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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048303
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240401BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B60H1/00 101Q
B60H1/00 101Z
B60H1/32 626D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154271
(22)【出願日】2022-09-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】元山 純一
(72)【発明者】
【氏名】早川 和裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三国 司
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA03
3L211BA05
3L211BA08
3L211EA02
3L211FB08
3L211GA03
3L211GA09
3L211GA11
(57)【要約】
【課題】乗車前の乗員の行動による疲労度に応じて空調を制御することができる車両を提供する。
【解決手段】車両1は、乗員の携帯端末10と通信を行い、乗員の車室外における行動に関する情報を取得する情報取得部100と、取得した行動に関する情報から特定される場所に基づいて、乗員の疲労度を含む疲労状態を推定する推定部200と、推定された結果に基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する制御部300と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の携帯端末と通信を行い、前記乗員の車室外における行動に関する情報を取得する情報取得部と、
該取得した前記行動に関する情報から特定される場所に基づいて、前記乗員の疲労度を含む疲労状態を推定する推定部と、
該推定された結果に基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記推定部は、前記乗員の部位を推定し、
前記制御部は、該推定された前記乗員の部位に風向きを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車室内に、複数の乗員がいる場合に、
前記制御部は、前記車室内に設けられた座席毎に備えられた空調装置を個別に制御し、前記疲労度が低い乗員の前記空調装置の温度を制御することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の車両。
【請求項4】
前記推定部は、前記取得した行動に関する情報から特定される行動量を加味して、前記疲労状態を推定する請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車室内の温度等の環境を制御するための空調装置が設けられており、車室内にいる乗員の疲労状態に応じて、空調装置を制御する技術が提案されている。
例えば、車内にあるセンサーにて疲労状態を検出して快適な酸素濃度の清浄ガスを送風する技術(特許文献1参照)や、心拍から疲労度合いを検出して、シートの温度を自動で調整する技術(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-335440号公報
【特許文献2】特開2004-284450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は、車両に乗車中の乗員の生体情報に基づいて決定した疲労状態に応じて空調装置を制御するものであって、乗員が、車両に乗車する前の行動による疲労度は考慮されておらず、必ずしも搭乗時に乗員の疲労度を正確に判定することができない虞があるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両乗車前の乗員の行動による疲労度に応じて空調装置を制御することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
形態1;本発明の1又はそれ以上の実施形態は、乗員の携帯端末と通信を行い、前記乗員の車室外における行動に関する情報を取得する情報取得部と、該取得した前記行動に関する情報から特定される場所に基づいて、前記乗員の疲労度を含む疲労状態を推定する推定部と、該推定された結果に基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する制御部と、を備えた車両を提案している。
【0007】
形態2;本発明の1又はそれ以上の実施形態は、推定部は、前記乗員の部位を推定し、制御部は、該推定された前記乗員の部位に風向きを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両を提案している。
【0008】
