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特開2024-4838測位装置およびそれを備えた無人搬送機システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004838
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】測位装置およびそれを備えた無人搬送機システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20240110BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01S5/02 A
G01S17/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104699
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅之
【テーマコード(参考)】
5J062
5J084
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062CC11
5J062FF01
5J084AA05
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA03
5J084CA03
(57)【要約】
【課題】遮蔽物がある環境下においても移動体と測位対象物との相対位置を精度良く検出可能な測位装置および無人搬送システムを提供する。
【解決手段】
移動体AGVに対する測位対象物Pの相対位置を測定する測位装置は、移動体に取り付けられ、検出領域に光を照射するとともに、検出領域Rに存在する物体からの反射光を受光することによって、物体情報を検出する光センサ50と、光センサが検出する物体情報に基づいて、検出領域における遮蔽物Eを検出するとともに、死角領域BRを検出する死角検出部と、測位対象物に配置される測位側端末20と、移動体に配置され、測位側端末との間で電磁波を送受信する双方向通信を行うことで、端末間距離を算出可能な移動側端末30、31、32、33と、移動側端末が算出する端末間距離および死角検出部が検出する死角領域に基づいて、死角領域に存在する測位対象物の位置を測定する位置測定部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路(AW)に沿って移動する移動体(AGV)に対する測位対象物(P)の相対位置を測定する測位装置であって、
前記移動体に取り付けられ、光を照射する領域である検出領域(R)に光を照射するとともに、前記検出領域に存在する物体からの反射光を受光することによって、前記物体の位置および形状に関する物体情報を検出する光センサ(50)と、
前記光センサが検出する前記物体情報に基づいて、前記検出領域における前記光センサが照射する光を遮蔽する遮蔽物(E)を検出するとともに、前記遮蔽物の存在に起因して前記光センサによって前記検出領域に存在する前記測位対象物を検出することができない領域である死角領域(BR)を検出する死角検出部(55)と、
前記測位対象物に配置される測位側端末(20)と、
前記移動体に配置され、前記測位側端末との間で電磁波を送受信する双方向通信を行うことで、自身と前記測位側端末との距離である端末間距離を算出可能な移動側端末(30、31、32、33)と、
前記移動側端末が算出する前記端末間距離および前記死角検出部が検出する前記死角領域に基づいて、前記死角領域に存在する前記測位対象物の位置を測定する位置測定部(60)と、を備える測位装置。
【請求項2】
前記移動側端末は、互いに異なる位置に3つ以上設けられ、3つ以上の前記移動側端末それぞれが前記端末間距離を算出し、
前記位置測定部は、3つ以上の前記移動側端末それぞれを中心とし、該中心となる前記移動側端末にそれぞれ対応する前記端末間距離を半径とする3つ以上の仮想円それぞれの交点に基づいて、前記死角領域に存在する前記測位対象物の位置を測定する請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記測位側端末および前記移動側端末は、前記遮蔽物の高さ以上の位置に配置される請求項1に記載の測位装置。
【請求項4】
前記測位側端末と前記移動側端末との通信を抑制する通信抑制部(40)を備え、
前記通信抑制部は、前記移動体において、前記移動側端末が配置される位置より前記移動体の進行方向(D1)の後方側に取り付けられる請求項1に記載の測位装置。
【請求項5】
前記通信抑制部は、前記移動側端末に対向する通信抑制面(41)を有し、
前記通信抑制面は、前記移動体の高さ方向および前記進行方向に直交する幅方向(D3)において、前記移動側端末から前記通信抑制面の一方側の端部までの長さおよび前記移動側端末から前記通信抑制面の他方側の端部のまでの長さが、前記電磁波の波長以上に設定される請求項4に記載の測位装置。
【請求項6】
前記通信抑制部は、前記移動側端末に対向する通信抑制面(41)を有し、前記進行方向における前記通信抑制面と前記移動側端末との距離が前記電磁波の波長の1/4以下に設定される請求項4に記載の測位装置。
【請求項7】
前記死角領域に向かって前記電磁波を反射させることで、前記移動側端末と前記死角領域に存在する前記測位側端末とを双方向通信させる反射部(80)を備え、
前記移動側端末は、前記反射部を介して前記移動側端末と前記測位側端末とが双方向通信する際に前記電磁波が進む距離を、自身と前記測位側端末との距離を仮想端末間距離として算出可能であって、
前記位置測定部は、前記仮想端末間距離および前記反射部が配置される位置情報に基づいて前記死角領域に存在する前記測位対象物の位置を測定する請求項1に記載の測位装置。
【請求項8】
前記移動側端末は、互いに異なる位置に3つ以上設けられ、3つ以上の前記移動側端末それぞれが前記仮想端末間距離を算出し、
前記位置測定部は、3つ以上の前記移動側端末それぞれを中心とし、該中心となる前記移動側端末にそれぞれ対応する前記仮想端末間距離を半径とする3つ以上の仮想円それぞれの交点および前記反射部が配置される位置情報に基づいて、前記死角領域に存在する前記測位対象物の位置を測定する請求項7に記載の測位装置。
【請求項9】
3つ以上の前記移動側端末それぞれに対応する前記仮想端末間距離それぞれおよび前記反射部が配置される位置情報に基づいて算出される前記測位側端末の位置を推定位置とし、前記反射部で反射される前記電磁波の反射角を変化させることによって変化する複数の前記移動側端末にそれぞれ対応する複数の前記推定位置の軌跡を推定軌跡(T1、T2、T3)としたとき、
前記位置測定部は、複数の前記推定軌跡それぞれの交点に基づいて、前記死角領域に存在する前記測位対象物の位置を測定する請求項7に記載の測位装置。
【請求項10】
前記反射部は、前記移動体に対して前記遮蔽物の手前側および奥側それぞれにおいて、前記遮蔽物から離れた位置に設けられており、
前記移動側端末は、前記遮蔽物の手前側に設けられた前記反射部および前記遮蔽物の奥側に設けられた前記反射部のうちの少なくともどちらか一方と双方向通信を行うことで前記仮想端末間距離を算出する請求項7に記載の測位装置。
【請求項11】
前記反射部は、前記遮蔽物に対向する板面を有する板形状であって、垂直方向および前記反射部の板厚方向に直交する方向の大きさが、前記電磁波の波長以上に設定される請求項7に記載の測位装置。
【請求項12】
前記反射部は、前記移動側端末と前記測位側端末とが双方向通信する際に前記電磁波を反射させる平面状の反射面(81)を有し、
前記反射面の前記移動体の進行方向(D1)における前方側端部と前記走行路との前記進行方向に直交する方向の距離を前端距離とし、前記反射面の前記進行方向における後方側端部と前記走行路との前記進行方向に直交する方向の距離を後端距離としたとき、
前記遮蔽物の手前側に設けられた前記反射部の前記反射面および前記遮蔽物の奥側に設けられた前記反射部の前記反射面は、前記前端距離に比較して前記後端距離が大きくなるように前記進行方向に対して傾斜している請求項7に記載の測位装置。
【請求項13】
前記反射部は、前記移動側端末と前記測位側端末とが双方向通信する際に前記電磁波を反射させる反射面(81)を有し、
前記反射面は、垂直方向における上方側の端部および下方側の端部に比較して中央部分が前記遮蔽物から離れるように屈曲した形状で形成されている請求項7に記載の測位装置。
【請求項14】
前記反射部には、複数のスリットが設けられている請求項7に記載の測位装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の測位装置を含み、前記移動体である無人搬送機の動作を制御する無人搬送機システムであって、
前記測位対象物は、人(P)であって、
前記無人搬送機の運転モードを通常モードと、前記通常モードより移動速度が遅い警戒モードとに切り替える運転モード制御部(60)を備え、
前記位置測定部は、前記死角領域に前記人が存在するか否かを検出可能であって、
前記運転モード制御部は、
前記光センサが前記無人搬送機の進行方向の前方側に前記人の存在を検出する場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出する場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定する無人搬送機システム。
【請求項16】
前記運転モード制御部は、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出し、且つ、前記移動側端末が算出する前記端末間距離が前記無人搬送機の移動に伴い大きくなる場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出し、且つ、前記移動側端末が算出する前記端末間距離が前記無人搬送機の移動に伴い小さくなる場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定する請求項15に記載の無人搬送機システム。
【請求項17】
前記進行方向の前方側に前記死角領域が存在することを示す前方死角領域情報を読み取る死角情報読取部(70)を備え、
前記運転モード制御部は、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出しない場合において、前記死角情報読取部が前記前方死角領域情報を取得しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出しない場合において、前記死角情報読取部が前記前方死角領域情報を取得する場合、前記死角検出部が前記死角領域を検出したとみなす請求項15に記載の無人搬送機システム。
【請求項18】
前記前方死角領域情報は、図形、記号、数字、文字およびコードのいずれか1つもしくは複数の組み合わせによって構成されており、
前記死角情報読取部は、前記前方死角領域情報を読み取るカメラで構成されている請求項17に記載の無人搬送機システム。
【請求項19】
請求項4ないし6のいずれか1つに記載の測位装置を含み、前記移動体である無人搬送機の動作を制御する無人搬送機システムであって、
前記測位対象物は、人(P)であって、
前記無人搬送機の運転モードを通常モードと、前記通常モードより移動速度が遅い警戒モードとに切り替える運転モード制御部(60)を備え、
前記位置測定部は、前記死角領域に前記人が存在するか否かを検出可能であって、
前記移動側端末および前記測位側端末の少なくとも一方は、一方の端末から他方の端末へ送信された前記電磁波を受信した際の前記電磁波の通信強度の減衰量を検出可能であって、
前記運転モード制御部は、
前記移動側端末と前記測位側端末とが双方向通信する際の前記電磁波の通信強度と前記端末間距離との相関関係を示す減衰特性を記憶しており、
前記光センサが前記無人搬送機の進行方向の前方側に前記人の存在を検出する場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出し、且つ、前記減衰量が、前記減衰特性に基づいて定められる所定の許容値以下の場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出し、且つ、前記減衰量が、前記許容値より大きい場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定する無人搬送機システム。
【請求項20】
請求項7ないし9のいずれか1つに記載の測位装置を含み、前記移動体である無人搬送機の動作を制御する無人搬送機システムであって、
前記測位対象物は、人(P)であって、
前記死角領域に前記反射部が存在するか否かを判定する反射判定部(55)と、
前記無人搬送機の運転モードを通常モードと、前記通常モードより移動速度が遅い警戒モードとに切り替える運転モード制御部(60)と、を備え、
前記位置測定部は、前記死角領域に前記人が存在するか否かを検出可能であって、
前記運転モード制御部は、
前記光センサが前記無人搬送機の進行方向の前方側に前記人の存在を検出する場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記反射判定部が前記反射部の存在を検出しない場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記反射判定部が前記反射部の存在を検出し、且つ、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出しない場合、前記運転モードを前記通常モードに設定し、
前記光センサが前記進行方向の前方側に前記人の存在を検出せず、且つ、前記死角検出部が前記死角領域を検出する場合において、前記反射判定部が前記反射部の存在を検出し、且つ、前記位置測定部が前記死角領域に前記人が存在することを検出する場合、前記運転モードを前記警戒モードに設定する無人搬送機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測位装置およびそれを備えた無人搬送機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信機と、複数の位置検出ユニットと、コントローラとを備えた時刻同期化システムがある(例えば、特許文献1参照)。この時刻同期化システムにおいて、送信機と、複数の位置検出システムは、無線通信システムの一部を形成しており、既知の場所に設定されている。そして、複数の位置検出ユニットは、TDOA(Time Difference Of Arrival)位置決定法を使用して無線通信システム内に設けられた無線装置の位置を検出する。また、送信機および複数の位置検出ユニットは、双方向通信可能に構成されており、それぞれが送信する信号を互いに受信可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-53753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、特許文献1に記載の時刻同期化システムにおける位置検出ユニットのような通信端末の位置を検出する測位装置を、例えば、工場内で使用される無人搬送システムに用いることを検討した。具体的には、発明者らは、通信端末を無人搬送機に搭載するとともに、作業者に保持させて、無人搬送機に対する作業者の相対位置を測定し、この相対位置に応じて無人搬送機の移動速度を変更させることを検討した。
【0005】
ところで、工場内には、設備や柱など、無人搬送機に搭載する通信端末と作業者に保持させる通信端末との通信を妨げる遮蔽物がある。この場合、無人搬送機に搭載する通信端末と作業者に保持させる通信端末との通信が遮蔽物によって妨げられ、無人搬送機に搭載する通信端末に対する作業者に保持させる通信端末の相対位置を精度良く検出することができなくなる虞がある。すると、無人搬送機に対する作業者の相対位置に応じて無人搬送機の移動速度を変更させることが難しい。
【0006】
このため、発明者らは、無人搬送機に搭載する通信端末と作業者に保持させる通信端末との通信を中継させる通信アンテナを遮蔽物の影響を受け難い工場内の天井に設置することで、無人搬送機に対する作業者の相対位置を精度良く検出することを検討した。以下、無人搬送機を移動体、移動体に配置される通信端末を移動側端末、作業者を測位対象物、測位対象物に配置される通信端末を測位側端末とも呼ぶ。
【0007】
しかし、天井に設置した通信アンテナを介して移動側端末と測位側端末とを通信させる場合、当該通信アンテナを天井へ設置する作業が必要となる。しかし、天井への設置作業は、簡単でなく、比較的多くの作業工数が必要となる。また、移動体が走行する通路を変更させる際には、移動側端末と測位側端末との確実性を維持するために、通信アンテナの設置場所の変更が必要となることがある。そして、設置場所の変更にも比較的多くの作業工数が必要となる。
【0008】
このため、通信を妨げる遮蔽物がある環境下において、通信アンテナを用いて移動側端末と測位側端末との通信を行う方法は、設置工数が問題となる。このため、通信を妨げる遮蔽物がある環境下において、多くの作業工数が必要な中継器等を用いることなく、移動体に対する測位対象物の相対位置を精度良く検出可能な装置が望まれる。
【0009】
本開示は、上記点に鑑みて、通信を妨げる遮蔽物がある環境下においても移動体と測位対象物との相対位置を精度良く検出可能な測位装置および無人搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
走行路(AW)に沿って移動する移動体(AGV)に対する測位対象物(P)の相対位置を測定する測位装置であって、
移動体に取り付けられ、光を照射する領域である検出領域(R)に光を照射するとともに、検出領域に存在する物体からの反射光を受光することによって、物体の位置および形状に関する物体情報を検出する光センサ(50)と、
光センサが検出する物体情報に基づいて、検出領域における光センサが照射する光を遮蔽する遮蔽物(E)を検出するとともに、遮蔽物の存在に起因して光センサによって検出領域に存在する測位対象物を検出することができない領域である死角領域(BR)を検出する死角検出部(55)と、
測位対象物に配置される測位側端末(20)と、
移動体に配置され、測位側端末との間で電磁波を送受信する双方向通信を行うことで、自身と測位側端末との距離である端末間距離を算出可能な移動側端末(30、31、32、33)と、
移動側端末が算出する端末間距離および死角検出部が検出する死角領域に基づいて、死角領域に存在する測位対象物の位置を測定する位置測定部(60)と、を備える。
【0011】
これによれば、測位装置は、検出領域における死角領域とは異なる領域に存在する測位対象物の位置を、光センサによって検出することができる。また、測位装置は、測位対象物が死角領域に存在する場合であっても、死角領域および端末間距離に基づいて、この死角領域に存在する測位対象物の位置を測定することができる。このため、移動側端末と測位側端末との通信を妨げる遮蔽物がある環境下においても、移動体に対する測位対象物の相対位置を精度良く検出するができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る無人搬送システムが適用される工場内を示す図である。
図2】第1実施形態に係る測位装置の概略構成を説明するための図である。
図3】測位側端末および移動側端末と設備との配置関係を示す図である。
図4】移動側端末と通信抑制部との位置関係および通信抑制部の形状を説明するための図である。
図5】死角検出部が検出する死角領域の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る移動側端末が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る測位側端末が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る死角検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10】第1実施形態に係る制御装置が人の位置を算出する際に実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態に係る制御装置が端末間距離を用いて人の位置を算出する方法を説明するための図である。
