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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048357
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240401BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240401BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240401BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 401
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138291
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022153357
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】西川 遼祐
(72)【発明者】
【氏名】樋口 武士
【テーマコード(参考)】
2C056
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB03
2C056EB07
2C056EB13
2C056EB20
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB34
2C056FA13
2C056FB01
2C056FB08
2C056HA07
2C056JC17
2C056KB16
2C056KB40
2C056KC02
2C056KD10
4F041AA03
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA23
4F041BA59
4F041BA60
4F042AA11
4F042AB00
4F042BA11
4F042CC03
4F042CC08
(57)【要約】
【課題】インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側が開放空間となっているインクジェット印刷装置において、インクミストを効率よく回収可能とする。
【解決手段】ミスト回収部7は、印刷媒体9が通過する側に空気を吹き出す送風口63a、および印刷媒体9が通過する側から空気を吸引する吸引口64aを有する。インクジェットヘッド26の印刷媒体9が通過する側の空間が、インクジェットヘッド26から所定距離以内には、通過する印刷媒体9以外は何も配置されていない開放空間になっている。制御部は、搬送される印刷媒体9とインクジェットヘッド26とが対向している状況において、送風口63aから空気を吹き出しつつ吸引口64aによりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うようミスト回収部7を制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
印刷媒体が通過する側に空気を吹き出す送風口、および印刷媒体が通過する側から空気を吸引する吸引口を有するミスト回収部と、
前記ミスト回収部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側の空間が、前記インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっており、
前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況において、前記送風口から空気を吹き出しつつ前記吸引口によりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドを複数備え、
前記ミスト回収部は、それぞれの前記インクジェットヘッドに対応して設けられた複数の前記送風口および複数の前記吸引口を有し、
前記制御部は、それぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量に基づき、前記インクジェットヘッドごとに前記ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
印刷媒体の搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において、印刷媒体が通過する側から空気を吸引する吸引口を有するミスト回収部と、
前記ミスト回収部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側の空間が、前記インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっており、
前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況において、前記吸引口によりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドを複数備え、
前記ミスト回収部は、それぞれの前記インクジェットヘッドに対応して設けられた複数の前記吸引口を有し、
前記制御部は、それぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量に基づき、前記インクジェットヘッドごとに前記ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況における前記インクジェットヘッドがインクを吐出しない期間において、前記ミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出面が非水平面となるように配置されており、
前記吸引口は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において空気を吸引する部分と、前記インクジェットヘッドの下側において空気を吸引する部分とを有することを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記ミスト回収部は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側において、印刷媒体が通過する側から空気を吹き出す送風口をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドを複数備え、
前記ミスト回収部は、それぞれの前記インクジェットヘッドに対応して設けられた複数の前記送風口および複数の前記吸引口を有し、
前記制御部は、それぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量に基づき、前記インクジェットヘッドごとに前記ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、印刷媒体の搬送速度、および印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況における印刷媒体と前記インクジェットヘッドとの間の距離の少なくともいずれか一方に基づき、前記ミスト回収動作における前記送風口のミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出面が非水平面となるように配置されており、
前記吸引口は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において空気を吸引する部分と、前記インクジェットヘッドの下側において空気を吸引する部分とを有し、
前記送風口は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側において空気を吹き出す部分と、前記インクジェットヘッドの上側において空気を吹き出す部分とを有することを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項11】
複数の前記インクジェットヘッドのうちの少なくとも一部の複数の前記インクジェットヘッドは、共通のインクタンクに接続され、前記インクタンクとの水頭差がそれぞれ異なるように配置されており、
前記制御部は、共通の前記インクタンクに接続されたそれぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量の算出に、前記インクタンクとの水頭差を用いることを特徴とする請求項2,4,8のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置では、インクの吐出により、霧状の微小なインク滴であるインクミストが発生する。インクミストは、インクジェットヘッドのノズル面に付着してインクの吐出不良を招いたり、印刷物や装置内部に付着してそれらを汚したりすることがある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、インクミストの回収を行うインクジェット印刷装置が開示されている。このインクジェット印刷装置は、搬送ベルトにより搬送される印刷媒体の搬送方向におけるインクジェットヘッドの上流側に配置された送風口と、インクジェットヘッドの下流側に配置された回収口とを備える。そして、印刷媒体側に向けて送風口から空気を吹き出し、回収口が印刷媒体側からインクミストを空気とともに吸引する。
