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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048310
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240401BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20240401BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 5/00 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/02 B
C12M1/04
C12N5/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022165856
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】300041701
【氏名又は名称】株式会社ブラスト
(71)【出願人】
【識別番号】500268524
【氏名又は名称】下崎 勇生
(72)【発明者】
【氏名】下崎 勇生
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029DB17
4B029DD06
4B065AA90X
4B065BC03
4B065BC06
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞を培養する装置において、窒素ガスを使わず低酸素状態にできる方法を提供する。
【解決手段】発熱手段を有して細胞を育成する培養チャンバー3であって、蓋が開閉するリザーバータンク2を備え、リザーバータンクには脱酸素剤1を投入し、培養チャンバーとリザーバータンクには内部の気体の出入口をそれぞれ二つ設け、リザーバータンクの出入口には電気的に開閉動作する開閉弁4、5を設け、ガスチューブ8、9で開閉弁から培養チャンバーの出入口へと接続し、チューブのいずれかの中間に気体を循環させるポンプ11を設けた、装置。前項の細胞培養装置に設けた二つの開閉弁4、5のうち一つは三方弁4であって、もう一つの開閉弁5と培養チャンバーを接続するチューブ8との中間にT字継手12を設け、三方弁は培養チャンバー側チューブからのガスをリザーバータンクまたはT字継手のどちらかを選択する方向へ開閉する向きで接続した、装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱手段を有して細胞を育成する培養チャンバーであって、蓋が開閉するリザーバータンクを備え、リザーバータンクには脱酸素剤を投入し、培養チャンバーとリザーバータンクには内部の気体の出入口をそれぞれ二つ設け、リザーバータンクの出入口には電気的に開閉動作する開閉弁を設け、ガスを流すチューブで開閉弁から培養チャンバーの出入口へと接続し、チューブのいずれかの中間に気体を循環させるポンプを設けることを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
前項の細胞培養装置に設けた二つの開閉弁のうち一つは三方弁であって、もう一つの開閉弁と培養チャンバーを接続するチューブとの中間にT字継手を設け、三方弁は培養チャンバー側チューブからのガスをリザーバータンクまたはT字継手のどちらかを選択する方向へ開閉する向きで接続したことを特徴とする細胞培養装置。
【請求項3】
前項にあって三方弁と培養チャンバーとを接続するチューブの中間にT字継手を二つ設け、それぞれに開閉弁を設け、うち一つは大気と繋がり、もう一つはボンベに接続し、ボンベには二酸化炭素を充填し、チューブのいずれかの間に酸素センサとニ酸化炭素センサを設け、酸素および二酸化炭素の濃度を検出して制御手段へ送信し、制御手段は濃度が予め設定された値に収まるよう各開閉弁または三方弁を動作させることを特徴とする細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を培養する装置に関するものである
【背景技術】
【0002】
生命科学、再生医療等の医療や研究分野において細胞を培養する装置として特許文献1がある。温度、二酸化炭素および酸素を一定に制御して体内に近似した環境を擁するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-124703号公報
【0004】
温度は熱源を用いて体温に近似する値に保温することで比較的容易に実施できる。二酸化炭素は一般的に5%に維持されるが、標準大気においてほぼ0%のため、ボンベに充填した二酸化炭素ガスを大気と混合させることで実施できる。一方で酸素については標準大気では20.9%であるが体内では酸素濃度が低いので、同様の低酸素状態にするには閉鎖空間で仕切られて内部に細胞を設置するチャンバーへ窒素ガスを充満し、酸素を庫外へ追い出して低酸素状態にする方法がとられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の方法では酸素濃度を低下させるために窒素ガスを常時流す必要があり、消耗が早くてランニングコストが高額となる。窒素ガスは高圧ボンベに充填されるが、大量に必要となるため大型のボンベとなり、ボンベの設置や管理に手間がかかる。
