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特開2024-48388放射線および/または粒子検出器用ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048388
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】放射線および/または粒子検出器用ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/08 20060101AFI20240401BHJP
   G01T 3/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C03C4/08
G01T3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023163182
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】22198135
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ラスプ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エルヴィン アイヒホルツ
【テーマコード(参考)】
2G188
4G062
【Fターム(参考)】
2G188BB09
2G188CC13
2G188CC21
2G188EE01
4G062AA01
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DC04
4G062DC05
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EA02
4G062EA03
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062EC04
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EF02
4G062EF03
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FB02
4G062FC01
4G062FC02
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM22
4G062NN13
4G062NN14
(57)【要約】
【課題】放射線および/または粒子検出装置、特に中性子検出装置、UV検出器またはニュートリノ検出装置のために特に有用であるガラスを提供する。
【解決手段】前記の課題は、波長260nmで(基準厚さ1.0mmで)少なくとも65.0%の透過率を有するガラスであって、前記ガラス中のZrO2の量が150ppm未満である、前記ガラスによって解決される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長260nmで(基準厚さ1.0mmで)少なくとも65.0%の透過率を有するガラスであって、前記ガラス中のZrO2の量が150ppm未満である、前記ガラス。
【請求項2】
前記ガラス中のHfO2の量が10ppm未満である、請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
前記ガラスがガラス1グラムあたり4.42ベクレル未満のアルファ粒子の放出を有する、請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
前記ガラス中のFe23、MoO3およびWO3の1つ以上の量が10ppm未満である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項5】
前記ガラス中のTiO2の量が20ppm未満である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項6】
以下の組成:
成分 含有率
Si4+ 52~71カチオン%
Al3+ 0~8カチオン%
3+ 0~35カチオン%
Li+ 0~7カチオン%
Na+ 0~17カチオン%
+ 0~14カチオン%
Mg2+ 0~6カチオン%
Ca2+ 0~2カチオン%
Sr2+ 0~4カチオン%
Ba2+ 0~4カチオン%
+の合計 5~30カチオン%
2+の合計 0~5カチオン%
を示された量(カチオン%)で含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項7】
前記ガラス組成物の総質量に対して、F-が前記ガラス中に0~3質量%で存在することができ、且つ/またはCl-が前記ガラス中に0~1質量%で存在することができ、且つアニオンの少なくとも96%が酸素として存在することができる、請求項6に記載のガラス。
【請求項8】
波長260nmでの透過率が(基準厚さ1mmで)75%を上回る、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項9】
前記ガラス中のガリウム、ウラン、トリウム、イットリウムおよびタリウムの1つ以上の酸化物の量が最大3ppmである、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラスの製造方法であって、以下の段階:
