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特開2024-48340システム、生体体調改善システム、装置およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048340
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】システム、生体体調改善システム、装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A61N1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085494
(22)【出願日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022154144
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522158465
【氏名又は名称】DENBA JAPAN株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000147
【氏名又は名称】伊藤忠商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 錦隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 加奈子
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053LL08
4C053LL13
(57)【要約】
【課題】電場形成の調整に生体情報を活用可能とするシステム、装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、システムであって、空間電場発生部と、センサ部と、算出部とを備え、
前記センサ部は、生体情報を検知可能に構成され、前記算出部は、前記センサ部によって検知された前記生体情報に基づいて電場の形成条件を算出し、前記空間電場発生部は、電極部と電圧印加部とを備え、前記形成条件に基づいて電場を形成可能に構成され、前記電極部は、前記電圧印加部の端子である一線のみと接続されており、前記電極部と前記センサ部とが同一の部材に配置されている、システムが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
空間電場発生部と、センサ部と、算出部とを備え、
前記センサ部は、生体情報を検知可能に構成され、
前記算出部は、前記センサ部によって検知された前記生体情報に基づいて電場の形成条件を算出し、
前記空間電場発生部は、電極部と電圧印加部とを備え、前記形成条件に基づいて電場を形成可能に構成され、
前記電極部は、前記電圧印加部の端子である一線のみと接続されており、
前記電極部と前記センサ部とが同一の部材に配置されている、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記電圧印加部は、前記電極部に交流電圧を前記形成条件に基づいて印加する、システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、
電場発生装置と、情報処理装置とを備え、
前記電場発生装置は、前記空間電場発生部と、前記センサ部とを備え、
前記情報処理装置は、前記算出部を備える、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記情報処理装置は、通信部をさらに備え、
前記通信部は、前記生体情報を前記センサ部から受信し、前記形成条件を前記空間電場発生部に送信する、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムを用いる、生体体調改善システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記電極部は、接地電極を有しない、システム。
【請求項7】
請求項1または請求項6に記載のシステムであって、
前記電極部は、電極を備え、
前記センサ部は、前記電極の間に配置されている、システム。
【請求項8】
請求項1または請求項6に記載のシステムであって、
前記電極部は、電極を備え、
前記センサ部は、折り曲げられた前記電極の間に配置されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、生体体調改善システム、装置および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の周囲に形成された電場による生体刺激作用を利用して治療を行う電位治療装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、被治療者の周囲に交流電場を形成し、形成された交流電場を被治療者に印加しながら治療を行う治療装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2019/097590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置では、生体の周囲に電場を形成することができるものの生体の状態に応じた電場形成を調整することができなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電場形成の調整に生体情報を活用可能とするシステム、装置およびプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]システムであって、空間電場発生部と、センサ部と、算出部とを備え、前記センサ部は、生体情報を検知可能に構成され、前記算出部は、前記センサ部によって検知された前記生体情報に基づいて電場の形成条件を算出し、前記空間電場発生部は、電極部と電圧印加部とを備え、前記形成条件に基づいて電場を形成可能に構成され、前記電極部は、前記電圧印加部の端子である一線のみと接続されており、前記電極部と前記センサ部とが同一の部材に配置されている、システム。
[2][1]に記載のシステムであって、前記電圧印加部は、前記電極部に交流電圧を前記形成条件に基づいて印加する、システム。
[3][1]または[2]に記載のシステムであって、電場発生装置と、情報処理装置とを備え、前記電場発生装置は、前記空間電場発生部と、前記センサ部とを備え、前記情報処理装置は、前記算出部を備える、システム。
[4][3]に記載のシステムであって、前記情報処理装置は、通信部をさらに備え、前記通信部は、前記生体情報を前記センサ部から受信し、前記形成条件を前記空間電場発生部に送信する、システム。
[5][1]に記載のシステムを用いる、生体体調改善システム。
