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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048383
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】可搬性を有する小型燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20240401BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/241 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/0265 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/0267 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/1007 20160101ALI20240401BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240401BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240401BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/0202
H01M8/0258
H01M8/2475
H01M8/0215
H01M8/241
H01M8/2465
H01M8/0265
H01M8/0267
H01M8/1007
H01M8/12 101
H01M8/10 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161686
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2022153347
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳田 保子
(72)【発明者】
【氏名】松下 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 大樹
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA09
5H126AA12
5H126AA22
5H126AA23
5H126AA28
5H126BB06
5H126CC02
5H126EE03
5H126FF04
5H126FF10
5H126GG02
5H126GG11
5H126JJ02
(57)【要約】
【課題】発電効率が高く可搬性を有する小型燃料電池を提供する。
【解決手段】可搬性を有する小型燃料電池は、セル10と第1基板20と第2基板30と真空容器50とからなる。第1基板20は、還元性燃料ガスを導入する第1入口流路24と、還元性燃料排ガスを排出する第1出口流路25と、を有すると共に、第1入口流路24及び第1出口流路25が、第1片持ち梁部22内において熱交換可能な程度に近接配置される。第2基板30は、酸化剤燃料ガスを導入する第2入口流路34と、酸化剤燃料排ガスを排出する第2出口流路35と、を有すると共に、第2入口流路34及び第2出口流路35が、第2片持ち梁部32内において熱交換可能な程度に近接配置される。真空容器50は、第1基板20及び第2基板30を囲み、第1固定部23及び第2固定部33が固定され、セル10から発せられる熱を内部に封じ込める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬性を有する小型燃料電池であって、該小型燃料電池は、
アノードとカソードとそれらの間に介在する電解質とを有するセルと、
前記セルを収容する第1基板であって、セルが配置される第1主部と、第1主部から延在する第1片持ち梁部と、第1片持ち梁部から延在し、第1片持ち梁部を固定するための第1固定部と、を有し、さらに、セルのアノードに還元性燃料ガスを導入する第1入口流路と、セルのアノードから還元性燃料排ガスを排出する第1出口流路と、を有すると共に、第1入口流路及び第1出口流路が、第1片持ち梁部内において熱交換可能な程度に近接配置される、第1基板と、
前記第1基板と共にセルを覆うように収容する第2基板であって、セルが配置される第2主部と、第1片持ち梁部の延在方向と一致するように第2主部から延在する第2片持ち梁部と、第2片持ち梁部から延在し、第2片持ち梁部を固定するための第2固定部と、を有し、さらに、セルのカソードに酸化剤燃料ガスを導入する第2入口流路と、セルのカソードから酸化剤燃料排ガスを排出する第2出口流路と、を有すると共に、第2入口流路及び第2出口流路が、第2片持ち梁部内において熱交換可能な程度に近接配置される、第2基板と、
前記セルから発せられる熱を内部に封じ込めるための真空容器であって、第1基板及び第2基板を囲み、第1固定部及び第2固定部が固定される、真空容器と、
を具備することを特徴とする小型燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の小型燃料電池において、前記第1基板及び第2基板は、セラミックス、ガラス、無機結晶の何れかからなることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の小型燃料電池において、前記第1基板及び第2基板は、積層される、又は一体形成されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項4】
請求項1に記載の小型燃料電池であって、該小型燃料電池は、セルと第1基板と第2基板とからなる基板構造が、上面視で第1片持ち梁部の延在方向が一致するように複数積層されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項5】
請求項4に記載の小型燃料電池において、複数積層される小型燃料電池は、
前記各第1入口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成され、
前記各第1出口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成され、
前記各第2入口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成され、
前記各第2出口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成される、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項6】
請求項4に記載の小型燃料電池において、複数積層される小型燃料電池は、
前記第1出口流路が他の第1入口流路に接続され直列の流路として構成され、
前記第2出口流路が他の第2入口流路に接続され直列の流路として構成される、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項7】
