(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048322
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】粘着性ハイドロゲル、積層体、及び医療用外用材
(51)【国際特許分類】
A61L 15/24 20060101AFI20240401BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20240401BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61L15/24 110
A61L15/42 110
C08F220/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007244
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2022153621
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前山 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】菊池 秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 快
【テーマコード(参考)】
4C081
4J100
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BB04
4C081CA10
4C081DA12
4C081DC02
4J100AM17P
4J100AM19Q
4J100AM24R
4J100CA05
4J100CA23
4J100DA37
4J100DA44
4J100EA03
4J100JA51
(57)【要約】
【課題】使用時には皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有すると共に、使用後の剥離時には皮膚表面を損傷しない程度の剥離容易性を示す粘着性ハイドロゲルを提供すること。
【解決手段】高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の共重合体からなる粘着性ハイドロゲル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の共重合体からなる粘着性ハイドロゲル。
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R
3は炭素数2~5の炭化水素基である)
【請求項2】
前記(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体が、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)クリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピル(メア多)アクリルアミド、及びN-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドから成る群から選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項3】
前記(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体が、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、又はアルキルアミノ(メタ)アクリルアミドを含む請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項4】
JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する粘着力を初期粘着力とし、60℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項5】
0.1~10mmの厚みを有するシートである請求項4に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項6】
支持体と、支持体の少なくとも片面に設けられた請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルとを備えた医療用外用材。
【請求項7】
(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
【化2】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R
3は炭素数2~5の炭化水素基である)
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルからなる第1層と、
高分子マトリックス、水、多価アルコールを含み、前記高分子マトリックスを構成する単量体が、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を含まないか、又は前記第1層に含まれるよりも少ない量で含む、粘着性ハイドロゲルからなる第2層とを備えた積層体。
【化3】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R
3は炭素数2~5の炭化水素基である)
【請求項9】
請求項8に記載の積層体と、請求項8に記載の積層体の第2層の上に積層された支持体とを備えた医療用外用材。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルを備えた生体用電極。
【請求項11】
請求項8に記載の積層体を備えた生体用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性ハイドロゲル、積層体、及び医療用外用材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用テープには、皮膚接着面からの脱落を防ぐために必要な粘着力を有し、かつ使用後の剥離時に皮膚表面(角質層)を損傷しない程度の剥離容易性を有することが望まれている。以前より、医療現場において、高齢者を中心とするテープ剥離によるスキン-テア(skin tear:皮膚裂傷)が問題となっており、超高齢社会のわが国ではこの問題解決の重要性は高くなっている。
【0003】
皮膚に優しい医療用テープとして、患部の同じ場所に毎日貼付と剥離を繰り返して使用しても皮膚表面の角質層を傷め難い油性ゲル粘着剤を用いたものが開発、市販されている。油性ゲル粘着剤とは、架橋ポリマーネットワーク中に油性の液状成分を含有させてゲル状にした粘着剤のことであり、皮膚に対する密着性が良好で、貼付直後から皮膚の凹凸に馴染んで大きい接触面積が得られるという特徴がある。例えば特許文献1は、アクリル系重合体100重量部と、この重合体と相溶する室温で液状ないしはペースト状の成分が30~100重量部からなる粘着剤組成物であって、この液状ないしはペースト状の成分が、炭素数8~18の一塩基酸ないしは多塩基酸と炭素数が14~18の分岐アルコールのエステル及び/又は炭素数が14~18の不飽和脂肪酸ないしは分岐酸と4価以下のアルコール のエステルからなり、且つ上記アクリル系重合体の4 ~80質量%が架橋により不溶化されていることを特徴とする医療用粘着剤について開示している。このような油性ゲル粘着剤は、貼付直後から必要かつ十分な粘着力を発現できて、かつ経時的な粘着力の増加を低く抑えることが可能となるために、角質層の損傷度合いを非常に低く抑えることができる。
【0004】
油性ゲル粘着剤に対して、水性ゲル粘着剤(粘着性ハイドロゲルともいう)も、皮膚に対して低刺激性で、人肌に優しい素材であり、生体に貼付する心電図用電極や創傷被覆剤等の幅広い分野で利用されている。
【0005】
例えば特許文献2は、非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水 、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルであって、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体が、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15~15重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルについて開示している。しかしながら、このようなゲルをもってしても、使用後の剥離時において剥離が容易ではない場合があった。
【0006】
特許文献3は、シート状基体の少なくとも一面に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤に、粘度平均分子量が250~1000のN-モノ又はジ-C2-C4アルキル置換アクリルアミドのマクロモノマーを含有させたことを特徴とする粘着組成物よりなる粘着層を設けたことを特徴とする温水剥離型粘着シートについて開示している。このシートは剥離するときに温水を粘着層に接触させる必要がある。
【0007】
特許文献4は、親水性高分子とアクリルアミド系高分子のマトリクス中に多価アルコールと水を含有してなり、親水性高分子とアクリルアミド系高分子との質量比が1:1~1:10であり、かつ、多価アルコールと、親水性高分子及びアクリルアミド系高分子と、の質量比が2:1~6:1である粘着性ゲルについて開示している。この粘着性ゲルは、親水性高分子とアクリルアミド系高分子との質量比及び多価アルコールと、親水性高分子及びアクリルアミド系高分子との質量比を一定比にすることで、含水量が低下した場合にも柔軟性を維持して皮膚に刺激を与えることなく剥離できるゲルとしている。
【0008】
特許文献5は、重合性単量体と架橋性単量体を共重合させた高分子マトリックス内に、4000~15000000の重量平均分子量の非架橋の水溶性高分子と水とが保持された粘着性ゲルであり、水溶性高分子が、ゲル中に0.1~5.0質量%含まれ、ゲルが、1.96~19.6Nの12mmφのステンレスに対する粘着力と、0.196~1.96N/0.02mの二軸延伸ポリエステルフィルムに対する90度剥離強度を有することを特徴とする粘着性ゲルについて開示している。この粘着性ゲルは、ゲル中に水溶性高分子を一定量含有させることで、剥離強度を弱くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-319793
【特許文献2】特開2007-112972
【特許文献3】特開2006-241264
【特許文献4】特開2012-107120
【特許文献5】特開2003-96431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決すべき課題は、使用時には皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有すると共に、使用後の剥離時には皮膚表面を損傷しない程度の剥離容易性を示す粘着性ハイドロゲルを提供すること、並びにこれを備えた及び医療用外用材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の共重合体からなる粘着性ハイドロゲル。
【0012】
【0013】
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R3は炭素数2~5の炭化水素基である)
項2.前記(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体が、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)クリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピル(メア多)アクリルアミド、及びN-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドから成る群から選択される1種又は2種以上である項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
項3.前記(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体が、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、又はアルキルアミノ(メタ)アクリルアミドを含む項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
項4.JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する粘着力を初期粘着力とし、60℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
項5.0.1~10mmの厚みを有するシートである項4に記載の粘着性ハイドロゲル。
項6.支持体と、支持体の少なくとも片面に設けられた項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルとを備えた医療用外用材。
項7.(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
【0014】
【0015】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R
3は炭素数2~5の炭化水素基である)
項8.
