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特開2024-48377ウイング車両用センターシートの防水構造及びその補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048377
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ウイング車両用センターシートの防水構造及びその補修方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/86 20160101AFI20240401BHJP
   B60J 10/34 20160101ALI20240401BHJP
   B60J 7/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B60J10/86
B60J10/34
B60J7/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159080
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2022154066
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】楚良 洋
(72)【発明者】
【氏名】沖吉 勇二
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英作
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 知足
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA11
3D201BA06
3D201CA37
3D201DA17
3D201DA18
3D201DA31
3D201EA01A
(57)【要約】
【課題】より長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持可能)、ウイング車両用センターシートの防水構造(ウイング車両用センターシートの補修方法)を提供する。
【解決手段】ウイング車両100の荷台のセンターフレーム101とウイングルーフ102・103との間の境界部分を覆うように張設されたセンターシート105上を、さらに覆うウイング車両用防水シート2を備えた防水構造1であって、ウイング車両用防水シート2は、センターシート105よりも幅広に形成されており、センターシート105上を跨いだ状態で配設され、その両側縁部がウイングルーフ102・103の上面に固定される外層シート21を含み、外層シート21、センターシート105及びウイングルーフ102・103で囲まれた内部空間6は、硬化後も可撓性を有するシーリング材3でシールされており、シーリング材3はウイングルーフ102・103の上面と接着している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の頂部の幅方向中央で前後方向に延在するセンターフレームと前記センターフレームの両側に回動自在に連結されたウイングルーフとの間の境界部分を覆うように張設されたセンターシート上を、さらに覆うように張設されるウイング車両用防水シートを備えた、ウイング車両用センターシートの防水構造であって、
前記ウイング車両用防水シートは、前記センターシートよりも幅広に形成されており、前記センターシート上を跨いだ状態で配設され、当該ウイング車両用防水シートの両側縁部が前記ウイングルーフの上面に固定される帯状の外層シートを少なくとも含み、
前記外層シート、前記センターシート、及び前記ウイングルーフで囲まれた内部空間は、硬化後も可撓性を有するシーリング材でシールされており、
前記シーリング材は、少なくとも前記ウイングルーフの上面と接着している、ウイング車両用センターシートの防水構造。
【請求項2】
前記シーリング材は、常温硬化性の一成分形シリコーン系シーリング材である、請求項1に記載のウイング車両用センターシートの防水構造。
【請求項3】
前記外層シートは、当該外層シートの両側縁部が前記ウイングルーフの上面に、接着又はコーキングされないで、帯状の押さえ板およびリベットを介して固定されている、請求項1に記載のウイング車両用センターシートの防水構造。
【請求項4】
前記ウイング車両用防水シートは、前記内部空間内で前記センターシート上を覆う帯状の内層シートをさらに含む、請求項1に記載のウイング車両用センターシートの防水構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のウイング車両用センターシートの防水構造に使用されるウイング車両用防水シートであって、
前記外層シートは、加硫ゴム又は合成樹脂からなる防水層に補強材としての基布を埋設もしくは積層している、ウイング車両用防水シート。
【請求項6】
前記外層シートは、前記防水層が加硫ゴムで形成され、ゴム成分にエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)を含む、請求項5に記載のウイング車両用防水シート。
【請求項7】
荷台の頂部の幅方向中央で前後方向に延在するセンターフレームと前記センターフレームの両側に回動自在に連結されたウイングルーフとの間の境界部分を覆うように張設されたセンターシート上を、さらに覆うように張設されるウイング車両用防水シートを使用した、ウイング車両用センターシートの補修方法であって、
前記ウイング車両用防水シートとして、少なくとも、前記センターシートよりも幅広に形成された帯状の外層シートを、前記センターシート上を跨いだ状態で配設し、前記外層シートの両側縁部を前記ウイングルーフの上面に固定する工程と、
前記外層シート、前記センターシート、及び前記ウイングルーフで囲まれた内部空間を、硬化後も可撓性を有するシーリング材でシールし、かつ、前記シーリング材を、少なくとも前記ウイングルーフの上面と接着させる工程と、を含む、ウイング車両用センターシートの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイング車(トラック)の荷台の開閉部分を覆うセンターシートの防水構造及びその補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の図4、5に示されるように、ウイング車(荷台の両側で開閉可能なウイングルーフが備わるトラック)の荷台(収納庫)は、頂部(上面)の幅方向中央で前後方向に延在するセンターフレーム5の両側(左右)に、一対のウイングルーフ7がヒンジ6を介して開閉(回動)可能に連結された構造になっている。
そして、センターフレーム5と左右のウイングルーフ7との連結部分(折曲境界部分)の隙間から庫内へ雨水等が浸入するのを防ぐために、センターフレーム5上を覆い左右のウイングルーフ7に跨った状態で、センターシート8が張設されている。
なお、センターシート8の両側縁部は、通常、ウイングルーフ7の上面に、帯状の押さえ板9およびリベット10を介して固定されており、その上部を覆うようにコーキング材11が塗着されている。
【0003】
上記センターシート8は、可撓性と防水性を備えたシート材で形成されているが、従来から、基布にポリ塩化ビニル等の汎用な樹脂が含浸されたシート材(所謂、ターポリン)が使用されるケースが多く、ウイングルーフ7の開閉による屈曲変形、風雨、紫外線、洗車機のブラシ等による外傷により、5年を経過したあたりから劣化(ヒビ割れや破れ)が進み、防水効果が失われていき、庫内への雨漏りが起きてしまう。
そのため、ウイング車においては、定期的(5年程度毎)に、センターシート8の修理が必要となっている。
【0004】
センターシート8の修理方法としては、交換(既設の劣化したセンターシートを除去して新しいものに張り替える方法)、もしくは補修(既設の劣化したセンターシートを張り替えることなく上貼りする方法)の二通りがあるが、施工容易性(作業時間、費用)の点から、補修(張り替えずに上貼り)する方法、即ち、特許文献1の図2に示されるように、既設のセンターシート8上を覆うように跨いだ状態で、センターシート8よりも幅広に形成された補修用防水シート20を左右のウイングルーフ7に張設する(上貼りする)方法が主流となりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3155089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、補修用防水シート20については、センターシート8と同様に、可撓性と防水性が要求されるが、従来からセンターシート8と同様のシート材(ターポリン)が使用されるケースが多く、およそ5年で劣化(ひび割れや破れ)により防水性がなくなり寿命となること、また、補修用防水シート20の両側縁部に施されたコーキング部23についても、およそ5年で劣化(ひび割れ、肉やせ、剥離)により防水性がなくなり寿命となることから、センターシートを補修により修理する場合も、5年程度毎に再補修(補修用防水シートの張り替え)が必要となっていた。
