(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048354
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】点眼容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240401BHJP
B65D 47/18 20060101ALI20240401BHJP
B65D 77/06 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61J1/05 313C
B65D47/18
B65D77/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135039
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2022154161
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
【テーマコード(参考)】
3E067
3E084
4C047
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB81
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA01C
3E067BA12B
3E067BB15B
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3E067BB16B
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3E067BB25B
3E067BB25C
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3E067BC07C
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3E067GB01
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3E084HD04
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3E084KA05
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
3E084LD08
3E084LD16
4C047AA40
4C047BB12
4C047BB14
4C047BB15
4C047BB16
4C047BB17
4C047CC24
4C047DD03
(57)【要約】
【課題】積層剥離型の容器本体を用いる際の点眼薬吐出時の不具合を抑制した、点眼容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、容器本体とキャップとを備える点眼容器であって、前記容器本体は、外殻と内袋とを有し、且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、前記キャップは、前記容器本体の口部に取り付けられ、且つ逆止弁を備え、前記逆止弁は、前記口部を通じて前記内袋と連通し、前記逆止弁の開弁圧は5.0kPa以下である、点眼容器が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体とキャップとを備える点眼容器であって、
前記容器本体は、外殻と内袋とを有し、且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、
前記キャップは、前記容器本体の口部に取り付けられ、且つ逆止弁を備え、
前記逆止弁は、前記口部を通じて前記内袋と連通し、
前記逆止弁の開弁圧は5.0kPa以下である、点眼容器。
【請求項2】
請求項1に記載の点眼容器であって、
前記容器本体の容量は、15mL以下である、点眼容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の点眼容器であって、
前記逆止弁の逆止圧は、50kPa以上である、点眼容器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の点眼容器であって、
前記逆止弁は、弁体と台座とを備え、
前記台座は、座面を備え、
前記弁体は、流通孔と縁部と環状部とを備え、
前記縁部は、前記流通孔の縁に沿う部位であり、
前記環状部は、前記縁部の周囲に設けられ、