【0006】
また鉄が酸化する際に酸素を吸着する化学的性質を利用した脱酸素剤があり、脱酸素剤を袋に入れて内部の酸素濃度を下げる方法があるが、手動で袋を開け閉めして大気と混合させて濃度を調整するので精密かつ長期的に調節することが困難であった。
【0007】
本発明はこれらのような課題を解決するものであり、その目的は小型で簡便に酸素濃度を調節できる培養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成させるため、本装置は脱酸素剤を密閉するリザーバータンクと細胞を育てる培養チャンバーを備えた細胞培養装置であって、リザーバータンクに設けたガスが出入りする二つの出入口には三方弁と開閉弁を一つずつ設け、それぞれにチューブを設けて培養チャンバーのガスの出入口に接続し、開閉弁と培養チャンバーを接続するチューブの中間にはガスを培養チャンバーへ流す循環ポンプを設け、循環ポンプと開閉弁の間にチューブを分岐するT字継手を設け、三方弁は培養チャンバーからの流れをリザーバータンクまたはT字継手のどちらか選択して開閉する方向に配置した細胞培養装置であって、培養チャンバーと三方弁を接続するチューブの中間にガスを分岐させるT字継手をさらに二つ設け、それぞれの先に開閉弁を設け、そのうち一つの開閉弁は大気と通じ、もう一つの開閉弁には二酸化炭素が充填されたボンベを接続し、ガス濃度を検出する酸素センサと二酸化炭素センサをチューブのいずれかの中間に設け、各センサで検出された濃度を予め設定された値になるよう各開閉弁と三方弁を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
リザーバータンク内を低酸素状態として大気を混合させて所定の酸素状態に低下したガスを培養チャンバーに送ることで、窒素ガスを使わず安価で簡便に低酸素での培養が可能になる。またリザーバータンクを閉鎖してガスの流れを短絡することで酸素制御と独立した空間で二酸化炭素のみの濃度を調整させることが可能になり、2種類のガス濃度を個別に調節することが容易である。さらに培養液の交換作業等のため培養チャンバーの蓋を開けた際に低酸素ガスが大気へ放出されて酸素濃度が一時的に上昇しても、リザーバータンクに低酸素ガスが待機しているので、再び培養チャンバーを閉めて再稼働させた際に速やかに所定の濃度に復帰できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】「本発明の動作開始前の状態を示した図である。」
図2】「本発明の酸素とニ酸化炭素の濃度を設定値に到達させる状態を示した図である。」
図3】「本発明の二酸化炭素濃度のみを調節する状態を示した図である。」
図4】「本発明の酸素濃度のみを調節する状態を示した図である。」
図5】「本発明の内部のガスを大気へ排出する状態を示した図である。」
図6】「本発明の制御に適用する回路を示した図である。」
図7】「本発明の濃度調節のフローチャートである。」
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における最良の形態を示す。
(イ)蓋が開閉するリザーバータンク2にガスの出入口を二つ設けてそれぞれに電気信号で開閉する三方弁4と開閉弁5を設け、培養チャンバー3はチューブ8で開閉弁5に接続し、チューブ9で三方弁4に接続し、チューブ8の中間にはリザーバータンク2から培養チャンバー3へガスを送る向きに循環ポンプ11を設ける。
(ロ)循環ポンプ11と開閉弁5の間にT字継手12を設け、三方弁4とT字継手12はチューブ10を介して接続し、三方弁4は培養チャンバー3から流れるガスをT字継手12またはリザーバータンクのいずれかを選択して開閉する方向に接続する。
(ハ)チューブ9の中間にT字継手13、14を設け、それぞれに開閉弁6、7を設け、開閉弁6には二酸化炭素を充填させたボンベ17を接続し、開閉弁7は大気へ通じるよう接続する。
(ニ)チューブ9に酸素センサ15および二酸化炭素センサ16を設け、センサからの電気信号を受けて三方弁4と開閉弁5~7を動作させる制御器18を設ける。
本発明は以上の様な構造で、使用する際は次のようにする。
【0012】
リザーバータンク2に脱酸素剤1を入れて閉じ、培養チャンバー3には細胞が播種された汎用容器を設置して蓋を閉じる。直ぐにリザーバータンク内は低酸素状態になるが、当初は図1のように開閉弁5、6、7が閉じていてボンベ17および大気から遮断され、三方弁4はT字継手12の方向へ開放してリザーバータンクも閉鎖されている状態である。
【0013】
