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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048296
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240401BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154264
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】522239030
【氏名又は名称】株式会社イクスフロー
(71)【出願人】
【識別番号】522381926
【氏名又は名称】千葉 宗勝
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】塩野 博文
(72)【発明者】
【氏名】千葉 宗勝
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AG03
4F202AH81
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB28
4F202CC03
4F202CK17
4F202CK32
4F206AG03
4F206AH81
4F206JA07
4F206JB28
4F206JC01
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】コア部の高さを精度良く微調整することができる成形装置を提供する。
【解決手段】第1成形部を形成するための第1の固定側金型と、第2成形部を形成するための第2の固定側金型と、第1の固定側金型と共に第1成形部を形成するための型を構成すると共に、第2の固定側金型と共に、第1成形部に対して第2成形部を一体的に形成するための型を構成する2つの移動側金型と、各移動側金型を挿通して突設部の端面と突き当て可能に設けられたコアピンと、該コアピンを支持する可動ステージと、該可動ステージに立設されたリターンピンと、可動ステージの周辺位置に設置され、一端において可動ステージの周縁部の下面に接触可能な梃と、梃の他端を上方から押圧可能な梃押しピンとを備える。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂材料からなり、内周側に突出する凸部が内周面に設けられた貫通孔が形成された第1成形部に対し、前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料からなり、前記貫通孔において少なくとも前記凸部を覆うように前記第1成形部と一体的に形成された第2成形部と、を備える成形品を製造するための成形装置であって、
前記第1成形部を形成するための第1の固定側金型であって、前記貫通孔を形成するための突設部が設けられた第1の固定側金型と、
前記第2成形部を形成するための第2の固定側金型であって、前記第1の固定側金型に対してパーティングラインが同一の水平面となるように、前記第1の固定側金型と並列に配置された第2の固定側金型と、
前記第1の固定側金型と共に前記第1成形部を形成するための型を構成すると共に、前記第2の固定側金型と共に、前記第1成形部に対して前記第2成形部を一体的に形成するための型を構成する2つの移動側金型と、
前記2つの移動側金型を、パーティングラインが同一の水平面となるようにスペーサを介して並列に保持するステージであって、前記2つの移動側金型の各々を前記第1の固定側金型及び前記第2の固定側金型に交互に合わせるように、垂直方向の軸回りに回転可能に設けられた回転ステージと、
前記2つの移動側金型の各々を垂直方向に挿通するように設けられ、前記突設部の端面と突き当て可能、且つ、前記突設部の端面よりも面積の大きい端面を有するコアピンと、
前記2つの移動型金型の各々の下方に配置され、前記コアピンを支持し、垂直方向に移動可能な可動ステージと、
前記可動ステージに立設され、型閉じされているときに前記可動ステージを下方に押圧可能なリターンピンと、
前記可動ステージの周辺位置に、水平方向の軸回りに回転可能に配置された梃であって、一端において前記可動ステージの周縁部の下面に接触可能な梃と、
前記梃の他端を上方から押圧可能な梃押しピンと、
を備え、
前記第2の固定側金型のパーティングラインのうち、前記梃押しピンに対応する位置に、該梃押しピンを逃がすための逃がし穴が形成され、
型閉じされた際、
前記梃押しピンが前記第1の固定側金型に押下されることにより前記梃の他端を押下し、これにより、前記可動ステージが押し上げられて前記コアピンの端面が前記突設部の端面に突き当てられ、
