(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048279
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240401BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20240401BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 300
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154234
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆弥
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大毅
【テーマコード(参考)】
5F048
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F048AA01
5F048AB10
5F048AC03
5F048AC10
5F048BA01
5F048BE02
5F048BF11
5F151AA02
5F151DA03
5F151EA20
5F151FA06
5F151FA16
5F251AA02
5F251DA03
5F251EA20
5F251FA06
5F251FA16
(57)【要約】
【課題】オンチップ太陽電池の発電効率を向上する。
【解決手段】半導体装置100は、第1領域と第2領域とを有し、第1領域には、集積回路と、集積回路を平面的に覆う遮光部SUと、が設けられ、第2領域には、太陽電池の受光領域が設けられている。ここで、第1領域において、遮光部SUの下方には、太陽電池の受光領域と電気的に接続された金属電極PEおよび金属電極NEが形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と第2領域とを有し、
前記第1領域には、
集積回路と、
前記集積回路を平面的に覆う遮光部と、
が設けられ、
前記第2領域には、太陽電池の受光領域が設けられている、半導体装置であって、
前記第1領域において、前記遮光部の下方には、前記太陽電池の前記受光領域と電気的に接続された電極が形成されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記遮光部の平面サイズは、前記集積回路の平面サイズよりも大きく、
前記遮光部が存在する前記第1領域のうち、前記集積回路と平面的に重ならない領域に前記電極が設けられている、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1領域には、
前記集積回路を構成する電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタの上方に設けられた多層配線と、
が形成され、
前記電極は、前記電界効果トランジスタのゲート電極と同層にある、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記電極の上方には、配線またはキャパシタが設けられている、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2領域に設けられている前記太陽電池の前記受光領域は、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成され、かつ、第2導電型であるウェル領域と、
を有する、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記電極は、複数存在し、
複数の前記電極は、
前記半導体基板と電気的に接続された第1電極と、
前記ウェル領域と電気的に接続された第2電極と、
を有する、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記第1領域は、平面的に前記第2領域を囲み、
前記第1電極は、前記第2領域を囲むリング形状から構成され、
前記第2電極は、前記第2領域を囲むリング形状から構成されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第1導電型は、p型であり、
前記第2導電型は、n型である、半導体装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記電極は、太陽光に対する遮光性を有する、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記遮光部は、金属から構成されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、集積回路と太陽電池とを混載した半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、集積回路と太陽電池とを混載する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Fumio Horiguchi, IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 59.NO 6. JUNE 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、非特許文献1のFig1(b)では、集積回路と太陽電池とを混載した半導体装置において、太陽電池の受光領域に遮光性を有する電極を配置することになる。