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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048379
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】建築用部材
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/35 20060101AFI20240401BHJP
   E04D 3/30 20060101ALI20240401BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E04D3/35 S
E04D3/30 Z
B32B15/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159940
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2022153711
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507315324
【氏名又は名称】株式会社石蔵商店
(71)【出願人】
【識別番号】518030106
【氏名又は名称】株式会社平島
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(72)【発明者】
【氏名】石蔵 義浩
(72)【発明者】
【氏名】平島 彰吾
【テーマコード(参考)】
2E108
4F100
【Fターム(参考)】
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BN06
2E108CC01
2E108CV06
2E108GG00
2E108GG04
4F100AB03A
4F100AB10C
4F100AG00D
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DH00D
4F100EJ28
4F100JH01B
4F100JH01D
4F100JK07
(57)【要約】
【課題】 遮熱効果に加えて遮音効果も考慮した建築用部材を提供する。
【解決手段】 外に露出する建築用部材1は、外に露出する面に一方面が配置されるガルバリウム鋼板(登録商標)2と、ガルバリウム鋼板(登録商標)2の他方面に接着される裏張材である遮熱シート3とを備え、遮熱シート3は、ガルバリウム鋼板(登録商標)2の他方面に接着する遮音層であるガラス繊維層7と、ガラス繊維層7に接着するアルミニウム層11とを少なくとも含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外に露出する建築用部材であって、
前記外に露出する面に一方面が配置される鋼板と、
前記鋼板の他方面に接着される裏張材とを備え、
前記裏張材は、
前記鋼板の他方面に接着する遮音層又はアルミニウム層と、
前記遮音層又はアルミニウム層に接着するアルミニウム層又は遮音層とを少なくとも含む、建築用部材。
【請求項2】
前記遮音層はガラス繊維層を有する、請求項1記載の建築用部材。
【請求項3】
前記遮音層は、前記ガラス繊維層に接着するシート層であって気泡を有して静止空気層を形成する合成樹脂シート層をさらに含む、請求項2記載の建築用部材。
【請求項4】
前記裏張材は、前記遮音層及び前記アルミニウム層に加えて、鋼板の熱収縮によって発生する音鳴りを低減する音鳴り低減層を含む、請求項1記載の建築用部材。
【請求項5】
外に露出する折板屋根に用いられる建築用部材であって、
前記外に露出する面に一方面が配置される鋼板と、
前記鋼板の他方面に接着される裏張材としての遮熱シートとを備え、
前記遮熱シートは、その端部に吸水する層の部分が露出しておらず、
前記鋼板の他方面に接着するガラス繊維層又はアルミニウム層と、
前記ガラス繊維層又はアルミニウム層に接着するアルミニウム層又はガラス繊維層とを少なくとも含む、建築用部材。
【請求項6】
外に露出する折板屋根に用いられる建築用部材であって、
前記外に露出する面に一方面が配置される鋼板と、
前記鋼板の他方面に接着される裏張材としての遮熱シートとを備え、
前記遮熱シートは、その端部に吸水する層の部分が露出しておらず、
前記鋼板の他方面に接着するシート層であって気泡を有して静止空気層を形成する合成樹脂シート層と、
前記合成樹脂シート層に接着するガラス繊維層又はアルミニウム層と、
前記ガラス繊維層又はアルミニウム層に接着するアルミニウム層又はガラス繊維層とを少なくとも含む、建築用部材。
【請求項7】
