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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048264
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】網材の取付具及びそれを用いた柵体
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/06 20060101AFI20240401BHJP
   E04H 17/16 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E01F15/06
E04H17/16 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154201
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 竜也
【テーマコード(参考)】
2D101
2E142
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101DA04
2D101DA05
2D101EA02
2D101FA11
2D101FA21
2D101FA34
2D101FA35
2D101FB11
2E142AA01
2E142CC06
2E142CC12
2E142CC17
2E142HH03
2E142HH12
2E142HH22
(57)【要約】
【課題】枠材に網材を取り付ける作業を容易に、かつ安全に行うことのできる、作業性に優れた網材の取付具と、その取付具を用いた柵体を提供する。
【解決手段】取付具5は、枠材3に添設される取付基板6と、取付基板6とは別体の網材係止部材7と、それらを結合する締結部材8と、を具備する。取付基板6には組付孔61と締結部材挿通孔62とが形成される。網材係止部材7は、取付基板6の組付孔61に挿入可能な挿込片71と、その一端縁から前方に屈折して連続する網材受部73と、その前端縁から挿込片71と反対向きに屈折して延びる係止爪片74と、を有して、挿込片71に締結部材取付孔72が形成される。挿込片71が取付基板6の組付孔61に正面側から挿入されて取付基板6の背面側に重ねられた状態で、取付基板6と挿込片71とが締結部材8を介して結合され、網材4の張線41が正面側から網材係止部材7に係止される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜の柱体によって支持される複数本の枠材と、前記枠材によって囲まれた枠内に張設される網材と、を含んで構成される柵体において、前記網材の縁端部を前記枠材に取り付けるための取付具であって、
前記枠材の枠内側に添設されて前記網材と平行に配置される平板状の取付基板と、
前記取付基板とは別体に形成されて前記取付基板に組み付けられる網材係止部材と、
前記取付基板と前記網材係止部材とを重ねて結合する締結部材と、
を具備し、
前記取付基板には、前記枠材と平行な長軸を有して前記枠材寄りに配置される組付孔と、前記組付孔から枠内側に離隔して配置される締結部材挿通孔と、が形成され、
前記網材係止部材は、前記取付基板の前記組付孔に挿入可能な挿込片と、前記挿込片の一端縁から前方に屈折して連続する網材受部と、前記網材受部の前端縁から前記挿込片と反対向きに屈折して延びる係止爪片と、を有して、前記挿込片に締結部材取付孔が形成され、
前記網材係止部材の前記挿込片が前記取付基板の前記組付孔に正面側から挿入されて前記取付基板の背面側に重ねられ、前記係止爪片がその先端を前記枠材側に向けて前記取付基板の正面側に保持された状態で、前記取付基板と前記挿込片とが前記締結部材挿通孔及び前記締結部材取付孔に挿着された締結部材を介して結合される
ように構成された網材の取付具。
【請求項2】
請求項1に記載された網材の取付具において、
前記網材係止部材の前記網材受部が前記組付孔の長軸寸法よりも幅広に形成されるとともに、
前記取付基板に形成される締結部材挿通孔が前記組付孔の長軸と直交する方向に延びる長孔として形成され、
前記網材係止部材の挿込片が前記取付基板の前記組付孔に正面側から挿入されて、前記網材受部を前記組付孔に当接させた状態で、前記網材係止部材が前記取付基板に対し前記組付孔との当接箇所を支点として前後方向に揺動し得るように保持される