[6][1]に記載のシステムであって、前記電極部は、接地電極を有しない、システム。
[7][1]または[6]に記載のシステムであって、前記電極部は、電極を備え、前記センサ部は、前記電極の間に配置されている、システム。
[8][1]または[6]に記載のシステムであって、前記電極部は、電極を備え、前記センサ部は、折り曲げられた前記電極の間に配置されている、システム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る電場調整システム1の概略図である。
図2図2は、本発明に係る第1実施形態の電場発生装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明に係る空間電場発生部30が備える電圧印加部31を示す回路図である。
図4図4は、本発明に係る空間電場発生部30が備える電極部32を示す平面図である。
図5図5は、本発明に係る第1実施形態の電場発生装置3の概略図である。
図6図6は、本発明に係る第1実施形態の情報処理装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明に係る第1実施形態の情報処理装置4の制御部の機能構成を示すブロック図である。
図8図8は、電場調整システム1による調整の各工程を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明に係る電場調整システム1の第2実施形態の概略図である。
図10図10は、本発明に係る第2実施形態の電場発生装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11図11は、本発明に係る第2実施形態の情報処理制御部60の機能構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明に係る電場調整システム1の第3実施形態の概略図である。
図13図13は、本発明に係る第3実施形態の電場発生装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図14図14は、本発明に係る電場調整システム1の第3実施形態の概略図である。
図15図15は、本発明に係る第3実施形態の電場発生装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図16図16は、本発明に係る第3実施形態のセンサ装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
図17図17は、本発明に係る電場調整システム1の第4実施形態の概略図である。
図18図18は、本発明に係る第4実施形態の情報処理装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。
図19図19は、本発明に係る空間電場発生部30が備える電圧印加部31の変形例を示す回路図である。
図20図20は、実験における電場が身体機能に及ぼす影響を示す。
図21図21は、実験における電場が認知機能に及ぼす影響を示す。
図22図22は、実験における電場がHR(平均値)およびSRDD(標準偏差)に及ぼす影響を示す。
図23図23は、実験におけるRR間隔データのPSD(パワースペクトル密度)を示す。
図24図24は、実験における電場がVLF、LF、HFおよびLF/HFに及ぼす影響を示す。
図25】試験群と対照群における唾液中のコルチゾール濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電場調整システム1は、空間電場発生部30と、センサ部20と、算出部51とを備えるシステムである。
【0011】
本実施形態では、電場調整システム1の一例として、電場発生装置3と情報処理装置4とを備えるシステムについて説明する。当該システムにおいては、電場発生装置3は、空間電場発生部30とセンサ部20とを備え、情報処理装置4は、算出部51を備える。
【0012】
1.1 電場発生装置3
図2に本実施形態に係る電場発生装置3のハードウェア構成を示す。電場発生装置3は、センサ部20と空間電場発生部30とを備える。また、電場発生装置3は、電場制御部33と、通信部34をさらに備えてもよい。電場発生装置3は、通信部34を介して情報処理装置4と通信可能に構成される。情報処理装置4から電場の形成条件を受信し、電場制御部33が空間電場発生部30を制御することで、発生させる電場の調整が可能である。
【0013】
1.1.1 空間電場発生部30
空間電場発生部30の好適な例として、特許第5683032号に開示されている装置が挙げられる。空間電場発生部30は、電圧印加部31と電極部32とを備える。
【0014】
図3に本発明に係る電圧印加部31の回路図を示す。電圧印加部31は、トランス301、フィードバック制御回路302、出力制御部303、および出力端子304を有する。トランス301は、1次コイル305と2次コイル306を有し、磁気的に結合されている。
【0015】
1次コイル305には、交流電源により交流電圧VL2が印加される。一例では、交流電源はAC入力コンセント307に接続された商用電源を用いることができる。
【0016】
AC入力コンセント307と1次コイル305の間にはブレーカー308が設けられていてもよく、ブレーカー308と1次コイル305の間にはスイッチ素子309が設けられていてもよい。また、交流電源として、例えば電圧印加部31の内部または外部に設けられた2次電池やその他の電源を例えばインバータ回路により交流に変換することで得られる交流電源を用いてもよい(図示せず)。
【0017】
2次コイル306の一方の端子306aは、2次コイル306における電圧を調整するためのフィードバック制御回路302を介して、1次コイル305の一方の端子305aに接続されている。言い換えれば、フィードバック制御回路302は、2次コイル306における電圧を調整するために、2次コイル306の一方の端子306aを1次コイル305の一方の端子305aに戻す。
【0018】
出力制御部303は、2次コイル306の他方の端子306bと出力端子304の間に設けられている。また、出力制御部303は、2次コイル306の出力電圧に異なる周波数の電圧を付加する。
【0019】
前述のフィードバック制御回路302は、2次コイル306側に発生した電流を1次コイル305にフィードバックするように構成される。よって、少ない巻数で2次コイル306側に高い電圧を発生させることができる。また、フィードバック制御回路302および出力制御部303は回路に遅延を生じさせるように構成されており、その結果、2次コイル306の出力に例えば、20~100Hzの異なる周波数の電圧が付加される。
【0020】
電極部32は、給電線(図示せず)を介して、電圧印加部31の出力端子304と接続され、交流電圧VL1が印加される。すなわち、電極部32は、給電線および出力制御部303を介して、2次コイル306の他方の端子306bに接続されることになる。また、給電線は、導線で構成される。