形態3;本発明の1又はそれ以上の実施形態は、車室内に、複数の乗員がいる場合に、制御部は、前記車室内に設けられた座席毎に備えられた空調装置を個別に制御し、前記疲労度が低い乗員の前記空調装置の温度を制御することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の車両を提案している。
【0009】
形態4;本発明の1又はそれ以上の実施形態は、推定部は、前記取得した行動に関する情報から特定される行動量を加味して、前記疲労状態を推定する請求項1に記載の車両を提案している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、車両乗車前の行動による疲労状態に応じて空調装置を制御することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両の処理フローを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両の情報取得部が収集した乗員の行動に関する情報を例示した図である。
図4】本発明の実施形態に係る乗員の疲労状態を推定する処理フローを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る空調装置の制御を実行する処理フローを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の実施形態>
図1から図6を用いて、本実施形態に係る車両1について説明する。
本実施形態に係る車両1は、車両1に乗車した乗員の携帯端末10から乗員の車室外における行動に関する情報を取得し、取得した乗員の行動に関する情報から推定した乗員の疲労度に基づいて空調装置400を制御する。
【0013】
<車両1の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、情報取得部100と、推定部200と、制御部300と、空調装置400と、を含んで構成されている。
【0014】
情報取得部100は、乗員の携帯端末10と通信を行い、乗員の車室外における行動に関する情報を取得する。
車室内の乗員が複数である場合には、各乗員の携帯端末と通信を行って、各乗員の車室外における行動に関する情報を取得する。
【0015】
詳細には、情報取得部100は、乗員の携帯端末10と、Wi-FiやBluetooth等の近距離無線通信を用いて、通信を行う。情報取得部100が携帯端末10と通信を行うのは、車両1のイグニッションキーがオンにされて車両1が起動された時、又は起動されている車両1の車室内に携帯端末10を検知した時である。
携帯端末10は、乗員が所有する、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末等である。
【0016】
情報取得部100は、携帯端末10から車室外における乗員の行動の関する情報、換言すると、車両1に乗車する前の乗員の行動に関する情報を取得する。
ここで、乗員の行動に関する情報は、例えば図3に示すように、少なくとも位置情報を含み、各時刻における位置情報を示す位置情報履歴であってもよい。
【0017】
位置情報は、携帯端末10のGPS(Global Positioning System)機能を用いて取得した、過去に乗員が所在した場所を示す情報であって、緯度・経度で示される。
なお、位置情報は緯度・経度に限らず、例えば各場所の名称又は住所でもよい。
【0018】
乗員の行動に関する情報は、携帯端末10の加速度センサーで取得した、乗員の行動に起因する携帯端末10の加速度を示す加速度情報を含んでもよい。
加速度情報も、各時刻における加速度情報を示す加速度情報履歴であってもよい。
【0019】
推定部200は、情報取得部100で取得した行動に関する情報から特定される場所に基づいて、乗員の疲労度を含む疲労状態を推定する。
詳細には、まず、推定部200は、情報取得部100で取得した、経度・緯度で示される位置情報に基づいて、例えば、車両1に備えられている地図情報データベース(図示せず)を参照して、乗員が所在した場所を特定する。
【0020】
地図情報データベースは、全国及び各地方の道路地図等の地図データ、及び地図上に表示される施設や場所等の名称、住所といった個別の詳細情報を含んでいる。
なお、推定部200は、携帯端末10から取得した位置情報が場所の名称であった場合には、すでに場所が特定されているとして、次の処理に進む。
【0021】
次に、推定部200は、特定した場所の詳細情報に基づいて、乗員の行動の種類を特定し、特定した行動の種類に予め用意されたアルゴリズムを用いて乗員の疲労度を推定する。
例えば、推定部200は、取得した位置情報から「ゴルフ場」を特定すると、乗員の行動は「ゴルフ」であったと特定し、「ゴルフ」をした乗員の疲労度を予め用意されたアルゴリズムで推定する。
また、取得した位置情報から「ショッピングセンター」が特定されると、乗員の行動は「ショッピング」と特定し、「ショッピング」をした乗員の疲労度を予め用意されたアルゴリズムで推定する。
疲労度は、何段階かに分けられたレベルで表わされてもよいし、数値で表されてもよい。
【0022】