この場合、電極によって受光領域に入射する太陽光の一部が遮光される結果、電極が太陽電池の発電効率を向上させる妨げとなっている。したがって、太陽電池の発電効率を向上させるため、電極の配置に関する工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態における半導体装置は、第1領域と第2領域とを有し、第1領域には、集積回路と、集積回路を平面的に覆う遮光部と、が設けられ、第2領域には、太陽電池の受光領域が設けられている。ここで、第1領域において、遮光部の下方には、太陽電池の受光領域と電気的に接続された電極が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
一実施の形態によれば、太陽電池の発電効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】具現化態様における半導体装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】半導体装置の模式的な構成を示す上面図である。
【
図4】比較例におけるシミュレーションモデルを示す模式図である。
【
図5】実施例におけるシミュレーションモデルを示す模式図である。
【
図6】比較例および実施例のそれぞれにおけるオンチップ太陽電池のI-V特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0009】
<オンチップ太陽電池>
例えば、半導体チップに形成された集積回路は、外部から電力を供給されて動作する。すなわち、集積回路を動作させるためには、外部電源や電池が必要である。
【0010】
この点に関し、近年、オンチップ太陽電池が注目されている。オンチップ太陽電池とは、集積回路と同一の半導体チップ上に集積することができる太陽電池である。このオンチップ太陽電池によれば、集積回路に電力を供給する太陽電池を集積回路と同一の半導体チップに形成することができるため、半導体チップの外部から集積回路に電力を供給する必要がなくなる利点が得られる。さらには、オンチップ太陽電池で集積回路を駆動させることにより、電池の充電や交換といった維持管理が不要となる利点も得られる。
【0011】
したがって、例えば、オンチップ太陽電池を使用することにより、単一の半導体チップで自律動作するシステムを実現することができる。ここで、本明細書でいうシステムとは、例えば、オンチップ太陽電池、集積回路、DC/DCコンバータ、オシレータおよびオンチップアンテナを同一の半導体チップに搭載したシステムである。このようなオンチップ太陽電池を有するシステムは、自律動作が可能であることから、センサネットワークやIoTなどの用途に使用されることが期待されている。
【0012】
<改善の検討>
オンチップ太陽電池は、電界効果トランジスタを有する集積回路と混載されることから、標準CMOS技術を使用して製造される。この点に関し、例えば、非特許文献1に記載されているオンチップ太陽電池では、非特許文献1のFig1(b)に示すように、太陽電池の受光領域に遮光性を有する電極を配置することになる。この場合、電極によって受光領域に入射する太陽光の一部が遮光される結果、電極が太陽電池の発電効率を向上させる妨げとなる。したがって、非特許文献1に記載されているオンチップ太陽電池は、太陽電池の発電効率を向上する観点から改善の余地があり、オンチップ太陽電池において、太陽電池の発電効率を向上させるため、電極の配置に関する工夫が望まれている。
【0013】
そこで、本実施の形態では、オンチップ太陽電池において、太陽電池の発電効率を向上させるため、電極の配置に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0014】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、集積回路と混載されるオンチップ太陽電池において、オンチップ太陽電池の受光領域に電極を設けるのではなく、遮光部で覆われる集積回路領域にオンチップ太陽電池の電極を設ける思想である。これにより、基本思想によれば、オンチップ太陽電池の受光領域に遮光性を有する電極が配置されないことから、電極によって受光領域に入射する太陽光の一部が遮光されることが抑制される。この結果、基本思想によれば、オンチップ太陽電池の発電効率を向上できる。
【0015】
以下では、基本思想を具現化した具現化態様について説明する。
【0016】
<具現化態様>
<<半導体装置の構成>>
図1は、具現化態様における半導体装置100の構成を模式的に示す斜視図である。
【0017】
図1において、半導体装置100は、例えば、p