【0021】
図4に本発明に係る電極部32の平面図を示す。電極部32は、接地電極を有さず、2次コイル306の他方の端子306bである一線のみと接続されることにより、電圧が印加されている状態となるので、電極部32と生体5に電子分極が生じることで、電極部32の周囲に電場を形成することができる(具体的には電極部32を中心に半径約1.5mの範囲)。
【0022】
電極部32は導電性材料からなる電極を備える。電極部32が備える電極は、例えば線状の電極線32aで構成される。図4の電極線32aの形状は一例にすぎず、電極線32aは、電極部32の内部に任意の形状、例えば網状などに張り巡らされてよい。導電性材料は、高圧線として利用できる任意の材質や、導電性シリカゲル等とできる。また、可撓性がある導電性材料を用いることで、電極部32を折り曲げられるように構成することができる。
【0023】
1.1.2 センサ部20
センサ部20は、生体情報を検知可能に構成される。センサ部20が検知する生体情報は、空間電場発生部30が形成する電場の照射対象である人体や動物等の生体5に関する情報である。生体情報は、各種センサによって検知可能な種々の情報である。
【0024】
センサ部20では、例えば、離床状況、呼吸率、心拍数、体温、いびき、寝返り、睡眠状態(入眠、起床、浅い眠り、深い眠り)、電場発生空間領域からの落下等の生体情報を検出することができる。センサ部20は、生体情報を検出するために、例えば、荷重センサ、感圧センサ、加速度センサ、湿度センサ、呼吸センサ、光学式心拍センサ、血中酸素センサ、電気心拍センサ、血流センサ、振動センサ、温度センサ、照度センサ、近赤外線カメラ、遠赤外線カメラ、およびマイク等を1つ以上備えることができる。なお、生体情報は、後述の定性的な生体情報を含んでいてもよい。
【0025】
またセンサ部20は、生体情報以外に、例えば気温などの生体5の周囲の情報(環境情報)を検知してもよい。
【0026】
1.1.3 電場制御部33
電場制御部33は、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)等のプロセッサを含むことができる。
【0027】
電場制御部33は、電場の形成条件に基づいて電圧印加部31を制御する。電場制御部33は、情報処理装置4から算出部51によって算出された電場の形成条件を取得することができる。
【0028】
また、電場制御部33は、スイッチの切り替えを制御することによって電場のオンオフパターンを調整し、フィードバック制御回路302や出力制御部303を制御することによって電場の強度や周波数を調整することができる。
【0029】
通信部34は、送受信可能に構成され、通信回線に接続する機能を有する。通信部34は、例えば、例えばNIC(Network Interface Controller)、無線LAN(Local Area Network)に接続する機能、無線WAN(Wide Area Network)に接続する機能、Bluetooth(登録商標)等の近距離の無線通信や赤外線通信等を可能とする機能を有してもよい。電場発生装置3は、通信部34によって通信回線を介して、情報処理装置4と接続され、各種データの送受信を行うことができる。
【0030】
空間電場発生部30、センサ部20、電場制御部33、および通信部34は、通信バス10によって相互に接続されている。
【0031】
図5に電場発生装置3の構成の概略図の一例を示す。該電場発生装置3は、本体3aとマット部3bとで構成することができ、本体3aは、空間電場発生部30の電圧印加部31と、電場制御部33と、通信部34と、を備える。マット部3bには、空間電場発生部30の電極部32と、センサ部20とが並置されている。電極部32とセンサ部20はそれぞれ本体と電気的に接続されている。
【0032】
具体的には、センサ部20は任意の形状の電極の間に配置され、同一の部材であるマット部3bに組み込まれている。図5の例においては、電極が電極線32aであり、センサ部20は、折り曲げられた電極線32aの間に配置されている。
【0033】
通常、当該構成の場合、交流電場を形成する際に、電極部32から高い電圧が印加されることにより、センサから得られる信号にノイズが生じるおそれがある。本発明に係る空間電場発生部30の構成は、前述のように、電極部32は接地電極を有しておらず、電圧印加部の1つの端子306bのみと接続されている構成である。したがって、本発明に係る電場は、電極部32と生体5との間に電子分極が生じることにより形成されるものである。このように形成される電場は、センサにノイズの影響を及ぼしにくいという効果を有するため、電極部32とセンサ部20とが近接した位置に配置される構成が可能となる。
【0034】
なお、センサ部20のマット部3bにおける設置位置は、図5とは異なる位置に設けられていてもよく、また複数のセンサ部20がマット部3bに設けられていてもよい。また、マット部3bは、例えば、寝具として人が用いるもの等とできる。
【0035】
1.2 情報処理装置4
1.2.1 情報処理装置4のハードウェア構成
図6は、本発明に係る情報処理装置4のハードウェア構成を示す図である。本実施形態に係る情報処理装置4は、制御部40と記憶部41と通信部42とを備える。情報処理装置4は、入力部と出力部とをさらに備えていてもよい(図示せず)。
【0036】
制御部40は、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)等のプロセッサを含むことができる。
【0037】
記憶部41は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含んでもよい。揮発性メモリの例としては、RAM(Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)が挙げられ、制御部40による各種プログラムに基づく処理の実行時のワークエリア等として用いられる。不揮発性メモリの例としては、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリが挙げられ、各種データや制御部40の処理に利用されるプログラム等を保存するために用いられる。また、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置を含んでもよい。
【0038】
記憶部41に記憶されるプログラムは、例えば情報処理装置4の基本的な機能を実現するためのOS(Operating System)、各種ハードウェアを制御するためのドライバ、各種機能を実現するためのプログラム等であって、本実施形態に係るコンピュータプログラムを含む。
【0039】
