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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048285
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】金属検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/80 20060101AFI20240401BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01N27/80
G01R33/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154241
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直希
(72)【発明者】
【氏名】森 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】若園 康平
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠也
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AD02
2G017CB02
2G017CB11
2G017CB15
2G017CB23
2G017CC02
2G053AA16
2G053AA17
2G053AA19
2G053AB20
2G053BA03
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053CA05
2G053CB24
2G053DA01
2G053DA09
2G053DB23
(57)【要約】
【課題】ヨークが正しく検査対象金属に押し当てられた状態で、磁気ノイズを検出する。
【解決手段】金属検査装置10は、検査対象金属80に押し当てる一対の先端部26を備えるヨーク20に、励磁電流を印可する励磁電流印可部51と、励磁電流の印可によってヨーク20に形成された磁界により、発生された発生電流を測定する発生電流測定部53と、発生電流が所定の閾値A以上であるか否かを判定する発生電流判定部54と、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A未満と判定した場合に、励磁電流を引き上げる励磁電流調整部55と、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A以上と判定した場合に、検査対象金属80の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部56と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象金属に押し当てる一対の先端部を備えるヨークに、励磁電流を印可する励磁電流印可部と、
前記励磁電流の印可によって前記ヨークに形成された磁界の大きさを測定する磁界測定部と、
前記ヨークに形成された磁界により発生した発生電流が所定の閾値以上であるか否かを判定する発生電流判定部と、
前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値未満と判定した場合に、前記励磁電流を引き上げる励磁電流調整部と、
前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、前記検査対象金属の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部と、
を備える金属検査装置。
【請求項2】
検査対象金属に押し当てる一対の先端部を備えるヨークに、励磁電流を印可する励磁電流印可部と、
前記励磁電流の印可によって前記ヨークに形成された磁界の大きさを測定する磁界測定部と、
前記励磁電流の印可によって前記検査対象金属に形成された磁界に基づいて、前記検査対象金属の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部と、
前記ヨークに形成された磁界により発生した発生電流が所定の閾値以上であるか否かを判定する発生電流判定部と、
前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値未満と判定した場合に、前記励磁電流を引き上げる励磁電流調整部と、
前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、前記磁気ノイズ算出部が算出した前記磁気ノイズが出力される表示装置と、
を備える金属検査装置。
【請求項3】
前記励磁電流調整部が引き上げる前記励磁電流が所定の閾値を越えた場合に、前記ヨークの前記検査対象金属への押し当て方を変えることを報知する報知部を備える
請求項1又は請求項2に記載の金属検査装置。
【請求項4】
前記発生電流判定部が、前記発生電流を所定の閾値以上であると判定した場合に、
前記磁気ノイズ算出部は、前記発生電流判定部が所定の閾値以上であると判定した前記発生電流により形成された磁界に基づいて、前記検査対象金属の磁気ノイズを算出する