図12】端末間距離に誤差がある場合において、制御装置が人の位置を算出する方法を説明するための図である。
図13】測位側端末および移動側端末の高さ方向の位置を変化させた際に算出される端末間距離の精度を比較した実験結果を示す図である。
図14】移動側端末から送信される電磁波のうち、大きい通信強度が望まれる範囲と小さい通信強度でもよい範囲を示す図である。
図15】通信抑制部の左右方向の長さを変化させた際の通信強度を比較した実験結果を示す図である。
図16】抑制面間隔を変化させた際の通信強度を比較した実験結果を示す図である。
図17】第2実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図18】第2実施形態に係る制御装置が実行する制御処理を説明するための図である。
図19】第3実施形態に係る測位装置の構成を説明するための図である。
図20】第3実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図21】第4実施形態に係る移動側端末が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図22】第4実施形態に係る測位側端末が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図23】第4実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図24】第5実施形態に係る無人搬送システムが適用される工場内において、死角領域を説明するための図である。
図25】第5実施形態に係る無人搬送システムが適用される工場内において、反射通信領域を説明するための図である。
図26】第5実施形態に係る移動側端末が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図27】第5実施形態に係る死角検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図28】第5実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図29】第5実施形態に係る制御装置が仮想端末間距離を用いて人の位置を算出する方法を説明するための図である。
図30】仮想端末間距離に誤差がある場合において、制御装置が人の位置を算出する方法を説明するための図である。
図31】第5実施形態に係る制御装置が人の位置を算出する際に実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図32】第6実施形態に係る無人搬送システムが適用される工場内において、反射部の配置を説明するための図である。
図33】第6実施形態に係る反射部の角度を説明するための図である。
図34】反射部が設けられない場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図35】反射部の反射部長が2cmである場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図36】反射部の反射部長が4cmである場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図37】反射部の反射部長が8cmである場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図38】反射部の反射部長が16cmである場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図39】移動側端末が送信した電磁波の通信強度を測定する実験における反射部の取付状態を示す図である。
図40】反射部を進行方向に対して直交するように取り付けた場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図41】反射部を進行方向に対して平行するように取り付けた場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図42】反射部を進行方向に対して傾斜するように取り付けた場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図43】移動側端末が送信した電磁波の通信強度を測定する実験における反射部の取付角度を示す図である。
図44】第7実施形態に係る反射部を示す図である。
図45】反射部にスリットが設けられない場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図46】反射部にスリットを設けた場合において、移動側端末が送信した電磁波の通信強度を示す図である。
図47】第8実施形態に係る反射部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態の測位装置10および当該測位装置10を備える無人搬送システムについて、図1図16を参照して説明する。図2に示す測位装置10は、図1に示す移動体である無人搬送機AGVを制御する無人搬送システムに用いられるものである。
【0016】
無人搬送システムは、例えば、工場内を走行してワークを自動搬送したり、倉庫内を走行して商品を自動搬送したりするのに用いられる無人搬送機AGVの動作を制御するシステムである。具体的には、無人搬送システムは、無人搬送機AGVの走行路AW、走行開始および走行停止、走行速度等の制御を行うものである。本実施形態では、本開示の測位装置10を、工場内で走行する無人搬送機AGVの制御を行う無人搬送システムに適用した例について説明する。本開示の無人搬送システムは、測位装置10が検出する無人搬送機AGVと工場内において歩行ルートPWを歩行する測位対象物である人Pとの位置関係に基づいて、無人搬送機AGVの走行速度の制御を行うことができる。
【0017】
まず、無人搬送機AGVおよび測位装置10について説明する。無人搬送機AGVは、工場内において予め設定された走行路AWを予め設定された走行速度で走行して搬送物であるワークを搬送する搬送車である。無人搬送機AGVは、図2および図3に示すように、図示しない走行用の駆動装置が収容される筐体H、駆動装置からの駆動力によって回転する車輪W、ワークの搬送に使用する通い箱Bを備える。また、無人搬送機AGVは、後述する測位装置10を構成する機器の一部である、3つの移動側端末30、通信抑制部40、光センサ50、死角検出部55、制御装置60を備える。
【0018】
なお、以下の説明において、測位装置10および無人搬送システムを説明するため、図1図3等において、無人搬送機AGVの進行方向を前後方向D1とし、無人搬送機AGVの垂直方向を高さ方向D2とする。また、前後方向D1および高さ方向D2に直交し、無人搬送機AGVの幅方向を左右方向D3とする。そして、前後方向D1における前方を単に前方、前後方向D1における後方を単に後方と記載し、高さ方向D2における上方を単に上方、高さ方向D2における下方を単に下方と記載する。また、左右方向D3において、無人搬送機AGVの進行方向に対する左方を単に左方、無人搬送機AGVの進行方向に対する右方を単に右方と記載する。
【0019】
筐体Hは、長手方向が前後方向D1とされた直方体形状とされており、筐体Hの内部に無人搬送機AGVを駆動させるための駆動装置、当該駆動装置を制御する制御装置60および後述する死角領域BRを検出する死角検出部55を収容している。また、筐体Hの下方には、駆動装置から供給される駆動力によって回転する車輪Wが設けられる。そして、筐体Hの上方には、ワークを収容する通い箱B、測位装置10の構成機器である3つの移動側端末30、通信抑制部40および光センサ50が設けられている。
【0020】
本実施形態では、無人搬送機AGVに収容される制御装置60が無人搬送機AGVの走行を制御する走行制御部として機能する。そして、無人搬送機AGVは、この制御装置60によって、走行開始および走行停止が制御されるとともに、走行する際の走行速度が制御される。
【0021】
また、本実施形態における制御装置60は、測位装置10が無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を測定する際の位置測定部としても機能する。そして、制御装置60は、検出する無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置に基づいて、無人搬送機AGVの走行速度を制御する。本実施形態では、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置に基づいて、無人搬送機AGVの運転モードが、通常モードと通常モードより移動速度が遅い警戒モードに変更可能に構成されている。
【0022】
通常モードの移動速度は、無人搬送機AGVが走行する際に通常設定される移動速度であって、無人搬送システムが異常を検出しない際に用いられる速度である。これに対して、警戒モードの移動速度は、無人搬送システムによって無人搬送機AGVの移動速度を通常モードに比較して遅くする必要があると判定された場合に設定される速度である。このため、無人搬送機AGVの運転モードは、基本的に通常モードで設定され、必要に応じて通常モードより移動速度が遅い警戒モードに設定される。具体的な運転モードの変更方法については後述する。
【0023】
続いて、測位装置10について説明する。測位装置10は、無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御するため、工場内を走行する無人搬送機AGVから視た工場内に存在する人Pの相対位置を測定する。測位装置10は、測位側端末20、3つの移動側端末30、通信抑制部40、光センサ50、死角検出部55および制御装置60を備える。
【0024】
測位側端末20は、工場内に存在する人Pに保持される無線端末である。測位側端末20は、電磁波を送受信して3つの移動側端末30それぞれと双方向通信することで、人Pの位置を特定するための端末である。測位側端末20は、人Pに保持させることで、無人搬送機AGVから視た人Pの位置を特定可能とされている。
【0025】
測位側端末20は、電磁波を送受信する不図示のアンテナおよびCPU、メモリなどを有する不図示の送受信機含んで構成されている。測位側端末20は、アンテナを介して送受信機が3つの移動側端末30それぞれから送信される信号を受信するとともに、この受信する信号をトリガに送受信機が3つの移動側端末30それぞれへ信号を送信する。
【0026】
測位側端末20は、例えば、3つの移動側端末30それぞれから送信される信号を受信すると、当該信号から信号の送信時刻に関する情報を取得する。また、測位側端末20は、3つの移動側端末30それぞれから送信される信号を受信する際の受信時刻に関する情報を含む信号を3つの移動側端末30それぞれへ送信する。
【0027】
測位側端末20と3つの移動側端末30との通信には、広帯域の周波数を使用し、短いパルス状の電磁波による通信を行うUWB(Ultra-Wide Bandの略)通信を採用することができる。具体的には、本実施形態の測位装置10では、例えば、UWB通信で使用可能な周波数帯域のうち、8GHz帯域の周波数を使用することができる。そして、測位側端末20が有するアンテナは、UWB通信可能なボウタイアンテナで構成されている。
【0028】
なお、測位側端末20と3つの移動側端末30との通信は、UWB通信とは異なる通信方法(例えば、無線LAN通信など)で通信する構成であってもよい。また、測位側端末20と3つの移動側端末30との通信がUWB通信によって為されるものであっても、用いられる周波数は、8GHz帯域に限定されるものでなく、8GHz帯域とは異なる周波数帯域が採用されてもよい。
【0029】
また、測位側端末20は、図3に示すように、自身の設置位置が工場内に配置されている設備Eの高さ以上に維持されるように人Pに保持されている。そのように配置される理由として、測位側端末20を保持する人Pと3つの移動側端末30が設けられる無人搬送機AGVとの間に設備Eが存在する場合、当該設備Eによって、これら端末間の通信が遮られる虞がある。すなわち、工場内に配置されている設備Eは、測位側端末20と3つの移動側端末30それぞれとの双方向通信を遮蔽する遮蔽物となりえるものである。これに対して、測位側端末20の設置位置を設備Eの高さ以上に保持することで、遮蔽物である設備Eが人Pと無人搬送機AGVとの間に存在しても、設備Eによる端末間通信の遮蔽の影響を抑制することができる。
【0030】
3つの移動側端末30は、無人搬送機AGVに取り付けられる無線端末である。3つの移動側端末30は、電磁波を送受信して測位側端末20と無線通信することで、人Pの位置を特定するための端末である。3つの移動側端末30のうち、2つの移動側端末30は、図2に示すように、無人搬送機AGVにおける前方側であって、左方側および右方側にそれぞれ1つずつ配置されている。また、3つの移動側端末30のうち、残り1つの移動側端末30は、無人搬送機AGVにおける後方側であって、左方側に配置されている。
【0031】
以下、3つの移動側端末30のうち、無人搬送機AGVにおける前方の左方側に配置される端末を第1移動側端末31、前方の右方側に配置される端末を第2移動側端末32、後方側に配置される端末を第3移動側端末33とも呼ぶ。また、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33を纏めて単に各移動側端末30と呼ぶ場合もある。なお、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、基本的な構造が同様に構成されている。このため、以下では、第1移動側端末31の構成を代表して説明し、第2移動側端末32および第3移動側端末33の説明を省略する。
【0032】
第1移動側端末31は、測位側端末20との間で電磁波を送受信することで双方向通信可能に構成されている。第1移動側端末31は、測位側端末20と同様、電磁波を送受信する不図示のアンテナおよびCPU、メモリなどを有する不図示の送受信機含んで構成されている。第1移動側端末31は、測位側端末20が通信可能な位置に存在する場合、アンテナを介して送受信機が測位側端末20に信号を送信するとともに、この信号の受信をトリガに測位側端末20が送信する応答信号を受信する。そして、第1移動側端末31は、測位側端末20との双方向通信によって、第1移動側端末31と測位側端末20との間の距離を算出可能に構成されている。
【0033】
第1移動側端末31と測位側端末20との距離を算出する方法としては、例えば、TOF(Time of Flightの略)法を採用することができる。この場合、第1移動側端末31は、自身が送信する信号の送信時刻に関する情報を含む信号を測位側端末20に送信する。また、第1移動側端末31は、第1移動側端末31が送信した信号を測位側端末20が受信した際の受信時刻に関する情報を含む信号を測位側端末20から受信する。そして、第1移動側端末31は、第1移動側端末31と測位側端末20との間の信号伝搬時間を算出し、算出した信号伝搬時間に音速を乗算することで、第1移動側端末31と測位側端末20との間の距離を算出する。
【0034】
以下、図1に示すように、第1移動側端末31と測位側端末20との距離を第1端末間距離TD1、第2移動側端末32と測位側端末20との距離を第2端末間距離TD2、第3移動側端末33と測位側端末20との距離を第3端末間距離TD3とも呼ぶ。
【0035】
なお、第1端末間距離TD1を算出する方法としては、TOF法とは異なる方法を採用してもよい。例えば、第1端末間距離TD1を算出する方法としては、第1移動側端末31が送信する信号が測位側端末20に到達した際の信号の減衰レベルに基づいて算出する方法を採用してもよい。また、第1端末間距離TD1を算出する方法としては、第1移動側端末31が送信する信号が測位側端末20に到達した際の信号の位相の変化に基づいて算出する方法を採用してもよい。
【0036】
また、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、図3に示すように、測位側端末20の設置位置と同様、それぞれの設置位置が工場内に配置されている設備Eの高さ以上に維持されるように無人搬送機AGVに保持されている。これにより、遮蔽物である設備Eが人Pと無人搬送機AGVとの間に存在しても、設備Eによる第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33それぞれと測位側端末20との通信の遮蔽の影響を抑制することができる。なお、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、互いの高さ方向D2における位置が略同じ位置となるように配置されている。
【0037】
また、本実施形態の測位装置10は、測位側端末20と第3移動側端末33との通信を抑制する通信抑制部40を備えている。通信抑制部40は、測位側端末20と第3移動側端末33の通信を抑制する部材であって、例えば、薄板状の基板に導体線を格子状に配置した導体板で構成されている。通信抑制部40は、図4に示すように、無人搬送機AGVに設けられる第3移動側端末33に対向する位置に取り付けられている。具体的に、通信抑制部40は、無人搬送機AGVにおける第3移動側端末33が配置される位置より後方側に取り付けられている。
【0038】
通信抑制部40は、第3移動側端末33に対向する通信抑制面41を有する。そして、通信抑制部40は、無人搬送機AGVの幅方向である左右方向D3における第3移動側端末33から通信抑制面41の左方側の端部までの長さである左方抑制面長さWLが、第3移動側端末33が送受信する電磁波の波長以上の大きさで設定される。また、通信抑制部40は、無人搬送機AGVの左右方向D3における第3移動側端末33から通信抑制面41の右方側の端部までの長さである右方抑制面長さWRが、第3移動側端末33が送受信する電磁波の波長以上の大きさで設定される。
【0039】
例えば、本実施形態では、第3移動側端末33が送受信する電磁波の周波数として8GHz帯域が採用されている。このため、通信抑制部40は、左方抑制面長さWLおよび右方抑制面長さWRそれぞれが、第3移動側端末33が送受信する電磁波の1波長分以上の大きさである約4cm以上で設定されている。
【0040】
また、本実施形態では、通信抑制部40は、通信抑制面41の左右方向D3における略中心が第3移動側端末33の略中心に対向するように配置されている。また、左方抑制面長さWLおよび右方抑制面長さWRそれぞれの大きさが略同じ大きさで設定されている。そして、通信抑制部40は、通信抑制面41の左右方向D3の長さWが、第3移動側端末33が送受信する電磁波の2波長分の長さ以上の大きさである8cm以上となっている。
【0041】
また、通信抑制部40は、前後方向D1における通信抑制面41と第3移動側端末33との距離である抑制面間隔Sが、第3移動側端末33が送受信する電磁波の波長の1/4以下の大きさで設定される。具体的に、通信抑制部40は、前後方向D1における通信抑制面41から第3移動側端末33の略中心までの距離が、第3移動側端末33が送受信する電磁波の波長の1/4以下の大きさである1cm以下で設定される。
【0042】
このような通信抑制部40を備える構成によって、本実施形態の第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33から送信される電磁波は、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33の後方へ送信され難くなる。このため、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33から送信される電磁波は、図1に示すように、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33それぞれの前方側を中心に左右方向D3に拡がって送信される。なお、図1等において、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれの電磁波の送信範囲を破線で示している。なお、図1図2等においては、通信抑制部40を省略している。