【0004】
このインクジェット印刷装置では、搬送方向における送風口と回収口との間において、ノズル面と搬送ベルトとの間の空間が、インクミストを含む空気の流路となる。これにより、インクミストを効率よく回収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-138329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェット印刷装置のなかには、インクを水平方向に吐出可能なように、ノズル面を鉛直面としてインクジェットヘッドを配置し、段ボール箱のような立体物である印刷媒体の、水平方向に対して直交する面に印刷可能なものがある。
【0007】
この種のインクジェット印刷装置では、印刷媒体を搬送する搬送機構は、インクジェットヘッドのノズル面に対向して配置されてはいない。このため、インクジェットヘッドのノズル面側(印刷媒体が通過する側)は、近傍に何も配置されていない開放空間となっている。
【0008】
したがって、この種のインクジェット印刷装置では、特許文献1のインクジェット印刷装置のようにノズル面と搬送機構(搬送ベルト)との間でインクミストを回収するための流路を形成して効率よくインクミストを回収することはできない。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側が開放空間となっているインクジェット印刷装置において、インクミストを効率よく回収可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、印刷媒体が通過する側に空気を吹き出す送風口、および印刷媒体が通過する側から空気を吸引する吸引口を有するミスト回収部と、前記ミスト回収部を制御する制御部とを備え、前記インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側の空間が、前記インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっており、前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況において、前記送風口から空気を吹き出しつつ前記吸引口によりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、印刷媒体の搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において、印刷媒体が通過する側から空気を吸引する吸引口を有するミスト回収部と、前記ミスト回収部を制御する制御部とを備え、前記インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側の空間が、前記インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっており、前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況において、前記吸引口によりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側が開放空間となっているインクジェット印刷装置において、インクミストを効率よく回収可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の要部の概略構成を示す斜視図である。
図3図1に示すインクジェット印刷装置の要部の概略構成を示す正面図である。
図4図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドユニットおよびインクタワーの概略構成図である。
図5図1に示すインクジェット印刷装置のインクタワーの概略構成図である。
図6図1に示すインクジェット印刷装置のインク補給部の概略構成図である。
図7図1に示すインクジェット印刷装置のミスト回収部の部分拡大図である。
図8図1に示すインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズル面側から見たミスト回収部の要部を示す図である。
図9図1に示すインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図10】ミスト回収動作が行われる期間を説明するための図である。
図11】第3実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図12図11に示すインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズル面側から見たミスト回収部の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の要部の概略構成を示す斜視図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置の要部の概略構成を示す正面図である。図4は、図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドユニットおよびインクタワーの概略構成図である。図5は、図1に示すインクジェット印刷装置のインクタワーの概略構成図である。図6は、図1に示すインクジェット印刷装置のインク補給部の概略構成図である。図7は、図1に示すインクジェット印刷装置のミスト回収部の部分拡大図である。図8は、図1に示すインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズル面側から見たミスト回収部の要部を示す図である。
【0017】
以下の説明において、図2の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。上下方向は鉛直方向であり、左右方向および前後方向は、互いに直交し、かつ、いずれも上下方向に直交し、水平方向に平行な方向である。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、印刷部3と、媒体センサ4と、インクタワー5A~5Cと、インク補給部6A~6Dと、ミスト回収部7と、制御部8とを備える。なお、以下の説明において、インクタワー5A~5C等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0019】
搬送部2は、印刷媒体9を搬送する。印刷媒体9は、印刷部3による印刷が行われる被印刷面9aを有する。被印刷面9aは、印刷媒体9が搬送部2上に載置されて搬送される状態において、水平方向に直交する面(鉛直面)である。印刷媒体9は、例えば、段ボール箱である。
【0020】
図1図3に示すように、搬送部2は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13と、搬送モータ14と、エンコーダ15とを備える。
【0021】
搬送ベルト11は、駆動ローラ12と従動ローラ13とに掛け渡された環状のベルトである。搬送ベルト11は、図3における反時計回り方向に循環して駆動されることで、搬送面11a上に載置された印刷媒体9を、後側から前側へ向かう搬送方向に搬送する。搬送面11aは、駆動ローラ12と従動ローラ13との間で水平な搬送ベルト11の上面である。
【0022】
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を図3における反時計回り方向に回転させる。
【0023】
従動ローラ13は、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を支持する。従動ローラ13は、水平方向に駆動ローラ12から離間して配置されている。従動ローラ13は、回転する搬送ベルト11に従動回転する。
【0024】
搬送モータ14は、駆動ローラ12を回転駆動させる。
【0025】
エンコーダ15は、従動ローラ13の回転角度に応じてパルス信号を出力する。
【0026】
印刷部3は、印刷媒体9の被印刷面9aに印刷を行う。印刷部3は、ヘッドユニット21A,21Bと、ヘッドホルダ22とを備える。
【0027】
ヘッドユニット21A,21Bは、印刷媒体9の被印刷面9aにインクを吐出して印刷を行う。ヘッドユニット21A,21Bは、それぞれ2色のインクを吐出する。例えば、ヘッドユニット21Aがブラックおよびシアンのインクを吐出し、ヘッドユニット21Bがマゼンタおよびイエローのインクを吐出する。ヘッドユニット21A,21Bは、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0028】
図3に示すように、ヘッドユニット21は、複数のインクジェットヘッド26を備える。本実施形態では、ヘッドユニット21は、6個のインクジェットヘッド26を備える。ヘッドユニット21において、インクジェットヘッド26は、上下方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、ヘッドユニット21において、上下方向に沿って配列された6個のインクジェットヘッド26が、前後方向における位置を交互にずらして配置されている。
