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特開2024-48342モデル生成装置、解析装置、モデル生成方法、解析方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048342
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】モデル生成装置、解析装置、モデル生成方法、解析方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   C10B 41/02 20060101AFI20240401BHJP
   C10B 45/00 20060101ALI20240401BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240401BHJP
【FI】
C10B41/02
C10B45/00 Z
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101888
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2022153751
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】竹島 将太
【テーマコード(参考)】
4H012
5L049
【Fターム(参考)】
4H012GB00
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】作業者がコークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取るための情報を提供する。
【解決手段】コークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置は、複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得部と、複数の操業実績データを用いて、複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成するモデル生成部と、を備え、データ取得部により取得される複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、モデル生成部は、懸念データに合わせて正常データをアンダーサンプリングした後、予測モデルを生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置であって、
複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得部と、
複数の操業実績データを用いて、前記複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、前記予測モデルを生成するモデル生成部と、
を備え、
前記データ取得部により取得される前記複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、
前記モデル生成部は、前記懸念データに合わせて前記正常データをアンダーサンプリングした後、前記予測モデルを生成する、モデル生成装置。
【請求項2】
前記モデル生成部は、
ランダムフォレストを用いた機械学習により前記予測モデルを生成し、
前記予測モデルの機械学習において、決定木の深さ、決定木に入力する操業変数の数、及び、決定木の数のうち、少なくともいずれか1つを調整する、請求項1に記載のモデル生成装置。
【請求項3】
コークス炉においてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析装置であって、
複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれについて、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する寄与度算出部と、
算出された前記操業変数の寄与度を、出力装置に出力する寄与度出力部と、
を備える、解析装置。
【請求項4】
前記解析対象データの操業変数に対するコークスの押し詰まり懸念発生確率から、コークスの押し詰まりが懸念される場合に、作業者のアクションを支援する情報を生成する支援情報処理部を備え、
前記支援情報処理部は、
過去の操業データから、コークスの押し詰まり懸念のない正常データであって、前記解析対象データと類似する類似データを取得し、
前記寄与度から特定される、押し詰まり懸念を発生させる要因となる操業変数について、解析対象データの値と類似データの値とを対比させた出力情報を、前記出力装置に出力する、請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記支援情報処理部は、
前記寄与度の高い方からK個の操業変数の値に基づいて、前記類似データを複数のグループに分類し、
分類した前記グループから、データのばらつきとデータ数とに基づき表される信頼度の高いグループを抽出し、抽出されたグループの操業変数に基づいて、前記解析対象データにおいて変更すべき操業変数の変更値を出力する、請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記支援情報処理部は、前記信頼度に基づき抽出したグループのうち、前記K個の操業変数の値の距離が最も小さいグループの操業変数に基づいて、前記解析対象データにおいて変更すべき操業変数の変更値を出力する、請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
操業実績データに含まれる複数の操業変数のうち、指定された1つの操業変数を指定操業変数として、
前記寄与度算出部は、前記解析対象データが取得された窯から取得した過去の操業実績データのうち、前記解析対象データから遡って直近m回の操業実績データそれぞれについて、前記予測モデルを用いて複数の操業変数の寄与度を算出し、
前記支援情報処理部は、前記指定操業変数の値の時系列データと、前記指定操業変数の寄与度の時系列データとを、前記出力装置に出力する、請求項4に記載の解析装置。
【請求項8】
操業実績データに含まれる複数の操業変数のうち、指定された1つの操業変数を指定操業変数として、
前記寄与度算出部は、前記解析対象データが取得された窯から取得した過去の操業実績データのうち、前記解析対象データから遡って直近m回の操業実績データそれぞれについて、前記予測モデルを用いて複数の操業変数の寄与度を算出し、
前記支援情報処理部は、
前記直近m回の操業実績データのうち、前記指定操業変数の寄与度が閾値未満であるM個(1≦M≦m)の操業実績データを抽出し、
前記抽出したM個の操業実績データの指定操業変数の値に基づき求めた当該指定操業変数の変更値を出力する、請求項4に記載の解析装置。
【請求項9】
前記寄与度算出部は、SHAP法を用いて寄与度を算出する、請求項3~8のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項10】
前記寄与度算出部は、PI法を用いて寄与度を算出する、請求項3~8のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項11】
コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成方法であって、
複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得ステップと、
複数の操業実績データを用いて、前記複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、前記予測モデルを生成するモデル生成ステップと、
を含み、
前記データ取得ステップにて取得される前記複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、
前記モデル生成ステップでは、前記懸念データに合わせて前記正常データをアンダーサンプリングした後、前記予測モデルを生成する、モデル生成方法。
【請求項12】
コークス炉においてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析方法であって、
複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれについて、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する寄与度算出ステップと、
算出された前記操業変数の寄与度を、出力装置に出力する寄与度出力ステップと、
を備える、解析方法。
【請求項13】
コンピュータを、コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記モデル生成装置は、
複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得部と、
複数の操業実績データを用いて、前記複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、前記予測モデルを生成するモデル生成部と、
を備え、
前記データ取得部により取得される前記複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、
前記モデル生成部は、前記懸念データに合わせて前記正常データをアンダーサンプリングした後、前記予測モデルを生成する、コンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、コークス炉においてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記解析装置は、
複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれについて、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する寄与度算出部と、
算出された前記操業変数の寄与度を、出力装置に出力する寄与度出力部と、
を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置、モデル生成方法及びコンピュータプログラム、生成された予測モデルを用いてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析装置、解析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉にて石炭からコークスを製造するコークス工程において、押出時の押出負荷が高い窯ではコークスの押し詰まりが発生する可能性が高いことから、押出負荷が高くなっている要因を特定し、操業を改善することが行われている。従来、人手により、複数のコークス炉の様々な要因を検討し、押出負荷が高くなる要因を特定しているが、その業務負荷は高い。また、人手による解析では、長期間のデータについて観察、比較を行い、データ間の複雑な関係性を考慮することは困難である。このため、コークスの押し詰まりが懸念される窯の操業実績データから、自動的に押出負荷が高くなる要因を特定して、作業者が速やかに操業を改善する適正なアクションを取ることができるように支援する技術が求められていた。