電源を投入すると図2のように開閉弁5が開放して三方弁4がリザーバータンクの方向へ開放し、リザーバータンク2の内部において脱酸素剤の酸化反応により低酸素の雰囲気になったガスが循環ポンプ11によって培養チャンバーへと送り出され、リザーバータンク2との間を循環する。なお脱酸素剤1の酸化反応によって熱も生じるためリザーバータンク2は耐熱素材を用いると良い。
【0014】
同時に開閉弁6も開放し、ボンベ17に蓄圧された二酸化炭素がチューブ9に流入して濃度を上昇させ、リザーバータンク2を経て培養チャンバー3との間を循環ポンプ11によって循環する。
【0015】
図6のように酸素センサ15で検出された濃度によって制御器18aは三方弁4と開閉弁5の開閉を制御し、二酸化炭素センサ16で検出された濃度によって制御器18bは開閉弁6を制御する。開閉弁7は制御器18a、18bともに共通で開放動作させるが、制御器18で上記の制御を賄うことでも良い。なお、酸素センサ15と二酸化炭素センサ16は培養チャンバー3からガスが出る直後のチューブに設けることで、検出された濃度の値が培養チャンバー3のガス濃度に近似していることを担保する。
【0016】
酸素センサ15で検出した酸素濃度が設定値に達したら図3のように制御器18aが開閉弁5を閉鎖しかつ三方弁4がT字継手12の方向へ開放して循環ポンプ11へと短絡し、リザーバータンク2内部の低酸素状態のガスがそれ以上流入せず濃度を維持する。このとき開閉弁13を開放し続けることにより二酸化炭素の濃度だけ上昇させられる。
【0017】
リザーバータンク2は与圧機能を持たないので脱酸素剤1の化学的な反応で発生した低酸素ガスを循環ポンプ11によって培養チャンバーへ流入させるが、濃度維持のため流入を止めるときは出入口のどちらか閉鎖するだけでもう片方が開放していると徐々に低酸素ガスがリザーバータンク2から流れ出て培養チャンバー3の酸素濃度を維持できない。かといって循環ポンプ11を停止させると二酸化炭素の濃度を調整するための循環も停止してしまう。この三方弁4と開閉弁5を設けることでリザーバータンクの低酸素ガスを遮断してガスの循環から短絡でき、小型かつ簡素な構造で酸素を低濃度で維持させ、かつ二酸化炭素の濃度を調節することが可能になる。なお開閉弁5はリザーバータンク2から培養チャンバー2へ向かう方向にのみ流れる逆止弁を用いても良い。
【0018】
二酸化炭素センサ16で検出した二酸化炭素濃度が設定値に達したら図4のように制御器18bが開閉弁6を閉鎖してボンベ17の二酸化炭素がそれ以上流入せず濃度を維持する。このとき開閉弁5を開放して三方弁4をリザーバータンク2へ開放することで、酸素濃度だけ低下させることが可能である。
【0019】
混合されたガスの濃度が酸素および二酸化炭素ともども設定値に達した場合、三方弁4および開閉弁5~7は動作を停止して図1の初期状態となる。三方弁4がT字継手12の方向へ開放して循環ポンプ11へと短絡し、かつ開閉弁5が閉鎖してリザーバータンク2を閉鎖して低酸素状態のガスはチューブに流入せず、同時に開閉弁13が閉鎖して二酸化炭素も放出されず、また開閉弁14が閉鎖して大気と遮断される。
【0020】
図1では培養チャンバー3はガスの流入または大気から完全に独立した閉鎖空間となり、2種類のガスが循環することで混合されて培養に適した濃度を維持する。このとき循環ポンプは循環し続けても良いが、停止することでガスの漏れを最小限に抑制できる。または停止と循環を間欠的に繰り返すことでガスの漏れを最低限に抑えかつ定期的に拡散して濃度の均一化を図ることができる。
【0021】
ガスは三方弁および開閉弁の動作の遅れ応答により過剰に流入して濃度が設定値を逸脱する場合がある。図5のように酸素濃度が下がり過ぎた場合または二酸化炭素濃度が上がり過ぎた場合は制御器18a、18bあるいは両方を兼ねた18が開閉弁14を開放して大気と通じて内部のガスを排気して濃度を調節する。
【0022】
このとき酸素と二酸化炭素の両方のガスが排気されるが、片方が設定値に復帰してももう片方が超過した場合は図3または図4のようにそれぞれ個別に濃度を調節する。
【0023】
また時間の経過とともにガスがわずかながら漏れて濃度が不足してくる。その際は図7のフローチャートに沿って酸素と二酸化炭素の濃度を[0013]~[0021]のように並列的に再調整する。
【0024】
培養チャンバー2には逆止弁を設けてチューブと接続することで、チューブを外した状態でも内部のガスを滞留させ、一時的に運搬または移動に供することもできる。
【0025】
温度については培養チャンバー2に備えた熱源19により保温される。熱源は別途温度センサを貼付して熱源用の調節器にて設定温度に維持されることでも良い。
【符号の説明】
【0026】
1 脱酸素剤
2 リザーバータンク
3 培養チャンバー
4 三方弁
5、6、7 開閉弁
8、9、10 チューブ
11 循環ポンプ
12、13、14 T字継手
15 酸素センサ
16 二酸化炭素センサ
17 ボンベ
18 制御器
18a 制御器1
18b 制御器2
19 熱源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7