【0029】
インクジェットヘッド26は、2色のインクを吐出する。インクジェットヘッド26は、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が直線状に所定のピッチで上下方向に沿ってそれぞれ配列された2列のノズル列を有する。2列のノズル列は、互いに異なる色のインクを吐出する。インクジェットヘッド26は、2列のノズル列の各ノズルが開口するノズル面(吐出面に相当)26a(図7等参照)を有する。ノズル面26aは、インクジェットヘッド26の左側の面であり、鉛直面である。インクジェットヘッド26は、ノズル面26aに開口したノズルから水平方向にインクを吐出する。
【0030】
また、インクジェットヘッド26は、当該インクジェットヘッド26が吐出する2色のインクのうちの一方のインクの温度および他方のインクの温度をそれぞれ検出するインク温度センサ27A,27Bを有する。
【0031】
インクジェットヘッド26は、1つのノズルから1つの画素に対して複数のインク滴を吐出可能なマルチドロップ方式のものであり、インク滴の数であるドロップ数により濃度を表現する階調印刷を行う。
【0032】
印刷時には、搬送部2により搬送される印刷媒体9がインクジェットヘッド26の左側を通過する。インクジェットヘッド26は、印刷媒体9にノズルからインクを左方向に吐出することで、被印刷面9aに画像を印刷する。
【0033】
搬送部2の搬送面11aは、複数のインクジェットヘッド26のノズル面26aに対向しておらず、インクジェットヘッド26のノズル面26a側(印刷媒体9が通過する側)である左側の空間は、インクジェットヘッド26から所定距離以内には、通過する印刷媒体9以外は何も配置されていない開放空間になっている。
【0034】
ここで、上述の所定距離は、ノズル面26aに対向して配置された部材がある場合において、後述するミスト回収部7の駆動により、ノズル面26aと上述の部材との間にインクミストを回収するための空気の流路を十分に形成可能な最小の距離である。
【0035】
すなわち、インクジェットヘッド26の左側の空間が、インクジェットヘッド26から所定距離以内には何も配置されていない開放空間であることは、印刷媒体9が通過していない状況では、ミスト回収部7を駆動させても、ノズル面26aに沿ってインクミストを回収するための空気の流路を十分に形成できないことを意味する。
【0036】
ヘッドホルダ22は、各ヘッドユニット21の各インクジェットヘッド26を保持する。また、ヘッドホルダ22は、各インクジェットヘッド26に対応して設けられた後述するミスト回収部7の送風経路63および吸引経路64を保持している。なお、図2図5においては、ミスト回収部7の図示を省略している。
【0037】
媒体センサ4は、搬送部2により搬送される印刷媒体9を検出する。媒体センサ4は、印刷媒体9の搬送方向における上流側(後側)のヘッドユニット21Aの上流側近傍に配置されている。媒体センサ4としては、例えば、反射型の光センサを用いることができる。
【0038】
インクタワー5A~5Cは、ヘッドユニット21A,21Bにインクを供給する。インクタワー5Aは、ヘッドユニット21A,21Bのそれぞれにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。インクタワー5Bは、ヘッドユニット21A,21Bのそれぞれにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。インクタワー5Cは、ヘッドユニット21A,21Bのそれぞれにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。
【0039】
なお、図4では、ヘッドユニット21A,21Bのうちの一方のヘッドユニット21のみを示し、他方のヘッドユニット21の図示を省略している。
【0040】
インクタワー5A~5Cは、それぞれがインクを供給するインクジェットヘッド26との高低差が、インクタワー5A~5Cのすべてにおいて等しくなるように配置されている。したがって、インクタワー5A~5Cは、それぞれ異なる高さ位置に配置されている。インクタワー5A~5Cのうち、インクタワー5Aが最も低い位置に配置され、インクタワー5Cが最も高い位置に配置されている。
【0041】
インクタワー5は、インク循環部31A~31Dと、圧力生成部32と、4本の加圧エア経路33(図5参照)と、4本の負圧エア経路34(図5参照)とを備える。
【0042】
インク循環部31A~31Dは、インクを循環しつつインクジェットヘッド26にインクを供給する。インク循環部31A~31Dは、それぞれ異なる色のインクを、当該インク循環部31が保持する色のインクを吐出するインクジェットヘッド26に供給する。
【0043】
インク循環部31A,31Bは、ヘッドユニット21Aにおける、互いに異なる高さ位置に配置された2つのインクジェットヘッド26に接続され、それら2つのインクジェットヘッド26にインクを供給する。インク循環部31C,31Dは、ヘッドユニット21Bにおける、互いに異なる高さ位置に配置された2つのインクジェットヘッド26に接続され、それら2つのインクジェットヘッド26にインクを供給する。
【0044】
具体的には、インクタワー5Aのインク循環部31A,31Bは、ヘッドユニット21Aにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。インクタワー5Aのインク循環部31C,31Dは、ヘッドユニット21Bにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。
【0045】
また、インクタワー5Bのインク循環部31A,31Bは、ヘッドユニット21Aにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。インクタワー5Bのインク循環部31C,31Dは、ヘッドユニット21Bにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。
【0046】
また、インクタワー5Cのインク循環部31A,31Bは、ヘッドユニット21Aにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。インクタワー5Cのインク循環部31C,31Dは、ヘッドユニット21Bにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド26にインクを供給する。
【0047】
図5に示すように、インク循環部31は、加圧タンク(インクタンクに相当)41と、加圧タンク液面センサ42と、負圧タンク(インクタンクに相当)43と、負圧タンク液面センサ44と、加圧側インク経路45と、負圧側インク経路46と、ポンプ送液経路47と、インクポンプ48とを備える。なお、図5には、インクタワー5のインク循環部31A~31Dのうちの、同じヘッドユニット21にインクを供給する2つ(2色分)のインク循環部31を示している。
【0048】
加圧タンク41は、インクジェットヘッド26に供給するインクを貯留する。加圧タンク41には、圧力生成部32により、インクジェットヘッド26にインクを送液するための正圧が付与される。加圧タンク41は、当該加圧タンク41を含むインク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド26のうち低い位置に配置されたインクジェットヘッド26よりも低い位置に配置されている。1つのインクタワー5のインク循環部31A~31Dの各加圧タンク41は、すべて同じ高さ位置に配置されている。
【0049】
加圧タンク液面センサ42は、加圧タンク41内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ42は、加圧タンク41内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0050】
負圧タンク43は、インクジェットヘッド26で消費されなかったインクを受け取って貯留する。また、負圧タンク43は、インク補給部6から供給されるインクを貯留する。負圧タンク43には、圧力生成部32により、インクジェットヘッド26からインクを回収するための負圧が付与される。負圧タンク43は、加圧タンク41と同形状のタンクで構成され、加圧タンク41と同じ高さ位置に配置されている。
【0051】
負圧タンク液面センサ44は、負圧タンク43内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク43における基準高さは、加圧タンク41における基準高さと同じである。負圧タンク液面センサ44は、負圧タンク43内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0052】
加圧側インク経路45は、加圧タンク41と2つのインクジェットヘッド26とを接続する。加圧側インク経路45には、加圧タンク41から2つのインクジェットヘッド26へ供給されるインクが流れる。
【0053】
