(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004834
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240110BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 535
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104693
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰禎
(72)【発明者】
【氏名】池野 雄一
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA06
2H033AA24
2H033BA11
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB13
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BD00
2H033CA07
2H033CA12
2H033CA30
2H033CA39
2H033CA44
2H270KA35
2H270LA25
2H270LD01
2H270LD09
2H270LD14
2H270MA35
2H270MB27
2H270MC44
2H270MG07
2H270MH09
2H270ZC03
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】ニップ圧が小さい場合にヒータに通電することによって生じるヒータの過昇温を抑制することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、ヒータと、無端状のベルトと、加圧回転体と、ニップ圧変更機構と、制御部と、を備える。ヒータは、基板と抵抗発熱体を有する。ベルトは、ヒータの周りを回転する。加圧回転体は、ヒータとの間でベルトを挟むことでニップ部を形成する。ニップ圧変更機構は、ニップ部におけるニップ圧を、第1ニップ圧と、第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更する。制御部は、ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定し(S2)、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合には(S2:No)、ヒータの出力を、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定したときの上限値である第1上限値よりも小さな第2上限値以下となるように制御する(S4~S7)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と抵抗発熱体を有するヒータと、
前記ヒータの周りを回転する無端状のベルトと、
前記ヒータとの間で前記ベルトを挟むことでニップ部を形成する加圧回転体と、
前記ニップ部におけるニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更するニップ圧変更機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
ニップ圧が前記第1ニップ圧および前記第2ニップ圧のいずれであるかを判定し、
ニップ圧が前記第2ニップ圧であると判定した場合には、前記ヒータの出力を、ニップ圧が前記第1ニップ圧であると判定したときの上限値である第1上限値よりも小さな第2上限値以下となるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
ヒータの温度を検知する温度センサを備え、
前記制御部は、目標温度と前記温度センサの検知温度との偏差に基づいて前記ヒータの出力を制御し、前記偏差が大きいほど前記ヒータの出力を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ヒータへの通電のデューティ比を変更することで、前記ヒータの出力を変更し、
ニップ圧が前記第2ニップ圧であると判定した場合には、前記デューティ比を、ニップ圧が前記第1ニップ圧であると判定したときの上限値である第1デューティ上限値よりも小さな第2デューティ上限値以下となるように設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ヒータの温度を検知する温度センサを備え、
前記制御部は、
目標温度と前記温度センサの検知温度との偏差に比例する比例項と、前記偏差の微分値に比例する微分項との和を含む操作量を算出し、前記操作量の絶対値が大きいほど前記ヒータへの通電のデューティ比を大きくするように構成され、
ニップ圧が前記第2ニップ圧である場合には、前記微分項の係数を変更することによってニップ圧が前記第1ニップ圧である場合よりも前記操作量の絶対値を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、印刷指令を受信した場合に、ニップ圧が前記第1ニップ圧および前記第2ニップ圧のいずれであるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記抵抗発熱体は、シートの搬送方向に複数並んで前記基板に配置され、