請求項1に記載の小型燃料電池において、前記第1基板又は第2基板は、ヒータ用又は温度センサ用の金属部を有することを特徴とする小型燃料電池。
【請求項8】
請求項1に記載の小型燃料電池において、前記第1基板及び第2基板は、第1主部及び第2主部のセルが配置される面の反対側の面に、又は第1主部及び第2主部のセルが配置される面の反対側の面及び側面に、輻射軽減用の金属薄膜が形成されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項9】
請求項1に記載の小型燃料電池において、
前記第1片持ち梁部は、第1固定部に向かって末広がり形状を有し、
前記第2片持ち梁部は、第2固定部に向かって末広がり形状を有する、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項10】
請求項1に記載の小型燃料電池において、
前記第1入口流路及び第1出口流路は、第1基板に設けられる第1凹溝により提供され、
前記第2入口流路及び第2出口流路は、第2基板に設けられる第2凹溝により提供され、
前記第1入口流路及び第1出口流路は、それぞれ第2入口流路及び第2出口流路と上面視で重ならないように配置されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項11】
請求項1に記載の小型燃料電池であって、さらに、前記第1基板と第2基板の間に介在するように位置合わせされるスペーサ基板を有し、
前記スペーサ基板は、セルを収容する貫通空間を有するスペーサ主部と、第1片持ち梁部の延在方向と一致するようにスペーサ主部から延在するスペーサ片持ち梁部と、スペーサ片持ち梁部から延在しスペーサ片持ち梁部を固定するためのスペーサ固定部とを有する、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項12】
請求項11に記載の小型燃料電池において、
前記第1入口流路及び第1出口流路は、第1基板及び/又はスペーサ基板に設けられる第1凹溝により提供され、
前記第2入口流路及び第2出口流路は、第2基板及び/又はスペーサ基板に設けられる第2凹溝により提供される、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項13】
請求項12に記載の小型燃料電池において、前記第1入口流路及び第1出口流路は、それぞれ第2出口流路及び第2入口流路と上面視で重なるように配置されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項14】
請求項1に記載の小型燃料電池であって、さらに、セルのアノードに導入される還元性燃料ガスを改質するための燃料改質触媒を有し、
前記燃料改質触媒は、第1入口流路のセル近傍に配置される、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項15】
請求項1に記載の小型燃料電池において、
前記第1固定部は、第1主部の周囲を囲うように配置され、
前記第2固定部は、第2主部の周囲を囲うように配置され、
前記第1固定部及び第2固定部は、真空容器に密閉状態で固定される、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項16】
請求項1に記載の小型燃料電池において、前記セルは、平板セル又はチューブ型セルであることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16の何れかに記載の小型燃料電池であって、さらに、
前記第1出口流路中に配置され、第1出口流路に対して流路断面積が小さくなる喉部を有することでベンチュリ効果が得られるベンチュリ管構造であって、喉部に設けられる吸込口を有し、第2出口流路が吸込口に接続される、ベンチュリ管構造と、
を具備することを特徴とする小型燃料電池。
【請求項18】
請求項17に記載の小型燃料電池において、前記第2出口流路は、吸込口に対してベンチュリ管構造の還元性燃料排ガスの流れる下流方向に傾斜して接続されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項19】
請求項17に記載の小型燃料電池において、前記第2出口流路は、ベンチュリ管構造の吸込口に接続されるところで第2出口流路に対して流路断面積が小さくなる括れ部を有することを特徴とする小型燃料電池。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19の何れかに記載の小型燃料電池であって、
小型燃料電池の燃料が液体燃料からなり、
さらに、液体燃料を吸い込むために第1入口流路中に配置され、第1入口流路に対して流路断面積が小さく毛細管現象が得られる毛細管構造を具備する、
ことを特徴とする小型燃料電池。
【請求項21】
請求項20に記載の小型燃料電池において、前記毛細管構造は、セルの作動温度により加熱される位置に配置されることを特徴とする小型燃料電池。
【請求項22】
請求項21に記載の小型燃料電池において、前記毛細管構造は、吸い込まれる液体燃料が加熱され蒸発することで還元性燃料ガスとすることを特徴とする小型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型燃料電池に関し、特に、可搬性を有する小型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、電気化学反応によって燃料の化学エネルギから電力を取り出す電池をいう。燃料電池は、アノードとカソードとそれらの間に介在する電解質とを有するセルを用いたものである。燃料電池には、使用する電解質の種類等によっていくつかの方式がある。例えば、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、電解質として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いたものである。SOFCの作動温度は700℃-1,000℃と高温であるため、エネルギ密度が高く、高温の排出ガスを利用することで全体の高効率化を図れるといった利点がある一方、可搬性を有する小型燃料電池として適用しようとした場合には、高い耐熱性や断熱性が必要となる。
【0003】
従来の可搬性を有するSOFCは、主にMEMS(Micro-Electro-Mechanical System)を使って基板上に燃料電池のセルを集積する方法が取られていた(非特許文献1)。
【0004】
また、SOFCの性能評価試験を行うための評価ホルダとして、特許文献1が知られている。特許文献1の評価ホルダは、ガス導入管及びガス排出管が設けられるアルミナ製の筐体内に評価対象となるSOFCを収容し、SOFCのセルサイズに関わらず安定した性能評価試験を行うことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-032553号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Review on microfabricated micro-solid oxide fuel cell membranes、Anna Evansら、Journal of Power Sources 194 (2009)、p.p.119-129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の非特許文献1のようにMEMSを用いた可搬性を有するSOFCは、コストが高くなるという問題があった。また、基板とセルの熱膨張係数の違いにより、高温作動させた場合に基板やセルが破損することがあり、高温作動させるのが難しいという問題もあった。