【0007】
そこで、本発明では、より長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、ウイング車両用センターシートの防水構造(ウイング車両用センターシートの補修方法)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、荷台の頂部の幅方向中央で前後方向に延在するセンターフレームと前記センターフレームの両側に回動自在に連結されたウイングルーフとの間の境界部分を覆うように張設されたセンターシート上を、さらに覆うように張設されるウイング車両用防水シートを備えた、ウイング車両用センターシートの防水構造であって、
前記ウイング車両用防水シートは、前記センターシートよりも幅広に形成されており、前記センターシート上を跨いだ状態で配設され、当該ウイング車両用防水シートの両側縁部が前記ウイングルーフの上面に固定される帯状の外層シートを少なくとも含み、
前記外層シート、前記センターシート、及び前記ウイングルーフで囲まれた内部空間は、硬化後も可撓性を有するシーリング材でシールされており、
前記シーリング材は、少なくとも前記ウイングルーフの上面と接着している。
【0009】
従来のウイング車両用センターシートの防水構造では、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間が、シーリング材(接着剤)でシール(密閉)されていないため、外層シートが劣化(ひび割れや破れが発生)してしまうと、もはや防水効果が維持できなくなり、庫内に雨水等が浸入することになる。
これに対し、上記構成によれば、上記内部空間が、硬化後も可撓性を有するシーリング材でシール(密閉)されているとともに、シーリング材が少なくともウイングルーフの上面(例えば、アルミニウム金属面)と接着している。可撓性を有するシーリング材は、変形容易であり、ウイングルーフの開閉(ルーフの開き角度:70°程度)に伴う屈曲変形に対して自由に変形し、内部にひび割れ等の欠損が生じるおそれがない。そのため、仮に、外層シートが劣化(ひび割れ)したとしても、荷台内への雨漏りを防ぐことができる。したがって、従来よりも長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、ウイング車両用センターシートの防水構造とすることができる。
【0010】
また、本発明は、上記ウイング車両用センターシートの防水構造において、シーリング材が、常温硬化性の一成分形シリコーン系シーリング材であってもよい。
【0011】
上記構成によれば、接着性、耐久性、耐寒性、施工性(作業性)、取扱性(環境・衛生・安全面)等に優れたウイング車両用センターシートの防水構造にすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記ウイング車両用センターシートの防水構造において、前記外層シートが、当該外層シートの両側縁部が前記ウイングルーフの上面に、接着又はコーキングされないで、帯状の押さえ板およびリベットを介して固定されていてもよい。
【0013】
従来のように、表面(下面)に接着層(粘着層)を有する、外層シートの両側縁部をウイングルーフの上面に接着して固定する態様の場合、固定作業中に(特に強風下)エア噛みやシワが発生し易く、その修正作業も容易ではなく、施工時の作業性を損なうおそれがある。
また、外層シートの両側縁部の表面(下面)に接着層(粘着層)を有していないが、両側縁部にコーキングを施す場合は、予め両側縁部を帯状の押さえ板およびリベットを介してウイングルーフの上面に固定しておく必要がある。
これに対し、上記構成では、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間が、シーリング材でシールされるとともに、シーリング材が少なくともウイングルーフの上面(例えば、アルミニウム金属面)と接着している構造であるため、仮に、外層シートの両側縁部がウイングルーフから部分的に剥離したとしても防水効果は維持される。そのため、従来のように、わざわざ外層シートの両側縁部に接着又はコーキングを施す必要がなく、防水性確保のために施工性(作業性)が低下することがなくなる。
【0014】
また、本発明は、上記ウイング車両用センターシートの防水構造において、前記ウイング車両用防水シートが、前記内部空間内で前記センターシート上を覆う帯状の内層シートをさらに含んでいてもよい。
【0015】
上記構成によれば、ウイング車両用センターシートの防水構造の防水効果に対する信頼性をより高めることができる。
【0016】
また、本発明は、上記ウイング車両用センターシートの防水構造に使用されるウイング車両用防水シートであって、
前記外層シートが、加硫ゴム又は合成樹脂からなる防水層に補強材としての基布を埋設もしくは積層していてもよい。
【0017】
従来のように、基布入りであっても比較的厚みが薄く(厚手とされるものでも、総厚0.5mm前後)、基布にポリ塩化ビニル等の汎用な樹脂が含浸された防水シート(ターポリン)を外層シートに用いる場合と比較し、加硫ゴム又は合成樹脂からなる防水層に補強材としての基布を埋設もしくは積層した防水シートを外層シートに用いているため、防水層の厚みを充分に分厚く設けることができる分、シート材の劣化を抑制して、防水効果をより長期間維持することができる。
また、走行中の木の枝との接触、洗車機のブラシ等により、シート面に小傷が生じても、防水層が比較的分厚い分、基布の切断(ひいては防水シートの破れ)を抑制できることで、ウイング車両用防水シートの耐外傷性(外傷等への抵抗性)がより向上する。また、仮に、外的な衝撃を受け、基布のみが部分的に切断(ショック切れ)したとしても、基布よりは伸張率の大きい防水層が変形容易で欠損しにくいため、防水効果をより長期間維持することができる。
【0018】
また、本発明は、上記ウイング車両用センターシートにおいて、
前記外層シートが、前記防水層が加硫ゴムで形成され、ゴム成分にエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)を含んでいてもよい。
【0019】
上記構成によれば、防水層がポリ塩化ビニル等の汎用な合成樹脂で形成されている場合と比較し、耐候性に優れ、風雨、紫外線等による劣化(ひび割れ)が起こりにくいため、防水効果をさらに長期間維持することができる。
【0020】
また、本発明は、荷台の頂部の幅方向中央で前後方向に延在するセンターフレームと前記センターフレームの両側に回動自在に連結されたウイングルーフとの間の境界部分を覆うように張設されたセンターシート上を、さらに覆うように張設されるウイング車両用防水シートを使用した、ウイング車両用センターシートの補修方法であって、
前記ウイング車両用防水シートとして、少なくとも、前記センターシートよりも幅広に形成された帯状の外層シートを、前記センターシート上を跨いだ状態で配設し、前記外層シートの両側縁部を前記ウイングルーフの上面に固定する工程と、
前記外層シート、前記センターシート、及び前記ウイングルーフで囲まれた内部空間を、硬化後も可撓性を有するシーリング材でシールし、かつ、前記シーリング材を、少なくとも前記ウイングルーフの上面と接着させる工程と、を含んでいる。
【0021】
従来のウイング車両用センターシートの補修方法では、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間が、シーリング材(接着剤)でシール(密閉)されていないため、外層シートが劣化(ひび割れや破れが発生)してしまうと、もはや防水効果が維持できなくなり、庫内に雨水等が浸入することになる。
これに対し、本方法では、上記内部空間を、硬化後も可撓性を有するシーリング材でシール(密閉)するとともに、シーリング材を少なくともウイングルーフの上面(例えば、アルミニウム金属面)と接着させている。可撓性を有するシーリング材は、変形容易であり、ウイングルーフの開閉(ルーフの開き角度:70°程度)に伴う屈曲変形に対して自由に変形し、内部にひび割れ等の欠損が生じるおそれがない。そのため、仮に、外層シートが劣化(ひび割れ)したとしても、荷台内への雨漏りを防ぐことができる。したがって、従来よりも長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、ウイング車両用センターシートに補修することができる。
【発明の効果】
【0022】
より長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、ウイング車両用センターシートの防水構造(ウイング車両用センターシートの補修方法)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ウイング車両の説明図である。
図2】実施形態1に係るウイング車両の防水構造の幅方向の断面図である。
