(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048257
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】データ伝送方法及びデータ伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154192
(22)【出願日】2022-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「Beyond 5G研究開発促進事業/(研究開発課題名)低遅延でインタラクティブなゼロレイテンシー映像・Somatic 統合ネットワーク」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】為末 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】甲藤 二郎
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048BA25
5K048BA34
5K048EB02
5K048EB07
5K048EB10
5K048FB03
5K048FB05
5K048GC01
5K048HA21
(57)【要約】
【課題】低遅延でのデータ伝送を実現可能なデータ伝送方法及びデータ伝送システムを提供する。
【解決手段】データ伝送システム100は、動作中の機械102の所定箇所の位置データをセンサ104により順次取得する位置データ取得装置106と、所定の予測方法を用いて、一定期間における時系列の位置データから、少なくともネットワークNの伝送路の遅延時間を含む所定時間後の未来の位置データを予測するデータ予測装置108と、機械102の種々の動作に応じた所定箇所の複数の位置データと所定箇所が各位置にあるときの機械102の画像データとを対応付けて格納するDB112から、未来の位置データに対応する機械102の予測画像データを順次取得する画像取得装置110と、順次取得された複数の予測画像データに基づいてディスプレイ122に機械102の映像を表示させる表示制御装置120と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送遅延のあるネットワークを介してデータを伝送するためのデータ伝送方法であって、
位置データ取得装置が、動作中の機械の所定箇所の位置データをセンサにより順次取得し、
データ予測装置が、所定の予測方法を用いて、前記位置データ取得装置によって取得された一定期間における時系列の位置データから、少なくとも前記ネットワークの伝送路の遅延時間を含む所定時間後の未来の位置データを予測し、
画像取得装置が、前記機械の種々の動作に応じた前記所定箇所の複数の位置データと前記所定箇所が各位置にあるときの前記機械の画像データとを対応付けて格納するデータベースから、前記未来の位置データに対応する前記機械の画像データを予測画像データとして順次取得し、
表示制御装置が、前記画像取得装置によって順次取得された複数の予測画像データに基づいて、ディスプレイに前記機械の映像を表示させる、データ伝送方法。
【請求項2】
前記画像取得装置は、前記ネットワークを介して前記複数の予測画像データを順次送信し、
前記表示制御装置は、前記ネットワークを介して前記画像取得装置から順次受信した前記複数の予測画像データに基づいて、前記ディスプレイに前記機械の映像を表示させる、請求項1に記載のデータ伝送方法。
【請求項3】
前記データ予測装置は、前記ネットワークを介して前記未来の位置データを送信し、
前記画像取得装置は、前記ネットワークを介して受信した前記未来の位置データに基づいて前記予測画像データを取得する、請求項1に記載のデータ伝送方法。
【請求項4】
映像生成装置が、前記画像取得装置によって順次取得された前記複数の予測画像データから映像データを生成し、前記ネットワークを介して前記映像データを送信し、
前記表示制御装置は、前記ネットワークを介して受信した前記映像データに基づいて、前記ディスプレイに前記機械の映像を表示させる、請求項1に記載のデータ伝送方法。
【請求項5】
伝送遅延のあるネットワークを介してデータを伝送するためのデータ伝送システムであって、
動作中の機械の所定箇所の位置データをセンサにより順次取得する位置データ取得装置と、
所定の予測方法を用いて、前記位置データ取得装置によって取得された一定期間における時系列の位置データから、少なくとも前記ネットワークの伝送路の遅延時間を含む所定時間後の未来の位置データを予測するデータ予測装置と、
前記機械の種々の動作に応じた前記所定箇所の複数の位置データと前記所定箇所が各位置にあるときの前記機械の画像データとを対応付けて格納するデータベースから、前記未来の位置データに対応する前記機械の画像データを予測画像データとして順次取得する画像取得装置と、
前記画像取得装置によって順次取得された複数の予測画像データに基づいて、ディスプレイに前記機械の映像を表示させる表示制御装置と、
を備えるデータ伝送システム。
【請求項6】
前記画像取得装置は、前記ネットワークを介して前記複数の予測画像データを順次送信し、
前記表示制御装置は、前記ネットワークを介して前記画像取得装置から順次受信した前記複数の予測画像データに基づいて、前記ディスプレイに前記機械の映像を表示させる、請求項5に記載のデータ伝送システム。
【請求項7】
前記データ予測装置は、前記ネットワークを介して前記未来の位置データを送信し、