項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルからなる第1層と、
高分子マトリックス、水、多価アルコールを含み、前記高分子マトリックスを構成する単量体が、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を含まないか、又は前記第1層に含まれるよりも少ない量で含む、粘着性ハイドロゲルからなる第2層とを備えた積層体。
【化3】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R
3は炭素数2~5の炭化水素基である)
項9.
項8に記載の積層体と、請求項8に記載の積層体の第2層の上に積層された支持体とを備えた医療用外用材。
項10.
項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルを備えた生体用電極。
項11.
項8に記載の積層体を備えた生体用電極。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粘着性ハイドロゲル及び医療用外用材を、皮膚表面に十分に粘着した状態で使用することができると共に、皮膚表面を損傷しないよう容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】皮膚に貼付された別の医療用外用材の略断面図。
【
図3】ハイドロゲルの加温前と加温後の粘着性の変化を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を指す。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを指す。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを指す。
【0019】
本明細書において、「シート」は、200μm以上の厚さの層状体を指し、「フィルム」は200μm未満の厚さの層状体を指す。
【0020】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0021】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
粘着性ハイドロゲル
本発明の一態様によれば、高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、高分子マトリックスが、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の共重合体からなる粘着性ハイドロゲルが提供される。
【0023】
【0024】
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R3は炭素数2~5の炭化水素基である)
まず、高分子マトリックスを構成する単量体について説明する。高分子マトリックスは、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とが重合及び架橋することにより形成される。
【0025】
式(I)において、R3の飽和炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、又は環状であってよい。このようなものとして、例えばエチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
【0026】
特定の実施形態において、式(1)中、R1は水素原子であり、R2は水素原子であり、R3は炭素数2~5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0027】
特定の実施形態において、式(1)中、R1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3は炭素数2~5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0028】
(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、及びN-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。これらの(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体は、1種又は2種以上使用することができる。
【0029】
(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体としては、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外のアクリルアミド誘導体、分子内に重合性を有する炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体、水溶性単量体などが挙げられる。
【0030】
式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外のアクリルアミド誘導体の具体例としては、例えば、式(I)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R3は水素原子又はメチル基であるアクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0031】
より具体的には、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
上記に列挙した以外のN,N-ジアルキルアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドも、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外のアクリルアミド誘導体に含まれる。
【0033】
分子内に重合性を有する炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体としては、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどのビニルアミド誘導体、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリル酸エステル、水溶性単量体、ポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。なお、分子内に重合性を有する炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体は、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外のアクリルアミド誘導体を除く。
【0034】
水溶性単量体としては、ビニルアルコール、アリルアルコール、イソプレノール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の炭素数2~8のエチレン性不飽和基を有するアルコール;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸等の炭素数2~8のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物又はカルボン酸無水物;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等の炭素数2~8のエチレン性不飽和基を有するスルホン酸化合物;ビニルリン酸、アリルリン酸等の炭素数2~8のエチレン性不飽和基を有するリン酸化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の炭素数2~8のエチレン性不飽和基と水酸基を有するリン酸化合物;ビニルアミン、アリルアミン;メルカプタン基含有不飽和単量体等のエチレン性不飽和基と親水性基並びに/又はその塩とを有する水溶性単量体などが挙げられる。
【0035】
(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体は、1種又は2種以上使用することができる。なお、成分(B)は、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能性単量体であるものを除く。
【0036】
(C)エチレン性不飽和基を有する多官能性単量体は、分子内に重合性を有する炭素-炭素二重結合を2以上有する単量体であれば特に限定されない。エチレン性不飽和基を有する多官能性単量体の具体例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチリロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの架橋性単量体は、1種又は2種以上使用することが可能である。
【0037】
粘着性ハイドロゲル中の高分子マトリックスの量は、10~40質量部であることが好ましく、15~35質量部であることがより好ましい。言い換えると、高分子マトリックスは、ハイドロゲル100質量部中に、10~40質量部含まれることが好ましく、15~35質量部含まれることがより好ましい。
【0038】
粘着性ハイドロゲルに添加する(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の配合比は特に限定されず、例えば質量比で99:1~1:99又は90:10~10:90などであってよい。同様に、粘着性ハイドロゲル中の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体由来の構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体由来の構造単位の比は特に限定されず、例えば質量比で99:1~1:99又は90:10~10:90などであってよい。
【0039】
(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の添加量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部であることが好ましい。粘着性ハイドロゲルの形状安定性をもたせるために、架橋性単量体は(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、また粘着力を維持できる程度の柔軟性を粘着性ハイドロゲルに与えるために、架橋性単量体は(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して0.5質量部以下が好ましい。
【0040】
同様に、粘着性ハイドロゲル中の(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体に由来する構造単位の含有量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部であることが好ましい。
【0041】
