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特開2024-48375シリカ含有ゴムコンパウンドのカップリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048375
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】シリカ含有ゴムコンパウンドのカップリングシステム
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240401BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240401BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20240401BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20240401BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20240401BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/36
C08K5/37
C08K5/5425
C08K5/544
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023158133
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】17/935,678
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・ヨン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・インケット・チェ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ショーン・キャストナー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ハリー・サンドストーム
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA06
3D131AA08
3D131AA10
3D131AA11
3D131AA14
3D131AA17
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
3D131BB07
3D131BB09
3D131BB19
3D131BC02
3D131BC51
4J002AC021
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC111
4J002AC121
4J002BB101
4J002BB151
4J002BB181
4J002BD021
4J002BG051
4J002BK001
4J002DJ018
4J002EV027
4J002EV037
4J002EV047
4J002EV067
4J002EV087
4J002EV317
4J002EV327
4J002EV347
4J002EX016
4J002EX056
4J002EX066
4J002EX076
4J002EY017
4J002GL00
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】チオール系架橋試薬とともに用いられる、活性硫黄を含まない単官能、二官能、または多官能のカップリング剤を含むカップリングシステム、およびそれを含むゴムコンパウンドを提供する。
【解決手段】硫黄加硫可能なゴムコンパウンドは、シラン官能性ジエンエラストマー、多重シランカップリングシステム、およびシリカ充填剤を含む。活性硫黄非含有シランカップリング剤は、活性な硫黄部分を含まない。ゴムコンパウンドは、シラン官能性ジエンエラストマーと多重シランカップリングシステムとの間のシロキシル縮合反応の反応生成物である。多重カップリングシステムは、随伴している沈降シリカと反応させて疎水性シリカを生成させるための活性硫黄非含有シランカップリング剤、および活性硫黄非含有シランカップリング剤と随伴しているポリマーとを反応させるための架橋試薬を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫可能なシリカ充填ゴム組成物に用いるカップリングシステムであって、
随伴している沈降シリカと反応させて疎水性シリカを生成させるための、活性硫黄非含有シランカップリング剤、および
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤と、随伴しているポリマーとを反応させるための架橋試薬
を特徴とする、カップリングシステム。
【請求項2】
前記架橋試薬がビス-チオールまたはマルチ-チオール架橋試薬であることを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項3】
前記架橋試薬がトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)であることを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項4】
前記随伴しているポリマーが官能化されていないことを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項5】
前記随伴しているポリマーが官能化されていることを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項6】
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤が、前記随伴している沈降シリカに含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基、および前記架橋試薬に含まれるチオール部分と反応性である少なくとも1つの末端基を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項7】
前記架橋試薬が、前記活性硫黄非含有シランカップリング剤と反応性である少なくとも2つのチオール部分、およびジエン系ポリマーと反応性である少なくとも第2の部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項8】