前記画像取得装置は、前記ネットワークを介して受信した前記未来の位置データに基づいて前記予測画像データを取得する、請求項5に記載のデータ伝送システム。
【請求項8】
前記画像取得装置によって順次取得された前記複数の予測画像データから映像データを生成し、前記ネットワークを介して前記映像データを送信する映像生成装置をさらに備え、
前記表示制御装置は、前記ネットワークを介して受信した前記映像データに基づいて、前記ディスプレイに前記機械の映像を表示させる、請求項5に記載のデータ伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送遅延のあるネットワークを介してデータを伝送するためのデータ伝送方法及びデータ伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデータ伝送システムの一例として、
図1に示すデータ伝送システム10では、動作中の機械22(例えば、ロボットアーム)をカメラ24で撮影し、得られた映像をネットワークNを介して送信し、オペレータOPがディスプレイ14に表示された機械22の映像を見ながらコントローラ12を操作する。これにより、コントローラ12の操作データがネットワークNを介して送信され、遠隔地にある機械22を遠隔操作することができる。
【0003】
近年、このようなデータ伝送システムに関する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、遠隔の溶接現場にある機械をカメラで撮影し、ローカル現場にいるオペレータがその映像をモニタで見ながら当該機械を遠隔で操作するシステムが開示されている。特許文献2には、ストリーミングデータ伝送時に、データを分割して計画的に接続先、送信時刻を決めて送信するシステムにおいて、伝送経路の遅延が大きいと判定した場合には、予め決めたデータ配信時刻より前に配信を行うことで、受信側でのデータ遅延をなくす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-910号公報
【特許文献2】特開2014-204270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ローカル現場と遠隔地との間を接続するネットワークの通信待ち時間が十分短いことを前提としているため、伝送遅延が比較的大きなネットワークを介したデータ伝送には特許文献1の技術を適用することはできない。特許文献2では、送信するデータの内容が決まっているため、遅延が予想される通信経路の場合、送信予定時刻より前に送信を行うことで受信側での低遅延の受信を実現している。しかし、送信するデータの内容が決まっていない一般の通信の場合には、特許文献2の技術を用いることができないと思われる。
図1に示すデータ伝送システム10では、伝送遅延のあるネットワークNを経由して機械22の映像を伝送すると、ディスプレイ14上の機械22の表示も遅延してしまうため、オペレータOPがコントローラ12を円滑に操作することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低遅延でのデータ伝送を実現可能なデータ伝送方法及びデータ伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデータ伝送方法は、伝送遅延のあるネットワークを介してデータを伝送するためのデータ伝送方法であって、位置データ取得装置が、動作中の機械の所定箇所の位置データをセンサにより順次取得し、データ予測装置が、所定の予測方法を用いて、位置データ取得装置によって取得された一定期間における時系列の位置データから、少なくともネットワークの伝送路の遅延時間を含む所定時間後の未来の位置データを予測し、画像取得装置が、機械の種々の動作に応じた所定箇所の複数の位置データと所定箇所が各位置にあるときの機械の画像データとを対応付けて格納するデータベースから、未来の位置データに対応する機械の画像データを予測画像データとして順次取得し、表示制御装置が、画像取得装置によって順次取得された複数の予測画像データに基づいて、ディスプレイに機械の映像を表示させる。
【0008】
本発明に係るデータ伝送システムは、伝送遅延のあるネットワークを介してデータを伝送するためのデータ伝送システムであって、動作中の機械の所定箇所の位置データをセンサにより順次取得する位置データ取得装置と、所定の予測方法を用いて、位置データ取得装置によって取得された一定期間における時系列の位置データから、少なくともネットワークの伝送路の遅延時間を含む所定時間後の未来の位置データを予測するデータ予測装置と、機械の種々の動作に応じた所定箇所の複数の位置データと所定箇所が各位置にあるときの機械の画像データとを対応付けて格納するデータベースから、未来の位置データに対応する機械の画像データを予測画像データとして順次取得する画像取得装置と、画像取得装置によって順次取得された複数の予測画像データに基づいて、ディスプレイに機械の映像を表示させる表示制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、データ予測装置が、少なくともネットワークの伝送路の遅延時間を含む所定時間後の未来の位置データを予測することで、送信側と受信側との間で遅延時間がほとんどない伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来のデータ伝送システムの一例を表す構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るデータ伝送システムの構成図である。
【