【0008】
さらに、耐熱性だけでなく、熱損失を減らし高温作動させて発電効率を向上させるためには断熱性も重要となる。しかしながら、上述の特許文献1のような評価ホルダでは、実用的な可搬性を有する燃料電池として応用する場合に、熱損失が大きく発電効率が低くなる問題があった。具体的には、ガス導入管及びガス排出管が離れた2本に分かれているため、熱応力が分散し、熱の利用効率が悪かった。さらに、アルミナ製の筐体とガス管の熱膨張率の違いにより、ガス管に歪が生じてしまうおそれもあった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、耐熱性や断熱性、発電効率が高く可搬性を有する小型燃料電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による小型燃料電池は、アノードとカソードとそれらの間に介在する電解質とを有するセルと、セルを収容する第1基板であって、セルが配置される第1主部と、第1主部から延在する第1片持ち梁部と、第1片持ち梁部から延在し、第1片持ち梁部を固定するための第1固定部と、を有し、さらに、セルのアノードに還元性燃料ガスを導入する第1入口流路と、セルのアノードから還元性燃料排ガスを排出する第1出口流路と、を有すると共に、第1入口流路及び第1出口流路が、第1片持ち梁部内において熱交換可能な程度に近接配置される、第1基板と、第1基板と共にセルを覆うように収容する第2基板であって、セルが配置される第2主部と、第1片持ち梁部の延在方向と一致するように第2主部から延在する第2片持ち梁部と、第2片持ち梁部から延在し、第2片持ち梁部を固定するための第2固定部と、を有し、さらに、セルのカソードに酸化剤燃料ガスを導入する第2入口流路と、セルのカソードから酸化剤燃料排ガスを排出する第2出口流路と、を有すると共に、第2入口流路及び第2出口流路が、第2片持ち梁部内において熱交換可能な程度に近接配置される、第2基板と、セルから発せられる熱を内部に封じ込めるための真空容器であって、第1基板及び第2基板を囲み、第1固定部及び第2固定部が固定される、真空容器と、を具備するものである。
【0011】
ここで、第1基板及び第2基板は、セラミックス、ガラス、無機結晶の何れかからなるものであれば良い。
【0012】
また、第1基板及び第2基板は、積層される、又は一体形成されるものであれば良い。
【0013】
また、本発明の小型燃料電池は、セルと第1基板と第2基板とからなる基板構造が、上面視で第1片持ち梁部の延在方向が一致するように複数積層されるものであっても良い。
【0014】
ここで、複数積層される小型燃料電池は、各第1入口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成され、各第1出口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成され、各第2入口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成され、各第2出口流路がそれぞれ接続され並列の流路として構成される、ものであっても良い。
【0015】
また、複数積層される小型燃料電池は、第1出口流路が他の第1入口流路に接続され直列の流路として構成され、第2出口流路が他の第2入口流路に接続され直列の流路として構成される、ものであっても良い。
【0016】
また、第1基板又は第2基板は、ヒータ用又は温度センサ用の金属部を有するものであっても良い。
【0017】
また、第1基板及び第2基板は、第1主部及び第2主部のセルが配置される面の反対側の面に、又は第1主部及び第2主部のセルが配置される面の反対側の面及び側面に、輻射軽減用の金属薄膜が形成されるものであっても良い。
【0018】
また、第1片持ち梁部は、第1固定部に向かって末広がり形状を有し、第2片持ち梁部は、第2固定部に向かって末広がり形状を有する、ものであっても良い。
【0019】
また、第1入口流路及び第1出口流路は、第1基板に設けられる第1凹溝により提供され、第2入口流路及び第2出口流路は、第2基板に設けられる第2凹溝により提供され、第1入口流路及び第1出口流路は、それぞれ第2入口流路及び第2出口流路と上面視で重ならないように配置されるものであっても良い。
【0020】
さらに、第1基板と第2基板の間に介在するように位置合わせされるスペーサ基板を有するものであっても良く、スペーサ基板は、セルを収容する貫通空間を有するスペーサ主部と、第1片持ち梁部の延在方向と一致するようにスペーサ主部から延在するスペーサ片持ち梁部と、スペーサ片持ち梁部から延在しスペーサ片持ち梁部を固定するためのスペーサ固定部とを有するものであれば良い。
【0021】
また、第1入口流路及び第1出口流路は、第1基板及び/又はスペーサ基板に設けられる第1凹溝により提供され、第2入口流路及び第2出口流路は、第2基板及び/又はスペーサ基板に設けられる第2凹溝により提供される、ものであっても良い。
【0022】
ここで、第1入口流路及び第1出口流路は、それぞれ第2出口流路及び第2入口流路と上面視で重なるように配置されるものであっても良い。
【0023】
さらに、セルのアノードに導入される還元性燃料ガスを改質するための燃料改質触媒を有するものであっても良く、燃料改質触媒は、第1入口流路のセル近傍に配置される、ものであれば良い。
【0024】
また、第1固定部は、第1主部の周囲を囲うように配置され、第2固定部は、第2主部の周囲を囲うように配置され、第1固定部及び第2固定部は、真空容器に密閉状態で固定される、ものであっても良い。
【0025】
また、セルは、平板セル又はチューブ型セルであれば良い。
【0026】
さらに、第1出口流路中に配置され、第1出口流路に対して流路断面積が小さくなる喉部を有することでベンチュリ効果が得られるベンチュリ管構造であって、喉部に設けられる吸込口を有し、第2出口流路が吸込口に接続される、ベンチュリ管構造と、を具備するものであっても良い。
【0027】
また、第2出口流路は、吸込口に対してベンチュリ管構造の還元性燃料排ガスの流れる下流方向に傾斜して接続されるものであっても良い。
【0028】
また、第2出口流路は、ベンチュリ管構造の吸込口に接続されるところで第2出口流路に対して流路断面積が小さくなる括れ部を有するものであっても良い。
【0029】
また、小型燃料電池の燃料が液体燃料からなり、さらに、液体燃料を吸い込むために第1入口流路中に配置され、第1入口流路に対して流路断面積が小さく毛細管現象が得られる毛細管構造を具備する、ものであっても良い。
【0030】
また、毛細管構造は、セルの作動温度により加熱される位置に配置されるものであっても良い。
【0031】