【0043】
光センサ50は、光センサ50の周囲に向けて赤外線のレーザ光をパルス状に照射し、光センサ50の周囲に存在する物体で反射された反射光を受光することで、レーザ光が照射される領域である検出領域Rに存在する物体を検出するセンサである。光センサ50は、照射したレーザ光が所定の物体で反射され、この反射したレーザ光を受光するまでの時間を測定することで、光センサ50から所定の物体までの距離および方向を検出可能に構成されている。また、光センサ50は、照射するレーザ光の照射方向を高さ方向D2および左右方向D3の各方向に動かしながらスキャンすることにより、光センサ50の周囲に存在する物体の形状を検出可能に構成されている。なお、光センサ50は、Lidar(Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれ、自動車の自動運転や高度運転支援にも使われるものである。
【0044】
本実施形態では、光センサ50は、無人搬送機AGVにおける前方側に取り付けられている。そして、光センサ50は、図5に示すように、無人搬送機AGVが走行路AWに沿って移動する際に、検出領域Rに存在する設備Eおよび人Pの位置および形状の情報を含む物体情報を検出する。また、図2に示すように、光センサ50は、死角検出部55に接続されており、検出した物体情報を死角検出部55に送信する。
【0045】
ところで、検出領域Rにレーザ光を遮蔽する遮蔽物である設備Eが存在する場合、光センサ50から照射されるレーザ光が当該設備Eによって遮られる場合がある。この場合、光センサ50は、検出領域Rであっても設備Eによってレーザ光の照射が遮られる領域に存在する人Pを検出することができない。
【0046】
例えば、図5に示すように、光センサ50からレーザ光が広がる領域を検出領域Rとしたとき、光センサ50から設備Eに向かって直線状に照射されたレーザ光は、当該設備Eによって遮られる部分に届かない。この場合、光センサ50は、設備Eによってレーザ光が遮られる部分に存在する人Pを検出することができない。以下、設備Eの存在に起因して光センサ50が検出領域Rにおける人Pの存在を検出することができない領域を死角領域BRとも呼ぶ。なお、図5では、死角領域BRを分かり易くするため、死角領域BRに斜線のハッチングを付している。
【0047】
死角検出部55は、光センサ50から送信される物体情報に基づいて死角領域BRを検出するものである。死角検出部55は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等を備えたマイクロコンピュータ等で構成されたものである。そして、死角検出部55は、CPUがROM等からプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0048】
本実施形態の死角検出部55は、工場内における設備Eが配置された位置を示す設備配置情報を予め記憶しており、当該設備配置情報と光センサ50から送信される物体情報とを比較する。そして、設備配置情報に示される設備Eの位置情報と光センサ50から送信される物体情報に含まれる設備Eの位置情報とが一致する場合、当該設備Eによって遮られる領域を死角領域BRとして検出する。図2に示すように、死角検出部55は、制御装置60に接続されており、検出した死角領域BRの情報および光センサ50が検出した物体情報を制御装置60に送信する。
【0049】
なお、光センサ50は、Lidarに限定されることなく、自身の周囲に向けて光を照射し、照射された光を反射する物体からの反射光によって検出領域Rに存在する物体を検出可能であれば、Lidarとは異なるセンサ(例えば、画像センサ)を用いてもよい。
【0050】
制御装置60は、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33および死角検出部55から送信される信号に基づいて、無人搬送機AGVに対する死角領域BRに存在する人Pの相対位置を測定する。そして、制御装置60は、検出した無人搬送機AGVに対する死角領域BRに存在する人Pの相対位置に基づいて無人搬送機AGVの走行を制御するものである。制御装置60は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等を備えたマイクロコンピュータ等で構成されたものである。そして、制御装置60は、CPUがROM等からプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0051】
制御装置60は、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33および死角検出部55から送信される信号を受信すると、無人搬送機AGVに対する死角領域BRに存在する人Pの相対位置を測定する。そして、制御装置60は、検出した無人搬送機AGVに対する死角領域BRに存在する人Pの相対位置に基づいて、無人搬送機AGVの走行速度を制御する。
【0052】
続いて、測位装置10が無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を測定する際に、測位側端末20、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33それぞれが実行する制御処理について図6および図7を参照して説明する。図6は、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれが実行する処理の流れを示すフローチャートである。また、図7は、測位側端末20が実行する処理の流れを示すフローチャートである。ここで、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれが実行する処理は、同様であるため、ここでは第1移動側端末31が実行する制御処理についてのみ説明する。図6に示す処理は、第1移動側端末31および測位側端末20が双方向通信可能な位置に存在する場合に、周期的または不定期に実行される。
【0053】
図6に示すように、ステップS100において、第1移動側端末31は、測位側端末20との双方向通信が可能な状態であるか否かを確認するための通信確認信号を送信する。そして、ステップS110において、第1移動側端末31は、測位側端末20と双方向通信可能か否かを判定する。例えば、第1移動側端末31は、自身が送信する通信確認信号をトリガに測位側端末20が送信する応答信号を受信する場合に測位側端末20と双方向通信可能と判定する。第1移動側端末31は、測位側端末20から送信される応答信号を受信するまでステップS100およびステップS110を繰り返し実行する。
【0054】
また、図7に示すように、測位側端末20は、ステップS200において、第1移動側端末31から送信される通信確認信号を受信したか否かを判定する。測位側端末20は、ステップS200において、第1移動側端末31から送信される通信確認信号を受信するまで待機する。そして、当該通信確認信号を受信すると、ステップS210において、測位側端末20は、第1移動側端末31に確認応答信号を送信する。
【0055】
第1移動側端末31は、測位側端末20からの確認応答信号を受信して測位側端末20と双方向通信可能と判定する場合、ステップS120において、第1移動側端末31と測位側端末20との距離を測定するための距離検出信号を測位側端末20に送信する。この距離検出信号には、第1移動側端末31が距離検出信号を送信する際の送信時刻に関する情報が含まれている。そして、ステップS130において、第1移動側端末31は、送信した距離検出信号の送信時刻をメモリに記憶する。
【0056】
ステップS220において、測位側端末20は、距離検出信号を受信したか否かを判定する。測位側端末20は、ステップS220において、第1移動側端末31から送信される距離検出信号を受信するまで待機する。そして、距離検出信号を受信したと判定する場合、ステップS230において、測位側端末20は、自身が受信した距離検出信号の受信時刻と距離検出信号に含まれる送信時刻との差に基づいて時刻差データを作成する。そして、ステップS240において、測位側端末20は、時刻差データを含む検出応答信号を第1移動側端末31に送信する。
【0057】
ステップS140において、第1移動側端末31は、測位側端末20から送信される検出応答信号を受信したか否かを判定する。第1移動側端末31は、ステップS140において、測位側端末20から送信される検出応答信号を受信するまで待機する。そして、測位側端末20から送信される検出応答信号を受信したと判定する場合、ステップS150において、第1移動側端末31は、第1端末間距離TD1を算出する。具体的に、第1移動側端末31は、第1移動側端末31と測位側端末20との間の信号伝搬時間である時刻差データに音速を乗算して第1端末間距離TD1を算出する。そして、ステップS160において、第1移動側端末31は、自身が算出した第1端末間距離TD1の情報を含む第1端末間距離情報を制御装置60に送信する。
【0058】
第2移動側端末32および第3移動側端末33も同様に、ステップS100~ステップS160の処理を第1移動側端末31が実行する処理とは独立して実行する。そして、第2移動側端末32は、ステップS100~ステップS160の処理を実行することで第2端末間距離TD2を算出し、算出した第2端末間距離TD2の情報を含む第2端末間距離情報を制御装置60に送信する。また、第3移動側端末33は、ステップS100~ステップS160の処理を実行することで第3端末間距離TD3を算出し、算出した第3端末間距離TD3の情報を含む第3端末間距離情報を制御装置60に送信する。
【0059】
続いて、測位装置10が死角領域BRを検出する際に死角検出部55が実行する制御処理について図8を参照して説明する。図8は、検出領域Rに存在する設備Eおよび人Pを検出するために死角検出部55が実行する処理の流れを示すフローチャートである。図8に示す処理は、光センサ50から物体情報が送信されると実行される。
【0060】
ステップS300において、死角検出部55は、光センサ50から物体情報を受信したか否かを判定する。そして、光センサ50から物体情報を受信したと判定する場合、ステップS310において、死角検出部55は、光センサ50が検出した物体情報に基づいて、無人搬送機AGVの検出領域Rに設備Eが存在するか否かを判定する。検出領域Rに設備Eが存在すると判定しない場合、制御装置60は、ステップS320~ステップS340の処理をスキップする。
【0061】
検出領域Rに設備Eが存在すると判定する場合、ステップS320において、死角検出部55は、光センサ50から受信した物体情報に含まれる設備Eの位置が、予め記憶している設備配置情報に含まれる設備Eの位置と一致するか否かを判定する。光センサ50から受信した物体情報に含まれる設備Eの位置と設備配置情報に含まれる設備Eの位置とが一致すると判定する場合、ステップS330において、死角検出部55は、光センサ50が検出した設備Eの位置に基づいて死角領域BRを検出する。具体的に、死角検出部55は、光センサ50から設備Eに向かって直線状に照射されたレーザ光が設備Eによって遮られると想定される部分を死角領域BRとして検出する。そして、ステップS340において、死角検出部55は、検出領域Rに死角領域BRが存在することを示す死角領域存在データを作成する。
【0062】
なお、ステップS320で、光センサ50から受信した物体情報に含まれる設備Eの位置と設備配置情報に含まれる設備Eの位置とが一致すると判定しない場合、制御装置60は、ステップS330およびステップS340の処理をスキップする。
【0063】
続いて、ステップS350において、死角検出部55は、光センサ50から受信した物体情報に基づいて、無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在するか否かを判定する。無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在すると判定する場合、ステップS360において、死角検出部55は、無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在することを示す人存在データを作成する。なお、ステップS350で無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在すると判定しない場合、制御装置60は、ステップS360の処理をスキップする。
【0064】
そして、ステップS370において、死角検出部55は、光センサ50が検出する物体情報に基づいて算出される速度制御情報を送信する。この速度制御情報には、死角領域BRの存在が検出された場合にステップS340で作成される死角領域存在データおよび人Pの存在が検出された場合にステップS360で作成される人存在データが含まれる。
【0065】
続いて、無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に制御装置60が実行する制御処理について図9を参照して説明する。図9は、制御装置60が無人搬送機AGVに対する測位側端末20の相対位置を測定して無人搬送機AGVの運転モードを制御するために実行する処理の流れを示すフローチャートである。図9に示す処理は、死角検出部55から速度制御情報が送信されると、実行される。
【0066】
ステップS400において、制御装置60は、死角検出部55から速度制御情報を受信したか否かを判定する。そして、死角検出部55から速度制御情報を受信したと判定する場合、ステップS410において、制御装置60は、受信した速度制御情報に人存在データが含まれるか否かを判定する。
【0067】
受信した速度制御情報に人存在データが含まれると判定する場合、制御装置60は、ステップS420~ステップS450の処理をスキップし、ステップS460において、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。すなわち、無人搬送機AGVの前方側の検出領域Rに人Pが存在することが光センサ50によって検出された場合、制御装置60は、無人搬送機AGVと人Pとの接触を回避するため、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。これにより、無人搬送機AGVの走行速度は、運転モードが通常モードである場合に比較して遅くなる。
【0068】
これに対して、受信した速度制御情報に人存在データが含まれると判定しない場合、ステップS420において、制御装置60は、受信した速度制御情報に死角領域存在データが含まれるか否かを判定する。受信した速度制御情報に死角領域存在データが含まれると判定しない場合、制御装置60は、ステップS430~ステップS450の処理をスキップし、ステップS470において、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。すなわち、光センサ50によって、無人搬送機AGVの前方側の検出領域Rに人Pの存在が検出されず、且つ、検出領域Rに死角領域BRの存在が検出されない場合、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードにする。これは、無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在せず、且つ、人Pが存在する可能性がある死角領域BRも存在しないことで、無人搬送機AGVと人Pとの接触を回避するために無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要性が無いためである。
【0069】
また、受信した速度制御情報に死角領域存在データが含まれると判定する場合、ステップS430において、制御装置60は、各移動側端末30から第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信したか否かを判定する。第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信したと判定しない場合、制御装置60は、ステップS440およびステップS450の処理をスキップし、ステップS470において、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。すなわち、光センサ50によって検出領域Rに死角領域BRの存在が検出された場合であっても、第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信しない場合、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。
【0070】
ここで、制御装置60が各移動側端末30から第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信しない場合とは、各移動側端末30の周囲に各移動側端末30と双方向通信可能な測位側端末20が存在しない場合とう想定される。このため、無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在する可能性がある死角領域BRが存在する場合であっても、第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信しないことで、この死角領域BRに人Pが存在しないことが確認できる。このような場合、無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要性が無いため、運転モードが通常モードに設定される。これに対して、第1端末間距離情報、第2端末間距離情報および第3端末間距離情報を受信したと判定する場合、ステップS440において、制御装置60は、無人搬送機AGVに対する測位側端末20の相対位置を測定して、人Pの位置を算出する。そして、ステップS450において、制御装置60は、算出した人Pの位置が死角領域BR内であるか否かを判定する。
【0071】
算出した人Pの位置が死角領域BR内であると判定しない場合、ステップS470において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。すなわち、光センサ50によって検出領域Rに死角領域BRの存在が検出された場合であって、人Pが死角領域BR内に存在しない場合、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。これは、無人搬送機AGVの前方側に死角領域BRが存在した場合であっても、この死角領域BRには人Pが存在しないため、無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要性が無いためである。
【0072】
また、算出した人Pの位置が死角領域BR内であると判定する場合、ステップS460において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。すなわち、光センサ50によって無人搬送機AGVの前方側の検出領域Rに死角領域BRの存在が検出された場合であって、死角領域BR内に人Pの存在が検出された場合、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。これは、無人搬送機AGVの前方側に死角領域BRが存在し、この死角領域BRには人Pが存在する虞があるため、無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要性が有るためである。本実施形態では、制御装置60が無人搬送機AGVの運転モードを通常モードと警戒モードとに切り替える運転モード制御部として機能する。
【0073】
ここで、ステップS440において、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3に基づいて人Pの位置の算出する方法について図10図12を参照して説明する。図10は、制御装置60が無人搬送機AGVに対する人Pの位置を算出するために実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0074】