通信部42は、送受信可能に構成され、通信回線に接続する機能を有する。通信部42は、例えば、例えばNIC(Network Interface Controller)、無線LAN(Local Area Network)に接続する機能、無線WAN(Wide Area Network)に接続する機能、Bluetooth(登録商標)等の近距離の無線通信や赤外線通信等を可能とする機能を有してもよく、または有線接続が可能な機能を有してもよい。情報処理装置4は、通信部42によって通信回線を介して電場発生装置3と接続され、各種データの送受信を行うことができる。
【0040】
入力部は、例えば、キーボード、キーパッド、マウス、マイク、タッチスクリーン、ボタン等の1つまたは複数を含むことができる。
【0041】
出力部は、例えば、センサ部20が取得した生体情報等を画面表示、光、音、振動を用いて通知することができる。出力部は、例えば、任意のディスプレイ、照明、スピーカー等の1つまたは複数を含むことができる。
【0042】
制御部40、記憶部41、通信部42、入力部、および出力部は、通信バス10によって相互に接続されている。
【0043】
情報処理装置4は、サーバ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、スマートグラスなどであってよい。
【0044】
1.2.2 情報処理装置4の機能構成
情報処理装置4は、電場発生装置3と通信回線を介して通信可能に構成される。情報処理装置4は、電場発生装置3のセンサ部20が取得した生体情報に基づいて、またはユーザが直接入力した生体情報に基づいて、電場の形成条件の変更または電場の形成の開始もしくは終了の決定を行うことができる。
【0045】
また、情報処理装置4は、センサ部20およびユーザが直接入力した生体情報に基づいて、ユーザの状態をユーザに提示、または外部と通信回線を介して通信することができる。
【0046】
図7は、本発明に係る情報処理装置4の機能構成を示すブロック図である。情報処理装置4の制御部は、生体情報取得部50と算出部51を備える。
【0047】
生体情報取得部50は、電場発生装置3のセンサ部20が検出した生体情報、環境情報や、生体5の気分、体調等の定性的な生体情報を取得する。
【0048】
センサ部20が検出した生体情報は、通信部42を介して電場発生装置3と通信することによって、取得され得る。
【0049】
定性的な生体情報は、入力部を介してユーザによって入力された情報が直接取得されるか、入力部を介してユーザによって入力された情報を記録している記憶部41から取得され得る。あるいは、定性的な生体情報は、ユーザが外部のユーザ端末に情報を入力し、該ユーザ端末と制御部40の生体情報取得部50が通信部42を介して通信することによって、または該ユーザ端末で入力された情報が記録されているサーバのデータベース等と制御部40の生体情報取得部50が通信部42を介して通信することによって取得されてもよい。なお、ここでいう「ユーザ」とは、入力操作が可能な電場の照射対象である生体5(人体)自身、または、生体5から聞き取りあるいは生体5を観察等して定性的な生体情報を得た人物等である。
【0050】
算出部51は、生体情報取得部50が取得した情報に基づいて、電場の形成条件を算出する。電場の形成条件は、例えば形成する電場のオンオフパターン、電場の強度、または周波数、また、既に形成されている電場を調整する場合の形成条件は、電場のオンオフパターンの変更、電場の強度の変更、または周波数の変更等を含む。さらに、算出部51は、センサ部20が検出した生体情報に基づいて、生体5の状態を決定してもよく、決定した状態をユーザに通知するか否かを決定することもできる。算出部51は、決定された生体5の状態に基づき電場の形成条件を算出してもよい。また、算出部51は、生体情報(生体5の状態を含んでよい)および/または環境情報に基づいて電場の形成条件を算出してもよい。
【0051】
例えば、算出部51は、生体情報取得部50が取得した心拍間隔や呼吸周期に基づいて、浅い眠りか、深い眠りかなどの睡眠状態を判断する。睡眠状態の計測において、生体5は浅い眠りが続いている状態(例えば、予め設定されている基準期間、或いは、生体5の平均的な浅い眠りの期間よりも長く続いている状態)であると判断された場合、算出部51は電場の強度を強くするような形成条件を算出する。
【0052】
また、例えば、算出部51は、生体情報取得部50が取得した血流量に基づいて、健康状態を判断する。健康状態に問題があると判断された場合(例えば、血栓がある等)、算出部51は電場の強度を強くするような形成条件を算出する。また同時に、健康状態に問題があると判断された際、算出部51は、ユーザへ通知を行うことを決定する。通知は、出力部等を介して行われ得る。
【0053】
上述した機能構成は、情報処理装置4に適宜インストールされるソフトウェア(いわゆるアプリを含む)によって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、制御部40がソフトウェアを構成するプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。
【0054】
また、情報処理装置4の機能として説明した一部の機能構成は、ソフトウェアまたはハードウェアによって他装置の制御部等で処理されるようにしてもよい。
【0055】
1.3 電場調整システム1による調整の流れ
電場調整システム1による調整の流れについて、図8を用いて説明する。まず、電場発生装置3のセンサ部20が生体情報取得工程S1を実行する。生体情報取得工程S1では、センサ部20が生体情報を検出し、検出された生体情報が、電場発生装置3の通信部34を介して情報処理装置4に送信される。
【0056】
次に、情報処理装置4の制御部は、電場条件算出工程S2を実行する。電場条件算出工程S2では、電場発生装置3から生体情報が送信されると、情報処理装置4の通信部42を介して制御部40が生体情報を受信し、次いで情報処理装置4の制御部40が電場の形成条件を算出する。具体的には、情報処理装置4において、通信部42を介して受信した生体情報を、制御部40の生体情報取得部50が取得し、生体情報取得部50が取得した生体情報に基づいて算出部51が電場の形成条件を算出する。算出された電場の形成条件は、通信部42を介して電場発生装置3に送信される。
【0057】
次に、電場発生装置3の空間電場発生部30が、電場形成工程S3を実行する。電場形成工程S3では、情報処理装置4から送信された電場の形成条件を、電場発生装置3の通信部42を介して受信し、次いで電場発生装置3において電場の形成を行う。具体的には、電場発生装置3の電場制御部33が、情報処理装置4から受信した電場の形成条件に基づいて、空間電場発生部30の電圧印加部31を制御することで、電極部32の周囲に所望の電場が形成される。
【0058】
