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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048288
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20240401BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L23/48 P
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154245
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久徳 淳志
(57)【要約】
【課題】大電流に対応可能且つ製造が容易な電子モジュールを得る。
【解決手段】半導体装置10は、電子素子である半導体素子20と、第1端子である第1パワー端子30と、第2端子である第1信号端子60と、導電性接合材であるはんだBMとを備えている。第1パワー端子30は、半導体素子20に電気的に接続され、第1信号端子60と接続するための貫通穴36を有する。第1信号端子は、貫通穴36に挿入された挿入部62Bを有し、貫通穴36内に配置されたはんだBMを介して第1パワー端子30と電気的に接続されている。第1パワー端子30における貫通穴36の外縁には、はんだBMを貫通穴36内に誘導するための誘導路である複数の溝部Gが設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子と、第1端子と、第2端子と、導電性接合材と、を備えた電子モジュールであって、
前記第1端子は、前記電子素子に電気的に接続され、前記第2端子と接続するための穴部を有し、
前記第2端子は、前記穴部に挿入された挿入部を有し、
前記穴部内に配置された前記導電性接合材を介して前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続されており、
前記第1端子における前記穴部の外縁には、前記導電性接合材を前記穴部内に誘導するための誘導路が設けられていることを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
電子素子と、第1端子と、第2端子と、導電性接合材と、を備えた電子モジュールであって、
前記第1端子は、前記電子素子に電気的に接続され、前記第2端子と接続するための穴部を有し、
前記第2端子は、前記穴部に挿入された挿入部を有し、
前記穴部内に配置された前記導電性接合材を介して前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続されており、
前記穴部及び前記挿入部は、断面が長尺状であることを特徴とする電子モジュール。
【請求項3】
前記挿入部は、前記穴部内において前記第2端子と部分的に接触していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記挿入部は、前記第2端子と接触していないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記挿入部は、前記穴部に対して垂直に挿入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項6】
前記誘導路は、前記穴部の外縁に設けられた溝部であることを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項7】
前記誘導路は、前記穴部の外縁に形成された傾斜部であることを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項8】
前記電子素子が搭載された基板を備え、前記第1端子と前記電子素子とが前記基板を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項9】
前記電子素子が搭載された導電性フレーム材を備え、前記第1端子と前記電子素子とが導電性フレーム材を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項10】
前記電子素子は、半導体素子である請求項1又は請求項2に記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された半導体装置は、半導体チップが実装された基板と、基板上の配線パターンと接続されたピン端子と、ピン端子を支持するとともに半導体チップの電極とピン端子とを電気的に接続したリードフレームとを備えている。ピン端子は、リードフレームに形成された穴に圧入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6850938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術において、大電流帯を許容するためには、リードフレームの板厚を厚くする必要がある。リードフレームの板厚を厚くすると、リードフレームへの微細加工が困難となることから、ピン端子圧入のための穴が小さくできず、ピン端子の直径が太くなるという課題がある。また、大電流が流れるリードフレームと、信号用の小電流のみが流れるリードフレームとを分けて製造する場合、リードフレーム同士を接合する必要がある。その場合、接合用の導電性接合材の干渉によって、リードフレーム同士を互いに平行に配置することが難しくなるという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を考慮し、大電流に対応可能且つ製造が容易な電子モジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子モジュールは、電子素子と、第1端子と、第2端子と、導電性接合材と、を備えた電子モジュールであって、前記第1端子は、前記電子素子に電気的に接続され、前記第2端子と接続するための穴部を有し、前記第2端子は、前記穴部に挿入された挿入部を有し、前記穴部内に配置された前記導電性接合材を介して前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続されており、前記第1端子における前記穴部の外縁には、前記導電性接合材を前記穴部内に誘導するための誘導路が設けられている。
【0007】
また、本発明に係る電子モジュールは、電子素子と、第1端子と、第2端子と、導電性接合材と、を備えた電子モジュールであって、前記第1端子は、前記電子素子に電気的に接続され、前記第2端子と接続するための穴部を有し、前記第2端子は、前記穴部に挿入された挿入部を有し、前記穴部内に配置された前記導電性接合材を介して前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続されており、前記穴部及び前記挿入部は、断面が長尺状である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子素子に電気的に接続される第1端子は、第2端子と接続するための穴部を有する。第2端子は、第1端子の穴部に挿入された挿入部を有し、穴部内に配置された導電性接合材を介して第1端子と電気的に接続される。導電性接合材は、第1端子における穴部の外縁に設けられた誘導路によって穴部内に誘導される。この発明では、大電流に対応して第1端子のリードフレームを厚くした場合でも、第1端子の穴部に第2端子の挿入部が挿入され、穴部内の導電性接合材によって第1端子と第2端子とが電気的に接続されるので、第1端子の穴部を小さく形成する必要がない。よって、製造が容易になる。しかも、第1端子における穴部の外縁に上記の誘導路が設けられているので、製造過程において導電性接合材を穴部内へ適切に誘導することができる。
