IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特開2024-48356学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置
<>
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図1
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図2
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図3
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図4
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図5
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図6
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図7
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図8
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図9
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図10
  • 特開-学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048356
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20240401BHJP
   G06F 18/27 20230101ALI20240401BHJP
   G16C 20/70 20190101ALI20240401BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240401BHJP
【FI】
G16C60/00
G06F18/27
G16C20/70
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137905
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022153541
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 智裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 海
(72)【発明者】
【氏名】茂本 勇
(57)【要約】
【課題】物性値を推定する際の精度低下を抑制することができる学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る学習用データの生成方法は、材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、基準用物性値の統計量を用いて補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、補正モデルを用いて補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、材料の物性値を推定するための学習用データを生成する学習用データ生成方法であって、
材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、
補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、
各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、
前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、
前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、
補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、
を含む学習用データ生成方法。
【請求項2】
前記選択ステップは、前記基準用物性値とする物性値を複数選択する、
請求項1に記載の学習用データ生成方法。
【請求項3】
前記選択ステップは、前記基準用物性値とする物性値を基準物性値候補として複数選択し、
前記補正モデル生成ステップは、複数の基準物性値候補の統計量、または、複数の基準物性値候補および補正対象の物性値の統計量を用いてそれぞれ生成された補正モデルに対し精度評価を行って、各補正モデルから最適な補正モデルを選択する、
請求項1に記載の学習用データ生成方法。
【請求項4】
前記統計量算出ステップの前に実行され、適正範囲から外れている物性値を外れ値として前記データセットから除外する除外ステップ、
をさらに含む請求項1~3のいずれか一つに記載の学習用データ生成方法。
【請求項5】
前記補正モデル生成ステップは、関数フィッティングまたは機械学習を用いて補正モデルを生成する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の学習用データ生成方法。
【請求項6】
コンピュータが材料の物性値を推定する材料の物性値推定方法であって、
材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、
補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、
各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、
前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、
前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、