【0003】
例えば特許文献1には、石炭を乾留することによって発生する発生ガスの温度推移より抽出した特徴量を用いて、乾留終了後のコークスを押出す際の押出力を推定する技術が開示されている。かかる技術によれば、炭化室からコークスを押し出す際の押出力の推定精度を向上させることができ、推定された押出力に基づいて乾留終了後のコークスを押し出す際の押出力を制御することによって、コークスの押し詰まり発生を抑制できる。
【0004】
また、例えば特許文献2には、炭化室の加熱壁温度、火落時間等の操業データに基づいて、炭化室において乾留が正常に進行しているかを判断し、乾留不良と判定された炭化室の乾留不良原因に確信度を付して、確信度の順に乾留不良原因に対するアクションを指示し、アクション指示に基づき燃焼制御器への変更量を計算する技術が開示されている。かかる技術によれば、コークス炉の乾留不良炭化室を検出し、燃焼制御器を制御するための適正なアクションを指示することで、コークス品質のバラツキを低減させ、一定品質のコークスを得るとともにコークス燃焼熱効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-172142号公報
【特許文献2】特公平07-56024号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lundberg,Scott M、他1名、"A unified approach to interpreting model predictions."、Advances in Neural Information Processing Systems、2017年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の技術では、最大押出力値を推定する推定式を、クロスバリデーション法による線形重回帰分析により構築している。このため、多重共線性により押出力の推定精度が低下する可能性があり、押出力を適切に制御できないこともあり得る。
【0008】
また、上記特許文献2の技術では、if-then-elseルールに基づき乾留不良原因に対して確信度を付与する。このため、人手による判定用の閾値設定及び乾留不良原因毎に付与される確信度の重みの設定が必要であり、作業負荷が残る。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、作業者がコークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取るための情報を提供することが可能な、モデル生成装置、解析装置、モデル生成方法、解析方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置であって、複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得部と、複数の操業実績データを用いて、複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成するモデル生成部と、を備え、データ取得部により取得される複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、モデル生成部は、懸念データに合わせて正常データをアンダーサンプリングした後、予測モデルを生成する、モデル生成装置が提供される。
【0011】
モデル生成部は、ランダムフォレストを用いた機械学習により予測モデルを生成し、予測モデルの機械学習において、決定木の深さ、決定木に入力する操業変数の数、及び、決定木の数のうち、少なくともいずれか1つを調整してもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コークス炉においてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析装置であって、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれについて、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する寄与度算出部と、算出された操業変数の寄与度を、出力装置に出力する寄与度出力部と、を備える、解析装置が提供される。
【0013】
解析装置は、解析対象データの操業変数に対するコークスの押し詰まり懸念発生確率から、コークスの押し詰まりが懸念される場合に、作業者のアクションを支援する情報を生成する支援情報処理部を備えてもよい。このとき、支援情報処理部は、過去の操業データから、コークスの押し詰まり懸念のない正常データであって、解析対象データと類似する類似データを取得し、寄与度から特定される、押し詰まり懸念を発生させる要因となる操業変数について、解析対象データの値と類似データの値とを対比させた出力情報を、出力装置に出力してもよい。
【0014】
支援情報処理部は、寄与度の高い方からK個の操業変数の値に基づいて、類似データを複数のグループに分類し、分類したグループから、データのばらつきとデータ数とに基づき表される信頼度の高いグループを抽出し、抽出されたグループの操業変数に基づいて、解析対象データにおいて変更すべき操業変数の変更値を出力してもよい。
【0015】
支援情報処理部は、信頼度に基づき抽出したグループのうち、K個の操業変数の値の距離が最も小さいグループの操業変数に基づいて、解析対象データにおいて変更すべき操業変数の変更値を出力してもよい。
【0016】
操業実績データに含まれる複数の操業変数のうち、指定された1つの操業変数を指定操業変数として、寄与度算出部は、解析対象データが取得された窯から取得した過去の操業実績データのうち、解析対象データから遡って直近m回の操業実績データそれぞれについて、予測モデルを用いて複数の操業変数の寄与度を算出し、支援情報処理部は、指定操業変数の値の時系列データと、指定操業変数の寄与度の時系列データとを、出力装置に出力してもよい。
【0017】
また、操業実績データに含まれる複数の操業変数のうち、指定された1つの操業変数を指定操業変数として、寄与度算出部は、解析対象データが取得された窯から取得した過去の操業実績データのうち、解析対象データから遡って直近m回の操業実績データそれぞれについて、予測モデルを用いて複数の操業変数の寄与度を算出し、支援情報処理部は、直近m回の操業実績データのうち、指定操業変数の寄与度が閾値未満であるM個(1≦M≦m)の操業実績データを抽出し、抽出したM個の操業実績データの指定操業変数の値に基づき求めた当該指定操業変数の変更値を出力してもよい。
【0018】
寄与度算出部は、SHAP法を用いて寄与度を算出してもよい。
【0019】
あるいは、寄与度算出部は、PI法を用いて寄与度を算出してもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成方法であって、複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得ステップと、複数の操業実績データを用いて、複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成するモデル生成ステップと、を含み、データ取得ステップにて取得される複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、モデル生成ステップでは、懸念データに合わせて正常データをアンダーサンプリングした後、予測モデルを生成する、モデル生成方法が提供される。
【0021】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コークス炉においてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析方法であって、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれについて、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する寄与度算出ステップと、算出された操業変数の寄与度を、出力装置に出力する寄与度出力ステップと、を備える、解析方法が提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念の発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、モデル生成装置は、複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念の発生有無とからなる操業実績データを複数取得するデータ取得部と、複数の操業実績データを用いて、複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成するモデル生成部と、を備え、データ取得部により取得される複数の操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データが、コークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データであり、モデル生成部は、懸念データに合わせて正常データをアンダーサンプリングした後、予測モデルを生成する、コンピュータプログラムが提供される。
【0023】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、コークス炉においてコークスの押し詰まり懸念を発生させる要因を解析する解析装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、解析装置は、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれについて、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する寄与度算出部と、算出された操業変数の寄与度を、出力装置に出力する寄与度出力部と、を備える、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、作業者がコークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取るための情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る解析システムの概要を示す説明図である。
図2】同実施形態に係るモデル生成装置の一構成例を示すブロック図である。
図3】同実施形態に係る予測モデル生成方法を示すフローチャートである。
図4】正常データのアンダーサンプリングを実施しない場合のランダムフォレストの一構成例を示す説明図である。
図5】正常データのアンダーサンプリングを実施した場合のランダムフォレストの一構成例を示す説明図である。