前記リターンピンが前記第2の固定側金型に押下されることにより前記可動ステージを押下し、これにより、前記梃の一端が押下されると共に前記梃の他端が前記梃押しピンを押し上げ、該梃押しピンが前記逃がし穴に逃げ、それに伴い、前記コアピンが垂直下方に後退して、前記第1成形部と前記コアピンとの間に第2の樹脂材料を回り込ませる空間が形成される、成形装置。
【請求項2】
前記梃は、前記可動ステージの周囲の複数箇所に設けられている、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記梃は、前記可動ステージの対向する少なくとも1組の辺に対し、少なくとも1箇所ずつ設けられている、請求項2に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材質や色などが異なる樹脂を一体的に成形する技術として、二色成形が知られている。例えば、特許文献1には、一部にアンダーカット部を有する第1成形体と、この第1成形体とは異なる材料にて成形されかつ前記第1成形体に対し前記アンダーカット部の裏側に係止した状態で一体化される第2成形体とからなる樹脂製成形品を成形するための成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-293747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、幅が百μm程度~数mm程度、高さが数十μm程度~数mm程度の微細な流路が内部に形成された流体デバイス(検査デバイス)の開発が進められている。このような流体デバイスは、流路となる凹部が表面に形成された硬質の樹脂基板を別の樹脂基板と接合することにより作成することができる。また、樹脂基板に流路(凹部)と連通する貫通孔を形成し、この貫通孔にエラストマー等の軟質の樹脂材料からなる膜を接合することにより、微細なバルブを形成することができる。
【0005】
このような樹脂基板と膜とが接合された部品を作製する場合、異種の樹脂同士の密着性、寸法の精度、製造効率、樹脂同士の熱収縮率の差に起因する不良発生率等の観点から、二色成形を用いることが考えられる。一方、樹脂基板に形成された貫通孔からの膜の抜けを防ぐためには、貫通孔の内壁に凸部(アンダーカット部)を設け、この凸部を覆うように膜を形成することが考えられる。
【0006】
アンダーカット部を含む成形品の製造に関し、上記特許文献2においては、一次成形の際には、スライドコアピンの先端が可動側金型におけるアンダーカット部(突片)の対応位置に臨むようにしてあり、二次成形の際に、スライドコアピンを僅かに下降させ、スライドコアピンの先端が上記突片より所定寸法だけ下方へ離間した位置に保持されるようにしている。これにより、突片の下側空間に成形肉を回り込ませることにより、樹脂製成形品を成形することとしている。
【0007】
特許文献2においては、コア部(コアバックプレート及びスライドコアピン)を上下動させる機構として、コアバックプレートの側面から突出する高さの異なる2本のカムピンを、従動スライダを斜めに貫通するカム溝に挿通し、従動スライドの側方への変位に伴いカムピンをカム溝に沿って摺動させる機構を採用している。
【0008】
しかしながら、このようなカム機構によりコアバックプレートを上下動させる場合、カム溝によりカムピンの位置が決まってしまうため、コア部の高さの微調整が困難である。そのため、例えば上述した流体デバイスにおけるバルブのように、微細な部分を成形する場合には、精度の維持が困難になる可能性も考えられる。また、微調整が困難であると、バリが発生しやすくなるという問題もある。
【0009】
本発明は、コア部の高さの精度良く微調整することができる二色成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様である成形装置は、第1の樹脂材料からなり、内周側に突出する凸部が内周面に設けられた貫通孔が形成された第1成形部に対し、前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料からなり、前記貫通孔において少なくとも前記凸部を覆うように前記第1成形部と一体的に形成された第2成形部と、を備える成形品を製造するための成形装置であって、前記第1成形部を形成するための第1の固定側金型であって、前記貫通孔を形成するための突設部が設けられた第1の固定側金型と、前記第2成形部を形成するための第2の固定側金型であって、前記第1の固定側金型に対してパーティングラインが同一の水平面となるように、前記第1の固定側金型と並列に配置された第2の固定側金型と、前記第1の固定側金型と共に前記第1成形部を形成するための型を構成すると共に、前記第2の固定側金型と共に、前記第1成形部に対して前記第2成形部を一体的に形成するための型を構成する2つの移動側金型と、前記2つの移動側金型を、パーティングラインが同一の水平面となるようにスペーサを介して並列に保持するステージであって、前記2つの移動側金型の各々を前記第1の固定側金型及び前