上述したように、第1移動側端末31が算出する第1端末間距離TD1は、第1移動側端末31と測位側端末20との距離である。また、第2移動側端末32が算出する第2端末間距離TD2は、第2移動側端末32と測位側端末20との距離である。そして、第3移動側端末33が算出する第3端末間距離TD3は、第3移動側端末33と測位側端末20との距離である。
【0075】
このため、図11に示すように、第1移動側端末31を中心とし、第1端末間距離TD1を半径とする仮想円を第1仮想円VC1としたとき、測位側端末20は、第1仮想円VC1の円周上に存在すると推定できる。また、第2移動側端末32を中心とし、第2端末間距離TD2を半径とする仮想円を第2仮想円VC2としたとき、測位側端末20は、第2仮想円VC2の円周上に存在すると推定できる。そして、第3移動側端末33を中心とし、第3端末間距離TD3を半径とする仮想円を第3仮想円VC3としたとき、測位側端末20は、第3仮想円VC3の円周上に存在すると推定できる。このため、測位側端末20の位置は、図11に示すように、第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3とが互いに重なる交点Xに一致すると推定できる。
【0076】
ただし、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33が算出する第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3は、測定誤差等によって、実際の各端末間距離とは異なる場合がある。このような場合、図12に示すように、必ずしも第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3とが同一の交点で交わらない場合がある。例えば、死角領域BR内における第1仮想円VC1および第2仮想円VC2の交点を第1交点X1とし、死角領域BR内における第1仮想円VC1および第3仮想円VC3の交点を第2交点X2とする。また、死角領域BR内における第2仮想円VC2および第3仮想円VC3の交点を第3交点X3とする。この場合、第1交点X1と、第2交点X2と、第3交点X3とが一点で交わらない場合がある。しかしながら、測位側端末20の位置は、第1交点X1と、第2交点X2と、第3交点X3とに囲まれる推定設置範囲FR内に存在する可能性が高い。
【0077】
以上の点に鑑みて、ステップS500において、制御装置60は、死角領域BR内における第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3とがそれぞれ重なる交点を算出する。
【0078】
そして、ステップS510において、制御装置60は、算出した第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3それぞれの交点が一致するか否かを判定する。第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3それぞれの交点が一致すると判定する場合、ステップS520において、制御装置60は、この交点Xを無人搬送機AGVに対する測位側端末20の相対位置として測定する。すなわち、制御装置60は、第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3それぞれの交点に基づいて、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を測定する。
【0079】
なお、第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3それぞれの交点が一致するとは、完全に一致するだけでなく、想定される製造誤差等だけずれている場合も一致するとしてもよい。
【0080】
これに対して、第1仮想円VC1と、第2仮想円VC2と、第3仮想円VC3それぞれの交点が一致すると判定しない場合、ステップS530において、制御装置60は、算出した各交点に基づいて推定設置範囲FRを算出する。そして、ステップS540において、制御装置60は、算出した推定設置範囲FR内に測位側端末20があるとして、無人搬送機AGVに対する測位側端末20の凡その相対位置を測定する。この場合、制御装置60は、ステップS450における制御処理において、測定した推定設置範囲FRが死角領域BR内に含まれるか否かを判定する。
【0081】
なお、第1交点X1、第2交点X2および第3交点X3のように、複数の交点が存在する場合、これら複数の交点のうち、いずれか1つを無人搬送機AGVに対する測位側端末20の相対位置として制御装置60が検出してもよい。
【0082】
以上の如く、本実施形態の測位装置10は、検出領域Rにおいて、無人搬送機AGVの周囲の物体情報を検出する光センサ50と、死角領域BRを検出する死角検出部55と、を備える。また、測位装置10は、測位側端末20との双方向通信によって、第1端末間距離TD1を算出する第1移動側端末31と、第2端末間距離TD2を算出する第2移動側端末32と、第3端末間距離TD3を算出する第3移動側端末33と、を備える。そして、測位装置10は、これら死角領域BRと、第1端末間距離TD1と、第2端末間距離TD2と、第3端末間距離TD3とに基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する制御装置60を備える。
【0083】
これによれば、測位装置10は、検出領域Rにおける死角領域BRとは異なる領域に存在する人Pの位置を、光センサ50によって検出することができる。また、人Pが死角領域BRに存在する場合であっても、死角領域BRと、第1端末間距離TD1と、第2端末間距離TD2と、第3端末間距離TD3とに基づいて、この死角領域BRに存在する人Pの位置を測定することができる。このため、各移動側端末30それぞれと測位側端末20との通信を妨げる遮蔽物がある環境下においても、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を精度良く検出するができる。
【0084】
また、各移動側端末30それぞれと測位側端末20との通信を確保するための通信アンテナ等の中継器を天井等に設けることなく、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を精度良く検出するができる。このため、通信アンテナの設置作業や設置場所の変更作業を不要にできる。
【0085】
さらに、本実施形態の測位装置10を含み、無人搬送機AGVの動作を制御する無人搬送システムは、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードと警戒モードとに切り替える制御装置60を備える。制御装置60は、光センサ50が無人搬送機AGVの前方側に人Pの存在を検出する場合、運転モードを警戒モードに設定する。また、制御装置60は、光センサ50が無人搬送機AGVの前方側に人Pの存在を検出せず、且つ、自身が死角領域BRに人Pの存在を検出しない場合、運転モードを通常モードに設定する。そして、制御装置60は、光センサ50が無人搬送機AGVの前方側に人Pの存在を検出せず、且つ、自身が死角領域BRに人Pの存在を検出する場合、運転モードを警戒モードに設定する。
【0086】
これによれば、各移動側端末30と測位側端末20との通信を妨げる遮蔽物がある環境下においても、無人搬送機AGVと人Pとの位置関係に応じて無人搬送機AGVの速度を制御することができる。具体的には、無人搬送機AGVと人Pとの接触する虞がない場合、運転モードを通常モードにすることで、無人搬送機AGVの走行速度が不必要に遅くなることを回避できる。また、無人搬送機AGVと人Pとの接触する虞がある場合、運転モードを通常モードより走行速度が遅い警戒モードにすることで、無人搬送機AGVと人Pとの接触の発生を抑制することができる。
【0087】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0088】
(1)上記実施形態では、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、無人搬送機AGVにおける互いに異なる位置に設けられる。第1移動側端末31は、第1端末間距離TD1を算出する。第2移動側端末32は、第2端末間距離TD2を算出する。第3移動側端末33は第3端末間距離TD3を算出する。制御装置60は、各移動側端末30それぞれを中心とし、各端末間距離TD1~L3を半径とする第1仮想円VC1、第2仮想円VC2、第3仮想円VC3それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する。
【0089】
ところで、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、無人搬送機AGVにおいて互いに異なる位置に設けられるところ、それぞれの設置位置が比較的近くなり易い。すなわち、1つの無人搬送機AGVに搭載される第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、互いの距離が比較的小さくなり易い。これに対して、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれから測位側端末20までの距離は、各移動側端末30間同士の距離に比較して大きくなり易い。
【0090】
このような場合において、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33それぞれが算出する第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3のいずれか1つまたは2つの距離で測位側端末20の位置を測定するとする。すると、測位側端末20の算出位置の誤差が大きくなり易い。
【0091】
例えば、第1移動側端末31のみ備え、第2移動側端末32および第3移動側端末33を備えていない構成であって、第1端末間距離TD1のみで測位側端末20の位置を測定するとする。この場合、算出した第1端末間距離TD1に誤差がある場合、第1端末間距離TD1を半径とする第1仮想円VC1の半径が変化することに起因する測位側端末20の算出位置の誤差が比較的大きくなり易い。
【0092】
また、例えば、第1移動側端末31および第2移動側端末32を備え、第3移動側端末33を備えていない構成であって、第1端末間距離TD1および第2端末間距離TD2を用いて測位側端末20の位置を測定する場合について説明する。この場合、互いの距離が比較的小さい第1移動側端末31および第2移動側端末32を中心とし、第1端末間距離TD1および第2端末間距離TD2を半径とする第1仮想円VC1および第2仮想円VC2の交点に基づいて測位側端末20の位置を測定するとする。すると、算出した第1端末間距離TD1および第2端末間距離TD2に誤差がある場合、これら第1端末間距離TD1および第2端末間距離TD2を半径とする2つの仮想円の交点のずれる量が比較的大きくなり易い。
【0093】
これに対して、本実施形態において、測位装置10は、3つの移動側端末30それぞれを中心とし、各端末間距離を半径とする第1仮想円VC1、第2仮想円VC2、第3仮想円VC3それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する。これによれば、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3のいずれか1つまたは2つを用いて測位側端末20の位置を測定する場合に比較して、測位側端末20の位置を精度良く測定することができる。
【0094】
(2)上記実施形態では、各移動側端末30および測位側端末20それぞれは、遮蔽物である設備Eの高さ以上の位置に配置されている。
【0095】
これによれば、各移動側端末30それぞれと測位側端末20との通信を妨げる設備Eがある環境下においても、当該設備Eに起因する各移動側端末30それぞれと測位側端末20との通信が悪化することを回避することができる。このため、各移動側端末30および測位側端末20がこのような構成になっていない場合に比較して、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3を精度良く算出することができる。そして、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3を用いて測定される無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を精度良く測定するができる。
【0096】
ここで、第1移動側端末31および測位側端末20の高さを設備Eの高さより低い位置に配置した場合と、設備Eの高さと同等の位置に配置した場合で測定した際の測定精度の違いについて、図13を参照して説明する。図13では、図1の一点鎖線Aに示す測定位置において、第1移動側端末31および測位側端末20の高さを変化させて第1端末間距離TD1を測定した場合の測定精度を比較した実験結果を示す。具体的には、設備Eの高さが1.2mである場合において、第1移動側端末31および測位側端末20の高さ方向D2における配置を0.9mの位置と1.2mの位置とに変化させて測定した第1端末間距離TD1の測定誤差の違いを示す。
【0097】
なお、図13のグラフにおける横軸は、左右方向D3における第1移動側端末31と測位側端末20との距離を示す。また、図13のグラフにおける縦軸は、測定した第1端末間距離TD1に対する測定誤差を示す。なお、実験を行った際の左右方向D3における第1移動側端末31から設備Eまでの距離は、約2mであった。このため、左右方向D3における第1移動側端末31から設備Eまでの距離が2m以下の場合、測位側端末20の位置は、死角領域BRに該当しない。しかし、左右方向D3における第1移動側端末31から設備Eまでの距離が2mより大きい場合、測位側端末20の位置は、死角領域BRに該当する。
【0098】
また、図13のグラフで示す四角は、第1移動側端末31および測位側端末20を設備Eの高さより低い0.9mの位置に配置した場合の実験結果を示す。また、図13のグラフで示す丸は、第1移動側端末31および測位側端末20を設備Eの高さと同等である1.2mの位置に配置した場合の実験結果を示す。
【0099】
図13に示すように、左右方向D3における第1移動側端末31と測位側端末20との距離が死角領域BRに該当しない0m~約2mの範囲では、第1移動側端末31および測位側端末20の高さに関わらず、いずれも測定誤差が小さい。すなわち、測位側端末20が死角領域BRに存在しない場合、無人搬送機AGVと人Pとの測定精度は、第1移動側端末31および測位側端末20の高さに影響をされ難い。
【0100】
これに対して、左右方向D3における第1移動側端末31と測位側端末20との距離が死角領域BRに該当する約2mより大きい範囲では、第1移動側端末31および測位側端末20の高さが0.9mである場合、1.2mである場合に比較して測定誤差が大きくなった。これに対して、第1移動側端末31および測位側端末20の高さが1.2mである場合、第1移動側端末31と測位側端末20との距離が死角領域BRに該当しない場合と同程度の測定誤差であった。これより、測位側端末20が死角領域BRに存在しても、第1移動側端末31および測位側端末20の高さが設備Eの高さと同等以上の位置に配置された場合、低い位置に配置される場合に比較して無人搬送機AGVと人Pとの距離を精度よく測定することができる。
【0101】
(3)上記実施形態では、測位装置10は、測位側端末20と第3移動側端末33との通信を抑制する通信抑制部40を備える。通信抑制部40は、無人搬送機AGVにおける第3移動側端末33が配置される位置より無人搬送機AGVに進行方向の後方側に取り付けられている。
【0102】
ところで、測位装置10は、無人搬送機AGVの前方側に位置する測位側端末20を検出することが重要である。これに対して、測位装置10は、無人搬送機AGVの進行方向の後方側に位置する測位側端末20の検出の重要度は低い。これは、無人搬送システムにおいて、無人搬送機AGVが前方側に進行する際に、前方側に存在する人Pに衝突することを回避することを目的に、制御装置60が無人搬送機AGVの走行速度を制御するためである。
【0103】
このため、例えば、第3移動側端末33は、測位側端末20が第3移動側端末33の後方側に位置する場合に比較して測位側端末20が第3移動側端末33の前方側に位置する場合に第1端末間距離TD1を精度良く測定することが望まれる。
【0104】
この場合、図14に示すように、第3移動側端末33は、前後方向D1を基準に左方側へ45°回転させた位置から前後方向D1を基準に右方側へ45°まで回転させた位置に至るまでの範囲に位置する測位側端末20と双方向通信することが重要である。したがって、第3移動側端末33は、前後方向D1を基準に左方側へ45°回転させた位置から前後方向D1を基準に右方側へ45°まで回転させた位置に至るまでの範囲にできるだけ強い通信強度の電磁波を送信させることが望ましい。
【0105】
これに対して、第3移動側端末33は、第3移動側端末33の後方側に位置する測位側端末20と双方向通信する必要性が低い。このため、第3移動側端末33が送信する電磁波は、第3移動側端末33の後方側へ送信される電磁波の通信強度が比較的小さくてもよい。なお、図14では、第3移動側端末33から送信される電磁波の通信強度を測定した測定結果を示しており、大きい通信強度が望まれる範囲をドット柄のハッチングで示し、小さい通信強度でもよい範囲を斜線のハッチングで示している。
【0106】
そして本実施形態によれば、無人搬送機AGVにおける第3移動側端末33が配置される位置より後方側の通信抑制部40によって、無人搬送機AGVより後方側に位置する測位側端末20との通信を抑制することができる。このため、第3移動側端末33から、大きい通信強度が望まれる範囲へ充分な通信強度の電磁波を送信できるとともに、大きい通信強度が不要な後方側への電磁波の送信を抑制することができる。
【0107】
(4)上記実施形態では、通信抑制部40は、左右方向D3における第3移動側端末33から通信抑制面41の一方側および他方側それぞれの端部までの長さが電磁波の波長の長さ以上に設定されている。具体的には、通信抑制部40は、左方抑制面長さWLおよび右方抑制面長さWRそれぞれが電磁波の1波長分以上の大きさである約4cm以上で設定されており、左右方向D3の大きさWが電磁波の2波長分の長さ以上の大きさである8cm以上となっている。
【0108】
これによれば、通信抑制部40がこのような構成になっていない場合に比較して、無人搬送機AGVに進行方向の後方側に位置する測位側端末20との通信をさらに抑制することができる。
【0109】
ここで、通信抑制部40の左右方向D3における長さを変化させた場合において、第3移動側端末33から送信される電磁波の通信強度の違いについて、図15を参照して説明する。
【0110】
図15では、通信抑制部40を、左右方向D3の中心を基準に右方側および左方側に同じ大きさだけ延ばして形成した場合において、左右方向D3の長さを変化させた際の電磁波の通信強度を測定した結果を示す。具体的には、図15では、通信抑制部40の左右方向D3の長さを4cm、8cm、12cm、16cmそれぞれに設定した場合の第3移動側端末33から前方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値と後方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値を示す。さらに、図15では、これら2つの最大値の差を示す。
【0111】
図15に示すように、通信抑制部40の左右方向D3の長さが4cmである場合、第3移動側端末33から前方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値と後方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値との差が比較的小さい。これに対して、通信抑制部40の左右方向D3の長さが2波長分以上である8cm以上である場合、第3移動側端末33から前方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値と後方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値との差が比較的大きい。