a) ガラス原料を、耐火材料を含有する溶融槽内で溶融する段階、
b) 任意に、耐火材料を含有する清澄槽内で前記溶融物を清澄する段階、
c) 前記溶融物を冷却する段階
を含み、
前記ガラス溶融物が前記溶融槽および/または任意の清澄槽の耐火材料と接触し、
前記溶融槽および任意の清澄槽の耐火材料中のZrO2の割合が5質量%未満である、
前記方法。
【請求項11】
溶融段階a)が1500℃以上の温度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記耐火材料がAl23を5質量%未満の量で含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
溶融の間に還元性条件が適用される、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
放射線および/または粒子検出器のための、請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラスの使用。
【請求項15】
前記検出器が中性子検出器、ニュートリノ検出器、光電子増倍管またはUV検出器から選択される、請求項14に記載のガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は放射線検出器、特に中性子検出器、UV検出器およびニュートリノ検出器用のガラスに関する。本開示はそのようなガラスの製造方法、および放射線および/または粒子検出器における、特に中性子検出器、UV検出器またはニュートリノ検出器における、そのようなガラスの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
放射線および/または粒子検出器はガラス物品、例えばレンズ、カバー、ガラスファイバなどを含むことが多く、それらは測定と干渉してはならない。
【0003】
しかしながら、原料ならびに製造プロセスが、特定の放射線および/または粒子と干渉する材料によってガラスを汚染することがある。例えば、ガラス中の特定の成分は中性子吸収能力および/またはUV吸収能力を有する元素を含む。それらのガラスの元素のいくつかは弱い核放射線を示すことすらあり、それは実際の測定にさらなる影響を及ぼしかねない。
【0004】
例えば、大半の従来のガラスはZr、Hf、並びに他の汚染物質、例えばFe、Tiおよび/またはPtを含む。Hfは少なくともいくつかの同位体においては放射性であり、中性子吸収能力を有する。ZrおよびHfは化学的に密接に関連しているので、Zr汚染物質は常にHf汚染物質も含む。Pt、TiおよびFeは例えば、特定の波長のUV光を吸収する。従って、そのような汚染されたガラスは、放射線および/または粒子検出装置、特に中性子検出装置、UV検出器およびニュートリノ検出装置のために特に有用ではない。
【0005】
さらに、特定の検出器においては異なる物理的作用が同時に使用され、例えば中性子検出器は中性子吸収によって機能するが、UV放射線の検出に依存するシンチレーションによっても機能し、UV放射線の検出はUV吸収によって、並びに残留放射能などによって干渉されるので、汚染物質を有するガラスは放射線および/または粒子検出器といくつかのレベルで干渉し、全ての検出誤差を補正することが困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、従来技術において、放射線および/または粒子検出装置、特に中性子検出装置、UV検出器またはニュートリノ検出装置のために特に有用であるガラスを提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の詳細
本開示においては、本質的にZrおよびHf(並びに相応の酸化物ZrO2およびHfO2)、並びに他の汚染物質、例えばFe、Tiおよび/またはPt不含であり、従って放射線検出装置、特に中性子検出装置、ニュートリノ検出装置、およびUV検出装置のために特に有用である新規のガラス組成物およびその使用が示される。さらに、以下に示されるガラスは優れたUV透過率も示し、それは特にシンチレーション検出器において使用する場合にさらに有益である。
【0008】
本開示の1つの態様において、耐火るつぼのために使用される従来の材料、例えばケイ酸アルミニウムジルコニウム(AZS、商品名Zirkosit(登録商標) S32、S32 N、S32 KLP、S32 KLS、M36、M36 N、M36 EL、M36 KLB、M36 KLP、M36 KLSなどで知られる)、またはAl23含有材料(Al23含有率45~95質量%、Korvisit(登録商標)AB、AB N、AB KLP、AB KLS、Aなどとして知られる)は、例えばFe、Ti、Pt、Ga、Zrなどの元素(またはそれらの酸化物)でのガラス溶融物の汚染が不可避であることが判明した。これはまた、中性子吸収、UV吸収および残留放射能を示すガラスをもたらし、放射線検出装置、特に中性子検出装置、ニュートリノ検出装置、およびUV検出装置におけるその有用性を低下させる。
【0009】
中性子検出
