16】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その10)。
【
図17】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図18】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のA-A’断面図である。
【
図19】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のB-B’断面図である。
【
図20】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のC-C’断面図である。
【
図21】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図22】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図21のA-A’断面図である。
【
図23】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図21のB-B’断面図である。
【
図24】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図21のC-C’断面図である。
【
図25】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である(その1)。
【
図26】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である(その2)。
【
図27】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図28】従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数を表している。
【0031】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図2のA-A’断面図である。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図1および
図2に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置40は、活性領域10において半導体基板30のおもて面(第1主面)側に、おもて面電極(第1電極)14とn
-型ドリフト領域(第1導電型領域)12とのショットキー接合で構成されたSBD構造と、p
+型領域13とn
-型ドリフト領域12とのpn接合で構成されたpnダイオードと、を混在させたJBS構造の炭化珪素ダイオードである。
【0032】
活性領域10の面内において、半導体基板30のおもて面側の表面領域には、pnダイオードを構成する1つ以上のp
+型領域13が選択的に設けられている。また、活性領域10の面内において、トレンチ(第1トレンチ)25が設けられており、p
+型領域13は、トレンチ25の底に設けられた第1p
+型領域(第1の第2導電型領域)13aと、隣り合うトレンチ25間に挟まれたメサ部の表面に設けられた第2p
+型領域(第2の第2導電型領域)13bからなる。第1p
+型領域13a、第2p
+型領域13bは、活性領域10の面内において略均一なパターンで略均等に配置される。
図2に示すように、第1p
+型領域13a、第2p
+型領域13bは、例えば半導体基板30のおもて面に平行な同一方向に延在するストライプ状に配置され、ストライプ状に延在する長手方向と直交する短手方向に互いに接して交互に繰り返し配置されている。第1p
+型領域13aと第2p
+型領域13bは深さが異なり、それぞれ接続していないため、
図2では、それぞれの間に隙間を記載している。n
-型ドリフト領域12は、トレンチ25の側壁に露出し、おもて面電極14とショットキー接合を形成する。
【0033】
活性領域10は、炭化珪素ダイオードがオン状態のときに電流が流れる領域である。活性領域10は、例えば略矩形状の平面形状を有し、半導体基板30の略中央に配置されている。エッジ終端領域20は、活性領域10と半導体基板30の端部との間の領域であり、活性領域10の周囲を囲む。エッジ終端領域20は、n-型ドリフト領域12の、半導体基板30のおもて面側の電界を緩和し耐圧を保持する領域である。耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0034】
エッジ終端領域20には、接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造などの耐圧構造が配置される。JTE構造は、内側(半導体基板30の中央側)から外側(半導体基板30の端部側)へ離れるにしたがって不純物濃度の低いp型領域が配置されるように、不純物濃度の異なる複数のp-型領域(不図示)、p--型領域(不図示)が活性領域10の周囲を囲む略矩形状の平面形状の耐圧構造である。
【0035】
また、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aに、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)21が配置されている。
図2に示すように、FLR21(第3の第2導電型領域)は、活性領域10の周囲を略矩形状に囲むp
+型領域であり、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aから外側へ延在して後述するp