請求項1に記載の金属検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルクハウゼンノイズを利用した金属検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、強磁性体の被測定物に磁場を付与する電磁石と、被測定物からの漏洩磁束を検出するピックアップコイルと、ピックアップコイルで検出されるバルクハウゼンノイズ成分を積分する積分器と、積分器の出力の積分値が飽和するまでの積分値波形の面積中心となる中心磁場の値を出力する演算装置とを備え、該磁場の値を評価パラメータとして歪みを検出する歪み検出装置が開示されている。
【0004】
ところで、金属検査装置では、ヨークが正しく検査対象金属に押し当てられた状態で、磁気ノイズを検出することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-258259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、ヨークが正しく検査対象金属に押し当てられた状態で、磁気ノイズを検出することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の金属検査装置は、検査対象金属に押し当てる一対の先端部を備えるヨークに、励磁電流を印可する励磁電流印可部と、前記励磁電流の印可によって前記ヨークに形成された磁界の大きさを測定する磁界測定部と、前記ヨークに形成された磁界により発生した発生電流が所定の閾値以上であるか否かを判定する発生電流判定部と、前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値未満と判定した場合に、前記励磁電流を引き上げる励磁電流調整部と、前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、前記検査対象金属の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様の金属検査装置は、検査対象金属に押し当てる一対の先端部を備えるヨークに、励磁電流を印可する励磁電流印可部と、前記励磁電流の印可によって前記ヨークに形成された磁界の大きさを測定する磁界測定部と、前記励磁電流の印可によって前記検査対象金属に形成された磁界に基づいて、前記検査対象金属の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部と、前記ヨークに形成された磁界により発生した発生電流が所定の閾値以上であるか否かを判定する発生電流判定部と、前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値未満と判定した場合に、前記励磁電流を引き上げる励磁電流調整部と、前記発生電流判定部が前記発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、前記磁気ノイズ算出部が算出した前記磁気ノイズが出力される表示装置と、を備える。
【0009】
本発明の第3態様の金属検査装置では、本発明の第1態様又は第2態様の金属検査装置において、前記励磁電流調整部が引き上げる前記励磁電流が所定の閾値を越えた場合に、前記ヨークの前記検査対象金属への押し当て方を変えることを報知する報知部を備える。
【0010】
本発明の第4態様の金属検査装置では、本発明の第1態様の金属検査装置において、前記発生電流判定部が、前記発生電流を所定の閾値以上であると判定した場合に、前記磁気ノイズ算出部は、前記発生電流判定部が所定の閾値以上であると判定した前記発生電流により形成された磁界に基づいて、前記検査対象金属の磁気ノイズを算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様の金属検査装置では、発生電流判定部が発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、検査対象金属の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部を備えることで、狙いの発生電流が流れた場合に、検査対象金属の磁気ノイズが検出される。そのため、ヨークの先端部が正しく検査対象金属に押し当てられた状態で、磁気ノイズを検出することができる。
【0012】
本発明の第2態様の金属検査装置では、発生電流判定部が発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、磁気ノイズ算出部が算出した磁気ノイズが出力される表示装置を備えることで、狙いの発生電流が流れた場合に、検出された検査対象金属の磁気ノイズが表示装置に出力される。そのため、ヨークの先端部が正しく検査対象金属に押し当てられた状態で、検出された磁気ノイズを表示装置に表示することができる。
【0013】
本発明の第3態様の金属検査装置では、励磁電流調整部が引き上げる励磁電流が所定の閾値を越えた場合に、ヨークの検査対象金属への押し当て方を変えることを報知する報知部を備えることで、ヨークの先端部が検査対象金属に対して、正しい姿勢で押し当てられていないことが分かる。そのため、ユーザは、ヨークの先端部を押し当てる検査対象金属の位置を変え、ヨークの先端部が正しく検査対象金属に押し当てられた状態にすることができる。
【0014】