ことを特徴とする網材の取付具。
【請求項3】
請求項1または2に記載された網材の取付具において、
前記締結部材がボルト・ナットであり、
前記網材係止部材の前記挿込片に形成される締結部材取付孔がボルト挿通孔であり、
前記取付基板と前記挿込片とが前記ボルト・ナットによって結合される
ことを特徴とする網材の取付具。
【請求項4】
請求項1または2に記載された網材の取付具において、
前記締結部材がボルトであり、
前記網材係止部材の前記挿込片に形成される締結部材取付孔が雌ねじ孔であり、
前記ボルトが前記取付基板の正面側から前記雌ねじ孔に締結される
ことを特徴とする網材の取付具。
【請求項5】
請求項1または2に記載された網材の取付具の前記取付基板が、網材の縁端部を保持する前記枠材の枠内側に添設されるとともに、前記取付基板に前記網材係止部材と前記締結部材とが組み付けられ、
前記網材の縁端部に配置された形状保持用の張線が、前記取付基板の正面側から前記網材係止部材の前記係止爪片に係止されて前記網材受部に保持された状態で、
前記取付基板と前記網材係止部材とが前記締結部材を介して結合される
ことを特徴とする柵体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、道路外への飛び出しや敷地内への侵入を防ぐために、その道路や敷地を囲うように設置される柵体に関し、より詳細には、柵体の枠材に網材を固定するための取付具と、その取付具を用いた柵体に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等の路側部には、車両や積荷が道路外へ飛び出すのを防ぐための柵体(防護柵)が設置される。また、施設の敷地や公園等、特定の領域への立ち入りを防ぐために、その領域を囲むようにして柵体が設置されることもある。この種の柵体の多くは、適宜間隔で立設される柱体と、柱体によって支えられる上下左右の枠材と、枠材によって囲まれた枠内に取り付けられる網材と、を含んで構成される。
【0003】
特許文献1には、胴縁(本願が開示する発明における枠材に相当)に金網(同、網材に相当)を取り付けて構成されるフェンス(同、柵体に相当)に関して、金網の上下方向の縁端部に挿通された形状保持のための横骨線(同、張線に相当)を、胴縁の垂直板に切り起こした係止爪片に係合させる金網の係止構造が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示された金網の係止構造では、金網に過大な荷重が作用したときに、横骨線が係止爪片から外れて、金網が胴縁から脱落してしまうおそれがある。しかし、係止爪片の代わりにボルト・ナット等の固定金具を用いて金網の縁端部を胴縁に固定しようとすると、作業者は金網の縁端分を胴縁等に沿わせて押さえながら、固定金具を胴縁等に締結する必要があるので、作業性が悪い。
【0005】
そこで、特許文献2には、網材が枠体(本願が開示する発明における枠材に相当)から脱落するおそれを低減し、かつ、網材を取り付る際の作業性も改善しようとした防護柵(同、柵体に相当)の構成が提案されている。その構成は、網材を保持する枠体に取り付けた係合部材に、網材の縁端部に係合する係合爪を形成するとともに、網材を挟んで係合部材と相対する側に、網材の縁端部が係合爪から離脱するのを防ぐ離脱防止部材を配置して、係合部材と離脱防止部材との間に網材を挟んだ状態で離脱防止部材を係合部材にボルト締結する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実全昭63-184864号公報
【特許文献2】特開2016-125300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された発明では、防護柵の上側に位置する枠体に取り付けた全ての係合部材の係合爪に金網の縁端部を係止してから、各係合部材に離脱防止部材を当てがい、その状態で係合部材及び離脱防止部材にボルトを挿通してナットと締結する必要がある。このとき、一方の手は離脱防止部材及びナットを保持し、他方の手はボルトを保持して回さなければならないので、同時に金網を押えておくのは難しい。したがって、特許文献2に開示された発明も、実質的には特許文献1に開示された発明と同様に、係合部材と離脱防止部材とをボルト締結するまでの間に金網が係合部材の係合爪から脱落してしまうおそれがある。防護柵の両側及び下側に位置する枠体についても、係合部材に金網の縁端部を仮止めしながら離脱防止部材を取り付ける作業が容易でないことは同様である。