-型領域に接する。
図1に示すように、FLR21は、半導体基板30の表面層に設けられ、トレンチ25よりも深くなっている。このため、FLR21の側壁は、エッジ終端領域20に最も近いトレンチ25の外側の側壁をすべて覆い、第1p
+型領域13aと接する。また、FLR21の下面(第2主面側の面)は、トレンチ25より深く、第1p
+型領域13aの下面(第2主面側の面)よりも浅くなっている。これにより、エッジ終端領域20に最も近いトレンチ25から、逆バイアス時にショットキー領域82(
図3参照)から電流が漏れることを防ぐことができる。
図2では、FLR21は1つのみ設けられているが、活性領域10の周囲を2重に囲む構造であってもよい。FLR21は、p
+型領域13と不純物濃度が同じである。
【0036】
エッジ終端領域20のつなぎ領域20aは、活性領域10と後述するフィールド酸化膜15との間の領域であり、活性領域10の周囲を囲み、かつ活性領域10とエッジ終端領域20の耐圧構造部とをつなぐ。エッジ終端領域20の耐圧構造部とは、エッジ終端領域20のうち、後述するフィールド酸化膜15の内側端部から半導体基板の端部(チップ端部)までの部分であり、JTE構造やn+型チャネルストッパー領域(不図示)等の所定の耐圧構造が配置される。
【0037】
おもて面電極14は、活性領域10において半導体基板30のおもて面上に設けられている。おもて面電極14は、n-型ドリフト領域12およびp+型領域13に接して、n-型ドリフト領域12およびp+型領域13に電気的に接続されている。半導体基板30のおもて面上には、パッシベーション膜(不図示)が設けられている。パッシベーション膜は、半導体基板30のおもて面側の素子構造およびおもて面電極14を保護する保護膜として機能する。
【0038】
半導体基板30は、炭化珪素からなるn+型出発基板11のおもて面上に、n-型ドリフト領域12となるn-型エピタキシャル層を積層したエピタキシャル基板である。n+型出発基板11は、n+型カソード領域である。半導体基板30は、n-型ドリフト領域12側の主面(n-型ドリフト領域12となるn-型エピタキシャル層の表面)をおもて面とし、n+型出発基板11側の主面(n+型出発基板11の裏面)を裏面(第2主面)とする。
【0039】
エッジ終端領域20において、半導体基板30のおもて面側の表面領域には、FLR21、JTE構造を構成する1つ以上のp型領域(不図示)およびn+型チャネルストッパー領域(不図示)がそれぞれ選択的に設けられている。FLR21は、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aの全域に設けられ、つなぎ領域20aから外側へ延在してJTE構造を構成する1つ以上のp型領域に接する。FLR21よりも内側が活性領域10である。
【0040】
JTE構造を構成する1つ以上のp型領域は、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aから離れて、FLR21の外側に設けられ、FLR21に隣接する。n+型チャネルストッパー領域は、p-型領域よりも外側に、p-型領域と離れて設けられている。n+型チャネルストッパー領域は、半導体基板30の端部(チップ端部)に露出されている。
【0041】
FLR21、JTE構造を構成する1つ以上のp型領域およびn+型チャネルストッパー領域は、半導体基板30のおもて面とn-型ドリフト領域12との間に設けられている。FLR21、JTE構造を構成する1つ以上のp型領域およびn+型チャネルストッパー領域は、半導体基板30のおもて面に露出され、かつn-型ドリフト領域12に接する。FLR21の深さは、例えば、トレンチ25の深さと同じであってもよいし、トレンチ25より深くてもよい。JTE構造を構成する1つ以上のp型領域およびn+型チャネルストッパー領域の深さは、例えば第2p+型領域13bの深さと同じであってもよい。
【0042】
半導体基板30のおもて面は、フィールド酸化膜15で覆われている。フィールド酸化膜15は、例えば熱酸化膜と堆積酸化膜とを順に積層した積層膜であってもよい。熱酸化膜は、半導体基板30とフィールド酸化膜15との密着性を向上させることができる。フィールド酸化膜15が堆積酸化膜を含むことで、フィールド酸化膜15のすべてを熱酸化膜とする場合よりも短時間でフィールド酸化膜15を形成することができる。
【0043】
フィールド酸化膜15には、活性領域10における半導体基板30のおもて面のほぼ全面を露出するコンタクトホール15aが設けられている。フィールド酸化膜15のコンタクトホール15aの側壁(フィールド酸化膜15の内側の側面)は、例えば半導体基板30のおもて面と略直交する。フィールド酸化膜15のコンタクトホール15aは、活性領域10から、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aまでの全域に設けられている。
【0044】
フィールド酸化膜15のコンタクトホール15aには、活性領域10におけるn-型ドリフト領域12およびp+型領域13と、エッジ終端領域20におけるFLR21の内側の部分と、が露出されている。フィールド酸化膜15のコンタクトホール15aの内部において半導体基板30のおもて面上に、半導体基板30のおもて面に沿って、アノード電極として機能するおもて面電極14が設けられている。
【0045】