推定部200は、取得した位置情報が複数であって、それぞれについて乗員が所在した場所を特定した場合には、複数の場所それぞれについて乗員の疲労度を推定し、決定した疲労度の平均、合計、中間値等を乗員の疲労度と推定する。
【0023】
推定部200は、情報取得部100で取得した行動に関する情報が位置情報履歴である場合に、乗員が所在した場所の所在時間を算出し、疲労度の推定に用いる。
所在時間は、特定した行動の種類をどのくらい行ったかを示す行動量指標であり、疲労度に影響するからである。
例えば、推定部200は、所在時間が長い場合には、行動量は大きいため、行動の種類から推定された疲労度を大きくする。
一方で、所在時間が短い場合には、行動量は小さいため、行動の種類から推定された疲労度を小さくする。
【0024】
また、推定部200は、特定した乗員の行動の種類に基づいて、疲労部位を推定する。
疲労部位の推定は、疲労度の推定と同様に、特定した乗員の行動と予め用意されたアルゴリズムとを用いて行う。
例えば、特定した乗員の行動の種類で主に使われる部位を疲労部位と推定し、乗員の行動の種類が「ゴルフ」の場合には、疲労部位は「足」「腕」と推定される。
【0025】
さらに、推定部200は、情報取得部100で取得した行動に関する情報に加速度情報が含まれる場合には、加速度情報に基づいて、乗員が停止していたか、乗員が歩行しているか、乗員が走行しているかを特定し、乗員の疲労度の推定に用いる。
【0026】
詳細には、まず、推定部200は、加速度情報と、歩行と判断する加速度の下限閾値及び走行と判断する加速度の下限閾値とを比較して、乗員が停止/歩行/走行のいずれであるかを特定する。
そして、推定部200は、停止/歩行/走行に応じて、行動の種類から推定された疲労度を補正する。
乗員が停止/歩行/走行のいずれであるかも、特定した行動の種類における行動量に影響を与えるからである。
具体的には、停止、歩行、走行の順に行動量は大きくなるため、行動の種類から推定された疲労度を停止、歩行、走行の順に大きくする。
【0027】
なお、加速度情報から乗員の歩数を算出し、歩数に応じて、行動の種類から推定された疲労度を補正してもよい。
【0028】
制御部300は、推定部200で推定された結果に基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する。
詳細には、制御部300は、推定部200で推定された疲労度と予め設定されたアルゴリズムに基づいて、後述する空調装置400に空調の温度、風量を指示する。
車室内の複数の乗員の疲労度が推定された場合には、制御部300は、複数の乗員の疲労度の中間値や平均値に基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する。
【0029】
例えば、乗員の疲労度のレベルが高い時には乗員をクールダウンさせるために、制御部300は、空調の温度設定は低く、例えば20℃に設定し、風量は出力可能な最大風量とする。
そして、疲労度のレベルが低くなる程、乗員をクールダウンさせる必要性が低くなるため、制御部300は、空調の温度設定は高く、風量も弱くする制御を行う。
【0030】
制御部300は、推定部200において、疲労部位が推定された場合には、疲労部位に対して風を向ける。
例えば、疲労部位が体の場合には体に、足の場合には足に、風を向ける。
疲労部位が複数ある場合には、例えば、予め設定した順位に基づいて順に風を向ける。
また、制御部300は、疲労部位に対して向ける風を温風とするか冷風とするか疲労度に基づいて決定する。
空調の温度設定と同様に、例えば、疲労度が高い場合には疲労部位を冷やすために冷風とし、疲労度のレベルが低い場合には疲労部位を温めるために温風とする。
【0031】
また、制御部300は、車室内に複数の乗員がいる場合に、車室内に設けられた座席毎に備えられる、後述する空調装置400(400A、400B、400C・・)を個別に制御し、疲労度が低い乗員の空調装置400の温度を制御することにより、車室内の温度が適温となるよう調整する。
詳細には、例えば、制御部300は、車内の乗員それぞれについて推定された疲労度のレベルが異なる場合、疲労度が高いと推定される乗員が座る座席に備えられた空調装置400からは、その乗員の疲労度を軽減するため、低い温度の風が送られるようにする。
また、疲労度がそれほど高くないと推定される乗員が座る座席に備えられた空調装置400からは、風量を弱め、設定温度も低すぎない温度の風を送ることで、車室内全体の温度が適温となるよう調整する。
【0032】
空調装置400は、例えば、エアコンディショナであって、例えば、冷房モード、暖房モード、除湿モード等の運転モードを備え、車室内の温度等を制御する。
また、空調装置400は、制御部300が温度、風量、風向き等のパラメータを制御することに従って、温度、風量及び風向きを制御する。
さらに、座席毎に備えられた空調装置400A、400B、400C・・に対し、制御部300によって乗員毎に制御された、温度、風量、風向き等のパラメータを空調装置400A、400B、400C・・・、に設定する。
より具体的には、制御部300は、例えば、乗員毎の疲労度合いに応じ、温度、風量、風を直接当てたくない部位、風を直接当てたい部位の設定(パラメータ)を空調装置400(400A、400B、400C・・)に設定し、空調装置400を制御する。