前記逆止弁は、前記縁部と前記座面とが当接することで閉塞され、前記環状部に内圧が加わると前記弁体が弾性変形することで前記縁部が前記座面から離れて前記流通孔が開かれるように構成される、点眼容器。
【請求項5】
請求項4に記載の点眼容器であって、
前記環状部は、平坦フランジ又は波状フランジである、点眼容器。
【請求項6】
請求項4に記載の点眼容器であって、
前記座面は、平面となるように構築され、
前記縁部は、前記座面に重なる縁部底面が平面となるように構築され、
前記逆止弁は、前記縁部と前記座面とが平面同士で当接することで閉塞されるように構成される、点眼容器。
【請求項7】
請求項4に記載の点眼容器であって、
前記逆止弁は、前記環状部に内圧が加わると前記環状部の外周端が支点となって前記環状部が弾性変形して前記縁部が全体形状を保持したまま前記台座との距離を変化させることで前記流通孔が開閉されるように構成される、点眼容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体とキャップとを備える点眼容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、点眼薬を収容する点眼容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、積層剥離型の容器本体を点眼容器に用いるための鋭意研究を行っている。この場合、積層剥離型容器本体のキャップに逆止弁(チェックバルブ)が設けられ、この逆止弁を通じて点眼薬を吐出することになる。しかしながら一般容器との違いを考慮せずに、点眼容器に適さない逆止弁を用いると、点眼薬吐出時に不具合が出ることがわかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、積層剥離型の容器本体を用いる際の点眼薬吐出時の不具合を抑制した、点眼容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、以下の発明が提供される。
[1]容器本体とキャップとを備える点眼容器であって、前記容器本体は、外殻と内袋とを有し、且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、前記キャップは、前記容器本体の口部に取り付けられ、且つ逆止弁を備え、前記逆止弁は、前記口部を通じて前記内袋と連通し、前記逆止弁の開弁圧は5.0kPa以下である、点眼容器。
[2][1]に記載の点眼容器であって、前記容器本体の容量が、15mL以下である、点眼容器。
[3][1]又は[2]に記載の点眼容器であって、前記逆止弁の逆止圧が、50kPa以上である、点眼容器。
[4][1]~[3]のいずれか1つに記載の点眼容器であって、前記逆止弁は、弁体と台座とを備え、前記台座は、座面を備え、前記弁体は、流通孔と縁部と環状部とを備え、前記縁部は、前記流通孔の縁に沿う部位であり、前記環状部は、前記縁部の周囲に設けられ、前記逆止弁は、前記縁部と前記座面とが当接することで閉塞され、前記環状部に内圧が加わると前記弁体が弾性変形することで前記縁部が前記座面から離れて前記流通孔が開かれるように構成される、点眼容器。
[5][4]記載の点眼容器であって、前記環状部は平坦フランジ又は波状フランジである、点眼容器。
[6][4]又は[5]に記載の点眼容器であって、前記座面は、平面となるように構築され、前記縁部は、前記座面に重なる縁部底面が平面となるように構築され、前記逆止弁は、前記縁部と前記座面とが平面同士で当接することで閉塞されるように構成される、点眼容器。
[7][4]~[6]のいずれか1つに記載の点眼容器であって、前記逆止弁は、前記環状部に内圧が加わると前記環状部の外周端が支点となって前記環状部が弾性変形して前記縁部が全体形状を保持したまま前記台座との距離を変化させることで前記流通孔が開閉されるように構成される、点眼容器。
【0007】
本発明者は種々の鋭意検討を行ったところ、点眼容器に積層剥離型の容器本体を用いる場合には、逆止弁の開弁圧が5.0kPa以下であると点眼液吐出時の不具合を抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る点眼容器1の正面図である。
【
図4】
図2と同じ断面でのキャップ2の斜視図である。
【
図5】
図5Aは、
図4からノズル23を抜き出した斜視図であり、
図5Bは、
図4から弁体21及び中栓22を抜き出した斜視図である。
【
図9】
図2と同じ断面でのキャップ2の断面図である。
【
図10】容器に圧縮力が加わったときの弁体21の変形状態を示す断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る点眼容器1での、