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤が、一般式A-R-Bを有する多重官能性オルガノシランであって、
Aがアルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基を含む群から選択され、
Rが1~10個の炭素原子を有する炭化水素鎖、ヘテロ原子含有(O、N、P)炭化水素、または環状基であり、かつ
Bが前記架橋試薬のチオールに結合可能なビニル基、シアノ基、エポキシ基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、シクロペンタジエニル基またはイソシアニル基である、ことを特徴とする、請求項1に記載のカップリングシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の架橋システムを用いて製造されたゴム組成物であって、
少なくともシリカを含む充填剤、および
ジエン系ポリマーを更に特徴とする、ゴム組成物。
【請求項10】
加硫可能なシリカ充填ゴムコンパウンドであって、
ジエン系ポリマー、
少なくとも沈降シリカを含む充填剤、
前記シリカに含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基を含む活性硫黄非含有シランカップリング剤、ならびに
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤に含まれる官能性部分と反応性である少なくとも1つの末端基、および前記ジエン系ポリマーと反応性である少なくとも第2の末端基を含む架橋試薬
を特徴とする、ゴムコンパウンド。
【請求項11】
前記ポリマーが官能化されていないことを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。
【請求項12】
前記ポリマーが官能化されていることを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。
【請求項13】
前記架橋試薬がチオールであることを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。
【請求項14】
前記架橋試薬がトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)であることを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。
【請求項15】
前記シリカと前記活性硫黄非含有シランカップリング剤との間のシラン化反応、前記架橋試薬と前記活性硫黄非含有シランカップリング剤との間の第1の架橋反応、および前記架橋試薬と前記ポリマーとの間の第2の架橋反応の反応生成物であることを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。
【請求項16】
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤が一般式A-R-Bを有し、それぞれのAが前記シリカに結合可能な部分を表し、かつBが前記架橋試薬に結合可能な部分を表し、かつRが任意に炭化水素鎖、ヘテロ原子含有(O、N、P)炭化水素、または環状基であり、前記炭化水素が1個から10個の間の炭素を有することを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。
【請求項17】
タイヤ部品、ベルト、パイプ、ホース、建具または履き物に組み込まれていることを特徴とする、請求項10に記載のゴムコンパウンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、チオール系架橋試薬とともに用いられる、活性硫黄を含まない単官能、二官能、または多官能のカップリング剤を含むカップリングシステム、およびそれを含むゴムコンパウンドに関する。それは官能性ポリマーと組み合わせた特定の用途であり、それに対する特定の関連事項とともに記載されることとなる。しかしながら、本発明のその例示した実施形態はまた他の同様の用途にも適することが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
[0002]シリカはタイヤにおいて広範に用いられており、一定の性能の優位性を促進させる。しかしながら、その親水性表面によりポリマー中で分散することが困難である。分散性を改善する1つの方法は、加硫可能なシリカ充填ゴムストックにおいてシリカとポリマーとをつなぐオルガノシランカップリング剤でシリカを処理することである。典型的には、カップリング剤は二官能性であり、一般式A-R-Bで表され、部分A(例えばシリル基)はシリカ表面と反応し、部分Bはポリマーに結合する。従来のカップリング剤では、硫黄が架橋を生じさせるために必要であると考えられる。従って、基Bは、一般的に、ゴムポリマーと結合することとなる硫黄を供給可能なメルカプト-SHまたは他の基(例えば-SCN、-S)を含む。
【0003】
[0003]シリカとこれらの剤との間のカップリング反応は、(1)トリエトキシシリル基がシリカのシラノール基と反応するシラン化修飾反応(本明細書中の以下、同意語として「疎水化」と言う)、および(2)硬化条件下で硫黄基がポリマーと反応してゴムと充填剤との結合を形成するシラン-ポリマーカップリング反応(本明細書中の以下、同意語として「架橋」と言う)の2つのスキームに分けることができる。
【0004】
[0004]現在のシラン技術は、その間にB基がポリマーの二重結合とのカップリング反応に入る第2のスキームに着目している。シリカ-シランポリマー相間は硫黄-ポリマーカップリング反応により形成され、特定の温度制限下で行われる必要があり、そうでないとスコーチが生じることとなる。
【0005】