【0033】
<車両1の処理>
図2図6を用いて、本実施形態に係る車両1の処理について説明する。
【0034】
図2に示すように、情報取得部100は、乗員の携帯端末10と通信を行い、乗員の行動に関する情報を取得する。
具体的には、図3に示すように滞在開始日時、滞在終了日時、地点名称、地点位置情報、及び図に示さない加速度情報を携帯端末10から乗員の行動に関する情報として取得する(ステップS110)。
【0035】
推定部200は、情報取得部100から取得した乗員の行動に関する情報に基づいて、乗員が乗車前にとどまっていた場所を推定し、乗員の乗車前の行動を推定するその推定された乗員の行動から、乗員の疲労状態を推定する(ステップS120)。
【0036】
詳細には、図4に示すように、推定部200は、乗員が乗車前にとどまっていた位置情報の緯度及び経度情報と地図情報とを基に、とどまっていた場所を特定し(ステップS210)、その滞在場所から想定される乗員の行動を特定する(ステップS220)。
そして、この行動に基づき推定される疲労状態に対して、さらに、乗員から取得した滞在時間や加速度情報に基づき、滞在場所での疲労度、疲労部位、及び歩数等を加味した行動量を加味して推定された疲労状態を補正する(ステップS230)。
そして、さらに、これらの情報を総合して、最終的な乗員の疲労状態を推定する(S240)。
【0037】
制御部300は、推定部200が推定した乗員の疲労状態に基づいて、空調装置400に対する制御を実行して(S130)、室内の温度が適温となるように調整し、空調装置400からの空調を実行する。
【0038】
詳細には、図5に示すように、制御部300は、推定された乗員の疲労度と予め設定されたアルゴリズムとに基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する(ステップS310)。
また、制御部300は、推定された乗員の疲労部位と予め設定されたアルゴリズムとに基づいて、車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する(ステップS320)。
さらに、複数の乗員が車室内に乗車している場合、推定された乗員毎の疲労度合いと予め設定されたアルゴリズムとに基づいて、図6に示すように、車室内において、乗員毎に設置されている個々の空調装置400(400A、400B、400C)の温度、風量を含む空調制御を実行する(ステップS330)。
制御部300は、これらの情報に基づいて、最終的に車室内の空調装置を制御して車室内全体の温度を適温に保つ(ステップS340)。
【0039】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る車両1の情報取得部100は、乗員の携帯端末10から乗車前の乗員の行動に関する情報を取得する。推定部200は、乗員の行動に関する情報から特定される場所に基づいて、乗員の疲労度を含む疲労状態を推定する。制御部300は、推定部200が乗員の疲労状態を推定した結果に基づいて、空調装置400の車室内の空調の温度、風量を含む空調制御を実行する。
つまり、乗員の所有する携帯端末から取得した乗車前の乗員の行動情報から、乗員が乗車前にとどまったことが想定される場所を特定することで、その特定された場所から乗員が取った行動を推定し、それをもとに乗員の疲労状態を推定する。その乗員の疲労状態の推定結果に基づいて、車室内の空調の温度や風量を、推定される疲労状態に見合った適切な空調装置の制御を実行する。
そのため、新たな車載機器を搭載することなく、従来から車両に設置されている車両装置と乗車前の乗員の行動情報とを用いて、車両乗車前の行動による疲労状態を推定した結果に応じた、乗員の疲労状態に見合った適切な車室内空調を実行することとなり、乗員にとって快適な車室内空調を実現することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る車両1の推定部200は、乗員の行動に関する情報から特定される場所に基づいて、乗員の疲労部位を推定する。制御部300は、推定部200が乗員の疲労部位を推定した結果に基づいて、空調装置400の車室内の空調の風向きを含む空調制御を実行する。
つまり、乗員の所有する携帯端末から取得した乗車前の乗員の行動情報から、乗員が乗車前にとどまったことが想定される場所を特定することで、その特定された場所から乗員が取った行動を推定し、それをもとに乗員の疲労部位を推定する。例えば、特定した場所が「ゴルフ場」である場合は、乗員が取った行動を「ゴルフをした」と推定し、「ゴルフをした」場合に主に使われる部位を疲労部位と推定し、疲労部位は「足」「腕」と推定する。その乗員の疲労部位の推定結果に基づいて、車室内の空調の風向きについて、推定される疲労部位を想定した適切な空調装置の制御を実行する。