図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。以下の説明中での上・下は、
図1に示すように容器本体3を立設させた状態での上・下を意味する。点眼時には、点眼容器1を目の真上に位置させて、
図1の上下逆の状態で点眼容器1が使用されるのが普通である。
【0010】
1.全体構成
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態の点眼容器1は、キャップ2と、容器本体3と弁部材5を備える。容器本体3は、内容物を収容する収容部7と、収容部7から内容物を吐出する口部9を備える。内容物は、液体の点眼薬である。キャップ2は、口部9に装着される。なお
図2に示すように、口部9には、図示しない蓋を装着するための係合部9aが設けられている。点眼薬は、口部9の開口端9bから吐出される。キャップ2は、内部に逆止弁2aを備える(
図2の破線枠参照)。
【0011】
図2に示すように、容器本体3は、収容部7及び口部9において、外殻12と内袋14を備える。点眼薬の減少に伴って内袋14が外殻12から剥離することによって、内袋14が外殻12から離れて収縮する。
【0012】
弁部材5は、
図2に示すように、収容部7に形成された外気導入孔15に挿入され、外殻12と内袋14の間の空間Gと外部との間の空気の出入りを調節するためのものである。
図2では弁部材5の一例として、収容されたボールの変位で弁開閉が行われるいわゆるボール弁を図示しているが、これに限られない。弁部材5の構成としては、例えば、外気導入孔15の縁と弁部材5の間の隙間を弁部材5の移動によって開閉することによって、弁部材5が外気導入孔15を開閉する構成や、弁部材5自体に貫通孔と開閉可能な弁を設けて、この弁の働きによって貫通孔を開閉することによって、外気導入孔15を開閉する構成とすることができる。なお、弁部材5を設けず、外気導入孔15にフィルタを貼り付けることで空気の出入りを調節する構成や、単に内容物を吐出する際に外気導入孔15を指などで閉塞させて調整を行う構成とすることもできる。また、外気導入孔15を口部9に設け、外気導入孔15に連通する逆止弁を有するキャップを用いてもよい。
【0013】
弁部材5は、上記いずれの構成であっても、外殻12を圧縮した際には外気導入孔15を閉塞して内袋14を圧縮可能な状態とし、外殻12への圧縮力を解除すると空間G内に外気が導入されるよう構成される。
【0014】
収容部7は、弁部材5を取り付けた後にシュリンクフィルムで覆われる。この際に、弁部材5がシュリンクフィルムに干渉しないように、弁部材5は、収容部7に設けられた弁部材取付凹部7aに装着される(
図1参照)。また、弁部材取付凹部7aがシュリンクフィルムで密閉されてしまわないように弁部材取付凹部7aから口部9の方向に延びる空気流通溝7bが設けられる(
図1参照)。なお、実施の形態では、一例として、
図2の断面図にあるように弁部材取付凹部7a及び空気流通溝7bが容器本体3の前面と背面とに対称に設けられるが、弁部材5は片方の弁部材取付凹部7aにのみ装着される。
【0015】
また、容器本体3の層構成について、外殻12は、復元性が高くなるように、内袋14よりも肉厚に形成される。外殻12は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。外殻12は、複数層構成であってもよい。内袋14は、複数の層から構成することが好ましい。例えば、外層と接触する層にエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなるEVOH層を用い、内容物に接触する層に、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィンからなる内面層を用いることができる。そして、上記EVOH層と内面層との間には、接着層を用いることが好ましい。
【0016】
容器本体3の容量は、15mL以下であることが好ましく、より好ましくは10mL以下である。容器本体3の容量は、例えば3mL~15mLであり、具体的には例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15mLであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
2.キャップ2の詳細構成
次に、
図2~
図10を用いて、キャップ2について説明する。
図3及び
図4に、キャップ2の斜視図および斜視断面図を示す。
図4、
図5A及び