[0005]NON-ACTIVE SULFUR CONTAINING FUNCTIONAL SILANES FOR SILICA COMPOUNDSという題名の2021年12月14日に出願された、共に所有する米国特許出願第17/644,102号においては、その内容がその全体において本明細書において援用されるものであるが、硫黄部分または同様の官能化する部分を含まないカップリング剤を、官能化されたポリマーから形成されるゴムコンパウンドに用いることができることが見出された。644,102出願は、シラン官能化されたポリマーについて、シリカ-シラン-ポリマー相間をシロキシル縮合反応(-Si-O-Si-ポリマー結合)により形成することができることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第17/644,102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0006]本明細書では、そのようなカップリング剤が架橋試薬と組みわせて用いられ、より多くの数のポリマー(例えば、非官能性ポリマーを含む)が活性硫黄非含有シランカップリング剤とともに用いられることを可能にする、新規カップリングシステムが開示される。以下に議論されるように、開示されたカップリングシステムが、上述した加工の制限の除去および/または低減という予期しない利益を提供することもまた見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]本開示の1つの実施形態は、加硫可能なシリカ充填ゴム組成物に用いるカップリングシステムに関する。カップリングシステムは、沈降シリカと反応性であり疎水性シリカを生成させるための、活性硫黄を含有しない(活性硫黄非含有)シランカップリング剤を含む。カップリングシステムは、活性硫黄非含有シランカップリング剤およびポリマーと反応性である架橋試薬を更に含む。カップリングシステムは、シリカをゴムに結合させるために用いられる。
【0009】
[0008]本開示の別の実施形態は、加硫可能なシリカ充填ゴムコンパウンドに関する。ゴムコンパウンドは、ジエン系ポリマーおよび沈降シリカ充填剤を含む。ゴムコンパウンドは、活性硫黄非含有シランカップリング剤および架橋試薬を更に含む。活性硫黄非含有シランカップリング剤は、シリカに含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基を含む。架橋試薬は、活性硫黄非含有シランカップリング剤に含まれる官能性部分と反応性である少なくとも1つの末端基、およびジエン系ポリマーと反応性である少なくとも第2の末端基を含む。
【0010】
[0009]本開示の別の実施形態は、加硫可能なシリカ充填ゴムコンパウンドにおいてゴムと充填剤との結合を形成する方法に関する。その方法は、(1)活性硫黄非含有シランカップリング剤を沈降シリカと反応させて疎水性シリカを生成させる工程、および(2)マルチ-チオールの架橋試薬を活性硫黄非含有シランカップリング剤およびジエン系ポリマーと反応させてゴムと充填剤との結合を生成させる工程を含む。
【0011】
[0010]本発明は、実施例によって、かつ以下の添付の図面を参照して、記載されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】出発物質として活性硫黄非含有シランを用いて疎水性シリカを生成させる、例示の2工程化学反応における疎水化段階を示す図である。
図2図1に示す例示の第2の反応工程として続く、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が疎水性シリカと反応してゴムと充填剤との結合を生成させる例示の架橋試薬である場合の、架橋段階を示す図である。
図3】第1系統(サンプルA~E)の実験の個々のコントロールおよび実験用ゴムサンプルについての時間に対する相対トルク値のプロットを示す図である。
図4】第2系統(サンプルF~J)の実験の個々のコントロールおよび実験用ゴムサンプルについての時間に対する相対トルク値のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0011]本発明は、従来のシラン-ポリマーカップリング反応の代わりとしての、活性な硫黄部分を含まないシランカップリング剤、ならびにシランカップリング剤およびポリマーと反応する二官能性または多官能性チオール架橋試薬を含むカップリングシステムに関する。
【0014】
[0012]従来のカップリング反応では、疎水化および架橋反応は同時に起こる。活性硫黄非含有シランおよびマルチ-チオール架橋試薬が、これらの工程を独立しておよび/または個別に行うことを可能にし、それにより加工条件の制限をより少なくすることがここでは見出される。更に、加硫可能なシリカ充填ゴムコンパウンドにおいて材料のより広範囲の選択が利用可能である。
【0015】
[0013]本明細書で用いられる場合、用語「ゴム」、「ポリマー」および「エラストマー」は、そうでないと指示されない限り、交換可能に用いられてもよい。用語「ゴム組成物」、「混成されたゴム」および「ゴムコンパウンド」は交換可能に用いられ、様々な成分および材料と一体化または混合されたゴムを言い、そのような用語はゴムの混合またはゴムのコンパウンドの分野における当業者によく知られている。
【0016】
[0014]本明細書で用いられる場合、用語「含む(comprise)」およびその用語のバリエーション、例えば「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」および「含まれた(comprised)」は、文脈がそうでないことを必要とする場合を除いて、更なる添加物、成分、整数、または工程を除外することを意図されない。
【0017】
[0015]本明細書で用いられる場合、用語「活性硫黄非含有シラン」とは、沈降シリカに含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基、および官能性ポリマーまたは架橋試薬に含まれるシラン部分と反応性である少なくとも1つの末端基を含むシランカップリング剤を言う。
【0018】
[0016]本明細書で用いられる場合、用語「架橋試薬」とは、活性硫黄非含有シランの官能性部分と反応性である少なくとも1つのチオール、および官能性ポリマーまたは官能性でないポリマーと反応性である少なくとも1つのチオールを含むマルチ-チオール架橋試薬または化合物を言う。1つの実施形態では、ポリマーはジエン系ポリマーであってもよい。従って、硫黄加硫可能なゴムコンパウンドは、ジエンポリマー、架橋試薬、活性硫黄非含有シランカップリング剤、およびシリカ充填剤を含む。
【0019】
[0017]開示されたカップリングシステムは、(1)活性硫黄非含有シランカップリング剤、および(2)架橋試薬の2部分を含む。より具体的には、本開示は、シリカの表面反応を2つの制御された段階に分離するものである。1つの実施形態では、シリカ-ゴム化学結合は、(1)活性硫黄非含有シランカップリング剤を沈降シリカと反応させて疎水性シリカを生成させ、かつ(2)架橋試薬を活性硫黄非含有シランカップリング剤およびジエン系ポリマーと反応させて最終的なゴムと充填剤との結合を生成させる、2工程反応により生成することができる。
【0020】
活性硫黄非含有カップリング剤