図3】線形予測方式によるデータ予測を説明するための模式図である。
【
図6】ロボットアームの関節の可動域を表す模式図である。
【
図7】ロボットアームの関節位置を表すインデックス番号を説明するための模式図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るデータ伝送システムの構成図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るデータ伝送システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面全体において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0012】
リアルタイムの通信において、直前に送信したデータ内容から未来のデータ内容を予測できる場合がある。本実施形態では、このようなデータ通信において、未来のデータを予測するデータ予測装置を通信経路上に設置することで、受信側での遅延時間をほぼゼロにするデータ伝送方法及びシステムを提供する。
【0013】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るデータ伝送システムについて説明する。
図2に示すように、第1実施形態に係るデータ伝送システム100は、機械102(例えば、ロボットアーム)と、機械102に取り付けられたセンサ104と、位置データ取得装置106と、データ予測装置108と、画像取得装置110と、データベース(DB)112と、表示制御装置120と、ディスプレイ122とを備える。
【0014】
データ伝送システム100において、位置データ取得装置106、データ予測装置108、及び画像取得装置110を別々のコンピュータで実現してもよいし、これらの少なくとも2つを1台のコンピュータで実現するようにしてもよい。
【0015】
表示制御装置120及びディスプレイ122は、オペレータがいる現場(例えば、地球)に設置され、機械102、センサ104、位置データ取得装置106、データ予測装置108、画像取得装置110、及びDB112は、遠隔地(例えば、月)に設置されている。遠隔地から送信された機械102の画像の時系列データが、伝送遅延のあるネットワークNを介して表示制御装置120で受信され、機械102の映像がディスプレイ122に表示される。オペレータが、ディスプレイ122上の映像を見ながらコントローラを操作することで、コントローラの操作データがネットワークNを介して送信され、操作データに基づいて機械102を遠隔操作することができる。
【0016】
センサ104は、機械102の所定箇所(例えば、ロボットアームの関節の一つ)に取り付けられており、所定箇所の位置を測定し、3次元座標値(X、Y、Z)を位置データとして出力する。
【0017】
位置データ取得装置106は、センサ104から所定のサンプリング間隔で、動作中の機械102の所定箇所の座標値(X、Y、Z)を順次取得し、取得された座標値(位置データ)を順次出力する。
【0018】
データ予測装置108は、位置データ取得装置106から出力された一定期間における時系列の位置データから、所定の予測方法を用いて、所定時間Tp後の未来の位置データを予測する。データ予測装置108はバッファを有しており、位置データの入力開始後、バッファが一杯になるまで位置データを蓄積し、以降、バッファ内の位置データをパイプライン状に送る。よって、最初にバッファが一杯になるまではデータ蓄積に一定期間を要するが、以降のデータ蓄積に要する時間は無視できるほど小さい。データ予測装置108は、次の位置データが入力されると、バッファ内で最も古い1つの位置データを捨て、バッファ内の現在の時系列の位置データに基づいて所定時間Tp後の未来の位置データを予測し、未来の位置データを出力する処理を繰り返す。
【0019】
以下、ネットワークNの伝送路における遅延時間をT1、位置データ取得装置106での処理時間をT2、データ予測装置108での処理時間をT3、後述の画像取得装置110での処理時間をT4、後述の表示制御装置120での処理時間をT5と表記する。データ予測装置108は、少なくとも遅延時間T1を含む所定時間Tp後の未来の位置データを予測する。所定時間Tpは、遅延時間T1と各装置での処理時間との合計時間(Tp=T1+T2+T3+T4+T5)に設定するのが好ましい。なお、データ予測装置108での処理時間T3には、バッファへのデータ蓄積時間Tbとデータ予測に要する時間が含まれるが、一旦バッファが一杯になると、データ蓄積時間Tbを無視することができる。
【0020】
データ予測装置108によって実行されるデータ予測方法として、線形予測方式、複数の過去データから現在のデータを予測する自己回帰(AR)モデル、移動平均(MA)モデル、及び自己回帰和分移動平均(ARIMA)モデルなどがある。
【0021】
図3を参照して、データ予測方法の一例として線形予測方式について簡単に説明する。機械102の所定箇所の位置の時刻t-1での実測値を(Xm(t-1)、Ym(t-1)、Zm(t-1))、時刻tでの実測値を(Xm(t)、Ym(t)、Zm(t))とすると、時刻t+1での位置の予測値(Xp(t+1)、Yp(t+1)、Zp(t+1))は、以下のように求められる。
【数1】
【0022】
このように、線形予測方式を用いて、時刻t-1及び時刻tでの位置の実測値(すなわち、時系列の位置データ)から、未来の時刻t+1での位置を予測することができる。
【0023】