記第2の固定側金型に交互に合わせるように、垂直方向の軸回りに回転可能に設けられた回転ステージと、前記2つの移動側金型の各々を垂直方向に挿通するように設けられ、前記突設部の端面と突き当て可能、且つ、前記突設部の端面よりも面積の大きい端面を有するコアピンと、前記2つの移動型金型の各々の下方に配置され、前記コアピンを支持し、垂直方向に移動可能な可動ステージと、前記可動ステージに立設され、型閉じされているときに前記可動ステージを下方に押圧可能なリターンピンと、前記可動ステージの周辺位置に、水平方向の軸回りに回転可能に配置された梃であって、一端において前記可動ステージの周縁部の下面に接触可能な梃と、前記梃の他端を上方から押圧可能な梃押しピンと、を備え、前記第2の固定側金型のパーティングラインのうち、前記梃押しピンに対応する位置に、該梃押しピンを逃がすための逃がし穴が形成され、型閉じされた際、前記梃押しピンが前記第1の固定側金型に押下されることにより前記梃の他端を押下し、これにより、前記可動ステージが押し上げられて前記コアピンの端面が前記突設部の端面に突き当てられ、前記リターンピンが前記第2の固定側金型に押下されることにより前記可動ステージを押下し、これにより、前記梃の一端が押下されると共に前記梃の他端が前記梃押しピンを押し上げ、該梃押しピンが前記逃がし穴に逃げ、それに伴い、前記コアピンが垂直下方に後退して、前記第1成形部と前記コアピンとの間に第2の樹脂材料を回り込ませる空間が形成されるものである。
【0011】
上記成形装置において、前記梃は、前記可動ステージの周囲の複数箇所に設けられていても良い。
また、上記成形装置において、前記梃は、前記可動ステージの対向する少なくとも1組の辺に対し、少なくとも1箇所ずつ設けられていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コア部の高さを精度良く微調整することができる成形装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る成形装置(型開き状態)の主要な構成部分を示す正面図である。
図2図1に示す可動側金型の上面を拡大して示す模式図である。
図3図1に示す成形装置(型開き状態)の主要な構成部分を示す断面図である。
図4図1に示す成形装置(型閉じ状態)の主要な構成部分を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態による一次成形体を示す拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態による成形品を示す拡大断面図である。
図7図5に示す成形品を含む流体デバイスを示す斜視図である。
図8図4の領域A1を示す拡大断面図である。
図9図4の領域B1を示す拡大断面図である。
図10図8に示す金型周辺領域をさらに拡大した断面図である。
図11図9に示す金型周辺領域をさらに拡大した断面図である。
図12図4の領域A2を示す拡大断面図である。
図13図4の領域B2を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る成形装置について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0015】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
(成形装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る成形装置(型開き状態)の主要な構成部分を示す正面図である。図2は、図1に示す可動側金型の上面を拡大して示す模式図である。図3及び図4は、図1に示す成形装置の主要な構成部分を示す断面図であり、図2のX1~X16線における組み合わせ断面を示している。このうち、図3は、型開き状態を示し、図4は、型閉じ状態を示している。図5は、本発明の実施形態における一次成形体を示す拡大断面図である。図6は、本発明の実施形態における成形品を示す拡大断面図である。図7は、図6に示す成形品を含む流体デバイスを示す斜視図である。
【0017】
図1図4に示す成形装置1は、第1の樹脂材料により形成された一次成形体に対し、第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料により形成された成形部を一体化させた二次成形体を製造するための所謂二色成形装置である。図1図4においては、紙面に向かって右側に、一次成形体を形成するための金型が配置され、紙面に向かって左側に、二次成形体を形成するための金型が配置されている。
【0018】