[0018]本開示の重大な態様は、硫黄非含有シランカップリング剤である。カップリング剤は、シリカ充填剤に含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基、および架橋試薬のチオールと反応性である別の部分を含む。
【0021】
[0019]1つの実施形態では、カップリング剤が、一般式A-R-Bを有する多重官能性オルガノシランである。Aは、シリカに結合可能な部分を表す。A基は、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基であってもよい。B基は、チオール、例えば架橋試薬のチオールに結合可能なビニル基、シアノ基、エポキシ基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、シクロペンタジエニル基またはイソシアニル基であってもよい。Rは、安定した方法でAおよびBに接続可能かつ結合可能な二官能性基を表す。いくつかの実施形態では、RはAとBとの間の直接の化学結合であってもよいが、通常、Rは、炭化水素鎖、ヘテロ原子含有(O、N、P)炭化水素、または環状基である。R基は、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する炭化水素である。しかしながら、炭化水素鎖はより長いものであってもよく、分岐状であってもよい。
【0022】
[0020]1つの実施形態では、カップリング剤は、一般式A-R-A’を有する二官能性オルガノシランであり、これは共疎水化シランとして用いることができる。AおよびA’は、それぞれ独立してシリカおよび架橋試薬の両方に結合可能な部分を表す。この方法では、それぞれの部分は2つの脱離基を有する。1つの実施形態では、脱離基が同じまたは異なるアルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基であってもよい。Rは、安定した方法でAおよびA’に接続可能かつ結合可能な二官能性基を表す。いくつかの実施形態では、RはAとA’との間の直接の化学結合であってもよいが、通常、Rは、炭化水素鎖、ヘテロ原子含有(O、N、P)炭化水素、または環状基であることとなる。R基は、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する炭化水素である。しかしながら、炭化水素鎖はより長いものであってもよく、分岐状であってもよい。
【0023】
[0021]いくつかの実施形態では、Rが炭化水素鎖中に活性硫黄を含まなくてもよい。本発明は、硫黄が活性部分の一部である限りにおいて従来のオルガノシランとは異なる。
[0022]硫黄非含有シランの限定されない例は、本明細書において完全に援用される出願第17/644,102号に列挙される。シランの他の限定されない例としては、以下
【0024】
【化1】
【0025】
を含む。
[0023]共疎水化シランとして用いることのできる他の市販の非硫黄シランとしては、PhTES、EHETES、DMBAPTES、TESPEC、PAMTES、Bis_TESPA、TESPPEOU、OTES、およびBis_OTESを含む。
【0026】
[0024]1つの実施形態では、ゴム組成物が約0.1~約50phrのカップリング剤、より好ましくは約1~約30phrのシランカップリング剤を含んでもよい。更なる実施形態では、更なるカップリング剤をゴムコンパウンドに用いることができる。
【0027】
架橋試薬
[0025]本開示の別の重大な態様は、架橋試薬である。架橋試薬は、疎水化シリカ、より具体的には活性硫黄非含有シランカップリング剤に含まれる官能性部分と反応性である少なくとも1つの末端基、およびポリマーと反応性である別の部分を含む。
【0028】
[0026]1つの実施形態では、架橋試薬が一般式Q-R-Q’を有する、多重にメルカプトを含有する化学物質から選択される。QおよびQ’はそれぞれ独立してチオール含有基を表す。Rは、安定した方法でQおよびQ’に接続可能かつ結合可能な二官能性基を表す。いくつかの実施形態では、RはQとQ’との間の直接の化学結合であってもよいが、通常、Rは、炭化水素鎖またはヘテロ原子含有(B、O、P、N)アルキル鎖、アリール鎖、エーテル鎖、エステル鎖、またはアミド鎖であることとなる。R基は、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する炭化水素である。しかしながら、炭化水素鎖はより長いものであってもよく、分岐状であってもよい。
【0029】
[0027]1つの実施形態では、架橋試薬が一般式R-(Q”)を有する多重メルカプト含有化学物質であり、Q”がチオール含有基を表し、n≧2である。
[0028]架橋試薬の限定されない例としては、以下
【0030】
【化2】
【0031】
を含む。
[0029]1つの実施形態では、ゴム組成物が約0.1~約20phrの架橋試薬、より好ましくは約1~約10phrの架橋試薬を含んでもよい。予期される実施形態では、架橋試薬の活性硫黄非含有シランカップリング剤に対するモル比が1:1未満である。更なる実施形態では、更なるカップリング剤をゴムコンパウンドに用いることができる。
【0032】
反応スキーム
[0030]本開示の1つの態様は、本開示が、活性硫黄含有シランカップリング剤を用いたゴムコンパウンドのための従来のシラン-ポリマーカップリング反応を除外することである。先行技術の反応では、シラン-ポリマーカップリング反応は、スコーチを防ぐために特定の限定された温度範囲下で行われた。ゴムポリマー(例えばNR、IR、SBR、BRまたはそれらの混合物)の種類が、反応を行うことのできる温度範囲を制御した。
【0033】
[0031]代わりに、活性硫黄非含有カップリング剤および架橋試薬を用いることにより、シリカと充填剤との結合を、(1)シリカと活性硫黄非含有シランカップリング剤との間のシラン化反応(疎水化)、ならびに(2)(a)架橋試薬と活性硫黄非含有シランカップリング剤との間および(b)架橋試薬とポリマーとの間の2部分の架橋反応の2工程化学反応において行うことができる。
【0034】
[0032]図1は、出発物質として活性硫黄非含有シランを用いて疎水性シリカを生成させる、例示の2工程化学反応における疎水化段階を示す。図2は、図1に示す例示の第2の反応工程として続く、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が疎水性シリカと反応してゴムと充填剤との結合を生成させる例示の架橋試薬である、架橋段階を示す。
【0035】
[0033]1つの実施形態では、カップリングシステムが硫黄加硫可能なゴムコンパウンドとともに用いられる。ゴムコンパウンドは、少なくとも1つのポリマー、より具体的にはジエン系を更に含む。