図5Bに示すように、キャップ2は、弁体21と、中栓22と、ノズル23と、を備える。
図2、
図4、
図9及び
図10に破線枠で示すように、キャップ2は逆止弁2aを内蔵している。逆止弁2aは、弁体21と、中栓22の台座22aとにより構築されている。
【0018】
2-1.弁体21
図6A~
図6Cに示すように、弁体21は、流通孔21a1と、縁部21aと、環状部21bと、外筒部21dとを備える。弁体21は、例えばシリコーンゴムなどのエラストマーによって形成されており、内容物による内圧によって弾性変形する。弁体21に力が加わっていない状態では、
図6B及び
図6Cに示すように弁体21の下面全体が平坦である。
【0019】
縁部21aは、弁体21の中央に設けられている。縁部21aは、流通孔21a1の縁に沿う部位である。一例として縁部21aは筒状であり、その筒の中心に流通孔21a1が設けられる。
図6Cに示すように、縁部21aの下面を、縁部底面21a2とも称す。縁部底面21a2は、後述する台座22aの座面22a1(
図7A等参照)と重なる平面となるように構築される。実施の形態では、縁部底面21a2は、具体的には、縁部21aの中心軸及び流通孔21a1の中心軸に対して垂直な平面を成すように構築されている。
【0020】
環状部21bは、縁部21aの周囲に設けられる。環状部21bは、一例として、縁部21aの側面(縁部側面21a3)に、縁部21aよりも薄く形成された円板状フランジである。環状部21bは、一例として平坦フランジである。平坦フランジは、厚さ方向の軸に沿う断面視(つまり
図6Cの断面視)で、表面と裏面とが起伏なく平らな板状となるように構築されている。なお、実施の形態では一例として環状部21bの全体の厚さが均一であり、フランジの径方向に厚さ一定としている。
【0021】
外筒部21dは、弁体21の外周に設けられている。外筒部21dは、環状部21bの外周端とつながっている。外筒部21dは、縁部21aと同軸上の位置に設けられる。環状部21bと外筒部21dとの接続部が、環状部21bが弾性変形するときの支点となる。
【0022】
実施の形態では、一例として、弁体21の厚さ方向にみて、外筒部21dが最も厚く、次に縁部21aが厚く、これらに比して環状部21bは十分に薄い。弁体21の耐久性、環状部21bの弾性変形のしやすさ、縁部21aの形状保持性、その他の事情を考慮して、各部位の厚さを適正範囲に定めることが好ましい。
【0023】
一例として、
図6Cのように、縁部21aの厚さをTaとし、環状部21bの厚さをTbとする。この場合に、「Tb/Ta」の値は、例えば0.1であり、この場合、環状部21bの厚さTbは縁部21aの厚さTaの十分の1である。「Tb/Ta」の値は、例えば0.10~0.30であり、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
他の例として、
図6Cに、環状部21bの径方向幅Wbが図示されている。径方向幅Wbは、環状部21bの外周円径と内周円径との差である。厚さTbが同じ値であれば、径方向幅Wbが長くなるほど、環状部21bが弾性変形しやすい。「Wb/Tb」の値は、例えば6.0である。「Wb/Tb」の値は、例えば4.0~10.0であり、具体的には例えば、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
2-2.中栓22
図7A~
図7Dに示すように、中栓22は、台座22aと、筒部22bと、脚部22cと、弁体支持部22dと、係合部22eを備える。筒部22bは、口部9内に挿入される(
図2参照)。中栓22は、弁体21よりも剛性が高い材料(ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)など)で形成されており、内容物による内圧によっては、実質的に変形しない。
【0026】
台座22aは、支柱状であり、流通孔21a1よりも直径が大きい。台座22aは座面22a1を備える。内容物による内圧が環状部21bに加わっていないときは、
図4及び
図9に示すように、流通孔21a1の縁が座面22a1に当接することによって流通孔21a1が閉塞される。座面22a1は平面となるように構築される。これにより閉塞時には座面22a1と縁部底面21a2とが平面同士で当接する。
【0027】
筒部22bと台座22aの間には、脚部22cが設けられている。本実施形態では、複数(本実施形態では3本)の脚部22cが等間隔(本実施形態では120度間隔)で設けられている。台座22aは脚部22cによって支持されている。台座22aは、筒部22bと同軸上の位置に設けられており、脚部22cは、筒部22bの内壁と台座22aの側面とを連結する。隣接する脚部22cの間の隙間22fを通じて内容物が流通可能になっている。隙間22fを通じて内容物による内圧が環状部21bに加えられる。