図3】実施形態2に係るウイング車両の防水構造の幅方向の断面図である。
図4】ウイング車両の荷台前後端部における外層シートの防水構造の説明図である。
図5】ウイング車両の荷台前後端部における外層シートの防水構造の説明図である。
図6】外層シートの積層構造の一例の説明図である。
図7】外層シートの積層構造の一例の説明図である。
図8】ウイング車両の荷台前後端部における外層シートの変形例に係る防水構造の説明図である。
図9図8の変形例に係る防水構造におけるA部のB-B断面図である。
図10】実施例に係る台上屈曲耐久性試験における試験パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
ウイング車両100(トラック)の荷台の開閉部分を覆う、防水構造1及びその補修方法について説明する。
【0025】
(ウイング車両100)
図1に示すように、本実施形態の防水構造1による補修を行う前のウイング車両100は、荷台の頂部(上面)の幅方向中央で前後方向に延在するセンターフレーム101(図2参照)の両側(左右)に、一対のアルミニウム金属製のウイングルーフ102・103がヒンジ104(図2参照)を介して開閉可能(回動自在)に連結されている。
【0026】
そして、センターフレーム101とウイングルーフ102との連結部分の隙間、及び、センターフレーム101とウイングルーフ103との連結部分の隙間から、荷台の庫内へ雨水等が浸入するのを防ぐために、センターフレーム101上を覆い、その両側のウイングルーフ102・103に跨った状態で、センターシート105が既設されている。
センターシート105の両側縁部は、ウイングルーフ102・103の上面に、板状の押さえ板106およびリベット107を介して固定されており、その上部を覆うようにコーキング材108が塗装されている。
【0027】
(防水構造1)
図2に示すように、本実施形態の防水構造1は、ウイング車両100の既設のセンターシート105上に更にウイング車両用防水シート2を張設する態様により構成される。
具体的には、ウイング車両用防水シート2は、センターシート105上を跨いだ状態で配設され、ウイング車両用防水シート2の両側縁部がウイングルーフ102・103の上面に固定される外層シート21を少くなくとも含み、外層シート21、センターシート105、及びウイングルーフ102・103で囲まれた内部空間6は、硬化後も可撓性を有するシーリング材3でシールされている。
【0028】
(ウイング車両用防水シート2)
ウイング車両用防水シート2は、帯状の外層シート21を主な構成要素としている。外層シート21は、センターシート105よりも幅広(幅方向)に形成されており、センターシート105上を跨いだ状態で配設される。外層シート21の両側縁部(幅方向)は、ウイングルーフ102・103の上面に、帯状の押さえ板4で押圧されつつ、リベット5を介して固定されている。
【0029】
ウイング車両用防水シート2は、防水性、可撓性、耐候性、耐外傷性、取扱性等を満足するように構成される。ウイング車両用防水シート2を構成する、外層シート21は、例えば、図6に示すように、加硫ゴム又は合成樹脂からなる、防水層241と防水層242との間に補強材としての基布243を埋設もしくは積層した防水シートであってもよいし、図7に示すような、加硫ゴム又は合成樹脂からなる、防水層241と基布243とを積層した防水シートであってもよい。
【0030】
外層シート21の厚み(総厚)は、例えば0.7~2.5mm、好ましくは0.8~2mm、より好ましくは0.9~1.5mm、最も好ましくは1.0~1.2mm(特には1.1mm)であり、ターポリン(厚手とされるものでも、総厚0.5mm前後)と比較し、顕著に分厚い。厚みが0.7mmを下回ると防水性、耐外傷性が悪化するおそれがある。一方、厚みが2.5mmを上回ると、可撓性を確保し難くなる。特に、シートを連結して外層シート21を構成した場合は、その接合部において段差が大きくなってしまい、可撓性や外観を損ねることになるので好ましくない。
【0031】
外層シート21は、既設のセンターシート105(例えば幅350~400mm程度)よりも幅広(例えば幅600mm程度)に形成される。例えば、外層シート21の前後方向の長さは、例えば4TON車で7m程度、10TON車で11m程度である。
【0032】
外層シート21の防水層241・242を構成する加硫ゴム又は合成樹脂としては、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、IIR(ブチルゴム)、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)等の加硫ゴム、あるいは、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂などが挙げられる。防水層が加硫ゴムで形成される場合、これらのゴム成分は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。これらのゴム成分のうち、耐候性に優れ、風雨、紫外線等による劣化(ひび割れ)が起こりにくく、防水効果をさらに長期間維持することができる点から、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体)単独、もしくはEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体)とIIR(ブチルゴム)とのブレンド物が好ましい。伸張性にも優れる点からは、EPDN(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体)とIIR(ブチルゴム)とのブレンド物が好ましい。
【0033】
外層シート21の補強材である基布243(繊維構造体)としては、織布、編布、不織布、スダレ織物、ネット(網状構造体またはメッシュ)など、種々の公知の構成から選択できる。これらのうち、機械的特性および経済性に優れる点から、平織、綾織、朱子織などの織布が好ましい。
【0034】
基布243(繊維構造体)を構成する繊維としては、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリエステル系繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維など)、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ビニロン繊維など)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;セルロース系繊維(綿繊維などのセルロース繊維、セルロース誘導体の繊維など)、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維などが挙げられる。これらの繊維は、単独で使用した単独糸であってもよく、二種以上を組み合わせた複合糸(混紡糸など)であってもよい。
【0035】
これらの繊維のうち、機械的特性および経済性に優れる点から、ポリエステル系繊維が好ましい。ポリエステル系繊維は、ポリアルキレンアリレート系繊維であってもよい。ポリアルキレンアリレート系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2-4アルキレン-C8-14アリレート系繊維などが挙げられる。これらのポリエステル系繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0036】
また、ウイング車両用防水シート2が伸張性に優れるように基布243を伸張性に優れる構成としてもよい。例えば、伸張性に優れる熱可塑性繊維フィラメントを製織した織物やウレタン弾性糸、ウーリ加工糸を用いた織物、あるいは、基布がポリエステル系の低配向糸またはポリアミド系の未延伸糸を芯糸とし、この芯糸に被覆糸を巻き付けて得られた糸をそれぞれ経糸と緯糸に用いた織物であってもよい(特許第2854771号の図3、4参照)。基布243をこれらの構成とした場合、得られたウイング車両用防水シート2は伸張性に富むため、ウイングルーフ102・103が開閉する際に、内部のシーリング材3がより自由に変形することができる分、シーリング材3等の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0037】
基布243の糸密度(経糸、緯糸の配列密度)は、ウイング車両用防水シート2全体のしなやかさ(可撓性)と補強性(耐外傷性)を両立する観点から適切に設けられる。
基布243の配設位置は、ウイング車両用防水シート2を補強するという観点からは、特に限定されるものではなく、上下2層の防水層241・242の間に埋設したもの(図6)、1層の防水層内に埋設したもの、1層の防水層241の片側に積層したもの(図7)、のいずれの態様でも構わない。これらのうち、耐外傷性、取扱性(耐擦過性)、生産性に優れる点から、基布243は上下2層の防水層241・242の間に埋設するのが好ましい。