【0036】
[0034]様々な共役ジエン系エラストマー、例えばイソプレンおよび1,3-ブタジエンの少なくとも1つ、ならびにイソプレンおよび1,3-ブタジエンの少なくとも1つで共重合されたスチレン、ならびにそれらの混合物のポリマーおよびコポリマーがゴムコンパウンドに用いられてもよい。
【0037】
[0035]そのような共役ジエン系エラストマーの代表例は米国特許出願第17/644,102号に列挙され、ポリイソプレン(天然および合成、ならびにcis-1,4-ポリイソプレンを含む)、ポリブタジエン(cis-1,4-ポリブタジエンを含む)、スチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマー、ブチルゴム、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴムまたはブロモブチルゴム、1,3-ブタジエンまたはイソプレンとモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートとのコポリマー、ならびにエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られているエチレン/プロピレンターポリマー、特に、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーの少なくとも1つを含んでもよい。用いることのできるゴムの更なる例としては、アルコキシ-シリルで末端が官能化された、溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、ケイ素結合およびスズ結合星型分岐状ポリマーを含む。
【0038】
[0036]実際には、好ましい(シリカ充填剤が結合される)ゴムポリマーは、ポリブタジエン、スチレンブタジエンコポリマーまたはブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーである。ゴムコンパウンドは、1つ以上のゴムポリマーを含んでもよい。更なるポリマーは、天然ゴム、ポリイソプレンまたはポリブタジエンであってもよい。1つの実施形態では、ゴムポリマーは官能化されていないが、それでも架橋試薬とは反応性である。1つの実施形態では、ゴムポリマーは官能化されており、架橋試薬と反応する。官能化されたエラストマーの代表例は、例えば、(A)アミン官能基、(B)シロキシ官能基、末端鎖シロキシ基を含む、(C)アミン官能基およびシロキシ官能基の組み合わせ、(D)チオール官能基およびシロキシ(例えばエトキシシラン)官能基の組み合わせ、(E)イミン官能基およびシロキシ官能基の組み合わせ、ならびに(F)ヒドロキシル官能基で構成されている1つ以上の官能基を含むスチレン/ブタジエンエラストマーである。
【0039】
[0037]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのジエンポリマーは、単一のシラノール官能基または単一のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを含む末端官能基により特徴付けられるシランで官能化されたエラストマーであってもよい。
【0040】
[0038]開示されたゴムコンパウンドに用いることのできる官能化エラストマーの限定されない例としては、以下
【0041】
【化3】
【0042】
を含んでもよい。
[0039]1つの実施形態では、少なくとも2つのポリマーを含む組成物において、ゴム組成物が0~約100phrの(架橋試薬が反応する)第1のゴムポリマー、より好ましくは約10~約90phrの第1のポリマーを含んでもよい。1つの実施形態では、組成物が少なくとも2つのポリマー(合成および/または天然)の組み合わせを含むように、更なるジエン系ポリマーが用いられる。1つの実施形態では、少なくとも第3のゴムポリマーが用いられてもよい。1つの実施形態では、第1のエラストマーならびに任意の第2のエラストマーおよび更なるエラストマーは、合計100phrの量で供給される。
【0043】
[0040]開示されたゴムコンパウンドの別の鍵となる成分は、シリカを含む補強充填剤である。ゴムコンパウンドは、約10~約180phrのシリカを含んでもよい。
[0041]ゴムコンパウンドに用いてもよい一般的に用いられるシリカ顔料は、従来の熱分解法および沈降ケイ質顔料(シリカ)を含む。1つの実施形態では、沈降シリカが用いられる。本発明で用いられる従来のシリカ顔料は、沈降シリカ、例えば可溶性ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの酸性化により得られたものである。
【0044】
[0042]そのような従来のシリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定されたBET表面積を有することにより特徴付けられてもよい。1つの実施形態では、BET表面積がグラム当たり約40~約600平方メートルの範囲であってもよい。別の実施形態では、BET表面積がグラム当たり約80~約300平方メートルの範囲であってもよい。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、第60巻、304頁(1930)に記載される。
【0045】
[0043]従来のシリカはまた、約100~約400、あるいは約150~約300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することにより特徴付けられてもよい。
[0044]従来のシリカは、例えば電子顕微鏡により決定された0.01~0.05ミクロンの範囲の平均最終粒子径を有することが予期されるが、シリカ粒子はサイズが更により小さくてもよく、もしかするとより大きくてもよい。
【0046】
[0045]様々な市販のシリカが用いられてもよく、例えば、本明細書における例に過ぎず限定されるものではないが、Hi-Silの商標にて210、243等の名称でPPG Industriesから市販されるシリカ、例えばZ1165MPおよびZ165GRの名称でRhodiaから市販されるシリカ、例えばVN2およびVN3等の名称でDegussa AGから市販されるシリカである。
【0047】
[0046]シリカで被覆されたカーボンブラックおよび/または一般的に用いられるカーボンブラックもまた、10~150phrの範囲の量で充填剤として用いることができる。