おもて面電極14は、チタン膜31およびアルミニウム合金膜(アルミニウムを含む金属電極膜)32を順に積層してなる積層構造を有する。それに加えて、おもて面電極14は、半導体基板30おもて面とチタン膜31との間に選択的に設けられた最下層のニッケルシリサイド(NiSi)膜33(33a、33b、33c)を有する。ニッケルシリサイド膜33は、アルミニウムを含む。ニッケルシリサイド膜33は、炭素(C)を含んでいてもよい。おもて面電極14は、フィールド酸化膜15上を外側へ延在していてもよい。
【0046】
チタン膜31は、コンタクトホール15aの内部において半導体基板30のおもて面の全面に設けられ、n-型ドリフト領域12に接する。チタン膜31の、n-型ドリフト領域12との接合箇所は、n-型ドリフト領域12とのショットキー接合を形成するショットキー電極である。チタン膜31は、フィールド酸化膜15上を外側へ延在し、例えば深さ方向にFLR21に対向する位置で終端していてもよい。
【0047】
アルミニウム合金膜32は、チタン膜31の全面を覆い、チタン膜31に電気的に接続され、かつチタン膜31を介してニッケルシリサイド膜33に電気的に接続されている。アルミニウム合金膜32は、フィールド酸化膜15上をチタン膜31よりも外側へ延在して、例えば深さ方向にFLR21に対向する位置で終端していてもよい。アルミニウム合金膜32は、例えばアルミニウムシリコン(AlSi)膜である。アルミニウム合金膜32に代えて、アルミニウム膜が設けられていてもよい。
【0048】
ニッケルシリサイド膜33は、第1p+型領域13aとチタン膜31との間に設けられた第1ニッケルシリサイド膜(第1のシリサイド膜)33aと、第2p+型領域13bとチタン膜31との間に設けられた第2ニッケルシリサイド膜(第2のシリサイド膜)33bと、FLR21とチタン膜31との間に設けられた第3ニッケルシリサイド膜33cと、を有する。第3ニッケルシリサイド膜33cは、略矩形状に設けられ、端部で第2ニッケルシリサイド膜33bと接する。第1ニッケルシリサイド膜33aは、第1p+型領域13aにオーミック接合するオーミック電極であり、第2ニッケルシリサイド膜33bは、第2p+型領域13bにオーミック接合するオーミック電極である。第1ニッケルシリサイド膜33aおよび第2ニッケルシリサイド膜33bは、サージ電圧印加時に半導体基板30内に発生して順方向に流れるサージ電流が半導体基板30内からおもて面電極14へ引き抜かれる電流量(引き抜き量)を増大させて、サージ電流耐量を向上させる機能を有する。
【0049】
ニッケルシリサイド膜33は、後述するように、p
+型領域13と、半導体基板30のおもて面上に堆積した金属材料膜52(
図12参照)との接触箇所において、半導体基板30の表面領域と金属材料膜52とを熱処理により反応させることで形成される。
【0050】
図3は、
図1および
図2の破線Sに囲まれた領域Sの詳細構造を示す断面図である。
図3に示すように、ストライプ形状のトレンチ構造の底部に微細なオーミックのストライプ構造を設けた、トレンチ構造となっている。トレンチ25は、半導体基板30のおもて面上に設けられ、トレンチ25間のn
-型ドリフト領域12の表面部に第2p
+型領域13bが設けられ、トレンチ25の底部に第1p
+型領域13aが設けられている。このようにオーミック領域の面積を、活性領域の面積と同等にまで広げる構造としている。オーミック領域の面積を広げることで、サージ時にp
+型領域13へ電流が流れやすくなり、サージ耐量(IFSM)を確保することが可能になっている。例えば、トレンチ25間の幅w1b(第2p
+型領域13bの幅)は、1μm以上4μm以下、トレンチ25の幅w1a(第1p
+型領域13aの幅)は、0.5μm以上4.5μm以下、トレンチ25の深さD1は、2μm以上5μm以下であることが好ましい。また、第1p
+型領域13aの深さD2および第2p
+型領域13bの厚さD3は、0.2μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0051】
トレンチ25内は、おもて面電極14が充填され、トレンチ25の側壁がおもて面電極14と接触している。このため、トレンチ25を深く形成するほど、おもて面電極14とn-型ドリフト領域12とのショットキー接合で構成されたSBD構造の面積が増加し、オン電圧が高くなり、Vfを低下させることができる。
【0052】
第1ニッケルシリサイド膜33aをトレンチ26内に設け、第2ニッケルシリサイド膜33bをトレンチ26間に設けることにより、ニッケルシリサイド膜33の表面積を広げることができる。このため、サージ時にp+型領域13へ電流が流れやすくなり、サージ電流耐量(IFSM)を確保することができる。このようにすることで、実施の形態1では、サージ電流耐量およびオン電圧の両特性を改善することができる。
【0053】
図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のオーミック領域、無効領域、ショットキー領域を示す断面図でもある。活性領域10は、チタン膜31がpnダイオードを構成する第1p
+型領域13a、第2p
+型領域13bと接触するストライプ形状の無効領域80と、チタン膜31が第1ニッケルシリサイド膜33a、第2ニッケルシリサイド膜33bを介して第1p
+型領域13a、第2p
+型領域13bとオーミック接合を形成するストライプ形状のオーミック領域81と、チタン膜31がn
-型ドリフト領域12とショットキー接合を形成するストライプ形状のショットキー領域82とから構成されている。このように、活性領域10では、オーミック領域81と、オーミック領域81を取り囲む2つの無効領域80と、ショットキー領域82との6つの領域からなる1周期が繰り返される。ストライプ形状とは、
