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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048254
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】シリンジ用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A61M39/10 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154187
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 一成
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066JJ01
(57)【要約】
【課題】本発明は、安全性とシリンジとの十分な嵌合強度を有し、容易に作製できるシリンジ用コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】発明に係るシリンジ用コネクタ(30)は、シリンジ(10)の被接続部に嵌合する接続部(41)を有する第1部材(40)、及びシリンジ(10)から吐出された流体が流通するコネクタ流路(66)を有する第2部材(60)を備えており、第1部材(40)は混合物を含む樹脂で形成されており、及び第2部材(60)は混合物を含まない樹脂で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの被接続部に嵌合する接続部を有する第1部材、及びシリンジから吐出された流体が流通するコネクタ流路を有する第2部材を備えており、
前記第1部材は混合物を含む樹脂で形成されており、
前記第2部材は混合物を含まない樹脂で形成されている、シリンジ用コネクタ。
【請求項2】
前記混合物は繊維である、請求項1に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材とは、互いに当接する面同士の嵌合のみで両者が互いに固定されている、請求項2に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項4】
前記第1部材、及び前記第2部材は、互いに当接する当接面のそれぞれにおいて、互いに凹凸嵌合する一対の嵌合部を有している、請求項3に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項5】
前記第1部材は、前記一対の嵌合部の一方である第1嵌合部を有し、
前記第2部材は、前記一対の嵌合部の他方である第2嵌合部を有し、
前記第1部材には、前記第1部材の中心軸線周りにおける前記第1嵌合部の回転方向角度位置に対応した第1指示部が設けられており、
前記第2部材には、前記第2部材の中心軸線周りにおける前記第2嵌合部の回転方向角度位置に対応した第2指示部が設けられている、請求項4に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項6】
前記接続部の内径は、対応する位置の前記被接続部の外径の94%以上98%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項7】
前記接続部の径方向の板厚は、接続部41の中心軸線X方向の端部に設けた丸み部または面取り部以外の部分において2mm以上3mm以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項8】
前記第2部材は円板部を有し、
前記第2指示部は、前記円板部の外周部分を切り欠いて形成された非円形部である、請求項5に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項9】
前記第1部材は、相手側コネクタに接続される外筒部、及び前記接続部と前記外筒部との間において両者を接続している中間部を有し、
前記接続部の内周面は、径方向において前記外筒部の内周面と外周面の間に位置し、
前記接続部の外周面は、径方向において前記外筒部の外周面よりも外側に位置している、請求項1~3の何れか一項に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項10】
前記シリンジと前記シリンジ用コネクタとの間で中心軸線方向において挟まれるように配置され、前記シリンジ用コネクタよりも変形しやすいシール部材を備え、
前記シリンジ用コネクタは、前記シール部材と接触する面において周方向に連続する溝を有する、請求項1~3の何れか一項に記載のシリンジ用コネクタ。
【請求項11】
前記接続部は、内周面が円錐台状または円筒状に形成されており、