また、毛細管構造は、吸い込まれる液体燃料が加熱され蒸発することで還元性燃料ガスとするものであっても良い。
【発明の効果】
【0032】
本発明の小型燃料電池には、可搬性を有しながら耐熱性や断熱性、発電効率が高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の小型燃料電池を説明するための概略図である。
図2図2は、本発明の小型燃料電池の第1基板と第2基板とスペーサ基板の詳細を説明するための概略図である。
図3図3は、本発明の小型燃料電池の基板が2層構造の場合の詳細を説明するための概略図である。
図4図4は、本発明の小型燃料電池が燃料改質触媒を有する場合の例について説明するための一部概略側断面図である。
図5図5は、本発明の小型燃料電池の基板の固定部の他の例の詳細を説明するための概略分解斜視図である。
図6図6は、本発明の小型燃料電池の基板の固定部を真空容器へ固定する構造を説明するための概略側断面図である。
図7図7は、本発明の小型燃料電池を積層構造とした例の詳細を説明するための概略側面図である。
図8図8は、本発明の小型燃料電池を積層構造とした他の例の詳細を説明するための概略側面図である。
図9図9は、本発明の小型燃料電池の吸排気を説明するための概略側断面図である。
図10図10は、本発明の小型燃料電池の3層構造の基板にベンチュリ管構造を組み込んだ場合の詳細を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。本発明の小型燃料電池は、可搬性を有するものである。図1は、本発明の小型燃料電池を説明するための概略図であり、図1(a)が側断面図であり、図1(b)が一部断面上面図である。図示の通り、本発明の小型燃料電池は、セル10と、第1基板20と、第2基板30と、スペーサ基板40と、真空容器50とから主に構成されている。
【0035】
セル10は、アノード11とカソード12とそれらの間に介在する電解質13とを有するものである。以下の説明では、主に固体酸化物形燃料電池セル(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)をセル10として用いた例について説明するが、本発明はこれに限定されない。セル10としては高温作動するものが好ましく、SOFC以外に、例えば溶融炭酸塩形燃料電池セル(Molten Carbonate Fuel Cell:MCFC)やプロトン導電性セラミック燃料電池セル(Protonic Ceramic Fuel Cell:PCFC)が適用可能である。さらに、高温作動するものには必ずしも限定されず、低温作動するものであっても熱損失を減らせ発電効率を向上可能であるため、例えばリン酸形燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell:PAFC)や固体高分子形燃料電池( Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)、アルカリ形燃料電池(Alkaline Fuel Cell:AFC)等であっても適用可能である。また、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolyzer Cell: SOEC)でも適用可能である。その他、既存の又は今後開発されるべきあらゆる燃料電池が適用可能である。
【0036】
また、セル10は、図示例では平板セルを示した。以下の説明では、主に平板セル、具体的には円形平板セルを例に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、セルは方形平板セルであっても良い。また、セル10は、チューブ型セルであっても良い。チューブ型セルは、1本のチューブだけに限定されず、複数本のチューブを束ねたものであっても良い。
【0037】
図2を用いて、第1基板20と第2基板30とスペーサ基板40の詳細について説明する。図2は、本発明の小型燃料電池の第1基板と第2基板とスペーサ基板の詳細を説明するための概略図であり、図2(a)が分解斜視図であり、図2(b)が固定部側から見た側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では第1基板20と第2基板30とスペーサ基板40を用いた3層構造の例を示したが、本発明はこれに限定されず、スペーサ基板を用いない2層構造であっても良い。また、セルと基板部分のみを示し、他のものは図示を省略した。
【0038】
第1基板20は、セル10を収容するものである。第1基板20は、例えばセラミックスからなるものであれば良い。なお、本発明はこれに限定されず、第1基板20は、例えばガラスや無機結晶等であっても良い。
【0039】
図示の通り、第1基板20は、第1主部21と、第1片持ち梁部22と、第1固定部23とを有するものである。第1主部21は、セル10が配置される部分である。図示例では、セル10が配置される部分に円柱状の窪みが設けられている。第1片持ち梁部22は、第1主部21から延在するものである。第1片持ち梁部22は、第1主部21よりも細いものであり、第1主部21を1本の梁で支えるものである。第1固定部23は、第1片持ち梁部22を固定するためのものである。第1固定部23は、後述の真空容器50に固定される部分である。
【0040】
また、第1基板20は、第1入口流路24と、第1出口流路25とを有するものである。図示例では、第1入口流路24及び第1出口流路25は、第1基板20に設けられる第1凹溝により提供されている。第1入口流路24は、セル10のアノード11に還元性燃料ガスを導入するものである。より具体的には、第1入口流路24は、第1固定部23から第1片持ち梁部22を通り第1主部21に配置されるセル10のアノード11に還元性燃料ガスを導入するものである。還元性燃料ガスは、例えば水素等である。また、第1出口流路25は、セル10のアノード11から還元性燃料排ガスを排出するものである。より具体的には、第1出口流路25は、第1主部21に配置されるセル10のアノード11から第1片持ち梁部22を通り第1固定部23から還元性燃料排ガスを排出するものである。還元性燃料排ガスには、未反応ガスも含まれる。ここで、本発明の小型燃料電池では、第1入口流路24及び第1出口流路25が、第1片持ち梁部22内において熱交換可能な程度に近接配置されていることが特徴の1つとなっている。即ち、第1入口流路24は温度の低いガスが流れる流路である一方、第1出口流路25はセル10を通った後の温度の高いガスが流れる流路である。このため、これらの流路を熱交換可能な程度に近接配置すると、第1出口流路25に流れる高温の還元性燃料排ガスを、第1入口流路24に流れる低温の還元性燃料ガスで冷やすことが可能となる。逆にいうと、第1入口流路24に流れる低温の還元性燃料ガスを、第1出口流路25に流れる高温の還元性燃料排ガスで温めることが可能となる。したがって、第1片持ち梁部22が不必要に高温になり過ぎることを防止できると共に、予め還元性燃料ガスを還元性燃料排ガスで温めてからアノード11に導入することも可能になる。これにより、発電効率を高めることが可能となる。ここで、第1片持ち梁部22内において、第1入口流路24及び第1出口流路25は、その間の距離を近付けるほど、また、流路断面積が小さいほど、熱交換が起こりやすくなる。また、流路断面を長方形とし、第1入口流路24と第1出口流路25とが対向する面を広くすることでも熱交換が起こりやすくなる。さらに、図示例では、第1固定部23側から見て、第1入口流路24が第1主部21の遠い側からセル10に還元性燃料ガスを導入するようにセル10近傍を迂回する流路が設けられると共に、第1出口流路25が第1主部21の近い側から還元性燃料排ガスを排出するようにセル10から直線的な流路が設けられている。これにより、還元性燃料ガスを導入する際に、熱いセル10近傍を迂回させることで、セル10の熱により還元性燃料ガスをさらに温めることも可能である。