前記建築用部材は、前記折板屋根として現場で設置される前に曲げ成形されるものであり、
前記折板屋根が建築用部材の隣同士を重ねられる部分に対して締結具で固定する重ね式折板屋根の場合に、
成形されて曲げられた後において、前記遮熱シートは前記重ねられる部分の外側に位置するほうの全部又は一部にも接着されている、請求項5又は6記載の建築用部材。
【請求項8】
前記建築用部材は、前記折板屋根として現場で設置される前に曲げ成形されるものであり、
前記折板屋根が建築用部材の隣同士をハゼ締めによって繋げるハゼ部分があるハゼ式折板屋根の場合に、
成形されて曲げられた後において、前記遮熱シートは前記ハゼ部分のいずれの側の全部又は一部にも接着されている、請求項5又は6記載の建築用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建築用部材に関し、特に、外に露出する折板屋根等に用いられる建築用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で用いられる金属製の長尺屋根として、例えば、折板屋根がある。折板屋根には、大きく2種類あり、重ね式折板屋根と、ハゼ式折板屋根とがある。重ね式折板屋根は、図4に示すように、重ね式ガルバリウムなどの鋼板51を用いて山高を大きく成型した折板を締結具で固定用金具(タイトフレーム)に固定することにより梁の上に取り付けることにより、隣同士が重なる部分53a,53bがあって形成される。ハゼ式折板屋根は、図5に示すように、隣同士をハゼ締めによって繋げるハゼ部分55a,55bがあるものとなっている。なお、折板屋根には、上記の2種類以外にも、ビス直打ち折板屋根、嵌合式折版屋根などの他のものもあるが、以下、重ね式折板屋根とハゼ式折板屋根で説明していく。
【0003】
このような金属製の屋根を備えたものは、屋根が直射日光に直接晒されるため、直射日光を受けた屋根が高温になることにより、その熱が建物内部に伝えられて内部温度が上昇し易い。
【0004】
そこで、折板屋根において直射日光への対策を施したものとして、折板の裏面に遮熱板である裏張材を貼り付けた一重折板構造などが用いられている。なお、現場での取り付けの施工前に、ガルバリウム鋼板(登録商標)51と裏張材(遮熱板)57とは接着され、図4及び図5に示すように折り曲げ成形されて、現場に搬送されるのが、通常とされている。
【0005】
一般的に、従来の建築用の折板屋根に用いられる遮熱板57は、図6に示すように、硬質ウレタンフォーム層(ポリフォーム層)で成形されて接着層59で接着されたものとなっており、厚さが約5mm前後のものとなっている。遮熱板は厚みがあり、硬質ウレタンフォーム層(ポリフォーム層)が吸水材料であることから、その部分が外部に露出してしまうと雨水か浸み込んでしまう可能性があり、特に梁の上でタイトフレームが下から支えている部分では間隙が空きやすく硬質ウレタンフォーム層(ポリフォーム層)への吸収の可能性を高くしてしまうことから、重ね式折板屋根では隣同士の重なり部分53a,53bの少なくとも外側に位置する側53aへは裏張材は張られていない。この吸水の点は、ハゼ式折板屋根の場合にも同様であり、隣同士をハゼ締めするハゼ部分55a,55bには、裏張材は張られていない。ここで、重ね式折板屋根に隣同士の重なり部分の少なくとも外側に位置する側53aへは裏張材が張られていない理由には、締結具で締結することもあり、厚さが厚くなって、締結力の点も考慮する面もある。また、ハゼ式折板屋根の場合に隣同士をハゼ締めするハゼ部分55a,55bには裏張材が張られていない理由には、ハゼ部分の成形が複雑であり、その成形の障害にならないようにする点の他、厚さがあることによるハゼ締めの締め付け力の点を考慮する面もある。
【0006】
なお、参考のために記載するが、図7に示すように建築用以外でも用いられる薄い遮熱シート61も存在するが(特許文献2参照)、この遮熱シート61は、アルミニウム層63と、炭化ポリアクリロニトリル繊維を用いた不織布層67が接着剤層65で接着されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-020003号公報
【特許文献2】特開2021-154700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の遮熱板及び遮熱シートは、遮熱効果を狙ったものであり、遮音まで考慮されたものではなかった。そのため、建築用部材として用いるには、折板屋根の雨音などの音鳴りを軽減できていなかった。
【0009】