【0008】
さらに、特許文献2に開示された発明では、係合部材及び離脱防止部材に挿通したボルトにナットを螺合させる作業を、金網の背面側から行わなければならないので、作業態勢が不自由になる。高速道路の高架上では道路側からしか作業できないことも多いため、道路の外側(高架下)にナットを落下させてしまうような事故を起こす危険性を孕んでいる。
【0009】
本願が開示する発明は、前述のような網材の取付作業における作業性を改善すべく着想されたものであり、網材の取付作業を従来よりも容易に、かつ安全に行うことのできる、使い勝手のよい網材の取付具と、その取付具を用いた柵体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願が開示する発明に係る網材の取付具は、適宜の柱体によって支持される複数本の枠材と、前記枠材によって囲まれた枠内に張設される網材と、を含んで構成される柵体において、前記網材の縁端部を前記枠材に取り付けるための取付具であって、前記枠材の枠内側に添設されて前記網材と平行に配置される平板状の取付基板と、前記取付基板とは別体に形成されて前記取付基板に組み付けられる網材係止部材と、前記取付基板と前記網材係止部材とを重ねて結合する締結部材と、を具備し、前記取付基板には、前記枠材と平行な長軸を有して前記枠材寄りに配置される組付孔と、前記組付孔から枠内側に離隔して配置される締結部材挿通孔と、が形成され、前記網材係止部材は、前記取付基板の前記組付孔に挿入可能な挿込片と、前記挿込片の一端縁から前方に屈折して連続する網材受部と、前記網材受部の前端縁から前記挿込片と反対向きに屈折して延びる係止爪片と、を有して、前記挿込片に締結部材取付孔が形成され、前記網材係止部材の前記挿込片が前記取付基板の前記組付孔に正面側から挿入されて前記取付基板の背面側に重ねられ、前記係止爪片がその先端を前記枠材側に向けて前記取付基板の正面側に保持された状態で、前記取付基板と前記挿込片とが前記締結部材挿通孔及び前記締結部材取付孔に挿着された締結部材を介して結合される、との基本的構成を採用する。
【0011】
このように構成された網材の取付具によれば、係止爪片を有する網材係止部材が取付基板とは別体に形成されており、その挿込片を取付基板に形成された組付孔に挿入することで、係止爪片に網材の張線を容易に係止させることができる。取付基板に網材係止部材と締結部材とを組み付けて、締結部材を仮締め状態にした状態でも網材を係止することができるので、網材の張線を複数個の取付具に係止させてから、それらの締結部材をまとめて本締めする、という手順での作業も可能になる。
【0012】
さらに、本願が開示する発明に係る網材の取付具は、前記網材係止部材の前記網材受部が前記組付孔の長軸寸法よりも幅広に形成されるとともに、前記取付基板に形成される締結部材挿通孔が前記組付孔の長軸と直交する方向に延びる長孔として形成され、前記網材係止部材の挿込片が前記取付基板の前記組付孔に正面側から挿入されて、前記網材受部を前記組付孔に当接させた状態で、前記網材係止部材が前記取付基板に対し前記組付孔との当接箇所を支点として前後方向に揺動し得るように保持される、との付加的構成を採用する。この構成によれば、締結部材を取付基板及び網材係止部材に挿着して緩く仮締めした状態でも、網材係止部材が一定の範囲で揺動可能になるので、網材の係止作業が一層、容易になる。
【0013】
前述の構成において、前記締結部材はボルト・ナットであり、前記網材係止部材の前記挿込片に形成される締結部材取付孔はボルト挿通孔であり、前記取付基板と前記挿込片とが前記ボルト・ナットによって結合される、ものとすることができる。この構成によれば、ボルトを挿着する向きを施工現場の状況に応じて選択することができる。
【0014】
あるいは前記締結部材がボルトであり、前記網材係止部材の前記挿込片に形成される締結部材取付孔が雌ねじ孔であり、前記ボルトが前記取付基板の正面側から前記雌ねじ孔に締結される、ものとすることもできる。この構成によれば、網材の正面側からの作業だけで網材を係止して締結部材を本締めすることができるので、作業性がさらに向上し、網材の背後にナット等を落下させる事故も無くすことができる。
【0015】