また、電場形成工程S3の後さらに調整を継続してもよく、この場合は再び生体情報取得工程S1に戻り調整の流れを繰り返す。
【0059】
2.第2実施形態
図9に第2実施形態に係る電場調整システム1の概略図を示す。本実施形態に係る電場調整システム1は、電場発生装置3を備え、電場の形成条件の算出を電場発生装置3の情報処理制御部60によって実行する点で第1実施形態と異なる。なお、以下においては、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0060】
電場発生装置3は、ハードウェア構成として、センサ部20と、空間電場発生部30と、電場制御部33と、情報処理制御部60と、記憶部61とを備える(図10)。電場発生装置3は、入力部と、出力部と、通信部と、をさらに備えていてもよい(図示せず)。また、これらは互いに通信可能に構成されている。
【0061】
情報処理制御部60の機能構成を図11に示す。情報処理制御部60のハードウェア構成は、第1実施形態の情報処理装置4の制御部40で用いられるものと同様のプロセッサとできる。また、情報処理制御部60は、機能構成として生体情報取得部70と算出部71とを備える。生体情報取得部70は生体情報を取得し、算出部71は生体情報取得部70が取得した情報に基づいて電場の形成条件を算出する。
【0062】
本実施形態の電場制御部33は、第1実施形態の電場発生装置3の電場制御部33で用いられるものと同様のプロセッサとできる。電場制御部33は、電場の形成条件に基づいて電圧印加部31を制御する。
【0063】
また、電場制御部33と情報処理制御部60は、同一のハードウェア上で実現されてもよい。
【0064】
記憶部61は、第1実施形態の記憶部41と同様の揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含むことができる。記憶部61に記憶されるプログラムは、情報処理制御部60の機能を実現するためのOS(Operating System)、各種ハードウェアを制御するためのドライバ、各種機能を実現するためのプログラム等であって、本実施形態に係るコンピュータプログラムを含む。
【0065】
通信部は、送受信可能に構成され、通信回線に接続する機能を有する。当該通信部は、第1実施形態の通信部34および通信部42と同様の無線通信や赤外線通信等を可能にする機能を有することができる。
【0066】
3.第3実施形態
本実施形態に係る電場調整システム1は、センサ装置2をさらに備える点で第1実施形態または第2実施形態と異なる。
【0067】
電場調整システム1は、電場発生装置3と、センサ装置2と、情報処理装置4と、を備えていてもよい(図12参照)。電場発生装置3は、ハードウェア構成として、空間電場発生部30と、電場制御部33と、通信部34と、を備える(図13参照)。
【0068】
また、電場調整システム1は、センサ装置2と、電場発生装置3と、を備えていてもよい(図14参照)。電場発生装置3は、ハードウェア構成として、空間電場発生部30と、電場制御部33と、通信部34と、情報処理制御部60と、記憶部61とを備える(図15参照)。電場発生装置3は、入力部と、出力部と、をさらに備えていてもよい(図示せず)。
【0069】
センサ装置2と、電場発生装置3または情報処理装置4は、通信回線を介して通信可能に構成される。なお、以下においては、第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
図16に、本実施形態に係るセンサ装置2のハードウェア構成を示す。センサ装置2は、センサ部20と、通信部21と、を備える。センサ部20は、生体情報や生体5の周囲の情報を検知可能に構成される。本実施形態のセンサ部20が検出可能な情報およびセンサ部20が有することができるセンサは、第1実施形態のセンサ部20に記載されたものと同様のものである。
【0071】
通信部21は、送受信可能に構成され、通信回線に接続する機能を有する。通信部21は、第1実施形態の通信部34および通信部42と同様の無線通信や赤外線通信等を可能にする機能を有することができる。また、センサ部20は通信部21によって通信回線を介して電場発生装置3(および情報処理装置4)と接続され、各種データの送受信を行うことができる。
【0072】
4.第4実施形態
図17に本実施形態に係る電場調整システム1の概略図を示す。本実施形態は、電場発生装置3と情報処理装置4とを備えるが、情報処理装置4が生体情報を検出する点で第1実施形態と異なる。なお、以下においては、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
電場発生装置3は、空間電場発生部30と電場制御部33と通信部34とを備える。なお、本実施形態に係る電場発生装置3は、図13に示す第3実施形態の電場発生装置3のハードウェア構成と同様である。
【0074】
図18に本実施形態に係る情報処理装置4のハードウェア構成を示す。情報処理装置4は、センサ部20と制御部40と記憶部41と通信部42とを備え、これらは互いに通信可能に構成されている。情報処理装置4は、入力部と出力部とをさらに備えていてもよい(図示せず)。
【0075】
情報処理装置4のセンサ部20は、生体情報や環境情報を検知可能に構成される。センサ部20が検出可能な情報およびセンサ部20が有することができるセンサは、第1実施形態のセンサ部20に記載されたものと同様のものである。
【0076】
情報処理装置4の制御部40、記憶部41および通信部42は、第1実施形態と同様のものである。
【0077】
5.第5実施形態
本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、条件算出工程を実行させるプログラムである。プログラムを実行されるコンピュータは、サーバ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、スマートグラス等の情報処理装置4であり、第1実施形態等に記載の情報処理装置4またはこれと同様のハードウェア構成を備える情報処理装置4であってよい。なお、以下においては、第1実施形態等との相違点を中心に説明する。
【0078】
条件算出工程では、生体5に関する生体情報に基づいて生体5に対して発生させる電場の形成条件を算出する。生体情報は、上述のセンサ部20等の各種センサによって検知可能された情報、または、定性的な生体情報等である。このような構成とすることにより、生体5の状態の応じた電場形成の調整に必要な電場の形成条件が算出され、電場形成の調整に生体情報が利用可能となる。
【0079】
条件算出工程は、生体情報に基づいて生体5の状態を決定する工程を含んでいてもよい。生体5の状態を決定する工程では、例えば、生体情報取得部50が取得した心拍間隔や心拍変動や呼吸周期を元に、浅い眠りか、深い眠りかなどの睡眠状態を決定する。
【0080】