【0009】
また、本発明によれば、電子素子に電気的に接続される第1端子は、第2端子と接続するための穴部を有する。第2端子は、第1端子の穴部に挿入された挿入部を有し、穴部内に配置された導電性接合材を介して第1端子と電気的に接続される。第1端子の穴部及び第2端子の挿入部は、断面が長尺状である。この発明では、大電流に対応して第1端子のリードフレームを厚くした場合でも、第1端子の穴部に第2端子の挿入部が挿入され、穴部内の導電性接合材によって第1端子と第2端子とが電気的に接続されるので、第1端子の穴部を小さく形成する必要がない。よって、製造が容易になる。しかも、第1端子の穴部及び第2端子の挿入部は、断面が長尺状であるため、例えば第2端子の材料として板厚が厚いリードフレームを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電子モジュールとしての半導体装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置において封止樹脂の図示を省略した状態を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る半導体装置において封止樹脂の図示を省略した状態を示す平面図である。
図4】絶縁基板及びその周辺部材の構成を示す平面図である。
図5図2の一部を拡大して示す斜視図である。
図6】第1端子の一部を拡大して示す平面図である。
図7】第2端子が備える支持部材を示す斜視図である。
図8】第2端子が備えるピン端子を示す斜視図である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の状態を示す斜視図である。
図10】第1実施形態の第1変形例に係る電子モジュールとしての半導体装置において封止樹脂の図示を省略した状態を示す斜視図である。
図11】第1実施形態の第2変形例に係る電子モジュールとしての半導体装置において封止樹脂の図示を省略した状態を示す斜視図である。
図12】第1端子に形成された貫通穴の外縁に傾斜部が設けられた例を示す断面図である。
図13】第2端子の変形例を示す斜視図である。
図14】第2端子の変形例を示す平面図である。
図15】実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。
図16】実施形態に係る半導体装置において封止樹脂の図示を省略した状態を示す斜視図である。
図17】実施形態に係る半導体装置において封止樹脂の図示を省略した状態を示す平面図である。
図18】絶縁基板及びその周辺部材の構成を示す平面図である。
図19図17の19-19線に沿った切断面を示す断面図である。
図20】第1端子である内部端子を示す斜視図である。
図21】内部端子の一部を示す平面図である。
図22】第2端子である第3パワー端子を示す斜視図である。
図23】実施形態に係る半導体装置の製造途中の状態を示す斜視図である。
図24】トランスファー成形のモールド金型と第3パワー端子を示す断面図である。
図25】トランスファー成形のモールド金型が閉じた状態を示す図24に対応した断面図である。
図26図15に示される構成の一部を拡大して示す斜視図である。
図27】長穴の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図1図9を参照して本発明の第1実施形態に係る電子モジュールとしての半導体装置10について説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜記す前後、左右及び上下の矢印で示す方向を、前後方向、左右方向及び上下方向と定義して構成要素の位置や向き等を説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態に係る半導体装置10は、前後方向に長尺で且つ上下方向に扁平な略直方体状をなしている。この半導体装置10は、図1図4に示されるように、絶縁基板12と、絶縁基板12上に形成された導体部である第1導体部14、第2導体部16及び第3導体部18と、第1導体部14上に配置された半導体素子20と、半導体素子20のソース電極22と接続された第1パワー端子30と、第1導体部14と接続された第2パワー端子40と、半導体素子20のゲート電極24と第3導体部18とを電気的に接続した接続部材50と、第2導体部16及び第1パワー端子30と接続された第1信号端子60と、第1導体部14及び第2パワー端子40と接続された第2信号端子70と、第3導体部18と接続された第3信号端子80と、絶縁基板12、第1導体部14、第2導体部16、第3導体部18、半導体素子20、接続部材50、第1パワー端子30の一部、第2パワー端子40の一部、第1信号端子60の一部、第2信号端子70の一部、及び第3信号端子80の一部を封止する封止樹脂90と、を備えている。絶縁基板12は、本発明における「基板」に相当し、半導体素子20は、本発明における「電子素子」に相当し、第1パワー端子30及び第2パワー端子40は、本発明における「第1端子」に相当し、第1信号端子60及び第2信号端子70は、本発明における「第2端子」に相当する。
【0013】
絶縁基板12は、下面(裏面)に放熱用の金属板が形成されたDCB(Direct Copper Bonding基板)のセラミックス基板である。この絶縁基板12は、プリント基板等であってもよい。この絶縁基板12は、矩形の平板状に形成されており、半導体装置10の上下方向を板厚方向として半導体装置10の前後方向中央部に配置されている。絶縁基板12の上面(表面)には、第1導体部14と第2導体部16と第3導体部18とが導体パターン(ここでは銅パターン)として形成されている。第1導体部14と第2導体部16と第3導体部18とは、互いに絶縁されている。
【0014】
図4及び図5に示されるように、第1導体部14上には、半導体素子20が配置されている。半導体素子20は、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。半導体素子20は、一方の面(絶縁基板12側の面(下面))に形成された図示しないドレイン電極と、他方の面(絶縁基板12とは反対側の面(上面))に形成されたソース電極22及びゲート電極24を有している。半導体素子20のドレイン電極は、第1導体部14に対して導電性接合材によって接合されている。なお、本実施形態では、導電性接合材としてはんだを用いている。はんだは、鉛フリーはんだでもよい。また、導電性接合材は、はんだに限らず、導電性および接着性を有する合金又は金属、或いは銀ペーストや銀ナノ粒子を有する導電性接合材であってもよい。