補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、
前記学習用データを用いて回帰モデルを学習する学習ステップと、
前記学習ステップで学習した前記回帰モデルに基づいて、推定対象の材料の物性値を算出する算出ステップと、
を有する材料の物性値推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、材料の物性値を推定するための学習用データを生成させる学習用データ生成プログラムであって、
材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、
補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、
各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、
前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、
前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、
補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、
を前記コンピュータに実行させる学習用データ生成プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、材料の物性値を推定させる材料の物性値推定プログラムであって、
材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、
補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、
各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、
前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、
前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、
補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、
前記学習用データを用いて回帰モデルを学習する学習ステップと、
前記学習ステップで学習した前記回帰モデルに基づいて、推定対象の材料の物性値を算出する算出ステップと、
を前記コンピュータに実行させる材料の物性値推定プログラム。
【請求項9】
材料の物性値を推定するための学習用データを生成する学習用データ生成装置であって、
材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化する抽出部と、
補正対象の物性値を補正する物性値補正部と、
補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する学習用データ生成部と、
を備え、
前記物性値補正部は、
補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択し、
各グループにおいて、選択した物性値の統計量を算出し、
前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成し、
前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する、
学習用データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多岐にわたる原料あるいは製造条件の組み合わせから、所望の物性を有する組み合わせを推定する技術として、ポリマー組成物の製造条件情報から、ポリマー組成物の物性情報を推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、製造条件情報をもとに生成される学習済みモデルを用いて、物性情報を推測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-163783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、学習済みモデルを生成するための物性値において測定のばらつきが大きいと、実験で得られる測定平均値と、本来得るべき真の測定平均値とが乖離し、学習済みモデルによる物性値の推定精度が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、物性値を推定する際の精度低下を抑制することができる学習用データ生成方法、材料の物性値推定方法、学習用データ生成プログラム、材料の物性値推定プログラムおよび学習用データ生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る学習用データ生成方法は、コンピュータが、材料の物性値を推定するための学習用データを生成する学習用データ生成方法であって、材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、を含む。
【0007】
本発明に係る学習用データ生成方法は、上記発明において、前記選択ステップは、前記基準用物性値とする物性値を複数選択する。
【0008】
本発明に係る学習用データ生成方法は、上記発明において、前記選択ステップは、前記基準用物性値とする物性値を基準物性値候補として複数選択し、前記補正モデル生成ステップは、複数の基準物性値候補の統計量、または、複数の基準物性値候補および補正対象の物性値の統計量を用いてそれぞれ生成された補正モデルに対し精度評価を行って、各補正モデルから補正モデルを選択する。
【0009】
本発明に係る学習用データ生成方法は、上記発明において、前記統計量算出ステップの前に実行され、適正範囲から外れている物性値を外れ値として前記データセットから除外する除外ステップ、をさらに含む。
【0010】
本発明に係る学習用データ生成方法は、上記発明において、前記補正モデル生成ステップは、関数フィッティングまたは機械学習を用いて補正モデルを生成する。