【0038】
外層シート21は、単層であってもよく、可撓性等を有する範囲内で多層(例えば2~3層)であってもよいが、施工性、経済性などの点から、単層(1プライ)が好ましい。
【0039】
従来のように、基布入りであっても比較的厚みが薄く(厚手とされるものでも、総厚0.5mm前後)、基布にポリ塩化ビニル等の汎用な樹脂が含浸された防水シート(ターポリン)を外層シートに用いる場合と比較し、本実施形態では、加硫ゴム又は合成樹脂からなる、防水層241と防水層242との間に補強材としての基布243を埋設もしくは積層した外層シート21、或いは、防水層241と基布243とを積層した外層シート21を用いているため、防水層241・242の厚みを充分に分厚く設けることができる分、シート材の劣化を抑制して、防水効果をより長期間維持することができる。
また、走行中の木の枝との接触、洗車機のブラシ等により、シート面に小傷が生じても、防水層241が比較的分厚い分、基布243の切断(ひいては外層シート21の破れ)を抑制できることで、ウイング車両用防水シート2の耐外傷性(外傷等への抵抗性)がより向上する。また、仮に、外的な衝撃を受け、基布243のみが部分的に切断(ショック切れ)したとしても、基布243よりは伸張率の大きい防水層241・242が変形容易で欠損しにくいため、防水効果をより長期間維持することができる。
【0040】
(シーリング材3)
図2に示すように、外層シート21、センターシート105、及び、ウイングルーフ102・103で囲まれた内部空間6は、硬化後も可撓性を有するシーリング材3(接着剤)でシールされており、このシーリング材3は、ウイングルーフ102・103の上面(アルミニウム金属面)に接着している。これにより、外層シート21の両側縁部に接着又はコーキングをわざわざ施さなくてもよく、仮に、外層シート21の両側縁部がウイングルーフ102・103から部分的に剥離したとしても、内部空間6内への雨水等の浸入を確実に防ぐことができる。
【0041】
シーリング材3としては、例えば、溶剤系接着剤、水系接着剤、化学反応によって硬化させる無溶剤系のシーリング材(接着剤)などが挙げられる。これらのうち、取扱性(環境・衛生・安全面)、施工性(作業性)に優れる点から、化学反応によって硬化させる無溶剤系のシーリング材(接着剤)を用いることが好ましい。化学反応によって硬化させる無溶剤系のシーリング材(接着剤)としては、硬化後も可撓性を有する点から、ポリウレタン系シーリング材、シリコーン系シーリング材などを用いることが好ましく、ゴム、プラスチック、金属等、異種材料間の接着力に優れる点から、シリコーン系シーリング材を用いることが特に好ましい。シリコーン系シーリング材としては、接着性、耐久性、耐寒性、施工性(整形作業性)に優れる点から、常温硬化性の一成分形シリコーン系シーリング材を用いることが特に好ましい。
【0042】
また、シーリング材3とウイングルーフ102・103との接着性を高めるために、シーリング材3で被着されるウイングルーフ102・103の被着面(例えば、アルミニウム金属面)に対し、予めプライマーにて前処理を施しておいてもよい。
【0043】
なお、センターシート105に対する、防水構造1としては、シーリング材3とウイングルーフ102・103の上面とが接着されている限りにおいて、外層シート21とシーリング材3、既設のセンターシート105(及び両側縁部のコーキング材108)とシーリング材3とは、必ずしも接着させる必要はなく、密着していればよい。
【0044】
また、本実施形態に対応するシーリング材3は、硬化前(施工時)はペースト状(半固形状)であり、施工時の整形が容易で、施工後も軟質なゴム状で可撓性に優れるシーリング材であり、硬化後(施行後)のシーリング材の硬さは、JIS K6253(2012)に規定の硬さ試験に準拠する方法にて、タイプAデュロメータを用いて測定された硬さが例えば、10~40、好ましくは15~35であってもよい。シーリング材3の硬さ(硬化後)が、低すぎると硬化前(施工時)のシーリング材の粘度が低くなりすぎ施工性(整形作業性)を損なうおそれがあり、高すぎると可撓性が確保できず内部にひび割れ等の欠損が生じ防水性が低下するおそれがある。
【0045】
上記のように、シーリング材3が、内部空間6に、劣化していない状態で隙間なく介在していることにより、外傷等により外層シート21が損傷したとしても、荷台の庫内への雨水等の浸入を防ぐことができる。また、外層シート21とシーリング材3とは、強固に接着されているわけではないことから、外層シート21をシーリング材3との接触界面で、シーリング材3を材料破壊することなく比較的容易に引き剥がすことができ、外層シート21のみを新品のものに交換する対応も可能としている。
【0046】
なお、「シーリング材」の用語は、『隙間充填』を意図し便宜的に用いるもので、一般に、接着剤、塗料、成型材料、被覆材などと称せられるものを排除するものではない。
【0047】
従来のウイング車両用センターシートの防水構造では、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間が、シーリング材(接着剤)でシール(密閉)されていないため、外層シートが劣化(ひび割れや破れが発生)してしまうと、もはや防水効果が維持できなくなり、庫内に雨水等が浸入することになる。
これに対し、本実施形態では、内部空間6が、硬化後も可撓性を有するシーリング材3でシール(密閉)されているとともに、シーリング材3が少なくともウイングルーフ102・103の上面と接着している。可撓性を有するシーリング材3は、変形容易であり、ウイングルーフ102・103の開閉(ルーフの開き角度:70°程度)に伴う屈曲変形に対して自由に変形し、内部にひび割れ等の欠損が生じるおそれがない。そのため、仮に、外層シート21が劣化(ひび割れ)したとしても、荷台内への雨漏りを防ぐことができる。したがって、従来よりも長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、防水構造1とすることができる。
【0048】
(押さえ板4及びリベット5)
本実施形態の押さえ板4は、幅方向に沿った断面L字状のアルミニウム金属製で、片フランジ状の押さえ部41が幅方向中央側に延びるように形成されている。また、押さえ板4は、ウイングルーフ102・103の上面に設置した状態で、押さえ部41とウイングルーフ102・103との隙間の大きさ(板厚方向の寸法)が外層シート21の厚みよりも若干程度小さくなるように形成されている。これにより、外層シート21の両側縁部は、左右とも、押さえ部41の下面とウイングルーフ102・103の上面との間でシート厚み方向に圧縮されつつ挟まれる態様にて、リベット5を介してウイングルーフ102・103の上面に確実に固定されるようになっている。このため、外層シート21が部分的に剥離するのを防止することができる。
【0049】
本実施形態では、前述したように、外層シート21の両側縁部は、ウイングルーフ102・103の上面に、接着又はコーキングされないで、帯状の押さえ板4およびリベット5を介して固定されている。
従来のように、表面(下面)に接着層(粘着層)を有する、外層シートの両側縁部をウイングルーフの上面に接着して固定する態様の場合、固定作業中に(特に強風下)エア噛みやシワが発生し易く、その修正作業も容易ではなく、施工時の作業性を損なうおそれがある。
また、外層シートの両側縁部の表面(下面)に接着層(粘着層)を有していないが、両側縁部にコーキングを施す場合は、予め両側縁部を帯状の押さえ板およびリベットを介してウイングルーフの上面に固定しておく必要がある。
これに対し、本実施形態では、外層シート21、センターシート105、及びウイングルーフ102・103で囲まれた内部空間6が、シーリング材3でシールされるとともに、シーリング材3が少なくともウイングルーフ102・103の上面(アルミニウム金属面)と接着している構造であるため、仮に、外層シート21の両側縁部がウイングルーフ102・103から部分的に剥離したとしても防水効果は維持される。そのため、従来のように、わざわざ外層シート21の両側縁部に接着又はコーキングを施す必要がなく、防水性確保のために施工性(作業性)が低下することがなくなる。
【0050】
(荷台前後端部における外層シート21の防水構造1)
荷台の前後端部における外層シート21の防水構造1としては、例えば、図4及び図5に示すように、荷台の前端部においては、予め既設のセンターシート105の前後方向端部(前端部)を除去した状態で、外層シート21の前後方向端部(前端部)は、荷台の前壁上部およびウイングルーフ102・103の前端面上部に被さるように延出折曲され(図4(a))、この延出折曲部分211の略中央2箇所に所定間隔を設けて切れ込み212・213が形成されることで、この延出折曲部分211が、左切り込み片211A、中央切り込み片211B、右切り込み片211Cからなる3つの区画部分に分けられている(図4(b))。
【0051】