中性子検出は、適切に位置付けられた検出器に入る中性子の有効な検出である。中性子を検出するための現在最も一般的なハードウェアはシンチレーション検出器である。シンチレーション中性子検出器は、液体の有機シンチレータ、結晶、プラスチックおよびシンチレーションファイバを含む。
【0010】
中性子検出のためのシンチレーション6Liガラスは科学文献において1957年に初めて報告され、それ以来、重要な進歩があった。シンチレーションガラスファイバは6LiおよびCe3+をガラスのバルク組成物中に組み込むことによって機能する。6Liは6Li(n,α)反応を通じた熱中性子吸収のための高い断面積を有する。中性子吸収はトリチウムイオン、アルファ粒子および運動エネルギーを生成する。アルファ粒子およびトリチウムはガラスマトリックスと相互作用してイオン化をもたらし、それがエネルギーをCe3+イオンに伝達し、励起状態のCe3+イオンが基底状態に戻る際に波長390nm~600nmを有するフォトンの放出が生じる。
【0011】
その事象は、吸収された各々の中性子について数千のフォトンの光の閃光をもたらす。シンチレーション光の一部が、導波路として機能するガラスファイバを通じて伝搬する。ファイバ端部は、フォトンのバーストを検出するための一対の光電子増倍管(PMT)に光学的に結合されている。検出器を使用して中性子とガンマ線との両方を検出することができ、それらは典型的には波高弁別を使用して区別される。ガンマ線に対するファイバ検出器の感度を低下することにおいて、かなりの努力および進歩がなされてきた。元の検出器は、0.02mRのガンマ場における偽の中性子に苦しまされた。設計、プロセスおよびアルゴリズムの改善により、今や20mR/h(60Co)までのガンマ場における動作が可能になっている。
【0012】
それらのシンチレーション6Liファイバのために使用されるガラスは当然、中性子を吸収し、従って信号と干渉し得る元素での汚染物質をできるだけ少なく含有する必要がある。中性子は物質とあまり相互作用しないが、特定の元素、例えばハフニウム(Hf)は吸収および散乱によって中性子と相互作用する。Hfは熱中性子および熱外中性子の有効な吸収を示し、中性子束における長時間の放射の間に吸収特性が部分的に回復する。例えばHfの中性子吸収は、化学的に密接に関連するジルコニウム(Zr)よりも600倍高い。
【0013】
ランタノイド収縮に起因して、ZrおよびHfは類似した原子サイズおよびイオンサイズを示す。Zr-Hfはほぼ同一のサイズを有する。それらは同様の数の価電子および同様の特性を有するので、化学的双子と称される。この密接な化学的関係に起因して、Zrが組成物中に存在する場合、Hfも存在する。
【0014】
しかしながら、本発明のガラスはZr(およびHf)をほとんどまたは全く含まないので、それらで作られたシンチレーションファイバ検出器は優れた感度を有し、速いタイミング(約60ns)を有するので、計数率における大きなダイナミックレンジが可能である。前記検出器は、それらが任意の所望の形状に形成されることができ、様々な用途における使用のために非常に大きくまたは非常に小さくすることができるという利点を有する。さらに、それらは3He、または入手可能性が限られている原料には依存しせず、それらは毒性または規制された材料を含有しない。それらの性能は、高圧のガス状3Heに比して固体ガラス中の中性子吸収種の密度がより高いことに起因して、全中性子計数について3He管の性能と同等または上回る。6Liの熱中性子断面積は3Heに比して小さいにもかかわらず(940バーン対5330バーン)、ファイバ中の6Liの原子密度は50倍大きく、約10:1の有効捕獲密度比において利点をもたらす。
【0015】
ニュートリノ検出
よく知られているニュートリノ検出器は、一方では放射化学的検出器(例えば米国のホームステイク金鉱における塩素実験、またはイタリアのグラン・サッソトンネルにおけるGALLEX検出器)であり、他方ではチェレンコフ効果に基づく検出器であり、ここでサドベリー・ニュートリノ観測所(SNO)およびスーパーカミオカンデが最も注目に値する。それらは太陽ニュートリノおよび大気ニュートリノを検出し、ニュートリノ振動の測定を可能にし、ひいてはニュートリノの質量における違いについての結論付けを可能にし、なぜなら太陽内で起きる反応、ひいては太陽のニュートリノ放出はよく知られているからである。ダブルショー実験などの実験、または神岡ニュートリノ観測所におけるカムランド検出器(2002年から稼働)は、逆ベータ崩壊を介して地球ニュートリノおよび原子炉ニュートリノを検出でき、太陽ニュートリノ検出器がカバーできない範囲からの補足的な情報を提供できる。
【0016】
他の起源の放射性崩壊がニュートリノ検出を困難にするか、または不可能にすらすることは明らかであるので、ニュートリノ検出器において使用される材料はそのような元素不含である必要がある。
【0017】
UV検出
放射性放出がUV検出器の信号対ノイズ比に影響することも判明している。現在のUV透過ガラスの放射性放出は、大部分がハフニウムの放射性同位体の存在に起因する。ハフニウムの放射性同位体はアルファ線およびガンマ線を放出する。
【0018】