【0015】
第1パワー端子30は、図1図3に示されるように半導体装置10の前部に配置されている。第1パワー端子30は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)によって平板状に形成された板状部32と、導電性を有する材料(ここでは銅丸棒)によって円柱状に形成された柱状部34とによって構成されている。板状部32は、前後方向を長手とする長尺状に形成されており、絶縁基板12に対して上方側に所定間隔をあけて平行に配置されている。柱状部34は、上下方向を軸方向として配置されている。
【0016】
上記の板状部32は、前方側の幅広部32Aと、後方側の幅狭部32Bと、幅狭部32Bから左右方向の一方側(ここでは右方側)へ延出された延出部32Cとを有している。幅広部32Aは、幅狭部32Bよりも左右方向に幅広に形成されている。幅広部32Aは、後端部が封止樹脂90(図1参照)の内部に埋まっており、後端部以外が封止樹脂90の外部に露出している。幅狭部32Bは、その全体が封止樹脂90の内部に埋まっている。幅広部32Aの中央部及び幅狭部32Bの後端部にはそれぞれ、幅広部32A及び幅狭部32Bを上下方向に貫通する貫通穴(符号省略)が形成されている。これらの貫通穴は、上下方向視で円形状をなしている。幅狭部32Bの後端部に形成された貫通穴には、柱状部34の上端部が嵌合している。柱状部34は、例えば圧入によって板状部32に固定されている。柱状部34の下端面は、導電性接合材によって半導体素子20のソース電極22と接合されている。延出部32Cは、幅狭部32Bの右端部から右方側へ延出されている。図5及び図6に示されるように、延出部32Cには、延出部32Cを上下方向に貫通する貫通穴36が形成されている。貫通穴36は、上下方向視で左右方向を長手とする長尺矩形状をなしている。この貫通穴36は、本発明における「穴部」に相当する。
【0017】
第2パワー端子40は、図1図3に示されるように半導体装置10の後部に配置されている。第2パワー端子40は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)によって平板状に形成された板状部42と、導電性を有する材料(ここでは銅丸棒)によって円柱状に形成された複数(ここでは3つ)の柱状部44とによって構成されている。板状部42は、前後方向を長手とする長尺状に形成されており、絶縁基板12に対して上方側に所定間隔をあけて平行に配置されている。3つの柱状部44は、上下方向を軸方向として左右方向に並んで配置されている。
【0018】
上記の板状部42は、前端部が封止樹脂90の内部に埋まっており、前端部以外が封止樹脂90の外部に露出している。板状部42の前端部には、複数(ここでは3つ)の円形の貫通穴(符号省略)が左右方向に並んで形成されている。これらの貫通穴には、上記3つの柱状部44の上端部が嵌合している。各柱状部44は、例えば圧入によって板状部42に固定されている。各柱状部44の下端面は、導電性接合材によって第1導体部14と接合されている。板状部42の前端部における左右方向一方側の端部(ここでは右端部)には、板状部42を上下方向に貫通する貫通穴46が形成されている。貫通穴46は、上下方向視で前後方向を長手とする長尺矩形状をなしている。この貫通穴46は、本発明における「穴部」に相当する。
【0019】
図3及び図4に示されるように、接続部材50は、絶縁基板12上に配置されている。接続部材50は、半導体素子20のゲート電極24と第3導体部18とを電気的に接続している。接続部材50は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)がプレス成形されて製造されたものであり、長尺状に形成されている。接続部材50を構成する平板材は、第1パワー端子30及び第2パワー端子40を構成する平板材よりも板厚が薄く設定されている。接続部材50の長手方向一端部は、導電性接合材によってゲート電極24と接合されている接合部材50の長手方向他端部は、導電性接合材によって第3導体部18と接合されている。
【0020】
図1図3に示されるように、第1信号端子60、第2信号端子70及び第3信号端子80は、平板状に形成された支持部材62、72、82と、棒状に形成されたピン端子64、74、84とによって構成されている。支持部材62、72、82は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)がプレス成形されて製造されたものである。支持部材62、72、82を構成する平板材は、第1パワー端子30及び第2パワー端子40を構成する平板材よりも板厚が薄く設定されており、接続部材50を構成する平板材よりも板厚が厚く設定されている。
【0021】
第1信号端子60の支持部材62は、第2導体部16に対して上方側に所定間隔をあけて配置されている。この支持部材62は、上下方向を板厚方向とする矩形板状の本体部62Aと、本体部62Aの後端から後方側へ延出された挿入部62Bとを有している。図2及び図5に示されるように、本体部62Aは、第1パワー端子30の板状部32よりも若干上方側に配置されている。図7に示されるように、本体部62Aの中央部には、本体部62Aを上下方向に貫通した貫通穴64が形成されている。貫通穴64は、上下方向視で円形状をなしている。貫通穴64には、第1信号端子60のピン端子64が挿通(ここでは圧入)されて支持されている。
【0022】
図8に示されるように、ピン端子64は、導電性を有する材料(ここでは金属)により長尺な棒状(ここでは円柱状)に形成されており、上下方向を軸方向として配置されている。ピン端子64の長手方向中央部には、鍔状のフランジ部64Aが形成されている。フランジ部64Aの下面は、本体部62Aの上面に接触しており、導電性接合材によって本体部62Aと接合されている。ピン端子64の下端面は、第2導体部16の上面に接触しており、導電性接合材によって第2導体部16と接合されている。
【0023】
図2及び図5に示されるように、挿入部62Bの先端側は、下方側へ向けて屈曲しており、第1パワー端子30が備える板状部32の延出部32Cに形成された貫通穴36内に上方側から挿入されている。図6に示されるように、貫通穴36内に挿入された挿入部62Bは、貫通穴36よりも細く形成されており、挿入部62Bは、第1パワー端子30と接触していない。挿入部62Bは、貫通穴36に対して垂直に挿入されている。貫通穴36の内周面と挿入部62Bの外周面との間には、上下方向視で矩形環状の隙間が形成されている。この隙間には、導電性接合材であるはんだBM(図6以外では図示省略)が充填されている。このはんだBMを介して挿入部62B(すなわち第1信号端子60)と延出部32C(すなわち第1パワー端子30)とが電気的に接続されている。延出部32Cにおいて貫通穴36の上縁部には、貫通穴36に連通する1又は複数(ここでは4つ)の溝部Gが形成されている。具体的には、貫通穴36の上縁部における前後左右の四か所にそれぞれ溝部Gが形成されている。これらの溝部Gは、上記の隙間すなわち貫通穴36内にはんだBMを流れ込ませる(誘導する)ための誘導路である。はんだBMは、例えば延出部32Cの上面に印刷又はディスペンサによって設けられたものが加熱されて上記の隙間に流れ込む。