【0112】
具体的には、通信抑制部40の左右方向D3の長さが4cmである場合、第3移動側端末33から前方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値と後方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値との差が10dBより小さい。これに対して、通信抑制部40の左右方向D3の長さが2波長分以上である8cm以上である場合、第3移動側端末33から前方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値と後方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値との差が10dB以上となっている。
【0113】
そして、通信抑制部40の左右方向D3の長さが8cm以上である場合、4cmである場合に比較して無人搬送機AGVの進行方向の後方側へ送信する電磁波の通信強度を大きく抑制することができる。このため、第3移動側端末33から、大きい通信強度が望まれる範囲へ充分な通信強度の電磁波をさらに送信できるとともに、大きい通信強度が不要な後方側への電磁波の送信をさらに抑制することができる。
【0114】
(5)上記実施形態では、通信抑制部40は、無人搬送機AGVの進行方向における通信抑制面41と第3移動側端末33との距離である抑制面間隔Sが電磁波の波長の1/4以下に設定されている。
【0115】
これによれば、通信抑制部40がこのような構成になっていない場合に比較して、無人搬送機AGVの後方側に位置する測位側端末20との通信をさらに抑制することができる。
【0116】
ここで、抑制面間隔Sを変化させた場合において、第3移動側端末33から送信される電磁波の通信強度の違いについて、図16を参照して説明する。
【0117】
図16では、抑制面間隔Sを変化させた際の電磁波の通信強度を測定した実験結果を示す。具体的には、図16では、抑制面間隔Sを1.0cm、1.5cm、2cm、2.5cmそれぞれに設定した場合の第3移動側端末33から前方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値と後方側へ送信される電磁波の通信強度の最大値との差を示す。さらに、図16では、これら2つの最大値の差を示す。
【0118】
図16に示すように、抑制面間隔Sが1.0cmである場合、第3移動側端末33から後方側へ送信される電磁波の通信強度の大きさが比較的小さい。これに対して、抑制面間隔Sが1.5cm、2cm、2.5cmのいずれかである場合、第3移動側端末33から後方側へ送信される電磁波の通信強度の大きさが比較的大きい。このように、抑制面間隔Sが電磁波の波長の1/4以下の大きさである1.0cm以下で設定される場合、抑制面間隔Sが当該電磁波の波長の1/4より大きい場合に比較して、無人搬送機AGVの後方側へ送信する電磁波の通信強度を大きく抑制することができる。
【0119】
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、各移動側端末30それぞれからの送信信号を測位側端末20が受理することをトリガにして測位装置10が各端末間距離TD1~L3を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、測位側端末20から送信される信号を各移動側端末30のいずれかが受理することをトリガに測位装置10が各端末間距離TD1~L3を算出する構成であってもよい。
【0120】
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、各移動側端末30が各端末間距離TD1~L3を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、測位側端末20が各端末間距離TD1~L3を算出する構成であってもよい。
【0121】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図17および図18を参照して説明する。本実施形態では、無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0122】
本実施形態の無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理について図17を参照して説明する。なお、図17に示すステップS400、S410、S420、S430、S440、S450、S460、S470の処理は、第1実施形態の図9を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0123】
ステップS430で各移動側端末30から第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信したと判定する場合、ステップS432において、制御装置60は、第1端末間距離情報、第2端末間距離情報および第3端末間距離情報を記憶する。このため、制御装置60は、各移動側端末30から第1端末間距離情報、第2端末間距離情報、第3端末間距離情報を受信する度に第1端末間距離情報、第2端末間距離情報および第3端末間距離情報を記憶する。
【0124】
そして、ステップS440の処理を実行後、ステップS450で算出した人Pの位置が死角領域BR内であると判定する場合、ステップS452において、制御装置60は、各端末間距離の経時変化量が正の値であるか否かを判定する。具体的に、制御装置60は、ステップS432で記憶した第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3の経時変化量が正の値であるか否かを判定する。
【0125】
第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3の経時変化量が正の値であると判定する場合、ステップS460において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。これに対して第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3の経時変化量が正の値であると判定しない場合、ステップS470において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。
【0126】
このように、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3の経時変化量が正の値であるか否かに基づいて無人搬送機AGVの運転モードを設定する理由について、図18を参照して説明する。図18では、無人搬送機AGVより前方側の死角領域BRに人Pが存在する場合の測位側端末20の位置を位置aとして示す。また、図18では、無人搬送機AGVより後方側の死角領域BRに人Pが存在する場合の測位側端末20の位置を位置bとして示す。
【0127】
測位側端末20が位置aに位置付けられている場合、無人搬送機AGVが前方側に走行するのに伴って、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3それぞれの値は小さくなっていく。例えば、ステップS432を実行することで記憶した第1端末間距離TD1は、前回の制御周期で実行されたステップS432で記憶した第1端末間距離TD1に比較して小さくなる。このため、人Pが無人搬送機AGVの前方側の死角領域BRに存在する場合、無人搬送機AGVが前方側に走行する際の第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3それぞれの経時変化量は、負の値となる。
【0128】
これに対して、測位側端末20が位置bに位置付けられている場合、無人搬送機AGVが前方側に走行するのに伴って、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3それぞれの値は大きくなっていく。例えば、ステップS432を実行することで記憶した第1端末間距離TD1は、前回の制御周期で実行されたステップS432で記憶した第1端末間距離TD1に比較して大きくなる。このため、人Pが無人搬送機AGVの後ろ方側の死角領域BRに存在する場合、無人搬送機AGVが前方側に走行する際の第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3それぞれの経時変化量は、正の値となる。
【0129】
なお、第1端末間距離TD1の経時変化量は、ステップS432を実行することで記憶した第1端末間距離TD1の値から前回の制御周期のステップS432で記憶した第1端末間距離TD1の値を減算することで得られる。第2端末間距離TD2の経時変化量および第3端末間距離TD3の経時変化量も同様に得られる。
【0130】
このため、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3それぞれの経時変化量が正の値であるか否かに基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置が無人搬送機AGVの前方側か後方側かを判断することができる。
【0131】
具体的には、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3の経時変化量が正の値である場合、死角領域BRに存在する人Pの位置が無人搬送機AGVの後方側にいると判断することができる。このため、無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要がない。したがって、制御装置60は、ステップS470で無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。
【0132】
これに対して、第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2および第3端末間距離TD3の経時変化量が負の値である場合、死角領域BRに存在する人Pの位置が無人搬送機AGVの前方側にいると判断することができる。この場合、無人搬送機AGVと人Pとの接触を回避するため、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定することが好ましい。したがって、制御装置60は、ステップS460で無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。
【0133】
以上の如く、本実施形態の無人搬送システムは、各移動側端末30それぞれが算出する第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3が無人搬送機AGVの移動に伴い大きくなる場合、運転モードを通常モードに設定する。また、無人搬送システムは、各移動側端末30それぞれが算出する第1端末間距離TD1、第2端末間距離TD2、第3端末間距離TD3が無人搬送機AGVの移動に伴い小さくなる場合、運転モードを通常モードに設定する。
【0134】
ここで、死角領域BRに人Pが存在する場合であっても、当該人Pが無人搬送機AGVの後方側にある死角領域BR内に存在する場合、無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要がない。本実施形態によれば、制御装置60は、死角領域BRに存在する人Pの位置が無人搬送機AGVの前方側である場合、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードにし、無人搬送機AGVの後方側である場合、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードにする。このため、制御装置60が死角領域BRに人Pが存在することを検出した場合であっても、不必要に無人搬送機AGVの走行速度が遅くなることを回避することができる。
【0135】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図19および図20を参照して説明する。本実施形態では、無人搬送システムがカメラ70を備えており、無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0136】
本実施形態の無人搬送システムは、図19に示すように、カメラ70を備える。カメラ70は、画像を撮像し、撮像した画像から情報を読み取るとともに、読み取った情報を出力する装置である。本実施形態のカメラ70は、無人搬送機AGVにおける前方側を撮像可能に無人搬送機AGVに取り付けられている。そして、カメラ70は、図19に示すように、無人搬送機AGVが走行路AWに沿って移動する際に、無人搬送機AGVより前方側に配置されている表示媒体71に表示された表示物を撮像し、撮像した表示物に登録されている情報を制御装置60に送信する。
【0137】
表示媒体71に表示される表示物は、図形、記号、数字、文字およびコードのいずれか1つもしくは複数の組み合わせによって構成されており、例えば、本実施形態の表示物はQRコード(登録商標)を表示する。
【0138】
表示媒体71は、QRコードが表示された紙等の媒体であって、死角領域BRを構成する各設備Eにおける走行路AWからカメラ70が読み取り可能な位置に配置されている。表示媒体71に表示されるQRコードには、無人搬送機AGVの前方側に死角領域BRが存在することを示す前方死角領域情報が登録されている。カメラ70は、表示媒体71に表示されたQRコードを読み取ると、QRコードに登録された前方死角領域情報を制御装置60に送信する。本実施形態のカメラ70は、前方死角領域情報を読み取る死角情報読取部として機能する。
【0139】
続いて、本実施形態の無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理について図20を参照して説明する。なお、図20に示すステップS400、S410、S420、S430、S440、S450、S460、S470の処理は、第1実施形態の図9を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0140】
本実施形態の制御装置60は、ステップS420で速度制御情報に死角領域存在データが含まれると判定しない場合、ステップS422において、カメラ70から前方死角領域情報を取得したか否かを判定する。カメラ70から前方死角領域情報を取得したと判定しない場合、制御装置60は、ステップS470において、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。
【0141】
すなわち、光センサ50によって検出領域Rに死角領域BRの存在が検出されず、且つ、カメラ70によって前方死角領域情報が読み取られない場合、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。これは、無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在する可能性がある死角領域BRが存在しないことを光センサ50およびカメラ70の両方によって検出することができるからである。そしてこの場合、無人搬送機AGVと人Pとの接触する虞がなく、無人搬送機AGVの走行速度を通常モードから遅くする必要性が無いため、運転モードが通常モードに設定される。
【0142】
また、カメラ70から前方死角領域情報を取得したと判定する場合、制御装置60は、死角検出部55が死角領域BRを検出したとみなして、ステップS430~ステップS450の処理を実行する。すなわち、カメラ70から前方死角領域情報を取得したと判定する場合、制御装置60は、ステップS430~ステップS450の処理を実行して、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードもしくは警戒モードに設定する。
【0143】
以上の如く、本実施形態の無人搬送システムは、無人搬送機AGVの前方側に死角領域BRが存在することを示す前方死角領域情報を読み取るカメラ70を備える。制御装置60は、カメラ70から前方死角領域情報を取得しない場合、運転モードを通常モードに設定し、カメラ70から前方死角領域情報を取得する場合、死角検出部55が死角領域BRを検出したとみなす。
【0144】
これによれば、設備Eの形状等の要因によって、死角検出部55が死角領域BRを検出できないような場合であっても、カメラ70が前方死角領域情報を読み取ることで、無人搬送機AGVの前方側に死角領域BRが存在することを検出することができる。このため、無人搬送システムは、より確実に死角領域BRを検出して、検出した死角領域BRに基づいて無人搬送機AGVの走行速度を制御することができる。
【0145】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0146】
(1)前方死角領域情報は、QRコードで構成されている。死角情報読取部は、前方死角領域情報を読み取るカメラ70で構成されている。
【0147】
これによれば、簡易な構成で前方死角領域情報を表示させることができる。また、カメラ70によって確実に前方死角領域情報を読み取ることができる。
【0148】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図21図23を参照して説明する。本実施形態では、各移動側端末30が実行する制御処理および測位側端末20が実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。また、本実施形態では、無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0149】
なお、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33が実行する処理は同様である。このため、図21を用いて本実施形態の第1移動側端末31が実行する処理を説明し、第2移動側端末32および第3移動側端末33が実行する処理の説明は省略する。また、図22は、本実施形態の測位側端末20が実行する処理の流れを示すフローチャートである。なお、図21に示すステップS100~ステップS160の処理は、第1実施形態の図6を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。また、図22に示すステップS200~ステップS230の処理およびステップS240の処理は、第1実施形態の図7を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0150】
本実施形態の測位側端末20は、ステップS220で距離検出信号を受信したと判定する場合、ステップS230において、測位側端末20は、距離検出信号の受信時刻と距離検出信号の送信時刻との差に基づいて時刻差データを作成する。そして、ステップS232において、測位側端末20は、第1移動側端末31から受信した距離検出信号に基づいて、受信した電磁波の減衰量データを作成する。
【0151】
減衰量データは、第1移動側端末31が出力する際の予め設定される電磁波の通信強度から測位側端末20が受信した電磁波の通信強度を減算することで得ることができる。測位側端末20は、算出した減衰量の大きさに基づいて、減衰量データを作成する。そして、ステップS240において、測位側端末20は、時刻差データおよび減衰量データを含む検出応答信号を第1移動側端末31に送信する。
【0152】
第1移動側端末31は、測位側端末20から検出応答信号を受信すると、ステップS160において、第1端末間距離情報を制御装置60に送信する。さらに、ステップS170において、第1移動側端末31は、測位側端末20から受信した減衰量データを含む減衰量情報を制御装置60に送信する。
【0153】