特定の実施形態では、粘着性ハイドロゲル中の高分子マトリックスの量が、10~40質量部であり、かつ、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対する(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の添加量は、0.01~0.5質量部である。(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対する(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の添加量の代わりに、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対する(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体に由来する構造単位の含有量としてもよい。このような構成は、皮膚に対する粘着性ハイドロゲルの粘着性が優れている。
【0042】
発明者らは、熱刺激により機能を発現する材料として温度感受性高分子に着目した。温度感受性高分子は、ある温度(この温度を一般に、下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature, LCST)という)を境に高分子鎖の性質が大きく変わり、この分子レベルの変化がマクロな状態変化、たとえば、体積変化やゲルが不透明になるといった変化、を引き起こす材料のことである。
【0043】
高分子マトリックス中に、重合すると温度感受性高分子を構成する(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を含ませることで、高分子マトリックス及びこれを含有する粘着性ゲルの温度感受性を発現させる。また、高分子マトリックス中に(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体を加えて共重合することで、高分子マトリックス及びこれを含有する粘着性ゲルの温度感受性の発現温度を制御することができる。各(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体のポリマーのLCSTは公知であるため、当業者は(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の種類及び含有量を変更することで、所望の温度で相転移が生じる高分子マトリックス及びこれを含有する粘着性ゲルを作製することができる。
【0044】
粘着性ハイドロゲルに含まれる水の含有量は、ゲルが周りの環境により吸湿したり、乾燥したりすることで経時的に物性の変化、特に膨潤や収縮を防ぐために、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して50~300質量部が好ましく、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体の易溶解性、また水分のブリードや乾燥による変化を抑制するために、75~150質量部がより好ましい。
【0045】
同様に、粘着性ハイドロゲル中の水の含有量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、50~300質量部が好ましく、75~150質量部がより好ましい。粘着性ハイドロゲルが水を含有することにより、導電性が付与される。
【0046】
多価アルコールは粘着性ハイドロゲルに保水性を付与する。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ぺンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変性体等が使用可能である。これら多価アルコールは、1種又は2種以上使用することが可能である。これら多価アルコールの中で、ハイドロゲルを実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20°C前後)で液状の多価アルコールを使用することが好ましい。このような好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等が挙げられる。
【0047】
多価アルコールの含有量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して150~350質量部であることが好ましく、200~300質量部であることがより好ましい。多価アルコールの添加量が150~350質量部の場合は、得られたゲル体の乾燥による物性変化が小さく、高い粘着力が得られるため好ましい。
【0048】
同様に、粘着性ハイドロゲル中の多価アルコールの含有量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して150~350質量部であることが好ましく、200~300質量部であることがより好ましい。
【0049】
本発明の一態様の粘着性ハイドロゲルは、高分子マトリックス、水、多価アルコールを含み、かつ高分子マトリックスが、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)前記式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の共重合体からなることにより、加温前の状態、例えば室温では皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有すると共に、加温すると粘着力が低下し、皮膚表面を損傷しない程度の剥離容易性を示す。
【0050】
このため、粘着性ハイドロゲルは、使用時は皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有し、使用後、剥離前に加熱することにより粘着性ハイドロゲルの粘着力を低下させ、剥離時には皮膚表面を損傷しない程度の剥離容易性を示すように作用し得る。
【0051】
粘着性ハイドロゲルは、高分子マトリックスが(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位を有するため、加温前の状態、例えば室温などの高分子マトリックスの下限臨界溶解温度(LCST)以下の温度では、アミド基と水の相互作用により、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体は水和しているが、加温して高分子マトリックスの下限臨界溶解温度(LCST)を超えると、脱水和が起こり、高分子マトリックスが相転移を起こし、収縮して凝集する。この相転移減少は可逆的であり、粘着性ハイドロゲルを冷却すると、高分子マトリックスは水和状態に戻る。
【0052】
本発明が特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、粘着性ハイドロゲルを加温すると、高分子マトリックスの脱水和が起こり粘着性ハイドロゲルから水が漏出すること、及び高分子マトリックスが凝集して皮膚との接触面積が低下することの理由から、本態様の粘着性ゲルでは、加温により粘着力が劇的に低下すると本願出願人は考えている。なお、この理論に完全には従わずに製造された粘着性ハイドロゲルであっても、本発明で規定する要件を満足するのであれば本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
粘着性ハイドロゲルは、さらに電解質を含有してもよい。粘着性ハイドロゲルに電解質を添加することにより導電性のゲルが得られる。また、粘着力制御温度の調整が可能となる。例えば、導電性のゲルの用途が心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極である場合は、導電性のゲルの比抵抗が0.1~10kΩ・cmであることが好ましい。
【0054】
電解質としては特に限定されず、例えば、ハロゲン化ナトリウム(例えば塩化ナトリウム)、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属;ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属;その他の金属ハロゲン化物等が挙げられる。また、電解質として、各種金属の、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、燐酸塩も好適である。また、電解質として、アンモニウム塩、各種錯塩等の無機塩類;酢酸、安息香酸、乳酸等の一価有機カルボン酸の塩;酒石酸等の多価有機カルボン酸の塩;フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩;スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩;有機アンモニウム塩も好適である。
【0055】
電解質の含有量は、電極として使用する場合には低インピーダンス化することが必要である。その際、電解質は、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計量100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましい。また、添加する電解質を均一に配合液中に溶解させるには10質量部以下であることが好ましい。より好ましい含有量は、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計量100質量部に対して0.1~8質量部である。
【0056】
粘着性ハイドロゲルには、pHを調整する目的で水酸化ナトリウム等の塩基を適宜添加してもよい。粘着性ハイドロゲルのpHは特に限定されないが、3.0~7.5であることが好ましい。
【0057】
粘着性ハイドロゲルは、任意選択で、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ビニルピロリドンの単独重合体であるポリビニルピロリドン;ビニルアルコールとビニルピロリドンの共重合体、エーテル変性されたビニルアルコールとビニルピロリドンの共重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体等のビニルピロリドン共重合体;ポリビニルアルコール、アクリル酸の単独重合体であるポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸とメタクリル酸の共重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、デキストラン等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、いずれか一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
水溶性高分子の中でも、特に、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸とメタクリル酸の共重合体は、上記ハイドロゲルに粘着性を付与する効果に優れる。