【0041】
第1基板20において、セラミックス等の同一材料を用いて第1主部21や第1片持ち梁部22、第1固定部23、さらには第1入口流路24や第1出口流路25が形成されるため、熱膨張係数の違いによる問題は起きない。なお、第1主部21や第1片持ち梁部22、第1固定部23は、必ずしも同一材料で一体形成されるものには限定されず、熱膨張係数が近いものであれば個々に形成されるものを組み合わせたものであっても良い。
【0042】
第2基板30は、第1基板20と共にセル10を覆うように収容するものである。第2基板30も、例えばセラミックスからなるものであれば良い。なお、本発明はこれに限定されず、第2基板30は、例えばガラスや無機結晶等であっても良い。
【0043】
図2に示される通り、第2基板30は、基本構造は第1基板20と同様である。第2基板30は、第2主部31と、第2片持ち梁部32と、第2固定部33とを有するものである。第2主部31は、セル10が配置される部分である。図示例では、セル10が配置される部分に円柱状の窪みが設けられている。第2片持ち梁部32は、第2主部31から延在するものである。第2片持ち梁部32は、第2主部31よりも細いものであり、第2主部31を1本の梁で支えるものである。図1(b)に示される通り、第2片持ち梁部32は、第1片持ち梁部22の延在方向と一致するように第2主部31から延在するものである。第2固定部33は、第2片持ち梁部32を固定するためのものである。第2固定部33は、後述の真空容器50に固定される部分である。
【0044】
また、第2基板30は、第2入口流路34と、第2出口流路35とを有するものである。図示例では、第2入口流路34及び第2出口流路35は、第2基板30に設けられる第2凹溝により提供されている。第2入口流路34は、セル10のカソード12に酸化剤燃料ガスを導入するものである。より具体的には、第2入口流路34は、第2固定部33から第2片持ち梁部32を通り第2主部31に配置されるセル10のカソード12に酸化剤燃料ガスを導入するものである。酸化剤燃料ガスは、例えば酸素等である。また、第2出口流路35は、セル10のカソード12から酸化剤燃料排ガスを排出するものである。より具体的には、第2出口流路35は、第2主部31に配置されるセル10のカソード12から第2片持ち梁部32を通り第2固定部33から酸化剤燃料排ガスを排出するものである。酸化剤燃料排ガスには、未反応ガスも含まれる。ここで、本発明の小型燃料電池では、第2入口流路34及び第2出口流路35が、第2片持ち梁部32内において熱交換可能な程度に近接配置されていることが特徴の1つとなっている。即ち、第2入口流路34は温度の低いガスが流れる流路である一方、第2出口流路35はセル10を通った後の温度の高いガスが流れる流路である。このため、これらの流路を熱交換可能な程度に近接配置すると、第2出口流路35に流れる高温の酸化剤燃料排ガスを、第2入口流路34に流れる低温の酸化剤燃料ガスで冷やすことが可能となる。逆にいうと、第2入口流路34に流れる低温の酸化剤燃料ガスを、第2出口流路35に流れる高温の酸化剤燃料排ガスで温めることが可能となる。したがって、第2片持ち梁部32が不必要に高温になり過ぎることを防止できると共に、予め酸化剤燃料ガスを酸化剤燃料排ガスで温めてからカソード12に導入することも可能となる。これにより、発電効率を高めることが可能となる。ここで、第2片持ち梁部32内において、第2入口流路34及び第2出口流路35は、その間の距離を近付けるほど、また、流路断面積が小さいほど、熱交換が起こりやすくなる。また、流路断面を長方形とし、第2入口流路34と第2出口流路35とが対向する面を広くすることでも熱交換が起こりやすくなる。さらに、図示例では、第2固定部33側から見て、第2入口流路34が第2主部31の遠い側からセル10に酸化剤燃料ガスを導入するようにセル10近傍を迂回する流路が設けられると共に、第2出口流路35が第2主部31の近い側から酸化剤燃料排ガスを排出するようにセル10から直線的な流路が設けられている。これにより、酸化剤燃料ガスを導入する際に、熱いセル10近傍を迂回させることで、セル10の熱により酸化剤燃料ガスをさらに温めることも可能である。
【0045】
第2基板30においても、セラミックス等の同一材料を用いて第2主部31や第2片持ち梁部32、第2固定部33、さらには第2入口流路34や第2出口流路35が形成されるため、熱膨張係数の違いによる問題は起きない。なお、第2主部31や第2片持ち梁部32、第2固定部33は、必ずしも同一材料で一体形成されるものには限定されず、熱膨張係数が近いものであれば個々に形成されるものであっても良い。
【0046】
ここで、図2(b)に示される通り、第1入口流路24及び第1出口流路25は、それぞれ第2出口流路35及び第2入口流路34と上面視で重なるように配置されるように構成されても良い。このように配置されると、第1入口流路24と第2出口流路35との間でも、熱交換可能な程度に近接配置可能となる。また、同様に、第1出口流路25と第2入口流路34との間でも、熱交換可能な程度に近接配置可能となる。
【0047】
さらに、図2に示される例は、3層構造の例であり、スペーサ基板40が第1基板20と第2基板30の間に介在するように位置合わせされている。スペーサ基板40も、例えばセラミックスからなるものであれば良い。なお、本発明はこれに限定されず、スペーサ基板40は、例えばガラスや無機結晶等であっても良い。
【0048】
スペーサ基板40は、スペーサ主部41と、スペーサ片持ち梁部42と、スペーサ固定部43とを有するものである。スペーサ主部41は、セル10を収容する貫通空間44を有する部分である。図示例では、セル10を収容する円形の貫通空間44が設けられている。スペーサ片持ち梁部42は、スペーサ主部41から延在するものである。スペーサ片持ち梁部42は、スペーサ主部41よりも細いものであり、スペーサ主部41を1本の梁で支えるものである。図1(b)に示される通り、スペーサ片持ち梁部42は、第1片持ち梁部22の延在方向と一致するようにスペーサ主部41から延在するものである。スペーサ固定部43は、スペーサ片持ち梁部42を固定するためのものである。スペーサ固定部43は、後述の真空容器50に固定される部分である。
【0049】