【0024】
図2及び図3に示されるように、第2信号端子70の支持部材72は、第1導体部14に対して上方側に所定間隔をあけて配置されている。この支持部材72は、上下方向を板厚方向とする矩形板状の本体部72Aと、本体部72Aの左端から左方側へ延出された挿入部72Bとを有している。本体部72Aには、本体部72Aを上下方向に貫通した貫通穴が形成されており、当該貫通穴には第2信号端子70のピン端子74が挿通(ここでは圧入)されて支持されている。ピン端子74は、前述したピン端子64と同様の構成とされており、導電性接合材によって本体部72Aと接合されている。ピン端子74の下端面は、導電性接合材によって第1導体部14の上面と接合されている。
【0025】
挿入部72Bの先端側は、下方側へ向けて屈曲しており、第2パワー端子40の板状部42に形成された貫通穴46内に上方側から挿入されている。貫通穴46内に挿入された挿入部72Bは、貫通穴46よりも細く形成されており、挿入部72Bは、第2パワー端子40と接触していない。挿入部72Bは、貫通穴46に対して垂直に挿入されている。貫通穴46の内周面と挿入部72Bの外周面との間には、上下方向視で矩形環状の隙間(符号省略)が形成されている。この隙間には、導電性接合材であるはんだBM(図示省略)が充填されており、当該はんだBMを介して挿入部72B(すなわち第2信号端子70)と板状部42(すなわち第2パワー端子40)とが電気的に接続されている。
【0026】
第3信号端子80の支持部材82は、第3導体部18に対して上方側に所定間隔をあけて配置されており、上下方向を板厚方向とする矩形板状をなしている。支持部材82には、支持部材82を上下方向に貫通した貫通穴が形成されており、当該貫通穴には第3信号端子80のピン端子84が挿通(ここでは圧入)されて支持されている。ピン端子84は、前述したピン端子64と同様の構成とされており、導電性接合材によって支持部材82と接合されている。ピン端子84の下端面は、導電性接合材によって第3導体部18の上面と接合されている。
【0027】
上記構成の半導体装置10では、図1に示されるように、絶縁基板12、第1導体部14、第2導体部16、第3導体部18、半導体素子20、接続部材50、第1パワー端子30の一部、第2パワー端子40の一部、第1信号端子60の一部、第2信号端子70の一部、及び第3信号端子80の一部が封止樹脂90により封止されている。
【0028】
第1信号端子60、第2信号端子70及び第3信号端子80の支持部材62、72、82は、図9に示されるリードフレームLFの一部からなるものである。すなわち、半導体装置10の製造時には、図9に示されるように、半導体素子20、第1パワー端子30、第2パワー端子40等が接合された絶縁基板12が、ピン端子64、74、84を介してリードフレームLFに支持される。図9に示される状態では、支持部材62、72、82がそれぞれリードフレームLFと繋がっている。その状態で次の成形工程に搬送され、封止樹脂90が成形される。その後、支持部材62、72、82がリードフレームLFから切断され、図1に示される半導体装置10が完成する。
【0029】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。上記構成の半導体装置10では、絶縁基板12上に第1導体部14、第2導体部16及び第3導体部18が形成され、第1導体部14上に半導体素子20が配置されている。半導体素子20のドレイン電極は、第1導体部14に接続されている。半導体素子20のソース電極22には、第1パワー端子30が接続され、第1導体部14には、第2パワー端子40が接続されている。第1パワー端子30及び第2パワー端子40にはそれぞれ貫通穴36、46が形成されている。
【0030】
第1パワー端子30の貫通穴36には、第1信号端子60の支持部材62に設けられた挿入部62Bが挿入されている。貫通穴36内にははんだBMが設けられ、当該はんだBMを介して第1信号端子60が第1パワー端子30と電気的に接続されている。同様に、第2パワー端子40の貫通穴46には、第2信号端子70の支持部材72に設けられた挿入部72Bが挿入されている。貫通穴46内にははんだBMが設けられ、当該はんだBMを介して第2信号端子70が第2パワー端子40と電気的に接続されている。
【0031】
この実施形態では、第1パワー端子30及び第2パワー端子40の材料となるリードフレームと、支持部材62、72の材料となるリードフレームLFとを分けることができるので、大電流に対応して各パワー端子30、40のリードフレームを厚くすることができる。そのように大電流に対応して各パワー端子30、40のリードフレームを厚くした場合でも、各パワー端子30、40の貫通穴36、46に各信号端子60、70の挿入部62B、72Bが挿入され、貫通穴36、46内のはんだBMによって各パワー端子30、40と各信号端子60、70とが電気的に接続されるため、各パワー端子30、40の貫通穴36、46を小さく形成する必要がない。よって、製造が容易になる。
【0032】
また、貫通穴36、46内にはんだBMが配置されるため、各パワー端子30、40と各信号端子60、70との位置ずれが防止され、且つ各パワー端子30、40と各信号端子60、70との接合面積が増加されて電気的接続が強化される。これにより、電気的特性や信頼性が高い半導体装置10(電子モジュール)を提供することが可能となる。
【0033】
さらに、各パワー端子30、40の貫通穴36、46の外縁に複数の溝部Gが設けられている。このため、半導体装置10の製造時には、例えば延出部32Cの上面に印刷又はディスペンサによって設けられたはんだBMが加熱されて溶融すると共に、上記複数の溝部Gに誘導され、貫通穴36、46内へ流れ込む。これにより、貫通穴36、46内にはんだBMを適切に充填することができ、挿入部62B、72Bと支持部材62、72との接合が容易になる。
【0034】
しかも、大電流に対応して各パワー端子30、40の板厚を厚くした場合でも、支持部材62、72の板厚を薄くすることができるので、半導体装置10の全体構成が大型化することを抑制でき、半導体装置10の小型化が可能となる。
【0035】
また、上記の第1信号端子60及び第2信号端子70は、挿入部62B、72Bを有する平板状の支持部材62、72と、支持部材62、72に挿通された状態で支持された棒状のピン端子64、74とを備えている。支持部材62、72の材料となるリードフレームLFは、板厚を増加させる必要がないため、当該板厚の増加に伴ってリードフレームLFへの微細な加工が困難になることを回避できる。その結果、支持部材62、72の貫通穴36、46を高精度に形成することができるので、ピン端子64、74を貫通穴36、46に精度良く圧入して支持することが可能となる。
【0036】
次に、第1実施形態の変形例について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0037】