粘着性ハイドロゲルに水溶性高分子を含有させる場合の含有量(2種類以上を含有させる場合はその合計量)は、ハイドロゲルの全量100質量%に対して、0.1~5質量%の範囲内であることが好ましい。ハイドロゲルにおける水溶性高分子の含有量が多過ぎると、系全体の粘性の上昇によりハンドリングが困難になるばかりでなく、添加量に見合った効果が得られなくなるため、5質量%以下が好ましい。
【0059】
粘着性ハイドロゲルは、任意選択で、粘着力を増強することを目的として、粘着性を有する水不溶性高分子を含有してもよい。粘着性を有する水不溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリルエステル、酢酸ビニル、マレイン酸エステル等の疎水性モノマーの単独又は複数を重合させたものが挙げられる。具体的には、粘着性を有する水不溶性高分子は、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、マレイン酸ジオクチル等の疎水性モノマーの単独もしくは共重合体である。前記以外にエチレン、プロピレン、ブチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の疎水性モノマーのいずれか一つが単重合されるか、又は、該疎水性モノマーの複数がさらに共重合されていても良い。また、シリコーン粘着剤や天然ゴム系や合成ゴム系の粘着剤を使用することも可能である。これらの中で、(メタ)アクリルエステル共重合体は、粘着であることから好適に使用される。
【0060】
粘着性を有する水不溶性高分子をハイドロゲル中に分散させるためには、前記水不溶性高分子を乳化分散させたエマルジョンを使用することが好ましい。通常、前記エマルジョンの固形分は30~60重量%であり、残りの大部分は水である。
【0061】
粘着性ハイドロゲルは、任意選択で、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、防腐剤、殺菌剤、防徴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)等が挙けられる。
【0062】
一実施形態において、本発明の粘着性ハイドロゲルは、非イオン性重合性単官能単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルを含まない。或いは、本発明の粘着性ハイドロゲルは、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルを含まない。
【0063】
粘着性ハイドロゲルの厚みは、特に限定されるものではないが、0.1~10mmの厚みを有するシート状であってもよい。厚みは0.3~5.0mmとすることがより好ましい。このような0.1~10mmの厚みを有するシート状の粘着性ハイドロゲルは、柔軟性に優れると共に、生体皮膚表面への追従性に優れる。
【0064】
本明細書において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力及び60℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力は、実施例に記載した測定方法に従って測定される。
【0065】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力は、0.8N/20mm以上である。このため、使用時に粘着性ハイドロゲルは皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、60℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下である。
【0067】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、60℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下である。
【0069】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、50℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0071】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、50℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0073】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、45℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0075】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、45℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0077】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、40℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0079】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、40℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記粘着性ハイドロゲルの引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0081】
このような構成を有する粘着性ハイドロゲルは、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0082】
粘着性ハイドロゲルの製造方法
次に、上記粘着性ハイドロゲルの製造方法について説明する。
粘着性ハイドロゲルは、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体と、多価アルコールと、水とを含む粘着性ハイドロゲル製造用組成物を用い、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とを重合させることによって容易に製造することができる。粘着性ハイドロゲル製造用組成物は、任意選択で、上述電解質、上記塩基、上記各種の添加物を含んでもよい。
【0083】
この製造方法で粘着性ハイドロゲルを製造する場合、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中における(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体以外の成分(例えば、多価アルコール、水)の含有量は、粘着性ハイドロゲルにおける(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体以外の成分の含有量に等しい。
【0084】
粘着性ハイドロゲル製造用組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤としては、特に限定されず、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられる。
【0085】
光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられ、より具体的には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)1173、IGMResinsB.V.社製)、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル―プロパン-1-オン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)127、IGMResinsB.V.社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)2959、IGMResinsB.V.社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)1173、IGMResinsB.V.社)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)184、IGMResinsB.V.社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)907、IGMResinsB.V.社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン(例えば、製品名:Omnirad(登録商標)369、IGMResinsB.V.社製)、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}(例えば、エザキュア(登録商標)KIP150、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
熱重合開始剤としては、熱により開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2、2-アゾビスアミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ化合物等が挙げられる。また、任意選択で、硫酸第1鉄やピロ亜硫酸塩等の還元剤と過酸化水素やチオ硫酸ナトリウム等の過酸化物とからなるレドックス開始剤を熱重合開始剤と併用してもよい。
【0087】
本発明の粘着性ハイドロゲル製造用組成物における重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、また、1質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量が、(A式(I)で表される)N置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対して、0.01質量部未満であると、重合反応が十分に進まず、得られる粘着性ハイドロゲル中に、単官能単量体及び/又は多官能単量体が残存することがある。また、重合開始剤の含有量が、粘着性ハイドロゲル製造用組成物100質量部に対して、1質量部を超えると、重合反応後の重合開始剤の残物により、得られる粘着性ハイドロゲルが変色(黄変)したり、臭気を帯びたりすることがある。
【0088】