天然のハフニウムは6つの同位体で構成される: 174Hf(0.16%)、176Hf(5.26%)、177Hf(18.6%)、178Hf(27.28%)、179Hf(13.62%)、180Hf(35.08%)。エネルギー範囲1.0~100keVにおける中性子捕獲断面積についての天然のハフニウムの共鳴積分は1900~2300バーンである。バーン(記号: b)は、10-282(100fm2)に等しい面積のメートル単位である。それは核物理学において任意の散乱プロセスの断面積を表すために使用され、小さい粒子間の相互作用の確率の尺度として最もよく理解されている。1バーンはほぼウラン核の断面積である。バーンは決してSI単位ではなかったが、SI標準化団体は素粒子物理学におけるその使用に起因して、第8版のSIパンフレット(2019年に更新)においてそれを認めた。
【0019】
ハフニウムは化学的にジルコニウムと似ており、多くのジルコニウム鉱物中に存在する。従って、ガラス組成物のZrO2での汚染は、必然的にHfO2での汚染と関連する。
【0020】
従来のUV透過ガラス組成物は非常に高い溶融温度を有する。従って、ガラスの製造のために非常に耐熱性の耐火材料が必要である。UV透過ガラスのZrO2での汚染は主に、ガラスの製造の間にジルコニウムを含有する耐火材料を使用することに基づくことが判明した。そのような耐火材料は例えば、るつぼ、溶融槽、清澄槽、およびガラスの製造の間に使用される他の装置の一部としてガラス溶融物と接触することがある。
【0021】
本開示はこの問題を、ガラスの製造の間にジルコニウムを含有する耐火材料を回避することによって解決する。そのように得られたガラスは低減された放射性放出を有する。
【0022】
光電子増倍管およびフォトダイオードは、典型的には真空にされたガラスハウジングと共に構成される検出器である。ガラスからの放射性放出はバックグラウンドノイズの増加をもたらし、なぜなら、検出器は入射するフォトンだけでなく放射性放出に対しても敏感であるので、入射する光と入射する放射能との両方によって電流が生成されるからである。従って、放射能は、増加されたノイズを生成して悪化した信号対ノイズ比(S/N)をもたらすことによって、対象の光信号の検出を脅かす。
【0023】
従って、この開示によるガラスは、1グラムあたり40.1ベクレル未満、1グラムあたり31.6ベクレル未満、1グラムあたり4.42ベクレル未満、1グラムあたり2.21ベクレル未満、1グラムあたり1.106ベクレル未満、または1グラムあたり0.553ベクレル未満のアルファ粒子の放出を有する。
【0024】
ニュートリノ検出器は、例えば感光性光電子増倍管によって取り囲まれた水または氷などの大量の透明材料で構成され得る。ニュートリノは原子核と相互作用して荷電レプトンを生成することができ、それが光電子増倍管によって検出され得る放射線を発生させる。光電子増倍管のガラスハウジングからの放射性放出はニュートリノの検出と強く干渉する。
【0025】
ガラスからの放射性放出の他の欠点は、それがガラスの透過率を低減するソラリゼーションと関連することである。従って、放射能を放出するガラスは、高い透過率、特に高いUV透過率を必要とする用途においては低減された寿命を有する。
【0026】
1つのさらなる態様において、本開示は波長260nmで(基準厚さ1.0mmで)少なくとも65.0%の透過率を有するガラスに関し、ここで前記ガラス中のZrO2の量は150ppm未満、または140ppm未満、または130ppm未満、または120ppm未満、または110ppm未満、または50ppm未満、または20ppm未満、または10ppm未満、または5ppm未満である。好ましくは前記ガラスはZr不含である。
【0027】
1つのさらなる態様において、本開示はガラス中のFe23、MoO3およびWO3の1つ以上の量が10ppm未満、または5ppm未満、または1ppm未満であるガラスに関する。
【0028】
1つのさらなる態様において、本開示はガラス中のTiO2の量が20ppm未満、または15ppm未満、または10ppm未満であるガラスに関する。
【0029】
1つのさらなる態様において、本開示はガラス中のガリウム、ウラン、トリウム、イットリウムおよびタリウムの1つ以上、並びにそれらの酸化物および同位体の量が最大300ppm、最大250ppm、最大200ppm、最大150ppm、最大100ppm、最大50ppm、最大25ppm、最大10ppm、最大5ppm、最大3ppm、または最大1ppmであるガラスに関する。
【0030】
UV検出器は一般に、UV光を電流に変換するフォトダイオードまたは光電子増倍管を含む。多くの場合、フォトダイオードの前に追加的な半透明の保護ウインドウがあるか、またはそれは透明な封止材料内に配置されている。UV検出器の性能を低下させないためには、保護ウインドウまたは封止材料が高いUV透過性を有することが重要である。例えば、このために、UV透過ガラスをその高いUV透過率ゆえに使用できる。
【0031】
しかしながら、これに関して生じる1つの問題は、UV検出器の信号対ノイズ比(SNRまたはS/N)が、特に信号の減少に起因して、ノイズの増加に起因して、またはその両方の組み合わせに起因して損なわれ得ることである。特に、低い信号を検出しなければならず且つ/または検出精度が特に重要である用途において、特に高いS/Nを有するUV検出器を得ることが望ましい。しかしながら、高いS/Nを有するUV検出器を得ることは困難である。例えば、信号の検出を増加できる手段は、ノイズの増加にも関係することが多く、その逆もまた然りである。従って、改善されたS/Nを有するUV検出器が望まれる。これは特に、フォトダイオードの前に追加的な半透明の保護ウインドウを含むUV検出器について、および透明な封止材料内に配置されているフォトダイオードを有するUV検出器について該当する。