図10には、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置10において封止樹脂90の図示を省略した状態が斜視図にて示されている。この第1変形例では、第1信号端子60、第2信号端子70、第3信号端子80は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)がプレス成形されて製造されたものであり、複数箇所で屈曲した棒状をなしている。第1信号端子60は、第1パワー端子30の貫通穴36に挿入された挿入部60Aを有しており、挿入部60Aと貫通穴36の内周面との間に設けられた導電性接合材を介して第1信号端子60が第1パワー端子30と接続されている。第2端子70は、第2パワー端子30の貫通穴46に挿入された挿入部70Aを有しており、挿入部70Aと貫通穴46の内周面との間に設けられた導電性接合材を介して第2信号端子70が第2パワー端子40と接続されている。この第1変形例では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この第1変形例では、第1実施形態の効果に加えて、各信号端子60、70、80の構成の簡素化を図ることができる。
【0038】
図11には、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置10において封止樹脂90の図示を省略した状態が斜視図にて示されている。この第2変形例では、第1パワー端子30の後端部が下方側へ向けて屈曲されており、絶縁基板12に形成された図示しない導体部に接合されている。この導体部には、封止樹脂90の内部に埋め込まれる内部端子100が接合されている。この内部端子100は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)がプレス成形されて平板状に形成された板状部102と、導電性を有する材料(ここでは銅丸棒)によって円柱状に形成された柱状部104とによって構成されている。板状部102の前端部は下方側に屈曲されて上記の導体部に接合されている。柱状部104の上端部は、板状部102の後端部に形成された貫通穴に嵌合している。柱状部104の下端面は、半導体素子20のソース電極22に接合されている。板状部102の右端部には、右方側へ延びる延出部102Aが設けられている。延出部102Aには、延出部102Aを上下方向に貫通した貫通穴36が形成されている。貫通穴36には、第1信号端子60の挿入部62Aが挿入されている。挿入部62Aと貫通穴36の内周面との間に設けられた導電性接合材を介して第1信号端子60が内部端子100と接続されている。この第2変形例では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この第2変形例においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0039】
なお、上記第1実施形態及びその変形例では、貫通穴36、36の上縁部に複数の溝部Gが形成された構成にしたが、これに限らず、例えば図12に示されるように構成してもよい。図12に示される構成によれば、貫通穴36の上縁部(外縁)には、複数の溝部Gの代わりに、貫通穴36側へ向かって下り勾配の傾斜部(傾斜面)Sが形成されている。この傾斜部Sは、誘導路であり、溝部Gと同様に機能を有している。すなわち、この構成では、延出部32Cの上面に印刷又はディスペンサによって設けられたはんだBMが加熱されて溶融すると、当該はんだBMが傾斜部Sに誘導されて貫通穴36内に流れ込む。よって、第1実施形態と同様に、はんだBMを貫通穴36、46内へ適切に誘導することができる。
【0040】
また、上記第1実施形態及びその変形例では、各パワー端子30、40形成された貫通穴36、46内にはんだBMが配置され、貫通穴36、46の外縁に複数の溝部Gが形成された構成にしたが、これに限るものではない。例えば図13及び図14に示されるように、支持部材82に形成された略矩形状の貫通穴83内にはんだBMが配置され、貫通穴83の外縁に複数の溝部Gが形成された構成にしてもよい。図13及び図14に示される構成では、略矩形状の貫通穴83には、鍔部が省略されたピン端子84が圧入されている。支持部材82の上面には印刷又はディスペンサによってはんだBMが設けられ、当該はんだBMが加熱されて溶融すると共に、複数の溝部Gに案内されて貫通穴83内に流れ込む。このはんだBMにより、支持部材82とピン端子84との接触面積を拡大することができる。
【0041】
なお、各端子の材料であるリードフレーム等に溝部Gを形成することで、以下のような効果を得ることも可能である。すなわち、例えばリードフレーム等において溝部Gが設けられた箇所が封止樹脂の外側に露出する場合、封止樹脂外の溝部Gが排水溝として機能する。これにより、封止樹脂とリードフレーム等との間の隙間からの電子モジュール内への水分の浸入を防止することが可能となる。また、リードフレーム等において溝部Gが設けられた箇所が封止樹脂の内部に埋まる場合、リードフレーム等と封止樹脂との接触面積が溝部Gによって増加するため、リードフレーム等と封止樹脂との密着力を増加させることができる。また、リードフレーム等において、はんだBMがそれ以上流れてほしくない箇所に溝部Gを設けることで、はんだBMの流れ出しを防止することが可能となる。
【0042】
各端子の材料であるリードフレームに傾斜部Sを形成することで、以下のような効果を得ることも可能である。すなわち、複数のリードフレームが製造時に積み重ねられる場合に、上側のリードフレームに形成されたボスが、下側のリードフレームに形成された傾斜部Sに接触することで、リードフレーム同士の上下面を非接触とすることができる。その結果、リードフレームにおいて、厚さ方向の寸法精度が必要な個所の変形を防ぐことが可能となる。
【0043】
また、上記第1実施形態及びその変形例においては、半導体素子20がパワーMOSFETである場合について説明したが、これに限るものではない。半導体素子は、IGBT、サイリスタ、ダイオード等の他の素子であってもよい。また、半導体素子の材料としては、シリコン、SiC、GaN等の素材を用いることができる。
【0044】
また、上記の半導体素子20は、一方側の面にソース電極22を有し、他方側の面にドレイン電極を有する所謂縦型の半導体素子であったが、これに限るものではない。半導体素子は、一方側の面にソース電極及びドレイン電極を有する所謂横型の半導体素子であってもよい。
【0045】
また、上記第1実施形態及びその変形例は、電子素子である半導体素子20が搭載された絶縁基板12を備え、第1端子である第1パワー端子30及び第2パワー端子40と半導体素子20とが絶縁基板12を介して電気的に接続された構成にしたが、これに限るものではない。電子素子が搭載された導電性フレーム材を備え、第1端子と電子素子とが導電性フレーム材を介して電気的に接続された構成にしてもよい。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、図15図27を参照して本発明の第2実施形態に係る半導体装置110について説明する。説明の便宜上、各図中に適宜記す前後、左右及び上下の矢印で示す方向を、前後方向、左右方向及び上下方向と定義して構成要素の位置や向き等を説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0047】