【0028】
なお、実施の形態では、一例として、中栓22に、切欠き22c1と突起22c2とが設けられる。切欠き22c1は、脚部22cの外径側端部が斜面状に面取りされたものである。切欠き22c1は、脚部22cと環状部21bとの間に隙間を生じさせる。突起22c2は、周方向に隣り合う脚部22cの間に設けられ、内径側へ凸となり、脚部22cと同一の支持面を構成している。脚部22cと突起22c2とが、弁体21の下側において縁部21aと環状部21bとを支持する。なお、切欠き22c1と突起22c2は省略することもできる。
【0029】
筒部22bの内周面には弁体支持部22dが設けられている。外筒部21dが弁体支持部22d上に支持される。
【0030】
筒部22bの上端には、内径側に凸となる係合部22eが設けられている。係合部22eは、環状突起であり、中栓22をノズル23に係合させるために用いられる。
【0031】
2-3.ノズル23
図5A及び
図8A~
図8Cに示すように、ノズル23は、挿入筒部23aと、係合部23a1と、フランジ23bと、吐出筒部23cと、吐出口23fと、ノズル流路23iとを備える。ノズル23は、弁体21よりも剛性が高く、中栓22よりも剛性が低い材料で形成されることが好ましい。この場合、内容物による内圧によっては、実質的に変形しないが、適度に柔らかいので、ノズル23がユーザーに触れたときの危害性が低減される。ノズル23の材料としては、ポリプロピレンよりも剛性が低いポリオレフィンが好ましく、LLDPEが特に好ましい。
【0032】
フランジ23bは、挿入筒部23aと吐出筒部23cとの中間位置においてノズル23の外径側にひろがるように設けられる。フランジ23bは、口部9の開口端9bに当接する。挿入筒部23aが中栓22にはまり込み、係合部23a1と係合部22eとが係合することで、ノズル23と中栓22とが一体化される。挿入筒部23aの内周面には収容部23hが設けられている。収容部23hは、環状凹部である。収容部23hに弁体21の外筒部21dが収容される。
【0033】
ノズル23の吐出筒部23cには、ノズル流路23iが設けられる。ノズル流路23iは、弁体21の流通孔21a1に連通する。
【0034】
図8Cに示すように、ノズル流路23iは、ノズル23の先端側で第1内径Φ1を有し、ノズル23の内側で第2内径Φ2を有する。第2内径Φ2は、第1内径Φ1よりも小さい(つまりΦ2<Φ1)。ノズル流路23iは、第1内径Φ1の先端部から第2内径Φ2の内側にかけてテーパー形状を成すことが好ましい。実施の形態では、Φ2をΦ1で除した比(Φ2/Φ1)は、例えば0.8であり、この場合、Φ2がΦ1の0.8倍となるようにノズル流路23iが漸次縮径される。「Φ2/Φ1」の値は、例えば0.5~0.9であり、具体的には例えば、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85又は0.90であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
なお、第1内径Φ1は、例えば2.1mmである。Φ1の値は、例えば1.5~3.5mmであり、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、又は3.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
なお、ノズル流路23iは、ノズル23の根元側で第3内径Φ3を有する。第3内径Φ3は、第2内径Φ2よりも大きくともよい(つまりΦ2<Φ3)。好ましくは、Φ2<Φ1<Φ3であってもよい。実施の形態では、Φ3をΦ2で除した比(すなわちΦ3/Φ2)は、例えば2.2であり、この場合、Φ3がΦ2の2.2倍となるようにノズル流路23iが漸次拡径される。「Φ3/Φ2」の値は、例えば1.5~3.0であり、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
逆止弁2aの開弁圧は5.0kPa以下である。逆止弁2aの開弁圧は、例えば0.5~5.0kPaであり、例えば1.0~3.0kPa以下であり、具体的には例えば0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5.0kPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