ゆえに、本発明は、遮熱効果に加えて遮音効果も考慮した建築用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、外に露出する建築用部材であって、前記外に露出する面に一方面が配置される鋼板と、前記鋼板の他方面に接着される裏張材とを備え、前記裏張材は、前記鋼板の他方面に接着する遮音層又はアルミニウム層と、前記遮音層又はアルミニウム層に接着するアルミニウム層又は遮音層とを少なくとも含むものである。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点において、前記遮音層はガラス繊維層を有する、ものである。
【0012】
本発明の第3の観点では、第2の観点において、前記遮音層は、前記ガラス繊維層に接着するシート層であって気泡を有して静止空気層を形成する合成樹脂シート層をさらに含む、ものである。
【0013】
本発明の第4の観点は、第1の観点において、前記裏張材は、前記遮音層及び前記アルミニウム層に加えて、鋼板の熱収縮によって発生する音鳴りを低減する音鳴り低減層を含む、ものである。
【0014】
本発明の第5の観点は、外に露出する折板屋根に用いられる建築用部材であって、前記外に露出する面に一方面が配置される鋼板と、前記鋼板の他方面に接着される裏張材としての遮熱シートとを備え、前記遮熱シートは、その端部に吸水する層の部分が露出しておらず、前記鋼板の他方面に接着するガラス繊維層又はアルミニウム層と、前記ガラス繊維層又はアルミニウム層に接着するアルミニウム層又はガラス繊維層とを少なくとも含むものである。
【0015】
本発明の第6の観点は、外に露出する折板屋根に用いられる建築用部材であって、前記外に露出する面に一方面が配置される鋼板と、前記鋼板の他方面に接着される裏張材としての遮熱シートとを備え、前記遮熱シートは、その端部に吸水する層の部分が露出しておらず、前記鋼板の他方面に接着するシート層であって気泡を有して静止空気層を形成する合成樹脂シート層と、前記合成樹脂シート層に接着するガラス繊維層又はアルミニウム層と、前記ガラス繊維層又はアルミニウム層に接着するアルミニウム層又はガラス繊維層とを少なくとも含む、ものである。
【0016】
本発明の第7の観点は、第5又は6の観点において、前記建築用部材は、前記折板屋根として現場で設置される前に曲げ成形されるものであり、前記折板屋根が建築用部材の隣同士を重ねられる部分に対して締結具で固定する重ね式折板屋根の場合に、成形されて曲げられた後において、前記遮熱シートは前記重ねられる部分の外側に位置するほうの全部又は一部にも接着されている、ものである。
【0017】
本発明の第8の観点は、第5又は6の観点において、前記建築用部材は、前記折板屋根として現場で設置される前に曲げ成形されるものであり、前記折板屋根が建築用部材の隣同士をハゼ締めによって繋げるハゼ部分があるハゼ式折板屋根の場合に、成形されて曲げられた後において、前記遮熱シートは前記ハゼ部分のいずれの側の全部又は一部にも接着されている、ものである。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1の観点の発明によれば、遮音層を設けたことにより、外に露出していて雨等が当たって鋼板による音が発生しても、アルミニウムによる遮熱効果に加えて遮音効果が裏張材によって得られ、屋根等の建築部材として適切な部材が得られる。
【0019】
本発明の第2の観点の発明によれば、遮音層がガラス繊維層を有することになり、アルミニウム層との連動で遮熱効果を大きくできることに加え、比重が大きいガラス繊維層のために遮音効果も十分なものとできる。加えて、ガラス繊維層は硬質ウレタンフォーム層(ポリフォーム層)のような厚みは不要であり、遮熱効果及び強度の観点からアルミニウム層の厚さを従来のシート(炭化ポリアクリロニトリル繊維を用いた不織布層を用いたもの)と同様又は少し厚くしたとしても、裏張材を例えば0.2mmのようなシートにできる。これにより、裏張材のシートとして、鋼板の裏面の例えば全面に張るなどを行ってもよいものとできる。
【0020】
このことは、本発明の第5~8の観点の発明でも同様だが、従来には折板屋根の場合には、重ね式折板屋根では重なり部分で鋼板同士が直接接触し、ハゼ式折板屋根ではハゼ部分で鋼板同士が直接接触していたことで発生していた音鳴りの軽減も可能になる。
【0021】
なお、音鳴りは、例えば、太陽高度がやや高くなってくる朝方の衝撃音から始まり、その後は比較的小さくはじける様な連続音が発生し、太陽高度がやや低高度になっていく夕刻にも大きな衝撃音が発生する傾向があると言われている。その原因は、金属同士のズレで発生していると考えられ、遮熱効果が高いほど、鋼板の表である外と裏張材側との温度差が生じることもあり、音鳴りが発生しやすいとも言われている。その点で、裏張材が薄いシートで鋼板の例えばほぼ全面などに張ることができることは、遮音の点では、雨音等の外部からの音以外の熱収縮に伴う音鳴り軽減になるため、その効果は極めて大きい。