ニップ圧が前記第2ニップ圧である場合における前記ニップ部の前記搬送方向の長さは、前記搬送方向の最も上流に位置する前記抵抗発熱体の上流端から、前記搬送方向の最も下流に位置する前記抵抗発熱体の下流端までの長さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
ニップ圧が前記第1ニップ圧および前記第2ニップ圧のいずれであるかを判定するための情報を検出するセンサを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータと加圧回転体との間でベルトを挟む定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、ヒータと、ベルトと、ヒータとの間でベルトを挟む加圧ローラと、ベルトと加圧ローラが加圧されていることを検知する加圧検知スイッチとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、ベルトと加圧ローラが加圧されているときには、加圧検知スイッチがONとなり、ヒータへの電力供給が可能となる。また、加圧が解除されると、加圧検知スイッチがOFFとなり、ヒータへの電力供給が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術ではニップ圧が小さい場合にはヒータへの電力供給が遮断されるので、ニップ圧が小さい状態でシートへの画像の定着を行うことができない。一方で、仮にニップ圧が小さい状態で通電を行う構成とした場合には、ヒータからベルトおよび加圧ローラへの熱伝達が上手く行われずにヒータに熱が籠って、ヒータが過昇温するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ニップ圧が小さい場合にヒータに通電することによって生じるヒータの過昇温を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、ヒータと、無端状のベルトと、加圧回転体と、ニップ圧変更機構と、制御部と、を備える。
ヒータは、基板と抵抗発熱体を有する。
ベルトは、ヒータの周りを回転する。
加圧回転体は、ヒータとの間でベルトを挟むことでニップ部を形成する。
ニップ圧変更機構は、ニップ部におけるニップ圧を、第1ニップ圧と、第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更する。
制御部は、ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定し、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合には、ヒータの出力を、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定したときの上限値である第1上限値よりも小さな第2上限値以下となるように制御する。
【0007】
この構成によれば、ニップ圧が小さい場合にはヒータの出力を第2上限値以下に制限するので、ニップ圧が小さい場合にヒータに通電することによって生じるヒータの過昇温を抑制することができる。
【0008】
また、画像形成装置は、ヒータの温度を検知する温度センサを備え、制御部は、目標温度と温度センサの検知温度との偏差に基づいてヒータの出力を制御し、偏差が大きいほどヒータの出力を大きくしてもよい。
【0009】
また、制御部は、ヒータへの通電のデューティ比を変更することで、ヒータの出力を変更し、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合には、デューティ比を、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定したときの上限値である第1デューティ上限値よりも小さな第2デューティ上限値以下となるように設定してもよい。
【0010】
この構成によれば、ニップ圧が小さいときに、大きなデューティ比で通電されないので、ニップ圧が小さい場合にヒータの出力を第2上限値以下に制限することができる。
【0011】
また、画像形成装置は、ヒータの温度を検知する温度センサを備え、制御部は、目標温度と温度センサの検知温度との偏差に比例する比例項と、偏差の微分値に比例する微分項との和を含む操作量を算出し、操作量の絶対値が大きいほどヒータへの通電のデューティ比を大きくするように構成され、ニップ圧が第2ニップ圧である場合には、微分項の係数を変更することによってニップ圧が第1ニップ圧である場合よりも操作量の絶対値を小さくしてもよい。
【0012】
また、制御部は、印刷指令を受信した場合に、ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定してもよい。
【0013】
また、抵抗発熱体は、シートの搬送方向に複数並んで基板に配置され、ニップ圧が第2ニップ圧である場合におけるニップ部の搬送方向の長さは、搬送方向の最も上流に位置する抵抗発熱体の上流端から、搬送方向の最も下流に位置する抵抗発熱体の下流端までの長さよりも小さくてもよい。
【0014】