図15に示されるように、本実施形態に係る半導体装置110は、ダイオードモジュールであり、前後方向に長尺で且つ上下方向に扁平に形成されている。この半導体装置110は、図15図18に示されるように、絶縁基板112と、絶縁基板112上に形成された導体部である第1導体部114及び第2導体部116と、第1導体部114上に配置された半導体素子118と、第2導体部116上に配置された半導体素子120と、半導体素子118のアノード電極118Aと接続された第1パワー端子130と、第2導体部116と接続された第2パワー端子140と、半導体素子120のアノード電極120Aと接続された内部端子150と、内部端子150及び第1導体部114と接続された第3パワー端子160と、絶縁基板112、第1導体部114、第2導体部116、半導体素子118、半導体素子120、第1パワー端子130の一部、第2パワー端子140の一部、内部端子150、及び第3パワー端子160の一部を封止する封止樹脂170と、を備えている。絶縁基板112は、本発明における「基板」に相当し、内部端子150は、本発明における「第1端子」に相当し、第3パワー端子160は、本発明における「第2端子」に相当する。
【0048】
絶縁基板12は、下面(裏面)に放熱用の金属板が形成されたDCB(Direct Copper Bonding基板)のセラミックス基板である。この絶縁基板112は、プリント基板等であってもよい。この絶縁基板112は、矩形の平板状に形成されており、半導体装置110の上下方向を板厚方向として半導体装置110の前後方向中央部に配置されている。絶縁基板112の上面(表面)には、第1導体部114と第2導体部116とが導体パターン(ここでは銅パターン)として形成されている。第1導体部114と第2導体部116とは、互いに絶縁されている。
【0049】
図16図18に示されるように、第1導体部114上には半導体素子118が配置されており、第2導体部116上には半導体素子120が配置されている。半導体素子118、120は、ダイオードであり、一方の面(絶縁基板112側の面(下面))に形成された図示しないカソード電極と、他方の面(絶縁基板112とは反対側の面(上面))に形成されたアノード電極118A、120Aを有している。半導体素子118、120のカソード電極は、第1導体部114及び第2導体部116に対して導電性接合材によって接合されている。なお、本実施形態では、導電性接合材としてはんだを用いている。はんだは、鉛フリーはんだでもよい。また、導電性接合材は、はんだに限らず、導電性および接着性を有する合金又は金属、或いは銀ペーストや銀ナノ粒子を有する導電性接合材であってもよい。
【0050】
第1パワー端子130は、図15図17に示されるように半導体装置110の前部に配置されている。第1パワー端子130は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)によって平板状に形成された板状部132と、導電性を有する材料(ここでは銅丸棒)によって円柱状に形成されたピン端子134とによって構成されている。板状部132は、前後方向を長手とする長尺状に形成されており、絶縁基板112に対して上方側に所定間隔をあけて平行に配置されている。ピン端子134は、上下方向を軸方向として配置されている。
【0051】
上記の板状部132は、前方側の幅広部132Aと、後方側の幅狭部132Bとを有している。幅広部132Aは、幅狭部132Bよりも左右方向に幅広に形成されている。幅広部132Aは、後端部が封止樹脂170(図15参照)の内部に埋まっており、後端部以外が封止樹脂170の外部に露出している。幅狭部132Bは、その全体が封止樹脂170の内部に埋まっている。幅広部132Aの中央部及び幅狭部132Bの後部にはそれぞれ、幅広部132A及び幅狭部132Bを上下方向に貫通する貫通穴(符号省略)が形成されている。これらの貫通穴は、上下方向視で円形状をなしている。幅狭部132Bの後端部に形成された貫通穴には、ピン端子134の上端部が嵌合している。ピン端子134は、例えば圧入によって板状部132に固定されている。ピン端子134の下端面は、チップスペーサ122(図16図18及び図19参照)を介して半導体素子118のアノード電極118Aに接続されている。
【0052】
チップスペーサ122は、導電性を有する薄い平板材(ここでは銅板)によって円板状に形成されており、ピン端子134と同心状に配置されている。チップスペーサ122の直径は、ピン端子134の直径よりも大きく設定されている。図19に示されるように、チップスペーサ122の下面は、導電性接合材であるはんだBM1によって半導体素子118のアノード電極118Aの上面と接合されている。チップスペーサ122の上面は、導電性接合材であるはんだBM2によってピン端子134の下面と接合されている。チップスペーサ122の上面の外周部には、ピン端子134よりも若干大径な環状の窪み122Aが形成されている。この窪み122Aは、チップスペーサ122の上面とピン端子134の下面との間からのはんだBM2の流れ出しを抑制し、はんだBM2の凝集時のセルフアライメントをピン端子134の軸心に向かって働かせる機能を有している。
【0053】
第2パワー端子140は、図15図17に示されるように半導体装置110の後部に配置されている。第2パワー端子140は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)によって平板状に形成された板状部142と、導電性を有する材料(ここでは銅丸棒)によって円柱状に形成された複数(ここでは3つ)のピン端子144とによって構成されている。板状部142は、前後方向を長手とする長尺状に形成されており、絶縁基板112に対して上方側に所定間隔をあけて平行に配置されている。3つのピン端子144は、上下方向を軸方向として左右方向に並んで配置されている。
【0054】
上記の板状部42は、前端部が封止樹脂170の内部に埋まっており、前端部以外が封止樹脂170の外部に露出している。板状部142の前端部には、複数(ここでは3つ)の円形の貫通穴(符号省略)が左右方向に並んで形成されている。これらの貫通穴には、上記3つのピン端子144の上端部が嵌合している。各ピン端子144は、例えば圧入によって板状部142に固定されている。各ピン端子144の下端面は、導電性接合材によって第2導体部116の上面と接合されている。
【0055】
内部端子150は、図16図17図19及び図20に示されるように半導体装置110の前後方向中央部に配置されている。内部端子150は、導電性を有する平板材(ここでは銅板)によって平板状に形成された板状部152と、導電性を有する材料(ここでは銅丸棒)によって円柱状に形成されたピン端子154とによって構成されている。板状部152は、前後方向を長手とする長尺状に形成されており、絶縁基板112に対して上方側に所定間隔をあけて平行に配置されている。ピン端子154は、上下方向を軸方向として配置されている。