図5及び図6に示すように、本実施形態における一次成形体である第1成形部110には貫通孔111が形成され、この貫通孔111の内周面には、内周側に突出する凸部112が設けられる。つまり、凸部112はアンダーカット部となっている。この第1成形部110の貫通孔111を含む領域に、少なくとも凸部112を覆うように、第2成形部120を一体化させることにより、成形品(二次成形体)130が製造される。この成形品130において、貫通孔111は、第2成形部120の中心の膜状部121により閉塞されている。
【0019】
第1成形部110は、一例として、ポリプロピレン等の比較的硬質の樹脂材料により形成され、第2成形部120は、一例として、エラストマー樹脂等の比較的軟質の樹脂材料により形成される。このような成形品130は、例えば、図7に例示するような流体デバイス150の部品として使用することができる。
【0020】
図7に示す流体デバイス150は、凹状の流路141が表面に形成された基板140に対して成形品130を接合した構造を有する。流路141は、該流路141の形成面とは反対側の基板140の表面(図7では下側の面)に設けられた液体の注入口142及び排出口143と連通しており、これらの注入口142から液体を導入し、流路141を流通させて排出口143から排出することができる。このような流体デバイス150の第2成形部120に外部から圧力を加え、膜状部121を流路141側に凸となるように変形させることにより、流路141を閉塞することができる。つまり、膜状部121に圧力を印加することにより、膜状部121を流路141のバルブとして使用することができる。
【0021】
図1図4に示すように、成形装置1は、固定側機構2及び可動側機構3を備える。
固定側機構2は、並列に配置された一次固定側型板210及び二次固定側型板220と、一次固定側型板210及び二次固定側型板220の各々に積層可能に配置されたランナーストリッププレート230と、該ランナーストリッププレート230を射出成形機本体に固定するための固定側取付板231とを備える。固定側取付板231には、ランナーストリッププレート230及び一次固定側型板210又は二次固定側型板220を貫挿する抜け止めピン232及び位置決めピン233とが立設されている。
【0022】
一次固定側型板210には、第1成形部110を形成するための一次固定側入れ子(第1の固定側金型)211が嵌め込まれている。また、二次固定側型板220には、第2成形部120を形成するための二次固定側入れ子(第2の固定側金型)221が嵌め込まれている。一次固定側入れ子211の下端面と、二次固定側入れ子221の下端面とは、型閉じした際に、後述する可動側入れ子320とのパーティングラインが同一の水平面となるように並列に設置されている。
【0023】
また、二次固定側型板220には、後述する梃押しピン344を逃がすための逃がし穴222が形成されている。
【0024】
可動側機構3は、2つの成形ステージ31を備える。各成形ステージ31は、回転ステージ4上に、取付板311を介して取り付けられている。回転ステージ4は、垂直に設置された回転軸4a周りに回転可能である。図2に示すように、2つの成形ステージ31は互いに同一の構造を有しており、回転軸4aに対して互いに回転対称となるように設置されている。この回転ステージ4が回転することにより、各成形ステージ31に設けられた金型が、2つの固定側金型に交互に合わせられる。
【0025】
各取付板311上には、スペーサ312及び受け板313が積層されている。2つの受け板313は、取付板311及びスペーサ312を介して、パーティングラインが同一の水平面となるように、回転ステージ4により並列に保持されている。これらの取付板311、スペーサ312、及び受け板313を挿通するように、抜け止めピン232を挿通させるための受けポスト314と、位置決めピン233を挿通させるための受けポスト315とが、回転ステージ4上に立設されている。
【0026】
各受け板313には、可動側入れ子(移動側金型)320が嵌め込まれている。可動側入れ子320は、一次可動側入れ子211と共に第1成形部110を成形するための空間を形成すると共に、二次可動側入れ子221と共に、第1成形部110と一体化させる第2成形部120を成形するための空間を形成する。
【0027】
なお、本実施形態においては、固定側及び可動側のいずれにおいても、入れ子式の金型としているが、必ずしも入れ子を用いる必要はない。
【0028】
図4に示すように、型閉じ状態においては、可動側機構3の受け板313上に、一次固定側型板210又は二次固定側型板220と、ランナーストリッププレート230と、固定側取付板231とが積層され、互いに密接した状態となるように型閉じされる。このとき、一次固定側型板210側(紙面に向かって右側)の成形ステージ31において第1成形部110(図5参照)が成形され、二次固定側型板220側(紙面に向かって左側)の成形ステージ31において、成形品130(図6参照)が成形される。
【0029】