上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物を重合して粘着性ハイドロゲルを製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物に対して加熱、光照射、又は放射線照射を行う方法等が挙げられる。具体的には、重合開始剤として熱重合開始剤を含有する上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物に、加熱により、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の(A)式(I)で表される粘着性ハイドロゲル製造用組成物中のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とを重合させる方法;重合開始剤として光重合開始剤を含有する粘着性ハイドロゲル製造用組成物に、光照射(例えば紫外線又は可視光線照射)により、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とを重合させる方法;重合開始剤として熱重合開始剤と光重合開始剤とを含有する上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物に、光照射と加熱を同時に行うことにより、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と(D)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とを重合させる方法;上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物に、電子線やガンマ線等の放射線を照射することにより、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とを重合させる方法等を挙げることができる。なお、熱重合開始剤として、レドックス開始剤を併用する場合、加熱をしなくても反応を行うことが可能であるが、残存モノマーの低減化又は反応時間の短縮のため、レドックス開始剤を併用した場合であっても、加熱を行うことが好ましい。
【0089】
本発明の粘着性ハイドロゲルを、紫外線照射により作製する場合には、紫外線の積算照射量は、1000mJ/cm2~10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、2000mJ/cm2~10000mJ/cm2の範囲内であることがより好ましい。
【0090】
また、本発明の粘着性ハイドロゲルは、予め(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体との重合反応によって形成された高分子マトリックスに、水、多価アルコール、及び任意選択で残りの成分を含浸させる製造方法により製造することも可能である。
【0091】
一実施形態において、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物は、非イオン性重合性単官能単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体とを含み、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を、前記非イオン性重合性単官能単量体100質量部に対して、0. 15~15質量部含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物を含まない。
【0092】
粘着性ハイドロゲルシートの製造方法及び粘着性ハイドロゲルシート
本態様の粘着性ハイドロゲルは、例えば液状の粘着性ハイドロゲル製造用組成物を重合架橋してゲル化させたものであるため、用途に合わせて適宜成形することが可能である。例えば、あらかじめ型枠又は容器に上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物を注入し、ゲル化させることにより、所望形状のハイドロゲルを形成することができる。型枠及び容器は金属製であってもよいし、熱可塑性樹脂製であってもよい。粘着性ハイドロゲルシートは、粘着性ハイドロゲルをシート状に成形することによって得ることができる。
【0093】
また、粘着性ハイドロゲルシートには、粘着性ハイドロゲルシートの補強、裁断時の保形性の改善等のため、必要に応じて、面内方向に沿って中間基材が埋め込まれていても良い。中間基材は、具体的な態様として、不織布又は織布から構成することができる。不織布及び織布の材質は、セルロース、絹、麻等の天然繊維や、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、又はそれらの混紡が使用可能であり、必要に応じて、バインダーを用いても良く、さらに、必要に応じて着色しても良い。
【0094】
上記不織布の製造方法は特に限定されないが、乾式法や湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法が挙げられる。目付や材質に応じた製法を採用し、目付ムラがないことが中間基材の位置制御のためにより好ましい。織布についても、平織やトリコット、ラッセル等、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0095】
また、上記織布又は不織布の目付は、中間基材としての所定の物性を得ることができる目付であれば特に限定されないが、例えば、10~40g/m2であることが好ましく、10~28g/m2であることがより好ましい。上記織布又は不織布の目付が小さ過ぎると、ゲルシートの補強等を図ることができなかったり、目付ムラが大きくなることでゲルシート製造時における液の浸透性が不均一になり、それによって中間基材の位置が変動する可能性がある。また、目付が大き過ぎると、中間基材が硬くなり、ゲルシート1の皮膚への追従性等が損なわれるおそれや導通性に悪影響を与える可能性があるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。
【0096】
粘着性ハイドロゲルシートの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で粘着性ハイドロゲルシートを製造することができる。例えば、樹脂フィルム等のベースフィルムの上に前記粘着性ハイドロゲル製造用組成物を滴下し、滴下後、滴下した粘着性ハイドロゲル製造用組成物の上面に樹脂フィルム等のトップフィルムをかぶせて粘着性ハイドロゲル製造用組成物を押し広げ、所望の厚みに制御する。この状態で光(紫外線)照射及び/又は熱により、粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の単量体(A)-(C)を重合及び架橋させて、所望の厚みを有する粘着性ハイドロゲルシートを得ることができる。
【0097】
粘着性ハイドロゲルシートに中間基材を埋め込む場合には、中間基材に一定以上のテンションをかけた状態で中間基材を空中で保持し、その中間基材の上側及び下側に、粘着性ハイドロゲル製造用組成物を流し込み、光照射等により重合してシート状とする方法、表面が平滑なシート状の2つのゲル材をそれぞれ作製した後、一定以上のテンションをかけた状態で保持している中間基材をこれらのゲル材で挟持し、複合化する方法、あるいは、表面が平滑なシート状のハイドロゲルを作製し、このハイドロゲルの上に、必要に応じて、一定以上のテンションをかけた状態で中間基材を載置し、その中間基材の上に粘着性ハイドロゲル製造用組成物を流し込み、光照射等によりさらに重合させる方法等を適宜採用することができる。
【0098】
粘着性ハイドロゲルシートの片面にベースフィルムを設け、粘着性ハイドロゲルシートにおけるベースフィルムが設けられた面の裏面にトップフィルムを設けてもよい。
【0099】
上記ベースフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂からなる樹脂フィルム、紙、前記樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することができる。
【0100】
ベースフィルムの粘着性ハイドロゲルシートと接する面は、シリコーンコーティング等の離型処理がなされていることが好ましい。すなわち、上記ベースフィルムを離型紙として使用する場合は、樹脂(例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン等)からなる樹脂フィルム、紙、前記樹脂フィルムをラミネートした紙等のフィルムの表面に離型処理を施したものが上記ベースフィルムとして好適に用いられる。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。離型処理が施されるフィルムとしては、二軸延伸したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム等が特に好ましい。
【0101】
上記ベースフィルムを離型紙でなく、粘着剤のバッキング材(裏打材)として使用する場合には、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリウレタンフィルム等を離型処理しないで用いることが好ましい。これらのうち、ポリウレタンフィルムは、柔軟性があり、水蒸気透過性を有するものもあるので、特に好ましい。また、ポリウレタンフィルムは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取扱が困難なため、ポリオレフィンフィルムや紙等のキャリアフィルムをラミネートして用いることが好ましい。この場合、粘着性ハイドロゲルの製造工程は、ベースフィルムにキャリアフィルムを付けた状態で行われることが好ましい。
【0102】
上記トップフィルムとしては、基本的にベースフィルムと同じ材質のものを使用することも可能であるが、光重合を妨げないために、光を遮断しない材質のフィルムを選択することが好ましい。また、バッキング材(裏打材)に用いるフィルムは、トップフィルムとして使用しない方が好ましい。特に、バッキング材に用いるフィルムが紫外線等の照射により劣化する可能性がある場合には、バッキング材に用いるフィルムをトップフィルムとして使用すると、バッキング材に用いるフィルムが直接紫外線を照射される側に位置することになるため、好ましくない。
【0103】
粘着性ハイドロゲル製造用組成物を重合及び架橋してゲル化させ、生成したシート状の粘着性ハイドロゲルシートをロール状に巻き取る場合には、上記ベースフィルム及び/又はベースフィルムは柔軟性を有していることが好ましい。柔軟性がないフィルムを粘着性ハイドロゲルシートの両面に設けると、巻皺が発生するおそれがある。また、柔軟性を有するフィルムは、ロール巻の内面側、外面側の何れの側に配置されてもよいが、外面側に配置することが好ましい。
【0104】
積層体
本発明の一態様によれば、上記粘着性ハイドロゲルからなる層と、上記粘着性ハイドロゲルとは異なる組成のハイドロゲルからなる層とが積層された積層体が提供される。より具体的には、積層体は、上記粘着性ハイドロゲルからなる第1層と、高分子マトリックス、水、多価アルコールを含み、高分子マトリックスを構成する単量体が、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を含まないか、又は前記第1層に含まれるよりも少ない量で含む、ハイドロゲルからなる第2層とを備える。
【0105】
【化5】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、R
3は炭素数2~5の炭化水素基である)
【0106】
粘着性ハイドロゲルからなる第1層の組成は、上記粘着性ハイドロゲルに関して説明した通りである。