逆止弁2aは、「JIS T3211に準ずる逆止圧(逆止弁を通じて逆流なきこと)」が、50kPa以上であることが好ましい。逆止弁2aの逆止圧は、例えば50~700kPaであり、具体的には例えば50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700kPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
逆止弁2aは、「JIS T3249に準ずる気密性(ハウジング部より空気の漏れがないこと)」が、150kPa以上であることが好ましい。逆止弁2aは、例えば150~900kPaでの気密性が確保されるものであり、具体的には例えば150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850又は900kPaでの気密性が確保されるものであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内での気密性が確保されるものであってもよい。
【0040】
3.キャップ2の動作(逆止弁2aの動作)
次に、
図9及び
図10を用いて、本実施形態に係るキャップ2の動作を説明する。
【0041】
容器本体3の収容部7に外力が加わっていないときは、点眼薬による内圧が環状部21bに加わらない。この場合、
図9に示すように、流通孔21a1の縁が座面22a1に当接することによって流通孔21a1が閉塞される。
【0042】
次に、収容部7をつまむなどして収容部7に圧縮力を加える。そうすると、点眼薬による内圧が環状部21bに加わることによって、
図10に示すように弁体21が弾性変形する。
図10に示すように、環状部21bの外周端を支点として環状部21bが椀状に弾性変形することで、縁部21aが台座22aから離れて、流通孔21a1が開かれる。実施の形態では、環状部21bに比べて縁部21aが十分に厚い筒状に形成されている。このため、縁部21aの全体形状が保持されたまま、縁部21aが台座22aから持ち上がっている。流通孔21a1が開かれると、点眼薬は流通孔21a1を通じて吐出筒部23cに向かって流出し、吐出口23fから吐出される。
【0043】
収容部7への圧縮力が除かれると、弁体21の復元力によって環状部21bが元の形状に復帰する。これにより流通孔21a1の縁が再び座面22a1に当接することによって、流通孔21a1が閉塞される。
【0044】
本願発明者の検討によれば、積層剥離型の容器本体3を用いる場合において、逆止弁2aの開弁圧が5.0kPa以下であると点眼薬吐出時の不具合を抑制する上で好ましいことがわかった。実施の形態ではこの開弁圧の仕様等が適用される。
【0045】
また、実施の形態によれば、逆止弁2aは、縁部21aと座面22a1とが平面同士で当接することで閉塞されている。積層剥離型の容器本体3を用いる場合において、弁体21と台座22aとを平面接触させることで、点眼容器に要求されるレベルの気密性向上が達成されることが分かった。
【0046】
また、実施の形態によれば、逆止弁2aは、環状部21bに内圧が加わると環状部21bの外周端が支点となって環状部21bが弾性変形して縁部21aが全体形状を保持したまま台座22aとの距離を変化させることで流通孔21a1が開閉されるように構成される。縁部21aの変形は抑制しつつフランジ状の環状部21bに弁開放時における弾性変形を担わせることで、弁体21の変形量を抑制できるので、その結果、速やかに弁閉鎖状態へと復元させることができる。これにより、積層剥離型の容器本体3を用いる場合において、点眼容器に要求されるレベルで、弁体21の復元中に空気などの流入をさせない気密性を確保することができることが分かった。特に実施の形態では、筒状の縁部21aは肉厚で変形量を十分に抑制しやすいので、弁体21の変形が実質的に環状部21bの伸縮動作のみとなり、弁体21を素早く開閉することができる。結果、高い気密性を保持することができる。
【0047】
ここで、「縁部21aが全体形状を保持している状態」は、変形量がゼロという意味に限定されず、縁部21aに多少の歪が生じても元の形状を実質的に留めている状態を含むものとする。弁体21は弾性材料で形成されているので、内圧に伴う若干の歪みは生じうるからである。このような変形を許容したとしても、例えば縁部21aが裏返るような大きな変形は回避される。
【0048】
なお、実施の形態によれば、ノズル流路23iをΦ1>Φ2とする構成で、ノズル流路23iに内径を小さくした部位を設けている。ここで、もし仮に吐出口及びノズル流路を均一な口径とし且つ全体的に大口径のものとしてしまうと点眼用途には不向きである。具体的には、滴下が難しくなり点眼用途には不向きとなる不具合や、ノズル内部の液残りが発生する不具合などが懸念される。この点、実施の形態の構成によればそういった不具合を抑制できる効果があり、点眼薬吐出時の不具合を抑制できる。