ここで、本実施形態の制御装置60は、第1移動側端末31と測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波の通信強度と第1端末間距離TD1との相関関係を示す減衰特性を予め記憶している。この減衰特性は、第1移動側端末31と測位側端末20とが外部要因によって通信強度が減衰することなく双方向通信する場合の第1端末間距離TD1に応じた通信強度を示すものである。そして、減衰特性は、第1端末間距離TD1に応じた通信強度の減衰量を示すものである。減衰特性が示す減衰量は、第1端末間距離TD1が大きいほど大きくなる。
【0154】
続いて、本実施形態の無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理について図23を参照して説明する。なお、図23に示すステップS400、S410、S420、S430、S440、S450、S460、S470の処理は、第1実施形態の図9を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0155】
制御装置60は、ステップS450で算出した人Pの位置が死角領域BR内であると判定する場合、ステップS454において、受信した減衰量情報に基づいて、減衰量が許容値以下であるか否かを判定する。減衰量が許容値以下であると判定する場合、ステップS470において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。これに対して、減衰量が許容値以下であると判定しない場合、ステップS460において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。
【0156】
ここで、許容値は、無人搬送機AGVの運転モードを設定するための閾値であって、例えば、測位側端末20が受信した信号の通信強度が、減衰特性および第1端末間距離TD1から定まる通信強度の値に大きく乖離しているか否かを判定するために設定される。具体的に、許容値は、第1端末間距離TD1が所定の大きさである場合において減衰特性から定まる所定の減衰量の値より大きい値であって、例えば、当該所定の減衰量の値を1.1倍した値で設定される。
【0157】
なお、許容値の大きさは、第1端末間距離TD1および減衰特性から定まる所定の減衰量の値より大きい値であれば、当該所定の減衰量の値を1.1より大きい値で乗算して得られる値であってもよいし、1.1より小さい値で乗算して得られる値であってもよい。また、許容値の大きさは、第1端末間距離TD1および減衰特性から定まる所定の減衰量の値より大きい値であれば、当該所定の減衰量の値に予め設定される所定値を加算した値であってもよい。
【0158】
このように、許容値に基づいて無人搬送機AGVの運転モードを設定する理由について説明する。上述したように、無人搬送システムは、無人搬送機AGVの前方側に人Pが存在する虞があるか否かによって、無人搬送機AGVの走行速度を制御する必要がある。このため、本実施形態の測位装置10は、通信抑制部40を設けることによって、無人搬送機AGVより後方側に位置する測位側端末20と各移動側端末30との通信を抑制している。
【0159】
このため、例えば、測位側端末20が無人搬送機AGVの前方側に存在する場合と後方側に存在する場合とで第1移動側端末31からの距離検出信号を測位側端末20が受信する際の電磁波の通信強度を比較したとする。この場合において、上述したように、測位装置10が通信抑制部40を備えることによって、第1移動側端末31から送信される電磁波は、第1移動側端末31の後方へ送信され難くなっている。
【0160】
このため、第1端末間距離TD1の条件等、測位側端末20の位置以外の条件が同じであれば、測位側端末20が無人搬送機AGVの前方側に存在する場合に比較して後方側に存在する場合の方が、測位側端末20が受信する電磁波の通信強度が小さくなる。すなわち、測位側端末20が無人搬送機AGVの前方側に存在する場合に比較して後方側に存在する場合の方が、測位側端末20が受信する際の第1移動側端末31から送信される電磁波の通信強度が減衰する。
【0161】
したがって、測位側端末20が受信した距離検出信号の通信強度が、第1端末間距離TD1および減衰特性から定まる通信強度の値に対して大きく乖離しているか否かで、測位側端末20の凡その位置が推定できる。すなわち、測位側端末20が受信した距離検出信号の通信強度が、第1端末間距離TD1および減衰特性から定まる所定の減衰量の値より大きく減衰しているか否かで、測位側端末20が無人搬送機AGVより前方側に存在するか後方側にいるかを推定できる。
【0162】
具体的に、測位側端末20が受信した距離検出信号の減衰量が許容値以下である場合、第1端末間距離TD1および減衰特性から定まる所定の減衰量の値より大きく減衰していないとして、測位側端末20が無人搬送機AGVの前方側に存在すると推定できる。これに対して、測位側端末20が受信した距離検出信号の減衰量が許容値より大きい場合、第1端末間距離TD1および減衰特性から定まる所定の減衰量の値より大きく減衰しているとして、測位側端末20が無人搬送機AGVの後方側に存在すると推定できる。
【0163】
したがって本実施形態の無人搬送システムは、制御装置60が死角領域BRに人Pが存在することを検出し、且つ、測位側端末20が受信する距離検出信号の減衰量が所定の許容値以下の場合、運転モードを通常モードに設定する。また、制御装置60が死角領域BRに人Pが存在することを検出し、且つ、測位側端末20が受信する距離検出信号の減衰量が許容値より大きい場合、運転モードを警戒モードに設定する。
【0164】
これによれば、死角領域BRに存在する人Pの位置が無人搬送機AGVの前方側か後方側かを推定することによって運転モードを変更することができる。このため、制御装置60が死角領域BRに人Pが存在することを検出した場合であっても、不必要に無人搬送機AGVの走行速度が遅くなることを回避することができる。
【0165】
(第4実施形態の変形例)
上述の第4実施形態では、許容値が減衰特性および第1端末間距離TD1から定まる例について説明したが、これに限定されない。例えば、許容値は、減衰特性および第2端末間距離TD2から定まる値に設定されてもよいし、減衰特性および第3端末間距離TD3から定まる値に設定されてもよい。
【0166】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図24図31を参照して説明する。本実施形態では、測位装置10が各移動側端末30と死角領域BRに存在する測位側端末20とを双方向通信させるために電磁波を反射させる反射部80を備える点が第1実施形態と相違している。また、各移動側端末30が実行する制御処理と、死角検出部55が実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。さらに、本実施形態では、無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0167】
図24に示すように、本実施形態の測位装置10は、反射部80を有する。反射部80は、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33および測位側端末20が送受信する電磁波を反射させるものであって、例えば、金属部材の平板形状で構成されている。反射部80は、無人搬送機AGVが走行路AWを走行する際の各移動側端末30それぞれと測位側端末20との無線通信を遮蔽する設備Eより各移動側端末30から離れた位置を含む位置に配置されている。具体的に、反射部80は、死角領域BRを含む位置に配置されている。
【0168】
また、反射部80は、各移動側端末30と測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波を反射する反射面81を有する。そして、反射部80は、人Pが死角領域BRに存在することによって測位側端末20が死角領域BRに位置付けられる場合、各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが送受信する電磁波を反射面81で反射させることで、これらの端末間通信を可能にさせる。反射面81は、平面状である。このため、本実施形態の各移動側端末30それぞれおよび測位側端末20は、遮蔽物である設備Eの高さより低い位置に配置されていてもよい。
【0169】
例えば、図24に示すように、人Pが死角領域BRに存在する場合であっても、第1移動側端末31から送信された電磁波が反射面81で反射されて測位側端末20に届く場合、第1移動側端末31と測位側端末20とは、双方向通信が可能となる。図24および図25に示すような設備Eの上面視が矩形状である場合の死角領域BRおよび死角領域BRにおける反射部80によって双方向通信が可能となる反射通信領域RRについて説明する。
【0170】
死角領域BRは、図24に示すように、レーザ光が設備Eによって遮蔽される領域である。具体的には、死角領域BRは、光センサ50を基準に、設備Eの左方且つ後方の第1角部C1を通過する第1仮想線VL1と、設備Eの右方且つ前方の第2角部C2を通過する第2仮想線VL2との間の領域のうち、設備Eよりも光センサ50から離れた領域となる。
【0171】
なお、本実施形態の光センサ50は、無人搬送機AGVが走行路AWに沿って移動する際に、検出領域Rに反射部80を検出すると、検出した反射部80に関する物体情報を死角検出部55に送信する。また、死角検出部55は、工場内における反射部80が配置された位置を示す反射部配置情報を予め記憶しており、当該反射部配置情報と光センサ50から送信される物体情報とを比較可能に構成されている。
【0172】
反射通信領域RRについて図25を参照して説明する。ここで、電磁波が反射部80で反射される場合、反射される際の電磁波の入射角および反射角は同じ角度である。このため、反射通信領域RRは、死角領域BRにおいて、第1移動側端末31から送信されて直進し、入射角と同じ角度で反射する電磁波が設備Eに遮蔽されることなく通過可能な領域となる。
【0173】
ここで、第1移動側端末31を基準に、第1角部C1を通過する仮想の線を第3仮想線VL3とし、反射面81を基準に第3仮想線VL3に対称な仮想の線を第4仮想線VL4とする。また、第1移動側端末31を基準に、反射部80に向かう仮想線を第5仮想線VL5とし、反射面81を基準に第5仮想線VL5に対称な直線であって、設備Eの左方且つ前方の第3角部C3を通過する第6仮想線VL6とする。この場合、反射通信領域RRは、第2仮想線VL2と、第3仮想線VL3と、第4仮想線VL4と、第6仮想線VL6と、に囲まれた領域となる。
【0174】
第1移動側端末31は、設備Eの高さより低い位置に配置された際、人Pが死角領域BRに存在する場合であっても、反射通信領域RRに存在するのであれば、反射部80を用いることで測位側端末20と双方向通信が可能となる。
【0175】
なお、図示しないが、第2移動側端末32および第3移動側端末33と測位側端末20との通信において、死角領域BRにおける反射部80によって双方向通信が可能となる領域も同様に得ることができる。
【0176】
続いて、測位側端末20が反射通信領域RRに存在する場合に第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33が実行する制御処理について図26を参照して説明する。なお、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33が実行する処理は同様である。このため、図26を用いて本実施形態の第1移動側端末31が実行する処理を説明し、第2移動側端末32および第3移動側端末33が実行する処理の説明は省略する。また、図26に示すステップS100~ステップS140の処理は、第1実施形態の図6を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0177】
ステップS140において、測位側端末20から送信される検出応答信号を受信したと判定する場合、ステップS152において、第1移動側端末31は、第1仮想端末間距離VTD1を算出する。ここで、第1仮想端末間距離VTD1とは、反射部80で反射される電磁波を用いて第1移動側端末31と測位側端末20とが双方向通信する際に電磁波が進む距離である。このため、第1仮想端末間距離VTD1は、第1端末間距離TD1よりも長い距離である。
【0178】
第1移動側端末31は、距離検出信号の受信時刻と距離検出信号に含まれる送信時刻との差に基づいて測位側端末20が算出する時刻差データに音速を乗算して第1仮想端末間距離VTD1を算出する。そして、ステップS162において、第1移動側端末31は、自身が算出した第1仮想端末間距離VTD1を含む仮想第1端末間距離情報を制御装置60に送信する。
【0179】
第2移動側端末32および第3移動側端末33も同様に、ステップS152およびステップS162の処理を第1移動側端末31が実行する処理と独立して実行する。そして、第2移動側端末32は、ステップS152の処理を実行することで第2仮想端末間距離VTD2を算出する。そして、ステップS162において、第2移動側端末32は、自身が算出した第2仮想端末間距離VTD2を含む仮想第2端末間距離情報を制御装置60に送信する。また、第3移動側端末33は、ステップS152処理を実行することで第3仮想端末間距離VTD3を算出する。そして、ステップS162において、第3移動側端末33は、自身が算出した第3仮想端末間距離VTD3を含む仮想第3端末間距離情報を制御装置60に送信する。
【0180】
なお、第2仮想端末間距離VTD2とは、反射部80で反射される電磁波を用いて第2移動側端末32と測位側端末20とが双方向通信する際に電磁波が進む距離である。また、第3仮想端末間距離VTD3とは、反射部80で反射される電磁波を用いて第3移動側端末33と測位側端末20とが双方向通信する際に電磁波が進む距離である。
【0181】
続いて、死角検出部55が実行する制御処理について図27を参照して説明する。なお、図27に示すステップS310~ステップS360の処理およびステップS370の処理は、第1実施形態の図8を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0182】
死角検出部55は、ステップS360の処理を実行後、ステップS362において、光センサ50が検出した物体情報に基づいて、死角領域BRに反射部80が存在するか否かを判定する。死角検出部55は、光センサ50が検出した反射部80の位置が、予め記憶している反射部配置情報に含まれる反射部80の位置と一致した場合、死角領域BRに反射部80が存在すると判定する。また、死角検出部55は、光センサ50が検出した反射部80の位置が、予め記憶している反射部配置情報に含まれる反射部80の位置に一致しない場合、死角領域BRに反射部80が存在すると判定しない。
【0183】
死角領域BRに反射部80が存在すると判定する場合、ステップS364において、死角検出部55は、死角領域BRに反射部80存在することを示す反射部存在データを作成する。これに対して、死角領域BRに反射部80が存在すると判定しない場合、ステップS364の処理はスキップされる。
【0184】
そして、ステップS370において、死角検出部55は、光センサ50が検出する物体情報に基づいて算出される速度制御情報を送信する。この速度制御情報には、ステップS340で作成される死角領域存在データおよびステップS360で作成される人存在データに加えて、反射部80の存在が検出された場合にステップS364で作成される反射部存在データが含まれる。本実施形態の死角検出部55は、死角領域BRに反射部80が存在するか否かを判定する反射判定部として機能する。
【0185】
続いて、無人搬送システムが無人搬送機AGVの走行速度を制御する際に実行する制御処理について図28を参照して説明する。なお、図28に示すステップS400、S410、S420、S450、S460、S470の処理は、第1実施形態の図9を参照して説明した各ステップの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0186】
ステップS420で速度制御情報に死角領域存在データが含まれると判定する場合、ステップS424において、制御装置60は、受信した速度制御情報に反射部存在データが含まれるか否かを判定する。
【0187】
受信した速度制御情報に反射部存在データが含まれると判定しない場合、制御装置60は、ステップS434~ステップS450の処理をスキップし、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。すなわち、光センサ50によって検出領域Rに死角領域BRの存在が検出された場合に反射部80が存在することを検出しない場合、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。これは、無人搬送機AGVの検出領域Rに死角領域BRが存在する場合において、死角領域BRに反射部80が存在しないことで、死角領域BRに存在する人Pの存在を検出することができない可能性があるためである。
【0188】
これに対して、受信した速度制御情報に反射部存在データが含まれると判定する場合、ステップS434において、制御装置60は、各移動側端末30から仮想第1端末間距離情報、仮想第2端末間距離情報、仮想第3端末間距離情報を受信したか否かを判定する。仮想第1端末間距離情報、仮想第2端末間距離情報および仮想第3端末間距離情報を受信したと判定しない場合、制御装置60は、ステップS442およびステップS450の処理をスキップする。そして、制御装置60は、ステップS460において、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。
【0189】
また、仮想第1端末間距離情報、仮想第2端末間距離情報および仮想第3端末間距離情報を受信したと判定する場合、ステップS442において、制御装置60は、無人搬送機AGVに対する測位側端末20の相対位置を測定して、人Pの位置を算出する。
【0190】
ここで、人Pの位置の算出方法について図29図31を参照して説明する。図31は、制御装置60が無人搬送機AGVに対する人Pの位置を算出するために実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0191】
上述したように、第1移動側端末31が算出する第1仮想端末間距離VTD1は、反射部80で反射される電磁波を用いて第1移動側端末31と測位側端末20とが双方向通信する際に電磁波が進む距離である。また、第2移動側端末32が算出する第2仮想端末間距離VTD2は、反射部80で反射される電磁波を用いて第2移動側端末32と測位側端末20とが双方向通信する際に電磁波が進む距離である。そして、第3移動側端末33が算出する第3仮想端末間距離VTD3は、反射部80で反射される電磁波を用いて第3移動側端末33と測位側端末20とが双方向通信する際に電磁波が進む距離である。
【0192】
ここで、図29に示すように、第1移動側端末31を中心とし、第1仮想端末間距離VTD1を半径とする仮想円を第1仮想距離円VDC1とする。また、第2移動側端末32を中心とし、第2仮想端末間距離VTD2を半径とする仮想円を第2仮想距離円VDC2とする。そして、第3移動側端末33を中心とし、第3仮想端末間距離VTD3を半径とする仮想円を第3仮想距離円VDC3とする。そして、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3とが互いに重なる交点を仮想交点VXとする。
【0193】
この仮想交点VXは、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれから送信された電磁波が反射部80で反射されなかったと仮定した場合の仮想測位側端末V20が受信する位置である。そして、測位側端末20の実際の位置は、図29に示すように、反射面81を基準に、この仮想測位側端末V20に対称な位置である。
【0194】
ただし、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれが算出する第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2および第3仮想端末間距離VTD3は、測定誤差が生じる場合がある。このような場合、必ずしも第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3とが同一の交点で交わらない。すると仮想交点VXを算出することができない。