図2に示すように、横方向が縦方向よりも短い細長い矩形の形状である。
【0054】
このような周期構造にすることにより、オーミック領域81を活性領域10全体に均一に、高密度に配置することができる。このため、半導体基板内に順方向に高いサージ電流が流れたときに、サージ電流を分散させることができ、IFSM特性を上げることができる。
【0055】
また、第1p+型領域13aの幅w1aを第1ニッケルシリサイド膜33aの幅w2aより広くし、第2p+型領域13bの幅w1bを第2ニッケルシリサイド膜33bの幅w2bより広くすることで、無効領域80を設けている。無効領域80とは、第1p+型領域13a、第2p+型領域13b上でオーミック領域(ニッケルシリサイド膜33)以外の領域である。このように、無効領域80を設けることにより、オーミック領域が第1p+型領域13a、第2p+型領域13b外にはみ出さないようにし、リーク電流を抑えることができる。ここで、第2ニッケルシリサイド膜33bの幅w2bは、第2p+型領域13bの幅w1bを同じ幅にしてもよい。この場合w4=0となるが、トレンチ25の側壁に露出する第2p+型領域13bが無効領域80として機能する。
【0056】
ここで、炭化珪素半導体装置40の表面積に対する無効領域80の面積比率は、5%以上35%以下であることが好ましい。また、第1p+型領域13a、第2p+型領域13bの表面積に対する無効領域80の面積比率は、35%以上90%以下であることが好ましい。また、活性領域10の表面積は、p+型領域13の表面積とほぼ同一であるため、活性領域10の表面積に対する無効領域80の面積比率は、p+型領域13の表面積に対する無効領域80の面積比率と同じである。
【0057】
ここで、炭化珪素半導体装置40の表面積に対する無効領域80の面積比率は、無効領域80の表面積/炭化珪素半導体装置40の表面積である。炭化珪素半導体装置40の表面積は、活性領域10の表面積とエッジ終端領域20の表面積との和である。無効領域80、p
+型領域13および活性領域10の奥行き方向の長さは共通でwとすると、
図3に示すように、オーミック領域81が交互に一つずつ設けられている場合、無効領域80の面積は(4×w4)×wとなる。また、p
+型領域13の表面積に対する無効領域80の面積比率は、無効領域80の表面積/p
+型領域13の表面積であり、
図3の場合、p
+型領域13の表面積および活性領域10の表面積は(w1a+w1b)×wとなる。なお、上記はp
+型領域13とFLR21との接続部分が直角である場合の計算式であり、p
+型領域13とFLR21との接続部分を曲線状とする場合、この影響を考慮する必要がある。
【0058】
図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図2のB-B’断面図である。
図5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図2のC-C’断面図である。
図4に示すように、第1p
+型領域13aは、長手方向でエッジ終端領域20に設けられたFLR21と接していないが、
図5に示すように、第2p
+型領域13bは、長手方向でエッジ終端領域20に設けられたFLR21と接している。
【0059】
つまり、エッジ終端領域20において、トレンチ25間に設けられたオーミック領域(第2ニッケルシリサイド膜33b)は、FLR21と接しているが、トレンチ25内に設けられたオーミック領域(第1ニッケルシリサイド膜33a)は、FLR21と接さず、第1ニッケルシリサイド膜33aが設けられていないp型無効領域26がFLR21との間に設けられている。p型無効領域26の幅は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。これにより、逆バイアス時にトレンチ25内のショットキー領域82から電流が漏れることを防ぐことができる。また、FLR21にも第3ニッケルシリサイド膜33cが設けられている場合、オーミック領域81の第2ニッケルシリサイド膜33bが、第3ニッケルシリサイド膜33cと接続している。
【0060】
従来のドット形状のオーミック電極を配置する形態では、外周部近傍で、オーミック電極から遠い部分と、近い部分とが発生してしまうが、実施の形態1では、外周部近傍でもオーミック電極が均一に配置される。これにより、サージ電流が流れるときに、その電流をより均一に分散させることができ、局所的な電流集中を避けることができるため、IFSM特性を改善させることができる。また、オーミック領域81およびショットキー領域82は、間に必ず無効領域80が挟まれる。これにより、無効領域80がキャリアをオーミック領域81に流すため、リーク電流を減少できる。
【0061】
また、オーミック領域81の周りに、無効領域80が設けられており、活性領域10では、オーミック領域81同士は接続されていない。つまり、隣り合う第1ニッケルシリサイド膜33a、第2ニッケルシリサイド膜33bの間には、無効領域80およびショットキー領域82が存在している。このように、実施の形態1では、オーミック領域81のストライプを複数跨るような広いオーミック領域は存在しない。これにより、オーミック領域81の面積が大きくなることがないため、Vf特性を維持することができる。
【0062】