また、本願が開示する発明に係る柵体は、前述のように構成された網材の取付具の前記取付基板が、網材の縁端部を保持する前記枠材の枠内側に添設されるとともに、前記取付基板に前記網材係止部材と前記締結部材とが組み付けられ、前記網材の縁端部に配置された形状保持用の張線が、前記取付基板の正面側から前記網材係止部材の前記係止爪片に係止されて前記網材受部に保持された状態で、前記取付基板と前記網材係止部材とが前記締結部材を介して結合される、ものとして特徴付けられる。
【発明の効果】
【0016】
前述のように構成される網材の取付具は、係止爪片を有する網材係止部材が取付基板とは別体に形成されているので、網材係止部材の挿込片を取付基板の組付孔に挿入して締結部材を緩く仮締めした状態で、網材の張線を網材係止部材の係止爪片に容易に係止させることができる。これにより手作業の自由度が上がるので、網材の張線を複数個の取付具に対して迅速に係止させることが可能になり、しかも、その作業中に網材が取付具から脱落しにくくなる。また、網材係止部材と締結部材を予め取付基板に組み付けておけるので、現場での作業中に網材係止部材や締結部材を誤って落下させる危険もなくなる。そして、網材の張線を複数個の取付具に係止させた後、各取付具の締結部材をまとめて本締めすることにより、網材を枠材にしっかりと保持させることができる。かくして、枠材に添設された取付具に網材を取り付ける作業の作業性が大幅に改善される。
【0017】
さらに、網材係止部材を取付基板に組み付けた状態で網材係止部材が前後方向に揺動し得るように構成すれば、網材の仮止め作業が一層、容易になる。また、網材係止部材が揺動し得る分だけ係止爪片の長さを伸ばせるので、網材の保持力も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願が開示する発明が適用される柵体の概略的な構成例を示す正面図及びA-A線断面図である。
図2】本願が開示する発明の一実施形態としての取付具における、取付基板及び網材係止部材の斜視図である。
図3図2の取付基板の正面図(a)及び上面図(b)である。
図4図4の網材係止部材の正面図(a)、上面図(b)及び側面図(c)である。
図5】取付基板と網材取付部材と締結部材との組付形態を示す斜視図である。
図6】取付基板と網材取付部材と締結部材とを組み付けた仮締め状態の側面図である。
図7】取付基板と網材取付部材と締結部材とを組み付けた本締め状態の側面図である。
図8図7の本締め状態の正面図(a)及び上面図(b)である。
図9】前記取付具における締結部材の構成を一部変更した形態を示す仮締め状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、この発明に係る取付具が適用される柵体1の概略的な構成例を示している。この種の柵体1は基本的に、区画する領域の境界に沿って適宜間隔で立設された複数本の柱体2と、それらの柱体2によって支持される複数本の枠材3と、それらの枠材3によって囲まれた枠内に張設される網材4と、を含んで構成される。ただし、この発明では、区画される領域の種類や形状は特に限定されない。また、柱体2及びその柱体2を支持する基礎構造体等の種類、構造、材質等も特に限定されない。
【0020】
枠材3は、区画する領域の長さと高さに応じて横方向及び縦方向に(場合によっては斜め方向にも)延設される。図1には、横方向に延びて互いに対向する上枠材31及び下枠材32と、それらを一方の側端部で連結する縦枠材33とを記載しているが、この発明では枠材3の配置形態や連結形態は特に限定されない。また、例示形態では枠材3に円管材を用いているが、これに替えて角材や適宜断面の形材等を用いることもできる。
【0021】
網材4は、枠材3によって囲まれた枠内寸法に収まる大きさに切断されて、その枠内に張設される。網材4の縁端部には、網材4の形状を保持するために、太い鋼線等からなる張線41が取り付けられる。例示形態では、網材4として菱形金網を用いているが、これ以外に、金属線を波状にして格子状に編んだクリンプ金網、金属線を六角形に編んだ亀甲金網、金属線を編まずに交差させて接合した格子パネル、金属薄板に千鳥状の切れ目を入れて押し拡げたエキスパンドメタル、金属薄板に等間隔で多数の孔を打ち抜いたパンチングメタル等も利用可能である。また、網材4は金属製に限らず、合成樹脂や木材、竹材その他の天然材等によって形成されていてもよい。
【0022】
この発明に係る取付具5は、例示のような柵体1の丸囲み部分Bにおいて枠材3側に結合され、網材4の縁端部に配置された張線41が係止されるように構成された部材である。図2図8は、この発明の一実施形態に係る取付具5の構成を示している。