【0195】
このような仮想交点VXを算出することができない場合、第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2および第3仮想端末間距離VTD3それぞれに基づいて算出される測位側端末20の推定位置から測位側端末20の位置を算出することができる。
【0196】
ここで、図30に示すように、第1仮想端末間距離VTD1から算出される測位側端末20の推定位置の軌跡を第1推定軌跡T1とし、第2仮想端末間距離VTD2から算出される測位側端末20の推定位置の軌跡を第2推定軌跡T2とする。そして、第3仮想端末間距離VTD3から算出される測位側端末20の推定位置の軌跡を第3推定軌跡T3とする。
【0197】
第1推定軌跡T1は、第1移動側端末31から送信されて反射面81で反射された電磁波が第1仮想端末間距離VTD1だけ進む位置を測位側端末20の推定位置としたとき、電磁波の入射角を変化させた場合に変化する当該推定位置の軌跡である。また、第2推定軌跡T2は、第2移動側端末32から送信されて反射面81で反射された電磁波が第2仮想端末間距離VTD2だけ進む位置を測位側端末20の推定位置としたとき、電磁波の入射角を変化させた場合に変化する当該推定位置の軌跡である。そして、第3推定軌跡T3は、第3移動側端末33から送信されて反射面81で反射された電磁波が第3仮想端末間距離VTD3だけ進む位置を測位側端末20の推定位置としたとき、電磁波の入射角を変化させた場合に変化する当該推定位置の軌跡である。
【0198】
なお、上述したように、反射面81で反射する電磁波の入射角および反射角は、同じ角度である。このため、測位側端末20の推定位置は、第1仮想端末間距離VTD1と、第1移動側端末31および反射面81の位置関係とから算出することができる。そして、第1推定軌跡T1は、電磁波の入射角、すなわち、反射角を変化させて得られる複数の測位側端末20の推定位置から算出することができる。また、第2推定軌跡T2および第3推定軌跡T3も同様に求めることができる。
【0199】
そして、測位側端末20は、このように算出される第1推定軌跡T1上、第2推定軌跡T2上および第3推定軌跡T3上に存在すると推定できる。このため、測位側端末20の位置は、図30に示すように、第1推定軌跡T1と、第2推定軌跡T2と、第3推定軌跡T3とが互いに重なる推定交点SXに一致する。したがって、測位側端末20の位置は、第1推定軌跡T1上、第2推定軌跡T2上および第3推定軌跡T3の交点に基づいて算出することができる。
【0200】
以上より、図31に示すように、まず、ステップS502において、制御装置60は、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3とがそれぞれ重なる交点を検出する。そして、ステップS512において、制御装置60は、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3それぞれの交点が一致するか否かを判定する。第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3それぞれの交点が一致すると判定する場合、ステップS522において、制御装置60は、この交点および反射面81の位置に基づいて無人搬送機AGVに対する測位側端末20の相対位置を検出する。すなわち、制御装置60は、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3それぞれの交点である仮想交点VXと、反射部80が配置される位置情報に基づいて、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を測定する。
【0201】
これに対して、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3それぞれが一致すると判定しない場合、ステップS532において、制御装置60は、第1推定軌跡T1と、第2推定軌跡T2と、第3推定軌跡T3とを算出する。そして、ステップS542において、制御装置60は、第1推定軌跡T1と、第2推定軌跡T2と、第3推定軌跡T3とが互いに重なる推定交点SXを検出する。そして、ステップS542において、制御装置60は、算出した第1推定軌跡T1と、第2推定軌跡T2と、第3推定軌跡T3とが互いに重なる推定交点SXと、反射部80が配置される位置情報に基づいて、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置を測定する。
【0202】
図28に戻り、ステップS450において、制御装置60は、算出した人Pの位置が死角領域BR内であるか否かを判定する。算出した人Pの位置が死角領域BR内であると判定しない場合、ステップS470において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを通常モードに設定する。また、算出した人Pの位置が死角領域BR内であると判定する場合、ステップS460において、制御装置60は、無人搬送機AGVの運転モードを警戒モードに設定する。
【0203】
以上の如く、本実施形態の測位装置10は、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33と死角領域BRに存在する測位側端末20とを双方向通信させるために電磁波を反射させる反射部80を備える。第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33それぞれは、反射部80を介して自身と測位側端末20とが双方向通信する際の第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2、第3仮想端末間距離VTD3を算出する。制御装置60は、第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2、第3仮想端末間距離VTD3および反射部80が配置される位置情報に基づいて死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する。
【0204】
これによれば、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33および測位側端末20が遮蔽物である設備Eの高さより低い位置に配置される構成であっても、測位装置10は、死角領域BRに存在する人Pの位置を精度良く測定することができる。
【0205】
さらに、本実施形態の無人搬送システムは、反射部80が死角領域BRの周囲に存在するか否かを制御装置60が判定する。
【0206】
制御装置60は、反射部80が存在すると判定しない場合、運転モードを警戒モードに設定する。また、制御装置60は、反射部80が存在すると判定し、且つ、死角領域BRに人Pが存在することを検出しない場合、運転モードを通常モードに設定する。そして、制御装置60は、反射部80が存在すると判定し、且つ、死角領域BRに人Pが存在することを検出する場合、運転モードを警戒モードに設定する。
【0207】
これによれば、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33と測位側端末20との通信を妨げる設備Eがある環境下においても、無人搬送機AGVに対する人Pの相対位置に応じて無人搬送機AGVの速度を制御することができる。具体的には、反射部80の存在を検出しない場合、死角領域BRに存在する人Pの位置を検出することができない虞があるとして、運転モードを警戒モードにすることで、無人搬送機AGVと人Pとの接触の発生を抑制することができる。また、反射部80によって死角領域BRに存在する人Pの位置を検出した場合、運転モードを警戒モードにすることで、無人搬送機AGVと人Pとの接触の発生を抑制することができる。
【0208】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0209】
(1)上記実施形態では、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33は、無人搬送機AGVにおける互いに異なる位置に設けられる。第1移動側端末31は、第1仮想端末間距離VTD1を算出する。第2移動側端末32は、第2仮想端末間距離VTD2を算出する。第3移動側端末33は第3仮想端末間距離VTD3を算出する。制御装置60は、各移動側端末30それぞれを中心とし、各仮想端末間距離VTD1~VTD3を半径とする第1仮想距離円VDC1、第2仮想距離円VDC2、第3仮想距離円VDC3それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する。
【0210】
これによれば、第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2、第3仮想端末間距離VTD3のいずれか1つまたは2つの距離で測位側端末20の位置を測定する場合に比較して、測位側端末20の位置を精度良く検出することができる。
【0211】
(第5実施形態の第1の変形例)
上述の第5実施形態では、無人搬送機AGVに第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33の3つの移動側端末が設けられている。そして、制御装置60は、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれを中心とし、各仮想端末間距離VTD1~VTD3を半径とする第1仮想距離円VDC1、第2仮想距離円VDC2、第3仮想距離円VDC3それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する例について説明したが、これに限定されない。
【0212】
例えば、無人搬送機AGVには、3つより少ない数の移動側端末(例えば、2つ)が設けられる構成であってもよいし、3つより多い数の移動側端末(例えば、4つ)が設けられる構成であってもよい。この場合、制御装置60は、各移動側端末それぞれを中心とし、各移動側端末と測位側端末20との仮想端末間距離を半径とする各仮想円それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定してもよい。
【0213】
(第5実施形態の第2の変形例)
上述の第5実施形態では、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3とが同一の交点で交わらない場合、第1推定軌跡T1、第2推定軌跡T2および第3推定軌跡T3の交点に基づいて測位側端末20の位置を測定する例について説明したが、これに限定されない。
【0214】
例えば、第1仮想距離円VDC1と、第2仮想距離円VDC2と、第3仮想距離円VDC3とが同一の交点で交わらない場合、これら仮想距離円それぞれの交点に囲まれる範囲内に対して反射面81を基準とした対称範囲内に測位側端末20が存在するとして測位側端末20の位置を測定してもよい。
【0215】
(第5実施形態の第3の変形例)
上述の第5実施形態では、測位装置10が各移動側端末30と死角領域BRに存在する測位側端末20とを双方向通信させるための反射部80を備える例について説明したが、これに限定されない。
【0216】
例えば、死角領域BRを含む位置に電磁波を反射させる設備Eが配置されており、当該設備Eによって各移動側端末30と死角領域BRに存在する測位側端末20とが双方向通信可能な場合、当該設備Eを反射部80として用いることができる。この場合、設備Eとは別に反射部80を設けなくても、各移動側端末30それぞれは、設備Eを介して自身と測位側端末20とが双方向通信する際の第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2、第3仮想端末間距離VTD3を算出することができる。そして、制御装置60は、第1仮想端末間距離VTD1、第2仮想端末間距離VTD2、第3仮想端末間距離VTD3および設備Eが配置される位置情報に基づいて死角領域BRに存在する人Pの位置を測定することができる。
【0217】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図32図43を参照して説明する。本実施形態では、各移動側端末30と死角領域BRに存在する測位側端末20とを双方向通信させるための反射部80が柱Piに2つ設けられている点が第5実施形態と相違している。これ以外は、第5実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について主に説明し、第5実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0218】
図32に示すように、本実施形態では、光センサ50から照射されるレーザ光が柱Piによって遮られる。この場合、光センサ50は、柱Piによってレーザ光が遮られる部分に存在する人Pを検出することができない。すなわち、死角領域BRは、柱Piによって形成される。柱Piは、電磁波を遮蔽する金属(例えば、鉄)で構成される中心部材Pi1と、中心部材Pi1を囲む保護部材Pi2(例えば、石膏ボード)で構成されている。本実施形態の中心部材Pi1は、鉄板で構成されており、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33および測位側端末20が送信する電磁波をほぼ遮蔽する。これに対して、保護部材Pi2は、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33および測位側端末20が送信する電磁波をほぼ遮蔽することなく、通過可能となっている。
【0219】
また、本実施形態の反射部80は、死角領域BRを形成する柱Piに2つ取り付けられている。具体的に、2つの反射部80のうち一方の反射部80は、柱Piにおける中心部材Pi1を囲む保護部材Pi2において、左方且つ後方の角に取り付けられている。また、2つの反射部80のうち他方の反射部80は、保護部材Pi2の右方且つ前方の角に取り付けられている。換言すれば、2つの反射部80は、無人搬送機AGVに対して、保護部材Pi2の手前側および奥側それぞれに取り付けられており、遮蔽物である中心部材Pi1から離れた位置に取り付けられている。本実施形態の2つの反射部80は、死角領域BRの外に配置されている。
【0220】
以下、無人搬送機AGVに対して保護部材Pi2の手前側に取り付けられた反射部80を第1反射部80a、無人搬送機AGVに対して保護部材Pi2の奥側に取り付けられた反射部80を第2反射部80bとも呼ぶ。
【0221】
第1反射部80aおよび第2反射部80bは、図32に示すように、薄板形状の金属部材で構成されている。具体的に、第1反射部80aは、各移動側端末30と測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波を反射する平面状の第1反射面81aを有する。第1反射面81aは、遮蔽物である中心部材Pi1に対向している。そして、第1反射部80aは、測位側端末20が死角領域BRに存在する場合、各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが送受信する電磁波を第1反射面81aで反射させることで、これらの端末間通信を可能にさせる。
【0222】
また、第2反射部80bは、各移動側端末30と測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波を反射する平面状の第2反射面81bを有する。第2反射面81bは、遮蔽物である中心部材Pi1に対向している。そして、第2反射部80bは、測位側端末20が死角領域BRに存在する場合、各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが送受信する電磁波を第2反射面81bで反射させることで、これらの端末間通信を可能にさせる。
【0223】
そして、第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33それぞれは、図26を参照して説明した制御処理を実行することで、第1仮想端末間距離VTD1~第3仮想端末間距離VTD3を算出する。
【0224】
第1移動側端末31は、第1反射部80aを介して測位側端末20と双方向通信する際に第1仮想端末間距離VTD1を算出してもよいし、第2反射部80bを介して測位側端末20と双方向通信する際に第1仮想端末間距離VTD1を算出してもよい。本実施形態では、第1移動側端末31は、第1反射部80aおよび第2反射部80bのうち、測位側端末20との双方向通信が先に可能となる側を介して双方向通信する際に、第1仮想端末間距離VTD1を算出する。
【0225】
第2移動側端末32も同様に、第1反射部80aを介して測位側端末20と双方向通信する際に第2仮想端末間距離VTD2を算出してもよいし、第2反射部80bを介して測位側端末20と双方向通信する際に第2仮想端末間距離VTD2を算出してもよい。
【0226】
また、第3移動側端末33も同様に、第1反射部80aを介して測位側端末20と双方向通信する際に第3仮想端末間距離VTD3を算出してもよいし、第2反射部80bを介して測位側端末20と双方向通信する際に第3仮想端末間距離VTD3を算出してもよい。
【0227】
本実施形態の第1反射部80aは、垂直方向である高さ方向D2および第1反射部80aの板厚方向に直交する方向の大きさである反射部長Dが、電磁波の波長以上の大きさで設定されている。また、第2反射部80bは、垂直方向である高さ方向D2および第2反射部80bの板厚方向に直交する方向の大きさである反射部長Dが、電磁波の波長以上の大きさで設定されている。
【0228】
反射部長Dは、第1反射部80aおよび第2反射部80bが各移動側端末30から離れるように延びる方向の大きさである。具体的に、第1反射部80aおよび第2反射部80bそれぞれの反射部長Dは、各移動側端末30と測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波の1波長分以上の大きさである約4cm以上で設定されている。
【0229】
そして、第1反射部80aおよび第2反射部80bは、第1反射面81aおよび第2反射面81bが前後方向D1に対して傾斜するように柱Piに取り付けられている。具体的には、第1反射部80aおよび第2反射部80bそれぞれは、前後方向D1の前方側端部が保護部材Pi2に支持されており、前後方向D1の後方側端部が保護部材Pi2から離されることで、前後方向D1に対して傾斜している。
【0230】
ここで、第1反射面81aおよび第2反射面81bそれぞれの前後方向D1における前方側端部と走行路AWとの前後方向D1に直交する左右方向D3の距離を前端距離とする。また、第1反射面81aおよび第2反射面81bそれぞれの前後方向D1における後方側端部と走行路AWとの前後方向D1に直交する左右方向D3の距離を後端距離とする。
【0231】
遮蔽物である中心部材Pi1の手前側に設けられた第1反射部80aの第1反射面81aは、前端距離に比較して後端距離が大きくなるように前後方向D1に対して傾斜している。また、遮蔽物である中心部材Pi1の奥側に設けられた第2反射部80bの第2反射面81bは、前端距離に比較して後端距離が大きくなるように前後方向D1に対して傾斜している。
【0232】
また、第1反射部80aおよび第2反射部80bは、無人搬送機AGVが所定の位置に位置付けられた際に、各移動側端末30それぞれから第1反射部80aに向かう方向に対して第1反射面81aが柱Pi側に傾斜するように配置されている。また、第2反射部80bは、各移動側端末30それぞれから第2反射部80bに向かう方向に対して第2反射面81bが柱Pi側に傾斜するように配置されている。
【0233】