図6】同実施形態に係る解析装置の一構成例を示すブロック図である。
図7】PI法を用いた押し詰まり懸念を発生させる要因の特定を説明する説明図である。
図8】解析対象データの各操業変数の寄与度の提示例を示す説明図である。
図9】同実施形態に係る押し詰まり懸念発生要因の解析方法を示すフローチャートである。
図10】同実施形態に係る支援情報提示方法として、支援情報の視覚化処理を示すフローチャートである。
図11】支援情報の一提示例であって、押し詰まり懸念発生の第1要因と類似データ数との関係を示す説明図である。
図12】支援情報の他の提示例であって、押し詰まり懸念発生の第1要因及び第2要因と押出負荷との関係を示す説明図である。
図13】同実施形態に係る支援情報提示方法として、押し詰まり懸念発生の要因となる操業変数の変更値の算出処理を示すフローチャートである。
図14】同実施形態に係る支援情報提示方法として、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報を出力するにあたり、前処理として実施される操業変数の寄与度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図15】同実施形態に係る支援情報提示方法として、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報の出力処理の一例を示すフローチャートである。
図16】指定された1つの操業変数の直近m回における実績値及び寄与度のトレンドを表示する画面の一例を示す説明図である。
図17図16に示したトレンドに基づき操業変数の変更値を決定する処理を説明するための説明図である。
図18】モデル生成装置または解析装置として機能する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
[1.概要]
まず、図1に基づいて本発明の一実施形態に係るコークスの押し詰まり懸念発生に関する解析を行う解析システムの概要を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る解析システムの概要を示す説明図である。
【0028】
本実施形態に係る解析システムは、作業者がコークスの押し詰まり懸念が懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取るための情報を提供するために、コークスの押し詰まり懸念発生に関する解析を行う。解析システムは、コークス炉におけるコークスの押し詰まり懸念発生を予測する予測モデルを生成するモデル生成装置と、コークスの押し詰まり懸念が発生する要因を解析する解析装置とにより構成される。
【0029】
モデル生成装置は、コークス工程の操業実績データを用いて、コークス工程にて取得される複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成する。本実施形態では、予測モデルの生成に機械学習を用いる。機械学習には、説明変数間の多重共線性に比較的頑健なランダムフォレストを用いる。なお、本発明において、機械学習とは、コンピュータを用いて、コンピュータプログラムを機能させて実行し得るタスクについて、タスクの性能を評価し、過去の経験を用いてタスクの性能を向上させることをいう。このような機械学習の手法には、例えば、本実施形態において用いるランダムフォレスト等の機械学習アルゴリズム、ロジスティック回帰等の統計手法等が含まれる。
【0030】
ここで、コークス工程で行われるコークスの押出しにおいて、コークスの押し詰まり懸念の発生は、コークスを正常に押し出すことができた場合に比べて、極めて少ない。このため、予測モデルの生成に用いる操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データがコークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない、不均衡データとなる。一方、予測モデルは、コークスの押し詰まり懸念発生確率が高く、コークスの押し詰まりの発生が懸念される操業(以下、「押し詰まり懸念操業」ともいう。)を検出することを目的として生成される。しかし、不均衡データをそのまま用いて予測モデルを生成すると、コークスの押し詰まり懸念のない操業(すなわち、正常な操業)の検出精度は高いが、コークスの押し詰まり懸念操業の検出精度は低くなることもあり得る。
【0031】
そこで、本実施形態に係るモデル生成装置では、予測モデルの生成に用いる操業実績データについて、正常データをアンダーサンプリングした後、予測モデルを生成する。これにより、予測モデルの生成に用いる操業実績データにおける懸念データの割合を高め、コークスの押し詰まり懸念操業を高精度に検出できる予測モデルを生成する。
【0032】
解析装置は、例えばモデル生成装置により生成された予測モデルを用いて、解析対象データとして入力された複数の操業変数に対するコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力する。そして、解析対象データの押し詰まり懸念発生確率が所定の値以上のとき、解析装置は、押し詰まりの発生が懸念されると判断し、操業変数の中から押し詰まり懸念を発生させる要因となる操業変数を特定する。このとき、解析装置は、各操業変数について、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出し、算出した寄与度を出力装置に出力する。これにより、作業者に対して、コークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取るための情報として、押し詰まり懸念を発生させる要因となる操業変数とその寄与度を視覚的にわかりやすく提示することができる。
【0033】
さらに、解析装置は、解析対象データをコークスの押し詰まり懸念のない正常データとするために作業者の適正アクションを支援する支援情報を提示してもよい。例えば、解析装置は、解析対象データと類似する過去の操業データを類似データとして抽出し、正常な操業であった類似データに基づいて、押し詰まり懸念を発生させる要因となる操業変数の適正値を提示してもよい。解析装置が出力装置を介して操業変数の適正値を提示することで、作業者は、コークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取ることができる。
【0034】
以下、本実施形態に係る解析システムによる、予測モデル生成処理、押し詰まり懸念発生要因の解析処理、適正アクションのための支援情報提示処理について、詳細に説明する。
【0035】
[2.予測モデルの生成]
[2-1.モデル生成装置]
まず、図2に基づいて、本実施形態に係るモデル生成装置100の構成を説明する。図2は、本実施形態に係るモデル生成装置100の一構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るモデル生成装置100は、図2に示すように、データ取得部110と、モデル生成部120と、出力部130とを備える。
【0036】
データ取得部110は、複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念発生の有無とからなる操業実績データを複数取得する。データ取得部110は、過去の操業において得られた操業データが格納された操業データ記憶部50から、所定の期間内に取得されたコークス押出時の操業データを取得する。操業データは、複数の操業変数を含む。操業データを取得する所定の期間は、予測モデルに十分な精度を持たせるために必要なデータ数が確保できる期間であればよく、例えば、最新の操業データから遡って5年、等であってもよい。
【0037】
データ取得部110は、複数の操業変数として、コークス工程にて取得されているすべての操業変数から少なくとも一部の操業変数を取得すればよい。予測モデルの説明変数となる操業変数には、操業知見等に基づき、設定値を変更する等のアクションを取りやすいものを選択するのが望ましい。データ取得部110は、複数の操業変数として、例えば、石炭装入量、石炭水分値、石炭粒度、ランスタイマー時間、炉温制御値、炉壁温度、乾留時間、等を取得する。なお、データ取得部110は、複数の操業変数の1つとして押出負荷を取得するが、押出負荷は、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力する予測モデルの説明変数には用いない。
【0038】
データ取得部110は、押出負荷に関する操業変数の値に基づき、コークスの押し詰まり懸念発生の有無を表すラベルを設定する。ラベルは1または0の値により表される。ラベルの設定に用いる押出負荷に関する操業変数としては、例えば炭化室のコークスを押し出す押出ラムを移動させるモータのモータ電流最大値を用いてもよい。モータ電流値の値が大きいほど、コークスの押出負荷が高く、押し詰まりの発生が懸念される。データ取得部110は、操業実績からコークスの押し詰まりが懸念されるときのモータ最大電流値に基づき設定された閾値を用いて、ラベルを設定する。データ取得部110は、モータ最大電流値が閾値を超えている場合にはラベルを「1」とし、モータ最大電流値が閾値以下の場合にはラベルを「0」とする。ラベルの値は、0~1の値を取る押し詰まり懸念発生確率に対応する。すなわち、ラベルが「1」の場合には、押し詰まり懸念発生確率が1であることを示し、ラベルが「0」の場合には、押し詰まり懸念発生確率が0であることを示している。
【0039】
データ取得部110は、操業データ記憶部50から取得した複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念発生の有無(ラベル)とからなる複数の操業実績データを、モデル生成部120へ出力する。
【0040】
モデル生成部120は、データ取得部110により取得された複数の操業実績データを用いて、複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成する。本実施形態では、予測モデルの生成に機械学習を用いる。機械学習には、ランダムフォレストを用いる。
【0041】
モデル生成部120は、まず、操業実績データからランダムに懸念データと正常データとを抽出し、N個(Nは2以上の整数)のデータグループを生成する。このとき、操業実績データは、コークスの押し詰まり懸念のある懸念データがコークスの押し詰まり懸念のない正常データに比べて少ない不均衡データであることから、モデル生成部120は、正常データをアンダーサンプリングしてデータグループを生成する。例えば、モデル生成部120は、複数の操業実績データから、懸念データと正常データとを同一数ずつ抽出して、1つのデータグループを生成してもよい。これにより、予測モデルの生成において、少数である懸念データの重みを高めることができる。
【0042】
モデル生成部120は、N個のデータグループそれぞれについて、操業変数の一部を説明変数とし、押し詰まり懸念発生の有無(1または0)を目的変数として決定木を作成する。そして、モデル生成部120は、予め検証データとして用意した操業実績データを用いて、N個の決定木それぞれについて押し詰まり懸念発生の有無(1または0)を求め、その平均値を予測モデルの押し詰まり懸念発生確率(1~0の値)として求める。言い換えると、予測モデルの押し詰まり懸念発生確率は、押し詰まり懸念発生の有無「1」を出力した決定木の数をNで割った値が平均値となる。