【0056】
板状部152は、板状部152の前端部を構成する幅広部152Aと、板状部152の前端部以外を構成する幅狭部152Bとを有している。幅広部152Aは、幅狭部152Bよりも左右方向に幅広に形成されている。幅狭部152Bの後部には、幅狭部152Bを上下方向に貫通する貫通穴(符号省略)が形成されている。この貫通穴は、上下方向視で円形状をなしている。この貫通穴には、ピン端子154の上端部が嵌合している。ピン端子154は、例えば圧入によって板状部152に固定されている。ピン端子154の下端面は、チップスペーサ124(図16及び図18参照)を介して半導体素子120のアノード電極120Aに接続されている。
【0057】
チップスペーサ124は、前述したチップスペーサ122と同様の構成とされており、ピン端子154と同心状に配置されている。チップスペーサ124の下面は、導電性接合材であるはんだBM1によって半導体素子120のアノード電極120Aの上面と接合されている。チップスペーサ124の上面は、導電性接合材であるはんだBM2によってピン端子154の下面と接合されている。チップスペーサ124の上面の外周部には、ピン端子154よりも若干大径な環状の窪み124Aが形成されている。
【0058】
図20及び図21に示されるように、板状部152の幅広部152Aには、幅広部152Aを上下方向に貫通し、左右方向を長手とする長穴156が形成されている。この長穴156は、本発明における「穴部」に相当する。長穴156は、長手方向中間部が幅広部156Aとされ、長手方向両端部がそれぞれ幅狭部156Bとされている。左右の幅狭部156Bは、幅広部156Aよりも前後方向に幅狭に設定されている。長穴156の上縁部には、複数の溝Gが形成されている。具体的には、長穴156の前後両側にそれぞれ3つの溝Gが左右方向に並んで形成されている。この長穴156は、第3パワー端子160に対応している。
【0059】
第3パワー端子160は、図15図17及び図22に示されるように、導電性を有する平板材(ここでは銅板)によって平板状に形成されており、半導体装置110のパッケージの上面に配置されている。第3パワー端子160は、前後方向を板厚方向として配置されており、上下方向を長手とする長尺状をなしている。第3パワー端子160は、第3パワー端子160の下部を構成する幅狭部160Bと、第3パワー端子160の下部以外を構成する幅広部160Aとを有している。幅狭部160Bは、幅広部160Aよりも左右方向に幅狭に設定されている。この幅狭部160Bは、本発明における「挿入部」に相当する。幅狭部160Bの左右方向の幅寸法は、内部端子150の長穴156の長手方向寸法より若干小さく設定されている。この幅狭部160Bは、内部端子150の長穴156に圧入されている。具体的には、幅狭部160Bの左右方向両端部が長穴156の左右の幅狭部156Bに圧入されている。幅狭部160Bは、長穴156内において内部端子150と部分的に接触している。これにより、第3パワー端子160が内部端子150と電気的に接続されている。第3パワー端子160の下端面は、導電性接合材によって第1導体部114の上面と接合されている。
【0060】
図21に示されるように、長穴156及び幅狭部160Bは、上下方向から見た断面が、左右方向を長手とする長尺状である。長穴156の幅広部156Aの内周面と第3パワー端子160の幅狭部160Bとの間には導電性接合材であるはんだBM3が設けられている。このはんだBM3を介して第3パワー端子160と内部端子150とが電気的に接続されている。このはんだBM3は、例えば板状部152の幅広部152Aの上面に印刷又はディスペンサによって設けられたはんだBM3が加熱され、幅広部156Aの内周面と幅狭部160Bとの間の隙間に流れ込んで固化したものである。このはんだBM3の流れ込みは、長穴156の外縁(上縁部)に形成された複数の溝G(誘導路)によって誘導される。なお、複数の溝Gを形成する代わりに、長穴156の外縁に長穴156側へ向かって下り勾配の傾斜部を形成する構成にしてもよい。
【0061】
上記構成の半導体装置110では、図15に示されるように、絶縁基板112、第1導体部114、第2導体部116、半導体素子118、半導体素子120、第1パワー端子130の一部、第2パワー端子140の一部、内部端子150、及び第3パワー端子160の一部が封止樹脂170により封止されている。
【0062】
第1パワー端子130の板状部132、第2パワー端子140の板状部142及び内部端子150の板状部152は、図23に示されるリードフレームLFの一部からなるものである。すなわち、半導体装置110の製造時には、図23に示されるように、絶縁基板112の第1導体部114及び第2導体部116に半導体素子118、120が接合されると共に、第1導体部114、第2導体部116及び半導体素子118、120に対してリードフレームLFと一体の第1パワー端子130、第2パワー端子140及び内部端子150が接合される。このリードフレームLFと一体の内部端子150の長穴156には前工程で第3パワー端子160が圧入される。この第3パワー端子160の幅狭部160Bの下端面は、上記の接合の際に第1導体部114に接合される。その状態で次のモールド工程に搬送され、封止樹脂170が成形される。
【0063】
上記のモールド工程では、トランスファーモールドによって封止樹脂170が成形される。図24及び図25に示されるように、封止樹脂170を成形するためのトランスファーモールドの金型180、182には、第3パワー端子160の左右方向両端部の一部を前後方向に潰す潰し部180A、182Aが設けられる。第3パワー端子160の左右方向中間部のフラット面は、金型180、182に押し当てられ、第3パワー端子160の左右方向両端部の一部のみが前後方向に潰される。これにより、金型180、182と第3パワー端子160との間の隙間を無くし、樹脂漏れを防ぐように構成されている。封止樹脂170の成形後、第1パワー端子130、第2パワー端子140及び内部端子150がリードフレームLFから切断され、図15に示される半導体装置110が完成する。完成した半導体装置110では、図26に示されるように、第3パワー端子160の左右方向両端部における封止樹脂170側の端部に、金型180、182で押し潰された圧痕162(図15では図示省略)が形成される。
【0064】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。上記構成の半導体装置110では、絶縁基板112上に第1導体部114及び第2導体部116が形成され、各導体部114、116上に半導体素子118、120が配置されている。半導体素子118のアノード電極118Aには第1パワー端子130が接続され、半導体素子120のアノード電極120Aには内部端子150が接続され、半導体素子120のカソード電極には第2導体部116を介して第2パワー端子140が接続され、半導体素子118のカソード電極には第1導体部114を介して第3パワー端子160が接続されている。第3パワー端子160は、平板状に形成されており、半導体装置110のパッケージの上面に配置されている。この第3パワー端子160は、内部端子150に形成された長穴156に圧入されて第2パワー端子140に接続されている。