負圧側インク経路46は、2つのインクジェットヘッド26と負圧タンク43とを接続する。負圧側インク経路46には、2つのインクジェットヘッド26で消費されずに負圧タンク43へ回収されるインクが流れる。
【0054】
ポンプ送液経路47は、インクポンプ48が負圧タンク43から加圧タンク41へ送液するインクが流れる経路である。インクの循環方向におけるポンプ送液経路47の上流端は負圧タンク43に接続され、下流端は加圧タンク41に接続されている。
【0055】
インクポンプ48は、負圧タンク43から加圧タンク41へインクを送液する。インクポンプ48は、ポンプ送液経路47の途中に設けられている。
【0056】
圧力生成部32は、インク循環部31の加圧タンク41および負圧タンク43にインク循環のための圧力を生成する。具体的には、圧力生成部32は、負圧エア経路34を介して負圧タンク43から空気を吸引するとともに、加圧エア経路33を介して加圧タンク41に空気を送ることで、加圧タンク41に正圧を付与し、負圧タンク43に負圧を付与する。圧力生成部32は、インク循環部31A~31Dに共通のものである。
【0057】
加圧エア経路33は、圧力生成部32と加圧タンク41のインクの液面上の空気層とを接続する。加圧エア経路33は、インク循環部31A~31Dのそれぞれに1本ずつ対応して設けられている。
【0058】
負圧エア経路34は、圧力生成部32と負圧タンク43のインクの液面上の空気層とを接続する。負圧エア経路34は、インク循環部31A~31Dのそれぞれに1本ずつ対応して設けられている。
【0059】
インク補給部6A~6Dは、それぞれインク循環部31A~31Dの負圧タンク43にインクを補給する。インクジェット印刷装置1では、インク色ごとに、インクタワー5A~5Cに共通のインク補給部6が設けられている。
【0060】
すなわち、インク補給部6Aは、インクタワー5A~5Cのインク循環部31Aにインクを補給する。インク補給部6Bは、インクタワー5A~5Cのインク循環部31Bにインクを補給する。インク補給部6Cは、インクタワー5A~5Cのインク循環部31Cにインクを補給する。インク補給部6Dは、インクタワー5A~5Cのインク循環部31Dにインクを補給する。
【0061】
図6に示すように、インク補給部6は、インクカートリッジ51と、インク補給経路52と、インク補給弁53A~53Cとを備える。
【0062】
インクカートリッジ51は、インクジェットヘッド26による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ51は、インクタワー5Cの負圧タンク43よりも高い位置に配置されている。インクカートリッジ51内のインクは、インク補給経路52を介してインク循環部31の負圧タンク43に供給される。
【0063】
インク補給経路52は、インクカートリッジ51と、当該インクカートリッジ51のインクの供給先である3つの負圧タンク43とを接続する。インク補給経路52には、インクカートリッジ51から負圧タンク43に向かってインクが流れる。インク補給経路52は、主経路56と、分岐経路57A~57Cとを備える。
【0064】
主経路56は、インクカートリッジ51から分岐経路57A~57Cへインクを流す経路である。主経路56の上流端はインクカートリッジ51に接続され、主経路56の下流端は分岐経路57Bの上流端および分岐経路57Cの上流端に接続されている。
【0065】
分岐経路57A~57Cは、主経路56から分岐し、それぞれインクタワー5A~5Cの負圧タンク43に接続された経路である。分岐経路57Aの上流端は主経路56の途中に接続され、分岐経路57Aの下流端はインクタワー5Aの負圧タンク43に接続されている。分岐経路57Bの上流端は主経路56の下流端に接続され、分岐経路57Bの下流端はインクタワー5Bの負圧タンク43に接続されている。分岐経路57Cの上流端は主経路56の下流端に接続され、分岐経路57Cの下流端はインクタワー5Cの負圧タンク43に接続されている。
【0066】
インク補給弁53A~53Cは、それぞれ分岐経路57A~57Cに配置され、分岐経路57A~57C内のインクの流路を開閉する。負圧タンク43へインクを供給する際、インク補給弁53が開かれる。
【0067】
ミスト回収部7は、インクジェットヘッド26からのインクの吐出により発生するインクミストを回収する。
【0068】
図1図7図8に示すように、ミスト回収部7は、送風ファン61と、吸引ファン62と、複数の送風経路63と、複数の吸引経路64と、複数の送風口シャッタ65と、複数の吸引口シャッタ66と、複数のフィルタ67とを備える。ここで、送風経路63、吸引経路64、送風口シャッタ65、吸引口シャッタ66、およびフィルタ67は、それぞれインクジェットヘッド26ごとに設けられており、それぞれインクジェットヘッド26と同数設けられている。
【0069】
送風ファン61は、各送風経路63へ送風し、後述する各送風口63aから空気を吹き出させる。送風ファン61は、共通送風経路(図示せず)を介して各送風経路63と接続され、各送風経路63に送風可能となっている。
【0070】
吸引ファン62は、後述する各吸引経路64の各吸引口64aを介して空気を吸引する。吸引ファン62は、共通吸引経路(図示せず)を介して各吸引経路64と接続され、各吸引口64aを介して空気を吸引可能となっている。
【0071】
送風経路63は、インクミストの回収のために印刷媒体9が通過する側(左側)へ吹き出す空気の流路を形成する。送風経路63は、インクジェットヘッド26の上流側(後側)に配置されている。送風経路63の左端は、印刷媒体9が通過する側(左側)に開口し、空気を吹き出す送風口63aになっている。
【0072】
吸引経路64は、インクミストの回収のために印刷媒体9が通過する側(左側)から吸引する空気の流路を形成する。吸引経路64は、インクジェットヘッド26の下流側(前側)に配置されている。吸引経路64の左端は、印刷媒体9が通過する側(左側)に開口し、空気を吸引する吸引口64aになっている。
【0073】
送風口シャッタ65は、送風口63aを開閉する。送風口シャッタ65は、送風口63aの開口率を調整可能である。
【0074】
吸引口シャッタ66は、吸引口64aを開閉する。吸引口シャッタ66は、吸引口64aの開口率を調整可能である。
【0075】
フィルタ67は、インクミストを液化して保持する。フィルタ67は、吸引経路64内に配置されている。フィルタ67は、例えば、スポンジからなる。
【0076】
制御部8は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部8は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0077】
具体的には、制御部8は、搬送部2により搬送される印刷媒体9にインクジェットヘッド26からインクを吐出して印刷するよう制御する。また、制御部8は、各インクジェットヘッド26について、当該インクジェットヘッド26が印刷媒体9と対向している状況におけるインクを吐出しない期間において、当該インクジェットヘッド26に対応する送風口63aから空気を吹き出しつつ吸引口64aによりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うようミスト回収部7を制御する。
【0078】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0079】
図9は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図9のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1が印刷ジョブを受信したことにより開始となる。
【0080】
図9のステップS1において、制御部8は、各インクジェットヘッド26のインクミスト発生量を算出する。インクミスト発生量は、印刷時におけるインクの吐出により発生すると推定されるインクミストの量である。
【0081】
ここで、印字率が高いほど、インクジェットヘッド26からのインクの吐出回数が多くなるため、インクミストの発生度合いが大きくなる。
【0082】
また、インクジェットヘッド26が接続された加圧タンク41および負圧タンク43との水頭差(高低差)が大きいほど、負圧であるノズル圧が大きい(ノズル圧の絶対値が大きい)ため、当該インクジェットヘッド26におけるインクミストの発生度合いが大きくなる。
【0083】
ヘッドユニット21では、同じインクタワー5に接続されている2つのインクジェットヘッド26は、それらに共通して接続されている加圧タンク41および負圧タンク43との水頭差(高低差)が互いに異なる。このため、ヘッドユニット21において同じインクタワー5に接続されている2つのインクジェットヘッド26のうち、高い位置にあるインクジェットヘッド26の方が、低い位置にあるインクジェットヘッド26よりも、インクミストの発生度合いが大きい。
【0084】
例えば、ヘッドユニット21Aにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド26は、いずれもインクタワー5Aのインク循環部31A,31Bの加圧タンク41および負圧タンク43に接続されている。このため、下から2つ目のインクジェットヘッド26の方が、下から1つ目のインクジェットヘッド26よりも、インクミストの発生度合いが大きい。