この構成では、ニップ圧が小さい場合にヒータに熱が籠りやすいが、ヒータの出力を第2上限値以下に制限することで、ヒータの過昇温を抑制することができる。
【0015】
また、画像形成装置は、ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定するための情報を検出するセンサを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ニップ圧が小さい場合にヒータに通電することによって生じるヒータの過昇温を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るレーザプリンタの構成を示す図である。
【
図2】定着装置を示す断面図(a)と、ヒータ周りを拡大して示す断面図(b)である。
【
図3】ヒータの抵抗発熱体が配置された面を示す図(a)と、ヒータおよび熱伝導部材を、ヒータの裏側から見た図(b)と、ヒータ等を長手方向に切った断面図(c)である。
【
図4】ニップ圧が第1ニップ圧である場合における、ニップ圧変更機構を示す断面図(a)と、ヒータ周りを拡大して示す断面図(b)である。
【
図5】ニップ圧が第2ニップ圧である場合における、ニップ圧変更機構を示す断面図(a)と、ヒータ周りを拡大して示す断面図(b)である。
【
図7】第1テーブルを示す図(a)と、第2テーブルを示す図(b)である。
【
図8】変形例に係る制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図9】第3テーブルを示す図(a)と、第4テーブルを示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ100は、本体筐体120と、供給部130と、露光装置140と、プロセスカートリッジ150と、定着装置1と、制御部500とを備えている。
【0019】
本体筐体120は、第1開口H1を開閉するフロントカバー121と、手差しトレイ122と、第2開口H2を開閉するリアカバー123と、排出トレイ124とを有する。第1開口H1は、プロセスカートリッジ150が通過可能な開口である。手差しトレイ122は、シートS、例えば葉書などの厚紙を、直線状の搬送経路で搬送して印字を行うときに使用するトレイである。以下の説明では、直線状の搬送経路において行う印字を、「ストレート印字」ともいう。
【0020】
第2開口H2は、ストレート印字を行う場合において定着装置1から排出されたシートSが通過する開口である。リアカバー123は、ストレート印字を行う場合に開いた状態とされ、第2開口H2から排出されたシートSを支持する。排出トレイ124は、リアカバー123を閉じた状態において、本体筐体120内から排出されるシートSを支持するためのトレイである。
【0021】
レーザプリンタ100は、リアカバー123が閉じられたことを検知するカバーセンサSE1をさらに備えている。カバーセンサSE1で検知した情報は、制御部500に出力される。
【0022】
供給部130は、後述する感光ドラム151に向けてシートSを供給する機構である。供給部130は、シートSを収容する供給トレイ131と、押圧板132と、供給機構133とを備えている。供給トレイ131内のシートSは、押圧板132によって上方に寄せられ、供給機構133によって1枚ずつ分離されてプロセスカートリッジ150に供給される。
【0023】
露光装置140は、図示しないレーザ光源やポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置140では、レーザ光源から出射される画像データに基づくレーザ光によって、感光ドラム151の表面を露光する。
【0024】
プロセスカートリッジ150は、第1開口H1を通して本体筐体120に着脱可能となっている。プロセスカートリッジ150は、感光ドラム151と、帯電器152と、現像ローラ153と、転写ローラ154とを備えている。
【0025】
帯電器152は、感光ドラム151の表面を帯電させる。露光装置140は、帯電した感光ドラム151の表面を露光することで、感光ドラム151の表面に静電潜像を形成する。
【0026】
現像ローラ153は、プロセスカートリッジ150内のトナーを感光ドラム151の静電潜像に供給する。これにより、感光ドラム151には、トナー像が形成される。その後、供給部130から供給されたシートSが、感光ドラム151と転写ローラ154の間を通過することで、感光ドラム151上のトナー像がシートSに転写される。
【0027】
定着装置1は、シートSにトナー像を定着させる装置である。トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ125によって排出トレイ124上に排出される。
【0028】
図2(a)に示すように、定着装置1は、加熱ユニット2と、加圧回転体の一例としての加圧ローラ3と、フレーム4とを備える。
【0029】
加圧ローラ3は、回転可能なローラである。加圧ローラ3は、円柱状のシャフト3Aと、円筒状のローラ部3Bとを有する。シャフト3Aは、例えば金属からなる。ローラ部3Bは、例えばゴムからなる。ローラ部3Bは、シャフト3Aの一部を被覆する。
【0030】
加熱ユニット2は、ヒータ10と、ホルダ20と、
図2(b)に示す熱伝導部材30と、ステイSTと、ベルトBLと、