-型シリコンからなる半導体基板SUBを有しており、この半導体基板SUBには、n型ウェル領域NWLが形成されている。これにより、半導体基板SUBとn型ウェル領域NWLによってpn接合が形成される結果、pn接合ダイオードからなるオンチップ太陽電池が形成される。
【0018】
そして、半導体基板SUBの表面の一部には、半導体基板SUBと電気的に接続された金属電極PEが設けられている一方、n型ウェル領域NWLの表面の一部には、n型ウェル領域NWLと電気的に接続された金属電極NEが設けられている。金属電極PEおよび金属電極NEは、太陽電池で発生した電力を取り出すための引き出し電極である。
【0019】
次に、半導体基板SUBの上方には、例えば、太陽光に代表される光を遮光する機能を有する遮光部SUが設けられている。この遮光部SUは、例えば、金属から構成されており、遮光部SUには、開口部OPが形成されている。
【0020】
ここで、遮光部SUで覆われている領域を「第1領域」と呼ぶと、この第1領域は、集積回路が形成されている集積回路領域を含む。一方、開口部OPの下方に位置する領域を「第2領域」と呼ぶと、この第2領域は、オンチップ太陽電池の受光領域を含む。
【0021】
すなわち、半導体装置100は、集積回路とオンチップ太陽電池とが形成された半導体基板SUBを有し、半導体基板SUBの上方に設けられた遮光部SUによって覆われて太陽光が遮光される領域に集積回路領域が存在する一方、遮光部SUに設けられた開口部OPを介して太陽光が照射される領域にオンチップ太陽電池の受光領域が存在する。
【0022】
このとき、第1領域である集積回路領域は、平面的に第2領域であるオンチップ太陽電池の受光領域を囲んでいる。言い換えれば、オンチップ太陽電池の受光領域は、集積回路領域によって平面的に囲まれている。そして、
図1に示すように、金属電極PEおよび金属電極NEは、オンチップ太陽電池の受光領域である第2領域ではなく、集積回路領域である第1領域に設けられている。ここで、金属電極NEは、例えば、オンチップ太陽電池の受光領域である第2領域を平面的に囲むリング形状から構成されているとともに、金属電極PEは、例えば、オンチップ太陽電池の受光領域を平面的に囲む金属電極NEを外側からさらに囲むリング形状から構成されている。
【0023】
図2は、半導体装置100の模式的な構成を示す上面図である。
【0024】
図2に示すように、遮光部SUには、開口部OPが設けられており、開口部OPの下方に位置する第2領域において、絶縁膜IFが露出している。そして、
図2では示されないが、絶縁膜IFの下層にオンチップ太陽電池の受光領域が存在している。したがって、このことと
図2に基づくと、絶縁膜IFの下層にあるオンチップ太陽電池の受光領域を囲むように金属電極NEが設けられていることになる。そして、この金属電極NEを外側から平面的に囲むように金属電極PEが設けられている。
【0025】
このとき、金属電極PEおよび金属電極NEは、遮光部SUで覆われる領域に配置されている。すなわち、金属電極PEおよび金属電極NEは、遮光部SUで覆われる集積回路領域に配置されている。このように構成されている金属電極PEおよび金属電極NEは、例えば、太陽光に対する遮光性を有する金属から構成されている。
【0026】
次に、
図3は、
図2のA-A線で切断した断面図である。
【0027】
図3において、半導体装置100は、例えば、p
-型シリコンからなる半導体基板SUBを有しており、半導体基板SUBにオンチップ太陽電池と集積回路が形成されている。
【0028】
以下では、まず、オンチップ太陽電池の構成について説明する。
【0029】
オンチップ太陽電池は、第1導電型(例えば、p型)の半導体基板である半導体基板SUBと、半導体基板SUBに形成され、かつ、第2導電型(例えば、n型)であるn型ウェル領域NWLとを有している。これにより、半導体基板SUBとn型ウェル領域NWLによってpn接合が形成される結果、半導体基板SUBにpn接合ダイオードからなるオンチップ太陽電池が形成されていることになる。
【0030】
そして、半導体基板SUBの表面の一部には、p+型半導体領域PRが形成されており、このp+型半導体領域PR上に金属電極PEが配置されている。一方、n型ウェル領域NWLの表面の一部には、n+型半導体領域NRが形成されており、このn+型半導体領域NR上に金属電極NEが配置されている。ここで、p+型半導体領域PRは、金属電極PEとのオーミック接触を取るために形成されている。同様に、n+型半導体領域NRは、金属電極NEとのオーミック接触を取るために形成されている。
【0031】
これにより、金属電極PEは、p+型半導体領域PRを介して半導体基板SUBと電気的に接続されている。これに対し、金属電極NEは、n+型半導体領域NRを介してn型ウェル領域NWLと電気的に接続されている。これらの金属電極PEおよび金属電極NEは、オンチップ太陽電池で発生した電力(起電力)を取り出す引き出し電極として機能する。
【0032】
なお、
図3に示すように、n型ウェル領域NWLが形成された半導体基板SUBの表面には、金属電極PEと金属電極NEとともに絶縁膜IFが形成されている。
【0033】
続いて、集積回路の構成について説明する。