スペーサ312の内側において、取付板311上には、エジェクタ下板333と、エジェクタ上板336とが積層されている。エジェクタ下板333及びエジェクタ上板336は、所定範囲内において垂直方向に移動可能な可動ステージである。図3及び図4に示すように、エジェクタ上板336の幅は、エジェクタ下板333の幅よりも広くなっており、それにより、エジェクタ上板336の端部の下方に空間337が形成される。
【0030】
エジェクタ下板333には、エジェクタピン331及びリターンピン332が立設されている。このうち、リターンピン332は、各成形ステージ31につき4本設けられている(図2参照)。エジェクタ下板333は、成形品を離型する際に、エジェクタピン331及びリターンピン332と共に上方に持ち上げられる。これにより、成形品がエジェクタピン331により型から突き出される。離型後に型閉じされると、リターンピン332が一次固定側型板210又は二次固定側型板220によりが押し下げられ、エジェクタ下板333と共にエジェクタピン331が元の位置に戻る。
【0031】
エジェクタ上板336には、コアピン334及びリターンピン335が立設されている。型閉じされた際(図4参照)、二次成形側において、リターンピン335は、二次固定側型板220により上端面を押し込まれ、それによりエジェクタ上板336を押下するように構成されている。リターンピン335は、各成形ステージ31につき4本設けられており(図2参照)、これにより、エジェクタ上板336を、水平状態を維持したまま均等に押下することができる。また、この際、一次成形側において、リターンピン335は、エジェクタ上板336により押し上げられ、一次固定側型板210に突き当てられている。そのため、一次固定側型板210のうちリターンピン335が突き当てられる位置には、段差210aが形成されている(図3参照)。
【0032】
図8は、図4の領域A1を示す拡大断面図である。図9は、図4の領域B1を示す拡大断面図である。図10は、図8に示す金型周辺領域をさらに拡大した断面図である。図11は、図9に示す金型周辺領域をさらに拡大した断面図である。図11は、図9に示す金型周辺領域をさらに拡大した断面図である。
【0033】
図10及び図11に示すように、可動側入れ子320の上端面には、第1の樹脂材料が充填される凹部321が形成されている。また、可動側入れ子320には、エジェクタピン331を挿通させる貫通孔322と、コアピン334を挿通させる貫通孔323とが形成されている。これらの貫通孔322,323は、凹部321の底面324において開口しており、開口に露出するエジェクタピン331及びコアピン334の端面が凹部321の底面の一部となる。このうち、エジェクタピン331は、二次成形の完了後に、成形品を離型させる際に作動される。また、コアピン334は、第1成形部110の貫通孔111に対応する位置に設けられている。
【0034】
図10に示すように、一次固定側入れ子211の貫通孔323に対応する位置には、パーティングラインPLよりも可動側入れ子320の側に突出し、段差を有する突設部212が設けられている。突設部212の先端面の径は、コアピン334の先端面の径よりも小さい。従って、突設部212にコアピン334を突き当てて一次成形を行うことにより、内周面に凸部112を有する貫通孔111が設けられた第1成形部110を形成することができる。
【0035】
図11に示すように、二次固定側入れ子221には、第1成形部110と一体化される第2成形部120を形成するための型が形成されている。二次成形時に、コアピン334の位置を、一次成形時の位置よりも後退させることにより、凸部112とコアピン334との間に、第2の樹脂材料を回り込ませる空間を形成することができる。
【0036】
再び図2図4を参照すると、スペーサ312の内部において、エジェクタ上板336の周囲の複数箇所には、梃ステージ341が配置されている。梃ステージ341上には、水平方向に設けられた回転軸342を支点とする梃343が配置されている。梃343は、エジェクタ上板336の対向する少なくとも1組の辺に対して1箇所ずつ設置されていることが好ましく、少なくとも1組の辺に対して複数箇所ずつ設置されていることがさらに好ましい。図4においては、1組の辺に対して2箇所ずつ、計4箇所に配置されている。
【0037】
図12は、図4の領域A2を示す拡大断面図である。図13は、図4の領域B2を示す拡大断面図である。
図12及び図13に示すように、梃343の一端は、エジェクタ上板336の端部の下面に接触しており、梃343の他端は、梃押しピン344の下端面に接触している。梃343は、エジェクタ上板336に一端を押下されることにより、他端において梃押しピン344を押し上げる。また、梃343は、梃押しピン344に他端を押下されることにより、エジェクタ上板336を押し上げる。梃343は、エジェクタ上板336の周囲の複数箇所(図2においては4箇所)に設けられていることから、エジェクタ上板336を水平状態に維持したまま押し上げることができる。梃押しピン344は、その上端面がパーティングラインと揃ったときに、コアピン334の端面が突設部212の端面に突き当てられるように(図10参照)、長さ調整されている。