【0011】
本発明に係る材料の物性値推定方法は、コンピュータが材料の物性値を推定する材料の物性値推定方法であって、材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、前記学習用データを用いて回帰モデルを学習する学習ステップと、前記学習ステップで学習した前記回帰モデルに基づいて、推定対象の材料の物性値を算出する算出ステップと、を有する。
【0012】
本発明に係る学習用データ生成プログラムは、コンピュータに、材料の物性値を推定するための学習用データを生成させる学習用データ生成プログラムであって、材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【0013】
本発明に係る材料の物性値推定プログラムは、コンピュータに、材料の物性値を推定させる材料の物性値推定プログラムであって、材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化するグループ化ステップと、補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択ステップと、各グループにおいて、前記選択ステップで選択した物性値の統計量を算出する統計量算出ステップと、前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成する補正モデル生成ステップと、前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する補正ステップと、補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する生成ステップと、前記学習用データを用いて回帰モデルを学習する学習ステップと、前記学習ステップで学習した前記回帰モデルに基づいて、推定対象の材料の物性値を算出する算出ステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【0014】
本発明に係る学習用データ生成装置は、材料の物性値を推定するための学習用データを生成する学習用データ生成装置であって、材料の製造条件、および複数種の物性値をそれぞれ含む複数のデータセットを記憶部から読み出し、該複数のデータセットを製造条件ごとにグループ化する抽出部と、補正対象の物性値を補正する物性値補正部と、補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する学習用データ生成部と、を備え、前記物性値補正部は、補正対象の物性値、および、補正の基準とする基準用物性値を選択する選択し、各グループにおいて、選択した物性値の統計量を算出し、前記基準用物性値の統計量を用いて、前記補正対象の物性値の統計量を補正するための補正モデルを生成し、前記補正モデルを用いて前記補正対象の物性値の統計量を補正する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、物性値を推定する際の精度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムが備える学習装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、データセットの内容を一覧表示した図である。
図4図4は、物性値のばらつきについて説明するための図である。
図5図5は、補正対象の物性値の補正処理について説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムが備える推定装置の構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムが行う推定処理の流れを説明するための図である。
図8図8は、推定装置が行う推定処理の概要を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態1に係る学習装置が行う学習用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態1の変形例に係る学習装置が行う学習用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、本発明の実施形態2に係る学習装置が行う学習用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る物性値推定システムの実施形態を、図面に基づいて、詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、本発明の個々の実施形態は、独立したものではなく、それぞれ組み合わせて適宜実施することができる。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムの概略構成を示す図である。これらの図に示す物性値推定システム1は、学習用データを作成し、該作成した学習用データを用いて学習した学習済みモデルを生成する学習装置2と、学習装置2が生成した学習済みモデルを用いて、推定対象の物性値を推定する推定装置3と、推定装置3の推定結果を含む情報を表示する表示装置4と、入力装置5とを備える。
【0019】
推定装置3が推定する物性値は、複数の原料、その配合比率や、製造時の温度等の設定条件を含む製造条件に基づいて推定される。推定装置3は、例えば、ポリマー組成物を製造する際に用いる原料や硬化剤(例えば硬化性樹脂組成物)や、その配合比率、硬化条件(温度、時間等)を組とする製造条件を、学習済みモデルに入力し、出力された値に基づいて物性値を推定する。この際、原料として、硬化反応や重合反応を起こさない添加剤などを含んでもよい。
以下、ポリマー組成物の物性値を推定する例について説明する。
【0020】