【0065】
この実施形態では、大電流に対応して内部端子150のリードフレームを厚くした場合でも、内部端子150の長穴156に第3パワー端子160の幅狭部160Bが圧入(挿入)され、長穴156内のはんだBM3によって内部端子150と第3パワー端子160とが電気的に接続されるので、内部端子150の長穴156を小さく形成する必要がない。よって、製造が容易になる。しかも、内部端子150の長穴156及び第3パワー端子160の幅狭部160Bは、断面が長尺状であるため、第3パワー端子160の材料として板厚が厚いリードフレームを用いることができる。
【0066】
従来、パッケージの上面に外部端子を設ける場合、一般にピン端子が用いられてきたが、上記の第3パワー端子160は平板状に形成されているため、ピン端子と比較して断面積の確保が容易であり、大電流に対応可能となる。しかも、上記の圧入によって第3パワー端子160を自立させることができるので、パッケージの上面における第3パワー端子160の配置精度を確保することができる。
【0067】
しかも、本実施形態では、内部端子150の長穴156は、幅広部156Aと、幅広部156Aよりも幅が狭い左右の幅狭部156Bとを有しており、左右の幅狭部156Bに第3パワー端子160が圧入されている。これにより、第3パワー端子160を長穴156に圧入する際の両者の接触面積が小さくなり、圧入に必要な押し込み力が小さくなる。その結果、例えば第3パワー端子160を長穴156に圧入するための装置を簡素な構成にすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、長穴156内には導電性接合材であるはんだBM3が設けられている。このはんだBM3を介して第3パワー端子160と内部端子150とが電気的に接続されている。これにより、狭幅部160Bの左右の端部のみに大電流が集中することを防止できるので、長穴156への第3パワー端子160の圧入を容易にする効果と、大電流対応の効果とを両立することができる。
【0069】
また、本実施形態では、内部端子150の長穴156の上縁部(すなわち板状部152の上面)には、長穴156に連通する複数の溝Gが形成されている。板状部152の上面には、印刷又はディスペンサによってはんだBM3が設けられる。このはんだBM3が加熱されて溶融し、上記複数の溝Gに誘導されて幅広部156Aの内周面と幅狭部160Bとの間の隙間に流れ込む。これにより、はんだBM3による内部端子150と第3パワー端子160との接合が容易になる。
【0070】
また、本実施形態では、封止樹脂170を成形するためのトランスファーモールドの金型180、182には、第3パワー端子160の左右方向両端部の一部を前後方向に潰す潰し部180A、182Aが設けられる。第3パワー端子160の左右方向中間部のフラット面は、金型180、182に押し当てられ、第3パワー端子160の左右方向両端部の一部のみが前後方向に潰される。これにより、金型180、182と第3パワー端子160との間の隙間が塞がれ、樹脂漏れが防止される。このように、第3パワー端子160のフラット面を生かして、第3パワー端子160の左右の端部のみを潰すので、金型180、182の型締め圧力の増加を抑制しつつ、樹脂漏れを防止することができる。
【0071】
また、本実施形態では、第1パワー端子130及び内部端子150のピン端子134、154の下端面がチップスペーサ122、124を介して半導体素子118、120のアノード電極118A、120Aと接合されている。これにより、外部の温度変化によって半導体素子118、120にかかる応力を分散させることができ、半導体素子118、120の欠けを防止することができる。特に大電流化によって半導体素子118、120が大きくなると、上記の欠けが発生し易くなるため、チップスペーサ122、124による応力分散の効果が高くなる。また、本実施形態では、チップスペーサ122、124が円板状に形成されているので、はんだBM1、BM2の溶融時にチップスペーサ122、124が回転したとしても、チップスペーサ122、124と他部品との干渉を防止することができる。
【0072】
なお、上記第2実施形態では、長穴156の左右方向両端部(長手方向両端部)が幅狭部156Bとされた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば図27に示される変形例のように構成してもよい。この変形例では、長穴156の長手方向中間部に左右二つの狭幅部156Bが設けられている。この変形例でも上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
また、上記第2実施形態では、内部端子150が第1端子とされた構成にしたが、これに限らず、第1端子はパワー端子等の外部端子であってもよい。
【0074】
また、上記第2実施形態おいては、半導体素子118、120がダイオードである場合について説明したが、これに限るものではない。半導体素子は、パワーMOSFET、IGBT、サイリスタ等の他の素子であってもよい。また、半導体素子の材料としては、シリコン、SiC、GaN等の素材を用いることができる。
【0075】
また、上記第2実施形態では、電子素子である半導体素子118、120が搭載された絶縁基板112を備え、第1端子である内部端子150と半導体素子118、120とが絶縁基板112を介して電気的に接続された構成にしたが、これに限るものではない。電子素子が搭載された導電性フレーム材を備え、第1端子と電子素子とが導電性フレーム材を介して電気的に接続された構成にしてもよい。
【0076】
また、上記各実施形態では、半導体素子20、118、120が電子素子である構成にしたが、これに限らず、電子素子は、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ポテションメータ、変圧器等であってもよい。
【0077】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態及び上記各変形例に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 半導体装置(電子モジュール)
12 絶縁基板(基板)
20 半導体素子(電子素子)
30 第1パワー端子(第1端子)
36 貫通穴(穴部)
40 第2パワー端子(第1端子)
46 貫通穴(穴部)
60 第1信号端子(第2端子)
70 第2信号端子(第2端子)
110 半導体装置(電子モジュール)
112 絶縁基板(基板)
118 半導体素子(電子素子)
120 半導体素子(電子素子)
150 内部端子(第1端子)
156 長穴(穴部)
160 第3パワー端子(第2端子)
160B 幅狭部(挿入部)
G 溝部
S 傾斜部
図1
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