プログラムは、情報受付工程と、条件送信工程と、をさらに備えていてもよい。
【0081】
情報受付工程では、生体情報を受け付ける。生体情報の受付は、センサ部20を備える装置から取得、または、生体情報を記憶しているサーバ等の情報処理装置4から取得することにより行われ得る。生体情報は、同一装置内の通信によって取得されてもよい。
【0082】
条件送信工程では、算出された電場の形成条件を送信する。電場の形成条件は、例えば、電場発生装置3へ送信され、電場制御部33はこれに基づき電場の形成を制御する。
【0083】
6.第6実施形態
本発明の一実施形態に係る電場発生装置3は、空間電場発生部30とセンサ部20とを備え、空間電場発生部30は、電場を形成するように構成され、センサ部20は、生体情報を検知可能に構成される。このような構成とすることにより、電場形成の調整に生体情報を活用可能とする。電場発生装置3がセンサ部20を備えることにより電場の形成条件の算出に必要な生体情報の収集を行うことが可能となる。
【0084】
電場発生装置3は、通信部34をさらに備えていてもよい。電場発生装置3は、通信部34を介して収集した生体情報を送信可能である。
【0085】
なお、空間電場発生部30、センサ部20、通信部34は、第1実施形態と同様の構成を有する。
【0086】
7.その他の実施形態
7.1 情報処理装置4について
情報処理装置4は、各実施形態の情報処理機能に係るプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体または上述のプログラムを記録したコンピュータの読み取りが可能な記録媒体として実現することもできる。
【0087】
電場の形成条件の算出方法の変形例として、機械学習アルゴリズムを用いて算出してもよい。例えば、発生させた電場に対して得られた生体情報との関係を学習させることで、発生させる電場の形成条件を最適化する。
【0088】
7.2 電圧印加部31の変形例
電圧印加部31の他の好適な例として、特許第6366882号に開示されている電圧印加装置を挙げることができる。図19を参照しながら本変形例を説明する。
【0089】
本変形例では、上述の電圧印加部31と同様に、1次コイル305には交流電圧VL2が印加され、交流電源として、AC入力コンセント307に接続された商用電源を用いることができる。
【0090】
本変形例では、電圧印加部31は電圧調整部310をさらに備える。電圧調整部310は、交流電源から入力される交流電圧VL3の電圧値を、互いに異なる複数の種類の電圧値に切り替え、電圧値が切り替えられた交流電圧VL3を交流電圧VL2として1次コイル305に印加することにより、出力端子304に出力される交流電圧VL1の電圧値を調整する。これにより、交流電圧VL1の電圧値を例えば強中弱の3種類の電圧値等、さまざまな値に切り替えることができる。
【0091】
好適には、電圧調整部310は、抵抗素子311とスイッチ素子313とを含む。抵抗素子311は、1次コイル305の一方の端子305aまたは他方の端子305bである端子305cとAC入力コンセント307との間に設けられている。
【0092】
スイッチ素子313は、端子305cを、抵抗素子311を介してAC入力コンセント307に接続するか、または、端子305cを、抵抗素子311を介さずにAC入力コンセント307に直接接続するかを切り替える。これにより、1次コイル305に印加される交流電圧VL2の電圧値を、交流電源から入力される交流電圧VL3の電圧値と、交流電圧VL3の電圧値よりも小さい電圧値との間で切り替えることができ、出力端子304に出力される交流電圧VL1の電圧値を容易に切り替えることができる。
【0093】
また、抵抗素子311として、例えば50Ω程度を中心値とする範囲で変更可能な抵抗値を有する可変抵抗を用いることができる。これにより、1次コイル305に印加される交流電圧VL2の電圧値を、交流電圧VL3の電圧値よりも小さい電圧値に切り替える際のその電圧値をさらに変更することができる。したがって、出力端子304に出力される交流電圧VL1の電圧値をさらに様々な値に変更することができる。
【0094】
電圧調整部310は、抵抗素子311と並列に接続されたサージアブソーバ312を備えてもよい。この場合、スイッチ素子313は、並列に接続された抵抗素子311およびサージアブソーバ312を介して端子をAC入力コンセント307に接続するか、並列に接続された抵抗素子311およびサージアブソーバ312を介さず端子をAC入力コンセント307に直接接続するかを切り替える。サージアブソーバ312は、例えば落雷等により大電圧が急激に印加された場合に、サージアブソーバ312側の抵抗値が急減し、抵抗素子311に流れる電圧を低減することができ、抵抗素子311の焼損等を防止することができる。
【0095】
7.3 生体体調改善システム
上述のさまざまな実施形態に係る電場調整システム1を用いて、生体5の周囲に電場を発生させることによって、生体5の体調を改善することができる。以下に、生体5の周囲に電場を発生させた各種実験について詳述する。
【0096】
8.実験結果
以下、本発明の一部を構成する電場発生装置3によって形成される電場の生体への影響を調べた結果を記載する。
【0097】
DENBA株式会社製のDENBA Health(以下、DENBA)を用いて各種実験を行った。DENBAは、本体装置とマットからなり、これは、本発明に係る第3実施形態の電場発生装置3に該当し(図12および図13参照)、空間電場発生部30の電極部32がマットに内蔵されている構成である。DENBAは、マットの周辺に50Hzの交流電場を発生させる。以下、DENBAの電源をオンにした状態をDENBAオン、DENBAの電源をオフにした状態をDENBAオフと記載する。
【0098】
8.1 電場による高齢者の身体機能と認知機能への影響
8.1.1 実験の概要
まず、被験者に問診、測定、および検査を実施した(試行前)。その後、DENBAオンとDENBAオフを被験者に知らせずにランダムに切り替え、マットの上で安静座位にて2時間滞在してもらった。2時間後、DENBAオフ状態にて、試行前と同様の測定等を同様の順に行った(試行後)。電場印加の試行前と試行後における測定等の結果から高齢者の身体機能と認知機能への影響を検討した。
【0099】
8.1.2 被験者
被験者は、平均年齢73.1±2.5歳、BMIは22.9±3.2kg/mの13名(男性6名、女性7名)であった。なお、被験者は(1)医師から運動を禁止されていない者、(2)重篤な疾患(脳血管疾患、心血管疾患、麻痺)の既往歴を有さない者、(3)普通視力または矯正視力、色覚が正常な者、(4)認知機能低下傾向のない者(Mini-Mental State Examination(以下、MMSE)が27点以上)である。
【0100】
8.1.3 測定内容
(1)握力