シリンジのガラス製のバレルに設けられた外周面が円錐台状または円筒状の被接続部に締まり嵌めで外嵌する、請求項1~3の何れか一項に記載のシリンジ用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジの先端に接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1に記載されているように、医療分野において、薬液の投与や採血等にシリンジ(注射筒)が使用されている。このようなシリンジは、薬液等を収容するバレル(外筒)と、バレル内に挿入されるプランジャ(押し子)から構成されている。
【0003】
バレルの先端には、所定の規格に準拠したコネクタ(筒先)が取り付けられている。このコネクタは、注射針の針基やカテーテルのコネクタ等が接続できるように形成されている。コネクタは、使用用途に応じてメッキ処理された真鍮などの金属で作られているものもある。金属製のコネクタは、長期保管された場合でもバレル先端との嵌合強度を維持することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本産業規格(JIS)T3201-1979「ガラス注射筒」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コネクタを金属で作製する場合、金属を加工する都合上、コネクタの形状、及び仕様に制約があった。また、金属は加工に手間がかかるため、コストがかかっていた。その改善策として、コネクタを樹脂で作製する提案もされていた。この点に関し、シリンジ用コネクタを形成する材料は、バレルの先端との十分な嵌合強度が得られることと、バレルからコネクタに流れる薬液等に異物が混入することがない安全な材料であることの両方を満たすことが必要である。しかし、上記を両立出来る樹脂製コネクタを作製することには困難性があった。そのため、金属製に代わる、安全性を有し、容易に作製できるコネクタが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、安全性とシリンジとの十分な嵌合強度を有し、容易に作製できるシリンジ用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、シリンジの被接続部に嵌合する接続部を有する第1部材、及びシリンジから吐出された流体が流通するコネクタ流路を有する第2部材を備えており、第1部材は混合物を含む樹脂で形成されており、第2部材は混合物を含まない樹脂で形成されている。
【0008】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、シリンジの被接続部に嵌合する接続部を有する第1部材、及びシリンジから吐出された流体が流通する略円筒状のコネクタ流路を有する第2部材を備えており、第1部材は混合物を含む樹脂で形成されており、第2部材は混合物を含まない樹脂で形成されている。そのため、シリンジの所定部位に嵌合する接続部を有し、高い嵌合力が必要な第1部材は強度・剛性を高める混合物を含む材料、及びシリンジから吐出された流体が流通するコネクタ流路を有する第2部材は、素材が分離する可能性がなく安全な材料を選択し、それぞれ最適な材料で形成することができる。したがって、本発明に係るシリンジ用コネクタは、高い嵌合力を有し、かつ安全なシリンジ用コネクタとすることができる。
【0009】
また、本発明に係るシリンジ用コネクタについて、混合物は繊維であることが好ましい。
【0010】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、第1部材を形成している樹脂は繊維を含んでいる。そのため、第1部材は樹脂への混合が容易な繊維を含んで構成される事でシリンジとの高い嵌合力を備えることができ、繊維を含まない第2部材60は薬液中に分離する可能性がある繊維を含まずに形成して、高い安全性を備えることができる。
【0011】
また、本発明に係るシリンジ用コネクタは、第1部材と第2部材とは、互いに接する面同士の嵌合のみで両者が連結されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、第1部材と第2部材とは、互いに接する面同士の嵌合のみで両者が連結されているので、接着剤等の他の部材を用いないため、シリンジから吐出された流体に他の物質が混入することがない。したがって、より高い安全性を備えるシリンジ用コネクタとすることができる。
互いに当接する当接面のそれぞれにおいて、互いに凹凸嵌合する一対の嵌合部を有している、
【0013】
また、本発明に係るシリンジ用コネクタは、第1部材、及び第2部材は、互いに当接する当接面のそれぞれにおいて、互いに凹凸嵌合する一対の嵌合部を有していることが好ましい。
【0014】
本発明に係るシリンジ用コネクタが備える第1部材、及び第2部材は、互いに当接する当接面のそれぞれにおいて、互いに凹凸嵌合する一対の嵌合部を有している。そのため、本発明に係るシリンジ用コネクタは、嵌合という簡素、かつ確実な結合方法により、高い嵌合力を有し、かつ安全なシリンジ用コネクタを構成することができる。