学習装置2は、推定装置3と電気的に接続されている。学習装置2は、学習用データを選択的に抽出して、抽出した学習用データを用いた学習によって学習済みモデルを生成して出力する。図2は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムが備える学習装置の構成を示すブロック図である。学習装置2は、抽出部21、物性値補正部22、学習用データ生成部23、学習部24、制御部25および記憶部26を有する。なお、本実施の形態1では、少なくとも抽出部21、物性値補正部22、学習用データ生成部23および記憶部26によって学習用データ生成装置が構成される。
【0021】
抽出部21は、記憶部26に記憶されているデータセットから、推定対象のポリマー組成物の製造条件を構成するデータセットを抽出し、抽出したデータセットを物性値補正部22または学習用データ生成部23に出力する。
【0022】
ここで、データセット、およびデータセットの抽出について説明する。データセットは、ポリマー組成物を構成する複数の原料、および該原料の配合比率や設定条件からなる製造条件と、複数の物性値とを有する水準を有する。なお、本実施の形態1では、データセットに対して、二種の物性値(物性値A、B)が対応付けられているものとして説明するが、三種以上の物性値が対応付けられているものであってもよい。
【0023】
抽出部21は、入力装置5を介して入力された推定対象のポリマー組成物について、データセットを読み出して抽出する。また、抽出部21は、抽出した複数のデータセットに対し、製造条件をもとにグループ化する。
【0024】
図3は、データセットの内容を一覧表示した図である。図3は、抽出部21が、入力されたポリマー組成物ついて読み出したデータセットの例を示す。抽出されたデータセット1~Nは、製造条件M1~M3、物性値A(X1~XN)および物性値B(Y1~YN)がそれぞれ対応付いたものである。ここで、製造条件M1~M3は、例えば原料の配合比率、温度や処理時間等のいずれかが互いに異なっている。
【0025】
その後、抽出部21は、製造条件(製造条件M1~M3)ごとに、データセットをグループ化する。図3に示す例では、データセット1、3、N-1、Nと、データセット2と、データセットN-2とに分けてグループ化される。なお、図示していないデータセット(例えばデータセット4~N-3)については、それぞれの製造条件に応じてグループ分けされる。
【0026】
物性値補正部22は、抽出部21が抽出したデータセットについて、物性値の補正を行う。物性値補正部22は、例えば、ばらつきの大きい物性値を、ばらつきの小さい物性値をもとに補正する。
【0027】
図4は、物性値のばらつきについて説明するための図である。図4の(a)は、製造条件のある項目(例えば温度)における物性値Aの分布を示す。図4の(b)は、製造条件のある項目(例えば温度)における物性値Bの分布を示す。なお、図4の(a)および(b)は、同一の製造条件における物性値を示している。また、各物性値を示すプロットは、その製造条件における測定データの平均値(または最頻値)を示している。さらに、そのプロット上に、その製造条件において得られるべき理想の物性値の範囲を示すエラーバーを重畳している。図4に示す例では、物性値Bのばらつき(例えばエラーバーの平均長さ等)が、物性値Aのばらつきよりも大きい。
【0028】
図4において、ばらつきが小さい物性値Aは、製造条件に対して得られるべき理想の物性値を推定する理想推定式LTAと、測定データから得られる実測推定式LNAとの差が小さい。これに対し、ばらつきが大きい物性値Bは、製造条件に対する物性値の理想推定式LTBと、測定データから得られる実測推定式LNBとの差が大きい。なお、推定式は、物性値の推定結果の説明のために表示しているものであって、実際の推定処理に用いるものではない。
物性値補正部22は、例えば、このばらつきが相対的に大きい物性値Bの測定値を補正する。
【0029】
物性値補正部22は、物性値A、または、物性値Aおよび物性値Bから補正モデルを求め、該補正モデルを用いて物性値Bを補正する。なお、本実施の形態では、物性値補正部22が、物性値Aおよび物性値Bから補正モデルを求める例について説明する。
図5は、補正対象の物性値の補正処理について説明するための図である。物性値補正部22は、物性値Aと物性値Bとを用いて近似式を作成し、これを補正モデルLCAとする。物性値補正部22は、物性値Bを、補正モデルLCAに近付くように補正する(図5の(a)参照)。これにより、各物性値Bが、理想推定式LTB側に近付き、実測推定式LNBを理想推定式LTBに近いものとすることができる。
なお、本実施の形態1では、物性値Aと物性値Bとをもとに近似によって補正モデルを作成する例について説明するが、その他の方法によって補正モデルを作成してもよい。例えば、近似以外の関数フィッティングや、機械学習によって補正モデルを作成してもよいし、理論式を参照して補正モデルを作成してもよい。
また、補正モデルへの移動量(補正量)は、例えば、予め設定した条件に応じて定められる。ここで設定される条件としては、例えば、「補正モデルと一致するように補正する」、「補正モデルと補正対象の物性値との差に対する所定の割合だけ補正する」、「差が閾値を超えるもののみ補正する」、「製造条件ごとに設定される補正量で補正する」などがある。なお、複数の条件を組み合わせたものとしてもよい。
【0030】
学習用データ生成部23は、抽出部21が抽出したデータセット、または物性値補正部22による補正後のデータセットを用いて、学習用データを生成する。
【0031】
学習部24は、学習用データ生成部23が生成した学習用データを用いて学習を行って学習済みモデルを生成する。学習済みモデルは、入力層、中間層および出力層からなり、各層が一または複数のノードを有するニューラルネットワークである。学習済みモデルは、学習を行うことによって生成されたものである。学習済みモデルにおけるネットワークパラメータ等の情報は、記憶部26に格納されている。ネットワークパラメータには、ニューラルネットワークの層間の重みやバイアスに関する情報が含まれる。
【0032】