本発明の第4態様の金属検査装置では、磁気ノイズ算出部は、発生電流判定部が所定の閾値以上であると判定した発生電流により形成された磁界に基づいて、検査対象金属の磁気ノイズを算出することで、検査対象金属とヨークとの間に、狙いの磁場を形成した励磁電流によって、検査対象金属の磁気ノイズを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る金属検査装置の検査ヘッドを示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る金属検査装置を示す概略断面図であり、図1のA-A断面を示す。
図3】第1実施形態に係る金属検査装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る金属検査装置の制御フローを示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る金属検査装置の制御フローを示すフローチャートである。
図6】別の実施形態に係る金属検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る金属検査装置について、図面を参照して説明する。第1実施形態では、金属検査装置は、金属の研磨焼け、残留応力、硬度等を検出する目的で、バルクハウゼンノイズを測定するバルクハウゼンノイズ測定装置とする例を説明する。なお、各図において、矢印UPは、検査ヘッドの上方側を示し、矢印RHは、検査ヘッドの右方側を示し、矢印FRは、検査ヘッドの前方側を示している。
【0017】
[第1実施形態の構成]
図1及び図2に示すように、金属検査装置10は、検査ヘッド12と、制御部50と、報知部としての表示装置60と、を備えている。
【0018】
図1に示すように、検査ヘッド12は、ヨーク(継鉄)20と、励磁コイル32と、電流検出コイル34と、ノイズ検出部としての磁気ノイズ検出コイル36と、を備えている。
【0019】
(ヨーク20)
ヨーク20は、軟磁性体で形成されている。ヨーク20は、上下方向に延在した一対の脚部24と、脚部24の基端を連結する連結部22と、で略U字状に形成されている。
【0020】
脚部24は、断面矩形の角柱状に形成されている。脚部24の先端部26は、検査対象である検査対象金属80に突き当てるようになっている。連結部22は、断面矩形の角柱状に形成されている。
【0021】
(励磁コイル32)
励磁コイル32は、連結部22に、ボビン(図示せず)を介して巻かれている。励磁コイル32には、制御部50によって、交流電源からの励磁電流が所定の電流値に制御されて供給される。励磁コイル32に通電されることで、ヨーク20に磁界が形成され、電磁石化するようになっている。
【0022】
(電流検出コイル34)
電流検出コイル34は、一方の脚部24に、ボビン(図示せず)を介して巻かれている。電流検出コイル34には、ヨーク20に形成された磁界により発生電流が発生される。
【0023】
(磁気ノイズ検出コイル36)
磁気ノイズ検出コイル36は、ボビン(図示せず)に巻かれたコイルとすることができる。磁気ノイズ検出コイル36は、筐体(図示せず)に支持され、一対の脚部24の間に設けられている。磁気ノイズ検出コイル36は、検査対象である検査対象金属80の磁束を検出する。
【0024】
(表示装置60)
表示装置60は、画像を表示するモニタとすることができる。
【0025】
[検査方法]
図2に示すように、検査ヘッド12の先端部26を検査対象金属80に突き当てる。この際、磁気ノイズ検出コイル36が検査対象金属80に当接するようにしてもよい。これにより、ヨーク20と検査対象金属80との間で閉じた磁気回路が形成される。なお、図2では、ヨーク20と検査対象金属80との間で閉じた磁気回路に流れる磁束Mを模式的に示している。
【0026】
次に、制御部50によって、励磁コイル32に励磁電流が供給される。これにより、ヨーク20及び検査対象金属80が磁化される。次に、電流検出コイル34によって、ヨーク20に形成された磁界により発生電流が発生される。発生電流の情報は、制御部50に入力され、磁化曲線が算出される。磁気ノイズ検出コイル36は、検査対象金属80の磁束を検出する。磁気ノイズ検出コイル36が検出した磁束の情報は、制御部50に入力され、バルクハウゼンノイズが算出される。
【0027】
[金属検査装置の機能構成]
図3に示すよに、金属検査装置10は、機能的には、電流検出コイル34に発生された発生電流の情報と、磁気ノイズ検出コイル36が検出した磁束の情報と、が制御部50に入力され、制御部50にて処理された情報が出力部としての表示装置60に表示されるようになっている。また、制御部50は、交流電源からの電流を所定の電流値に制御した励磁電流を励磁コイル32に出力するようになっている。
【0028】
電流検出コイル34は、ヨーク20に形成された磁界により発生電流を発生する。電流検出コイル34に発生された発生電流は、制御部50に入力される。
【0029】
磁気ノイズ検出コイル36は、検査対象金属80の磁束を検出する。磁気ノイズ検出コイル36が検出した磁束は、制御部50に入力される。
【0030】
制御部50は、励磁電流印可部51と、磁化曲線算出部52と、磁界測定部としての発生電流測定部53と、発生電流判定部54と、励磁電流調整部55と、磁気ノイズ算出部56と、報知制御部57と、を備えている。
【0031】