【0022】
さらに、従来の遮熱板も外気と内部との温度差に伴う結露防止の面もあるが、従来には鋼板の裏面の例えば全面には張られることができなかったが、薄いシートにできることによってほぼ全面などに張れる結果、結露への対策も可能となるというさらなる効果も得られる。
【0023】
本発明の第3の観点では、加えて、ガラス繊維層に接着する気泡を有する合成樹脂シート層も用いることにより、静止空気層が形成され、さらに遮音効果が高くなる。
【0024】
本発明の第4の観点は、積極的に鋼板の熱収縮によって発生する音鳴りを低減する音鳴り低減層を設けたことにより、鋼板同士の間、又は、鋼板と取り付けに伴う金属部品との間、金属部品同士の間などで発生し得る音鳴りを軽減できる。これにより、遮音の点では、雨音等の外部からの音以外の熱収縮に伴う音鳴り軽減になるため、その効果は極めて大きい。
【0025】
本発明の第5~第8の観点の発明によれば、遮熱シートがその端部に吸水する層の部分が露出しておらず、内部への雨等の吸収を心配する必要はなく、上記の記載した遮熱効果に加えて、遮音効果も得られるものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態にかかる建築用部材の一例としての折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる建築用部材の他の一例としての折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる建築用部材のさらに他の一例としての折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。
図4】従来の重ね式折板屋根について示す図である。
図5】従来のハゼ式折板屋根について示す図である。
図6】従来の折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。
図7】従来の遮熱シートの層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0028】
図1は本発明の実施の形態にかかる建築用部材の一例としての折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。図1を参照して、建築用部材1は、ガルバリウム鋼板(登録商標)2と、その裏面の全面に張られる裏張材としての遮熱シート3とを備える。遮熱シート3は、接着剤層5を介してガルバリウム鋼板(登録商標)2に接着しており、遮音効果を高める層であるガラス繊維層7と、輻射熱を反射する層であるアルミニウム層11とを少なくとも含み、ガラス繊維層7とアルミニウム層11とが接着剤層9を介して接着している。
【0029】
遮熱シート3では、図7に示した従来の遮熱シート61とは異なり、炭化ポリアクリロニトリル繊維を用いた不織布層67に代えてガラス繊維層7が用いられている。ガラス繊維層7は、ガラス繊維によるクロス状の素材を用いており、繊維の層の厚さは、約100~200(μm)マイクロメートルが好ましく、150(μm)マイクロメートル前後がより好ましい。不織布層67に比べて、比重が重く、例えば不織布層67の2倍を超えるような比重にできる。このような比重の大きな層により、遮音効果を大きくできる。遮音効果は、遮熱シートのような試料を介在させて、空間の音が反対側に伝わることを抑える効果であり、試料の重量が大きければ大きいほど、遮音効果は大きくなる。ガラス繊維層7には、重量増強材の中でも相対的に重量が大きな特殊ガラス繊維を採用した。なお、ガラス繊維層7は、建築材料としての不燃試験を通過するために必要な層でもある。
【0030】
しかも、比重を2倍のような値にしつつ、ガラス繊維層7を不織布層67よりも薄くでき、従来の遮熱シートに比べて全体として薄い厚さにすることも可能となる。さらに、全体としての厚さを従来の遮熱シート61と同等或いは薄くしながら、比重の大きいガラス繊維層7を採用したことによりガラス繊維層7を薄くしつつ、アルミニウム層11を少し厚くすることもできる。この場合には、アルミニウム層11による遮熱効果や強度アップを実現できる。具体的な遮熱シート3の厚さとしては、ガラス繊維層7の厚さを150(μm)マイクロメートルにした場合には0.2mm(=200(μm)マイクロメートル)程度にまで薄くできることを確認できている。
【0031】