学習部24が行う学習は、公知の学習方法を採用することができる。例えば、正則化を用いた学習によって学習済みモデルを生成する場合、回帰モデルのハイパーパラメータの候補値を複数与え、与えられたハイパーパラメータの候補値のそれぞれに対して学習を実行する。その後、各候補値によって学習して得たモデルに対し、学習用データを用いて、交差検証またはホールドアウト検証による予測誤差を算出し、最小の予測誤差を与える回帰モデルを選択する。選択された回帰モデルが、学習済みモデルとして出力される。なお、ここでいうハイパーパラメータは、例えばニューラルネットワークの層の数や、正則化の係数である。
【0033】
制御部25は、学習装置2の動作を統括して制御する。
【0034】
記憶部26は、学習装置2を動作させるための各種プログラム、および学習装置2の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習済みモデルを生成するための学習用データを生成する学習用データ生成プログラム、学習用データを用いて学習して学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成プログラムも含まれる。また、記憶部26は、学習用データとして用いる複数のデータセットを記憶するデータセット記憶部261を有する。本実施の形態1では、ポリマー組成物について、原料の配合比率や製造時の設定条件等を含む製造条件と、その物性値を対応付けたデータセットを記憶する。
【0035】
記憶部26は、各種プログラム等があらかじめインストールしたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いて構成される。
【0036】
各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0037】
以上の機能構成を有する学習装置2は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0038】
推定装置3は、学習装置2および表示装置4と電気的に接続されている。推定装置3は、推定対象のポリマー組成物の製造条件と、学習装置2から取得した学習済みモデルとを用いて、ポリマー組成物の推定物性値を含む推定結果を出力する。図6は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムが備える推定装置の構成を示すブロック図である。推定装置3は、算出部31、制御部32および記憶部33を有する。
【0039】
算出部31は、入力装置5から取得した、推定対象のポリマー組成物の製造条件と、学習装置2から取得した、学習済みモデルとを用いて推定される物性値を算出する。
【0040】
図7は、本発明の実施形態1に係る物性値推定システムが行う推定処理の流れを説明するための図である。算出部31は、複数の学習用データIPを用いて学習された学習済みモデル100を取得する。算出部31は、この学習済みモデル100を用いて、推定対象のポリマー組成物の製造条件における推定の物性値OPを出力する。
【0041】
制御部32は、推定装置3の動作を統括して制御する。制御部32は、算出部31の算出結果(推定結果)を表示装置4に表示させる表示制御部321を有する。表示制御部321は、推定結果に加えて、推定対象のポリマー組成物の製造条件(原料や、該原料の配合比率、設定条件等)の情報を表示装置4に表示させてもよい。
【0042】
記憶部33は、推定装置3を動作させるための各種プログラム、および推定装置3の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習済みモデルを用いて実行される物性値推定プログラムも含まれる。記憶部33は、各種プログラム等があらかじめインストールしたROM、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM、HDD、SSD等を用いて構成される。
【0043】
各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。また、推定装置3が、通信ネットワークを介して各種プログラム取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN、WAN等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0044】
以上の機能構成を有する推定装置3は、CPU、GPU、ASIC、FPGA等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0045】
表示装置4は、液晶や有機EL(Electro Luminescence)などからなるディスプレイであり、推定装置3と電気的に接続されている。表示装置4は、表示制御部321の制御のもとで推定装置3から出力される表示用データを取得して表示する。なお、表示装置4がスピーカ等の音声出力機能を有してもよい。
【0046】
入力装置5は、物性値を推定する処理に関する設定等の情報を含む各種情報の入力を受け付け、受け付けた情報を学習装置2および推定装置3に出力する。入力装置5は、キーボード、マウス、マイク、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて構成される。
【0047】
図8は、推定装置3が行う推定処理の概要を示すフローチャートである。図8に示す推定処理は、ポリマー組成物の製造条件を用いる場合について説明するものであるが、他の組成物の場合も同様である。
【0048】
まず、学習装置2は、入力装置5を介して推定条件を取得する(ステップS1)。ここで入力される推定条件とは、推定対象とするポリマー組成物の製造条件である。
【0049】
学習装置2は、入力装置5を介して入力された推定条件に基づいて学習用データを生成する(ステップS2)。
【0050】
図9は、本発明の実施形態1に係る学習装置が行う学習用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。抽出部21は、データセット記憶部261に記憶されている複数のデータセットから、推定対象のポリマー組成物と同様の物性測定値を持つデータセットを読み出す(ステップS11)。
【0051】