[0047]ゴム組成物においては他の充填剤が用いられてもよく、これらに限定されないが、カーボンブラック、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む粒子充填剤、架橋粒子ポリマーゲル、および可塑化デンプン複合充填剤を含む。そのような他の充填剤は、充填剤系の大多数を占めても少数を占めてもよく、またはそれらは、シリカと同等の部数で用いることができる。
【0048】
[0048]ゴム組成物は、任意にゴム加工油を含んでもよい。ゴム組成物は0~約100phrの加工油を含むことができ、増量油であってもよく、制限なく添加されてもよい。油の例は、軽度抽出物溶媒和物(MES)、処理蒸留物芳香族抽出物(TDAE)、残留芳香族抽出物(RAE)、SRAE、および重ナフテン系油(当該分野で知られているようにまとめて「PCA油」である)。1つの実施形態では、適切な植物油が用いられ、例えば、一定の度合いで不飽和を含むエステルの形態の大豆油、ヒマワリ油、菜種油、およびキャノーラ油である。
【0049】
[0049]トレッドゴムのゴム組成物が、ゴムコンパウンド分野で一般的に知られている方法、例えば様々な硫黄加硫可能な構成ゴムと、様々に一般的に用いられる添加材料、例えば硬化助剤、例えば硫黄活性剤、遅延剤および促進剤、加工添加物、例えば(増量、および制限なく添加されるゴム加工)油、樹脂、例えば粘着付与樹脂、トラクション樹脂、および熱可塑性樹脂および可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、亜鉛酸、ワックス、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤(分解防止剤)、ペプタイジング剤および補強材料との混合により、混成されることが当業者により容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫可能なおよび硫黄加硫された材料(ゴム)の意図された用途に応じて、上述の添加物が選択され、従来の量で一般的に用いられる。
【0050】
[0050]硫黄ドナーの代表的な例としては、硫黄元素(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。1つの実施形態では、硫黄加硫剤が硫黄元素である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrの範囲、あるいは1.5~6phrの範囲の量で用いられてもよい。典型的な量の樹脂を約0~約100phrの範囲で添加することができる。典型的な量の加工助剤は約1~約50phrを含む。典型的な量の酸化防止剤は約1~約5phrを含む。代表的な酸化防止剤は、例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミンおよび他のもの、例えばバンダービルトゴムハンドブック(1978)、344~346頁に開示されたものであってもよい。典型的な量のオゾン劣化防止剤は約1~5phrを含む。典型的な量の脂肪酸は、用いられる場合、ステアリン酸を含むことができ、約0.5~約3phrを含む。典型的な量の酸化亜鉛は約2~約5phrを含む。典型的な量のワックスは約1~約5phrを含む。微結晶ワックスが用いられることが多い。典型的な量のペプタイザーは約0.1~約1phrを含む。典型的なペプタイザーは例えばジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0051】
[0051]加硫に必要な時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために促進剤が用いられる。1つの実施形態では、単一の促進剤系、即ち一次促進剤が用いられてもよい。一次促進剤は、約0.5~約4、あるいは約0.8~約1.5phrの範囲の合計量で用いられてもよい。別の実施形態では、一次促進剤および二次促進剤の組み合わせが用いられてもよく、二次促進剤は、加硫物の特性を活性化および改善するために、より少ない量、例えば約0.05~約3phrで用いられる。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な特性への相乗効果を生むことが予期され、いずれかの促進剤を単独で用いて製造されたものよりもいくらか良好である。更に、通常の加工温度により影響されないが普通の加硫温度で十分な硬化を生じさせる、遅延作用促進剤が用いられてもよい。加硫遅延剤もまた用いられてもよい。本発明で用いてもよい促進剤の適切な種類は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびキサントゲン酸塩である。1つの実施形態では、一次促進剤がスルフェンアミドである。二次促進剤が用いられる場合、二次促進剤はグアニジン化合物、ジチオカルバメート化合物またはチウラム化合物であってもよい。
【0052】
[0052]他の硬化剤を用いてもよく、これらに限定されないが、0.5~5phrのLanxessからVulcurenとして入手可能な1,6-ビス(N,N’ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサンが挙げられる。
【0053】
[0053]上記添加物の存在および相対量は、そうでないと示されない限り、硫黄非含有シランカップリング剤を用いて作製されたゴムコンパウンドに主に関する本発明の態様であるとは見なされない。ゴムコンパウンドは、様々なゴム物品、例えばタイヤ部品、ベルト、パイプ、ホース、建具または履き物に組み込まれてもよい。
【0054】
[0054]そのようなタイヤ部品の代表例は、例えば、トレッドキャップおよび/またはトレッドベースのゴム層のタイヤ側壁の少なくとも1つを含むタイヤトレッド、タイヤ骨組み部品、例えば骨組みひも層コート、タイヤ側壁強化インサート、タイヤビードに隣接したまたはタイヤビードから間隔をあけたエイペックス、ワイヤコート、内部ライナータイヤチェーファーおよび/またはタイヤビード部品である。トレッドおよび/またはタイヤは、当業者に容易に明らかとなる様々な方法により形成、形作り、成形および硬化することができる。
【0055】
[0055]本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土工機械用、道路以外で使われるもの、トラック用タイヤ等であってもよい。1つの実施形態では、タイヤは乗用車用タイヤまたはトラック用タイヤである。タイヤはまた放射状であってもよく、偏っていてもよい。1つの実施形態では、タイヤ部品は接地するものであることを意図される。別の実施形態では、タイヤ部品は接地しない。他の実施形態では、ゴムコンパウンドは非空気入りタイヤに組み込まれてもよい。