【0043】
その後、モデル生成部120は、予測モデルの性能評価を行う。予測モデルの性能評価は、例えば平均適合率(Average Precision)を用いて行ってもよい。モデル生成部120は、予め設定された学習回数となるまで繰り返し予測モデルを学習し、最も性能評価結果の高い予測モデルを、解析装置により用いる予測モデルとして決定する。
【0044】
出力部130は、モデル生成部120にて決定された予測モデルを、解析装置へ出力する。
【0045】
なお、モデル生成装置100には、入力装置10、出力装置30が接続されていてもよい。入力装置10は、例えば、作業者がモデル生成装置100に対して情報を入力するための機器であって、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力機器である。出力装置30は、モデル生成装置100から出力された情報を作業者に提示するための機器であって、例えばディスプレイ、プリンター等の出力機器である。
【0046】
[2-2.予測モデル生成方法]
図3図5に基づいて、本実施形態に係るモデル生成装置100による予測モデル生成方法を説明する。図3は、本実施形態に係る予測モデル生成方法を示すフローチャートである。図4は、正常データのアンダーサンプリングを実施しない場合のランダムフォレストの一構成例を示す説明図である。図5は、正常データのアンダーサンプリングを実施した場合のランダムフォレストの一構成例を示す説明図である。
【0047】
(S100:操業実績データ取得)
本実施形態に係る予測モデル生成方法では、まず、データ取得部110は、複数の操業変数とコークスの押し詰まり懸念発生の有無とからなる操業実績データを複数取得する(S100)。データ取得部110は、操業データ記憶部50から、所定の期間内に取得されたコークス押出時の操業データを取得する。データ取得部110は、複数の操業変数として、例えば、石炭装入量、石炭水分値、石炭粒度、ランスタイマー時間、炉温制御値、炉壁温度、乾留時間、等を取得する。また、データ取得部110は、操業変数として取得されたモータ最大電流値等を用いて、押し詰まり懸念発生の有無を表すラベル(1または0)を設定する。データ取得部110は、操業データ記憶部50から取得した複数の操業データから得られる、複数の操業変数と設定したラベルとのデータセットである複数の操業実績データを、モデル生成部120へ出力する。
【0048】
(S110-S170:予測モデル学習)
次いで、モデル生成部120は、データ取得部110により取得された複数の操業実績データを用いて、例えば機械学習により、複数の操業変数を入力とし、コークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする、予測モデルを生成する。本実施形態では、機械学習として、ランダムフォレストを用いる。
【0049】
モデル生成部120は、まず、ランダムフォレストのハイパーパラメータを調整する(S110)。ハイパーパラメータは、機械学習モデルの構成を決定するパラメータであり、ランダムフォレストの場合、例えば、決定木の数や決定木の深さ、決定木で用いる説明変数(特徴量)の数、等である。最初のモデル学習時には、任意に設定された初期値がハイパーパラメータに設定されるが、2回目以降のモデル学習時には、モデル生成部120は、予め設定された刻み値でハイパーパラメータを変更する。
【0050】
決定木の数(n_estimators)は、データグループの数Nでもある。決定木の数が多くなるほど予測モデルの精度は向上する可能性があるが、計算時間が増加する。例えば、決定木の数は、初期値を100として、500~3000程度まで10刻みで増加させるように変更してもよい。決定木の深さ(max_depth)は、深くすればモデルの精度を向上できる可能性があるが、深くしすぎると過学習となる。例えば、決定木の深さは、初期値を10として、3~10程度まで1刻みで減少させるように変更してもよい。また、決定木で用いる説明変数(特徴量)の数(max_features)を調整してもよい。決定木で用いる説明変数の数は、例えば、操業実績データの説明変数の数の平方根程度の数を初期値として、操業実績データの説明変数の数~2程度まで1刻みで減少させるように変更してもよい。
【0051】
本実施形態で学習に用いる操業実績データは不均衡データであり、正常データをアンダーサンプリングすることから、1つの決定木の構築に用いる操業実績データの数は、アンダーサンプリングをしない場合に比べて少なくなる。このため、過学習する可能性が高まる。そこで、アンダーサンプリングによる過学習を抑制するため、ハイパーパラメータのうち、決定木の深さは浅くし、決定木で用いる説明変数の数は減少させ、決定木の数は増加させるように調整するのがよい。
【0052】
モデル生成部120は、ハイパーパラメータを調整すると、操業実績データからランダムに懸念データと正常データとを抽出し、N個のデータグループを生成する。このとき、モデル生成部120は、正常データをアンダーサンプリングしてデータグループを生成する(S120)。
【0053】
通常、ランダムフォレストでは、データのラベル(本実施形態では、押し詰まり懸念発生の有無を表すラベル(1または0))に寄らずランダムに所定数のデータを抽出し、各データグループを作成する。例えば、図4に示すように、複数の操業変数x~x(nは2以上の整数)と押し詰まり懸念発生の有無yとからなる100個の操業実績データを予測モデルの学習に用いるとする。図4に示す例では、100個の操業実績データは、98個の正常データと、2個の懸念データとからなる。ここで、100個の操業実績データから10個の操業実績データをランダムに抽出して各データグループを生成した場合、懸念データが含まれないデータグループが生成される可能性が高く、正常な操業の検出を優先する予測モデルが構築される可能性が高い。
【0054】
そこで、モデル生成部120は、少数である懸念データの重みを高めるため、正常データをアンダーサンプリングして、データグループを生成する。モデル生成部120は、複数の操業実績データから、懸念データと正常データとを同一数ずつ抽出して、1つのデータグループを生成してもよい。例えば、図5に示すように、100個の操業実績データから2個の懸念データと2個の正常データとをランダムに抽出して各データグループを生成する。これにより、各決定木では、必ず懸念データが考慮されるため、正常データのみで学習してしまうリスクを回避することができ、コークスの押し詰まり懸念操業の検出精度を高めることができる。
【0055】
なお、図4及び図5の説明では、説明を簡単にするため、操業実績データの数を100個、正常データの数を98個、懸念データの数を2個としたが、実際に予測モデルを生成する場合には、より多くのデータが用いられる。
【0056】
また、上記説明では、懸念データと正常データとを同一数抽出してアンダーサンプリングをする例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。アンダーサンプリングにおいて、必ずしも懸念データと正常データとを同一数抽出しなくてもよい。例えば、全操業実績データ数が多い場合には、データグループにおける正常データの割合を懸念データの割合よりも高くしてもよい。
【0057】
具体的には、例えば10万個の操業実績データにおいて、懸念データと正常データと比率が98:2であり、正常データが98000個、懸念データが2000個含まれているとする。この場合に、懸念データの数に合わせて正常データを同一数抽出してデータグループを生成しても、1つのデータグループには4000個の操業実績データ(正常データ:2000個、懸念データ:2000個)が含まれることから、学習に十分なデータ数を確保することができる。
【0058】
一方で、例えば1000個の操業実績データにおいて、懸念データと正常データと比率が98:2であり、正常データが980個、懸念データが20個含まれているとする。この場合に、懸念データの数に合わせて正常データを同一数抽出してデータグループを生成すると、1つのデータグループには40個の操業実績データ(正常データ:20個、懸念データ:20個)しか含まれないことから、学習に十分なデータ数を確保することができない。このような場合には、データグループにおける正常データの割合を懸念データの割合よりも大きくし、学習に必要なデータ数を確保するのがよい。例えば、正常データの数を懸念データの数の3倍にして、1つのデータグループに80個の操業実績データ(正常データ:60個、懸念データ:20個)が含まれるようにしてもよい。
【0059】
モデル生成部120は、生成したN個のデータグループについて、決定木による学習を実施する(S130)。モデル生成部120は、N個のデータグループそれぞれについて、操業変数の一部を説明変数とし、押し詰まり懸念発生の有無(1または0)を目的変数として決定木を作成する。
【0060】
そして、モデル生成部120は、予め検証データとして用意した操業実績データを用いて、N個の決定木それぞれについて押し詰まり懸念発生の有無(1または0)を求め、その平均値を予測モデルの出力、すなわち押し詰まり懸念発生確率(1~0の値)として求める(S140)。言い換えると、予測モデルの押し詰まり懸念発生確率は、押し詰まり懸念発生の有無「1」を出力した決定木の数をNで割った値が平均値となる。
【0061】
その後、モデル生成部120は、予測モデルの性能評価を行う。予測モデルの性能評価は、例えば平均適合率(Average Precision)を用いて行ってもよい(S150)。そして、モデル生成部120は、ステップS150での予測モデルの性能評価結果に基づき、現時点で性能評価結果が最良の予測モデルをメモリに記録して保存する(S160)。なお、初回のモデル学習時であれば当該学習にて生成された予測モデルを保存する。2回目以降のモデル学習時では、メモリに記憶されている予測モデルの性能評価結果と今回の得られた予測モデルの性能評価結果とを比較し、性能評価結果が良い方の予測モデルを保存する。
【0062】
1回のモデル学習を終えると、モデル生成部120は、学習の繰り返し回数が予め設定された学習回数(設定値)となったかを判定する(S170)。学習回数の設定値は任意に設定すればよく、例えば100回程度としてもよい。学習の繰り返し回数が学習回数の設定値未満の場合には(S170:NO)、ステップS110に戻り、ハイパーパラメータを調整し、学習の繰り返し回数が学習回数の設定値となるまで繰り返し予測モデルを学習する。そして、学習の繰り返し回数が学習回数の設定値となったとき(S170:YES)、モデル生成部120は、最終的にメモリに保存されている予測モデルを、最も性能評価結果の高い予測モデルとして、解析装置により用いる予測モデルとする(S180)。
【0063】