図2に戻り、DB112は、機械102の所定箇所の位置データと、所定箇所が各位置にあるときの機械102の画像データとを対応付けて格納している。画像取得装置110は、DB112を参照し、データ予測装置108から出力された未来の位置データに対応する機械102の画像データを予測画像データとして取得し、取得した予測画像データを順次、ネットワークNを介して送信する。
【0024】
表示制御装置120は、常にネットワークNを監視しており、画像取得装置110から送信された時系列の予測画像データ(複数の予測画像データ)を受信して即座に連続的にディスプレイ122に表示させる処理を繰り返す。これにより、ディスプレイ122には動作中の機械102の映像を表示することができる。
【0025】
次に、
図4~
図7を参照して、DB112の構造について説明する。
図4に、DB112を作成するためのデータベース作成システム130の構成を示す。データベース作成システム130は、機械102と、センサ104と、位置データ取得装置106と、カメラ114と、DB作成装置116と、DB112とを備える。
【0026】
カメラ114によって機械102の種々の動作が撮影され、機械102の映像がDB作成装置116に出力される。同時に、位置データ取得装置106は、機械102の所定箇所に取り付けられたセンサ104から所定箇所の位置データを取得し、DB作成装置116に出力する。DB作成装置116は、機械102の所定箇所の位置データと、その位置データが取得されたタイミングで映像から切り出した画像データとを対応付け、位置データをインデックス番号としたDB112を作成する。
【0027】
図5に、機械102がロボットアームである場合のDB112の構造の一例を示す。
図5に示すように、DB112は、ロボットアームの手首の位置の座標値(Index)と、その座標値が取得されたときのロボットアームの画像データ(Image_target)とをペアにし、ロボットアームの種々の動作に応じてそれぞれ取得された複数の座標値(X1、Y1、Z1)、(X2、Y2、Z2)、…、(Xn、Yn、Zn)と、ロボットアームの手首が各座標値にあるときの画像データとからなる複数のペアを格納している。なお、ロボットアームの手首だけでなく、肘部分の関節など、複数箇所の座標値を組み合わせてもよい。
【0028】
DB112に格納されているインデックス番号は、量子化した座標値である。以下、インデックス番号の算出方法について説明する。
【0029】
図6は、原点(0、0、0)を中心としたロボットアームの関節の可動域を表す模式図である。この可動域は、原点を中心とした半球の範囲である。3次元空間をΔX、ΔY、ΔZで区切ったメッシュ構造とし、各交点での座標値であるインデックス番号を(Xindex、Yindex、Zindex)、各インデックス番号に対応するロボットアームの画像データImage_targetをImage[Xindex][Yindex][Zindex]と表記する。
【0030】
座標値(X0、Y0、Z0)が取得されたとき、インデックス番号(Xindex、Yindex、Zindex)は以下のように算出される。
【数2】
【0031】
DB112を作成するとき、
図4のDB作成装置116は、位置データ取得装置106から取得された座標値からインデックス番号を算出し、そのインデックス番号と対応する画像データとをペアにしてDB112に登録する。機械102を遠隔操作するとき、
図2の画像取得装置110は、データ予測装置108から未来の座標値を取得すると、上述のようにインデックス番号(Xindex、Yindex、Zindex)を算出し、DB112から、そのインデックス番号(Xindex、Yindex、Zindex)に対応する1つの画像データImage_target=Image[Xindex][Yindex][Zindex]を取得する。
【0032】
例えば、ロボットアームの関節の可動域が半径1mの半球である場合、ΔX=ΔY=ΔZ=5cmをインデックス番号の単位とすると、
図7に示すように、X軸及びY軸は-100から+100までの40等分、Z軸は0から+100までの20等分に区切られる。この場合、DB112は、インデックス番号と対応する画像データとをペアとした40×40×20=32000個のペアのデータを格納可能である。
【0033】
ロボットアームの映像は最終的にディスプレイ122に表示されるが、データ予測装置108で予測したロボットアームの関節位置の未来の座標値が多少ずれていても、ディスプレイ122に映るロボットアームの関節位置はそれほど大きく変化しない。この傾向は、特に、ロボットアームの関節がカメラ114から離れている場合に現れる。そのため、データ予測装置108によるデータ予測の精度として5%程度のずれは許容可能である。
【0034】
データ伝送システム100が地球と月との間の通信を行うシステムであれば、ネットワークNにおける遅延時間T1は約1秒である。位置データ取得装置106が1kHzのサンプリング間隔で位置データを取得するときの処理時間T2は数十msecである。データ予測装置108での処理時間T3のうちデータ予測に要する時間は、予測方法に依るが、例えば、約400msecである。画像取得装置110によるインデックス番号の算出と画像データ取得に要する時間T4は数十msecが見込まれ、表示制御装置120による処理時間T5は10msecが見込まれる。このようなシステムの場合、データ予測装置108は、Tp=T1+T2+T3+T4+T5~1.5秒後の未来の位置データを予測する。これにより、地球上のディスプレイ122には、月面の機械102(ロボットアーム)の画像をほぼリアルタイムで表示することができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るデータ伝送システムについて説明する。第1実施形態では、画像取得装置及びDBが送信側(遠隔地)に設置されているのに対し、第2実施形態では、画像取得装置及びDBがオペレータのいる受信側に設置されている。以下、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0036】