握力は、両足を肩幅程度に開き、直立姿勢にて測定した。前腕を体側から離した姿勢で、握力を計測した。左右交互に2回ずつ計測を行い、3秒間で最大の力を発揮するように指示した。左右それぞれの最大値を採用した。
【0101】
(2)長座体前屈
両肩および腰部が壁に着くように、両脚を伸展位にして座り(長座位姿勢)、腕は伸展位で前方に出し、両手ともに第1指の付け根が測定器具上部の板につく状態で、第1指と第2、3、4、5指で板を挟むようにした姿勢を開始姿勢とした。測定時は膝の屈曲が起こらないように注意しながら、腰部を屈曲させ柔軟性を測定した。測定は2回行い最大値を採用した。
【0102】
(3)開眼片足立位テスト
両手を腰に当て、片方の脚を床面から上げ、最長60秒間計測した。手が腰から離れる、床面から上げた脚が支持脚に触れる、支持脚がずれるなどした時点を終了として、その時間を計測した。また、60秒間維持できた場合を満点とした。1回目で60秒に達した場合、2回目は行わなかった。試行はストップウォッチにより0.01秒単位で2回計測し、最長値を採用した。
【0103】
(4)立ち上がり動作時の地面反力
株式会社タニタ社製の、株式会社タニタ社製のザリッツBM-220を用いて行った。椅子に座って両足を機器の上に乗せた状態で素早く立ち上がる行為を計3回行い、立ち上がり動作時のパワー、スピード、バランスを算出した。
【0104】
(5)ストループテスト
ストループテストは、モニター上に2段に表示された画面を見ながら行うテストである。上の段の「文字の色」と下の段での「文字の意味」が一致しているか否かを判断して、正解もしくは不正解のボタンを押させた。判断までにかかった反応時間を分析に用いた。
【0105】
(6)トレイルメイキング・ペグテスト
株式会社ニューコム社製のペグアモーレを用いて行った。机の上にペグアモーレ機器を置き、被験者は機器の合図に合わせて測定を行った。トレイルメイキング・ペグテストには2つのモードがある。Aモードでは、25個ある画面に1から25の数字がランダムに表示される。被験者はペグを昇順に挿入していき、25本のペグを挿入し終えると最後にクリアタイム(秒)が表示される。Bモードでは、25個ある画面に数字とひらがなが表示される。被験者は数字とひらがなが交互となるように1→あ→2→い→...し→13の順にペグを挿入していく。最後にクリアタイム(秒)が表示される。分析には、AモードとBモードの完了時間、そして認知機能の中でも実行機能の指標と言われているBモードとAモードの比(B/A ratio)を用いた。
【0106】
(7)fNIRSによる脳血流量変化検査
fNIRS測定では、前頭部に電極を装着し、認知課題中に前頭前野の脳血流活性度を計測した。具体的には、脳血流の酸化ヘモグロビン濃度と脱酸化ヘモグロビン濃度より活性度を測定するものである。本実験では、LABNIRS(島津社製)を用い、前頭前野の22個の多重チャンネルにおける脳血流量変化を計測した。チャンネル1,2,5,6を右側の背外側前頭前野(Right-Dorsolateral prefrontal cortex(以下、DLPFC))、チャンネル3,4,8,9を左側の背外側前頭前野(Left-DLPFC)、チャンネル10,14,19を右側の腹外側前頭前野(Right-Ventrolateral prefrontal cortex(以下、VLPFC))、チャンネル13,18,22を左側の腹外側前頭前野(Left-VLPFC)、チャンネル11,15,20を右側の前頭極(Right-Frontal polar area(以下、FPA))、チャンネル12,17,21を左側の前頭極(Left-FPA)の6部位を関心領域(Region of interest、以下ROI)を分け分析に用いた。
【0107】
8.1.4 結果
(1)身体機能に及ぼす影響
図20に、電場環境が身体機能に及ぼす影響を示す。立ち上がり動作時の地面反力テストの下位変数である最大増加率体重比(RFD)において、DENBAのオンとオフにおける試行前と施行後の変化傾向の違いを表す相互作用において優位性が認められた。RFDは、DENBAオンの条件において、試行前(9.6±1.6kgf・kg-1)に比べて試行後(10.1±1.6kgf・kg-1)では有意な改善を示した。一方、DENBAオフの条件では、試行の前後で有意な違いがみられなかった(施行前9.8±1.7kgf・kg-1、施行後9.7±1.5kgf・kg-1)。効果の大きさを示す効果量(Cohen's d)を用いて効果量を算出した結果、すべての項目においてDENBAオン条件はDENBAオフ条件より大きな効果量を示した。
【0108】
(2)認知機能に及ぼす影響
図21に電場環境が認知機能に及ぼす影響を示す。DENBAのオンとオフにおける試行前と試行後の変化傾向の違いを表す交互作用において有意性を認めた変数はなかった。しかし、ストループテストの中立課題およびトレイルメイキング・ペグテストPart-Bにおいて統計的に有意な傾向(all Ps<0.10)を示し、DENBAオンの条件は試行前に比べて試行後に時間の短縮(改善)がみられた。効果量を算出した結果、ストループテストの不一致課題、fNIRSによる脳血流量変化検査のRVLPFC、RFPA、LFPA以外の変数においてDENBAオフ条件より大きな効果量を示した。
【0109】
よって、電場環境における2時間の滞在によって、立ち上がり動作時の地面反力テストの結果から高齢者の下肢筋力を一時的に改善することが明らかになった。また、立ち上がり動作は、自律神経反射を惹起させるため、自律神経機能を評価する際の指標として用いられている。立ち上がり動作時の地面反力テストで優位性が認められたことから、電場環境が自律神経機能に影響を与えた可能性も考えられる。さらに、ストループテストおよびトレイルメイキング・ペグテストの結果から、認知機能の指標である実行機能および手指巧緻性が改善する可能性が示された。
【0110】
8.2 電場による脳・自律神経活動への影響
8.2.1 実験の概要
被験者に、DENBAのマットを敷いた椅子の上で60分間座位にて安静を保ってもらった。このとき15分間毎にDENBAオンとDENBAオフを切り替えた。この間、記録した心電図から得られたR波の時間間隔(RR間隔)の変動(心拍変動)を分析対象とし、自律神経系の働きに及ぼす影響を客観的に検討した。
【0111】
8.2.2 被験者
被験者は、健常な20~56歳の22名(男性14名、女性8名)であった。
【0112】
8.2.3 測定内容
心電図の計測にはポリメイト(日本光電VAP5148)を用い、左の鎖鎖骨下窩および左最下肋骨状に電極を、また左右の額にアース電極を取り付けた。計60分間を15分ごとに4フェイズに区切り、DENBAのオンオフを切り替えた。電場が印加されていない場合は、心電図波形から容易に同定可能なR波とR波の間の時間間隔(RR間隔)を求めた。電場が印加されている場合は、微弱電場信号が心電図信号に混入し、R波が同定できない可能性があったが、心電図信号に10~30Hzの帯域フィルタを適用することでR波を精度よく抽出することができた。