そのため、新たな車載機器を搭載することなく、従来から車両に設置されている車両装置と乗車前の乗員の行動情報とを用いて、車両乗車前の行動による疲労部位を推定した結果に応じた、乗員の疲労部位に見合った適切な風向きに車室内空調を実行することとなり、乗員にとって疲労部位への回復を促すことができ、快適な車室内空調を実現することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る車両1の車室内に複数の乗員がいる場合に、制御部300は、車室内に設けられた座席毎に備えられた空調装置400を個別に制御し、疲労度の低い乗員の空調装置400の温度を制御する。
つまり、車室内に設けられた座席毎に備えられた空調装置400を個別に制御し、疲労度の低い乗員の空調装置400の温度を制御することで、疲労度の高い乗員の空調装置400の空調温度をさらに低くしたり、風量をさらに強くしたりする個別の制御を実行しつつ、車室内全体の温度も適温となるよう空調装置400の空調制御を実行する。
そのため、車両乗車前の行動による疲労状態を推定した結果に応じた、複数の乗員の個別の乗員の疲労状態に見合った適切な空調制御を実行することができ、疲労度が高い乗員には、疲労度の回復を早めることができるような、空調制御を実行しつつ、車室内全体の空調も調整できることとなり、乗員にとって快適な車室内空調を実現することができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る車両1の情報取得部100は、乗員の携帯端末10から乗車前の乗員の行動に関する情報を取得する。推定部200は、乗員の行動に関する情報から特定される乗員の行動量を加味して、乗員の疲労状態を推定する。
つまり、乗員の所有する携帯端末から取得した乗車前の乗員の行動情報から、乗員が乗車前に取ったと特定される行動量を加味することで、推定部200は乗員のより正確な疲労状態の推定を行い、その結果に基づいて、車室内の空調の温度や風量を、推定される疲労状態に見合った適切な空調装置の制御を実行する。
そのため、車両乗車前の行動によるより正確な疲労状態を推定した結果に応じた、乗員の疲労状態に見合ったさらに適切な車室内空調を実行することとなり、乗員にとってさらに快適な車室内空調を実現することができる。
【0043】
<変形例1>
車両1は、乗員の携帯端末10から取得する乗員の行動に関する情報として、ジャイロセンサーから取得する角速度の情報や、気圧センサーによる気圧情報、気温センサーによる気温情報、磁気センサーによる磁場情報、又は画像センサーによる画像情報といった、携帯端末10に搭載されている種々のセンサーから取得できる情報や、携帯端末10が、ウェアラブルデバイスである場合には、心拍や体温といった生体情報も含めて、乗員の行動に関する情報として取得できる。これらに基づいて推定部200は、乗員の疲労状態を推定し、制御部300は、空調装置400を制御する。
つまり、乗員の行動に関する情報を取得する手段として、乗車前の乗員の位置情報等に限らない情報に基づいて、推定部200は、乗員の疲労状態を推定し、制御部300は、空調装置400を制御することができる。
具体的には、乗車前の乗員の携帯端末10のジャイロセンサーから取得した角速度の情報や、磁気センサーから取得した磁場情報の情報を組み合わせた情報により、通常の行動の情報と比較することで、乗車前の乗員の行動が激しい行動であったかどうかについて、その行動情報の精度をより正確に把握することができ、疲労状態をより正確に推定することができる。
さらに、乗車前の乗員の携帯端末10の気圧センサーから取得した気圧情報や、気温センサーから取得した気温情報の情報や、画像センサーによる画像情報を組み合わせた情報により、乗車前の乗員がとどまっていた場所の環境を、より正確に把握することができる。例えば、暑い中で行動していた場合や、気圧の低い山間部で行動していた場合も推定することができ、それらを加味したより正確な疲労状態を推定することができる。
さらに、携帯端末10が、ウェアラブルデバイスである場合には、乗員の乗車前の心拍や体温といった生体情報を、乗員の行動量に加味することができ、より正確な疲労状態を推定することができる。
このように、新たな車載機器を搭載することなく、既存の携帯端末に備わっている、種々の機能を用いて、乗員の直接的なバイタル情報や、周囲の環境情報等に基づいて、乗員の疲労状態をより正確に推定することにより、多様な情報に基づいて空調設備を制御することにつながり、結果として、乗員にとってより快適な車室内空調を実現することができる。
【0044】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0045】
なお、推定部200、制御部300等の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを推定部200、制御部300等に読み込ませ、実行することによって本発明の車両1を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0046】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0047】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1;車両
10;携帯端末
100;情報取得部
200;推定部
300;制御部
400;空調装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6