図2(b)に示す温度センサSE2とを有する。ヒータ10は、ベルトBLを加熱し、ベルトBLを介してシートSを加熱する。温度センサSE2は、ヒータ10の温度を検知する。温度センサSE2は、検知した温度を、制御部500に出力する。温度センサSE2は、熱伝導部材30に接触している。
【0031】
図2(b)に示すように、ヒータ10は、加圧ローラ3との間でベルトBLを挟むことでニップ部NPを形成する。ヒータ10は、基板11と、基板11に配置された抵抗発熱体12と、カバー13とを有する。基板11は、酸化アルミニウムを材料とするセラミックの細長い長方形の板からなる。ヒータ10は、いわゆるセラミックヒータである。抵抗発熱体12は、基板11の一方の面に、印刷により形成されている。
図3(a)に示すように、本実施形態では、抵抗発熱体12は、2本設けられている。2本の抵抗発熱体12は、それぞれ、ヒータ10の長手方向に長く、長手方向に直交する短手方向に互いに離れて平行に配置されている。言い換えると、2本の抵抗発熱体12は、シートSの搬送方向に並んで基板11に配置されている。以下の説明では、ニップ部NPでのシートSの搬送方向を、単に「搬送方向」ともいう。各抵抗発熱体12の一端12Aには、それぞれ導線19Aが接続され、導線19Aの各端部には、抵抗発熱体12に電力を供給するための給電端子18が設けられている。
【0032】
給電端子18は、導線19Aを介して抵抗発熱体12と導通している。給電端子18は、基板11の長手方向の一端部11Eに位置する。
図3(c)に示すように、給電端子18には、ヒータ10に電気を供給するコネクタCが接続されている。コネクタCは、ヒータ10の長手方向の一端部に対して着脱可能となっている。給電端子18には、コネクタCから電気が供給される。なお、
図3(c)においては、便宜上、抵抗発熱体12、カバー13およびベルトBLの図示は省略する。
【0033】
また、各抵抗発熱体12の他端12Bは、導線19Bにより互いに接続されている。なお、抵抗発熱体12の本数は、特に限定されない。また、長手方向の中央部の発熱量を長手方向の端部の発熱量より大きくした抵抗発熱体と、長手方向の端部の発熱量を長手方向の中央部の発熱量より大きくした抵抗発熱体とを設けて、各抵抗発熱体を個別に制御することで、長手方向の発熱分布を調整できるようにしてもよい。
【0034】
図2(b)に示すように、カバー13は、抵抗発熱体12を覆っている。カバー13は、例えば、ガラスからなる。
【0035】
図2(a)に示すように、ホルダ20は、ヒータ10を支持するとともに、ベルトBLを案内する機能を有する。ホルダ20は、例えば、樹脂からなる。
【0036】
ステイSTは、ホルダ20を支持する。ステイSTは、例えば金属からなる。
【0037】
ベルトBLは、無端状であり、金属または樹脂などからなる。ベルトBLは、ホルダ20に案内されながら、ヒータ10の周りを回転する。ベルトBLは、外周面と内周面を有する。外周面は、加圧ローラ3または加熱対象となるシートSと接触する。内周面は、ヒータ10と接触する。
【0038】
熱伝導部材30は、ヒータ10の長手方向に熱を伝導して、ヒータ10の温度を、長手方向に均一化するための部材である。熱伝導部材30は、板状部材であり、ヒータ10とホルダ20との間に位置し、基板11の他方の面に接触する。加熱ユニット2が加圧ローラ3との間でシートSを挟むときには、熱伝導部材30は、ヒータ10とホルダ20により挟まれる。熱伝導部材30は、例えばアルミニウムからなる。
【0039】
図3(a),(b)に示すように、抵抗発熱体12の一端12Aおよび他端12Bは、長手方向において、加熱ユニット2で使用可能なシートの最大幅W1の外側、かつ、熱伝導部材30の一端30Aおよび他端30Bの内側に位置する。つまり、長手方向において、熱伝導部材30の長さは、抵抗発熱体12の長さより長い。
【0040】
長手方向において、基板11の長さは、熱伝導部材30の長さより長い。熱伝導部材30の一端30Aは、長手方向において、基板11の一端11Aよりも内側に位置する。熱伝導部材30の他端30Bは、長手方向において、基板11の他端11Bよりも外側に位置する。
【0041】
図4(a)に示すように、定着装置1は、ニップ圧変更機構NMをさらに備えている。ニップ圧変更機構NMは、ニップ部NPにおけるニップ圧を、第1ニップ圧と、第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更する機構である。ニップ圧変更機構NMは、シャフトSFと、加圧アーム60と、加圧バネ70と、カム80と、を備えている。フレーム4は、加圧バネ70を支持するとともに、加圧アーム60およびカム80を回動可能に支持する。
【0042】
加圧アーム60、加圧バネ70およびカム80は、加圧ローラ3の軸方向におけるフレーム4の一端部と他端部のそれぞれに配置されている。以下の説明では、「加圧ローラ3の軸方向」を単に「軸方向」ともいう。ニップ圧変更機構NMの軸方向の一方側の構造と、他方側の構造は、略同一であるため、以下、主に軸方向の一方側の構造を代表して説明する。
【0043】
シャフトSFは、軸方向に延びている。シャフトSFは、例えば金属からなる。シャフトSFの軸方向の各端部には、カム80が固定されている。カム80は、シャフトSFの回動に伴って回動する。フレーム4は、シャフトSFを回動可能に支持する。