なお、上述の通り、図示例では、第1入口流路24及び第1出口流路25は、第1基板20に設けられる凹溝により提供されており、第2入口流路34及び第2出口流路35は、第2基板30に設けられる凹溝により提供される例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、スペーサ基板40側に凹溝を設けてこれらの流路が提供されても良い。さらに、第1基板20とスペーサ基板40、及び第2基板30とスペーサ基板40にそれぞれ位置合わせされて設けられる凹溝をそれぞれ組み合わせることで、流路が提供されても良い。
【0050】
このように、第1基板20、第2基板30、及びスペーサ基板40は、外形上は同一形状を有しており、積層されることで一体的になるものである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば3Dプリンタ等により一体形成されても良い。3Dプリンタ等により形成される場合には、各流路は凹溝ではなく、中空な孔で提供されれば良い。
【0051】
再度図1を参照すると、真空容器50は、セル10から発せられる熱を内部に封じ込めるためのものである。真空容器50は、真空やアルゴンガス等の希ガスを用いた断熱構造を有するものであれば良い。真空容器50は、第1基板20、第2基板30、及びスペーサ基板40を囲むものである。また、真空容器50には、第1固定部23、第2固定部33、及びスペーサ固定部43が固定されるものである。真空容器50の内部空間を、真空やアルゴンガス等の希ガスを用いて雰囲気制御することで、断熱構造とすれば良い。
【0052】
ここで、図1(b)を参照すると、第1片持ち梁部22は、破線で表す通り、第1固定部23に向かって末広がり形状を有するものであっても良い。同様に、第2片持ち梁部32は、第2固定部33に向かって末広がり形状を有するものであっても良い。より具体的には、第1片持ち梁部22と第1固定部23の接続部が、末広がり形状を有するように構成されても良い。同様に、第2片持ち梁部32と第2固定部33の接続部が、末広がり形状を有するように構成されても良い。末広がり形状は、曲線的に末広がりになっても良いし、図示の破線のように直線的に末広がりになっても良い。直線的な末広がり形状にするほうが、熱耐久性はより高くなる。また、末広がり形状と固定部の接続部の角度θは、熱耐久性の観点からは20°-40°程度の角度が好ましい。
【0053】
本発明の小型燃料電池は、上述のような構成により、セルを高温作動させたとしても、片持ち梁部により片持ちとすることで、第1基板20や第2基板30、スペーサ基板40が熱により破損するリスクを減らすことが可能であり耐熱性の高いものとなる。また、流路を熱交換可能な程度に近接配置することや、真空容器で断熱することで、断熱性が高く、発電効率が高くなる。
【0054】
次に、図3を用いて本発明の小型燃料電池の基板構造の他の例について説明する。図3は、本発明の小型燃料電池の基板が2層構造の場合の詳細を説明するための概略図であり、図3(a)が分解斜視図であり図3(b)が固定部側から見た側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図2に示される例は3層構造の例であったが、図3に示される例は、スペーサ基板を用いない2層構造の例である。なお、図示例では、第1主部21や第2主部31が方形状のものを示したが、本発明はこれに限定されず、円形状の主部であっても良い。また、セル10の例として、チューブ型セルを用いたものを示したが、本発明はこれに限定されず、平板セルであっても良い。
【0055】
図示の通り、本発明の小型燃料電池は、スペーサ基板を用いず、第1基板20と第2基板30とを用いた2層構造であっても良い。第1入口流路24及び第1出口流路25が第1凹溝により提供され、第2入口流路34及び第2出口流路35が第2凹溝により提供される場合、2層構造だと上面視で重なるように配置されると流路が繋がってしまうことになる。したがって、2層構造で流路が凹溝で提供される場合には、図3(b)に示されるように、第1入口流路24及び第1出口流路25は、それぞれ第2入口流路34及び第2出口流路35と上面視で重ならないように配置されれば良い。このように配置されても、各流路は熱交換可能な程度に近接配置可能である。
【0056】
さらに、本発明の小型燃料電池は、燃料改質触媒を有するものであっても良い。図4は、本発明の小型燃料電池が燃料改質触媒を有する場合の例について説明するための一部概略側断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図4に示される例は、3Dプリンタにより一体形成されたものを示した。また、セル10は、集電体14を介して第1基板20と第2基板30の間に配置されたものを示した。例えば、燃料電池においては、メタンと水を反応させて水素を発生させ還元性燃料ガスとする際に、銅触媒等を用いている。このような化学的転換には高温が必要となる。そこで、図4に示される通り、本発明の小型燃料電池は、燃料改質触媒60を有するものであっても良い。燃料改質触媒60は、第1入口流路24に配置されれば良い。具体的には、燃料改質触媒60は、第1入口流路24のセル10近傍に配置されれば良い。より具体的には、セル10の上側近傍を通るように構成される第1入口流路24内の、セル10の上側近傍に燃料改質触媒60を配置すれば良い。本発明の小型燃料電池では、図4に示されるように構成することで、セル10から発生する熱を燃料改質触媒60に与えることが可能となり、改質の効率が良くなる。
【0057】
次に、図5を用いて本発明の小型燃料電池の基板の固定部の他の例について説明する。図5は、本発明の小型燃料電池の基板の固定部の他の例の詳細を説明するための概略分解斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、3層構造の例を示したが、本発明はこれに限定されず、2層構造であっても良い。図示の通り、第1固定部23は、第1主部21の周囲を覆うように配置されている。具体的には、第1固定部23は、リング状に構成されている。同様に、第2固定部33も、第2主部31の周囲を覆うように配置されている。具体的には、第2固定部33は、リング状に構成されている。さらに、スペーサ基板40のスペーサ固定部43も、スペーサ主部41の周囲を覆うようにリング状に構成されている。なお、各流路については上述の図示例と同様に配置されていれば良い。また、図示例では、第1固定部23、第2固定部33の流路の端部、及びこれらに対応するスペーサ固定部43の端部が、タブ形状に構成される例を示した。また、図示例では、各固定部が各主部に対して同心円のリング状に構成される例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、各片持ち梁部をより長くしたり短くしたりすることで同心円とならないものであっても良い。また、本発明の小型燃料電池では、図示例のように主部や固定部が円形のものではなく、例えば六角形のものであっても良い。
【0058】