【0034】
集積回路は、例えば、複数の電界効果トランジスタと多層配線を有している。
【0035】
具体的な一例として、
図3には、オンチップ太陽電池の左側領域に配置されている電界効果トランジスタQ1と、オンチップ太陽電池の右側領域に配置されている電界効果トランジスタQ2とが図示されており、さらに、電界効果トランジスタQ1あるいは電界効果トランジスタQ2の上方に配置されている多層配線MWが図示されている。
【0036】
図3において、オンチップ太陽電池の左側領域には、半導体基板SUBに形成されたn型ウェル領域NWL1と、n型ウェル領域NWL1に内包されるp型ウェル領域PWL1とが設けられている。そして、p型ウェル領域PWL1の内部から上部にわたって電界効果トランジスタQ1が形成されている。この電界効果トランジスタQ1の上方には、例えば、第1層配線W1Aと第2層配線W2Aが配置されている。これらの第1層配線W1Aと第2層配線W2Aは、多層配線MWを構成している。
【0037】
なお、
図3では示されていないが、多層配線MWは、プラグを介して電界効果トランジスタQ1と電気的に接続されており、これによって集積回路が構成される。
【0038】
図3において、オンチップ太陽電池の右側領域には、半導体基板SUBに形成されたn型ウェル領域NWL2と、n型ウェル領域NWL2に内包されるp型ウェル領域PWL2とが設けられている。そして、p型ウェル領域PWL2の内部から上部にわたって電界効果トランジスタQ2が形成されている。この電界効果トランジスタQ2の上方には、例えば、第1層配線W1Bと第2層配線W2Bが配置されている。これらの第1層配線W1Bと第2層配線W2Bは、多層配線MWを構成している。
【0039】
なお、
図3では示されていないが、多層配線MWは、プラグを介して電界効果トランジスタQ2と電気的に接続されており、これによって集積回路が構成される。
【0040】
以上のことから、例えば、集積回路は、電界効果トランジスタQ1と電界効果トランジスタQ2と多層配線MWを含むように構成されている。
【0041】
さらに、
図3に示す半導体装置100においては、集積回路を覆うように遮光部SUが設けられている。そして、この遮光部SUには、開口部OPが設けられており、開口部OPの下方に絶縁膜IFを介してオンチップ太陽電池の受光領域が存在している。
【0042】
これにより、半導体装置100の上方から照射された太陽光が、遮光部SUに形成されている開口部OPおよび絶縁膜IFを通ってオンチップ太陽電池の受光領域に入射することができる一方、集積回路が形成されている集積回路領域においては太陽光が遮光されるように半導体装置100が構成されていることになる。
【0043】
ここで、
図3に示すように、遮光部SUが存在する領域が第1領域であり、この第1領域には、電界効果トランジスタQ1、電界効果トランジスタQ2および多層配線MWを含む集積回路と、集積回路を平面的に覆う遮光部SUとが設けられている。
【0044】
一方、
図3に示すように、遮光部SUに形成された開口部OPの下方に位置する領域が第2領域であり、第2領域には、オンチップ太陽電池の受光領域が設けられている。
【0045】
さらに、
図3に示すように、第1領域において、遮光部SUの下方には、オンチップ太陽電池の受光領域と電気的に接続された金属電極PEおよび金属電極NEが設けられている。すなわち、遮光部SUの平面サイズは、集積回路の平面サイズよりも大きく、遮光部SUが存在する第1領域のうち、集積回路と平面的に重ならない領域に金属電極PEおよび金属電極NEが設けられている。この金属電極PEおよび金属電極NEは、例えば、電界効果トランジスタQ1のゲート電極および電界効果トランジスタQ2のゲート電極と同層で形成されている。そして、金属電極PEおよび金属電極NEの上方にスペース領域SPが存在し、このスペース領域SPには、配線やキャパシタが配置可能である。
【0046】
以上のようにして、具現化態様における半導体装置100が構成されている。
【0047】
<<半導体装置の動作>>
次に、半導体装置100の動作について説明する。
【0048】
まず、
図3において、半導体装置100の上方から可視光や赤外光を含む太陽光が照射されると、遮光部SUが存在する第1領域では、遮光部SUによって太陽光が遮光される。これにより、集積回路領域(第1領域)に存在する集積回路に太陽光が照射されることを防止できる結果、集積回路を光の照射に起因する動作不良から保護することができる。
【0049】
一方、遮光部SUに形成された開口部OPの下方に位置する第2領域では、太陽光が開口部OPおよび絶縁膜IFを介して、オンチップ太陽電池の受光領域に照射される。
【0050】
このとき、具現化態様における半導体装置100では、
図3に示すように、開口部OPの下方に位置する領域に金属電極PEおよび金属電極NEが設けられていない。
【0051】
この結果、開口部OPから入射した太陽光の一部が金属電極PEおよび金属電極NEで遮光されることがない。このことから、具現化態様における半導体装置100では、オンチップ太陽電池の受光領域に入射する太陽光の照射量を増加させることができる。
【0052】