【0056】
[0056]ゴム組成物の混合は、ゴム混合の分野における当業者に知られている方法により達成することができる。例えば、成分は、典型的には、少なくとも2段階、即ち少なくとも1つの非生産的段階、それに続く生産的混合段階で混合される。硫黄加硫剤を含む最終的な硬化剤は、典型的には、従来「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階で混合され、ここでは混合は、典型的には、先行する非生産的混合段階の混合温度よりも低い温度または最終温度で起こる。用語「非生産的」および「生産的」混合段階は、ゴム混合の分野における当業者によく知られている。ゴム組成物は、熱機械的な混合工程に供されてもよい。熱機械的な混合工程は、通常、140℃から190℃の間のゴム温度を生じさせるために適切な時間の、混合機または押出し機における機械的な加工を含む。熱機械的な加工の適切な持続時間は、操作条件、ならびに成分の容積および性質に応じて変わる。例えば、熱機械的な加工は1~20分であってもよい。
【0057】
[0057]混合後、混成されたゴムを、例えば適切なダイから押出してタイヤトレッド(トレッドキャップおよびトレッドベースを含む)を形成することにより製造することができる。タイヤトレッドは、典型的には、当業者によく知られている方法による高温高圧条件下での適切な成形において硬化された、硫黄硬化性タイヤの骨組みおよびそのアセンブリに形成される。
【0058】
[0058]本開示の1つの態様、特に独立したシロキシル架橋反応により達成されたシリカ-シラン-ポリマー結合は、ゴムコンパウンドに用いられるエラストマーおよびカップリング剤のより多くの数の組み合わせを可能にするものである。このことは、無限の数のゴムコンパウンドが形成されることを更に提供する。
【0059】
[0059]開示されたカップリングシステムの別の態様は、以下に議論されるように、スコーチを防ぐために従来のカップリング剤に導入された加工の制限、例えば反応温度条件の除去または低減を可能にすることである。シランカップリング剤において活性硫黄部分を除外し、シランカップリング剤をチオール系架橋試薬とともに用いることにより、硬化したゴムコンパウンドの加工可能性が改善されることが見出される。
【実施例0060】
[0060]この実施例では、開示されるように、硫黄を含まない多重官能性のシランの、ゴムコンパウンドの性能への効果を示す。表1のレシピに従った多工程混合手順でゴム組成物を混合した。標準的な量の硬化剤および硬化技術も用いた。次いで、ゴムコンパウンドを硬化し、特に加工性、剛性、および転がり抵抗等を含む様々な特性について試験した。
【0061】
[0061]コントロールサンプルAは、従来の硫黄含有シランカップリング剤を含んでいた。実験用サンプルBは、サンプルAの従来のオルガノシランを用い、2phrの架橋試薬を添加し、全ての他の成分は同じであった。実験用サンプルCは、従来のオルガノシランカップリング剤を活性硫黄非含有シランカップリング剤で置き換えており、全ての他の成分はコントロールAと同じであった。実験用サンプルDおよびEは、サンプルCの硫黄非含有シランカップリング剤を用い、上昇したレベルの架橋試薬を添加し、全ての他の成分は同じであった。実験用サンプルM(図3に示す)は、サンプルCの硫黄非含有シランカップリング剤を用い、サンプルDの半分に減少したレベルの架橋試薬を用い、全ての他の成分は同じであった。
【0062】
[0062]基本的な配合は以下の表1に示され、エラストマー100重量部当たりの部数(phr)で表される。
【0063】
【表1-1】
【0064】
【表1-2】
【0065】
[0063]図3は、個々のコントロールおよび実験用ゴムサンプルA~Eについての時間に対する相対トルク値のプロットを示し、Mについてのプロットを更に含む。図3から、サンプルA~EおよびMがいつ硬化したか、即ちそれらのスコーチ時間を決定することができる。実験用サンプルB~E、M(それぞれ活性硫黄非含有シランを含む)がコントロールAよりもすぐに硬化すること、およびサンプルB、D、E、M(それぞれ架橋試薬を含む)がサンプルA、C(架橋試薬を含まない)よりもすぐに硬化することが示される。図3は、スコーチは架橋試薬のレベル(例えば倍にするかまたは半分にする)に影響されないことを更に示す。従って、結果は、実験用サンプルD、E、およびMが最も良い加工/硬化条件を示すことを示す。
【0066】
[0064]表1の結果はまた、1%および50%でのRPA G’がコントロールAよりも実質的に高いことを示し、それにより実験用サンプルDおよびEがサンプルのなかでも最も良い剛性を示すことを示す。実際、サンプルEは、コントロールAよりも改善した転がり抵抗を更に実証する。開示された硫黄非含有(すなわち活性硫黄を含有しない)シランカップリング剤および架橋試薬の組み合わせ、ならびにそれを含むゴムコンパウンドが、従来のコンパウンドよりも性能を改善することが結論付けられる。
【0067】
[0065]表1の結果は更に、サンプルCよりもサンプルDおよびEの剛性が高く、転がり抵抗が低いことを実証しており、それにより活性硫黄非含有シランカップリング剤を含むコンパウンドに架橋試薬を添加することは架橋試薬のないコンパウンドよりも性能を改善することを示す。全てのコンパウンド物性を表に示す。
【実施例0068】
[0066]この実施例では、ゴムコンパウンドの性能への開示された非硫黄の多重官能性シランの効果を示す。表2のレシピに従った多工程混合手順でゴム組成物を混合した。標準的な量の硬化剤および硬化技術も用いた。次いで、ゴムコンパウンドを硬化し、特に加工性、剛性、および転がり抵抗等を含む様々な特性について試験した。
【0069】
[0067]コントロールサンプルFは、従来の硫黄含有シランカップリング剤を含んでいた。コントロールサンプルGは、異なる従来の硫黄含有シランカップリング剤を含み、全ての他の成分はコントロールFと同じであった。実験用サンプルHおよびKは、それぞれ、従来のオルガノシランカップリング剤を活性硫黄非含有シランカップリング剤で置き換えており、全ての他の成分はコントロールFと同じであった。実験用サンプルIは、サンプルHの硫黄非含有シランカップリング剤を用い、架橋試薬を添加し、全ての他の成分は同じであった。実験用サンプルJは、サンプルIの硫黄非含有シランカップリング剤を置き換えており、全ての他の成分はサンプルIと同じであった。実験用サンプルLは、サンプルKの硫黄非含有シランカップリング剤を用い、架橋試薬を添加し、全ての他の成分は同じであった。
【0070】
[0068]基本的な配合は以下の表1に示され、エラストマー100重量部当たりの部数(phr)で表される。