延出折曲部分211の中央切り込み片211Bは、荷台前壁の幅方向中央上部にリベット214・215を介して固定され(図5(c))、延出折曲部分211の左切り込み片211Aがウイングルーフ102の前端面上部に平板状の当て板216およびリベット217・218を介して固定され、延出折曲部分211の右切り込み片211Cがウイングルーフ103の前端面上部に平板状の当て板219およびリベット220・221を介して固定されている(図5(d))。上記当て板216・219は、左右で一対であり、ウイングルーフ102・103の開閉時に互いに接触しない程度に、ウイングルーフ102・103が閉じられた状態で略突き合わせ状態で設けられている。つまり、ウイングルーフ102・103が閉じられた状態で、荷台の前後方向に見て、当て板216・219のそれぞれの、荷台の幅方向中心寄りの部分216A・219Aと、外層シート21の延出折曲部分211の中央切り込み片211Bとが確実に重なり合うことで、走行時等において、荷台の前端部側から荷台の庫内に雨水等が浸入するのをより確実に防止できるようになっている。
なお、荷台の後端部における外層シート21の防水構造1も、荷台の前端部と略同様である。
【0052】
(荷台前後端部における外層シート21の防水構造1の変形例に係る防水構造1´)
荷台前後端部における外層シート21の防水構造1の変形例に係る防水構造1´としては、例えば、図4及び図5に示す荷台の前端部においては、既設のセンターシート105の前後方向端部(前端部)をそのまま除去せずに、外層シート21の前後方向端部(前端部)は、荷台の前壁上部およびウイングルーフ102・103の前端面上部に被さるように延出折曲され(図4(a))、この延出折曲部分211の略中央2箇所に所定間隔を設けて切れ込み212・213が形成されることで、この延出折曲部分211が、左切り込み片211A、中央切り込み片211B、右切り込み片211Cからなる3つの区画部分に分けられている(図4(b))。また、この防水構造1´では、中央切り込み片211Bの先端部には、図8に示すように、防錆加工を施した断面凹状のツメ金具231が、リベット232・233を介して固定されている。
【0053】
延出折曲部分211の中央切り込み片211Bは、その先端部に取り付けられたツメ金具231が、予め平板状の当て板241およびリベット242・243を介して荷台前壁の幅方向中央上部に固定されている既設のセンターシート105(前端部)と、荷台前壁(幅方向中央上部)との間の隙間に差し込まれる(引っ掛けられる)態様で、荷台前壁の幅方向中央上部に固定されている(図9)。つまり、防水構造1のように、わざわざ延出折曲部分211の中央切り込み片211Bを荷台前壁の幅方向中央上部にリベット214・215を介して固定しなくても、ツメ金具231を既設のセンターシート105(前端部)と荷台前壁(幅方向中央上部)との間に差し込むように引っ掛けることで荷台前壁の幅方向中央上部に固定されるようになっている。このようにすることで、帯状の外層シート21を荷台前壁から荷台頂部、荷台後壁へと順々に既設のセンターシート105上をたるみなく跨いだ状態に配設し易くすることができる。
【0054】
延出折曲部分211の左切り込み片211A・延出折曲部分211の右切り込み片211Cは、荷台前後端部における外層シート21の防水構造1と同様に、それぞれウイングルーフ102・103の前端面上部に平板状の押さえ板およびリベットを介して固定されてもよく、把持力の強いクリップ金具を介して挟みこむ態様でウイングルーフ102・103の前端面上部に固定されてもよい(不図示)。
なお、荷台の後端部における外層シート21の防水構造1´も、荷台の前端部と略同様である。
【0055】
(実施形態2)
図3に示すように、実施形態2の防水構造201では、ウイング車両用防水シート2は、外層シート21のみならず、外層シート21の下側(内部空間6内)でセンターシート105上を覆う帯状の内層シート22をさらに備えた構成としている。なお、他の構成は実施形態1と同様である。
【0056】
内層シート22としては、外層シート21と同様の基布243入り防水シートでもよいが、耐候性や耐外傷性は特に必要としない観点から、加硫ゴム又は合成樹脂からなる防水層241のみのシート材でもよく、既設のセンターシート105と同様にターポリンでもよい。これらのうち、内層シート22と外層シート21との取り違いの防止の観点からは、外層シート21と共通の、基布243入り防水シートを使用するのが好ましく、経済性に優れる点からは、防水層241のみ(基布なし)のシート材、もしくはターポリンを使用するのが好ましい。
【0057】
内層シート22は、可撓性確保の観点から、両側縁部を、センターシート105の両側縁部に施されているコーキング材108または押さえ板106の上面に接触させ、内層シート22とセンターシート105とのシート同士(互いの変形部分)は直接接触させない態様にて、硬化後も可撓性を有するシーリング材3(接着剤)を介して、外層シート21とセンターシート105との間に張設されるのが好ましい。この場合、防水構造201は、外層シート21と内層シート22との間がシーリング材3でシールされており、内層シート22とセンターシート105との間もシーリング材3でシールされた構造をしている。
【0058】
また、防水構造201でも、シーリング材3とウイングルーフ102・103の上面とが接着されている限りにおいて、外層シート21とシーリング材3、内層シート22とシーリング材3、既設のセンターシート105(及び両側縁部のコーキング材108)とシーリング材3とは、必ずしも接着させる必要はなく、密着していればよい。
【0059】
また、内層シート22は、構造上(図3参照)、幅方向がセンターシート105よりも若干短く形成されていてもよい。
【0060】
上記実施形態2のように、ウイング車両用防水シート2は、内部空間6内でセンターシート105上を覆う帯状の内層シート22をさらに含む構成にすることにより、防水構造201の防水効果に対する信頼性をより高めることができる。
【0061】
(ウイング車両用防水シート2の取付手順(ウイング車両用防水シートの補修方法))
ウイング車両用防水シート2の取付手順(センターシート105の補修手順)を、内層シート22を有する実施形態2の防水構造201を例に、以下に示す。
【0062】
まず、外層シート21、センターシート105、及び、ウイングルーフ102・103で囲まれた内部空間6をシールするためのシーリング材3(ペースト状)を、センターシート105の上部(両側縁部間の窪み部分)の全体に、センターシート105の両側縁部に施されているコーキング材108または押さえ板106の上面と面一の高さまで隙間なく塗り拡げる。このとき、センターシート105の損傷の程度が比較的大きい箇所(穴あき、破れ部分)には、予めパッチ(ビニルテープ)貼りを施し、損傷部分を塞いでおく。
【0063】
次に、センターシート105の上部に塗り拡げられたシーリング材3の上に、内層シート22を張設する。
【0064】
さらに、内部空間6をシールするためのシーリング材3(ペースト状)を、内層シート22の上部、センターシート105の両側縁部(コーキング材108または押さえ板106)の上部、ならびに、ウイングルーフ102・103の上面の、センターシート105の両側縁部と外層シート21の両側縁部との間の部分の全体に、部分的なハゲや窪みが生じない程度の厚さ(外層シート21を張設した際にその下側の内部空間6が隙間なくシーリング材3でシールされる程度の厚さ:目安2~3mm程度)にて塗り拡げる。このとき、シーリング材3で被着されるウイングルーフ102・103(アルミニウム金属)の上面部分は、予め所定のプライマーにて前処理を施しておくのが好ましい。
【0065】
次に、内層シート22の上部に塗り拡げられたシーリング材3の上に、外層シート21を張設し、その両側縁部を押さえ板4およびリベット5を介してウイングルーフ102・103の上面に固定する。このとき、外層シート21とシーリング材3との間にエア噛みが生じ無い様、外層シート21の幅方向中心部分にシワが生じない程度に、外層シート21の幅方向中心部分を軽くシーリング材3の層に押し当てながら前後方向に張設する。また、外層シート21全体にシワが生じない程度に、外層シート21を幅方向中心部分から両側縁部に向かって軽くシーリング材3の層に押し当てながら幅方向に張設するのが好ましい。
【0066】
最後に、外層シート21の前後端部の防水処理(荷台前後端部における防水処理)を前述(「荷台前後端部における外層シート21の防水構造1」の項目参照)の態様にて行う。
【0067】
なお、実施形態1の内層シート22を有しない防水構造1における、ウイング車両用防水シート2の取付手順は、上記実施形態2のウイング車両用防水シート2の取付手順において、センターシート105と内層シート22との間のシーリング材3を塗る工程、及び、内層シート22を張設する工程を省いた工程によって実施される。
【0068】