【0038】
(成形装置の動作)
図4に示すように型閉じすると、一次成形側(紙面の右側)においては、可動側入れ子320に一次固定側入れ子211が合わせられると共に、一次固定側型板210により梃押しピン344が下方に押下される(図8参照)。この梃押しピン344により一端を押し下げられた梃343が、他端においてエジェクタ上板336を押し上げる(図12参照)。それにより、エジェクタ上板336に立設されたコアピン334が一次固定側入れ子211の突設部212に突き当てられる(図10参照)。このような型に樹脂入れをすると、内周面に凸部112を有する貫通孔111が設けられた第1成形部110が形成される(図5参照)。
【0039】
また、二次成形側(紙面の左側)においては、第1成形部110が形成された可動側入れ子320に二次固定側入れ子221が合わせられると共に、二次固定側型板220によりリターンピン335が押下される(図9参照)。このリターンピン335に押下されたエジェクタ上板336と共に、コアピン334が下方に後退し、第1成形部110の凸部112とコアピン334との間に空隙が生じる(図11参照)。このとき、エジェクタ上板336により一端を押下された梃343が、他端において梃押しピン344を押し上げるが(図13参照)、梃押しピン344の上端部は二次固定側型板220に形成された逃がし穴222に逃げるため、エジェクタ上板336が上方に戻ることはない。このような型に樹脂入れすると、第1成形部110の凸部112の下方にも樹脂が回りこみ、凸部112を覆う第2成形部120が形成される。
【0040】
その後、図3に示すように型開きすると、二次成形側から成形品130(図6参照)が離型され、続いて、回転ステージ4が回転し、第1成形部110が形成された可動側入れ子320が二次成形側に配置されると共に、空となった可動側入れ子320が一次成形側に配置される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態においては、梃の原理によりエジェクト上板336を垂直方向において上下させることにより、コアピン334を突設部212に突き当てたり、後退させたりする。そのため、リターンピン335の長さ、又は、リターンピン335が突き当てられる一次固定側型板210の段差210aの高さを調整することにより、コアピン334及びエジェクタ上板336(即ち、コア部)の高さを容易に、精度良く制御することができる。従って、図7に流体デバイス150の第2成形部120のように、微細な部分を有する部材を成形する場合であっても(図6参照)、精度の良い成形を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、エジェクト上板336の周囲の複数箇所に梃343を配置するので、エジェクト上板336を、水平状態を維持したまま上下に移動させることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、コア部の高さを精度良く微調整することができるので、第1成形部110を成形する際にも、バリの発生を抑制することができる。
【0044】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。例えば、実施形態に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記実施形態に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…成形装置、2…固定側機構、3…可動側機構、4…回転ステージ、4a…回転軸、11…貫通孔、31…成形ステージ、110…第1成形部(一次成形体)、111…貫通孔、112…凸部、120…第2成形部、121…膜状部、130…成形品、140…基板、141…流路、142…注入口、143…排出口、150…流体デバイス、210…一次固定側型板、210a…段差、211…一次固定側入れ子、212…突設部、220…二次固定側型板、221…二次固定側入れ子、222…逃がし穴、230…ランナーストリッププレート、231…固定側取付板、232…抜け止めピン、233…位置決めピン、311…取付板、312…スペーサ、313…受け板、314・315…受けポスト、320…可動側入れ子、321…凹部、322・323…貫通孔、324…底面、331…エジェクタピン、332・335…リターンピン、333…エジェクタ下板、334…コアピン、336…エジェクタ上板、337…空間、341…梃ステージ、342…回転軸、343…梃、344…梃押しピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13