第2層のハイドロゲルに使用される高分子マトリックスは、任意選択の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体と、(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体とが重合及び架橋することにより形成される。
【0107】
(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体、(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体、及び(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の例は、上記粘着性ハイドロゲルの態様に関して説明した通りである。
【0108】
第2層のハイドロゲル中の高分子マトリックスの量は、10~40質量部であることが好ましく、15~35質量部であることがより好ましい。言い換えると、高分子マトリックスは、ハイドロゲル100質量部中に、10~40質量部含まれることが好ましく、15~35質量部含まれることがより好ましい。
【0109】
第2層のハイドロゲルに添加する(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の配合比は特に限定されない。同様に、第2層のハイドロゲル中の(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体由来の構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体由来の構造単位の比は特に限定されない。
【0110】
第2層のハイドロゲルの高分子マトリックスを構成する単量体が、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を含まないか、又は前記第1層のハイドロゲルに含まれるよりも少ない量で含むため、加熱による第2層のハイドロゲルの粘着力の低下が、第1層のハイドロゲルよりも小さく抑えられる。このため、支持体と第1層の粘着性ハイドロゲルが直接接着している場合に比べて、支持体と第1層のハイドロゲルの間に第2層のハイドロゲルが存在している場合は、加温時の支持体からの粘着性ハイドロゲルの剥離を抑制することができる。
【0111】
第2層のハイドロゲル中の(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の添加量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部であることが好ましい。第2層のハイドロゲルの形状安定性をもたせるために、架橋性単量体は(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、また粘着力を維持できる程度の柔軟性を第2層のハイドロゲルに与えるために、架橋性単量体は(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して0.5質量部以下が好ましい。
【0112】
同様に、第2層のハイドロゲル中の(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体に由来する構造単位の含有量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部であることが好ましい。
【0113】
特定の実施形態では、第2層のハイドロゲル中の高分子マトリックスの量が、10~40質量部であり、かつ、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対する(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の添加量は、0.01~0.5質量部である。(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の合計100質量部に対する(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の添加量の代わりに、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体に由来する構造単位と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対する(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体に由来する構造単位の含有量としてもよい。このような構成は、皮膚に対する第2層のハイドロゲルの粘着性が優れている。
【0114】
第1層のハイドロゲル中の(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の種類と第2層のハイドロゲル中の(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の種類は、同じであっても異なっていてもよく、第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルのゲル間の接着性、ゲルの導電安定性等の点から、同じであることが好ましい。第1層のハイドロゲル中の(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の種類と第2層のハイドロゲル中の(C)エチレン性不飽和基を有する多官能単量体の種類は、同じであっても異なっていてもよく、第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルのゲル間の接着性、ゲルの導電安定性等の点から、同じであることが好ましい。
【0115】
第2層のハイドロゲルに含まれる水の好ましい含有量は、上記粘着性ハイドロゲルに関して説明した通りである。第2層のハイドロゲルに含まれる水の含有量は、ゲルが周りの環境により吸湿したり、乾燥したりすることで経時的に物性の変化、特に膨潤や収縮を防ぐために、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して50~300質量部が好ましく、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体の易溶解性、また水分のブリードや乾燥による変化を抑制するために、75~150質量部がより好ましい。
【0116】
第2層のハイドロゲルに含まれる多価アルコールの種類及び好ましい含有量は、上記粘着性ハイドロゲルに関して説明した通りである。好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等が挙げられる。
【0117】
多価アルコールの含有量は、(A)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体と(B)式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体の添加量の合計100質量部に対して150~350質量部であることが好ましく、200~300質量部であることがより好ましい。多価アルコールの添加量が150~350質量部の場合は、得られたゲル体の乾燥による物性変化が小さく、高い粘着力が得られるため好ましい。
第1層のハイドロゲル中の多価アルコールの種類と第2層のハイドロゲル中の多価アルコールの種類は、同じであっても異なっていてもよく、第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルのゲル間の接着性、ゲルの導電安定性等の点では、同じであることが好ましい。
【0118】
第1層のハイドロゲルの厚みは特に限定されないが、0.1~5.0mmであることが好ましく、0.1~2.0mmであることがより好ましく、0.2~0.1.0mmであることがより好ましい。第2層のハイドロゲルの厚みは特に限定されないが、0.1~5.0mmであることが好ましく、0.2~2.0mmであることがより好ましく、0.2~0.1.0mmであることがより好ましい。積層体の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1~10.0mmの厚みを有するシート状であってもよい。厚みは0.3~5.0mmとすることがより好ましい。このような0.1~10.0mmの厚みを有するシート状の積層体は、柔軟性に優れると共に、生体皮膚表面への追従性に優れる。
【0119】
本明細書において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力及び60℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力は、実施例に記載した測定方法に従って測定される。
【0120】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力は、0.8N/20mm以上である。このため、使用時に積層体は皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有する。
【0121】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、60℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下である。
【0122】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、60℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下である。
【0124】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、50℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0126】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、50℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0128】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、45℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0130】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、45℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0132】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、40℃の環境温度下で10分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0134】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0135】
