(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048261
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】既製杭の杭頭部材
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20240401BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
E02D13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154197
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】新山 慶一郎
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄一
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050BB00
2D050CA01
2D050CB23
2D050EE06
2D050EE17
(57)【要約】
【課題】杭孔に建て込んだ既製杭の傾きを抑制することが可能な杭頭部材を提供する。
【解決手段】既製杭の杭頭部材10は、略円筒形状の既製杭20の上端部に基端部が固定され、既製杭20の中心軸Oから既製杭20の直径方向に延び、杭打機の下端部と係合する複数の係合金具1と、係合金具1の既製杭20より外側に位置する先端部にそれぞれ固定され、係合金具1の先端部の既製杭20の直径方向外側の端面よりも広い面2aを当該方向の端面に有する規制金具2とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状の既製杭の上端部に基端部が固定され、前記既製杭の中心軸から前記既製杭の直径方向に延び、杭打機の下端部と係合する複数の係合金具と、
前記係合金具の前記既製杭より外側に位置する先端部にそれぞれ固定され、当該係合金具の先端部の前記既製杭の直径方向外側の端面よりも広い面を当該方向の端面に有する規制金具とを備えることを特徴とする既製杭の杭頭部材。
【請求項2】
前記広い面は前記既製杭が建て込まれる杭孔の内壁面と同心であって、その間に隙間を有して湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の既製杭の杭頭部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製杭の杭頭に固定される部材に関する。
【背景技術】
【0002】
既製杭を支持地盤に定着させる既製杭工法として、杭孔を支持地盤まで掘削し、この杭孔に既製杭を建て込むプレボーリング工法がある。
【0003】
プレボーリング工法においては、杭の底部には杭の底部と支持層を一体化させるために根固め液を、根固め液よりも上部には杭と周辺地盤の隙間を埋めるための杭周固定液を充填しておき、この杭孔に杭を建て込む。根固め液及び杭周固定液が固化することにより、杭が杭孔に定着される。
【0004】
杭を建て込む際には、略横長直方体状の係合金具を杭頭部に取り付け、この係合金具に杭打機の下端部に係合した状態として、杭打機により杭を杭孔内に圧入する。
【0005】
特許文献1には、流動状硬化性材料で充填された杭孔に杭を建て込む際に、杭施工機械の連結ロッドに連結するために杭頭部に被着される回転キャップの外周に、建て込み時に杭芯が杭孔中心から偏心することを防止するための杭芯ずれ防止治具を設けることが開示されている。
【0006】
なお、特許文献2には、一端を地中に埋め込んだ杭が倒れることを防止する杭倒れ防止装置が開示されている。この装置は、杭に装着される略円筒状の支持部に放射状に延伸する複数の羽根部を備えている。支持部に長手方向に延びる貫通孔は、上方から下方に向かって拡径している。これにより、この杭倒れ防止装置を装着した杭を地中に埋め込むと、羽根部が地中に埋設されることと貫通孔内に土が入り込むことにより、杭が倒れることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-297791号公報
【特許文献2】特開2021-42572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、杭孔に建て込まれた既製杭は、根固め液及び杭周固定液が固化するまでは不安定であり、周辺の打杭機や相番重機などの重機の稼働による振動などにより、係合金具が杭孔の内壁面にめり込むまで、杭が傾くことがある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、杭孔に建て込んだ既製杭の傾きを抑制することが可能な杭頭部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の既製杭の杭頭部材は、略円筒形状の既製杭の上端部に基端部が固定され、前記既製杭の中心軸から前記既製杭の直径方向に延び、杭打機の下端部と係合する複数の係合金具と、前記係合金具の前記既製杭より外側に位置する先端部にそれぞれ固定され、当該係合金具の先端部の前記既製杭の直径方向外側の端面よりも広い面を当該方向の端面に有する規制金具とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の既製杭の杭頭部材によれば、周辺の重機の稼働による振動などの要因によって、根固め液や杭周固定液杭孔が充填された杭孔内にて既製杭が傾いても、規制金具の広い面が杭孔の内壁面に当接するので、規制金具が地盤にめり込むほどには規制杭が傾かない。これにより、既製杭の傾きを抑制することができ、既製杭を安定的に建て込むことが可能となる。
【0012】
本発明の既製杭の杭頭部材において、前記広い面は前記既製杭が建て込まれる杭孔の内壁面と同心であって、その間に隙間を有して湾曲していることが好ましい。
【0013】
この場合、既製杭の傾く方向に関わらず、一様に既製杭の傾きを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る既製杭の杭頭部材を取り付けた既製杭を杭孔に建て込んだ状態を示す模式上面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る既製杭(既成杭)の杭頭部材10について