このような構造は、例えば後述するように、ニッケル、アルミニウム、ニッケルをこの順で堆積させた金属材料膜52と半導体基板30の表面領域を熱処理により反応させることで生成されるニッケルシリサイドを用いることで形成できる。低抵抗のニッケルシリサイド膜33は、金属材料膜52のシリサイド化されていない部分(加熱反応層を除く部分)をエッチングにより除去する自己整合(セルフアライン)により形成される。ニッケル、アルミニウム、ニッケルをこの順で堆積させた金属材料膜52を用いることにより、低抵抗なp型オーミック電極が形成される。また、セルフアラインにより形成することで、数μmの幅のJBS構造の内側にオーミック電極が形成され、Vf特性を維持することができる。このように、低抵抗のオーミック領域81をショットキー領域82の面積を狭めることなく形成できるため、Vf特性を維持したまま、IFSM特性を改善することができる。
【0063】
第3ニッケルシリサイド膜33cは、FLR21にオーミック接合するオーミック電極である。第3ニッケルシリサイド膜33cは、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aにおけるFLR21に設けられている。第3ニッケルシリサイド膜33cは、フィールド酸化膜15の側壁においてフィールド酸化膜15から離れている。第3ニッケルシリサイド膜33cは、第1ニッケルシリサイド膜33a、第2ニッケルシリサイド膜33bと同様に、サージ電流の引き抜き量を増大させて、サージ電流耐量を向上させる機能を有する。
【0064】
第3ニッケルシリサイド膜33cは、後述するように、FLR21と、半導体基板30のおもて面上に堆積した金属材料膜52との接触箇所において、半導体基板30と金属材料膜52とを熱処理により反応させることで形成される。
【0065】
半導体基板30のおもて面は、おもて面電極14と接する部分以外の部分はフィールド酸化膜15で覆われている。半導体基板30のおもて面の最表面には、ポリイミドからなるパッシベーション膜(不図示)が設けられている。ここで、n+型チャネルストッパー領域の上部に、n+型チャネルストッパー領域に接して電気的に接続されたチャネルストッパー電極を設けてもよい。チャネルストッパー電極は、例えばアルミニウム合金膜32と同時に形成されたアルミニウム合金膜であってもよい。半導体基板30の裏面(n+型出発基板11の裏面)の全面に裏面電極(第2電極)19が設けられ、n+型出発基板11に電気的に接続されている。
【0066】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置40の製造方法について説明する。
図6は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。
図7~
図16は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0067】
まず、
図7に示すように、n
+型出発基板(半導体ウエハ)11として、例えば5×10
18/cm
3程度の窒素(N)がドーピングされた炭化珪素の四層周期六方晶(4H-SiC)基板を用意する。n
+型出発基板11のおもて面は、例えば(0001)面に対して4°程度のオフ角を有していてもよい。次に、n
+型出発基板11のおもて面上に、n
-型ドリフト領域12となる例えば1.8×10
16/cm
3程度の窒素がドーピングされたn
-型エピタキシャル層を成長させる。
【0068】
n+型カソード領域となるn+型出発基板11の厚さは、例えば350μm程度であってもよい。n-型ドリフト領域12となるn-型エピタキシャル層の厚さは、例えば6μm程度であってもよい。ここまでの工程により、n+型出発基板11のおもて面上にn-型ドリフト領域12となるn-型エピタキシャル層を積層した半導体基板(半導体ウエハ)30が作製される。次に、半導体基板30のおもて面の全面にトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜51を形成する(ステップS1)。上述したように、半導体基板30は、n-型ドリフト領域12側の主面をおもて面とし、n+型出発基板11側の主面を裏面とする。
【0069】
次に、
図8に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより酸化膜51を選択的に除去して開口部を形成し、ドライエッチングによって、n
-型ドリフト領域12の表面からn
+型出発基板11に達しないトレンチ25を選択的に形成する(ステップS2)。
【0070】
次に、
図9に示すように、酸化膜51を選択的に除去し、イオン注入により、活性領域10においてトレンチ25の底部およびトレンチ25間にアルミニウム等のp型不純物を注入する(ステップS3)。次に、
図10に示すように、酸化膜51を除去し、FLR21に対応する部分に選択的にアルミニウム等のp型不純物を注入する。次に、熱処理によりイオン注入した不純物を活性化させる(ステップS4)。同様にして、JTE構造を構成するp
-型領域、p
--型領域に対応する部分にアルミニウム等のp型不純物を注入し、n
+型チャネルストッパー領域に対応する部分に窒素などのn型不純物を注入する。これにより、トレンチ25の底部にpnダイオードを構成する1つ以上の第1p
+型領域13aと、トレンチ25間にpnダイオードを構成する1つ以上の第2p
+型領域13bと、FLR21と、JTE構造を構成するp
-型領域(不図示)、p
--型領域(不図示)と、n
+型チャネルストッパー領域(不図示)と、をそれぞれ選択的に形成する。
【0071】
次に、
図11に示すように、半導体基板30のおもて面に酸化膜51を形成し(ステップS5)、フォトリソグラフィおよびエッチングにより酸化膜51を選択的に除去して開口部51aを形成する(ステップS6)。その後、マスク酸化膜53を形成し、ニッケルシリサイド膜33を形成する部分に開口部を形成する。