また、上記実施形態1、2では、既設のセンターシート105が劣化した場合に、センターシート105を張り替えることなく、既設のセンターシート105の上からウイング車両用防水シート2を張設する場合を想定しているが、ウイング車両用防水シート2の使用は、上記場合に限定されるものではない。例えば、新品のセンターシート105の劣化を防止する目的で、新品の荷台のセンターシート105の上からウイング車両用防水シート2を張設する態様で使用することもできる。
【0069】
上記補修方法では、ウイング車両用防水シート2として、センターシート105よりも幅広に形成された帯状の外層シート21を、センターシート105上を跨いだ状態で配設し、外層シート21の両側縁部をウイングルーフ102・103の上面に固定する工程、及び、内部空間6を、シーリング材3でシールし、かつ、シーリング材3をウイングルーフ102・103の上面と接着させる工程を実施している。
従来のウイング車両用センターシートの補修方法では、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間が、シーリング材(接着剤)でシール(密閉)されていないため、外層シートが劣化(ひび割れや破れが発生)してしまうと、もはや防水効果が維持できなくなり、庫内に雨水等が浸入することになる。
これに対し、上記補修方法では、内部空間6を、硬化後も可撓性を有するシーリング材3でシール(密閉)するとともに、シーリング材3を少なくともウイングルーフ102・103の上面(アルミニウム金属面)と接着させている。可撓性を有するシーリング材3は、変形容易であり、ウイングルーフ102・103の開閉(ルーフの開き角度:70°程度)に伴う屈曲変形に対して自由に変形し、内部にひび割れ等の欠損が生じるおそれがない。そのため、仮に、外層シート21が劣化(ひび割れ)したとしても、荷台内への雨漏りを防ぐことができる。したがって、従来よりも長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、防水構造1又は防水構造201に補修することができる。
【実施例0070】
本発明においては、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間をシール(密閉)する、ウイング車両用センターシートの防水構造(以下、防水構造)が、ウイングルーフの開閉に伴う屈曲変形を受けた場合でも、可撓性と防水性とを併せもつ必要がある。
そこで、本実施例では、実施例1~10および比較例1~2に係る防水構造(以下、各供試体)を作製し、落下式衝撃試験(耐外傷性の評価)、サンシャイン耐候試験(耐候性の評価)、台上屈曲耐久試験(屈曲耐久性の評価)、および高圧水噴射試験(防水性の評価)に供して各試験を行い、比較検証を行った。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した各構成材(防水シート、シーリング材、等)の詳細、およびその作製方法、各物性の測定方法または評価方法を以下に示す。
【0071】
[使用材料]
[防水シート]
(外層シート)
各供試体の防水シートとして使用される外層シートとして、表1中に記載のW1~W5の外層シートを作製した。
【0072】
【表1】
【0073】
W1の外層シートとしては、三ツ星ベルト(株)製の繊維補強型加硫ゴム(EPDM)系防水シート(商品名:「ミズシート(登録商標)KS」)を用いた。
W1の外層シートは、以下の手順で作製された。
先ず、表2に示す組成C1のゴム組成物(ゴム成分にEPDMを使用)をバンバリーミキサーで混練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの圧延ゴムシートとして、外層シートの防水層用の未加硫ゴムシートを2枚(2巻)作製した。
この2枚の未加硫ゴムシート間に、しなやかさ(可撓性)と補強性(耐外傷性)を両立し易くする観点から、総繊度が250dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)の経糸(配列密度:30本/5cm)と、総繊度が550dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)の緯糸(配列密度:15本/5cm)で構成された平織物(布帛A)の基布(厚み0.3mm)を介在させながら一対のロールに通して各部材を圧接し、厚さ1.1mmの外層シート前駆体(積層体)を成形した。
続いて、この外層シート前駆体を搬送体で挟みつつ1.5m/分程度の速度で移動させながら、内部空間が温度170~180℃、圧力0.2MPaに調節された細長い連続加硫装置内へ導入した。外層シート前駆体がこの加硫装置内を移動することで、加硫した防水層(加硫ゴム層)に基布が埋設された外層シート(総厚1.1mm)を得た。
【0074】
W2の外層シートは、外層シート前駆体の作製において、1枚の防水層用の未加硫ゴムシート(組成C1)と平織物(布帛A)の基布(厚み0.3mm)とを重ね合わせて一対のロールに通して各部材を圧接し、厚さ0.7mmの外層シート前駆体(積層体)を成形したことを除いては、W1の外層シートの作製方法と同様にして、加硫した防水層(加硫ゴム層)と基布とを積層した外層シート(総厚0.7mm)を作製した。
【0075】
W3の外層シートは、以下の手順で作製した。上記布帛Aの基布(厚み0.3mm)の両面に、ポリ塩化ビニル樹脂のペースト(商品名:ペーストPVC、(株)カネカ製)を、ナイフコータで、0.2mm厚でコーティングすることで、防水層(樹脂層)に基布が埋設された外層シート(総厚0.7mm)を得た。
【0076】
W4の外層シートは、三ツ星ベルト(株)製の加硫ゴム(EPDM)系防水シート(商品名:「ネオルーフィングE」)を用いた。W4の外層シートは、外層シート前駆体として、1.1mm厚で単層の圧延ゴムシートのみ(組成C1)を成形したことを除いては、W1の外層シートの作製方法と同様にして、加硫した防水層(加硫ゴム層)のみの外層シート(厚み1.1mm)を作製した。
【0077】
W5の外層シートは、以下の手順で作製した。
先ず、ポリエステル繊維糸(750デニールのポリエステルのモノフィラメント)を経糸60本/5cm×緯糸60本/5cmの配列密度で織った平織物(布帛B)のターポリン用基布(厚み0.3mm)を用意した。この基布に、ポリ塩化ビニル樹脂のペースト(商品名:ペーストPVC、(株)カネカ製)を含浸させることで、ターポリンからなる外層シート(厚み0.4mm)を作製した。
【0078】
【表2】
【0079】
(ゴム組成物の原材料)
EPDM:三井化学(株)製「EPT K-9720」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製「酸化亜鉛3種」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製「スーパー#1500」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
プロセスオイル:出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW-90」
加硫促進剤TMTD:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
加硫促進剤MBT:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーM」
【0080】
(内層シート)
各供試体の防水シートとして使用される内層シートとして、表1中に記載のW4~W5の内層シートを作製した。W4~W5の内層シートは、その防水構造上、幅方向の寸法がW4~W5の外層シートよりも短いことを除いては、構成および作製方法は上述のW4~W5の外層シートと同じである。
【0081】
[シーリング材]
各供試体の前記内部空間をシールするシーリング材(接着剤)として、表3中に記載のS1~S5を使用した。各シーリング材は、いずれも市販品(商品名は表3中に記載)を流用した。そして、各種シーリング材の物性(硬さ、引張接着強さ)を後述する各物性試験(硬さ試験、引張接着強さ試験)にて測定した結果も表3中に示す。
また、シーリング材とウイングルーフの上面との接着性を高めるために、シーリング材で被着されるウイングルーフの上面(アルミニウム金属面)に対して予め下地処理を施すために使用したプライマーについても、その商品名(いずれも市販品を流用)を表3中に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
(シーリング材の物性試験)
S1~S5の各シーリング材について、雰囲気温度23℃、相対湿度65%下で、各物性試験(後述する硬さ試験、引張接着強さ試験)に供する所定の試験片を作製した。そして、同一環境(雰囲気温度23℃×湿度65%RH)下で2日間静置(養生)した後、各物性試験(硬さ試験、引張接着強さ試験)を行った。
【0084】
(硬さ試験)
シーリング材の硬さ試験は、シーリング材の硬化後の可撓性を把握するための代用試験として行うもので、JISK6253(2012)に準拠して行い、各シーリング材の硬化後(養生2日後)の硬さを測定した。