【0113】
得られたRR間隔のデータから、各フェイズの平均値(HR)、標準偏差(SDRR)を求めた。SDRRはデータの点数に依存するため、各被験者について4フェイズの中で最も少ないデータ点数でのSDRRに統一して評価した。また、RR間隔のデータのパワースペクトル密度(PSD)から超低周波成分(VLF:0.003-0.04Hz)、低周波成分(LF:0.04-0.15Hz)、高周波成分(HF:>0.15Hz)のパワー(面積)を求めた。各フェイズのRR間隔データをオーバーラップのある128点の16サブセットに分割しFFTによりPSDを求め、全サブセットのPSDをアンサンブル平均値として求めた。
【0114】
統計の分析にはJASP(JASP team 2022)を用いた。DENBAオンオフ間でのデータ比較には対のt検定を用いた。ただし、Shapiro-Wilk検定を行った結果、正規性が仮定できない場合にはノンパラメトリック検定の1つであるWilcoxon検定を行った。有意水準は0.05とした。
【0115】
8.2.4 結果
(1)RR間隔の平均値と標準偏差
図22に、電場がHRとSDRRに及ぼす影響を示す。HRについては、DENBAオンオフで統計的に有意差は認められなかった(t(21)=1.214,p=0.238)。一方、SDRRは、DENBAオン条件で、統計的に有意に大きかった(t(21)=2.25,p=0.035,d=0.48)(dは効果量を示すCohen's d)。
【0116】
(2)RR間隔のVLF、LF、HF成分
図23にRR間隔データのPSD(全被験者の平均値(Ensemble average))を示す。DENBAオン時は、全体的にパワーが増加傾向にあることがわかる。図23の右のグラフは、両対数グラフであり、PSDは傾きがほぼ-1の直線状となっており、RR間隔の時系列データのPSDが周波数に反比例する、1/fゆらぎの性質が観察された。
【0117】
図24に電場がVLF、LF、HFおよびLF/HFに及ぼす影響を示す。データの正規性が仮定できなかったのはVLF(W=0.900,p=0.03)およびHF(W=0.758,p<0.01)であり、これらのデータについてはDENBAオンオフの比較はWilcoxon検定を用いて行った。
【0118】
VLFについては両条件間に有意差は認められなかった(T=177.0,p=0.105)ものの、LF(t(21)=2.532,p=0.019,d=0.540)およびHF(T=194.0,p=0.028,r=0.534)では、DENBAオン条件の場合で有意に大きくなるという結果が得られた(dおよびrは効果量であり、dはCohen's d、rはmatched rank biserial correlation)。LF/HFについては両条件間で有意差は認められなかった(t(21)=0.584,p=0.566)。
【0119】
よって、RR間隔の標準偏差、RR間隔のパワースペクトル密度から求めた低周波・高周波の両成分が、電場を印加すると統計的に有意に大きくなることが明らかになった。低周波成分、高周波成分はそれぞれ交感神経、副交感神経活動を反映するとされていることから、電場の印加は、自律神経系の活動を高進させる可能性が高いと結論づけられた。
【0120】
8.3 電場による豚の自律神経への影響
8.3.1 実験の概要
豚房にDENBAのマットを吊るす試験区と、通常通りの対照区を設定し、それぞれの区域で豚を飼育した。試験区、対照区ともに試験豚導入時、離乳舎から肥育豚舎への移動時(肥育1)、90日齢前後での体重測定時(肥育2)、出荷前日において、唾液を採取しコルチゾール濃度を測定した。
【0121】
8.3.2 対象
対象は、豚6頭(試験群:3頭、対照群:3頭)であった。
【0122】
8.3.3 測定内容
豚に脱脂綿を無保定で噛ませて唾液を採取し、遠心分離を行い、ELISA法でコルチゾール濃度を測定した。試験群と対照群でそれぞれ測定したコルチゾール濃度の平均値を算出した。
【0123】
8.3.4 結果
図25に試験群と対照群における唾液中のコルチゾール濃度を示す。なお、試験群における1頭に跛行がみられたため、肥育1以降は2頭での平均値となっている。
【0124】
対照群と比較して、試験群のコルチゾール濃度はどの時期においても低い値となった。コルチゾールは、ストレスを感じると分泌されるため、コルチゾール濃度が増加すると、自律神経が乱されるとされている。したがって、電場の印加によってコルチゾール濃度を低減できたことから、電場の印加は、自律神経へ影響をもたらすことが明らかとなった。
【0125】
9. 適用例
電場調整システム1の種々の実施形態の適用例として、例えば、車中への搭載が考えられる。上述の実験結果から、生体の周囲に電場を形成することが、自律神経に影響を与えるということがわかった。そのため、車の座席シートへ電極部32を埋め込むように電場調整システムを導入し、ドライバーの、例えば、心拍数や心拍変動などの生体情報を検出し、生体情報に基づいて算出された電場を座席シートから形成することで、運転中におけるドライバーのストレス緩和につながる可能性がある。また、その他の適用例としてオフィスチェアへの埋め込み、壁、床や天井などへ埋め込むことも考えられる。
【0126】
また、動物に対する電場調整システム1の適用例として、ペットの飼育ゲージへの適用が考えられる。ペットの種々の生体情報を検出し、生体情報に基づいて算出された電場を印加することで、例えばペットにおいても同様に、ストレス緩和をもたらすことができる可能性がある。
【符号の説明】
【0127】
1 :電場調整システム
2 :センサ装置
3 :電場発生装置
3a :本体
3b :マット部
4 :情報処理装置
5 :生体
10 :通信バス
20 :センサ部
21 :通信部
30 :空間電場発生部
31 :電圧印加部
32 :電極部
32a :電極線
33 :電場制御部
34 :通信部
40 :制御部
41 :記憶部
42 :通信部
50 :生体情報取得部
51 :算出部
60 :情報処理制御部
61 :記憶部
70 :生体情報取得部
71 :算出部
301 :トランス
302 :フィードバック制御回路
303 :出力制御部
304 :出力端子
305 :1次コイル
305a :端子
305b :端子
305c :端子
306 :2次コイル
306a :端子
306b :端子
307 :AC入力コンセント
308 :ブレーカー
309 :スイッチ素子
310 :電圧調整部
311 :抵抗素子
312 :サージアブソーバ
313 :スイッチ素子
VL1 :交流電圧
VL2 :交流電圧
VL3 :交流電圧
S1 :生体情報取得工程
S2 :電場条件算出工程
S3 :電場形成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25