励磁電流印可部51は、交流電源からの電流を所定の励磁電流値に制御し、励磁コイル32に出力し、ヨーク20に励磁電流を印可する。励磁電流印可部51は、三角波を励磁コイル32に出力することもできる。励磁電流印可部51は、三角波の最大値を励磁コイル32に出力することもできる。
【0032】
磁化曲線算出部52は、電流検出コイル34で発生された発生電流に基づいて、ヨーク20の磁化曲線を算出する。
【0033】
発生電流測定部53は、電流検出コイル34で発生された発生電流の発生電流値を測定する。言い換えると、発生電流測定部53は、励磁電流の印可によってヨーク20に形成された磁界の大きさを測定する。
【0034】
発生電流判定部54は、発生電流値が所定の閾値A以上であるか否かを判定する。閾値Aは、励磁電流値に対して、ヨーク20に正しく形成された磁界から発生される発生電流値とする。
【0035】
励磁電流調整部55は、発生電流判定部54が発生電流値を所定の閾値A未満と判定した場合に、励磁電流印可部51が出力する励磁電流値を引き上げる。また、励磁電流調整部55は、励磁電流値が所定の閾値B未満であるか否かを判定する。励磁電流調整部55は、励磁電流値が所定の閾値B以上であった場合に、励磁電流印可部51が出力する励磁電流値の引き上げを停止する。閾値Bは、励磁コイル32に流すことが可能な電流値であり、例えば、2Aとすることができる。
【0036】
磁気ノイズ算出部56は、磁気ノイズ検出コイル36が検出した磁束に基づいて、磁気ノイズとしてのバルクハウゼンノイズを算出する。この際、磁気ノイズ算出部56は、磁化曲線算出部52が算出した磁化曲線に基づいて、検査対象金属80のバルクハウゼンノイズを算出することができる。磁気ノイズ算出部56が算出した算出結果の情報は、表示装置60に出力される。
【0037】
報知制御部57は、発生電流判定部54が、発生電流値を所定の閾値A未満であると判定し、かつ、励磁電流調整部55が、励磁電流値を所定の閾値B以上と判定した場合に、検査対象金属80に対する検査ヘッド12の押し当て位置が適切でない表示(アラート)を表示装置60に出力する。検査対象金属80に対する検査ヘッド12の押し当て位置が適切でない表示は、ヨーク20の検査対象金属80への押し当て方の変更を促す表示であり、例えば、「検査ヘッド12の押し当て位置を変更してください」等とすることができる。
【0038】
[金属検査装置の制御フロー]
図4に示すように、金属検査装置10のヨーク20の先端を検査対象金属80に押し当てると、プリ測定を開始し、励磁電流印可部51は、励磁電流を励磁コイル32に出力して、ヨーク20にプリ測定用の励磁電流を印可する(ステップS101)。プリ測定用の励磁電流は、三角波の最大値とすることができる。
【0039】
次いで、発生電流測定部53は、励磁電流の印可によってヨーク20に形成された磁界により発生された発生電流を測定する(ステップS102)。
【0040】
次いで、発生電流判定部54は、発生電流値が所定の閾値A以上であるか否かを判定する(ステップS103)。発生電流値が所定の閾値A以上であると判定された場合(ステップS103でYES)、ステップS107に進む。一方、発生電流値が所定の閾値A未満であると判定された場合(ステップS103でNO)、励磁電流調整部55は、励磁電流印可部51が出力する励磁電流値を引き上げる(ステップS104)。
【0041】
次いで、励磁電流調整部55は、励磁電流値が所定の閾値B未満であるか否かを判定する。励磁電流値が所定の閾値B未満であると判定された場合(ステップS105でYES)、ステップS101に戻る。一方、励磁電流値が所定の閾値B以上であると判定された場合(ステップS105でNO)、報知制御部57は、表示装置60に、検査対象金属80に対する検査ヘッド12の押し当て位置が適切でない表示を出力して(ステップS106)、処理を終了する。
【0042】
一方、ステップS107に進むと、本測定を開始して、励磁電流印可部51は、閾値A以上であると判定された発生電流値の本測定用の励磁電流を励磁コイル32に出力して、ヨーク20に励磁電流を印可する(ステップS101)。本測定用の励磁電流は、三角波とすることができる。
【0043】
次いで、磁気ノイズ算出部56は、磁気ノイズ検出コイル36が検出した磁束に基づいて、バルクハウゼンノイズを算出する(ステップS108)。言い換えると、磁気ノイズ算出部56は、発生電流判定部54が所定の閾値A以上と判定した発生電流値を最大値とする三角波により形成された磁界に基づいて、検査対象金属80のバルクハウゼンノイズを算出する。
【0044】
次いで、制御部50は、磁気ノイズ算出部56が算出した算出結果の情報を、表示装置60に出力し(ステップS109)、処理を終了する。
【0045】
[第1実施形態の作用]
第1実施形態の金属検査装置10は、検査対象金属80に押し当てる一対の先端部26を備えるヨーク20に、励磁電流を印可する励磁電流印可部51と、励磁電流の印可によってヨーク20に形成された磁界により、発生された発生電流を測定する発生電流測定部53と、発生電流が所定の閾値A以上であるか否かを判定する発生電流判定部54と、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A未満と判定した場合に、励磁電流を引き上げる励磁電流調整部55と、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A以上と判定した場合に、検査対象金属80の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部56と、を備える。