さらに、本発明の小型燃料電池の第1基板20や第2基板30には、ヒータ用や温度センサ用に利用可能な金属部が設けられても良い。図5に示されるように、第1主部21や第2主部31のセル10が配置される面に、金属部61が配置されれば良い。金属部61は、例えば白金等からなるものであれば良い。金属部61に電流を流せば、金属部61をヒータとして用いることが可能である。これによりセル10の作動温度を上げることが可能となる。また、金属部61の抵抗値の変化を測定すれば温度センサとなるため、セル10の温度を計測することが可能となる。なお、金属部61は、第1基板20と第2基板30の両方に設けられるものであっても良いし、どちらか一方に設けられるものであっても良い。また、図示例ではセル10が配置される面に金属部61が設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1主部21や第2主部31には、セル10が配置される部分に円柱状の窪みが設けられているため、この窪みの内側側面に金属部が設けられていても良い。また、ヒータ用や温度センサ用に利用可能な金属部は、温めたり温度計測が必要な位置に配置されたりすれば良く、基板表面だけでなく基板の内部に埋め込まれても良い。
【0059】
さらに、本発明の小型燃料電池の第1基板20や第2基板30には、輻射軽減用の金属薄膜が形成されても良い。図5に示されるように、第1主部21及び第2主部31のセル10が配置される面の反対側の面に、金属薄膜62が形成されれば良い。金属薄膜62は、セル10から発生する熱が第1基板20や第2基板30の外側に輻射するのを抑えるために設けられる。輻射軽減用の金属薄膜62を設けることで、熱損失を抑えることが可能となる。なお、図示例ではセル10が配置される面の反対側の面にのみ金属薄膜62を設ける例を示したが、本発明はこれに限定されず、第1主部21及び第2主部31のセル10が配置される面の反対側の面だけでなく、第1主部21及び第2主部31の側面に金属薄膜62を形成しても良い。これにより、より輻射を軽減可能となる。
【0060】
図6を用いて、図5に示されるような固定部を有する基板を真空容器へ固定する構造について説明する。図6は、本発明の小型燃料電池の基板の固定部を真空容器へ固定する構造を説明するための概略側断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、第1固定部23及び第2固定部33は、真空容器50に密閉状態で固定されれば良い。具体的には、リング状に構成される第1固定部23及び第2固定部33に対して、シーリング材51を用いてそれぞれ密閉状態で真空容器50に固定されるように構成されている。真空容器50は、例えばポリカーボネイト製の2枚の板状部材から構成されれば良い。リング状に構成される第1固定部23及び第2固定部33を上下からシーリング材51を介在させて板状部材で挟み込むようにねじ等で固定すれば良い。このシーリング材51で囲まれる内部空間を、真空やアルゴンガス等の希ガスを用いて雰囲気制御すれば良い。
【0061】
上述の図示例では、1つのセル10を用いた小型燃料電池を説明したが、実用的には出力を高くするために複数のセルを積層して用いられる。以下、図7を用いて本発明の小型燃料電池を積層構造とした例について説明する。図7は、本発明の小型燃料電池を積層構造とした例の詳細を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では真空容器の図示を省略した。また、セル10や第1基板20、第2基板30等からなる各基板構造は、単セル構造15として表した。単セル構造15は、上述の説明のような種々の構成が適用可能である。
【0062】
このように複数積層されてなる小型燃料電池において、各流路は以下のように構成されれば良い。即ち、複数の単セル構造15の各第1入口流路24がそれぞれ接続され、並列の流路として構成されている。同様に、各第1出口流路25がそれぞれ接続され並列の流路として構成されている。また、各第2入口流路34がそれぞれ接続され並列の流路として構成されている。そして、各第2出口流路35がそれぞれ接続され並列の流路として構成されている。このように並列の流路となるように接続するために、図示の通り、各基板構造には、縦方向に延在するように構成された流路が設けられれば良い。なお、縦方向の流路は、単セル構造15の外部に設けられても良い。このように各流路を構成することで、各セルに対して並列に燃料供給を行うことが可能となる。並列に各流路を構成すると、燃料供給量を多くできると共に燃料濃度も高めることが可能となるため、出力をより高めることが可能である。
【0063】
ここで、図示例では各入口流路及び各出口流路がそれぞれ接続され共通入口流路と共通出口流路としてまとめられたものが一番上部の単セル構造15に設けられるものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、複数の単セル構造15の個々に入口流路及び出口流路を設け、それぞれの単セル構造15に対して個別に燃料供給及び排気を行うようにしても良い。
【0064】
一方、図8に示されるように、各流路を直列に構成することも可能である。図8は、本発明の小型燃料電池を積層構造とした他の例の詳細を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。複数の単セル構造15を積層する構造自体は図7に示される例と同様である。図8に示される例では、各流路が直列の流路として構成されている。即ち、第1出口流路25が他の第1入口流路24に接続され直列の流路として構成されている。また、第2出口流路35が他の第2入口流路34に接続され直列の流路として構成されている。図示例では、上下の基板構造の流路が左右反転した構造となっており、ジグザグの流路となるように構成された例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、上下の基板構造の流路は同じ構造で、別途折り返すための流路が設けられたものであっても良い。直列に各流路を構成すると、未反応燃料ガスを利用できるため、燃料利用効率が上がる。
【0065】
ここで、図示例では各入口流路及び各出口流路が一番上部の単セル構造15に設けられるものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1入口流路24及び第2入口流路34が一番上部の単セル構造15に設けられ、第1出口流路25及び第2出口流路35が一番下部の単セル構造15に設けられるようにしても良い。即ち、上部から燃料供給し、下部から排気を行うようにしても良い。なお、上下はどちらでも良いのは勿論である。
【0066】
次に、本発明の小型燃料電池の吸排気について説明する。小型燃料電池において燃料を吸排気する際に、機械式ポンプを用いても良いが、本発明の小型燃料電池には、以下のようにベンチュリ効果を用いるものとすることが可能である。図9は、本発明の小型燃料電池の吸排気を説明するための概略側断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、この例では、ベンチュリ管構造70が設けられている。ベンチュリ管構造70は、喉部71と、吸込口72とを有している。喉部71は、第1出口流路25中に配置されている。喉部71により第1出口流路25に対して流路断面積が小さくなっている。このような構造によりベンチュリ効果が得られ流速が増加し圧力が低下することになる。吸込口72は、喉部71に設けられている。そして、第2出口流路35が、吸込口72に接続されている。
【0067】