以上、本実施形態に係るモデル生成装置100とこれによるモデル生成方法について説明した。本実施形態によれば、予測モデルの生成に用いる操業実績データについて、正常データをアンダーサンプリングした後、機械学習により予測モデルを生成する。これにより、予測モデルの生成に用いる操業実績データにおける懸念データの割合を高め、コークスの押し詰まりの発生懸念操業の検出精度の高い予測モデルを生成することができる。
【0064】
[3.適正アクションに向けた押し詰まり懸念発生要因の解析]
[3-1.解析装置]
次に、図6に基づいて、本実施形態に係る解析装置200の構成を説明する。図6は、本実施形態に係る解析装置200の一構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る解析装置200は、図6に示すように、寄与度算出部210と、寄与度出力部220と、支援情報処理部230と、を備える。なお、解析装置200は、入力装置10、出力装置30と接続されており、操業データを格納する操業データ記憶部50にも接続されている。
【0065】
寄与度算出部210は、解析対象データの操業変数それぞれについて、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する。寄与度が高い操業変数は、コークスの押し詰まり懸念発生確率を高める要因であって、コークスの押し詰まり懸念を発生させる要因(以下、「押し詰まり懸念発生要因」ともいう。)と考えられる。寄与度算出部210は、予測モデルとして、上述したモデル生成装置100が生成した予測モデルを用いてもよい。寄与度算出部210は、解析対象データとして、予測モデルの説明変数である複数の操業変数それぞれの値を予測モデルに入力し、出力値として、解析対象データに対するコークスの押し詰まり発生確率を得る。寄与度算出部210は、予測モデルから得られた出力値を評価することにより、解析対象データの操業変数それぞれの寄与度を算出する。
【0066】
寄与度を算出する説明手法としては、例えばPI(Permutation Importance)法、SHAP(Shapley Additive exPlanations)法等がある。PI法、SHAP法により寄与度を求める際に、寄与度算出部210は、値を正常なものと置き換えたり(PI法)一部の操業変数を使用しなかったり(SHAP法)して操業変数を加工し、加工後に予測モデルを用いて出力値を求める。寄与度算出部210は、かかる処理を複数回実施し、加工前後の出力値を比較し差分を評価することで寄与度を算出する。
【0067】
より詳細に説明すると、PI法は、ある特徴量(操業変数)の値をデータ間でランダムにシャッフルして予測を行ったときに、どの程度予測精度が低下するかによってその特徴量(操業変数)の寄与度を判断する手法である。PI法は、例えば、1つの操業変数の値が正常分布から大きくずれてコークスの押し詰まりの発生が懸念される場合に、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数を特定する際に有効である。
【0068】
例えば、図7に示すように、コークスの押し詰まり懸念発生確率が80%の懸念データにおいて、1つの操業変数の値を正常データの値に置き換えて、予測モデルにより押し詰まり懸念発生確率を予測する。懸念データの石炭装入量の値を正常データの値に置き換えた場合に、押し詰まり懸念発生確率が40%に減少すれば、石炭装入量は押し詰まり懸念発生確率を高める要因であると考えられる。また、懸念データの石炭水分値の値を正常データの値に置き換えた場合に、押し詰まり懸念発生確率が80%のまま変化しなければ、石炭水分値は押し詰まり懸念発生確率を高める要因である可能性は低いと考えられる。このように、押し詰まり懸念発生確率の値を大きく変化させる1つの操業変数を、寄与度算出部210は、押し詰まり懸念発生要因として特定する。
【0069】
SHAP法は、シャープレイ値に基づきそれぞれの特徴量(操業変数)が予測に対してどのくらい寄与したかを示す手法である(例えば、非特許文献1)。SHAP法は、例えば、複数の操業変数の値が少しずつ正常分布からずれてコークスの押し詰まり発生が懸念される場合に、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数を特定する際に有効である。
【0070】
例えば、J個の操業変数からなる学習データ群X=(X,X,…,X)を用いて学習して得られた機械学習モデルをfとする。解析対象データがx=(xi,1,xi,2,…,xi,J)とすると、押し詰まり懸念発生確率f(x)は、下記式(1)により表すことができる。SHAP法では、各説明変数の貢献度(寄与率)を足し算の形に分解して押し詰まり懸念発生確率f(x)を表す。
【0071】
【数1】
【0072】
ここで、Φはベースラインとする押し詰まり懸念発生確率である(Φ=E[f(X)])。Φi,jは各操業変数が変動させる押し詰まり懸念発生確率の値を示している。例えば、j=1の操業変数が乾留時間であれば、Φi,1は乾留時間が押し詰まり懸念発生確率を何%上げるか(下げるか)を表す。また、例えば、j=2の操業変数が装入量であれば、Φi,2は装入量が押し詰まり懸念発生確率を何%上げるか(下げるか)を表す。
【0073】
なお、SHAP法においても、押し詰まり懸念発生要因である操業変数が1つのみである場合も、当該要因を特定することができる。したがって、SHAP法によりある1つの操業変数の寄与度が突出して大きいことが判明した場合に、当該結果が正しいかどうかを確認するために、PI法により寄与度を算出してもよい。SHAP法により算出した寄与度が大きい操業変数が、PI法によっても寄与度が大きい場合には、当該操業変数は押し詰まり懸念発生要因である可能性が極めて高いといえる。
【0074】
寄与度算出部210は、このような寄与度を算出する説明手法を用いて、解析対象データの押し詰まり懸念発生確率に対して、各操業変数がどの程度影響しているかを寄与度として求める。寄与度は、用いる説明手法において定義されている算出式(例えば、SHAP法では上記式(1))を用いて算出し得る。寄与度算出部210は、算出した解析対象データの各操業変数の寄与度を、寄与度出力部220へ出力する。
【0075】
寄与度出力部220は、算出された操業変数の寄与度を、出力装置30に対して出力する。寄与度出力部220は、例えば図8に示すように、横軸に操業変数名、縦軸に寄与度を示した棒グラフにより、各操業変数の寄与度を示してもよい。このように、各操業変数の押し詰まり懸念発生確率への影響を、定量的に、かつ、視覚的に提示することで、作業者は提示された情報から、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数を容易に特定することができる。
【0076】
支援情報処理部230は、解析対象データをコークスの押し詰まり懸念のない正常データとするために、作業者の適正アクションを支援する支援情報を提示する。支援情報処理部230は、例えば、解析対象データの操業変数に対するコークスの押し詰まり懸念発生確率から、コークスの押し詰まりの発生が懸念される場合に、作業者のアクションを支援する支援情報を生成する。具体的には、支援情報処理部230は、操業データ記憶部50に格納されている操業データから、正常データであって、かつ、解析対象データに類似する類似データを取得して、取得した類似データから、解析対象データをコークスの押し詰まり懸念のない正常データとするために変更すべき操業変数の値を求め、出力装置30に出力してもよい。支援情報処理部230による支援情報提示処理の詳細については後述する。
【0077】
[3-2.押し詰まり懸念発生要因の解析方法]
図9に基づいて、本実施形態に係る解析装置200による押し詰まり懸念発生要因の解析方法を説明する。図9は、本実施形態に係る押し詰まり懸念発生要因の解析方法を示すフローチャートである。
【0078】
本実施形態に係る押し詰まり懸念発生要因の解析方法では、まず、解析装置200の寄与度算出部210は、解析対象データである複数の操業変数の値の入力を受け付ける(S200)。解析対象データは、例えば、作業者が入力装置10を用いて指定した操業実績データである。指定された操業実績データの操業変数の値が、解析対象データの操業変数の値として、操業データ記憶部50から寄与度算出部210に入力される。
【0079】
寄与度算出部210は、解析対象データが入力されると、解析対象データの操業変数それぞれについて、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する(S210)。寄与度算出部210は、例えばPI法、SHAP法等の説明手法により、寄与度を算出する。
【0080】
そして、寄与度出力部220は、寄与度算出部210により算出された、解析対象データの各操業変数の寄与度を、出力装置30に出力する(S220)。出力装置30は、寄与度出力部220から出力された各操業変数の寄与度を、例えば図8に示したような棒グラフによって表してもよい。
【0081】
以上、本実施形態に係る押し詰まり懸念発生要因の解析方法について説明した。本実施形態に係る押し詰まり懸念発生要因の解析方法によれば、各操業変数について、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出し、算出した寄与度を出力装置に出力する。これにより、作業者に対して、コークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取るための情報として、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数とその寄与度を視覚的にわかりやすく提示することができる。
【0082】
[3-3.支援情報提示方法]
次に、図10図13に基づいて、本実施形態に係る解析装置200による支援情報提示方法を説明する。図10は、本実施形態に係る支援情報提示方法として、支援情報出力処理を示すフローチャートである。図11は、支援情報の一提示例であって、押し詰まり懸念発生の第1要因と類似データ数との関係を示す説明図である。図12は支援情報の他の提示例であって、押し詰まり懸念発生の第1要因及び第2要因と押出負荷との関係を示す説明図である。図13は、本実施形態に係る支援情報提示方法として、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数の変更値の算出処理を示すフローチャートである。
【0083】
(1)支援情報の出力処理
まず、図10に基づいて、支援情報の出力処理を説明する。支援情報の出力処理では、図9に示した押し詰まり懸念要因の解析方法により求めた操業変数の寄与度から、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数について、解析対象データの値と正常操業時の値との対比を視覚的にわかりやすく示す。解析対象データの値と正常操業時の値とを対比させた出力情報をディスプレイ等に表示させることにより、解析対象データの値が正常操業時の値からどの程度乖離しているかを、視覚的に作業者に示すことができる。作業者は、解析対象データの値を正常操業時の値に近づけるようなアクションをとることで、押し詰まり懸念の発生を回避することができる。
【0084】