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における積層体のステンレス板に対する引張角度90°における粘着力を初期粘着力とし、40℃の環境温度下で5分間保持した後のJIS Z 0237;2009に準じて測定した前記積層体の引張角度90°における粘着力を加温後粘着力とすると、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率(%)が50%以下である。
【0136】
このような構成を有する積層体は、加温後に粘着力が劇的に減少するため、皮膚表面からの剥離が容易であり、使用後の剥離時の皮膚表面の損傷を防ぐことができる。
【0137】
積層体の製造方法
第1層のハイドロゲル及び第2層のハイドロゲルの各々は、上記粘着性ハイドロゲルの製造方法の記載に従って製造することができる。
【0138】
積層体は、第1層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物をあらかじめ型枠又は容器に注入し、重合架橋してゲル化して、所望形状の第1層のハイドロゲルを形成した後、第2層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物を、第1層のハイドロゲルに接した状態で型枠又は容器に注入し、重合架橋してゲル化して、所望形状の第2層のハイドロゲルを形成することによって得られる。逆に、第2層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物をあらかじめ型枠又は容器に注入し、重合架橋してゲル化して、所望形状の第2層のハイドロゲルを形成した後、第1層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物を、第2層のハイドロゲルに接した状態で型枠又は容器に注入し、重合架橋してゲル化して、所望形状の第1層のハイドロゲルを形成することによっても得られる。第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルを別々に形成し、その後貼り合わせてもよい。第1層のハイドロゲル及び第2層のハイドロゲルをシート状に成形することによって、シート状の積層体を得ることができる。このシートは粘着性ハイドロゲルシートと称することもできる。
【0139】
第1層のハイドロゲル及び第2層のハイドロゲルを備えた積層体又は粘着性ハイドロゲルシートが、中間基材を含む場合、中間基材には、上述の粘着性ハイドロゲルシートに埋め込まれる中間機材を使用することができる。
【0140】
中間基材は、第1層のハイドロゲルの面内方向に沿って埋め込まれてもよいし、第2層のハイドロゲルの面内方向に沿って埋め込まれてもよいし、第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルのそれぞれの面内方向に沿って埋め込まれてもよいし、第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルの間の境界に埋め込まれてもよい。第1層のハイドロゲル及び第2層のハイドロゲルの少なくとも一方、又は第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルの間の境界に中間基材が埋め込まれると、第1層のハイドロゲル及び/又は第2層のハイドロゲルの保形性が向上し、第1層のハイドロゲルと第2層のハイドロゲルの2層間の剥離が起こりにくくなる。
【0141】
医療用外用材
本発明の一態様によれば、支持体と、支持体の少なくとも片面に設けられた上記粘着性ハイドロゲル又は上記積層体とを備えた医療用外用材が提供される。支持体と、上記積層体とを備えた医療用外用材の場合、積層体の第2層のハイドロゲルと支持体が接した状態に配置されることが好ましい。この場合、医療用外用材の加温時に、第1層のハイドロゲルが支持体から剥離するのを第2層のハイドロゲルが防止するよう作用する。
【0142】
本態様の医療用外用材は、(i)支持体の片面又は両面に、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物(積層体の場合は、第1層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物と第2層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物)を塗布し、重合及び架橋させるか、(ii)上記粘着性ハイドロゲル又は積層体を直接支持体の片面又は両面に貼合わせるか、(iii)離型紙上に粘着性ハイドロゲル製造用組成物(積層体の場合は、第1層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物と第2層のハイドロゲルの製造用の粘着性ハイドロゲル製造用組成物)を塗布し、重合及び架橋させたものを支持体に貼合わせるか、(iv)離型紙上に貼合わせた粘着性ハイドロゲル又は積層体を、支持体に貼合わせることにより、作成される。粘着性ハイドロゲルはシート状であってよい。
【0143】
支持体は、粘着性ハイドロゲル又は積層体を保持し得るものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば絆創膏、粘着包帯、又はパップ剤等に用いられるフィルム状或いはシート状のものが挙げられるのであり、これらは多孔質であると無孔であるとを問わない。
【0144】
支持体の原料には、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、無可塑軟質ポリ塩化ビニル(例えば内部共重合体又はブレンド系)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、シリコーンゴム、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡エチレン-酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂、アルミ及び銅等の金属類などがフィルムもしくはシート状に成形されたものが用いられる。このほか、天然繊維又は合成繊維(例えば、再生セルロース(例えばレーヨン)、セルロースエステル等)からなる紙、不織布、織布、網布なども利用され、目的に応じて、通気性のある基材又は通気性をもたない基材が適宜選択される。また、上記フィルム、金属フィルム又はシート、織布などを適宜組み合わせて重接合(ラミネート)し、ラミネートの支持体とすることも可能である。例えばラミネート体の支持体の例としては、ポリエチレン-レーヨンラミネート加工紙、PETとアルミのラミネート、ポリウレタンとレーヨンのラミネートなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0145】
フィルムもしくはシートである支持体の厚み(ラミネートの場合は合計厚み)は特に限定されないが、例えば5~300μm、好ましくは10μm~100μmとすることができる。
【0146】
支持体と粘着性ハイドロゲル又は積層体の接着性を高める目的で支持体と粘着性ハイドロゲル又は積層体の間に表面処理層を設けても良い。表面処理層の具体的な例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、火炎処理等の物理的表面処理や、シランカップリング処理、アンカーコート、プライマーコート等の塗工剤による表面処理又はこれらの組合せが用いられる。
【0147】
支持体の表面に表面処理を施し、生じた表面処理層の上に粘着性ハイドロゲル製造用組成物を直接塗工及び重合することにより、支持体と粘着性ハイドロゲル又は積層体が強固に接着する。
【0148】
医療用外用材に支持体を設けることで、医療用外用材をサージカルテープとして使用可能である。
【0149】
図1に医療用外用材の例を示す。医療用外用材1は、支持体2と、支持体2の片面に接触して設けられた粘着性ハイドロゲル3とを備えている。粘着性ハイドロゲル3の支持体2と接触する面とは反対側が医療用外用材1の使用者の皮膚4に貼付される。上述したように、支持体2と粘着性ハイドロゲル3の間には表面処理層を設けてもよい。
【0150】
図2に、ハイドロゲルの積層体を備えた医療用外用材の例を示す。医療用外用材1は、支持体2と、支持体2の片面に接触して設けられた第2層の粘着性ハイドロゲル5と、第2層の粘着性ハイドロゲル5に接触して設けられた第1層の粘着性ハイドロゲル3とを備えている。第1の粘着性ハイドロゲル3の、第2層の粘着性ハイドロゲル5と接触する面とは反対側が医療用外用材1の使用者の皮膚4に貼付される。
【0151】
上記態様の粘着性ハイドロゲル及び医療用外用材は、生体に貼付するサージカルテープ、カテーテルや点滴用のチューブ/心電図電極/その他センサー類の固定用テープ、湿布剤、創傷被覆剤、人工肛門等の固定用テープ、電気治療器用導子/磁気治療器の固定用粘着材、経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体に貼付して用いる粘着材、もしくは建材/電子材料等の工業用粘着材として好適に使用することができる。
【0152】
生体用電極
本発明の一態様によれば、上記粘着性ハイドロゲル又は上記積層体を含む生体用電極が提供される。生体用電極は、上記粘着性ハイドロゲル又は上記積層体と、導電性材料から構成された電極とが積層された電極であってよい。電極は導電性材料を含んでいればよい。導電性材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、白金、銀、銀-塩化銀の複合体、金、錫、チタン、ニッケル、モリブデン等の金属、カーボンブラックやグラファイト等の導電性炭素材料、これらの混合物等が挙げられる。
生体用電極が上記積層体と導電性材料を含む場合、第2層のハイドロゲルが導電性材料と接触し、第1層ハイドロゲルと導電性材料の間に配置されていることが好ましい。このような場合、加温時でも導電性材料に対する第2層のハイドロゲルの粘着性が、導電性材料に対して第1層のハイドロゲルが接触している場合よりも高く維持される。
【0153】
本態様の生体用電極は、心電図、脳波、眼振、筋電等に使用する生体電位測定用電極や、経皮的電気刺激療法(TENS)、低周波治療等に使用する電気刺激用電極、電気メス用対極板やイオントフォレシス用電極等の医療用電極として用いることができる。
【0154】
本明細書中に引用されているすべての特許出願及び文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0155】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例0156】
試験例1
1.実施例及び比較例の粘着性ハイドロゲルの製造
各実施例及び比較例の各粘着性ハイドロゲルは以下の方法で製造した。
【0157】
実施例1