【0071】
【表2】
【0072】
[0069]図4は、個々のコントロールおよび実験用ゴムサンプルF~Jについての時間に対する相対トルク値のプロットを示す。図4から、サンプルF~Jがいつ硬化したか、即ちそれらのスコーチ時間を決定することができる。実験用サンプルIおよびJ(それぞれ活性硫黄非含有シランおよび架橋試薬を含む)がコントロールAおよびBよりもすぐに硬化することが示される。図4は、スコーチは用いられる活性硫黄非含有シランの種類に影響されないことを更に示す。従って、結果は、実験用サンプルIおよびJが改善した加工/硬化条件を示すことを示す。
【0073】
[0070]表1の結果はまた、1%および50%でのRPA G’がコントロールGよりもアプローチするおよび/または改善することを示し、それにより実験用サンプルI、JおよびLが実験用サンプルのなかでも最も良い剛性を示すことを示す。実際、サンプルI、JおよびLは、コントロールFおよびGよりも改善した転がり抵抗を更に実証する。開示された硫黄非含有(または活性硫黄非含有)シランカップリング剤および架橋試薬の組み合わせ、ならびにそれを含むゴムコンパウンドが、従来のコンパウンドよりも性能を改善することが結論付けられる。
【0074】
[0071]このことは、(架橋試薬、および活性硫黄部分を含まないカップリング剤から形成された)開示されたゴムコンパウンドの加工性および性能が、(硫黄含有シランカップリング剤から形成された)従来のゴムコンパウンドのトレッドを有する車両用タイヤのものより大きく改善される(そうでないとしたらおおよそ同じである)ことを意味する。
【0075】
[0072]本明細書で提供される本発明の記載に照らして、本発明ではバリエーションが可能である。一定の代表的な実施形態および詳細が対象発明を説明する目的で示されてきたが、対象発明の範囲から逸脱することなくそこでは様々な変化および変更を加えることができることが当業者にとって明らかである。従って、以下の添付の特許請求の範囲により規定されるような完全に意図された本発明の範囲内である記載された特定の実施形態において、変化を加えることができることが理解されるべきである。
【0076】

[発明の態様]
[1]
加硫可能なシリカ充填ゴム組成物に用いるカップリングシステムであって、
随伴している沈降シリカと反応させて疎水性シリカを生成させるための活性硫黄非含有シランカップリング剤、および
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤と随伴しているポリマーとを反応させるための架橋試薬
を含む、カップリングシステム。
[2]
前記架橋試薬がビス-またはマルチ-チオール架橋試薬である、1に記載のカップリングシステム。
[3]
前記架橋試薬がトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)である、1に記載のカップリングシステム。
[4]
前記随伴しているポリマーが官能性でない、1に記載のカップリングシステム。
[5]
前記随伴しているポリマーが官能性である、1に記載のカップリングシステム。
[6]
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤が、前記随伴している沈降シリカに含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基、および前記架橋試薬に含まれるチオール部分と反応性である少なくとも1つの末端基を含む、1に記載のカップリングシステム。
[7]
前記架橋試薬が、前記活性硫黄非含有シランカップリング剤と反応性である少なくとも2つのチオール部分、およびジエン系ポリマーと反応性である少なくとも第2の部分を含む、1に記載のカップリングシステム。
[8]
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤が、一般式A-R-Bを有する二官能性オルガノシランであって、
Aがアルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基を含む群から選択され、
Rが1~10個の炭素原子を有する炭化水素鎖、ヘテロ原子含有(O、N、P)炭化水素、または環状基であり、かつ
Bが前記架橋試薬のチオールに結合可能なビニル基、シアノ基、エポキシ基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、シクロペンタジエニル基またはイソシアニル基である、1に記載のカップリングシステム。
[9]
1に記載の架橋システムを用いて製造されたゴム組成物であって、
少なくともシリカを含む充填剤、および
ジエン系ポリマーを更に含む、ゴム組成物。
[10]
加硫可能なシリカ充填ゴムコンパウンドであって、
ジエン系ポリマー、
少なくとも沈降シリカを含む充填剤、
前記シリカに含まれる水酸基と反応性である少なくとも1つの末端基を含む活性硫黄非含有シランカップリング剤、ならびに
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤に含まれる官能性部分と反応性である少なくとも1つの末端基、および前記ジエン系ポリマーと反応性である少なくとも第2の末端基を含む架橋試薬
を含む、ゴムコンパウンド。
[11]
前記ポリマーが官能性でない、10に記載のゴムコンパウンド。
[12]
前記ポリマーが官能性である、10に記載のゴムコンパウンド。
[13]
前記架橋試薬がチオールである、10に記載のゴムコンパウンド。
[14]
前記架橋試薬がトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)である、10に記載のゴムコンパウンド。
[15]
前記シリカと前記活性硫黄非含有シランカップリング剤との間のシラン化反応、前記架橋試薬と前記活性硫黄非含有シランカップリング剤との間の第1の架橋反応、および前記架橋試薬と前記ポリマーとの間の第2の架橋反応の反応生成物である、10に記載のゴムコンパウンド。
[16]
前記活性硫黄非含有シランカップリング剤が一般式A-R-Bを有し、それぞれのAが前記シリカに結合可能な部分を表し、かつBが前記架橋試薬に結合可能な部分を表し、かつRが任意に炭化水素鎖、ヘテロ原子含有(O、N、P)炭化水素、または環状基であり、前記炭化水素が1個から10個の間の炭素を有する、10に記載のゴムコンパウンド。
[17]
タイヤ部品、ベルト、パイプ、ホース、建具または履き物に組み込まれている、10に記載のゴムコンパウンド。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】