図1及び
図2を参照して説明する。なお、
図1及び
図2は本実施形態を模式的に説明するための図であり、寸法はデフォルメされている。
【0016】
既製杭の杭頭部材10は、略円筒形状の既製杭20(以下、単に杭20ともいう。)の上端部である杭頭部に固定される。既製杭の杭頭部材10は、既製杭20の杭頭部に基端部が固定される複数の係合金具1と、それぞれの係合金具1の既製杭20より外側に位置する先端部に固定される規制金具2とからなる。
【0017】
係合金具1は、杭20を杭孔Aに建て込む際に使用される杭打機の下端部の被係合金具と係合する鋼製の部材である。係合金具1は、ここでは、略横長長方体状であり、その形状から「ようかん」とも呼称される。係合金具1は、ここでは、1本の杭20に対して、杭20の中心軸Oを中心に点対称に3個固定されるが、2個、又は、4個以上固定してもよく、必ずしも点対称でなくてもよい。
【0018】
係合金具1は、それぞれ、溶接によって、杭頭部の上面にその基端部が固定される。ただし、係合金具1は、ボルトなどを用いて杭20の杭頭部に取り外し可能に固定されていてもよい。
【0019】
係合金具1は、それぞれ、杭20の中心軸Oから杭20の直径方向外側に向かって延びている。これにより、係合金具1の先端部は、杭20の外周面より外側に突出して位置している。
【0020】
規制金具2は、係合金具1の先端側の端面よりも広い面2aを杭20の直径方向外側の端面に有している。広い面2aには、局所的又は連続的な凹凸などは存在せず、平坦面、または曲率が同じあるいは連続する曲面であることが好ましい。広い面2aは、係合金具1の先端面に比較して2倍以上の面積を有することが好ましい。
【0021】
規制金具2は、それぞれの係合金具1の先端部に溶接などによって固定されている。ただし、規制金具2は、係合金具1と一体化して形成されていてもよく、また、係合金具1とボルトなどを用いて取り外し可能に構成されていてもよい。
【0022】
ここでは、規制金具2は、杭20が建て込まれる杭孔Aの内壁面と同心にその間に所定の隙間を有した広い面2aが湾曲している。これにより、杭20が杭孔Aに建て込まれたとき、坑孔Aの内壁面と広い面2aとの間には、所定の隙間が形成される。この隙間は、例えば、数mmから数十mmである。
【0023】
規制金具2は、ここでは、鋼製の長方形板を湾曲させてなるものである。そして、湾曲した外側の面が広い面2aであり、杭孔Aの内壁面と対向している。規制金具2は、内側の面の中央部又はその付近にて係合金具1の先端部と溶接によって固定されている。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る既製杭の杭頭部材10を用いたプレボーリング工法による既製杭20の杭孔Aへの建て込み方法について説明する。
【0025】
まず、杭20に、係合金具1を固定し、さらに、係合金具1に規制金具2を固定する。ただし、規制金具2を固定した係合金具1を杭20に固定してもよい。
【0026】
そして、この杭20を、アースオーガなどにより支持地盤まで地盤Bを掘削して形成した杭孔Aに圧入する。この杭孔Aの直径は、杭20の直径より100mm程度大きい。杭孔Aを掘削する際に、杭20の底部には杭20の底部と支持地盤を一体化させるために不図示のセメントミルクなどの根固め液を充填し、根固め液よりも上部には杭20と周辺の地盤Bの隙間を埋めるためにセメントミルクなどの杭周固定液Cを充填しておく。
【0027】
そして、図示しない杭打機の下端部の被係合部を係合金具1と係合させて、杭打機に杭20を固定する。そして、この状態で、杭打機を用いて杭20を杭孔A内に圧入する。なお、杭20は回転させながら圧入しても回転させずに圧入してもよい。杭20は杭孔Aに充填された杭周固定液Cに完全に沈める。さらに、杭20はその中心軸Oが杭孔Aの中心軸と一致するように位置合わせを行う。
【0028】
その後、杭打機の下端部の被係合金具と係合金具1との係合を解除する。
【0029】
その後、所定時間経過すると、根固め液及び杭周固定液Cが固化して、杭20が杭孔Aに定着される。さらに、その後、杭20にその上部構造を構築する際に鉄筋などを配置する際に、規制金具2、さらには係合金具1が干渉する場合には、これらを除去する。ただし、これらを除去しなくてもよい。
【0030】
以上で説明したように、杭打機と係合金具1との係合を解除してから根固め液及び杭周固定液Cが固化するまでの期間中に、周辺の杭打機や相番重機などの重機の稼働による振動などの要因によって、杭20が傾くことがある。このように杭20は杭孔A内にて傾くが、規制金具2の広い面2aが杭孔Aの内壁面に当接するので、地盤Bに規制金具2がめり込むほどまでには杭20は傾かない。これにより、杭20の傾きを抑制することができ、杭20を杭孔Aに安定的に建て込むことが可能となる。
【0031】
従来のように規制金具2が存在しない場合には、係合金具1の先端部が地盤Bにめり込み、杭20が大きく傾くことがあったが、規制金具2を追加して設けることにより、このような事態を防止することが可能となる。
【0032】
また、杭20が杭孔Aに建て込まれたとき、広い面2aが杭孔Aの内壁面と同心であって、その間に所定の隙間を有して湾曲している場合、杭20の傾く方向に関わらず、一様に杭20の傾きを抑制することが可能となる。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した既製杭の杭頭部材10に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。
【0034】
例えば、杭20は全体が鋼製である場合について説明した。しかし、杭20が既製コンクリート杭(PHC杭、PRC杭)であり、その杭頭部に鋼製からなる部材が固定されたものであってもよく、この場合、この部材の上面に係合金具1が溶接により固定される。
【0035】
また、係合金具1は、略直方体状である場合について説明したが、その形状はこれに限定されず、各種の杭打機の下端部の被係合部と係合するに適した形状であればよい。
【符号の説明】
【0036】
1…係合金具、 2…規制金具、 2a…広い面、 10…既製杭の杭頭部材、 20…既製杭、杭、 A…杭孔、 B…地盤、 C…杭周固定液、 O…杭孔の中心軸。