【0085】
また、インクの温度が低いほど、インクの粘度が高くなる。インクの粘度が高いほど、インクジェットヘッド26のノズルから吐出されて飛翔するインクの尾が長くなり、切れやすくなる。このため、インク温度が低いほど、インクミストの発生度合いが大きくなる。
【0086】
そこで、制御部8は、各インクジェットヘッド26における印字率、加圧タンク41および負圧タンク43との水頭差(高低差)、およびインクの温度に基づき、各インクジェットヘッド26のインクミスト発生量を算出する。
【0087】
具体的には、制御部8は、印刷ジョブを画像展開して画像データを生成し、この画像データに基づき、インクジェットヘッド26による印刷に対応する形式の印刷データを生成する。次いで、制御部8は、印刷データに基づき、印刷媒体9ごとに各インクジェットヘッド26の2色のインクの印字率を算出する。
【0088】
また、制御部8は、インクタワー5A~5Cのインク循環部31A~31Dでのインク循環を開始させる。具体的には、制御部8は、インクタワー5A~5Cの圧力生成部32により、加圧タンク41および負圧タンク43にインク循環のためのそれぞれの設定圧を生成させる。これにより、インクタワー5A~5Cのインク循環部31A~31Dにおけるインク循環が開始され、加圧タンク41からインクジェットヘッド26を経由して負圧タンク43へインクが流れる。
【0089】
インク循環が開始されると、制御部8は、インク循環部31A~31Dにそれぞれ設けられた温度調整部(図示せず)を制御して、循環されるインクの温度が適正温度範囲内になるように調整する。ここで、循環されるインクの温度は、例えば、加圧側インク経路45に設けられたインク温度センサ(図示せず)により検出される。
【0090】
各インクタワー5の各インク循環部31において循環されるインクの温度が適正温度範囲内になると、制御部8は、各インクジェットヘッド26のインク温度センサ27A,27Bから、各インクジェットヘッド26における2色のインクの温度を取得する。
【0091】
そして、制御部8は、印刷媒体9ごとに、各インクジェットヘッド26の2色のインクの印字率、加圧タンク41および負圧タンク43との水頭差(高低差)、および2色のインクの温度に基づき、各インクジェットヘッド26のインクミスト発生量を算出する。
【0092】
次いで、ステップS2において、制御部8は、各インクジェットヘッド26のインクミスト発生量に基づき、ミスト回収動作における各インクジェットヘッド26に対するミスト回収度合いを決定する。具体的には、制御部8は、各インクジェットヘッド26のインクミスト発生量に基づき、各インクジェットヘッド26について、当該インクジェットヘッド26に対応する送風口63aおよび吸引口64aのそれぞれの開口率および開口時間を決定する。
【0093】
制御部8は、インクミスト発生量が大きいほど、ミスト回収度合いが強くなるよう送風口63aおよび吸引口64aのそれぞれの開口率および開口時間を決定する。開口時間が同じであれば開口率が大きいほど、また、開口率が同じであれば開口時間が長いほど、ミスト回収度合いが強くなる。
【0094】
ここで、ミスト回収動作において、送風口63aから吹き出す空気により、インクミストが拡散するおそれがある。このため、制御部8は、送風口63aについては、インクミスト発生量に基づき、インクミストの拡散を抑えつつ、インクミストを回収できるように、開口率および開口時間を決定する。
【0095】
次いで、ステップS3において、制御部8は、搬送部2により搬送される印刷媒体9に印刷部3により印刷を行い、ミスト回収部7によりミスト回収動作を行うよう制御する。
【0096】
具体的には、制御部8は、媒体センサ4が印刷媒体9の先端を検出してからのエンコーダ15の出力パルス数に基づき、各インクジェットヘッド26における印刷データに基づくインクの吐出を開始させる。そして、制御部8は、エンコーダ15の出力パルス信号に基づくタイミングで、印刷データに基づくインクの吐出を行うよう各インクジェットヘッド26を制御する。
【0097】
印刷動作中は、各インクタワー5の各インク循環部31において、加圧タンク41からインクジェットヘッド26へインクが供給され、インクジェットヘッド26で消費されなかったインクが負圧タンク43に回収される。加圧タンク液面センサ42がオフで負圧タンク液面センサ44がオンの状態になると、制御部8は、インクポンプ48を駆動させる。これにより、負圧タンク43から加圧タンク41へインクが送液される。加圧タンク液面センサ42がオンになると、制御部8は、インクポンプ48を停止させる。また、制御部8は、加圧タンク液面センサ42および負圧タンク液面センサ44がともにオフの状態になると、インク補給部6により負圧タンク43へインクを補給するよう制御する。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0098】
また、制御部8は、インクの吐出を行うインクジェットヘッド26ごとに、当該インクジェットヘッド26が印刷媒体9と対向している状況におけるインクを吐出しない期間において、ミスト回収動作を行うようミスト回収部7を制御する。ここで、制御部8は、インクの吐出を行う各インクジェットヘッド26における印刷媒体9と対向している状況でインクを吐出しない期間を、媒体センサ4が印刷媒体9の先端を検出してからのエンコーダ15の出力パルス数、および印刷データに基づき判断できる。
【0099】
ミスト回収動作として、制御部8は、インクの吐出を行うインクジェットヘッド26ごとに、ステップS2で決定した開口率および開口時間に基づき、当該インクジェットヘッド26に対応する送風口63aおよび吸引口64aをそれぞれ開閉するよう送風口シャッタ65および吸引口シャッタ66を駆動させる。
【0100】
印刷動作中において、各インクジェットヘッド26について、インク温度センサ27A,27Bが検出した2色のインクの温度の少なくともいずれかが変化した場合には、そのインクの温度の変化に応じて、送風口63aおよび吸引口64aの少なくともいずれかの開口率および開口時間の少なくともいずれかを調整するようにしてもよい。
【0101】
ここで、印刷開始時には、すべての送風口63aおよび吸引口64aは閉鎖されている。送風ファン61および吸引ファン62は、印刷開始後に最初にいずれかの送風口63aおよび吸引口64aが開かれる時点までには駆動開始されている。
【0102】
送風口63aおよび吸引口64aが開かれると、図7図8に示すように、送風口63aから吹き出す空気による気流Fa、吸引口64aが吸引する空気による気流Fb、および搬送気流により、送風口63aから吸引口64aへ向かう気流Fcが発生する。このとき、インクジェットヘッド26と印刷媒体9との間の空間71が、インクミストを回収するための空気の流路として形成されており、この流路を気流Fcが流れる。これにより、インクジェットヘッド26のノズル面26a近傍のインクミストを含む空気が吸引口64aに吸引されることで、インクミストが回収される。
【0103】
印刷データに基づく印刷、およびミスト回収動作が終了すると、一連の動作が終了となる。
【0104】
ここで、前述のように、ミスト回収動作は、インクの吐出を行うインクジェットヘッド26ごとに、当該インクジェットヘッド26が印刷媒体9と対向している状況におけるインクを吐出しない期間に行われる。
【0105】
例えば、図10に示すような印刷領域P1,P2に印刷する印刷データの場合において、印刷領域P1,P2に印刷を行う各インクジェットヘッド26に対するミスト回収動作が、それぞれ搬送方向の領域A1,A2が当該インクジェットヘッド26に対向している期間に行われる。ここで、領域A1,A2は、それぞれ印刷領域P1,P2の後端(上流端)と印刷媒体9の後端(上流端)との間の領域である。また、印刷領域P1に印刷を行う各インクジェットヘッド26は、いずれも印刷領域P1の後端までインクの吐出を行うものとする。印刷領域P2に印刷を行う各インクジェットヘッドについても同様とする。
【0106】
前述のように、インクの吐出を行うインクジェットヘッド26に対応する送風口63aおよび吸引口64aのそれぞれの開口率および開口時間は、当該インクジェットヘッド26のインクミスト発生量に基づき決定される。この際、当該インクジェットヘッド26に印刷媒体9の後端が到来するまでにミスト回収動作を終了するように、送風口63aおよび吸引口64aのそれぞれの開口率および開口時間が決定される。ただし、インクジェットヘッド26でインクの吐出が終了した時点から、当該インクジェットヘッド26に印刷媒体9の後端が到来するまでの期間が短い場合等において、当該期間を超えて送風口63aおよび吸引口64aを開口するように開口時間を決定してもよい。
【0107】
また、インクジェットヘッド26でインクの吐出が終了した時点から、当該インクジェットヘッド26に印刷媒体9の後端が到来するまでの期間がほとんどない場合には、当該インクジェットヘッド26を印刷媒体9の後端が通過した後に送風口63aおよび吸引口64aを開口するミスト回収動作を行ってもよい。この場合、インクジェットヘッド26と印刷媒体9との間の空間71を、インクミストを回収するための空気の流路として形成することはできない。このため、インクミストを回収する効率は低くなるものの、インクミストの一部を回収して浮遊するインクミストを低減することは可能である。