【0072】
次に、
図12に示すように、例えばスパッタ法により、酸化膜51の表面から酸化膜51の開口部51a内における半導体基板30のおもて面(表面)にわたって当該表面上に、金属材料膜52を形成する(ステップS7)。金属材料膜52は、第1ニッケル膜、アルミニウム膜(アルミニウムを含む金属膜)および第2ニッケル膜を順に積層した積層金属膜である。
図12には、第1ニッケル膜、アルミニウム膜および第2ニッケル膜をまとめて1層の金属材料膜52として図示する。以下の説明では、3層構造の金属材料膜52を説明するが、金属材料膜52は、アルミニウム膜および第2ニッケル膜を順に積層した2層の積層金属膜であってもよい。金属材料膜52は、第1ニッケル膜、アルミニウム膜および第2ニッケル膜、または、アルミニウム膜および第2ニッケル膜を合わせた膜厚が、50nm以上250nm以下であることが好ましい。
【0073】
次に、
図13に示すように、熱処理により、金属材料膜52を第1シンタリング(焼結)する(ステップS8)ことで、酸化膜51の開口部51a内にアルミニウム-ニッケル-シリコン(Al-Ni-Si)化合物55を生成する。第1ニッケル膜へのアルミニウム原子の熱拡散、半導体基板30内へニッケル原子の熱拡散、および第1ニッケル膜内とアルミニウム膜内へのシリコン原子の熱拡散により、金属材料膜52と半導体基板30との接触箇所に、Al-Ni-Si化合物55が生成される。Al-Ni-Si化合物55は、第1p
+型領域13a、第2p
+型領域13bまたはFLR21内の当該高不純物濃度との低抵抗なオーミック接合を形成する。
【0074】
次に、
図14に示すように、酸化膜51上および酸化膜51の開口部51a内の余剰の金属(余剰部分)と、マスク酸化膜53を除去する(ステップS9)。余剰の金属とは、未反応の金属材料膜52および金属材料膜52から生成された、Al-Ni-Si化合物55以外の金属であり、具体的にはAl-Ni-Si化合物55の生成に寄与しなかったアルミニウムニッケル化合物56(
図13参照)である。
【0075】
次に、
図15に示すように、熱処理により、Al-Ni-Si化合物55を第2シンタリングする(ステップS10)。ステップS10の熱処理により、Al-Ni-Si化合物55内にニッケルシリサイドを生成して、Al-Ni-Si化合物55を、半導体基板30にオーミック接合するニッケルシリサイド膜33にする。これにより、酸化膜51の各開口部51a内にそれぞれ、半導体基板30にオーミック接合するニッケルシリサイド膜33が形成される。ニッケルシリサイド膜33の膜厚は、金属材料膜52の膜厚の2倍程度の100nm以上500nm以下になる。
【0076】
次に、
図16に示すように、例えばスパッタリング等の物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)により、酸化膜51の表面から、コンタクトホール15a内における半導体基板30のおもて面までの全面にチタン膜31を形成する(ステップS11)。チタン膜31の厚さは、例えば100nm程度であってもよい。チタン膜31は、コンタクトホール15a内からフィールド酸化膜15上に延在していてもよい。残った酸化膜51は、フィールド酸化膜15となる。
【0077】
次に、例えば500℃程度の温度で10分間程度の熱処理によりチタン膜31をシンタリングする。この熱処理により、チタン膜31とn-型ドリフト領域12とのショットキー接合が形成される。次に、例えばスパッタリング等の物理気相成長法により、チタン膜31の表面から、フィールド酸化膜15の表面までの全面に、例えば5μm程度の厚さのアルミニウム合金膜を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより当該アルミニウム合金膜を選択的に除去して、おもて面電極14となるアルミニウム合金膜32としてチタン膜31の表面に残す。
【0078】
次に、半導体基板30(半導体ウエハ)のおもて面を保護膜(不図示)で覆って保護した後、半導体基板30を裏面側から研磨することで、半導体基板30を薄化して製品厚さとする。次に、例えばスパッタリング等の物理気相成長法により、半導体基板30の裏面(n
+型出発基板11の裏面)の全面にニッケルやチタンを形成した後、レーザーアニールすることで裏面電極19を形成する(ステップS12)。その後、半導体基板30のおもて面の保護膜を除去した後、半導体基板30をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、
図1に示す炭化珪素半導体装置40が完成する。
【0079】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、ストライプ形状のトレンチ構造の底部に微細なオーミックのストライプ構造を設けた、トレンチ構造となっている。トレンチ間のn-型ドリフト領域の表面部および底部にp+型領域が設けられている。このように、オーミック領域の面積を広げることで、サージ時にp+型領域へ電流が流れやすくなり、サージ耐量(IFSM)を確保することが可能になっている。このため、サージ電流耐量およびオン電圧の両特性を改善することができる。また、トレンチの側壁がおもて面電極と接触しているため、おもて面電極とn-型ドリフト領域とのショットキー接合で構成されたSBD構造の面積が増加し、オン電圧が高くなり、Vfを低下させることができる。また、FLRの側壁は、エッジ終端領域に最も近いトレンチの側壁を覆い、第1p+型領域と接する。これにより、エッジ終端領域に最も近いトレンチから、逆バイアス時にショットキー領域から電流が漏れることを防ぐことができる。