具体的には、硬さ試験用に作製した試験片(l00mm×l00mm×2mm厚みのシート)を3枚重ね合わせた積層物を試料とし、JISK6253(2012)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、雰囲気温度23℃で、タイプAデュロメータを用いてシーリング材の硬化後の硬さを測定した。
【0085】
(引張接着強さ試験)
シーリング材の引張接着強さ試験は、シーリング材(接着材)とウイングルーフの上面(アルミニウム金属面)との接着性を把握するための代用試験として行うもので、JISK6849(1994)に準拠して行い、接着面に対して垂直に引張力をかけて、各シーリング材の引張接着強さ(接合部が破断する応力)を測定した。
具体的には、引張接着強さ試験用に作製した試験片[角棒形試験片:アルミニウム金属製の角棒(断面:被接着面の一辺が12.7mmの正方形)からなる1対の被着体の互いに対向する端面(被接着面)間に接合部(接着剤層およびプライマ一層)が形成された試験片]を用いて、JISK6849(1994)に規定されている引張接着強さ試験に準拠して、引張接着強さ(接合部が破断に至るときの最大引張応力)を測定した。
【0086】
[各供試体の概要]
各供試体(防水構造)の概要を、後述する検証結果の表4~6中に記載の供試体順に以下に示す。
なお、各供試体は、後述する防水構造の評価のための各試験(試験機)に供することができるよう、厚み方向の寸法は実製品と同じだが、平面寸法(幅×前後方向長さ)が試験用に実製品よりも縮小(実製品が例えば幅400mm程度×前後方向長さ7m程度であるのに対して、幅200mm程度×前後方向長さ300mm程度に縮小)した構成(モデル)に形成した。供試体の下側の被取付体(センターフレーム、一対のヒンジ部、および一対のウイングルーフに対応する構造体)も同様、試験の制約により、全体を平板状に形成し、平面寸法が供試体と略同じになるよう各部の構成・寸法を調整した。
【0087】
(実施例1~4、比較例1)
上記使用材料で説明した、W1の外層シート(表1参照)、ならびにS1~S5のシーリング材(表3参照)をそれぞれ使用して、上記実施形態1に記載した、内層シートを有しない防水構造における、ウイング車両用防水シートの取付手順(センターシートの補修手順)と同様の方法で、シーリング材が、内部空間をシールするとともに、少なくとも上記被取付体中のウイングルーフ(アルミニウム金属板)の上面と接着している態様の供試体(防水構造)を作製した。
なお、外層シートの両側縁部、および前後端部における外層シートの防水構造についても、上記実施形態1に記載した防水構造と同様にした。即ち、外層シートの両側縁部については、ウイングルーフの上面に、接着又はコーキングされないで、シート厚み方向に圧縮されつつ挟まれる態様にて、帯状の押さえ板およびリベットを介して固定される構造とした(図2参照)。なお、各供試体のセンターシートは、構成がW5の外層シートと同じターポリンとしたが、劣化した既設のセンターシートに形成されるよう、予め部分的にシートが破損した状態のターポリン破損品W5’とした。また、ウイングルーフ(アルミニウム金属板)の上面部分には、予め所定(表3中に記載)のプライマーにて前処理(下地処理)を施した。
【0088】
(比較例2)
内部空間をシールするシーリング材を有しない防水構造としたことを除いては、実施例1~4、比較例1と同様の方法で、W1の外層シートを有する防水構造を作製した。
【0089】
(実施例5~8)
W2~W5の外層シート(図1参照)をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で、S1のシーリング材を有する防水構造を作製した。
【0090】
(実施例9~10)
上記実施形態2に記載した、内層シート(実施例9がW4、実施例10がW5)を更に含む構成およびウイング車両用防水シートの取付手順(センターシートの補修手順)で各供試体(各防水構造)を作製したことを除いては、実施例1と同じ構成(外層シートがW1、シーリング材がS1)の防水構造を作製した。
【0091】
[防水構造の評価:項目、方法、基準]
表4~6に示す、各供試体について、本願課題を解決し得る防水構造が得られたかどうかを見極めるために、各性能(耐外傷性、耐候性、屈曲耐久性、防水性)を検証した。
【0092】
[耐外傷性]
(試験名)落下式衝撃試験
(試験機)不図示
(試験方法)
供試体の中央付近に向けて、真上から、断面形状が二等辺三角形(頂角35°、頂部曲率半径0.5mm、高さ約32mm)の突条部(刃部)(延在長さ35cm)が直方体の本体部と一体に形成された、質量8.3kgの錘(おもり)を、突条部の頂部(刃先)を下向きにし、かつ頂部の延在方向を供試体の長手方向(外層シートの延在方向)と平行な方向と一致させつつ、供試体を跨ぐ態様で自由落下させ、外層シートが破損しない最高高さ(外層シートと錘の先端との間の隔離距離)を調べた。
【0093】
(判定基準)
各供試体の耐外傷性の判定として、外層シートが破損しない最高高さの値を指標(該最高高さが高いほど耐外傷性に優れる)とし、
外層シートが破損しない最高高さが、
8cm を上回る場合をa判定、
6cm以上8cm以下の場合をb判定、
6cm未満の場合をc判定とした。
本用途での実使用に対する適正(耐外傷性)の観点から、a~b判定のいずれかの防水構造を合格レベルとした。
【0094】
[耐候性]
(試験名)サンシャイン耐候試験
(試験機)サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製S80型)を使用した。
(試験方法)
新規に各供試体を作製し、サンシャイン耐候試験に供した。各供試体を上記サンシャインウェザーメーターにセットし、JISB7951(2007)に規定される方法(ブラックパネル温度63±3℃、スプレーサイクル120分中18分間)に準じて、サンシャイン耐候試験を1500時間(10年間の屋外暴露に相当)行った後、外層シートの外観を目視で観察し、外層シートの外観異常(劣化)の有無を以下の基準で評価した。
【0095】
(判定基準)
各供試体の耐候性(雨水、紫外線による外層シートの劣化の有無)の判定として、外層シートの外観異常(劣化)の有無を指標とし、試験後、外層シートに、
外観異常(劣化)が全く認められなかった場合をa判定、
軽微な外観異常(防水性に支障はない程度のひび割れ等)が認められた場合をb判定、
顕著な外観異常(防水性に支障が出る程度のひび割れ、破れ、剥離等)が認められた場合をc判定とした。
本用途での実使用に対する適正(耐候性)の観点から、a~b判定のいずれかの防水構造を合格レベルとした。
【0096】
[屈曲耐久性]
(試験名)台上屈曲耐久性試験
(試験機)台上屈曲耐久性試験機(不図示)
台上屈曲耐久性試験機は、一対のウイングルーフ(アルミニウム金属)の開閉動作を台上で再現可能に構成されている。
具体的には、台上の、供試体(防水構造)および被取付体(いずれも平面寸法は幅200mm程度×前後方向長さ300mm程度)の下側に、一対のウイングルーフ(アルミニウム金属板)を任意の開閉サイクルで開閉動作させるための駆動部[駆動源(電動サーボモータ)、減速機構、開閉機構、制御部(操作パネルを含む)で構成]を付帯させた。また、台上の、供試体(防水構造)および被取付体を含む空間を、恒温槽とし、雰囲気温度を一定に保った。
【0097】
(試験方法)
新規に各供試体を作製し、台上屈曲耐久性試験に供した。実環境に照らし、台上の雰囲気温度[つまり供試体(防水構造)および被取付体の表面温度]を約50℃(高温環境下)、約23℃(常温)、約-20℃(低温環境下)の3通りに設定し、雰囲気温度毎に、図10に示す試験パターンに従い、ウイングルーフの開閉サイクル時間(開閉動作1回あたりの時間)を5分とし、ウイングルーフの開閉動作(開き角度0°~70°)を1万回繰り返す台上屈曲耐久性試験(1日あたり平均3回程度とした場合の開閉動作を10年間繰り返すことを想定した台上加速試験)を行った後、その内部空間内のシーリング材の状態を(外層シートを除去したうえで)目視で観察し、シーリング材の欠損の有無を以下の基準で評価した。
【0098】
(判定基準)
各供試体の屈曲耐久性(シーリング材の可撓性)の判定として、主にシーリング材の欠損の有無を指標とし、試験後、シーリング材等に、
いずれの雰囲気温度下でも、欠損(ひび割れ等)が全く認められなかった場合をa判定、
いずれの雰囲気温度下でも、顕著な欠損(防水性に支障が出る程度のひび割れ、割れ等)は認められなかったが、いずれかの雰囲気温度下で、軽微な欠損(防水性に支障はない程度のひび割れ等)が認められた場合をb判定、
いずれかの雰囲気温度下で、顕著な欠損(防水性に支障が出る程度のひび割れ、割れ等)が認められた場合をc判定とした。
本用途での実使用に対する適正(屈曲耐久性)の観点から、a~b判定のいずれかの防水構造を合格レベルとした。
【0099】
[防水性]
(試験名)高圧水噴射試験
(試験機)高圧水噴射機(不図示)