続いて、受光領域に入射した太陽光のうち、シリコンのバンドギャップよりも大きな光エネルギーを有する光は吸収される。具体的には、価電子帯に存在する電子が、太陽光から供給される光エネルギーを受け取って伝導帯に励起される。これにより、伝導帯に電子が蓄積されるとともに価電子帯に正孔が生成される。このようにして、半導体装置100に含まれるオンチップ太陽電池に太陽光が照射されることにより、太陽光に含まれるシリコンのバンドギャップよりも大きな光エネルギーを有する光が吸収されて伝導帯に電子が励起されるとともに、価電子帯に正孔が生成される。
【0053】
そして、n型ウェル領域NWLに電子が蓄積される一方、半導体基板SUBに正孔が蓄積する。この結果、n型ウェル領域NWLと電気的に接続されている金属電極NEと、半導体基板SUBと電気的に接続されている金属電極PEとの間に起電力が生じる。そして、半導体装置100に含まれるオンチップ太陽電池で生じた起電力を半導体装置100に含まれる集積回路に供給することにより、集積回路を動作させることができる。
【0054】
ただし、実際には、オンチップ太陽電池から出力される出力電圧は、低電圧(約500mV程度)である。このため、オンチップ太陽電池からの出力電圧で集積回路を動作させることは難しいことがある。そこで、例えば、半導体装置100に、昇圧回路であるDC/DCコンバータも混載することにより、オンチップ太陽電池からの出力電圧を1V以上に昇圧した後、この昇圧した電圧を集積回路に供給することにより、集積回路を動作させることができる。このように半導体装置100を構成することにより、様々なアプリケーションに対応可能な半導体装置100を提供することができる。特に、具現化態様における半導体装置100によれば、単一の半導体チップで自律動作するシステムを実現することができることから、半導体装置100は、センサネットワークやIoTなどの用途に幅広く応用することができる点で有用である。
【0055】
<<具現化態様における特徴>>
続いて、具現化態様における特徴点について説明する。
【0056】
具現化態様における第1特徴点は、例えば、
図1~
図3に示すように、集積回路と混載されるオンチップ太陽電池において、オンチップ太陽電池の受光領域(第2領域)に金属電極PEおよび金属電極NEを設けるのではなく、遮光部SUで覆われる集積回路領域(第1領域)にオンチップ太陽電池の金属電極PEおよび金属電極NEを設ける点にある。これにより、第1特徴点によれば、オンチップ太陽電池の受光領域に、遮光性を有する金属電極PEおよび金属電極NEが配置されないことから、金属電極PEおよび金属電極NEによって受光領域に入射する太陽光の一部が遮光されることが抑制される。この結果、第1特徴点によれば、オンチップ太陽電池の発電効率を向上できる。
【0057】
例えば、集積回路領域(第1領域)に形成される集積回路は、半導体基板SUB上に形成された電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2と、電界効果トランジスタQ1あるいは電界効果トランジスタQ2の上方に配置された多層配線MWを有している。そして、多層配線MWの上方には、集積回路領域に光が入射しないように遮光する遮光部SUが設けられている。すなわち、集積回路領域に光が入射すると、光電効果によって意図しないキャリア(電荷)が発生して、このキャリアが集積回路を構成する電界効果トランジスタの誤動作を引き起こす要因となる。このため、集積回路領域に集積回路を平面的に覆う遮光部SUを設けて、集積回路に光が入射しないようにしている。
【0058】
そこで、第1特徴点では、オンチップ太陽電池の受光領域と電気的に接続される金属電極PEおよび金属電極NEを遮光部SUで覆われる集積回路領域に配置する。通常、遮光部SUの平面サイズは、集積回路の平面サイズよりも大きく、遮光部SUで覆われる集積回路領域には、集積回路が形成されていないスペース領域が存在する。このことから、第1特徴点では、例えば、遮光部SUで覆われたスペース領域にオンチップ太陽電池の受光領域と電気的に接続される金属電極PEおよび金属電極NEを配置する。
【0059】
これにより、第1特徴点によれば、遮光部SUで覆われたスペース領域を有効活用することによって、オンチップ太陽電池の受光領域以外の場所に金属電極PEおよび金属電極NEを配置する構成を実現することができる。この結果、第1特徴点によれば、集積回路と混載されるオンチップ太陽電池において、オンチップ太陽電池の受光領域に入射する光の受光量を増大することができるため、オンチップ太陽電池の発電効率を向上できる。
【0060】
このような第1特徴点は、集積回路と混載されるオンチップ太陽電池だからこそ有効に作用する。つまり、オンチップ太陽電池と混載される集積回路が存在するからこそ集積回路を平面的に覆う遮光部SUの下方にオンチップ太陽電池の受光領域と電気的に接続される金属電極PEおよび金属電極NEを配置することが可能となり、金属電極PEおよび金属電極NEを受光領域以外の場所に配置することができるのである。
【0061】
次に、具現化態様における第2特徴点は、例えば、
図3に示すように、遮光部SUで覆われる集積回路領域(第1領域)に設けられた金属電極PEおよび金属電極NEの上方に存在するスペース領域SPに配線あるいはキャパシタを配置する点にある。