【0015】
また、本発明に係るシリンジ用コネクタについて、第1部材は、一対の嵌合部の一方である第1嵌合部を有し、第2部材は、一対の嵌合部の他方である第2嵌合部を有し、第1部材には、第1部材の中心軸線周りにおける第1嵌合部の回転方向位置に対応した第1指示部が設けられており、第2部材には、第2部材の中心軸線周りにおける第2嵌合部の回転方向位置に対応した第2指示部が設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明に係るシリンジ用コネクタの第1部材、及び第2部材は、第1嵌合部、及び第2嵌合部の回転方向角度位置に対応した第1指示部、及び第2指示部がそれぞれ設けられている。そのため、それぞれが特定の回転方向角度位置においてのみ、互いに嵌合する嵌合構造を有する第1部材、及び第2部材を容易に嵌合することができる。したがって、効率的にシリンジ用コネクタを作製することができる。
【0017】
本発明に係るシリンジ用コネクタの接続部の内径は、対応する位置の前記被接続部の外径の94%以上98%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るシリンジ用コネクタの接続部の内径は、対応する位置の前記被接続部の外径の94%以上98%以下であり、締まり嵌めの寸法関係に形成されている。したがって、本発明に係るシリンジ用コネクタは、シリンジの被接続部に圧入可能であるとともに、十分な引き抜き強度と、長期保存時の嵌合強度を備えることができる。
【0019】
本発明に係るシリンジ用コネクタの接続部の径方向の板厚は、接続部の中心軸線X方向の端部に設けた丸み部または面取り部以外の部分において2mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明に係るシリンジ用コネクタの接続部の径方向の板厚が上記範囲に形成されていることで、本発明に係るシリンジ用コネクタは、ソリ、ヒケ等の成形不良を低減しながら、シリンジに対し十分な引き抜き強度を備えることができる。
【0021】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、第2部材は円板部を有し、第2指示部は、円板部の外周部分を切り欠いて形成された非円形部であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るシリンジ用コネクタの第2指示部は、第2部材が有する円板部の外周部分に設けられた非円形部であるため、容易に形成できるとともに、円板部の外周部分に配置されているため、本コネクタの組み立ての際に、第2部材の回転方向位置を把握しやすく、また第2指示部周辺を把持しやすい。したがって、シリンジ用コネクタは、容易に作製することができる。
【0023】
本発明に係るシリンジ用コネクタの第1部材は、相手側コネクタに接続される外筒部、及び接続部と前記外筒部とを接続している中間部を有しており、接続部の内周面は、径方向において外筒部の内周面と外周面の間に位置し、接続部の外周面は、径方向において外筒部の外周面よりも外側に位置していることが好ましい。
【0024】
本発明に係るシリンジ用コネクタの第1部材において、接続部の内周面は、径方向において外筒部の内周面と外周面の間に位置し、接続部の外周面は、径方向において外筒部の外周面よりも外側に位置している。そのため、接続部の外周側部分における変形を適度に拘束して嵌合強度を高めつつ、接続部を外筒部により保持して局所的に過大な応力が発生することを防止し、嵌合強度を安定的に高めることができる。
【0025】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、シリンジとシリンジ用コネクタとの間で中心軸線方向において挟まれるように配置され、シリンジ用コネクタよりも変形しやすいシール部材を備え、シリンジ用コネクタは、シール部材と接触する面において周方向に連続する溝を有することが好ましい。
【0026】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、シリンジとシリンジ用コネクタとの間に、シリンジ用コネクタよりも変形しやすいシール部材を備え、シリンジ用コネクタは、シール部材と接触する面において周方向に連続する溝を有する。上記構造により、本発明に係るシリンジ用コネクタは、シール部材を溝部に膨出させ、溝部の角部の物理的形状により、溝部がない場合に比べて密閉性を向上させることができる。
【0027】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、内周面が円錐台状または円筒状である接続部を有し、シリンジのガラス製のバレルに設けられ、外周面が円錐台状または円筒状の被接続部に締まり嵌めで外嵌することが好ましい。
【0028】