N置換アクリルアミド誘導体として、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を10質量部、N置換アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体として、ジメチルアクリルアミド(DMAA)10質量部、エチレン性不飽和基を有する多官能単量体としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を0.04質量部、多価アルコールとしてグリセリン60質量部、水を20質量部混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル製造用組成物を得た。
【0158】
次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)30-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(IGMRESINSB.V.社製商品名Omnirad2959)を0.1質量部加え更に攪拌溶解した。
【0159】
次に、ガラス上に置いたシリコン処理を施した厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上にシリコーンゴム製型枠(130mm×130mm、高さ1.0mm)を設置し、枠内にポリエステル不織布を敷設したのち、組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度95mW/cm2の紫外線ランプで紫外線を60秒照射して取りだし、下記2.の評価方法にしたがって評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0160】
実施例2
電解質として塩化ナトリウムを0.3質量部加えたこと以外は、実施例1と同様にして評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0161】
実施例3
式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体をNIPAMからN,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)に代えて13質量部とし、DMAAの量を7質量部とした以外は実施例2と同様にして評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0162】
実施例4
ポリエチレン-レーヨンラミネート加工紙(PE厚み20μm,レーヨンの坪量17g/m2、総厚み43μm,江南ラミネート社製)のレーヨン部分にアクリルシラン処理を施したものを支持体として用いた。次に、ガラス上に置いたアクリルシラン処理を施した上記支持体上のアクリルシラン処理を行った面にシリコーンゴム製型枠(130mm×130mm、厚さ1.0mm)を設置し、実施例2で用いたものと同じハイドロゲル組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度95mW/cm2の紫外線ランプで紫外線を60秒照射して取りだし、下記2.の評価方法にしたがって粘着力の評価をおこなった。結果を表1に示す。なお、実施例4の支持体と粘着性ハイドロゲルとからなる積層体の粘着性ハイドロゲルの部分は実施例2と同じであるため、実施例4において耐乾燥性は評価しなかった。
【0163】
比較例1
実施例1の式(I)で表されるN置換アクリルアミド以外の重合性単官能単量体をジメチルアクリルアミド(DMAA)20質量部にして、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を用いなかった以外は実施例1と同様にして評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0164】
比較例2
実施例1の式(I)で表されるN置換アクリルアミド以外の重合性単官能単量体をアクリルアミド(AAm)20質量部にして、式(I)で表されるN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を用いなかった以外は実施例1と同様にして評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0165】
2.評価方法
(1)初期粘着力及び加温後粘着力の測定
初期粘着力
JIS Z 0237;2009に準じて測定した。実施例及び比較例の各粘着性ハイドロゲルを幅20mm×長さ150mmに断裁後、剥離紙を剥がし、得られた粘着性ハイドロゲルを厚さ3mmのステンレス板に貼付して、温度23℃、相対湿度50%で1時間放置したものを測定試料とした。測定試料の粘着性ハイドロゲルを引張速度300mm/分、引張角度90°の下で引き剥がした時の粘着力を測定した。
加温後粘着力
JIS Z 0237;2009に準じて測定した。実施例及び比較例の各粘着性ハイドロゲルを幅20mm×長さ150mmに断裁後、剥離紙を剥がし、得られた粘着性ハイドロゲルを厚さ3mmのステンレス板に貼付して、50℃(実施例1、比較例1,2)又は40℃(実施例2~4)のホットスターラー(製品名 ホットスターラーREXIM RSH-1DN、アズワン社製)で10分間加温したものを測定試料とし、測定試料の粘着性ハイドロゲルを引張速度300mm/分、引張角度90°の下で引き剥がした時の粘着力を測定した。
【0166】
(2)耐乾燥性(保水性)
実施例及び比較例の各粘着性ハイドロゲルについて、相対湿度50%、室温(23℃)で24時間にわたって保管した後、保管前の重量と24時間保管後の重量を測定し、((保管前の重量)-(保管後の重量)/(保管前の重量)×100(%))で表される重量減少率によって耐乾燥性を評価した。具体的には、上記条件で24時間静置させた後の重量減少率の絶対値が20%以下である場合を耐乾燥性「あり」と判断し、重量減少率の絶対値が20%を超える場合を耐乾燥性は「ない」と判断した。なお、保管後の重量減少率がマイナスとなるのはゲルが吸水してゲルの重量が増加しているためである。
【0167】
3.結果
実施例1、2及び3のハイドロゲルでは、いずれも初期粘着力は0.85N/20mmを超えていたが、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率がそれぞれ1.09%、4.55%、2.65%であり、加温により粘着力が大きく低下した。比較例1及び2のハイドロゲルでは、加温後粘着力の初期粘着力に対する割合がそれぞれ94.53%及び132.24%であり、加温により粘着力が低下しなかった。実施例及び比較例の粘着性ハイドロゲルの耐乾燥性に有意な差は見られなかった。
【0168】
実施例1の加温後粘着力の測定を、60℃のホットスターラーで10分間加温して行った場合も、ハイドロゲルの加温後粘着力は実施例1の場合と同程度であり、加温により粘着力が大きく低下した(データ非図示)。
【0169】
また、実施例4の医療用外用材では、初期粘着力が1.27N/20mm、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率が8.66%であり、加温により粘着力が大きく低下した。さらに、加温前後において支持体と粘着性ハイドロゲル間の剥離はみられなかった。
【0170】
4.ステンレス板(SUS)に貼付したときの粘着力の評価
実施例1のハイドロゲルを、ステンレス板(SUS)に貼付し、50℃のオーブンに10分間保管し、粘着性と剥離性を調べた。
図3(A)に示すように、23℃でステンレス板(SUS)板に貼付したハイドロゲルをピンセットでつまみ上げると、SUS板も持ち上がった。
図3(B)に示すように、50℃でハイドロゲルとSUS板を加熱すると、ゲルが白濁し、相分離が見られた。
図3(C)に示すように、加温後に、ピンセットでハイドロゲルを持ち上げると、SUS板からハイドロゲルは容易に剥離した。
【0171】
【0172】
試験例2
1.実施例の粘着性ハイドロゲルの製造
各実施例の各粘着性ハイドロゲルは以下の方法で製造した。
【0173】
実施例5
N置換アクリルアミド誘導体以外の重合性単官能単量体として、アクリルアミド(AAm)20質量部、エチレン性不飽和基を有する多官能単量体としてN,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を0.04質量部、多価アルコールとしてグリセリン60質量部、水を20質量部混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル製造用組成物を得た。
【0174】
次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)30-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(IGMRESINSB.V.社製商品名Omnirad2959)を0.1質量部加え更に攪拌溶解した。
【0175】
次に、ガラス上に置いたシリコン処理を施した厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上にシリコーンゴム製型枠(130mm×130mm、高さ0.5mm)を設置し、組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度95mW/cm2の紫外線ランプで紫外線を60秒照射した。得られたゲルを上層ゲルと称する。
【0176】
次に、前記上層ゲルを覆っている38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムと型枠を剥がした。次に、前記上層ゲルの周囲にシリコーンゴム製型枠(130mm×130mm、高さ1.0mm)を設置し、前記上層ゲルの上に実施例1に示す光重合開始剤を含む粘着性ハイドロゲル製造用組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度95mW/cm2の紫外線ランプで紫外線を60秒照射して、上層ゲルと下層ゲルからなる粘着性ハイドロゲルの積層体を取りだした。上層ゲルの厚みは0.8mmと下層ゲルの厚みは0.2mmである。試験例1の2.の評価方法にしたがって評価をおこなった。結果を表2に示す。
【0177】
実施例6~8
上層ハイドロゲル及び/又は下層のハイドロゲルの成分及びその量を表2に示すとおりにした以外は、実施例5と同様にして評価をおこなった。
【0178】
2.結果
実施例5~8のハイドロゲルでは、いずれも初期粘着力は0.85N/20mmを超えていたが、初期粘着力に対する加温後粘着力の比率がそれぞれ0.04%、0.13%、0.17%、及び6.88%であり、加温により粘着力が大きく低下した。
【0179】
3.支持体とハイドロゲルの接着性試験
実施例5~8の各々の粘着性ハイドロゲルからなる積層体の上層ゲルの面に、ポリエチレンレーヨンラミネート紙のレーヨン側を貼り合わせ、医療用外用材の形態とした。この実施例5~8で作製した試験片を50℃のオーブンに1時間静置した。その後、オーブンから試験片を取り出し直ちに支持体とゲルを手で引き剥がしたところ、支持体とゲルが十分に粘着していることを確認した。
【0180】
試験例3 生体用電極
実施例1~8の各々で得られたハイドロゲルと、導電性材料から構成される電極とを積層することで、上記ハイドロゲルを含む生体用電極が提供される。
【0181】