まず、支援情報処理部230は、解析対象データの操業変数の寄与度から、押し詰まり懸念の発生に最も寄与する第1要因の操業変数及び2番目に寄与する第2要因の操業変数以外の操業変数に基づいて、操業データ記憶部50に格納されている操業データから操業変数の値が類似する類似データを取得する(S300)。類似データとして取得する操業データは、押し詰まり懸念のなかった正常データのみとする。
【0085】
ここで、支援情報処理部230は、第1要因の操業変数の値に基づき、取得した類似データの数の分布を出力装置30に出力してもよい。例えば、図8において寄与度が最大の「操業変数8」が、解析対象データの押し詰まり懸念発生の第1要因であったとする。このとき、支援情報処理部230は、例えば図11に示すように、第1要因である「操業変数8」に対する類似データの数の分布を提示してもよい。例えば、「操業変数8」が時間に関する操業変数である場合、図11は、所定の単位時間幅で区分した複数の時間範囲それぞれに含まれる「操業変数8」の類似データの数を示している。図11の横軸に示す時間ai(i=0,1,2,・・・)は、所定の単位時間幅毎の時間を示している。
【0086】
図11に示す分布からは、解析対象データと類似する正常データは、「操業変数8」がa7~a8の時間範囲にあるものが最も多いことがわかる。また、解析対象データの「操業変数8」の値を当該分布に示してもよい。図11では解析対象データの「操業変数8」の値を直線(▼の位置)で示している。これにより、作業者は、解析対象データと類似する正常データの多い「操業変数8」の時間範囲を視覚的に認識することができる。また、作業者は、解析対象データの押し詰まり懸念発生の第1要因について、解析対象データに類似する正常データの値との差を認識することができる。
【0087】
次いで、支援情報処理部230は、ステップS300にて取得した類似データから、第1要因の操業変数及び第2要因の操業変数と、押出負荷との関係を表す散布図を生成する(S310)。
【0088】
支援情報処理部230は、まず、第1要因の操業変数及び第2要因の操業変数それぞれについて、値が取り得る区間を等間隔に区分して、複数の領域を生成する。例えば、解析対象データの押し詰まり懸念発生の第1要因が図11に示した「操業変数8」であり、第2要因が図8において寄与度が2番目に大きい「操業変数9」であったとする。ここで、「操業変数9」も、時間に関する操業変数であり、時間bi(i=0,1,2,・・・)が所定の単位時間幅毎の時間を示しているものとする。支援情報処理部230は、図12に示すように、横軸に第1要因である「操業変数8」の時間範囲をとり、時間a0~a25の時間範囲を所定のデータ間隔(図12では単位時間幅×5)で区画する。また、縦軸に第2要因である「操業変数9」の時間範囲をとり、時間b0~b7の時間範囲を所定のデータ間隔(図12では単位時間幅)で区画する。これにより、35領域が生成される。
【0089】
そして、支援情報処理部230は、生成した領域それぞれに対して押出負荷に関する情報を示す。押出負荷に関する情報は、押出負荷そのものであってもよく、押出ラムのモータ最大電流値等であってもよい。支援情報処理部230は、各領域の押出負荷に関する情報として、領域に含まれる類似データの押出負荷に関する情報の平均値あるいは代表値を算出する。そして、支援情報処理部230は、第1要因及び第2要因を区画して生成された各領域に、算出した押出負荷に関する情報を示す。
【0090】
例えば、図12に示すように、押出負荷に関する情報を、第1要因及び第2要因を区画して生成された各領域の色によって表してもよい。図12では、領域の色の濃淡によって押出負荷に関する情報を表しており、領域の色が濃いほど押出負荷が大きいことを示している。例えば「操業変数8」が時間a15~a20、「操業変数9」が時間b4~b5の領域Qにある類似データでは、他の類似データに比べて押出負荷が高くなっていることがわかる。
【0091】
さらに、支援情報処理部230は、ステップS310にて生成した散布図に対して、解析対象データをプロットし、出力装置30へ出力する(S320)。図12に示す散布図には、解析対象データの「操業変数8」及び「操業変数9」の時間位置に●がプロットされている。解析対象データがプロットされた領域は比較的押出負荷が高いが、「操業変数8」及び「操業変数9」の値を、押出負荷の低い領域(例えば、領域R)の値に変更すれば、押出負荷を低減できると考えられる。このように、解析対象データと類似する正常データとの関係を提示することにより、作業者は、コークスの押し詰まり懸念発生の主要因である操業変数の値をどの程度変更すれば、押出負荷を低減できるかを把握することができる。
【0092】
(2)操業変数の変更値リコメンド処理
次に、図13に基づいて、支援情報として操業変数の変更値をリコメンドする処理について説明する。操業変数の変更値リコメンド処理では、図9に示した押し詰まり懸念発生要因の解析方法により求めた操業変数の寄与度から、正常な操業を実現するために、押し詰まり懸念発生要因となる操業変数の値をどの程度変更すればよいかを提示する。操業変数の変更値を提示することにより、作業者は、速やかに適正なアクションをとることができ、押し詰まり懸念の発生を回避することができる。
【0093】
まず、支援情報処理部230は、解析対象データの操業変数の寄与度から、押し詰まり懸念発生に最も寄与する第1要因~第K要因の操業変数以外の操業変数に基づいて、操業データ記憶部50に格納されている操業データから操業変数の値が類似する類似データを取得する(S400)。Kは2以上の整数であり、その値は任意に設定すればよい。例えば、Kは2、3程度の値としてもよい。類似データとして取得する操業データは、押し詰まり懸念のなかった正常データのみとする。
【0094】
次いで、支援情報処理部230は、ステップS400にて取得した類似データを、第1要因~第K要因の操業変数の値に基づき複数のグループに分類する(S410)。そして、支援情報処理部230は、類似データを分類した各グループのうち、信頼度が閾値以上のグループを、解析対象データの第1要因~第K要因の操業変数の値を変更する値の候補グループとする(S420)。ここで、グループの信頼度は、解析対象データの第1要因~第K要因の操業変数の値を変更するにあたり参考となる度合いであり、分類されている類似データの数が多く、かつ、分類されている類似データの値のばらつきが小さいグループほど信頼度は高い。グループの信頼度は、例えば下記式(2)にて表される。
【0095】
信頼度=1/(1.96×2×σ/√n) ・・・(2)
ここで、σ: グループ内標準偏差
n: グループ内データ数
1.96:95%信頼区間のT統計量
【0096】
上記式(2)は、95%信頼区間の幅(すなわち、{(xave+1.96×σ/√n)-(xave-1.96×σ/√n)}=1.96×2×σ/√n)の逆数である。なお、xaveは、グループ内平均押出負荷である。95%信頼区間の幅が小さいほどグループ内データのばらつきが小さいといえることから、95%信頼区間の幅の逆数を信頼度と定義する。支援情報処理部230は、上記式(2)を用いて各グループの信頼度を算出し、算出した信頼度が予め設定された閾値よりも大きいグループを候補グループとする。
【0097】
その後、支援情報処理部230は、候補グループの中から、グループ内平均押出負荷が予め設定された閾値未満の正常操業グループを抽出する(S430)。閾値は、良好な操業での押出負荷の値としてもよい。これにより、正常な操業が行われたグループ(正常操業グループ)を特定する。
【0098】
そして、支援情報処理部230は、ステップS430にて抽出した正常操業グループについて、解析対象データの第1要因~第K要因の操業変数の値との距離をそれぞれ算出し(S440)、最小距離の正常操業グループの操業変数の値に基づいて解析対象データの第1要因~第K要因の操業変数の変更値を求め、出力装置30に出力する(S450)。解析対象データの操業変数の変更値は、解析対象データの操業変数の値と、最小距離の正常操業グループの操業変数の値との差分をとることで求められる。解析対象データの操業変数の値を、解析対象データに最も近い正常操業グループの操業変数の値に近づけることにより、操業変数の値の変更を最小限にとどめることができる。
【0099】
[3-4.1つのアクションに対する支援]
本実施形態に係る解析装置200は、コークスの押し詰まり懸念発生要因を解析し、作業者がコークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取ることを支援する支援情報を提示することができる。例えば、解析装置200は、図13に基づき説明したように、解析対象データを、当該解析対象データと類似する過去の操業における正常データとを比較して、信頼度を保持した上で、押出負荷を低減するための第1要因~第K要因の操業変数の変更値を出力する。操業変数の値をかかる変更値だけ変更すれば、速やかに押出負荷を正常な値とすることが期待される。
【0100】
一方で、値の変更が必要となる操業変数は最大K個ある。また、操業変数の変更値はなるべく小さく設定されるものの、設備の能力や操業条件等によっては1回のアクションでは変更することができない大きさの変更値となっていることもあり得る。さらに、作業者の要望により、1つの操業変数の値のみ変更したいこともある。例えば、押し詰まりが懸念される窯に対して押出負荷を低減する最良のアクションをとるよりも、応急的にある程度まで押出負荷を低減した方がよい場合には、作業を簡易にするため1つの操業変数の値のみ変更することが望ましい場合もある。
【0101】
そこで、解析装置200は、値の変更が必要な操業変数の数が多い場合や、1回のアクションでは設定された変更値まで変更できない場合、作業者の要望により1つの操業変数の値のみ変更したい場合等に、どの操業変数の値をどの程度変更したらよいかを提示するようにしてもよい。
【0102】
以下、図14図17に基づいて、1つの操業変数の値を変更する場合における解析装置200の支援情報の出力処理について説明する。図14は、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報を出力するにあたり、前処理として実施される操業変数の寄与度の算出処理の一例を示すフローチャートである。図15は、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報の出力処理の一例を示すフローチャートである。図16は、指定された1つの操業変数の直近m回における実績値及び寄与度のトレンドを表示する画面の一例を示す説明図である。図17は、図16に示したトレンドに基づき操業変数の変更値を決定する処理を説明するための説明図である。
【0103】
(1)前処理(操業変数の寄与度の算出)
1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報を出力するために、まず、解析対象データについて操業変数の寄与度を算出するとともに、解析対象データが取得された窯の過去の操業実績データについて操業変数の寄与度を算出する。
【0104】
図14に示すように、解析装置200の寄与度算出部210は、解析対象データである複数の操業変数の値と、解析対象データが取得された窯の過去の操業実績データの操業変数の値との入力を受け付ける(S500)。