本発明に係るシリンジ用コネクタは、内周面が円錐台状または円筒状である接続部を有し、シリンジのガラス製のバレルに設けられ、外周面が円錐台状または円筒状の被接続部に締まり嵌めで外嵌する。そのため、コネクタ内への挿入を容易にすると共に、コネクタとの密着性を高めて嵌合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタがシリンジに接続されている状態を示す斜視図である。
図2図1のコネクタ、及びシリンジの正面図である。
図3図2において、コネクタ、及びシリンジを通る中心軸線に平行な断面による断面図である。
図4図1の第1部材の右側面図である。
図5図1の第2部材の右側面図である。
図6図1の第2部材の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施の形態>
図1図3を参照して、本発明の実施の形態に係るコネクタ30を説明する。図1は、コネクタ30がシリンジ10に取り付けられている状態を示す斜視図である。図2は、図1のコネクタ30とシリンジ10との側面図である。図3は、図2において、中心軸線Xを含む平面による断面図である。コネクタ30は、ISO80369-6規格に対応したシリンジに取り付けられるように構成されている。
【0031】
シリンジ10は薬液の投与や採血等に使用され、公知のとおり、バレル11、及び図示されないプランジャから構成されている。バレル11は、薬液、生理食塩水、空気等の流体を収容する内部空間を有する略円筒形状に形成されている。バレル11は、バレル11のコネクタ側の端部に先端部12、及び先端部12と反対側の端部にフランジ部13を有している。バレル11はガラス製であり、例えばホウケイ酸ガラスから形成されている。
【0032】
先端部12は、略円筒形状に形成されているバレル11の先端部12側のバレル端面19から突出して形成されている被接続部14を有している。被接続部14は、バレル端面19に、くびれ部16を介して接続されている外径d2で形成されており、外周面が円錐台状、又は円筒状の部分である。被接続部14のコネクタ側の先端面には、被接続部先端面15が形成されている。被接続部14、及びくびれ部16は、バレル11の一部として一体的に形成されている。被接続部14の内部には、バレル11の内部空間に連通し、バレル端面19から被接続部先端面15まで、被接続部14の中心軸線Xに沿って貫通しているシリンジ流路18が設けられている。シリンジ流路18のバレル端面19側の内径d1は、シリンジ流路18の内径d1の最大内径部分であり、被接続部先端面15に向かって、シリンジ流路18の内径d1は徐々に縮径した略円錐形状に形成されている。シリンジ流路18の被接続部先端面15側は、一定の内径d1で形成されており、被接続部先端面15で開口している。
【0033】
図3図6を参照して、コネクタ30を説明する。コネクタ30は、第1部材40、及び第1部材40の内部に嵌合して収容されている第2部材60を備えている。図4は、第1部材40を図3において右側、すなわちシリンジ10側から見た右側面図である。図5は、第2部材60を図3において右側、すなわちシリンジ10側から見た右側面図である。図6は、第2部材60を図3において左側、すなわちコネクタ30の先端側から見た左側面図である。
【0034】
第1部材40は、被接続部14の外面に嵌合する円筒形状の接続部41、接続部41と中心軸線Xを同軸にして接続されている外筒部42、及び接続部41と外筒部42との間において両者を接続している中間部43を有している。接続部41は、シリンジ10の被接続部14に嵌合する部分である。接続部41の内周面は、被接続部14に外嵌するように、内径d3の円錐台状、又は円筒状に形成されている。
【0035】
外筒部42は、中心軸線Xに平行な円筒面で形成された円筒形状部分であり、外筒部42のシリンジ側端は、中間部43の先端側面に接続されている。外筒部42は、外筒部42の内面において、コネクタ30が接続される図示されないメスコネクタ等が備えるねじ部とねじ嵌合可能であるねじ突条部を備えていてもよい。その場合、コネクタ30は、カラーにねじ溝が形成されている相手コネクタにも使用することが可能である。
【0036】
中間部43は、円筒形状の接続部41の先端側の端部を塞ぐように固定されている。中間部43は、シリンジ10側の面である中間部第1端面45、及び中央に中間部中央孔46を有している。中間部中央孔46は、後述する第2部材60の内筒部62が貫通する孔であり、中間部43に接続されている内筒部62の基端部の外径とほぼ同じ寸法の内径で形成されている。中間部中央孔46を、第2部材60の内筒部62の基端部、すなわち内筒部62の中間部第1端面45側端の外径よりわずかに小さい内径で形成して、中間部中央孔46と内筒部62とを曲面同士で面接触させて締り嵌めで嵌合してもよい。または、中間部中央孔46の内周面と、前記内周面が接する内筒部62の外周面とにおいて、何れか一方に凹部、何れか他方に凸部を設けて、互いに嵌合する凹凸嵌合としてもよい。
【0037】