【0049】
4.変形例
図11に示す変形例の弁体21では、環状部21bの代わりに環状部31bが設けられる。環状部31bは、波状フランジである。この波状フランジは、波状の起伏を伴って外径側へとひろがる。環状部31bは、内側の環状凹部31b1と外側の環状凸部31b2とを備える。環状凹部31b1及び環状凸部31b2は、縁部21aと同軸である。Tb/Taの値やWb/Tbの値等についての数値範囲は
図6C(平坦フランジ)の場合と同様としてもよい。
【0050】
図12には、変形例の中栓22が図示されている。中栓22のように、4本以上(本変形例では6本)の脚部22cが等間隔(本変形例は60度間隔)で設けられてもよく、切欠き22c1及び突起22c2は省略されてもよい。
【0051】
いくつかの変形例は、「逆止弁2aの開弁圧が5.0kPa以下の構成」を採用するとともに、他の構成は任意に変形されてもよい。この場合、弁体21と台座22aとが非平面接触(例えば曲面同士の接触や凹凸面同士での接触)であってもよいし、又は/及び、環状部21bに内圧が加わると環状部21b及び縁部21aがそれぞれ任意の形状に任意の変形量で弾性変形してもよい。
【0052】
他のいくつかの変形例は、「弁体21と台座22aとを平面接触させる構成」を採用するとともに、他の構成は任意に変形されてもよい。この場合、環状部21bに内圧が加わると環状部21b及び縁部21aがそれぞれ任意の形状に任意の変形量で弾性変形してもよいし、又は/及び、逆止弁2aの開弁圧が5.0kPaを超えていてもよい。
【0053】
更に他のいくつかの変形例において、縁部21aを環状部21bよりも厚くしなくともよく、例えば縁部21aを環状部21bと同程度の厚さにしてもよく、この場合には縁部21aと環状部21bとが一枚の連続した円板状になっていてもよい。他の変形例として、縁部21aを環状部21bよりも薄くしてもよい。これらの構成の何れでも、逆止弁2aの開弁圧を5.0kPa以下にしたり、縁部底面21a2を平面形状に構築したりすることができる。
【0054】
更に他のいくつかの変形例は、「環状部21bに内圧が加わると環状部21bの外周端が支点となって環状部21bが弾性変形して縁部21aが全体形状を保持したまま台座22aとの距離を変化させることで流通孔21a1が開閉されるような、逆止弁2aの構成」を採用するとともに、他の構成は任意に変形されてもよい。この場合、弁体21と台座22aとが非平面接触(例えば曲面同士の接触や凹凸面同士での接触)であってもよいし、又は/及び、逆止弁2aの開弁圧が5.0kPaを超えていてもよい。
【0055】
なお、上記列挙した実施の形態及びその変形例にかかる点眼容器1と同一構成の容器が、点眼液以外の任意の内容物を収容する積層剥離容器又は二重容器として提供されてもよい。
【0056】
5.第2実施形態
図13~
図17を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、第1実施形態で説明した内容は、その趣旨に反しない限り、本実施形態にも適用可能である。本実施形態は、キャップ2の構成が第1実施形態と相違している。以下、相違点を中心に説明を進める。
【0057】
本実施形態の点眼容器1のキャップ2は、
図13~
図14に示すように、第1実施形態と同様に、弁体21と、中栓22と、ノズル23を備える。第1実施形態では、ノズル23に設けられたフランジ23bが開口端9bに当接してキャップ2が位置決めされていたが、本実施形態では、中栓22に設けられたフランジ22gが開口端9bに当接してキャップ2が位置決めされる。
【0058】
弁体21は、
図15に示すように、外筒部21dの外筒部底面21d1と、縁部底面21a2が面一になっている。一方、中栓22は、
図16に示すように、座面22a1が、弁体支持部22dよりも高い位置になるように構成されている。座面22a1と弁体支持部22dの差は、例えば、0.05~0.5mmであり(本実施形態では、0.15mm)、具体的には例えば、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。このような構成によれば、外筒部底面21d1が弁体支持部22dに当接するように弁体21を中栓22内に配置すると、
図14に示すように、縁部底面21a2が座面22a1によって上方に押圧されることによって、縁部底面21a2が外筒部底面21d1よりも高い位置に持ち上げられた状態となる。このような状態では、縁部21aには、縁部21aに力が加わっていない状態での原形状(