【0080】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図17は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図18は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のA-A’断面図である。
図19は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のB-B’断面図である。
図20は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のC-C’断面図である。
【0081】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置40が、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置40と異なるのは、トレンチ25を中央部に集め、第1p
+型領域13aとFLR21との距離が大きくなっている点である。
図17に示すように、トレンチ25が並ぶ方向(長手方向と直交する方向)では、エッジ終端領域20の近くでは、第2p
+型領域13bの間に、トレンチ25を設けず、第1p
+型領域13aも設けられていない。
【0082】
さらに、第1p
+型領域13aおよび第1ニッケルシリサイド膜33aの深さ(半導体基板30のおもて面からの距離)を、エッジ終端領域20から離れるに従って階段状に深くしている。
図18に示すように、トレンチ25が並ぶ方向では、エッジ終端領域20に最も近いトレンチ25を、他のトレンチ25より浅くして、第1p
+型領域13aおよび第1ニッケルシリサイド膜33aの深さをエッジ終端領域20から離れるに従って階段状に深くしている。同様に、トレンチ25の長手方向では、
図19に示すように、エッジ終端領域20に最も近いトレンチ25を、他のトレンチ25より浅くして、第1p
+型領域13aおよび第1ニッケルシリサイド膜33aの深さを階段状に深くしている。
【0083】
また、トレンチ25の長手方向では、エッジ終端領域20から離れるに従って、トレンチ25の深さをスロープ状に徐々に深くして、第1p+型領域13aおよび第1ニッケルシリサイド膜33aの深さをスロープ状に徐々に深くしてもよい。
【0084】
また、実施の形態2では、
図19に示すように、FLR21は、半導体基板30の表面層に設けられ、FLR21の下面(第2主面側の面)は、トレンチ25より浅く、第1p
+型領域13aの上面(第1主面側の面)よりも浅くなっている。このため、p型無効領域26が深くなり、FLR21から深さTだけ離れている。深さTを極力狭くすることにより、逆バイアス時にトレンチ25内のショットキー領域82から電流が漏れることを防ぐことができる。なお、FLR21の下面をトレンチ25の端部より深くして、p型無効領域26につなげることで、T=0としてもよい。一方、
図20に示すように、第2p
+型領域13bは、長手方向でエッジ終端領域20に設けられたFLR21と接している。また、FLR21にも第3ニッケルシリサイド膜33cが設けられている場合、オーミック領域81の第2ニッケルシリサイド膜33bが、第3ニッケルシリサイド膜33cと接続している。
【0085】
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置40は、トレンチ25を形成するための酸化膜51の位置を変え、トレンチ25を中央部に集め、トレンチ25の深さを変えることにより、実施の形態1の製造方法と同様に製造できる。
【0086】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、トレンチを中央部に集め、p+型領域とFLRとの距離が大きくなっている。また、FLRは、半導体基板の表面層に設けられ、トレンチより浅く、FLRの下面は、第1p+型領域の上面よりも深くしている。また、第1p+型領域および第1ニッケルシリサイド膜の深さをエッジ終端領域から離れるに従って階段状に深くしている。これにより、逆バイアス時にトレンチ内のショットキー領域から電流が漏れることを防ぐことができる。
【0087】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図21は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図22は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図21のA-A’断面図である。
図23は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図21のB-B’断面図である。
図24は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図21のC-C’断面図である。
【0088】
実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置40が、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置40と異なるのは、エッジ終端領域20に、活性領域10を囲む第2トレンチ27を設け、FLR21を第2トレンチ27の底部に設け、FLR21とトレンチ25の底部に設けられた第1p