接続部41の内周面の内径は、対向する円板部61の外周面の外径とほぼ同じ寸法で形成されている。接続部41の内周面の内径を円板部61の外周面の外径よりわずかに小さい内径で形成して、接続部41の内周面と、円板部61の外周面とを曲面同士で面接触させて締り嵌めで嵌合してもよい。または、接続部41の内周面と、前記内周面が接する円板部61の外周面とにおいて、何れか一方に凹部、何れか他方に凸部を設けて、互いに嵌合する凹凸嵌合としてもよい。
【0038】
第1部材40と、第2部材60とは、嵌合以外の固定方法で互いに固定されていてもよい。他の固定方法とは、例えば溶着である。第1部材40と、第2部材60との互いに接する部位、例えば接続部41の内周面と円板部61の外周面、または中間部中央孔46の内周面と、内筒部62の外周面とにおいて、溶着されていてもよい。溶着方法は、例えば超音波溶着、レーザー溶着等である。又は、第1部材40と、第2部材60とにおいて、回転方向に凹部と凸部とが形成されているバヨネット嵌合でもよい。又は、第1部材40と、第2部材60とにおいて、中心軸線X方向に凹部と凸部とが形成されているスナップ嵌合でもよい。
【0039】
図4に示されているように、中間部第1端面45には、一対の嵌合部の一方である第1嵌合部47が形成されている。第1嵌合部47は、第2部材60の対応する部分と嵌合して回り止めをする部分である。第1嵌合部47は、中間部中央孔46から中間部第1端面45の外周端まで、径方向に一定溝幅L1で形成された1つ以上の凹部、溝等である。第1嵌合部47は、一定溝幅L1で中間部中央孔46を中心として周方向に90°間隔で4本形成されている。第1嵌合部47の本数は4本以外でもよく、中間部第1端面45の周方向において1本、又は中間部中央孔46を中心として周方向において同じ角度間隔で、2本~6本形成されていてよい。
【0040】
接続部41の外周面には、第1部材40の中心軸線X周りにおける第1嵌合部47の回転方向角度位置に対応した第1指示部48が設けられている。第1指示部48は、第1部材40と、第2部材60とを組み立てる際に、両者の回転方向角度位置を合わせるための部分である。第1指示部48は、外周の一部を接続部41の外周から中心に向けて切り取ったU字形状の溝である。第1指示部48は、接続部41の外周に接する直線に平行な直線と、前記直線の両端位置する前記直線に垂直な直線とを含んでいる。図2に示されているように、第1指示部48は、接続部41の中心軸線X方向における接続部41の全長にわたって設けられている。第1指示部48は、円板部61の外周上において、180°間隔で2つ形成されている。第1指示部48は、接続部41の回転方向において、第1嵌合部47と同じ回転方向角度位置にそれぞれ設けられている。第1指示部48は、第1嵌合部47と異なる回転方向角度位置に設けられていてもよい。
【0041】
接続部41の内径d3は、被接続部14の外径d2の94%~98%に形成されており、接続部41と被接続部14とは締り嵌めである。接続部41の内径d3が上記範囲を下回ると、接続部41を被接続部14に圧入することが困難となる。また、接続部41の内径d3が上記範囲を上回ると、接続部41の締め付け力が小さくなる。その結果、接続部41の被接続部14からの十分な引き抜き強度が得られなくなる。また、長期保管時のクリープ変形等によって要求される嵌合強度(例えば、JIS T3201-1979に規定される78Nの引抜荷重に5分間耐えられる嵌合強度)を維持できなくなる可能性がある。
【0042】
第1部材40を形成している、接続部41と外筒部42との径方向寸法の関係について説明する。接続部41の内径d3は、外筒部42の内径d5より大きく、外径d6より小さい。また、接続部41の外径d4は、外筒部42の外径d6より大きい。言い換えれば、コネクタ30の中心軸線X方向に垂直な方向、すなわち径方向において、接続部41の内周面は、外筒部42の内周面と、外周面との間に位置する。また、接続部41の外周面は、外筒部42の外周面より外側に位置する。これにより、接続部41の外周側部分における変形を適度に拘束して嵌合強度を高めつつ、接続部41を外筒部42により保持して局所的に過大な応力が発生することを防止し、嵌合強度を安定的に高めることができる。
【0043】
接続部41の板厚は、接続部41の中心軸線X方向の端部に設けた丸み部または面取り部以外の部分において、2mm以上3mm以下の寸法で形成されている。接続部41の板厚を厚くするほど接続部41の強度、剛性が向上するが、板厚を上記より厚くするほど、ソリ、ヒケ、等の成形不良が発生する可能性が増加する。上記板厚に形成することで、コネクタ30は、成形不良を低減しながら、シリンジ10に対し300N以上の引き抜き強度を備えることができる。
【0044】