【0023】
この発明に係る取付具5は、基本的構成として、枠材3の枠内側に添設されて網材4と平行に配置される平板状の取付基板6と、取付基板6とは別体に形成されて取付基板6に組み付けられる網材係止部材7と、取付基板6と網材係止部材7とを重ねて結合する締結部材8と、を具備する。以下、それら各部材の詳細な構成について説明する。なお、以下において部位・部材の相対的な位置関係や動作の向きを説明する際には、柵体1をその面直方向から見た視点(図1の正面図)で、網材4の取り付け作業を行う手前側を正面、網材4を挟んでその反対側を背面と定め、それを基準にして上下方向(高さ方向)、左右方向(横幅方向)、前後方向(奥行方向)を特定することとする。
【0024】
取付基板6は、正面視略矩形または略U字形をなす表裏平坦な板片であり、少なくとも一辺が直線状に形成されている。取付基板6は、直線状の一辺(図2の形態では上辺)を枠材3(図2の形態では上枠材31)の材軸と平行にして枠材3の枠内側に添設され、網材4の張設面と平行になるように配置される。取付基板6を枠材3に添設する手段は溶接でもよいし、適宜の取付金物やねじ部材等を用いてもよい。網材4の取付作業に際しては、予め複数個の取付基板6が、網材4を取り付ける枠材3に略等間隔で添設される。
【0025】
取付基板6には二箇所の貫通孔が形成されている。第一の貫通孔は枠材3寄りに配置された組付孔61であり、枠材3と平行な長軸を有する長矩形または長円形に形成されている。第二の貫通孔は、組付孔61から枠内側に離隔して配置された締結部材挿通孔62であり、組付孔61の長軸と直交する方向に延びる長円形に形成されている。なお、図示は省くが、締結部材挿通孔62は、取付基板6における枠材3の対辺側(例示形態では下辺側)に開口していてもよい。組付孔61及び締結部材挿通孔62はともに、取付基板6の正面視において左右対称になるように、取付基板6の幅方向の中央部に配置されている。
【0026】
網材係止部材7は、一枚の板片を側面視略Z形(クランク形)に折曲するなどして形成された部材である。網材係止部材7は、正面視略矩形または略U字形をなす挿込片71と、挿込片71の一端縁から前方に屈折して連続する網材受部73と、網材受部73の前端縁から挿込片71と反対向きに屈折して延びる正面視逆U字形の係止爪片74と、を有している。挿込片71は、その横幅が取付基板6の組付孔61に挿入可能な寸法に形成されている。挿込片71の先端部近傍には、後述する締結部材8のボルト81を挿着するための締結部材取付孔72が形成されている。例示形態の締結部材取付孔72は円形の貫通孔である。
【0027】
網材受部73は、挿込片71に対し前方へ略90度屈折して連続している。網材受部73は、その両側縁が左右に張り出して、横幅が組付孔61の長軸寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0028】
係止爪片74は、網材受部73に対し90度よりもやや大きい角度(例示形態では約96度)で屈折して連続している。例示形態における係止爪片74は、その横幅が網材受部73の横幅よりも小さくなるように形成されているが、係止爪片74が網材受部73と略等幅ないしそれよりも幅広に形成されていても差し支えない。
【0029】
締結部材8は、例えばボルト81とナット82とによって構成される。例示形態では、フランジ付きの六角ボルトと六角ナットとが用いられている。
【0030】
取付基板6と網材係止部材7とは、図5及び図6に示すように、網材係止部材7の挿込片71を取付基板6の組付孔61に正面側から挿入して組み付けられる。網材係止部材7の網材受部73は組付孔61を通過できないように形成されているので、網材受部73及び係止爪片74は取付基板6の正面側に保持され、組付孔61との当接箇所を支点として前後方向に揺動し得る状態で保持される。網材受部73の奥行きは、網材係止部材7を取付基板6に組み付けた状態で、取付基板6の前方に突出する部分が網材4の張線41の直径よりも大きくなるように形成されている。
【0031】
係止爪片74を枠材3側に向けて立て起すと、網材係止部材7の挿込片71が取付基板6の背面側に重なり、取付基板6に形成された締結部材挿通孔62と挿込片71に形成された締結部材取付孔72とが合致する。その締結部材挿通孔62及び締結部材取付孔72にボルト81を挿着してナット82で締結すると、図7及び図8の状態になる。例示形態では背面側からボルト81を挿着して正面側からナット82を締結しているが、ボルト81を挿着する向きは設置場所の状況等に応じて前後どちらも選択可能である。