その後、抽出部21は、読み出した複数のデータセットから、ポリマー組成物の製造条件をもとにデータセットをグループ化する(ステップS12)。この際、抽出部21は、製造条件ごとに、データセットを分けることによってグループ化を実行する。
【0052】
グループ化後、物性値補正部22が、物性値の補正処理を実行する。
まず、物性値補正部22は、分散が小さい物性値を基準用の物性値として選択する(ステップS13)。
基準用として選択された物性値以外の物性値(ここでは、例えば物性値B)は、補正対象の物性値となる。
【0053】
その後、物性値補正部22は、統計量を算出する(ステップS14)。物性値補正部22は、グループごとの各物性値(例えば物性値A、B)の平均値を、統計量としてそれぞれ算出する。なお、統計量は、平均値のほか、最頻値や中央値を算出するようにしてもよい。
【0054】
物性値補正部22は、基準用の物性値の統計量と、補正対象の物性値の統計量とを用いて、補正モデルを生成する(ステップS15)。物性値補正部22は、近似等によって、補正モデル(例えば、補正モデルLCA)を生成する。これにより、基準用の物性値に基づく補正モデルが生成される。
【0055】
その後、物性値補正部22は、補正モデルを用いて、補正対象の物性値を補正する(ステップS16)。物性値補正部22は、各物性値が補正モデルに近付くように、当該物性値を補正する。
【0056】
学習用データ生成部23は、物性値補正部22による補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する(ステップS17)。学習用データ生成部23は、これらのデータセットに基づいて、製造条件を特徴量、物性値を目的変数とする学習用データを生成する。なお、学習用データは、各物性値の分散がそれぞれ小さく、補正を必要とする物性値がない場合等、補正処理が施されていない、抽出部21が抽出したデータセットを含んでいてもよい。
【0057】
図8に戻り、学習部24は、ステップS17において生成された学習用データを用いた学習によって学習済みモデルを生成する(ステップS3)。
【0058】
その後、推定装置3において、推定対象のポリマー組成物の製造条件における物性値を推定する。算出部31は、学習装置2が生成した学習済みモデルを用いて、推定対象のポリマー組成物の製造条件の物性値を算出する(ステップS4)。
【0059】
続いて、表示制御部321は、算出部31による推定結果を表示装置4に出力し、該表示装置4に推定結果を表示させる表示制御を行う(ステップS5)。この際、表示装置4は、推定結果とともに、推定対象のポリマー組成物の原料やその配合比率等を表示する。
【0060】
以上説明した実施の形態1では、分散が相対的に小さい物性値を基準とし、補正対象の物性値と該基準物性値とをもとに生成される補正モデルを用いて、他の物性値を補正し、基準物性値、および補正後の物性値を目的変数とする学習用データを作成するようにした。本実施の形態1によれば、理論推定式に近付く補正物性値を学習用データとして学習済みモデルが生成されるため、物性値を推定する際の精度低下を抑制することができる。
【0061】
(実施の形態1の変形例)
次に、本発明の実施の形態1の変形例について説明する。本変形例に係る推定システムは、実施の形態1に係る物性値推定システム1の構成要素と同様であるため、説明は省略する。以下、実施の形態1とは異なる処理について説明する。
【0062】
図10は、本発明の実施形態1の変形例に係る学習装置が行う学習用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。抽出部21は、図9に示すステップS11、12と同様に、データセット記憶部261に記憶されている複数のデータセットから推定対象のポリマー組成物と同様の物性測定値を持つデータセットを読み出し、読み出した複数のデータセットから、ポリマー組成物の製造条件をもとにデータセットをグループ化する。
【0063】
本変形例では、グループ化後、抽出部21が、グループごとに各物性の外れ値をデータセットから除外する(ステップS18)。抽出部21は、例えば、物性として適切な範囲(適正範囲)から外れている値をデータセットから除外する。除外される値の例としては、測定者や測定機器に起因する測定誤差、異常値等の信頼性が低い値が挙げられる。測定誤差は、例えば、樹脂物性では、クラックが生じた試験片で曲げ試験を測定した測定値や、試験片が破壊される直前に試験を終了した時点で測定された測定値が挙げられ、膜物性では、破れや穴が発生した試験片を測定した測定値が挙げられる。また、外れ値は、標準偏差(3σ)またはパーセンタイルを用いた統計処理や、Isolation Forest、Local Outlier Factor、One-Class SVMなど機械学習処理によって判定することができる。ドメイン知識を有する者が外れ値か否かを判定するようにしてもよい。
【0064】
外れ値を除外した後は、実施の形態1と同様にして、物性値補正部22が、物性値の補正処理を実行し(ステップS13~S16)、学習用データ生成部23が、物性値補正部22による補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する(ステップS17)。
【0065】
以上説明した変形例では、実施の形態1と同様に、分散が相対的に小さい物性値を基準とし、補正対象の物性値と該基準物性値とをもとに生成される補正モデルを用いて、他の物性値を補正し、基準物性値、および補正後の物性値を目的変数とする学習用データを作成するようにした。本変形例によれば、理論推定式に近付く補正物性値を学習用データとして学習済みモデルが生成されるため、物性値を推定する際の精度低下を抑制することができる。
【0066】
また、変形例によれば、物性の外れ値をデータセットから除外するようにしたので、実施の形態1と比して物性値の推定精度を向上させることができる。
【0067】
なお、変形例では、グループ化後に外れ値の除外処理を行う例について説明したが、当該外れ値の除外処理は、統計量の算出(ステップS14)の前までに実行されればよい。
【0068】
また、変形例では、補正対象および基準用のデータセットに対してそれぞれ外れ値を除外する例について説明したが、補正対象および基準用とするデータセットの一方を外れ値の除外処理対象としてもよい。