第1部材40は、混合物を含む樹脂で形成されている。混合物を含む樹脂は、複数の樹脂の混合であってよい。第1部材40は、樹脂以外の混合物を含む樹脂で形成されていてもよい。第1部材40は、樹脂が混合物を含んでいることで第1部材40の強度、剛性が向上している。第1部材40を形成する樹脂は、ポリアミド樹脂(PA)が好ましい。ポリアミド樹脂は化学的、生物学的に安全性が高く、医療機器の分野において、主に縫合糸やカテーテル等の素材として使用されており医療分野で実績がある。また、ポリアミド樹脂は耐クリープ性が高く、コネクタ30をバレル11に嵌合した状態で長期保管しても、嵌合強度が低下しにくい特性を有している。ポリアミド樹脂(PA)は、脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含んでおり、何れでも使用可能である。脂肪族ポリアミド樹脂は、例えばナイロン66、ナイロン6、等である。芳香族ポリアミドはパラ系アラミド、及びメタ系アラミドである。混合物は、第1部材40の強度・剛性を高めるものであれば、何れでもよい。混合物は、例えば繊維である。繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維(ケブラー繊維)、カーボン繊維、ザイロン繊維、ポリエチレン繊維(ダイニーマ)、ボロン繊維、等である。また、混合物は、カーボンナノチューブを含むカーボンチューブでもよい。
【0045】
第2部材60は、シリンジ10から吐出された薬液等が流れるコネクタ流路66を形成している部材である。第2部材60は、円板部61、及び円板部61に接続している内筒部62を有している。内筒部62は、円板部61の円板部第2端面64に、円板部61と中心軸線Xを同軸にして接続されており、両者は、一体的に形成されている。第2部材60は、円板部61と、内筒部62との両方にわたって設けられている貫通孔であるコネクタ流路66が形成されている。コネクタ流路66は、シリンジ流路18から吐出された薬液等の流体が流れる略円筒状の空間である。コネクタ流路66は極細径に形成されており、押し出されずにコネクタ流路66中に残る薬液等の残渣分を、従来に比べ低減することができる。
【0046】
円板部61は、第1部材40の内径d3よりわずかに小さい外径で形成された円板形状の部材であり、円板部第1端面63、及び円板部第2端面64を有している。円板部第1端面63の中央部には、コネクタ流路66の一部であり、シリンジ流路18から吐出された薬液等が直接流れ込む導入部67が形成されている。
【0047】
導入部67は、図5に示されているように、導入部67のコネクタ30の中心軸線X方向に対する横断面が、円形を互いに略平行な2つの直線で切り欠いた形状に形成されている。また、コネクタ流路66の導入部67より先端側におけるコネクタ30の中心軸線X方向に対する横断面形状は、略円形に形成されている。導入部67の最小内寸は、コネクタ流路66の導入部67より先端側の横断面を形成する略円形の最大内寸より大きく形成されている。すなわち、コネクタ流路66の内周面は、中心軸線X方向において2段階に構成されている。導入部67の最小内寸は、シリンジ10の被接続部先端面15におけるシリンジ流路18の内径d1より大きく、約2倍~約3倍である。
【0048】
円板部61の円板部第2端面64には、一対の嵌合部の他方である第2嵌合部65が形成されている。第2嵌合部65は、第1部材40の中間部第1端面45上に形成されている第1嵌合部47と互いに嵌合して回り止めをする部分である。第2嵌合部65は、内筒部62から、円板部61の外周端まで、中間部第1端面45において、径方向に一定幅L2で形成された凸部、又は突条である。第2嵌合部65は、内筒部62の基端部の表面に接続されて一体的に形成されている。そのため、第2嵌合部65は、内筒部62の曲げ剛性を向上させて、内筒部62の曲がり、折れを防止する効果がある。第2嵌合部65は、一定幅L2で内筒部62の基端部を中心として周方向に90°間隔で4本形成されている。第2嵌合部65の本数は、第1嵌合部47と互いに嵌合可能なら4本以外でもよい。第2嵌合部65は、中間部第1端面45の周方向において1本、又は中間部中央孔46を中心として周方向において同じ角度間隔で、2本~6本形成されていてよい。
【0049】
円板部第1端面63とシリンジ10の被接続部先端面15との間には、中心軸線X方向において両者に挟まれるように、シリンジ用コネクタ39より変形しやすい材料で形成されたシール部材20が配置されている。シール部材20は、薬液等の漏れの発生を防止する。シール部材20は円形、かつ中央部にシール部材中央孔21が形成されており、薄い弾性部材、例えばシリコンゴムで形成されている。円板部第1端面63には、所定半径で周方向に連続する環状溝部71が形成されている。環状溝部71は、環状溝部71の箇所のシール部材20を膨出させ、環状溝部71の円板部第1端面63に形成されている角部の物理的形状により、環状溝部71がない場合に比べて密閉性を向上させることができる。
【0050】