【0108】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部8は、各インクジェットヘッド26について、当該インクジェットヘッド26が印刷媒体9と対向している状況におけるインクを吐出しない期間において、ミスト回収動作を行うようミスト回収部7を制御する。
【0109】
このように、インクジェットヘッド26が印刷媒体9と対向している状況でミスト回収動作を行うことで、インクジェットヘッド26と印刷媒体9との間の空間71を、インクミストを回収するための空気の流路として利用することができる。これにより、インクミストを効率よく回収可能とすることができる。また、インクを吐出しない期間にミスト回収動作を行うことで、ミスト回収動作により発生する気流がインクの着弾位置ずれを招いて印刷画質が低下することを抑えることができる。
【0110】
したがって、インクジェットヘッド26のノズル面26a側(印刷媒体9が通過する側)が開放空間となっているインクジェット印刷装置1において、印刷画像の低下を抑えつつ、インクミストを効率よく回収可能とすることができる。
【0111】
また、インクジェット印刷装置1では、ミスト回収部7は、それぞれのインクジェットヘッド26に対応して設けられた複数の送風口63aおよび複数の吸引口64aを有する。制御部8は、それぞれのインクジェットヘッド26におけるインクミスト発生量に基づき、インクジェットヘッド26ごとにミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するようミスト回収部7を制御する。具体的には、制御部8は、インクジェットヘッド26ごとに、インクミスト発生量に基づき、当該インクジェットヘッド26に対応する送風口63aおよび吸引口64aのそれぞれの開口率および開口時間を調整する。これにより、インクジェットヘッド26ごとのミスト回収度合いが過大になることを抑えて効率よくインクミストの回収を行うことができる。
【0112】
また、制御部8は、各インクジェットヘッド26におけるインクミスト発生量の算出に、当該インクジェットヘッド26が接続されている加圧タンク41および負圧タンク43との水頭差を用いている。これにより、インクジェットヘッド26の加圧タンク41および負圧タンク43との水頭差がインクミストの発生度合いに与える影響を考慮したミスト回収度合いの調整を行うことがきる。
【0113】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態の一部を変更した第2実施形態について説明する。
【0114】
第2実施形態では、制御部8は、送風口63aについては、印刷媒体9の搬送速度およびヘッドギャップに基づき、上述したインクミスト発生量に基づき決定したミスト回収度合いを調整する。
【0115】
ヘッドギャップは、印刷媒体9とインクジェットヘッド26とが対向している状況における印刷媒体9とインクジェットヘッド26との間の距離である。ヘッドギャップは、印刷媒体9の種類等に応じて設定される。また、印刷媒体9の搬送速度は、印刷解像度等に応じて設定される。
【0116】
ここで、印刷媒体9の搬送速度が遅いほど、また、ヘッドギャップが大きいほど、インクジェットヘッド26の近傍における、印刷媒体9の搬送の影響により送風口63a側から吸引口64a側へ流れる搬送気流が弱くなる。すなわち、印刷媒体9の搬送速度が遅いほど、また、ヘッドギャップが大きいほど、ミスト回収部7のミスト回収動作に対する搬送気流の補助が得られにくくなる。
【0117】
そこで、第2実施形態では、上述のように、制御部8は、送風口63aについては、印刷媒体9の搬送速度およびヘッドギャップに基づき、インクミスト発生量に基づき決定したミスト回収度合いを調整する。
【0118】
具体的には、制御部8は、ヘッドギャップが同じであれば、印刷媒体9の搬送速度が遅いほど、ミスト回収度合いが強くなるよう送風口63aの開口率および開口時間を調整する。また、制御部8は、印刷媒体9の搬送速度が同じであれば、ヘッドギャップが大きいほど、ミスト回収度合いが強くなるよう送風口63aの開口率および開口時間を調整する。送風口63aを開口しない(開口率および開口時間をゼロとする)ように調整してもよい。
【0119】
このような第2実施形態によれば、ミスト回収部7によるミスト回収度合いをより適切に調整して効率よくインクミストの回収を行うことができる。
【0120】
[第3実施形態]
次に、上述した第1実施形態の一部を変更した第3実施形態について説明する。
【0121】
図11は、第3実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図12は、図11に示すインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズル面側から見たミスト回収部の要部を示す図である。
【0122】
図11に示すように、第3実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aは、上述した第1実施形態のインクジェット印刷装置1のミスト回収部7を、ミスト回収部7Aに置き換えた構成である。
【0123】
図11図12に示すように、ミスト回収部7Aは、複数の送風ファン81と、複数の吸引ファン82と、複数の送風経路83と、複数の吸引経路84と、複数のフィルタ(図示せず)とを備える。ここで、送風ファン81、吸引ファン82、送風経路83、吸引経路84、およびフィルタは、それぞれインクジェットヘッド26ごとに設けられており、それぞれインクジェットヘッド26と同数設けられている。なお、図12には、同じインクタワー5に接続されている2つのインクジェットヘッド26と、それぞれのインクジェットヘッド26に対応する送風経路83および吸引経路84を示している。
【0124】
送風ファン81は、送風経路83へ送風し、後述する送風口83aから空気を吹き出させる。1つの送風経路83に対して1つの送風ファン81が設けられている。
【0125】
吸引ファン82は、後述する吸引経路84の吸引口84aを介して空気を吸引する。1つの吸引経路84に対して1つの吸引ファン82が設けられている。
【0126】
送風経路83は、インクミストの回収のために印刷媒体9が通過する側(左側)へ吹き出す空気の流路を形成する。送風経路83は、インクジェットヘッド26の上流側(後側)の側面に沿って配置された部分と、インクジェットヘッド26の上側の側面に沿って配置された部分とを有する。送風経路83の一端には送風ファン81が接続されている。送風経路83の他端は、印刷媒体9が通過する側(左側)に開口し、空気を吹き出す送風口83aになっている。
【0127】
送風口83aは、インクジェットヘッド26の上流側(後側)において空気を吹き出す上流側部分83aaと、インクジェットヘッド26の上側において空気を吹き出す上側部分83abとを有する。
【0128】
吸引経路84は、インクミストの回収のために印刷媒体9が通過する側(左側)から吸引する空気の流路を形成する。吸引経路84内には、インクミストを液化して保持するフィルタが配置されている。吸引経路84は、インクジェットヘッド26の下流側(前側)の側面に沿って配置された部分と、インクジェットヘッド26の下側の側面に沿って配置された部分とを有する。吸引経路84の一端には、吸引ファン82が接続されている。吸引経路84の他端は、印刷媒体9が通過する側(左側)に開口し、空気を吸引する吸引口84aになっている。
【0129】
吸引口84aは、インクジェットヘッド26の下流側(前側)において空気を吸引する下流側部分84aaと、インクジェットヘッド26の下側において空気を吸引する下側部分84abとを有する。
【0130】
第3実施形態では、制御部8は、ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するために、送風ファン81および吸引ファン82のそれぞれの風量(駆動信号のデューティ比)および駆動時間を調整する。すなわち、制御部8は、各インクジェットヘッド26のインクミスト発生量に基づき、各インクジェットヘッド26について、当該インクジェットヘッド26に対応する送風ファン81および吸引ファン82のそれぞれの風量および駆動時間を決定する。駆動時間が同じであれば風量が大きいほど、また、風量が同じであれば駆動時間が長いほど、ミスト回収度合いが強くなる。
【0131】
ここで、第1実施形態で述べたように、ミスト回収動作において、送風口83aから吹き出す空気により、インクミストが拡散するおそれがある。このため、制御部8は、送風ファン81については、インクミスト発生量に基づき、インクミストの拡散を抑えつつ、インクミストを回収できるように、風量および駆動時間を決定する。
【0132】
インクジェット印刷装置1Aにおける印刷動作時において、制御部8は、ミスト回収動作として、インクの吐出を行うインクジェットヘッド26ごとに、それぞれに対応する送風ファン81および吸引ファン82を、インクミスト発生量に基づき決定したそれぞれの風量(駆動信号のデューティ比)および駆動時間で駆動させる。
【0133】