図8に示すように、第2実施形態に係るデータ伝送システム200において、データ予測装置108は、位置データ取得装置106から出力された一定期間における時系列の位置データに基づいて、少なくともネットワークNの遅延時間T1を含む所定時間Tp後の未来の位置データを予測し、予測した未来の位置データを順次、ネットワークNを介して送信する。
【0037】
画像取得装置210は、常にネットワークNを監視しており、未来の位置データを順次受信し、受信した未来の位置データからインデックス番号を算出し、算出したインデックス番号に対応する画像データをDB112から予測画像データとして順次取得する。
【0038】
表示制御装置120は、画像取得装置210によって順次取得された時系列の予測画像データ(複数の予測画像データ)を即座に連続的にディスプレイ122に表示させる処理を繰り返す。これにより、ディスプレイ122に機械102の映像を表示することができる。
【0039】
データ伝送システム200では、機械102の所定箇所の未来の位置データをネットワークNを介して送信しており、第1実施形態のように、機械102の画像データを順次、ネットワークNを介して送信する場合よりも単位時間あたりのデータ伝送量(ビットレート)が少なくて済む。
【0040】
なお、データ伝送システム200において、位置データ取得装置106及びデータ予測装置108を別々のコンピュータで実現してもよいし、1台のコンピュータで実現してもよい。また、画像取得装置210及び表示制御装置120を別々のコンピュータで実現してもよいし、1台のコンピュータで実現するようにしてもよい。
【0041】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るデータ伝送システムについて説明する。第1及び第2実施形態では、ディスプレイ122に画像データ(静止画像)を順次送信することで、ディスプレイ122に機械102の映像を表示するのに対し、第3実施形態では、機械102の映像データを生成し、生成した映像データをディスプレイ122に表示する。以下、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0042】
図9に示すように、第3実施形態に係るデータ伝送システム300は、
図2に示すデータ伝送システム100に映像生成装置312を追加した構成と同等である。
【0043】
映像生成装置312は、画像取得装置110によって順次取得された時系列の予測画像データ(複数の予測画像データ)から所定形式(例えば、MPEG2形式)の映像データを生成し、生成した映像データを圧縮し、ネットワークNを介して送信する。映像生成装置312での処理時間をT6と表記すると、T6は、映像データの生成及び圧縮処理の合計時間に相当する。ここで、複数の予測画像データから映像データを生成するために要する時間は数msecである。
【0044】
表示制御装置320は、常にネットワークNを監視しており、ネットワークNを介して映像生成装置312からの圧縮映像データを受信し、受信した圧縮映像データを復号してディスプレイ122に表示させる。表示制御装置320での処理時間をT5′と表記すると、T5′は、復号処理と表示処理との合計時間に相当する。
【0045】
データ予測装置108は、少なくともネットワークNの遅延時間T1を含む所定時間Tp後の未来の位置データを予測するが、所定時間Tpを遅延時間T1と各装置での処理時間との合計時間(Tp=T1+T2+T3+T4+T5′+T6)に設定するのが好ましい。
【0046】
なお、
図9のデータ伝送システム300において、位置データ取得装置106、データ予測装置108、画像取得装置110、及び映像生成装置312を別々のコンピュータで実現してもよいし、これらの少なくとも2つを1台のコンピュータで実現するようにしてもよい。また、
図9のデータ伝送システム300において、画像取得装置110、DB112、及び映像生成装置312を受信側に設置し、データ予測装置108から未来の位置データを順次、ネットワークNを介して送信するようにしてもよい。この場合、画像取得装置110、映像生成装置312、及び表示制御装置320の少なくとも2つを1台のコンピュータで実現するようにしてもよい。
【0047】
以上のように、第1~第3実施形態によれば、伝送遅延のあるネットワークNを介したデータ伝送において、データ予測装置108により所定時間Tp後の未来の位置データを予測することで、送信側と受信側との間で遅延時間がほとんどない伝送を実現することができる。
【0048】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能であり、当業者によってなされる他の実施形態、変形例も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300 データ伝送システム
102 機械
104 センサ
106 位置データ取得装置
108 データ予測装置
110、210 画像取得装置
112 DB
120、320 表示制御装置
122 ディスプレイ
130 データベース作成システム
312 映像生成装置
N ネットワーク