円板部61の外周部には、第2部材60の中心軸線周りにおける第2嵌合部65の回転方向角度位置に対応した第2指示部69が形成されている。第2指示部69は、第1部材40と、第2部材60とを組み立てる際に、両者の回転方向角度位置を合わせるための部分である。第2指示部69は、円板部61の外周面の円弧部分を径方向に垂直な直線で切り取った、いわゆるDカット形状の部分であり、円板部61の外周上に180°間隔で2つ形成されている。言い換えれば、第2指示部は、円板部61の外周部分を切り欠いて形成された非円形部である。第2指示部69は、円板部61の回転方向において、第2嵌合部65と同じ回転方向角度位置にそれぞれ設けられている。第2指示部69は、第2嵌合部65と異なる回転方向角度位置に設けられていてもよい。したがって、第2指示部69は、第2部材60が有する円板部61の外周部分に設けられた非円形部であるため、容易に形成できるとともに、円板部61の外周部分に配置されているため、コネクタ30の組み立ての際に、第2部材60の回転方向位置を把握しやすく、また第2指示部60周辺を把持しやすい。
【0051】
第2部材60は、化学的、生物学的に安全性が高い樹脂であれば何れの樹脂でも使用可能である。第2部材60は、例えばポリアミド樹脂(PA)で形成されている。ポリアミド樹脂(PA)は化学的、生物学的に安全性が高く、医療機器の分野において、主に縫合糸やカテーテル等の素材として使用されており医療分野で実績がある。ポリアミド樹脂(PA)は、脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含んでおり、何れでも使用可能である。脂肪族ポリアミド樹脂は、例えばナイロン66、ナイロン6、等である。芳香族ポリアミドはパラ系アラミド、及びメタ系アラミドである。また、第2部材60は薬液等が流れるコネクタ流路66を形成している部材であることから、第2部材60は薬液中に分離が発生する可能性がある混合物、例えば繊維は含まれていない。
【0052】
シール部材中央孔21、及びコネクタ流路66は、シリンジ流路18から吐出された薬液等が流れる流路空間68を形成している。流路空間68に接している第2部材60と、シール部材20とを構成する材料には、薬液中にその一部の脱落が発生する可能性がある材料、例えばガラス繊維は含まれていない。したがって、薬液等は、異物を含むことなく患者の体内に注入される。
【0053】
第1部材40、及び第2部材60は樹脂成型で作製されるため、金属製コネクタより低コストでコネクタ30を所望の色に着色することができる。金属製コネクタの場合、コネクタの形状を形成後、塗装工程を設けて着色する必要があった。それに対し、樹脂成型で作製される本発明のコネクタ30は、成型材料として顔料を混入させ、第1部材40、及び第2部材60をISO規格に規定されている色等に着色することができる。そのため、コネクタ30は金属製コネクタより低コストで、所望の色に着色されたコネクタ30とすることができる。
【0054】
[コネクタ30の組み立て方法]
コネクタ30の組み立て方法を説明する。コネクタ30は、第1部材40の中間部中央孔46に、第2部材の内筒部62を貫通させて組み立てられる。組み立ての際、治具、又は自動組み立て機により第1指示部48、及び第2指示部69を利用して、第1部材40と、第2部材60とのそれぞれの中心軸線Xを中心とする回転方向角度位置が合わされた状態に保持される。その状態のまま、内筒部62を中間部中央孔46に貫通させ、第2部材の第2嵌合部65が第1部材40の第1嵌合部47に嵌合して、コネクタ30の組み立てが完了する。
【0055】
[変形例]
上記実施の形態は、その構成の一部を、以下のようにそれぞれ置き替えて構成することができる。
【0056】
第1嵌合部47、及び第2嵌合部65の形状は、互いに確実に嵌合できれば別な形状でもよい。例えば、第1嵌合部47、及び第2嵌合部65は、凹凸が逆に入れ替えられて配置されてもよい。または、第1嵌合部47、及び第2嵌合部65は、径方向に延びる凹部、及び凸部に替えて、互いに対応する位置にある周方向に延びて形成された凹部、及び凸部でもよい。または、中間部第1端面45、及び円板部第1端面63の対応する部位に形成された任意の形状の対応する凹部、および凸部であってもよい。
【0057】
また、第1指示部48、及び第2指示部69は、第1部材40と、第2部材60とのそれぞれの回転角度位置が明確に示せれば、他の形状でもよい。例えば、第1指示部48、及び第2指示部69は、それぞれ円弧状の溝であってもよい。または、第1指示部48、及び第2指示部69は、省略されてもよい。第1指示部48、及び第2指示部69が省略された場合は、第1部材40と、第2部材60とは、図4、及び図5において破線で示された外形形状となる。
【0058】
本発明により、安全性とシリンジとの十分な嵌合強度を有し、容易に作製できるシリンジ用コネクタを提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 シリンジ、40 第1部材、47 第1嵌合部(嵌合部)、
48 第1指示部、 60 第2部材、61 円板部、
65 第2嵌合部(嵌合部)、68 流路空間、69 第2指示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6