送風ファン81および吸引ファン82が駆動されると、送風口83aの上流側部分83aaおよび上側部分83abから空気が吹き出す空気による気流、吸引口84aの下流側部分84aaおよび下側部分84abが吸引する空気による気流、および搬送気流により、インクジェットヘッド26と印刷媒体9との間の空間71において、図12に示すように、インクジェットヘッド26の上側の後側から下側の前側へ流れる気流Fdが発生する。
【0134】
これにより、インクジェットヘッド26のノズル面26a近傍のインクミストを含む空気が吸引口84aに吸引されることで、インクミストが回収される。この際、上述のような気流Fdにより、重力の影響を受けて鉛直下方向に落ちていくインクミストを効率的に回収できる。
【0135】
以上説明したように、第3実施形態では、送風口83aは上流側部分83aaと上側部分83abとを有し、吸引口84aは下流側部分84aaと下側部分84abとを有する。これにより、重力の影響を受けて鉛直下方向に落ちていくインクミストも効率的に回収できる。したがって、インクミストの回収効率を向上できる。
【0136】
なお、第3実施形態でも上述した第2実施形態のように、送風口83a(送風ファン81)については、印刷媒体9の搬送速度およびヘッドギャップに基づき、インクミスト発生量に基づき決定したミスト回収度合いを調整するようにしてもよい。これにより、ミスト回収部7Aによるミスト回収度合いをより適切に調整して効率よくインクミストの回収を行うことができる。
【0137】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1乃至第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0138】
上述した第1乃至第3実施形態では、各インクジェットヘッド26について、当該インクジェットヘッド26がインクを吐出しない期間においてミスト回収動作を行った。しかし、各インクジェットヘッド26について、当該インクジェットヘッド26がインクを吐出している期間であるか否かに関わらず、当該インクジェットヘッド26が印刷媒体9と対向している状況でミスト回収動作を行うようにしてもよい。
【0139】
このようにしても、インクジェットヘッド26と印刷媒体9との間の空間71を、インクミストを回収するための空気の流路として利用することで、インクミストを効率よく回収可能とすることができる。なお、この場合において、インクの着弾位置ずれが抑えられるように、ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するようにしてもよい。
【0140】
また、上述した第1乃至第3実施形態では、インクジェットヘッド26のノズル面26aが鉛直面であり、インクジェットヘッド26が水平方向にインクを吐出するインクジェット印刷装置1,1Aについて説明した。しかし、インクジェットヘッド26(ノズル面26a)の向きはこれに限らない。
【0141】
第1および第2実施形態では、ノズル面の角度に関わらず、インクジェットヘッドのノズル面側(印刷媒体が通過する側)の空間が、インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっている構成であればよい。例えば、第1および第2実施形態では、インクジェットヘッドがノズル面を水平面として鉛直方向の下向きにインクを吐出するように設置され、立体物である印刷媒体の上面に印刷するインクジェット印刷装置でも、印刷媒体の搬送機構とノズル面との間の距離が所定距離より大きく、インクジェットヘッドの下側(印刷媒体が通過する側)の空間が開放空間になっているものであればよい。インクジェットヘッドのノズル面側の空間が開放空間であれば、印刷媒体を搬送する搬送面がノズル面と平行でも非平行でもよい。
【0142】
第3実施形態では、ノズル面が非水平面であり、インクジェットヘッドのノズル面側(印刷媒体が通過する側)の空間が、インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっている構成であればよい。第3実施形態でも第1および第2実施形態と同様に、インクジェットヘッドのノズル面側の空間が開放空間であれば、印刷媒体を搬送する搬送面がノズル面と平行でも非平行でもよい。
【0143】
また、上述した第1および第2実施形態では、ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するために、送風口63aおよび吸引口64aのそれぞれの開口率および開口時間を調整したが、開口率および開口時間のいずれかのみを調整するようにしてもよい。
【0144】
また、上述した第1および第2実施形態では、送風ファン61、および吸引ファン62をそれぞれ複数の送風口63a、および複数の吸引口64aに共通のものとし、各送風口63aに送風口シャッタ65を設け、各吸引口64aに吸引口シャッタ66を設けた構成を示した。しかし、各送風口63aに送風ファンを1つずつ設け、各吸引口64aに吸引ファンを1つずつ設けてもよい。この場合、各送風ファン、各吸引ファンをそれぞれ個別に制御することで、インクジェットヘッド26ごとにミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整することができる。例えば、インクジェットヘッド26ごとに、インクミスト発生量に基づき、当該インクジェットヘッド26に対応する送風ファンおよび吸引ファンのそれぞれの風量(駆動信号のデューティ比)および駆動時間の少なくともいずれかを調整するようにしてもよい。
【0145】
また、上述した第3実施形態では、ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するために、送風ファン81および吸引ファン82のそれぞれの風量(駆動信号のデューティ比)および駆動時間を調整した。しかし、風量および駆動時間のいずれかのみを調整するようにしてもよい。
【0146】
また、第3実施形態において、各送風口83aおよび各吸引口84aのそれぞれを開閉するシャッタを設け、各シャッタの開口率および開口時間の少なくともいずれかを調整することにより、ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するようにしてもよい。また、この場合において、送風ファンを各送風口83aに共通のものとし、吸引ファンを各吸引口84aに共通のものとしてもよい。
【0147】
また、上述した第1および第2実施形態において、圧力生成機構により生成した正圧により送風口63aから空気を吹き出し、圧力生成機構により生成した負圧により吸引口64aから空気を吸引する構成としてもよい。第3実施形態においても同様に、圧力生成機構により生成した正圧により送風口83aから空気を吹き出し、圧力生成機構により生成した負圧により吸引口84aから空気を吸引する構成としてもよい。
【0148】
また、上述した第3実施形態では、送風口83aの上流側部分83aaと上側部分83abとが連結され、吸引口84aの下流側部分84aaと下側部分84abとが連結された構成を示した。しかし、送風口83aの上流側部分83aaと上側部分83abとが互いに分離された構成でもよい。また、吸引口84aの下流側部分84aaと下側部分84abとが互いに分離された構成でもよい。
【0149】
また、第1および第2実施形態において、送風ファン61、送風経路63(送風口63a)、および送風口シャッタ65を省略してもよい。この場合でも、吸引口64aによる空気の吸引および搬送気流により、インクジェットヘッド26と印刷媒体9との間の空間71に吸引口64aへ向かう気流を発生させ、インクミストを効率よく回収可能とすることができる。同様に、第3実施形態において、送風ファン81および送風経路83(送風口83a)を省略してもよい。
【0150】
また、第1および第2実施形態において、送風ファン61、送風経路63(送風口63a)、および送風口シャッタ65を省略し、吸引経路64(吸引口64a)をインクジェットヘッド26の上流側に配置してもよい。
【0151】
また、上述した第2および第3実施形態では、送風口63a,83aについては、印刷媒体9の搬送速度およびヘッドギャップに基づき、インクミスト発生量に基づき決定したミスト回収度合いを調整した。しかし、送風口63a,83aについては、インクミスト発生量に関わらず、印刷媒体9の搬送速度およびヘッドギャップに基づき、ミスト回収度合いを調整するようにしてもよい。
【0152】
また、上述した第3実施形態では、ヘッドユニット21の6つのインクジェットヘッド26のうちの2つずつが、共通する加圧タンク41および負圧タンク43に接続されている構成を示した。しかし、これに限らず、例えば、ヘッドユニット21のすべてのインクジェットヘッド26が、共通する加圧タンクおよび負圧タンクに接続されている構成でもよい。
【0153】
また、上述した第1乃至第3実施形態では、インク循環式のインクジェット印刷装置1,1Aを示したが、これに限らず、他の方式のインクジェット印刷装置でも本発明は適用可能である。
【0154】