このように、遮熱効果もあるうえに遮音効果もあって、薄い遮熱シートにできたことにより、折板屋根のガルバリウム等の鋼板2の裏張板として使用していた建築用の遮熱板に代えて、図1に示すような遮熱シート3を用いることもできることになった。ガルバリウム等の鋼板2の裏面には、通常、ガラス繊維層7が接着され、ガラス繊維層7には接着剤層9を介してアルミニウム層11が接着されることになるが、アルミニウム層11の露出を無くすべくコーティング層で覆われて腐食防止の工夫が行われるものであってもよい。この点は、以下に記載する他の実施の形態でも同様である。なお、ガルバリウム等の鋼板2の裏面には、必ずしもガラス繊維層7が接着される必要はなく、順番を変えてアルミニウム層11が接着されるものであってもよい。この場合も、アルミニウム層11及びガラス繊維層7によって遮熱効果は十分にあり、加えて比重が重いガラス繊維層7により遮音効果は得られる。よって、この遮熱シート3により、遮熱効果だけでなく、遮音効果もあり、雨音などの音鳴りの軽減が可能になる。
【0032】
このように、ガラス繊維層という遮音層を設けたことにより、外に露出していて雨等が当たって鋼板による音が発生しても、アルミニウムによる遮熱効果に加えて遮音効果が裏張材によって得られ、屋根等の建築部材として適切な部材が得られる。
【0033】
以下、音に関して、さらに説明する。ガラス繊維層という遮熱層とアルミニウム層との連動で遮熱効果を大きくできることに加え、比重が大きいガラス繊維層のために遮音効果も十分なものとできる。加えて、ガラス繊維層は硬質ウレタンフォーム層(ポリフォーム層)のような厚みは不要であり、遮熱効果及び強度の観点からアルミニウム層の厚さを従来のシート(炭化ポリアクリロニトリル繊維を用いた不織布層を用いたもの)と同様又は少し厚くしたとしても、裏張材を例えば0.2mmのようなシートにできる。これにより、裏張材のシートとして、鋼板の裏面の例えば全面に張るなどを行ってもよいものとできる。このことは、従来には折板屋根の場合には、重ね式折板屋根では重なり部分で鋼板同士が直接接触し、ハゼ式折板屋根ではハゼ部分で鋼板同士が直接接触していたことで発生していた音鳴りの軽減も可能になる。なお、音鳴りは、例えば、太陽高度がやや高くなってくる朝方の衝撃音から始まり、その後は比較的小さくはじける様な連続音が発生し、太陽高度がやや低高度になっていく夕刻にも大きな衝撃音が発生する傾向があると言われている。その原因は、金属同士のズレで発生していると考えられ、遮熱効果が高いほど、鋼板の表である外と裏張材側との温度差が生じることもあり、音鳴りが発生しやすいとも言われている。その点で、裏張材が薄いシートで鋼板の例えばほぼ全面などに張ることができることは、遮音の点では、雨音等の外部からの音以外の熱収縮に伴う音鳴り軽減になるため、その効果は極めて大きい。さらに、従来の遮熱板も外気と内部との温度差に伴う結露防止の面もあるが、従来には鋼板の裏面の例えば全面には張られることができなかったが、薄いシートにできることによってほぼ全面などに張れる結果、結露への対策も可能となるというさらなる効果も得られる。
【0034】
図2は本発明の実施の形態にかかる建築用部材の他の一例としての折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。図1と異なることについて説明する。図2を参照して、建築用部材21は遮熱シート23を備え、遮熱シート23はガラス繊維層7とは別に遮音層25を含んでいる。遮音層25は、接着剤層24を介してガラス繊維層7に接着しており、接着剤層26を介してアルミニウム層11に接着している。
【0035】
ここでは、ガラス繊維層7とは別に、遮音層25を設けていることをポイントにしている。この遮音層25は、ガラス繊維による層である必要はなく、遮音効果の高い材質の層で成形すればよい。
【0036】
このように、積極的に鋼板の熱収縮によって発生する音鳴りを低減する音鳴り低減層を設けたことにより、鋼板同士の間、又は、鋼板と取り付けに伴う金属部品との間、金属部品同士の間などで発生し得る音鳴りを軽減できる。これにより、遮音の点では、雨音等の外部からの音以外の熱収縮に伴う音鳴り軽減になるため、その効果は極めて大きい。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態にかかる建築用部材のさらに他の一例としての折板屋根に用いられる部材の層を示す図である。
【0038】