このようなベンチュリ管構造70では、第1出口流路25を流れる還元性燃料排ガスは、ベンチュリ管構造70の喉部71により流速が増加する。これにより圧力が低下することで負圧となり、吸込口72に接続される第2出口流路35から酸化剤燃料排ガスを吸引することが可能となる。これにより、結果的に第2入口流路34から酸化剤燃料ガスが導入されることになる。そして、第1出口流路25と第2出口流路35が共通出口流路26となって、還元性燃料排ガス及び酸化剤燃料排ガスが排気されることになる。
【0068】
ここで、第2出口流路35は、吸込口72に対してベンチュリ管構造70の還元性燃料排ガスの流れる下流方向に直角に接続されても良いが、図示例のように、下流方向に傾斜して接続されても良い。下流方向に傾斜して第2出口流路35が吸込口72に接続されることで、酸化剤燃料排ガスがよりスムーズに吸込口72から吸引される。
【0069】
また、第2出口流路35は、第2出口流路35の流路の大きさのままベンチュリ管構造70の吸込口72に接続されても良いが、図示の通り括れ部73を介して吸込口72に接続されても良い。即ち、第2出口流路35は、ベンチュリ管構造70の吸込口72に接続されるところで第2出口流路35に対して流路断面積が小さくなる括れ部73を有していても良い。括れ部73を設けることで、より圧力が低下し流速を増加させることが可能となる。
【0070】
なお、ベンチュリ管構造70の形状や流路の大きさについては、図示例には限定されず、必要な吸引量や吸引速度に応じて適宜設計されれば良い。
【0071】
さらに、図示の通り、第1入口流路24に、毛細管構造27を設けても良い。毛細管構造27は、液体燃料を吸い込むために第1入口流路24中に配置され、第1入口流路24に対して流路断面積が小さく毛細管現象が得られるように構成されるものである。本発明の小型燃料電池の燃料が例えばバイオエタノール等の液体燃料の場合には、毛細管構造27により液体燃料を吸い込むことが可能となる。毛細管構造27による液体燃料の吸い込みによって、上述のベンチュリ管構造70の第1出口流路25の還元性燃料排ガスの流れにより酸化剤燃料排ガスが吸引されることになる。これにより、機械式ポンプを用いないポンプレス構造であっても燃料供給が可能となる。
【0072】
また、毛細管構造27は、セル10の作動温度により加熱される位置に配置されれば良い。これにより、毛細管構造27により吸い込まれた液体燃料が加熱され、第1入口流路24内で蒸発することで還元性燃料ガスとなる。これによりセル10の燃料として利用可能となる。さらに、毛細管構造27の温度をヒータにより制御すると、燃料供給量を温度により制御することも可能となる。具体的には、毛細管構造27を加熱するヒータのオン・オフ制御により、小型燃料電池のオン・オフ制御も可能となる。
【0073】
次に、図10を用いてベンチュリ管構造70を組み込んだ3層構造の小型燃料電池について具体的に説明する。図10は、本発明の小型燃料電池の3層構造の基板にベンチュリ管構造を組み込んだ場合の詳細を説明するための概略図であり、図10(a)が第1基板と第2基板とスペーサ基板を重ねた状態の斜視図であり、図10(b)が第2基板を除いた第1基板とスペーサ基板を重ねた状態の斜視図であり、図10(c)が第2基板とスペーサ基板を除いた第1基板の斜視図である。図中、図9と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、ベンチュリ管構造の周辺のみを示し、他の部分は図示を省略した。また、図示例では、主部や固定部が六角形のものを示した。
【0074】
図10に示される通り、第1基板20にベンチュリ管構造70が設けられている。より具体的には、セル10のアノード11側の第1出口流路25が、直接喉部71として流路断面積が小さくなるような幅狭の凹溝により提供されている。そして、流路が拡大する共通出口流路26が喉部71に接続される凹溝により提供されている。また、吸込口72が喉部71と共通出口流路26の接続部に設けられており、吸込口72に接続される凹溝により第2出口流路35が提供されている。ここで、図示例では、第2出口流路35が括れ部73を有するものを示したので、吸込口72に接続される凹溝は、括れ部73となっている。
【0075】
そして、スペーサ基板40には、第2出口流路35が垂直方向の貫通孔により提供されている。ここで、図示例では、第2出口流路35が括れ部73を有するものを示したので、スペーサ基板40の貫通孔は、括れ部73となっている。このスペーサ基板40の第2出口流路35の貫通孔は、基板を積層すると第1基板20の第2出口流路35の凹溝、より具体的には括れ部73の端部と重なる。
【0076】
また、第2基板30には、第2出口流路35が凹溝により提供されている。そして、図示例では、第2出口流路35の凹溝の先端部分には、流路断面積が小さくなるような幅狭の凹溝により括れ部73が提供されている。この括れ部73の凹溝が、基板を積層するとスペーサ基板40の貫通孔や第1基板20の吸込口72に接続される凹溝と重なる。本発明の小型燃料電池では、このような積層構造であってもベンチュリ管構造70を組み込むことが可能である。
【0077】
なお、図示例の場合も、これまで説明した本発明の小型燃料電池と同様に、第1入口流路24及び第1出口流路25が、第1片持ち梁部22内において熱交換可能な程度に近接配置されると共に、第2入口流路34及び第2出口流路35が、第2片持ち梁部32内において熱交換可能な程度に近接配置されている。ここで、図示例では、片持ち梁部22,32で近接配置されていた流路は、第1固定部23や第2固定部33においては、第1入口流路24及び第1出口流路25や、第2入口流路34及び第2出口流路35が、それぞれ離れた位置に配置されている。このように構成されても、これまで説明した本発明の小型燃料電池と同様に、片持ち梁部22,32において高温の還元性燃料排ガスを、低温の還元性燃料ガスで冷やすことが可能となる構造を有していることになる。
【0078】
さらに、図示例の場合は、第1入口流路24や第2入口流路34を、それぞれ複数設けている。具体的には、第1入口流路24を左右に設け2本の入口流路とすると共に、第2入口流路34も左右に設け2本の入口流路としている。このような構成により、より効率的に還元性燃料ガスや酸化剤燃料ガスをセル10に導入可能としている。
【0079】
なお、本発明の小型燃料電池は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 セル
11 アノード
12 カソード
13 電解質
14 集電体
15 単セル構造
20 第1基板
21 第1主部
22 第1梁部
23 第1固定部
24 第1入口流路
25 第1出口流路
26 共通出口流路
27 毛細管構造
30 第2基板
31 第2主部
32 第2梁部
33 第2固定部
34 第2入口流路
35 第2出口流路
40 スペーサ基板
41 スペーサ主部
42 スペーサ梁部
43 スペーサ固定部
44 貫通空間
50 真空容器
51 シーリング材
60 燃料改質触媒
61 金属部
62 金属薄膜
70 ベンチュリ管構造
71 喉部
72 吸込口
73 括れ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10