【0105】
解析対象データは、例えば、作業者が入力装置10を用いて指定した操業実績データである。ステップS500では、図9のステップS200と同様に、指定された操業実績データの操業変数の値が、解析対象データの操業変数の値として、操業データ記憶部50から寄与度算出部210に入力される。
【0106】
解析対象データが取得された窯の過去の操業実績データは、解析対象データに関連付けられた窯を特定するための情報(例えば、各窯に対して付与された固有の窯番号)に基づき、操業データ記憶部50から寄与度算出部210に入力される。寄与度算出部210には、解析対象データから遡って直近m回の操業実績データの操業変数の値が入力される。解析対象データから遡って寄与度算出部210に入力される過去の操業実績データの数mは、複数であればよく、例えばm=5程度としてもよい。また、過去の操業実績データの数mは、予め作業者によって設定されていてもよく、解析装置200にて自動的に設定してもよい。過去の操業実績データの数mは、配合変更や設備補修タイミングを考慮して解析対象データを取得したときの操業と大きく操業状態が変化しない範囲で設定される値であり、適宜変更可能な値である。
【0107】
次いで、寄与度算出部210は、まず、ステップS500にて入力された解析対象データの操業変数それぞれについて、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを用いて出力値を評価することにより、コークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する(S510)。ステップS510は、図9のステップS210と同様に実施すればよい。寄与度算出部210は、例えばPI法、SHAP法等の説明手法により、寄与度を算出する。
【0108】
そして、寄与度出力部220は、寄与度算出部210により算出された、解析対象データの各操業変数の寄与度を、出力装置30に出力する(S520)。ステップS520は、図9のステップS220と同様に実施すればよい。出力装置30は、寄与度出力部220から出力された各操業変数の寄与度を、例えば図8に示したような棒グラフによって表してもよい。
【0109】
一方、寄与度算出部210は、ステップS500にて入力された、解析対象データが取得された窯の過去の操業実績データの操業変数の値に基づき、ステップS510と同様に予測モデルを用いてコークスの押し詰まり懸念の発生に寄与する寄与度を算出する(S530)。寄与度算出部210は、m個の過去の操業実績データについて、それぞれ操業変数の寄与度を算出する。そして、寄与度算出部210は、ステップS530にて算出したm個の過去の操業実績データそれぞれの操業変数の寄与度を、解析装置200の記憶部(図示せず。)に記録し保持する(S540)。
【0110】
このように、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報を出力するにあたり、前処理として、解析対象データの操業変数の寄与度に加え、m個の過去の操業実績データにおける操業変数の寄与度が算出される。図14に示した寄与度の算出処理では、例えば、解析対象データについてn個の操業変数の寄与度が算出され、m個の過去の操業実績データについてそれぞれn個の操業変数の寄与度が算出される。
【0111】
(2)支援情報の出力処理
次に、図15に基づいて、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報の出力処理の一例を説明する。なお、図15に示すフローチャートの処理は、図13に示した操業変数の変更値リコメンド処理が実施された後に行われるものとする。また、以下の説明では、変更対象とする1つの操業変数を「指定操業変数」ともいう。
【0112】
(S600-S620:指定操業変数の設定)
1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報を出力する場合、解析装置200の支援情報処理部230は、まず、変更対象となる指定操業変数を設定する。
【0113】
例えば、作業者によって変更対象とする1つの操業変数が指定される場合がある。この場合には、作業者が指定した操業変数を指定操業変数として設定する。作業者は、予め指定操業変数を指定しておいてもよく、解析装置200からの指定操業変数の有無の確認を受けてから指定操業変数を指定してもよい。
【0114】
予め指定操業変数を指定しておく場合には、作業者は、例えば入力装置10を用いて指定操業変数を入力する。指定操業変数が入力されると、解析装置200は、指定された指定操業変数を記憶部(図示せず。)に記憶する。
【0115】
また、解析装置200からの確認を受けて作業者が指定操業変数を指定する場合には、解析装置200は、例えば出力装置30に指定操業変数を設定するための設定画面を表示させ、作業者に対して指定操業変数を設定するかを確認する。作業者は、指定操業変数を設定する場合には、入力装置10を用いて指定操業変数とする1つの操業変数を当該設定画面に入力する。指定操業変数が入力されると、解析装置200は、指定された指定操業変数を記憶部(図示せず。)に記憶する。なお、指定操業変数を設定しない場合には、作業者は、入力装置10を用いて、例えば当該設定画面に表示されている設定不要通知ボタンを押下して、指定操業変数は設定不要であることを解析装置200に送信してもよい。
【0116】
支援情報処理部230は、このように作業者から指定された指定操業変数の有無を確認する(S600)。具体的には、支援情報処理部230は、例えば記憶部(図示せず。)に指定操業変数が記録されているかを確認する。記憶部に指定操業変数が記録されている場合には(S600:YES)、出力する支援情報を選択するステップS630の処理へ進む。一方、記憶部に指定操業変数が記録されていない場合には(S600:NO)、支援情報処理部230は、図13に示した操業変数の変更値リコメンド処理が実施された結果から、指定操業変数の設定が必要か否かを作業者に確認する(S610)。
【0117】
まず、支援情報処理部230は、操業変数の変更値リコメンド処理が実施された結果から、最適アクションとして提示された操業変数の変更値が所定の閾値よりも大きいかどうかを判定する。各操業変数それぞれに対しては、例えば、装入量の最大変更値はXXトン、石炭水分の最大変更値はYY%、等のように、1回のアクションで変更可能な最大変更値が予め設定されている。支援情報処理部230は、操業変数の最大変更値を閾値として、図13のステップS450にて出力された第1要因~第K要因の操業変数の変更値が閾値よりも大きいか否かをそれぞれ判定することができる。
【0118】
また、支援情報処理部230は、最適アクションとして提示された第1要因~第K要因の操業変数の値を変更することについて、複数の操業変数の値を同時に実行できるか否かを判定する。例えば設備状態等により、ある操業変数については、他の操業変数の値の変更と同時に値を変更することができないこともあり得る。このように値を単独で変更しなければいけない操業変数については、作業者等によって予め記憶部(図示せず。)に記録しておく。これにより、支援情報処理部230は、第1要因~第K要因の操業変数に、値を単独で変更しなければいけない操業変数が含まれているか否かを判定し得る。
【0119】
そして、支援情報処理部230は、最適アクションとして提示された操業変数の変更値が所定の閾値よりも大きい操業変数があると判定したとき、または、第1要因~第K要因の操業変数の値を同時に変更できないと判定したときには(S610:YES)、指定操業変数を作業者に設定させる(S620)。例えば、支援情報処理部230は、出力装置30に指定操業変数を設定するための設定画面を表示させ、作業者に指定操業変数を設定させる。作業者は、入力装置10を用いて、指定操業変数とする1つの操業変数を当該設定画面に入力する。指定操業変数が入力されると、解析装置200は、指定された指定操業変数を記憶部(図示せず。)に記憶する。
【0120】
ステップS620において、支援情報処理部230は、ステップS610の判定結果を設定画面に表示させてもよい。例えば、支援情報処理部230は、第1要因~第K要因の操業変数のうち変更値が閾値より大きくなっている操業変数や、単独で値を変更しなければいけない操業変数を、設定画面に表示させてもよい。例えば、単独で値を変更しなければいけない操業変数がある場合には、作業者は、単独で値を変更する必要のある操業変数の値を変更するか、あるいは、それ以外の操業変数の値を変更するかを選択する必要がある。ステップS610の判定結果を設定画面に表示させることで、作業者は、第1要因~第K要因の操業変数のうちどの操業変数を指定操業変数として設定すべきかを判断するための情報として活用することができる。
【0121】
なお、ステップS610において、最適アクションとして提示された操業変数の変更値が所定の閾値よりも大きい操業変数がなく、かつ、第1要因~第K要因の操業変数の値を同時に変更可能な場合には(S610:NO)、1つの操業変数の値を変更するための支援情報は不要である。このとき、支援情報処理部230は、図15に示す処理を終了する。
【0122】
(S630:支援情報の選択)
指定操業変数が設定されると、支援情報処理部230は、作業者に対して支援情報の種類を選択させる(S630)。本例では、1つの操業変数の値を変更する場合の支援情報として、指定操業変数の実績値及び寄与度の時系列データであるトレンドと、指定操業変数の変更値のリコメンド情報とを出力し得る。そこで、支援情報処理部230は、作業者に対して支援情報の種類を選択させ、選択された支援情報を出力するための処理を実行するようにしてもよい。
【0123】
例えば、支援情報処理部230は、出力装置30に支援情報の種類を選択するための選択画面を表示させ、作業者に支援情報の種類を選択させる。例えば、選択画面にプルダウンを表示させ、プルダウンのリストに、指定操業変数の実績値及び寄与度のトレンドを選択する「トレンド」と、指定操業変数の変更値のリコメンド情報を選択する「リコメンド」とを表示させる。作業者は、入力装置10を用いて、プルダウンから支援情報の種類を選択する。支援情報の種類が選択されると、解析装置200は、選択された支援情報を出力する処理を実行する。
【0124】
(S640:トレンド出力)
ステップS630にて支援情報としてトレンドが選択されると、支援情報処理部230は、指定操業変数の実績値及び寄与度のトレンドを出力装置30に出力する(S640)。指定操業変数の実績値のトレンドは、図14のステップS500にて操業データ記憶部50から解析装置200に入力された直近m回における操業実績データの指定操業変数の値を時系列に示したものである。指定操業変数の寄与度のトレンドは、図14のステップS530にて算出され、記憶部(図示せず。)に記録されている、直近m回の操業実績データの指定操業変数の寄与度を時系列に示したものである。出力装置30は、支援情報処理部230から入力された情報に基づいて、指定操業変数の実績値及び寄与度のトレンドを出力する。
【0125】