【0069】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2に係る推定システムは、実施の形態1に係る物性値推定システム1の構成要素と同様であるため、説明は省略する。以下、実施の形態1とは異なる処理について説明する。なお、本実施の形態2では、データセットに対応付けられている物性値の種類が3つ以上であるものとして説明する。
【0070】
図11は、本発明の実施形態2に係る学習装置が行う学習用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。抽出部21は、図9に示すステップS11、12と同様に、データセット記憶部261に記憶されている複数のデータセットから推定対象のポリマー組成物と同様の物性測定値を持つデータセットを読み出し(ステップS21)、読み出した複数のデータセットから、ポリマー組成物の製造条件をもとにデータセットをグループ化する(ステップS22)。
【0071】
グループ化後、物性値補正部22が、物性値の補正処理を実行する。
まず、物性値補正部22は、補正対象の物性値を選択する(ステップS23)。この際、補正対象として選択された物性値以外の物性値は、基準物性候補の物性値となる。基準候補となる各種物性値には、基準物性候補としての番号M(M=1~MMAX)が付与される。
【0072】
その後、物性値補正部22は、M=1に設定する(ステップS24)。そして、物性値補正部22は、補正対象の物性値、およびM番目の基準物性候補の物性値を統計量算出対象物性値として選択する(ステップS25)。
【0073】
物性値補正部22は、製造条件のグループごとに統計量算出対象物性値の平均値および分散をそれぞれ算出する(ステップS26)。
【0074】
その後、物性値補正部22は、グループ内分散間の平均値を算出する(ステップS27)。この平均値を、統計量算出対象物性値の分散とする。
【0075】
物性値補正部22は、統計量算出対象物性値の分散算出後、Mを1つ増やす(ステップS28)。物性値補正部22は、M>MMAXであるか否かを判断する(ステップS29)。物性値補正部22は、M≦MMAXであると判断した場合(ステップS29:No)、ステップS25に戻り、上述した処理を繰り返す。これに対し、物性値補正部22は、M>MMAXであると判断した場合(ステップS29:Yes)、ステップS30に移行する。
【0076】
ステップS30において、物性値補正部22は、使用する基準物性値の数だけ、該統計量算出対象物性値の分散の小さい方から基準物性候補を選択する。基準物性値の数は、例えば、予め使用者によって設定してもよい。
【0077】
そして、物性値補正部22は、ステップS30で選択した基準物性候補の物性値とステップS23で選択した補正対象の物性値の統計量(ここでは一例として平均値)とを用いて、基準物性候補ごとに補正モデルを生成する(ステップS31)。物性値補正部22は、実施の形態1と同様に、近似等によって、補正モデルをそれぞれ生成する。
【0078】
物性値補正部22は、各補正モデルの精度評価を行って補正モデルの選択を行う(ステップS32)。物性値補正部22は、公知の手法を用いて精度評価を行う。この際、物性値補正部22は、各補正モデルに対し交差検証を行い、例えば二乗平均平方根誤差(Root Mean Squared Error:RMSE)が最小となる最適な補正モデルを選択する。
なお、ステップS30において、基準物性候補の選択数を1とし、ステップS32を省略してもよい。
【0079】
その後、物性値補正部22は、補正モデルを用いて、補正対象の物性値を補正する(ステップS33)。物性値補正部22は、各物性値が補正モデルに近付くように、当該物性値を補正する。
【0080】
学習用データ生成部23は、物性値補正部22による補正後のデータセットを用いて学習用データを生成する(ステップS34)。学習用データ生成部23は、抽出されたデータセットに基づいて、製造条件を特徴量、物性値を目的変数とする学習用データを生成する。
【0081】
その後は、図8にしたがって学習済みモデルを生成し(ステップS3)、推定装置3において、推定対象のポリマー組成物の製造条件における物性値を推定処理が実行される。続いて、表示制御部321は、算出部31による推定結果を表示装置4に出力し、該表示装置4に推定結果を表示させる表示制御を行う(ステップS5)。
【0082】
以上説明した実施の形態2では、分散が相対的に小さい物性値を基準とし、該基準物性値と該補正対象の物性値とをもとに生成される補正モデルを用いて、他の物性値を補正し、基準物性値、および補正後の物性値を目的変数とする学習用データを作成するようにした。本実施の形態2によれば、理論推定式に近付く補正物性値を学習用データとして学習済みモデルが生成されるため、物性値を推定する際の精度低下を抑制することができる。
【0083】
また、実施の形態2では、補正対象以外の物性値を基準物性候補として、ばらつきが小さい最適な基準物性の数で補正モデルを生成するようにしたので、一層補正精度が高い補正モデルを得ることができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、推定装置が学習部の機能を備えてもよい。この場合、推定装置は、推定対象の目的変数を算出することに加え、学習用データを生成し、学習済みモデルを逐次更新する。
【0085】
また、機械学習は上述した深層学習に限られるわけではなく、例えばサポートベクターマシン、決定木、ランダムフォレスト、または勾配ブースティング木などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 物性値推定システム
2 学習装置
3 推定装置
4 表示装置
5 入力装置
21 抽出部
22 物性値補正部
23 学習用データ生成部
24 学習部
25、32 制御部
26、33 記憶部
31 算出部
261 データセット記憶部
321 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11