【0046】
発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A以上と判定した場合に、検査対象金属80の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部56を備えることで、狙いの発生電流が流れた場合に、検査対象金属80の磁気ノイズが検出される。ここで、狙いの発生電流が流れた場合、ヨーク20には、狙いの磁束が流れていることになる。すなわち、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられて、検査対象金属80とヨーク20との間に、狙いの磁場が形成されていることになる。そのため、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられた状態で、磁気ノイズを検出することができる。
【0047】
しかも、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A未満と判定した場合に、励磁電流を引き上げる励磁電流調整部55を備えることで、励磁電流の不足により、発生電流が所定の閾値A未満となることが抑制される。そのため、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられた状態であるかを効率的に確認することができる。
【0048】
第1実施形態の金属検査装置10では、励磁電流調整部55が引き上げる励磁電流が所定の閾値Bを越えた場合に、ヨーク20の検査対象金属80への押し当て方を変えることを報知する表示装置60を備える。
【0049】
励磁電流調整部55が引き上げる励磁電流が所定の閾値Bを越えた場合に、ヨーク20の検査対象金属80への押し当て方を変えることを報知する表示装置60を備えることで、ヨーク20の先端部26が検査対象金属80に対して、正しい姿勢で押し当てられていないことが分かる。そのため、ユーザは、ヨーク20の先端部26を押し当てる検査対象金属80の位置を変え、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられた状態にすることができる。
【0050】
第1実施形態の金属検査装置10では、発生電流判定部54が、発生電流を所定の閾値A以上であると判定した場合に、磁気ノイズ算出部56は、発生電流判定部54が所定の閾値A以上であると判定した発生電流により形成された磁界に基づいて、検査対象金属80の磁気ノイズを算出する。
【0051】
磁気ノイズ算出部56は、発生電流判定部54が所定の閾値A以上であると判定した発生電流により形成された磁界に基づいて、検査対象金属80の磁気ノイズを算出することで、検査対象金属80とヨーク20との間に、狙いの磁場を形成した励磁電流によって、検査対象金属80の磁気ノイズを検出することができる。
【0052】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の金属検査装置は、金属検査装置の制御フローが異なる点で、第1実施形態の金属検査装置と相違する。
【0053】
[第2実施形態の金属検査装置の制御フロー]
以下、第2実施形態の金属検査装置の制御フローを説明する。なお、第1実施形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は符号を用いて説明する。
【0054】
図5に示すように、金属検査装置10のヨーク20の先端を検査対象金属80に押し当てると、励磁電流印可部51は、励磁電流を励磁コイル32に出力して、ヨーク20に本測定用の励磁電流を印可する(ステップS201)。本測定用の励磁電流は、三角波とすることができる。
【0055】
次いで、発生電流測定部53は、励磁電流の印可によってヨーク20に形成された磁界により発生された発生電流を測定する(ステップS202)。
【0056】
次いで、磁気ノイズ算出部56は、磁気ノイズ検出コイル36が検出した磁束に基づいて、バルクハウゼンノイズを算出する(ステップS203)。
【0057】
次いで、発生電流判定部54は、三角波の最大値時の発生電流値が所定の閾値A以上であるか否かを判定する(ステップS204)。発生電流値が所定の閾値A以上であると判定された場合(ステップS204でYES)、ステップS208に進む。一方、発生電流値が所定の閾値A未満であると判定された場合(ステップS204でNO)、励磁電流調整部55は、励磁電流印可部51が出力する励磁電流値を引き上げる(ステップS205)。
【0058】
次いで、励磁電流調整部55は、励磁電流値が所定の閾値B未満であるか否かを判定する(ステップS206)。励磁電流値が所定の閾値B未満であると判定された場合(ステップS206でYES)、ステップS201に戻る。一方、励磁電流値が所定の閾値B以上であると判定された場合(ステップS206でNO)、報知制御部57は、表示装置60に、検査対象金属80に対する検査ヘッド12の押し当て位置が適切でない表示を出力して(ステップS106)、処理を終了する。
【0059】