図15Cに示す形状)に復元しようとする復元力が働き、この復元力によって縁部底面21a2が座面22a1に押し付けられるので、縁部底面21a2と座面22a1の密着性が向上する。なお、外筒部底面21d1と縁部底面21a2の高さの差が、座面22a1と弁体支持部22dの高さの差よりも小さい場合には、上記と同様の作用効果が奏されるので、外筒部底面21d1と縁部底面21a2は必ずしも面一でなくてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、
図14に示すように、縁部21aの上方での、縁部21aとノズル23の間の空間(縁部収容部23j)が狭いので、縁部21aが座面22a1から離れる方向へわずかに移動すると、縁部21aがノズル23に当接して、それ以上の移動が規制される。つまり、ノズル23が、縁部21aの移動を規制する規制部として機能する。このような構成によれば、縁部21aが座面22a1から離れた状態での、縁部21aと座面22a1の距離が一定に保たれるので、点眼薬の定量吐出性が向上する。
【0060】
図17に示すように、ノズル23は、縁部収容部23jと、外筒部収容部23kと、第1フランジ部23lと、第2フランジ部23mと、第3フランジ部23nを備える。第1フランジ部23lと第2フランジ部23mの間には第1溝23sが設けられ、第2フランジ部23mと第3フランジ部23nの間には第2溝23tが設けられている。
【0061】
図14に示すように、縁部収容部23jは、縁部21aが座面22a1から離れるように移動したときに縁部21aを収容する。外筒部収容部23kは、外筒部21dを収容する。縁部収容部23jと外筒部収容部23kの間には環状壁23pが設けられている。第1フランジ部23lは、外筒部収容部23kに隣接して設けられたフランジ部であり、第1フランジ部23lの下面が外筒部21dに当接する。第1フランジ部23lが外筒部21dをわずかに(本実施形態では0.1mm)圧縮するようにノズル23を中栓22に対して固定することによって、弁体21が安定的に保持される。第1フランジ部23lの外周面には、環状凸部23qが設けられている。ノズル23を中栓22内に押し込んだときに環状凸部23qが押しつぶされることによってノズル23が中栓22に対して強固に固定される。
【0062】
第2フランジ部23mは、中栓22の係合部22eに係合する部位である。第2フランジ部23mが第1溝23sと第2溝23tで挟まれているので、第2フランジ部23mが変形しやすくなっている。このため、第2フランジ部23mを係合部22eに当接させながら、ノズル23を中栓22内に押し込む際に、第2フランジ部23mが係合部22eを乗り越えるのに必要な力が軽減される。また、第1及び第2溝23s,23t内には、リブ23rが設けられていて、リブ23rにおいて溝の深さが浅くなっている。リブ23rは、間隔を空けて複数設けられており、複数の(本実施形態では各溝に4つずつ)リブ23rは、好ましくは、周方向に等間隔に設けられている。リブ23rが設けられた部位では、リブ23rが設けられていない部位よりも、第2フランジ部23mが変形しにくくなっており、第2フランジ部23mが過度に変形しやすくなることが抑制されている。
【0063】
第3フランジ部23nは、係合部22eよりも上側に設けられたノズル支持部22hに当接して、ノズル23を中栓22に対して位置決めすることが可能になっている。
【0064】
ノズル流路23iは、第1実施形態では、ノズル23の先端に向かって単調に拡径される形状であったが、本実施形態では、
図17Cに示すように、ノズル流路23iには、ノズル流路23iの途中で縮径される縮径部23i1が設けられている。このため、ノズル流路23iは、ノズル23の下側から先端に向かって縮径部23i1までは縮径され、縮径部23i1からは先端に向かって拡径される形状になっている。
【0065】
上記形態のキャップ2を用いた場合でも、開弁圧等を適宜調整することによって、第1実施形態と同様の作用効果を奏させることが可能である。
【実施例0066】
図1に示す構造を有する容器本体3に、水を充填し、開弁圧は2.0kPa以下である逆止弁を装着して構成した点眼容器を製造した。容器本体3の容量(充填量)は5mLであり、重量は1.7gであった。容器本体3の層構成は、PP//EVOH/接着剤/COP(環状ポリオレフィン)とした。この点眼容器を用いて、気密性試験を行ったところ、液の逆流は見られず、吐出もしやすく、スクイズ圧も低下したという良好な結果が得られた。