図16は、出力装置30により表示される、指定操業変数の直近m回における実績値及び寄与度のトレンドを表示する画面600の一例である。図16に示す画面600には、解析対象データから遡って直近m回分の実績値を時系列に示した実績値トレンド610と、解析対象データから遡って直近m回分の寄与度を時系列に示した寄与度トレンド620とが表示されている。出力装置30を介してこのようなトレンドを作業者に提示することにより、作業者は、指定操業変数の実績値と寄与度がどのように変化しているか、寄与度が低いときにはどのような実績値となっているかを把握することができる。その結果、作業者は、コークスの押し詰まりが懸念される窯に対して、指定操業変数の値をどのように変更させるのがよいかを決定しやすくなる。
【0126】
なお、図16の画面600には、指定操業変数を選択する指定操業変数選択エリア630を表示させてもよい。指定操業変数選択エリア630では、指定操業変数名を例えばプルダウンのリストから選択することができる。作業者が入力装置10を用いてプルダウンから指定操業変数を選択すると、解析装置200は、選択された指定操業変数の実績値トレンド610及び寄与度トレンド620を画面600に表示する。このように、トレンドを表示させたい指定操業変数を選択可能にすることにより、作業者は、所望の操業変数の実績値トレンド610及び寄与度トレンド620を容易に確認することができる。
【0127】
(S650-S660:リコメンド情報出力)
一方、ステップS630にて支援情報としてリコメンド情報が選択されると、支援情報処理部230は、適切な指定操業変数の変更値を特定し、出力装置30に出力する。
【0128】
まず、支援情報処理部230は、指定操業変数の寄与度について、解析対象データから操業変数データを時系列に遡り、寄与度が所定の閾値未満である少なくとも1つの操業実績データを抽出する(S650)。すなわち、支援情報処理部230は、直近m回における操業実績データから、寄与度が所定の閾値未満であるM個(1≦M≦m)の操業実績データを抽出する。寄与度の閾値は予め適宜設定することができ、その操業変数が押し詰まり懸念発生要因と思われるときの寄与度の値に基づき設定し得る。例えば、寄与度が0~1の値を取り得るとき、閾値は0.05程度としてもよい。
【0129】
そして、支援情報処理部230は、ステップS650にて抽出したM個の操業変数データの指定操業変数の実績値に基づき求めた値を、リコメンドする指定操業変数の変更値として、出力装置30に出力する(S660)。すなわち、支援情報処理部230は、1つの操業変数の値を、過去の操業において押し詰まり懸念発生要因とはなっていないときの値に戻すように、変更値を決定する。
【0130】
指定操業変数の変更値は、例えばステップS650にて抽出したM個の操業変数データのうち、最も直近の操業変数データの指定操業変数の実績値としてもよい。もしくは、指定操業変数の変更値は、ステップS650にて抽出したM個の操業変数データのうち、最も直近の操業変数データから遡って、連続して指定操業変数の寄与度が閾値未満となっている複数の操業変数データの実績値に基づき算出される値(例えば、平均値)を、指定操業変数の変更値としてもよい。
【0131】
具体例として、図16に示した指定操業変数の実績値トレンド610及び寄与度トレンド620に基づき、リコメンド情報を出力した例を図17に示す。まず、支援情報処理部230は、図17に示す寄与度トレンド620を時系列に遡り、寄与度が所定の閾値未満であるM個の操業実績データを抽出する。図17の例では、最も直近で寄与度が閾値未満であったのは、解析対象データから3回前(m=3)の時点である。このとき、支援情報処理部230は、解析対象データから3回前(m=3)の操業実績データを抽出し、そのときの実績値をリコメンドする指定操業変数の変更値として出力してもよい。もしくは、図17の例では、解析対象データから3回前(m=3)から5回前(m=5)まで、連続して指定操業変数の寄与度が閾値未満となっている。そこで、支援情報処理部230は、3回前(m=3)から5回前(m=5)までの操業実績データの指定操業変数の実績値の平均値を、指定操業変数の変更値として出力してもよい。
【0132】
このとき、支援情報処理部230は、指定操業変数の変更値のみを出力装置30に出力させてもよく、例えば図17に示すように、指定操業変数の実績値トレンド610及び寄与度トレンド620とともに指定操業変数の変更値を出力装置30に出力させてもよい。図17では、指定操業変数の変更値としてリコメンドする実績値を吹き出し640にて表示している。図17に示すように指定操業変数の実績値トレンド610及び寄与度トレンド620とともに指定操業変数の変更値を出力することで、作業者は、指定操業変数の変更値とともに、指定操業変数の実績値と寄与度の変化を把握でき、リコメンドされた指定操業変数の変更値がどの操業実績データに基づくものであるかも把握できる。
【0133】
以上、1つの操業変数の値を変更する場合における解析装置200の支援情報の出力処理について説明した。かかる処理によれば、値の変更が必要な操業変数の数が多い場合や、1回のアクションでは設定された変更値まで変更できない場合、作業者の要望により1つの操業変数の値のみ変更したい場合等に、どの操業変数の値をどの程度変更したらよいかを決定するための情報を作業者に提示することができる。これにより、作業者は、最良のアクションではないものの押出負荷を少しでも低減させるアクションをとることができ、押し詰まり懸念の発生を回避することができる。
【0134】
以上、本実施形態に係る支援情報提示方法について説明した。本実施形態に係る支援情報提示方法によれば、解析対象データをコークスの押し詰まり懸念のない正常データとするために作業者の適正アクションを支援する支援情報を提示することができる。これにより、作業者は、コークスの押し詰まりが懸念される窯に対して速やかに適正なアクションを取ることができる。
【0135】
[4.ハードウェア構成]
図18に基づいて、本実施形態に係るモデル生成装置100及び解析装置200のハードウェア構成について説明する。図18は、本実施形態に係るモデル生成装置100または解析装置200として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0136】
情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901等の1または複数のハードウェアプロセッサ、RAM(Random Access Memory)905、ROM(Read Only Memory)903等の1または複数のメモリを具備し、メモリに格納される1または複数のプログラムが1または複数のハードウェアプロセッサにより実行されることで各種の演算を実行する。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0137】
例えば、CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス、PCI Express(登録商標)などの外部バスに接続されている。
【0138】
なお、演算処理装置及び制御装置は、CPU901以外に、PLC(Programmable Logic Controller)によって実現してもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0139】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0140】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0141】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0142】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0143】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、eSATA(external Serial Advanced Technology Attachment)、SAS(Serial Attached SCSI(Small Computer System Interface))ポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。例えば接続ポート917を介して、アラーム情報を通知するための回転灯等のアラーム通知装置を接続してもよい。また、外部機器927として、NAS(Network Attached Storage)を接続し、記憶装置として用いてもよい。
【0144】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。例えば、通信装置919を介して、情報処理装置900を操作するためのコンピュータを接続することもできる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0145】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【0146】
また、本実施形態に係るモデル生成装置100及び解析装置200について、各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することも可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0147】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0148】
例えば、上記実施形態では、モデル生成装置100と解析装置200とは別の装置として説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、モデル生成装置100及び解析装置200を1つの装置として構築してもよい。
【0149】
また、上記実施形態では、ランダムフォレストを用いて、複数の操業変数を入力としコークスの押し詰まり懸念発生確率を出力とする予測モデルを生成したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ロジスティック回帰等のように、入力される説明変数の値から押し詰まり懸念確率を出力することの可能な他の機械学習手法を用いて、予測モデルを生成してもよい。なお、ランダムフォレストは、説明変数同士に相関があり多重共線性の問題を回避できる木構造のアルゴリズムであり、過学習を回避して予測精度も高いことから、本発明の予測モデルを構築するための手法として適している。
【符号の説明】
【0150】
10 入力装置
30 出力装置
50 操業データ記憶部
100 モデル生成装置
110 データ取得部
120 モデル生成部
130 出力部
200 解析装置
210 寄与度算出部
220 寄与度出力部
230 支援情報処理部
600 画面
610 実績値トレンド
620 寄与度トレンド
630 指定操業変数選択エリア
640 吹き出し
900 情報処理装置
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