(試験方法)
さきの台上屈曲耐久性試験を終えた供試体の内、屈曲耐久性(シーリング材の可撓性)にきびしい条件とされる雰囲気温度-20℃下での試験を終えた供試体をそのまま(除去した外層シートを配設し直したうえで)、高圧水噴射試験に供した。雰囲気温度23℃下で、高圧水噴射機(ケルヒャージャパン(株)製「高圧洗浄機K-MINI」)を用いて、供試体(防水構造)に対して両側縁部を含めまんべんなく高圧水を噴射する態様で高圧水噴射試験(水圧:約8MPa、吐出水量:約5L/分、水噴射時間:連続30分間、供試体とノズルとの距離:20cm)を行い、防水構造の防水効果を検証した。
なお、防水構造の防水効果を適切に検証するため、各供試体とも、予め外層シートの両側縁部がウイングルーフから部分的に剥離した態様に形成してから、高圧水噴射試験に供した。試験後、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間内(特にセンターフレームと左右のウイングルーフの連結部分の隙間)を目視で観察し、内部空間内への水の浸入の有無を以下の基準で評価した。
【0100】
(判定基準)
各供試体の防水性(防水構造の防水効果)の判定として、内部空間内への水の浸入の有無を指標とし、試験後、内部空間内(特にセンターフレームと左右のウイングルーフの連結部分との隙間)に、
水の浸入が全く認められなかった場合をa判定、
僅かに水の浸入(水の滲み等、防水性に支障はない程度の水の浸入)が認められた場合をb判定、
顕著に水の浸入(水の垂れ落ち等、防水性に支障が出る程度の水の浸入)が認められた場合をc判定とした。
本用途での実使用に対する適正(防水性)の観点から、a~b判定のいずれかの防水構造を合格レベルとした。
【0101】
(総合判定)
本課題を解決し得る防水構造としての総合的な判定(ランク付け)の基準は、上記4つの評価項目(耐外傷性、耐候性、屈曲耐久性、防水性)における判定の結果から、以下の通りとし、Cランク以上を合格とした。
ランクA:上記の評価項目で、すべてa判定であった場合は、実用上全く問題ないものと判断し、最良のランクとした。
ランクB:上記の評価項目で、c判定はないが、1つでもb判定があった場合は、実用上問題ないが、やや劣るランクとした。
ランクC:防水性の評価項目にc判定はないが、防水性以外の評価項目で1つでもc判定があった場合は、実用上問題ないが、ランクBよりもやや劣るランクとした。
ランクD:防水性の評価項目がc判定であった場合は、本課題を解決するには不充分なランク(不合格)とした。
【0102】
[検証結果]
得られた各供試体(各防水構造)を上記試験によって評価した結果を表4~6に示す。
【0103】
(シーリング材の種類を変更)
【表4】
【0104】
(実施例1~4、比較例1~2)
内層シートを有しない防水構造(実施形態1)において、外層シートの種類をW1に固定したうえで、シーリング材の有無を含め、シーリング材の種類(タイプ)を変更し、比較した。
いずれも、外層シート(W1)が、耐候性に優れるとされるEPDM系加硫ゴムからなり、かつ充分に分厚く設けられた防水層内に、しなやかさ(可撓性)と補強性(耐外傷性)を両立するように構成された基布(布帛A)が埋設された構成であるためか、耐外傷性および耐候性はともにa判定であった。
【0105】
実施例1~4のように、硬化後の硬さ(タイプA)が16~30と比較的低水準のシーリング材で、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間をシール(密閉)する態様が、屈曲耐久性(シーリング材の可撓性)に効果を及ぼすことが判る(a判定またはb判定)。
具体的には、ともにシリコーン系シーリング材を使用した実施例1~2、ならびにクロロプレンゴム系シーリング材を使用した実施例4は屈曲耐久性がa判定で、ポリウレタン系シーリング材を使用した実施例3は-20℃の低温環境下においてシーリング材に軽微な欠損(軽微なひび割れ)が見られ屈曲耐久性がb判定であった。
【0106】
また、実施例1~4のように、前記内部空間が、シーリング材でシールされるとともに、シーリング材が少なくともウイングルーフの上面(アルミニウム金属面)と接着している態様が、防水性(外層シートの両側縁部がウイングルーフから部分的に剥離していても防水効果を維持)に効果を及ぼすことが判る(a判定またはb判定)。
具体的には、ともにシリコーン系シーリング材を使用した実施例1~2は、シーリング材とアルミニウム金属面との接着性(引張接着強さ)が比較的良好なためか、防水性がa判定(総合判定でもランクA)であった。ポリウレタン系シーリング材を使用した実施例3、ならびにクロロプレンゴム系シーリング材を使用した実施例4は、シーリング材とアルミニウム金属面との接着性(引張接着強さ)がさほど充分ではなかったためか、防水性がb判定(総合判定でもランクB)となった。
【0107】
一方、比較例1の防水構造は、シーリング材の硬さ(タイプA)の水準が43と比較的高めであり、硬化後の可撓性を有し難いためか、上記屈曲耐久性(ウイングルーフ開閉1万回)において、いずれの雰囲気温度下でもシーリング材に顕著な欠損(割れ)が見られた(c判定)。そのため、引き続き同じ供試体を用いて行った高圧水噴射試験において、防水効果が認められず、防水性もc判定となり、総合評価でランクD(不合格)となった。
【0108】
また、シーリング材で前記内部空間をシール(密閉)しない比較例2の防水構造では、高圧水噴射試験において、外層シートの両側縁部がウイングルーフから部分的に剥離した部分から内部空間内への水の浸入を許してしまい、防水性がc判定となり、総合評価でランクD(不合格)となった。
【0109】
(外層シートの種類を変更)
【表5】
【0110】
(実施例1、5~8)
内層シートを有しない防水構造(実施形態1)において、シーリング材の種類がS1の実施例1の防水構造をベースにして、外層シートの種類W1を変更し、比較した。
いずれも、硬化後の硬さ(タイプA)が25と比較的低水準のシーリング材(S1)で前記内部空間をシールし、かつ少なくともウイングルーフの上面(アルミニウム金属面)と接着している態様であるためか、屈曲耐久性および防水性はともにa判定であった。
【0111】
耐外傷性の評価において、基布入り外層シートの厚み(総厚)が1.1mmの実施例1(a判定)に対して、同じ種類(布帛A)の基布が加硫ゴム又は合成樹脂からなる防水層に埋設もしくは積層されているが、厚み(総厚)が0.7mmと薄い外層シートが使用された実施例5~6はb判定(総合評価でもランクB)であった。さらに、実施例1(a判定)に対して、厚み(総厚)は1.1mmと同じであるが、補強材としての基布を有しない外層シートが使用された実施例7、ならびに基布(布帛B)は有するが、基布に合成樹脂が含浸されただけの構成(ターポリン)であるため厚み(総厚)が0.4mmしかない外層シートが使用された実施例8は、ともにc判定(総合評価でもランクC)であった。
【0112】
耐候性の評価において、防水層がEPDM系加硫ゴムで形成された外層シートが使用された実施例1、5、7は、ともにa判定であったが、防水層が汎用な合成樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂)で形成された外層シートが使用された実施例6は、軽微な外観異常(軽微なひび割れ)が発生しb判定となり、基布への含浸樹脂材料が汎用な合成樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂)で形成された外層シートが使用された実施例8は、顕著な外観異常(顕著なひび割れ)が発生しc判定であった。
【0113】
(内層シートを付加)
【表6】
【0114】
(実施例9、10)
内層シートを更に含む防水構造(実施形態2)において、外層シートの種類をW1、シーリング材の種類をS1としたうえで、内層シートとして、実施例9はW4の防水シート(防水層のみの構成)、実施例10はW5の防水シート(ターポリン)をそれぞれ使用し、比較した。
いずれも、内部空間内に内層シートをさらに含む防水構造であっても屈曲耐久性はa判定(総合評価でもランクA)であった。
【0115】
以上の全検証結果から、少なくとも、外層シート、センターシート、及びウイングルーフで囲まれた内部空間が硬化後も可撓性を有するシーリング材でシールされており、シーリング材が少なくともウイングルーフの上面と接着していることで、より長寿命な(耐久性に優れ、防水効果を長期間維持することができる)、ウイング車両用センターシートの防水構造にできることが確認できた。
【符号の説明】
【0116】
1 防水構造
2 ウイング車両用防水シート
21 外層シート
241 242防水層
243 基布
3 シーリング材
4 押さえ板
5 リベット
6 内部空間
100 ウイング車両
101 センターフレーム
102 ウイングルーフ
103 ウイングルーフ
105 センターシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10