【0032】
この取付具5に網材4を係止する際には、図6のように締結部材8を締結しない状態で係止爪片74を手前に倒すことで、網材4の張線41を正面側から係止爪片74に容易に係止させることができる。さらに、この取付具5は、取付基板6に形成された締結部材挿通孔62が組付孔61の長軸と直交する方向に延びる長孔になっているので、締結部材8を取付基板6及び網材係止部材7に挿着して緩く仮締めした状態でも、網材係止部材7を一定の範囲で揺動させることができる。したがって、枠材3に添設された複数個の取付基板6に予め網材係止部材7と締結部材8とを組み付けて、締結部材8を仮締め状態にしておけば、網材4の張線41を複数個の取付具5に係止させてから、それらの締結部材8をまとめて本締めする、という手順で取付作業を行うことができる。
【0033】
かかる手順によれば、網材4の張線41を係止させた取付具5ごとに締結部材8を締結する従来の作業手順に比べて作業性が大幅に改善される。また、網材係止部材7が揺動し得る分だけ係止爪片74の長さを少し伸ばせるので、仮止めした網材4の脱落も防ぎやすくなる。しかも、上枠材31に添設した取付具5に網材4の上辺を係止させる作業では、挿込片71に挿着して仮締めした締結部材8の重さによって網材係止部材7が後方に回動し、係止爪片74が自然に上向きになるので、網材係止部材7に仮止めした張線41は、さらに脱落しにくくなる。そして、締結部材8を完全に締結すれば、図7のように、網材4の張線41が網材受部73上にしっかりと保持される。
【0034】
図9は、前述した取付具5における締結部材8の構成を一部変更した形態を示している。例示形態の締結部材8は、ナットを含まないボルト81のみによって構成される。例示のボルト81には、頭部にローレット加工が施された六角孔付きボルト81が用いられているが、頭部の形状は特に限定されない。一方、網材係止部材7の挿込片71に形成される締結部材取付孔72には雌ねじが形成されて、その雌ねじ孔に取付基板6の正面側からボルト81が締結されている。例示形態では、締結部材取付孔72の周部を増肉して雌ねじが形成されているが、挿込片71の板厚が十分に大きければ増肉加工はなくてもよい。また、挿込片71の板厚が小さければ、取付基板6の組付孔61を通過し得る程度の薄ナットを溶接して雌ねじ孔としてもよい。このような構成を採用した場合には、網材4の背面側に締結部材8等をセットする必要がなくなって、網材4の正面側からの作業だけで済むので、作業性がさらに向上する。また、網材4の背面側にナット82等を落下させる事故も無くすことができる。
【0035】
なお、例示のような雌ねじ孔を採用すると、ボルト81を挿着する向きが限定されるため、施工現場の状況によっては作業性が低下する場合もある。その点、前述のようなボルト81・ナット82であれば、ボルト81を挿着する向きが限定されないので、施工現場に応じた作業ができる、というメリットがある。
【0036】
前述のように構成される取付具5を用いることで、個々の取付具5に仮止めした網材4を脱落しないように手で押えたり、仮止めした取付具5ごとに締結部材8を締結したりする手間が不要になって、作業者の両手の自由度が上がり、網材4の仮止めから締結部材8の本締めにかけての一連の作業を効率よく進めることができる。かくして、枠材3に網材4を取り付ける作業の作業性が大幅に改善される。
【0037】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願が開示する発明は、道路や敷地、公園等、特定の領域の境界に沿って当該領域を囲う、あるいは当該領域を区画する等の目的で設置される防護柵その他の様々な柵体について、枠材に網材を取り付けるための技術として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 柵体
2 柱体
3 枠材
31 上枠材
32 下枠材
33 縦枠材
4 網材
41 張線
5 取付具
6 取付基板
61 組付孔
62 締結部材挿通孔
7 網材係止部材
71 挿込片
72 締結部材取付孔
73 網材受部
74 係止爪片
8 締結部材
81 ボルト
82 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9