ここで、図32および図33に示すように、第2移動側端末32から第1反射部80aに向かう仮想線を第1電磁波線EL1とし、第2移動側端末32から第2反射部80bに向かう仮想線を第2電磁波線EL2とする。また、前後方向D1に沿って延びる線と第1電磁波線EL1とによって成す角度を第1入射角θ1とし、前後方向D1に沿って延びる線と第2電磁波線EL2とによって成す角度を第2入射角θ2とする。そして、図33に示すように、前後方向D1に沿って延びる線と第1反射面81aに沿って延びる線とによって成す角度を第1反射面角θ3とし、前後方向D1に沿って延びる線と第2反射面81bに沿って延びる線とによって成す角度を第2反射面角θ4とする。
【0234】
そして、例えば、第1入射角θ1が25°となる位置に無人搬送機AGVが位置付けられる際に、第1反射面角θ3が25°より大きい角度となるように第1反射部80aが配置される。具体的に、第1反射部80aは、第1入射角θ1が25°となる位置に無人搬送機AGVが位置付けられる際に、第1反射面角θ3が第1入射角θ1より10°だけ大きい角度(すなわち、35°)となるように配置される。
【0235】
また、例えば、第2入射角θ2が25°となる位置に無人搬送機AGVが位置付けられる際に、第2反射面角θ4が25°より小さい角度となるように第2反射部80bが配置される。具体的に、第2反射部80bは、第2入射角θ2が25°となる位置に無人搬送機AGVが位置付けられる際に、第2反射面角θ4が第2入射角θ2より10°だけ小さい角度(すなわち、15°)となるように配置される。
【0236】
以上の如く、第1反射部80aは、無人搬送機AGVに対して遮蔽物である中心部材Pi1の手前側において、中心部材Pi1から離れた位置に設けられている。また、第2反射部80bは、無人搬送機AGVに対して遮蔽物である中心部材Pi1の奥側において、中心部材Pi1から離れた位置に設けられている。
【0237】
そして、第1移動側端末31は、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して測位側端末20と双方向通信する際に第1仮想端末間距離VTD1を算出する。また、第2移動側端末32は、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して測位側端末20と双方向通信する際に第2仮想端末間距離VTD2を算出する。そして、第3移動側端末33は、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して測位側端末20と双方向通信する際に第3仮想端末間距離VTD3を算出する。
【0238】
これによれば、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33から視て測位側端末20が遮蔽物である柱Piによって遮蔽されても、測位装置10は、死角領域BRに存在する人Pの位置を精度良く測定することができる。
【0239】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0240】
(1)上記実施形態では、第1反射部80aは、柱Piに対向する第1反射面81aを有する板形状であって、反射部長Dが、電磁波の波長以上の大きさで設定されている。また、第2反射部80bは、柱Piに対向する第2反射面81bを有する板形状であって、反射部長Dが、電磁波の波長以上の大きさで設定されている。
【0241】
これによれば、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波の通信強度をさらに確保し易くできる。
【0242】
ここで、第2反射部80bの反射部長Dを変化させた際において、第1移動側端末31から送信した電磁波が柱Piによって形成される死角領域BRに到達した際の通信強度を測定した実験結果を図34図38に示す。図34に測定結果を示す実験では、柱Piに第2反射部80bを取り付けていない状態で柱Piの周囲の通信強度を比較した。また、図35図38に測定結果を示す実験では、第2反射部80bを取り付けた場合の第2反射部80bの反射部長Dを変化させた場合の柱Piの周囲の通信強度を比較した。
【0243】
具体的に、図35には、第2反射部80bの反射部長Dを電磁波の1波長より短い2cmに設定した場合の測定結果を示し、図36には、第2反射部80bの反射部長Dを電磁波の1波長分の長さである4cmに設定した場合の測定結果を示す。また、図37には、第2反射部80bの反射部長Dを電磁波の2波長分の長さである8cmに設定した場合の測定結果を示し、図38には、第2反射部80bの反射部長Dを電磁波の4波長分の長さである16cmに設定した場合の測定結果を示す。なお、第2反射部80bを取り付ける場合、図39に示すように、第2反射部80bの板厚方向が左右方向D3となるように保護部材Pi2に配置した。
【0244】
図34に示すように、柱Piに第2反射部80bを取り付けない場合、死角領域BRにおける通信強度は、約100dBμV/mであって、第1移動側端末31から送信された電磁波が中心部材Pi1によってほぼ遮蔽された。
【0245】
これに対して、柱Piに第2反射部80bを取り付けた場合、図35図38に示すように、死角領域BRにおいて第2反射部80bによって反射された電磁波が通過する部位における通信強度は、第2反射部80bが設けない場合に比較して大きくなった。また、反射部長Dが1波長分の長さである4cm以上である場合、反射部長Dが1波長より短い2cmの場合に比較して、第2反射部80bによって反射された電磁波が通過する部位における通信強度が顕著に大きな値となった。このため、第1反射部80aおよび第2反射部80bの反射部長Dを電磁波の波長以上の大きさで設定することによって、測位側端末20が死角領域BRに存在する場合であっても、無人搬送機AGVと人Pとの距離を精度よく測定することができる。
【0246】
(2)上記実施形態では、中心部材Pi1の手前側に設けられた第1反射部80aの第1反射面81aは、前端距離に比較して後端距離が大きくなるように前後方向D1に対して傾斜している。また、中心部材Pi1の奥側に設けられた第2反射部80bの第2反射面81bは、前端距離に比較して後端距離が大きくなるように前後方向D1に対して傾斜している。
【0247】
これによれば、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波の通信強度をさらに確保し易くできる。
【0248】
ここで、第1反射部80aおよび第2反射部80bを前後方向D1に対して傾斜させない場合と傾斜させた場合とで、第1移動側端末31から送信した電磁波が柱Piによって形成される死角領域BRに到達した際の通信強度を比較した実験結果を図40図42に示す。図40に測定結果を示す実験では、第1反射部80aを前後方向D1に対して傾斜させない状態で柱Piに取り付け、第2反射部80bを柱Piに取り付けない状態で柱Piの周囲の通信強度を比較した。なお、図40に測定結果を示す実験では、前後方向D1に対する第1反射部80aの角度を90°(すなわち、直交)に設定した。
【0249】
また、図41に測定結果を示す実験では、第2反射部80bを前後方向D1に対して傾斜させない状態で柱Piに取り付け、第1反射部80aを柱Piに取り付けない状態で柱Piの周囲の通信強度を比較した。なお、図41に測定結果を示す実験では、前後方向D1に対する第2反射部80bの角度を0°(すなわち、平行)に設定した。
【0250】
そして、図42に測定結果を示す実験では、第1反射部80aおよび第2反射部80bを前後方向D1に対して傾斜させた状態で柱Piに取り付けて柱Piの周囲の通信強度を比較した。なお、図42に測定結果を示す実験では、前後方向D1に対する第1反射部80aの角度を35°に設定し、前後方向D1に対する第2反射部80bの角度を15°に設定した。
【0251】
また、第1反射部80aを柱Piに取り付ける場合としては、図43に示すように、第1反射部80aの前方端部が保護部材Pi2の前方の端部および右方の端部に支持され、第1反射部80aの後方端部が中心部材Pi1から離れるように傾斜させた。そして、第2反射部80bを柱Piに取り付ける場合としては、第2反射部80bの前方端部が保護部材Pi2の後方の端部および左方の端部に支持され、第2反射部80bの後方端部が中心部材Pi1から離れるように傾斜させた。
【0252】
図40図42に示すように、第1反射部80aおよび第2反射部80bを前後方向D1に対して傾斜させた場合、傾斜させない場合に比較して死角領域BRの広範囲に亘って電磁波の通信強度を大きくすることができた。すなわち、第1反射部80aおよび第2反射部80bを前後方向D1に対して傾斜させることで、傾斜させない場合に比較して、死角領域BRの広範囲に電磁波を通過させることができた。
【0253】
このため、第1反射部80aおよび第2反射部80bを前後方向D1に対して傾斜させることによって、測位側端末20が死角領域BRに存在する場合であっても、無人搬送機AGVと人Pとの距離を精度よく測定することができる。
【0254】
(第6実施形態の第1の変形例)
上述の第6実施形態では、第1反射部80aおよび第2反射部80bの反射部長Dが、電磁波の波長以上の大きさで設定されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1反射部80aおよび第2反射部80bは、反射部長Dが電磁波の波長より小さく設定されている構成であってもよい。
【0255】
(第6実施形態の第2の変形例)
上述の第6実施形態では、第1反射部80aの第1反射面81aおよび第2反射部80bの第2反射面81bが、前端距離に比較して後端距離が大きくなるように前後方向D1に対して傾斜している例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1反射部80aの第1反射面81aおよび第2反射部80bの第2反射面81bは、前後方向D1に対して傾斜していない構成(例えば、前後方向D1に対して直交または垂直)であってもよい。
【0256】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図44図46を参照して説明する。本実施形態では、第1反射部80aおよび第2反射部80bにスリット82が設けられている点が第6実施形態と相違している。これ以外は、第6実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第6実施形態と異なる部分について主に説明し、第6実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0257】
図44に示すように、本実施形態の第1反射部80aおよび第2反射部80bには、複数のスリット82が形成されている。スリット82は、高さ方向D2に沿って第1反射部80aおよび第2反射部80bに形成されており、第1反射部80aおよび第2反射部80bの長手方向に20mm間隔(すなわち、電磁波の波長の1/2間隔)に形成されている。すなわち、スリット82は、板厚方向および高さ方向D2に直交する方向であって、スリット82それぞれが並ぶ方向の互いの距離が20mmに設定されている。また、スリット82は、第1反射部80aおよび第2反射部80bの長手方向の長さであるスリット幅が、電磁波の1波長分の大きさの1/8である5mmで設定されている。
【0258】
これによれば、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが双方向通信する際の電磁波の通信強度をさらに確保し易くできる。
【0259】
ここで、第1反射部80aおよび第2反射部80bにスリット82を形成しない場合と形成する場合とで、第1移動側端末31から送信した電磁波が柱Piによって形成される死角領域BRに到達した際の通信強度を比較した実験結果を図45および図46に示す。図45に測定結果を示す実験では、スリット82が形成されていない第1反射部80aおよび第2反射部80bを柱Piに取り付けて柱Piの周囲の通信強度を比較した。また、図46に測定結果を示す実験では、スリット82が形成されている第1反射部80aおよび第2反射部80bを柱Piに取り付けて柱Piの周囲の通信強度を比較した。
【0260】
図45および図46に示すように、第1反射部80aおよび第2反射部80bにスリット82を形成する場合、スリット82を形成しない場合に比較して死角領域BRにおける電磁波の通信強度を大きくすることができた。このような結果となる理由として、第1移動側端末31から送信した電磁波が第1反射部80aおよび第2反射部80bそれぞれを介して死角領域BRに到達する場合、2つの経路によって死角領域BRに電磁波が送信されることで干渉縞が発生する場合がある。この場合、死角領域BRにおいて、電磁波の通信強度が小さくなる虞がある。
【0261】
これに対して、第1反射部80aおよび第2反射部80bにスリット82を形成することによって、死角領域BRに干渉縞が発生することを抑制することができる。このため、干渉縞の発生に起因する電磁波の通信強度の低下を抑制できるので、測位側端末20が死角領域BRに存在する場合であっても、無人搬送機AGVと人Pとの距離を精度よく測定することができる。
【0262】
なお、スリット幅は、5mmに限定されるものではなく、干渉縞が発生することを抑制可能であれば、5mmより小さくてもよいし、大きくてもよい。また、スリット82が形成される間隔は、20mmに限定されるものではなく、干渉縞が発生することを抑制可能であれば、20mmより小さくてもよいし、20mmより大きくてもよい。
【0263】
また、スリット82は、高さ方向D2に沿って第1反射部80aおよび第2反射部80bに形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、スリット82は、高さ方向D2および板厚方向に直交する方向に沿って第1反射部80aおよび第2反射部80bに形成されていてもよい。また、スリット82は、高さ方向D2に傾斜して第1反射部80aおよび第2反射部80bに形成されていてもよい。
【0264】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、図47を参照して説明する。本実施形態では、第1反射部80aおよび第2反射部80bの形状が第6実施形態と相違している。これ以外は、第6実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第6実施形態と異なる部分について主に説明し、第6実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0265】
図47に示すように、本実施形態の第1反射部80aおよび第2反射部80bは、板形状であって、屈曲している。具体的に、第1反射部80aおよび第2反射部80bそれぞれは、垂直方向である高さ方向D2の中央部分が上方側の端部および下方側の端部に比較して遮蔽物である柱Piの中心部材Pi1から離れるように屈曲している。そして、第1反射部80aおよび第2反射部80bは、上方側の端部および下方側の端部が柱Piの保護部材Pi2に支持されている。
【0266】
そして、第1反射面81aおよび第2反射面81bは、高さ方向D2の中央部分が上方側の端部および下方側の端部に比較して中心部材Pi1から離れるように屈曲している。具体的に、第1反射面81aおよび第2反射面81bは、高さ方向D2の中央部分が柱Piから離れるように膨らんだ曲面形状に形成されている。そして、第1反射面81aおよび第2反射面81bは、高さ方向D2の中央部分が、人Pが保持する測位側端末20の高さと同程度の位置となるように形成される。
【0267】
これによれば、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33それぞれから送信される電磁波が反射されて死角領域BRに存在する測位側端末20に向かう際に、当該測位側端末20に到達し易くできる。
【0268】
このため、第1反射部80aおよび第2反射部80bを介して各移動側端末30それぞれと測位側端末20とが双方向通信する際の確実性を確保し易くできる。したがって、測位側端末20が死角領域BRに存在する場合であっても、無人搬送機AGVと人Pとの距離を精度よく測定することができる。
【0269】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0270】
上述の実施形態では、無人搬送機AGVに第1移動側端末31、第2移動側端末32および第3移動側端末33の3つの移動側端末が設けられている。そして、制御装置60は、各移動側端末30それぞれを中心とし、各端末間距離TD1~L3を半径とする第1仮想円VC1、第2仮想円VC2、第3仮想円VC3それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定する例について説明したが、これに限定されない。
【0271】
例えば、無人搬送機AGVには、3つより少ない数の移動側端末(例えば、2つ)が設けられる構成であってもよいし、3つより多い数の移動側端末(例えば、4つ)が設けられる構成であってもよい。この場合、制御装置60は、各移動側端末それぞれを中心とし、各移動側端末と測位側端末20との距離を半径とする各仮想円それぞれの交点に基づいて、死角領域BRに存在する人Pの位置を測定してもよい。
【0272】
上述の実施形態では、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33、測位側端末20それぞれは、遮蔽物である設備Eの高さ以上に配置されている例について説明したが、これに限定されない。
【0273】
例えば、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33、測位側端末20のうちのいずれかは、遮蔽物である設備Eの高さより低い位置に配置されていてもよい。また、第1移動側端末31、第2移動側端末32、第3移動側端末33、測位側端末20のいずれもが、遮蔽物である設備Eの高さより低い位置に配置されていてもよい。
【0274】
上記実施形態では、測位装置10が、測位側端末20と各移動側端末30との通信を抑制する通信抑制部40を備えている例について説明したが、これに限定されない。例えば、測位装置10は、測位側端末20と各移動側端末30との通信を抑制する通信抑制部40を備えていない構成であってもよい。
【0275】
上述の実施形態では、通信抑制部40が、左右方向D3における各移動側端末30それぞれから通信抑制面41の一方側および他方側それぞれの端部までの長さが電磁波の波長の長さ以上に設定されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、通信抑制部40は、左右方向D3における各移動側端末30それぞれから通信抑制面41の一方側および他方側それぞれの端部までの長さが電磁波の波長の長さより小さく形成されていてもよい。
【0276】
上述の実施形態では、通信抑制部40の抑制面間隔Sが電磁波の波長の1/4以下に設定されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、通信抑制部40の抑制面間隔Sが電磁波の波長の1/4より大きく設定されていてもよい。
【0277】
上述の実施形態では、測位装置10が無人搬送機AGVを制御する無人搬送システムに用いられる例について説明したが、これに限定されない。測位装置10は、用いられる対象が限定されるものではなく、無人搬送システムとは異なるシステムや装置等に用いられてもよい。
【0278】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0279】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0280】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0281】
20 測位側端末
31、32、33 移動側端末
50 光センサ
55 死角検出部
60 位置測定部
AGV 無人搬送機
BR 死角領域
E 遮蔽物
R 検出領域
P 測位対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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