【0044】
加圧アーム60は、加熱ユニット2を加圧ローラ3に向けて押圧するアームである。フレーム4は、加圧アーム60を回動可能に支持する。
【0045】
加圧バネ70は、加圧アーム60を加圧ローラ3に向けて付勢する引張コイルバネである。加圧バネ70の一端は、加圧アーム60に取り付けられ、他端は、フレーム4に取り付けられている。
【0046】
カム80は、加圧バネ70の付勢力に抗して加圧アーム60を押圧可能となっている。具体的に、カム80は、
図4(a)に示す第1位置と、
図5(a)に示す第2位置との間で回動可能となっている。カム80は、図示せぬモータから駆動力が供給されることで、回動する。
【0047】
カム80が第1位置に位置するとき、ニップ圧は第1ニップ圧となる。カム80が第2位置に位置するとき、ニップ圧は、第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧となる。
【0048】
図4(b)に示すように、ニップ部NPの搬送方向の長さであるニップ幅Lnは、ニップ圧が第1ニップ圧である場合、搬送方向の最も上流に位置する抵抗発熱体12の上流端E1から、搬送方向の最も下流に位置する抵抗発熱体12の下流端E2までの長さLrよりも大きい。2つの抵抗発熱体12は、搬送方向において、ニップ部NPの範囲内に位置する。
【0049】
図5(b)に示すように、ニップ圧が第2ニップ圧である場合には、ニップ幅Lnは、搬送方向の最も上流に位置する抵抗発熱体12の上流端E1から、搬送方向の最も下流に位置する抵抗発熱体12の下流端E2までの長さLrよりも小さい。ニップ部NPは、搬送方向において、上流端E1から下流端E2までの範囲内に位置する。
【0050】
加熱ユニット2は、軸方向の各端部に、サイドガイドSGを有している。サイドガイドSGは、ステイSTの軸方向の端部を支持する。サイドガイドSGは、フレーム4に移動可能に支持されている。加圧アーム60は、サイドガイドSGを加圧ローラ3に向けて押圧する。
【0051】
制御部500は、CPU,ROM,RAM、不揮発性メモリなどを有し、予め用意されたプログラムに基づいて各種制御を行うように構成される。制御部500は、カバーセンサSE1からの情報に基づいて、リアカバー123が閉じているか否かを判定する機能を有する。制御部500は、リアカバー123が閉じていると判定した場合には、カム80を回動するためのモータを制御することで、ニップ圧変更機構NMによってニップ圧を第1ニップ圧にする。また、制御部500は、リアカバー123が閉じていないと判定した場合には、ニップ圧変更機構NMによってニップ圧を第2ニップ圧にする。
【0052】
制御部500は、印刷指令を受信した場合に、ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定する機能を有している。詳しくは、制御部500は、印刷指令を受信すると、カバーセンサSE1からの情報に基づいてリアカバー123が閉じているか否かを判定する。制御部500は、リアカバー123が閉じていると判定した場合には、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定する。制御部500は、リアカバー123が閉じていないと判定した場合には、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定する。本実施形態で、カバーセンサSE1は、ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定するための情報を検出するセンサに相当する。
【0053】
制御部500は、目標温度Ttと温度センサSE2の検知温度Tとの偏差ΔTに基づいてヒータ10の出力を制御する機能を有する。偏差ΔTは、例えば、目標温度Ttから検知温度Tを引くことで算出される。制御部500は、偏差ΔTが大きいほどヒータ10の出力を大きくする。
【0054】
制御部500は、ヒータ10への通電のデューティ比を変更することで、ヒータ10の出力を変更する機能を有する。制御部500は、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定した場合、
図7(a)に示す第1テーブルと、偏差ΔTとに基づいて、デューティ比を決定する。第1テーブルにおけるデューティ比の上限値である第1デューティ上限値は、100%になっている。
【0055】
制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合、
図7(b)に示す第2テーブルと、偏差ΔTとに基づいて、デューティ比を決定する。第2テーブルにおけるデューティ比の上限値である第2デューティ上限値は、57%になっている。
【0056】
つまり、制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合には、第1デューティ上限値(100%)よりも小さな第2デューティ上限値(57%)以下となるように、デューティ比を設定する。このようにデューティ比を設定することで、制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合には、ヒータ10の出力を、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定したときの上限値である第1上限値よりも小さな第2上限値以下となるように制御する。