建築用部材31の遮熱シート33は、全体の厚みは約700~1200(μm)マイクロメートルのものであり、合わせて約200(μm)マイクロメートルの厚みとなるアルミニウム層11とガラス繊維層7の層に加えて、微細気泡合成樹脂シート層35、39の2層が追加されている。アルミニウム層11とガラス繊維層7とは接着剤層9で接着されている。ガラス繊維層7と微細気泡合成樹脂シート層39とは接着剤層41で接着されている。微細気泡合成樹脂シート層39と微細気泡合成樹脂シート層35とは接着剤層37で接着されている。ガラス繊維層7にはガラス繊維によるクロス状の素材が用いられており、繊維の層の厚さは、約100~200(μm)マイクロメートルが好ましく、150(μm)マイクロメートル前後がより好ましい。ここで、微細気泡合成樹脂シート層とは、以下のように定義する。例えばポリエチレンを発泡させて得られる微細気泡を内部に有し、遮音効果を高める静止空気層を形成できるものと定義する。ポリエチレン以外にも、ポリエステルやポリプロピレンなどを発泡させて微細気泡を内部に有するものであってもよく、多くは所謂熱可塑性プラスチックと言われる範疇に入るが、熱可塑性か熱硬化性かを問わず、プラスチックの定義に含まれるか否かを問わず、微細気泡を有して静止空気層を形成する合成樹脂のシートであれば、ここでの微細気泡合成樹脂シート層という概念の範囲に入るものとする。
【0039】
この実施例では、遮熱シート33の厚さは約0.85mmのものとしており、アルミニウム層11と接着剤層9とガラス繊維層7との厚さは約0.20mmとし、接着剤層41と微細気泡合成樹脂シート層39と接着剤層37と微細気泡合成実施シート層35との厚さは約0.65mmとしている。図1の実施例の場合に比べてアルミニウム層11と接着剤層9とガラス繊維層7との厚さを維持或いは薄くしつつ微細気泡合成樹脂シート層35、39を含めても1mm以下のシートにできており、遮熱効果だけでなく遮音効果もあり、さらに上記したようにガルバリウム鋼板(登録商標)2の裏面の全面に張る等しても、ネジ止めなども可能になる。同様に、このように裏面全面に張れば、より音鳴り効果を抑えることができることへも繋げることができる。
【0040】
さらに、上記微細気泡によって静止空気層ができる結果、断熱性能が向上することになり、折板屋根等の鋼材部分が冷えても熱伝導が低くなるため、アルミニウム層の表面に結露が発生しにくくなる。この点で、折板屋根等の鋼材で起こりやすいと言われてきた結露問題を軽減できるという効果も得られる。
【0041】
図3の遮熱シート33では、微細気泡合成樹脂シート層を2層の複数層としたが、1層であってもよい。微細気泡合成樹脂シートの全体の厚さは、500~1000(μm)マイクロメートル程度を想定しており、それが1層によって実現できるか、複数層によって実現できるかは、全体の層の厚さに対して各層の厚さがどの程度になるかで決めればよい。
【0042】
なお、図1のガラス繊維層7を図2の遮音層25に代えたものでもよい。図3のガラス繊維層7に対しても同様である。ここでの遮音層25はガラス繊維以外の材質のものとなる。図2をもとに言い換えると、図2のガラス繊維層を除いたものであってもよい。この場合も、遮音効果が得られるものとできる。
【0043】
また、図1図3のガラス繊維層7に代えて、ガルバリウム鋼板(登録商標)2の熱収縮によって発生する音鳴りを低減する音鳴り低減層を含むものとしてもよい。ここで、音鳴り低減層は、ガルバリウム鋼板(登録商標)2の熱伸縮の低減を図る材料のものであればよい。
【0044】
さらに、音鳴り低減層については、重ね式折板屋根では重なり部分で鋼板同士が直接接触し、ハゼ式折板屋根ではハゼ部分で鋼板同士が直接接触していたことで発生していた音鳴りと云われる、所謂板鳴りの低減の役割をさらに果たさせるべく、中央部は空間を設け、両側には音鳴り低減層を厚く設けてもよい。
【0045】
さらに、上記の実施の形態では、敢えて材質が異なるものが接着していることを示すべく接着剤層を示したが、接着剤層がなくても接着できるものは直接接着すればよい。
【0046】
さらに、図1の実施の形態で、層の順番は問わないと記載したが、図2の実施の形態及び図3を含めた上記の他の実施の形態においても、層の順番は問わない。
【0047】
なお、上記では、主に屋根に用いられる建築用の遮熱シートを説明したが、屋根以外にも壁その他の建築用の遮熱シートとして用いられるものであってもよい。
【0048】
さらに、上記では鋼板としてガルバリウム鋼板(登録商標)を用いたが、ステンレス鋼板などの他の材料を用いた鋼板であってもよく、単一の種類の材料の鋼板であるのか、複数の種類の材料の鋼板であるのかも問わない。
【符号の説明】
【0049】
1,21,31・・・建築用部材、2・・・ガルバリウム鋼板(登録商標)、3,23,33・・・遮熱シート、7・・・ガラス繊維層、11・・・アルミニウム層、25・・・遮音層、35,39・・・微細気泡合成樹脂シート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7