一方、ステップS208に進むと、制御部50は、磁気ノイズ算出部56が算出した算出結果の情報を、表示装置60に出力し(ステップS208)、処理を終了する。
【0060】
[第2実施形態の作用]
第2実施形態の金属検査装置10は、検査対象金属80に押し当てる一対の先端部26を備えるヨーク20に、励磁電流を印可する励磁電流印可部51と、励磁電流の印可によってヨーク20に形成された磁界により、発生された発生電流を測定する発生電流測定部53と、励磁電流の印可によって検査対象金属80に形成された磁界に基づいて、検査対象金属80の磁気ノイズを算出する磁気ノイズ算出部56と、発生電流が所定の閾値Aであるか否かを判定する発生電流判定部54と、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A未満と判定した場合に、励磁電流を引き上げる励磁電流調整部55と、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、磁気ノイズ算出部56が算出した磁気ノイズが出力される表示装置60と、を備える。
【0061】
発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値以上と判定した場合に、磁気ノイズ算出部56が算出した磁気ノイズが出力される表示装置60を備えることで、狙いの発生電流が流れた場合に、検出された検査対象金属80の磁気ノイズが表示装置60に表示される。ここで、狙いの発生電流が流れた場合、ヨーク20には、狙いの磁束が流れていることになる。すなわち、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられて、検査対象金属80とヨーク20との間に、狙いの磁場が形成されていることになる。そのため、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられた状態で、検出された磁気ノイズが表示装置60に出力することができる。
【0062】
しかも、発生電流判定部54が発生電流を所定の閾値A未満と判定した場合に、励磁電流を引き上げる励磁電流調整部55を備えることで、励磁電流の不足により、発生電流が所定の閾値A未満となることが抑制される。そのため、ヨーク20の先端部26が正しく検査対象金属80に押し当てられた状態であるかを効率的に確認することができる。
【0063】
なお、他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0064】
以上、本発明の金属検査装置を、第1実施形態及び第2実施形態に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更などは許容される。
【0065】
第1実施形態及び第2実施形態では、電流検出コイル34で発生された発生電流に基づいて、ヨーク20の磁化曲線を算出し、発生電流値が所定の閾値A以上であるか否かを判定する例を示した。しかし、図6に示すように、所定の閾値A以上であるか否かを判定する発生電流を発生する電流検出コイル34とは別に、ヨーク20の磁化曲線を算出するためのBH検出コイル38を設けてもよい。
【0066】
第1実施形態及び第2実施形態では、励磁コイル32は、連結部22に設けられている例を示した。しかし、励磁コイル32は、脚部24に設けることもできる。
【0067】
第1実施形態及び第2実施形態では、電流検出コイル34をヨーク20の脚部24に設ける例を示した。しかし、電流検出コイルを設ける位置は、この態様に限定されず、例えば、ヨーク20の連結部22に設けることもできる。
【0068】
第1実施形態では、発生電流値が所定の閾値A以上であると判定された場合(ステップS103でYES)、本測定を開始する例を示した。この際、報知制御部57は、本測定を開始する表示を表示装置60に出力してもよい。
【0069】
第1実施形態及び第2実施形態では、報知部として表示装置60とする例を示した。しかし、報知部としては、音声を出力する音声出力装置としてもよい。
【0070】
第1実施形態及び第2実施形態では、励磁コイル32、電流検出コイル34及び磁気ノイズ検出コイル36は、ボビンに巻かれている例を示した。しかし、励磁コイル、電流検出コイル及び磁気ノイズ検出コイルは、空芯コイルであってもよい。
【0071】
第1実施形態及び第2実施形態では、ノイズ検出部を磁気ノイズ検出コイル36とする例を示した。しかし、ノイズ検出部としては、ホールセンサ等のセンサを用いることもできる。
【0072】
第2実施形態及び第2実施形態では、磁界測定部は、電流検出コイル34で発生された発生電流の発生電流値を測定する発生電流測定部53する例を示した。しかし、磁界測定部は、励磁電流の印可によってヨークに形成された磁界を直接測定するものであってもよい。
【0073】
第1実施形態及び第2実施形態では、ヨーク20は、断面矩形状の略U字状に形成される例を示した。しかし、ヨークの形状は、この態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
10・・・金属検査装置、20・・・ヨーク、26・・・先端部、51・・・励磁電流印可部、53・・・発生電流測定部(磁界測定部の一例)、54・・・発生電流判定部、55・・・励磁電流調整部、56・・・磁気ノイズ算出部、60・・・表示装置、80・・・検査対象金属
図1
図2
図3
図4
図5
図6