【0057】
次に、制御部500の動作について詳細に説明する。
図6に示すように、制御部500は、印刷指令があるか否かを判定する(S1)。ステップS1において印刷指令がないと判定した場合には(No)、制御部500は、本処理を終了する。
【0058】
ステップS1において印刷指令があると判定した場合には(Yes)、制御部500は、カバーセンサSE1からの情報に基づいて、ニップ圧が第1ニップ圧であるか否かを判定する(S2)。ステップS2においてニップ圧が第1ニップ圧であると判定した場合には(Yes)、制御部500は、
図7(a)に示す第1テーブルを選択する(S3)。
【0059】
ステップS2においてニップ圧が第1ニップ圧でないと判定した場合には(No)、ニップ圧が第2ニップ圧であるため、制御部500は、
図7(b)に示す第2テーブルを選択する(S4)。ステップS3またはステップS4の後、制御部500は、温度センサSE2からヒータ10の温度を取得する(S5)。
【0060】
ステップS5の後、制御部500は、目標温度Ttと温度センサSE2の検知温度Tとの偏差ΔTを算出する(S6)。ステップS6の後、制御部500は、ステップS3またはステップS4で選択したテーブルと、偏差ΔTとに基づいてデューティ比を設定し、設定したデューティ比でヒータ10の通電制御を行う(S7)。
【0061】
ステップS7の後、制御部500は、印刷が終了したか否かを判定する(S8)。ステップS8において印刷が終了していないと判定した場合には(No)、制御部500は、ステップS5の処理に戻る。
【0062】
ステップS8において印刷が終了したと判定した場合には(Yes)、制御部500は、ヒータ10への通電を停止して(S9)、本処理を終了する。
【0063】
次に、制御部500の動作の具体例について説明する。
ユーザがストレート印字を行うべく、
図1に示すリアカバー123を開けると、制御部500は、カバーセンサSE1からの情報に基づいて、
図4(a)に示すニップ圧変更機構NMを制御することで、ニップ圧を第1ニップ圧から第2ニップ圧に変更する。
【0064】
制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧であるときに印刷指令を受けると、ステップS1:Yes→S2:No→S4~S7の順で処理を進める。これにより、ヒータ10の出力が、第2上限値(57%)以下に制限される。
【0065】
ここで、
図5(b)に示すように、ニップ圧が第2ニップ圧である場合には、ニップ幅Lnが小さいので、ヒータ10からベルトBLを介して加圧ローラ3に伝達される熱量が小さくなり、ヒータ10に熱が籠りやすい。特に、本実施形態のように、抵抗発熱体12の一部がニップ部NPの範囲外にはみ出す場合には、ヒータ10に熱が籠りやすい。しかしながら、前述したようにニップ圧が第2ニップ圧であるときにはヒータ10の出力が、第2上限値以下に制限されるので、ヒータ10に熱が籠ることが抑制される。
【0066】
以上、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
ニップ圧が小さい場合にはヒータ10の出力を第2上限値以下に制限するので、ニップ圧が小さい場合にヒータ10に通電することによって生じるヒータ10の過昇温を抑制することができる。
【0067】
ニップ圧が小さいときに、大きなデューティ比で通電されないので、ニップ圧が小さい場合にヒータ10の出力を第2上限値以下に制限することができる。
【0068】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0069】
前記実施形態では、偏差ΔTに基づいてデューティ比を設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、偏差ΔTに比例する比例項と、偏差の微分値に比例する微分項との和を含む操作量Uに基づいてデューティ比を設定してもよい。具体的に、制御部500は、以下の式(1)によって、操作量Uを算出する。
Un=KpΔTn+KdDn ・・・(1)
Dn=(Tn-Tn-1)/ts
ts:制御サイクル(時間)
【0070】
ここで、Kpは、予め設定した固定値としての比例ゲインである。Kdは、微分ゲインであり、後述するようにニップ圧に応じてK1,K2から選択される値である。Dは、偏差ΔTの微分値である。各変数に付したnは、変数が今回値であることを示し、n-1は、前回値であることを示している。
【0071】
KpΔTnは、比例項であり、KdDnは、微分項である。比例項と微分項の正負の関係は、検知温度Tが目標温度Ttに向けて上昇していく過程において互いに打ち消し合う関係となるように設定されている。以下の具体例では、Kpが正、Kdが負、ΔTnおよびDnが、検知温度Tが目標温度Ttに向けて上昇していく過程において正となるように設定されていることとする。
【0072】
なお、以下の具体例とは逆に、Kpを負、Kdを正としてもよい。また、ΔTnおよびDnが、検知温度Tが目標温度Ttに向けて上昇していく過程において負となるように設定される場合、例えばΔT=Tn-1-Tnの場合も、KpとKdの正負の関係を逆にすればよい。