【0062】
例えば、上述した第1特徴点によれば、遮光部SUで覆われたスペース領域にオンチップ太陽電池の受光領域と電気的に接続される金属電極PEおよび金属電極NEを配置しているが、この金属電極PEおよび金属電極NEは、半導体基板SUBの表面上(直上)に形成される。この結果、
図3に示すように、金属電極PEおよび金属電極NEの上方には、スペース領域SPが存在することになる。そこで、第2特徴点では、このスペース領域SPに配線やキャパシタを配置している。これにより、第2特徴点によれば、スペース領域SPを有効活用することができる。
【0063】
続いて、具現化態様における第3特徴点は、例えば、
図1および
図2に示すように、遮光部SUで覆われる集積回路領域(第1領域)に設けられた金属電極PEおよび金属電極NEのそれぞれの形状をリング形状としている点にある。これにより、金属電極PEおよび金属電極NEのそれぞれのコンタクト面積(接触面積)を大きくすることができる結果、オンチップ太陽電池の寄生抵抗を低減することができる。
【0064】
<<半導体装置の製造方法>>
次に、具現化態様における半導体装置100の製造方法について説明する。
【0065】
具現化態様における半導体装置100の製造方法は、オンチップ太陽電池が電界効果トランジスタを有する集積回路と混載されることから、基本的に一般的な標準CMOS技術を利用して製造される。ここで、半導体装置100の製造方法において、一般的な標準CMOS技術を使用した製造方法からの主要な変更点は、具現化態様における特徴点である金属電極PEおよび金属電極NEの配置変更および形状変更を実現するためのパターニングにある。それ以外の工程は、基本的に一般的な標準CMOS技術を利用することにより、具現化態様における半導体装置100を製造することができる。
【0066】
<<変形例>>
続いて、変形例について説明する。
【0067】
本実施の形態における基本思想は、例えば、具現化態様で説明したデバイス構造(
図3参照)に限らず、FFE(Front Floating Emitter)構造やFSF(Front Surface Field)構造といったデバイス構造を採用するオンチップ太陽電池にも幅広く適用できる。
【0068】
<効果の検証>
次に、本実施の形態における基本思想によれば、オンチップ太陽電池の発電性能を向上することができることを裏付ける検証結果について説明する。ここでは、オンチップ太陽電池の発電性能を向上することができる検証として、シミュレーションを実施しているので、以下では、このシミュレーション結果について説明する。
【0069】
図4は、比較例におけるシミュレーションモデル10を示す図である。
【0070】
図4では、遮光部SUに設けられた開口部OPの下方に位置するオンチップ太陽電池の受光領域に金属電極NEが配置されている。これにより、遮光部SUに設けられた開口部OPを介してオンチップ太陽電池の受光領域に照射された太陽光の一部は、受光領域に設けられた金属電極NEによって遮光されることになる。
【0071】
これに対し、
図5は、実施例におけるシミュレーションモデル20を示す図である。
【0072】
図5では、遮光部SUに設けられた開口部OPの下方に位置するオンチップ太陽電池の受光領域に金属電極NEが配置されておらず、金属電極NEは、遮光部SUで覆われた半導体基板SUBの表面に配置されており、基本思想が具現化されている。これにより、遮光部SUに設けられた開口部OPを介してオンチップ太陽電池の受光領域に照射された太陽光は、金属電極NEによって遮光されないことになる。
【0073】
続いて、
図4に示すシミュレーションモデル10および
図5に示すシミュレーションモデル20に基づくシミュレーション結果について説明する。
【0074】
図6は、比較例および実施例のそれぞれにおけるオンチップ太陽電池のI-V特性(電流密度-電圧特性)を示すグラフである。
【0075】
図6に示すように、実施例によれば、比較例に比べて、短絡電流密度および開放電圧の両方が大きくなっていることがわかる。これは、実施例によれば、比較例に比べてオンチップ太陽電池の発電性能が優れていることを示している。この結果から、実施例では、比較例に比べて、例えば、発電効率が約12%程度向上していることになる。
【0076】
以上のシミュレーション結果から、本実施の形態における基本思想によれば、オンチップ太陽電池の発電性能を向上することができることを裏付けられていることがわかる。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
100 半導体装置
IF 絶縁膜
MW 多層配線
NE 金属電極
NR n+型半導体領域
NWL n型ウェル領域
NWL1 n型ウェル領域
NWL2 n型ウェル領域
OP 開口部
PE 金属電極
PR p+型半導体領域
PWL1 p型ウェル領域
PWL2 p型ウェル領域
Q1 電界効果トランジスタ
Q2 電界効果トランジスタ
SP スぺース領域
SU 遮光部
SUB 半導体基板
W1A 第1層配線
W1B 第1層配線
W2A 第2層配線
W2B 第2層配線