また、上述した第1および第2実施形態では、インクジェット印刷装置1が複数のインクジェットヘッド26を備え、ミスト回収部7が、それぞれのインクジェットヘッド26に対応して設けられた複数の送風口63aおよび複数の吸引口64aを有する構成について説明した。しかし、複数のインクジェットヘッド26に対して送風口および吸引口が1つずつの構成でもよい。
【0155】
例えば、1つのヘッドユニット21に対して、ヘッドユニット21の上流側に配置された送風口と、ヘッドユニット21の下流側に配置された吸引口とが1つずつの構成でもよい。また、4つのヘッドユニット21に対して、最上流のヘッドユニット21の上流側に配置された送風口と、最下流のヘッドユニット21の下流側に配置された吸引口とが1つずつの構成でもよい。
【0156】
また、上述した第1および第2実施形態では、インクジェットヘッド26の上流側に開口している送風口63aから送風し、インクジェットヘッド26の下流側に開口している吸引口64aから空気を吸引する構成を示した。しかし、これに限らず、送風口63aと吸引口64aとを逆にしてもよい。例えば、印刷媒体9の後端(上流端)がインクジェットヘッド26を通過する際に搬送部2による印刷媒体9の搬送速度を減速し、吸引口64aが印刷媒体9に対向している状態で吸引口64aから送風し、送風口63aから空気を吸引するように制御してもよい。これにより、印刷媒体9の後端がインクジェットヘッド26を通過する際に送風口63aから送風した場合に生じる、インクミストの空間71外への拡散が抑えられる。
【0157】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0158】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0159】
(付記1)
搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
印刷媒体が通過する側に空気を吹き出す送風口、および印刷媒体が通過する側から空気を吸引する吸引口を有するミスト回収部と、
前記ミスト回収部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側の空間が、前記インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっており、
前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況において、前記送風口から空気を吹き出しつつ前記吸引口によりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0160】
(付記2)
前記インクジェットヘッドを複数備え、
前記ミスト回収部は、それぞれの前記インクジェットヘッドに対応して設けられた複数の前記送風口および複数の前記吸引口を有し、
前記制御部は、それぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量に基づき、前記インクジェットヘッドごとに前記ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0161】
(付記3)
搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
印刷媒体の搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において、印刷媒体が通過する側から空気を吸引する吸引口を有するミスト回収部と、
前記ミスト回収部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドの印刷媒体が通過する側の空間が、前記インクジェットヘッドから所定距離以内には、通過する印刷媒体以外は何も配置されていない開放空間になっており、
前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況において、前記吸引口によりインクミストを含む空気を吸引するミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0162】
(付記4)
前記インクジェットヘッドを複数備え、
前記ミスト回収部は、それぞれの前記インクジェットヘッドに対応して設けられた複数の前記吸引口を有し、
前記制御部は、それぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量に基づき、前記インクジェットヘッドごとに前記ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする付記3に記載のインクジェット印刷装置。
【0163】
(付記5)
前記制御部は、印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況における前記インクジェットヘッドがインクを吐出しない期間において、前記ミスト回収動作を行うよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【0164】
(付記6)
前記インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出面が非水平面となるように配置されており、
前記吸引口は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において空気を吸引する部分と、前記インクジェットヘッドの下側において空気を吸引する部分とを有することを特徴とする付記3または4に記載のインクジェット印刷装置。
【0165】
(付記7)
前記ミスト回収部は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側において、印刷媒体が通過する側から空気を吹き出す送風口をさらに有することを特徴とする付記3に記載のインクジェット印刷装置。
【0166】
(付記8)
前記インクジェットヘッドを複数備え、
前記ミスト回収部は、それぞれの前記インクジェットヘッドに対応して設けられた複数の前記送風口および複数の前記吸引口を有し、
前記制御部は、それぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量に基づき、前記インクジェットヘッドごとに前記ミスト回収動作におけるミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする付記7に記載のインクジェット印刷装置。
【0167】
(付記9)
前記制御部は、印刷媒体の搬送速度、および印刷媒体と前記インクジェットヘッドとが対向している状況における印刷媒体と前記インクジェットヘッドとの間の距離の少なくともいずれか一方に基づき、前記ミスト回収動作における前記送風口のミスト回収度合いを調整するよう前記ミスト回収部を制御することを特徴とする付記7または8に記載のインクジェット印刷装置。
【0168】
(付記10)
前記インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出面が非水平面となるように配置されており、
前記吸引口は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側において空気を吸引する部分と、前記インクジェットヘッドの下側において空気を吸引する部分とを有し、
前記送風口は、前記搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側において空気を吹き出す部分と、前記インクジェットヘッドの上側において空気を吹き出す部分とを有することを特徴とする付記7乃至9のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【0169】
(付記11)
複数の前記インクジェットヘッドのうちの少なくとも一部の複数の前記インクジェットヘッドは、共通のインクタンクに接続され、前記インクタンクとの水頭差がそれぞれ異なるように配置されており、
前記制御部は、共通の前記インクタンクに接続されたそれぞれの前記インクジェットヘッドにおけるインクミスト発生量の算出に、前記インクタンクとの水頭差を用いることを特徴とする付記2,4乃至10のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0170】
1,1A インクジェット印刷装置
2 搬送部
3 印刷部
4 媒体センサ
5,5A~5C インクタワー
6,6A~6D インク補給部
7,7A ミスト回収部
8 制御部
9 印刷媒体
21,21A,21B ヘッドユニット
26 インクジェットヘッド
26a ノズル面
27A,27B インク温度センサ
31,31A~31D インク循環部
32 圧力生成部
33 加圧エア経路
34 負圧エア経路
51 インクカートリッジ
52 インク補給経路
53,53A~53C インク補給弁
61,81 送風ファン
62,82 吸引ファン
63,83 送風経路
63a,83a 送風口
64,84 吸引経路
64a,84a 吸引口
65 送風口シャッタ
66 吸引口シャッタ
67 フィルタ
71 空間
83aa 上流側部分
83ab 上側部分
84aa 下流側部分
84ab 下側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12