【0073】
制御部500は、操作量Uの絶対値が大きいほどヒータ10への通電のデューティ比を大きくするように構成されている。制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧である場合には、微分項の係数Kdを変更することによってニップ圧が第1ニップ圧である場合よりも操作量Uの絶対値を小さくするように構成されている。
【0074】
具体的に、制御部500は、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定した場合、係数Kdを-K1に設定する。また、制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合、係数Kdを-K2に設定する。K1,K2は、正の値であり、K1<K2の関係となっている。
【0075】
制御部500は、ニップ圧が第1ニップ圧であると判定した場合、
図9(a)に示す第3テーブルと、操作量Uとに基づいて、デューティ比を決定する。第3テーブルにおけるデューティ比の上限値である第1デューティ上限値は、100%になっている。
【0076】
制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧であると判定した場合、
図9(b)に示す第4テーブルと、操作量Uとに基づいて、デューティ比を決定する。第4テーブルにおけるデューティ比の上限値である第2デューティ上限値は、57%になっている。
【0077】
この形態に係る制御部500は、
図8に示す処理を実行する。
図8に示す処理は、
図6に示す処理の一部を変更したものであるため、
図6の処理と同じ処理については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図8に示すように、制御部500は、ステップS2においてニップ圧が第1ニップ圧であると判定した場合には(Yes)、
図9(a)に示す第3テーブルを選択する(S21)。ステップS21の後、制御部500は、微分項の係数K
dを-K1に設定する(S22)。
【0079】
ステップS2においてニップ圧が第1ニップ圧でないと判定した場合には(No)、制御部500は、
図9(b)に示す第4テーブルを選択する(S23)。ステップS23の後、制御部500は、微分項の係数K
dを-K2に設定する(S24)。つまり、制御部500は、ニップ圧が第2ニップ圧である場合には、微分項の係数K
dの絶対値を、ニップ圧が第1ニップ圧である場合よりも大きくする。
【0080】
ステップS22またはステップS24の後、制御部500は、ステップS5の処理を実行する。ステップS6の後、制御部500は、式(1)によって操作量Uを算出する(S25)。ステップS25の後、制御部500は、ステップS22またはステップS24で選択したテーブルと、操作量Uとに基づいてデューティ比を設定し、設定したデューティ比でヒータ10の通電制御を行う(S26)。ステップS26の後、制御部500は、ステップS8の処理を実行する。
【0081】
この形態でも、ニップ圧が小さい場合にはヒータ10の出力が第2上限値以下に制限されるので、ニップ圧が小さい場合にヒータ10に通電することによって生じるヒータ10の過昇温を抑制することができる。
【0082】
前記実施形態では、加圧回転体として加圧ローラ3を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。加圧側の構造が、無端状の加圧ベルトと、加熱ユニットとの間で加圧ベルトを挟むパッドを含む場合、加圧回転体は、加圧ベルトであってもよい。
【0083】
ニップ圧変更機構は、前記実施形態の構造に限らない。ニップ圧変更機構は、例えば、ニップ圧を3段階以上で切替可能となっていてもよい。ニップ圧変更機構は、第2開口H2を開閉するリアカバー123の開閉動作に連動してカム80を第1位置と第2位置との間で回動させるリンク機構を有していてもよい。この場合、リアカバー123が閉じた状態の時、カム80をリンク機構を介して第1位置に回動させ、リアカバー123が開いた状態の時、カム80をリンク機構を介して第2位置に回動させればよい。
【0084】
ニップ圧が第1ニップ圧および第2ニップ圧のいずれであるかを判定するための情報を検出するセンサは、カバーセンサSE1に限らず、例えば、加熱ユニットの位置を検出するセンサ、またはプロセスカートリッジ150の本体筐体120への着脱を検出するセンサなどであってもよい。センサがプロセスカートリッジ150の本体筐体120への着脱を検出するセンサの場合、ニップ圧変更機構は、プロセスカートリッジ150の本体筐体120への着脱に連動してカム80を第1位置と第2位置との間で回動させればよい。
【0085】
前記実施形態では、レーザプリンタ100に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【0086】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0087】
3 加圧ローラ
10 ヒータ
11 基板
12 抵抗発熱体
100 レーザプリンタ
500 制御部
BL ベルト
NM ニップ圧変更機構
NP ニップ部