+型領域13aを接続させた点である。
図22に示すように、エッジ終端領域20で、トレンチ25と第2トレンチ27とが接続している。またトレンチ25と第2トレンチ27が接続した部分では、
図24に示すように、FLR21上の第3ニッケルシリサイド膜33cとトレンチ25内の第1ニッケルシリサイド膜33aが接続している。
【0089】
また、実施の形態3では、隣り合うトレンチ25に挟まれたメサ部の表面に第2p
+型領域13bおよび第2ニッケルシリサイド膜33bが設けられている。
図23に示すように、第2ニッケルシリサイド膜33bから電流が漏れることを防ぐため、第2トレンチ27の側壁と第2p
+型領域13bとの間にはp型無効領域26が設けられている。
【0090】
図25および
図26は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。実施の形態3では、FLR21は第2トレンチ27の底部に設けられているため、FLR21のエッジ終端領域20のつなぎ領域20aから外側へ延在する部分21a、JTE構造を構成するp
-型領域22、JTE構造を構成するp
--型領域23は、
図25のように、FLR21と同じように第2トレンチ27の底部に設けてもよい。この場合、チップ端部まで第2トレンチ27が設けられてもよい。
【0091】
また、
図26のように、第2トレンチ27をチップ端部まで設けなくともよい。この場合、FLR21の部分21aは、第2トレンチ27の外側の側壁をすべて覆い、FLR21に接続する。この時、FLR21の部分21a、p
-型領域22、p
--型領域23を、半導体基板30の表面からFLR21と同じ深さまで設けることで、FLR21からp
--型領域23まで、p型領域の底面を同じ深さで形成している。また、エッジ終端領域20のつなぎ領域20aから外側へ延在するFLR21aは、設けなくてもよい。この場合、p
-型領域22が第2トレンチ27の外側の側壁を覆い、FLR21に接する。また、FLR21の部分21a、p
-型領域22、p
--型領域23は、同じ深さでなく、チップ端部に向かって段階的に浅くしてもよい。例えば、FLR21の部分21aが最も深く、p
-型領域22をFLR21の部分21aより浅くして、p
--型領域23をp
-型領域22より浅くしてもよい。
【0092】
(実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置40は、エッジ終端領域20に第2トレンチ27を形成し、FLR21を第2トレンチ27内に形成することにより、実施の形態1の製造方法と同様に製造できる。
【0093】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、FLRを第2トレンチ内に設け、FLRとトレンチ内の第1p+型領域を接続させている。このようにしても、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0094】
実施の形態1~3において、第2p+型領域13bの幅をトレンチ25間の幅よりも狭くして、トレンチ25間にn-型ドリフト領域12が露出する領域を残して、半導体基板30の上面にショットキー領域82を残してもよい。同様に、第1p+型領域13aの幅をトレンチ25の幅よりも狭くして、トレンチ25の底部にn-型ドリフト領域12が露出する領域を残して、トレンチ25の底部にショットキー領域82を残してもよい。
【0095】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、所定のパターンで配置されたp型領域にオーミック接合するオーミック電極を備えた炭化珪素半導体装置に適用可能である。
【0096】
具体的には、例えば、本発明は、p型領域(または当該p型領域と半導体基板の主面との間に配置されたp+型コンタクト領域)とオーミック電極とのコンタクト抵抗を低減させるための構成の炭化珪素半導体装置や、p型領域にオーミック接合するオーミック電極と酸化膜とが接する構造の炭化珪素半導体装置に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0098】
10、110 活性領域
11、111 n+型出発基板
12、112 n-型ドリフト領域
13(13a、13b)、113 JBS構造を構成するp+型領域(第1、2p+型領域)
14、114 おもて面電極
15、115 フィールド酸化膜
19、119 裏面電極
20、120 エッジ終端領域
20a つなぎ領域
21、121 フィールドリミッティングリング(FLR)
21a FLRのエッジ終端領域のつなぎ領域から外側へ延在する部分
22、122 JTE構造を構成するp-型領域
23 JTE構造を構成するp--型領域
25 トレンチ
26 p型無効領域
27 第2トレンチ
30、130 半導体基板
31、131 チタン膜
32、132 アルミニウム合金膜
33(33a、33b、33c)、133 ニッケルシリサイド膜(第1、2、3ニッケルシリサイド膜)
40、140 炭化珪素半導体装置
51 酸化膜
52 金属材料膜
53 マスク酸化膜
55 アルミニウム-ニッケル-シリコン(Al-Ni-Si)化合物
56 アルミニウムニッケル化合物
80 無効領域
81 オーミック領域
82 ショットキー領域
w1a JBS構造を構成する第1p+型領域の幅
w1b JBS構造を構成する第2p+型領域の幅
w2a 第1ニッケルシリサイド膜の幅
w2b 第2ニッケルシリサイド膜の幅
w4 JBS構造の無効領域の幅
w5 ショットキー領域の幅