【0032】
ガラス組成
本開示のガラスは高いUV透過率、特に波長260nmで(基準厚さ1.0mmで)少なくとも65.0%の透過率を有する。
【0033】
好ましくは、本開示のガラスは波長260nmで少なくとも65.0%、例えば少なくとも66.0%、少なくとも67.0%、少なくとも68.0%、少なくとも69.0%、少なくとも70.0%、より好ましくは少なくとも71.0%、より好ましくは少なくとも72.0%、より好ましくは少なくとも73.0%、より好ましくは少なくとも74.0%、より好ましくは少なくとも75.0%、より好ましくは少なくとも76.0%、より好ましくは少なくとも77.0%、より好ましくは少なくとも78.0%、より好ましくは少なくとも79.0%、またはより好ましくは少なくとも80.0%の透過率を有する。本開示における透過率の値は、特段記載されない限り、ガラスの基準厚さ1.0mmに関する。これは、ガラスが必ずしも厚さ1.0mmを有さなければならないことを意味するのではない。むしろ、基準厚さは単にガラスが厚さ1.0mmを有する場合に透過率がどうなるかを示す。ある基準厚さでの透過率は、厚さ1.0mmを有する試料の透過率を測定することによって特定できる。代替的に、厚さ1.0mmでの透過率を、他の試料厚さ、例えば試料厚さ0.7mmでの透過率を測定し、次いで外挿することにより、厚さ1.0mmで透過率がどうなるかを特定することもできる。一般的に言って、厚さd1での透過率T1を厚さd2での透過率T2に外挿することは、以下の式を使用して行うことができる:
T2=((T1/P)^(d2/d1))×P [式中、Pは波長に依存する反射係数(P=P(λ))であり、「%」の単位で与えられる]。Pはセルマイヤーのn係数を介して特定できる。
【0034】
本開示の実施態様において、波長260nmでの透過率は(基準厚さ1.0mmで)最大99.0%、最大97.5%、最大95.0%、最大94.0%、最大93.0%、最大92.0%、最大91.0%、最大90.0%、最大89.0%、最大88.0%、最大87.0%、最大86.0%、最大85.0%、最大84.0%、最大83.0%、最大82.0%であってよい。波長260nmでの透過率は例えば、65.0%~99.0%、66.0%~97.5%、67.0%~95.0%、68.0%~94.0%、69.0%~93.0%、70.0%~92.0%、71.0%~91.0%、72.0%~90.0%、73.0%~89.0%、74.0%~88.0%、75.0%~87.0%、76.0%~86.0%、77.0%~85.0%、78.0%~84.0%、79.0%~83.0%、または80.0%~82.0%の範囲であってよい。
【0035】
本開示のガラスは特に高い耐ソラリゼーション性を特徴とする。耐ソラリゼーション性はガラスをHOK 4ランプで144時間照射し、照射前後で(基準厚さ1.0mmで)波長260nmでの透過率を比較することによって特定できる。「HOK 4ランプ」との用語は、Phillipsの高圧水銀ランプHOK 4/120に関する。HOK 4ランプの発光スペクトルを図1に示す。ランプの主発光は波長365nmである。200~280nm、距離1mでの出力密度は850μW/cm2である。本開示の144時間の照射のために、HOK 4ランプと試料との間の距離は7cmであるように選択される。
【0036】
照射前後の透過率の間の差が小さいほど、耐ソラリゼーション性は高い。例えば、各々波長260nmで(基準厚さ1.0mmで)透過率80%を有する1つのガラスがあることがある(照射前)。HOK 4ランプで144時間の照射後、透過率は第1のガラスについては75%、第2のガラスについては70%であることがある。従って、HOK 4ランプでの照射前の(基準厚さ1.0mmで)波長260nmでの透過率と、HOK 4ランプで144時間の照射後の(基準厚さ1.0mmで)波長260nmでの透過率との間の差は、第1のガラスについて5%、第2のガラスについて10%である。従って、第1のガラスの耐ソラリゼーション性は第2のガラスに比して高く、なぜなら、照射前後での透過率の間の差が、第1のガラスについては第2のガラスに比して少ないからである。高い耐ソラリゼーション性は、低いソラリゼーションと関係し、逆もまた然りである。高いソラリゼーションは高い誘導減光(induced extinction)Extindと相関する。
【0037】
誘導減光Extindは、HOK 4ランプで144時間照射した前後の透過率およびガラス試料の厚さに基づき、以下の式を使用して特定できる:
【数1】
【0038】
Extindは誘導減光であり、TはHOK 4ランプで144時間の照射後の透過率であり、TはHOK 4ランプで144時間の照射前の透過率であり、dは試料の厚さであり、且つlnは自然対数である。特段記載されない限り、試料の厚さdはcmで与えられるので、誘導減光は1/cmで与えられる。特段記載されない限り、HOK 4ランプでの照射前後の透過率は波長260nmについて与えられる。従って、本開示に記載される誘導減光は、特段記載されない限り、波長260nmでの誘導減光に関する。
【0039】
1つの態様において、波長260nmでの誘導減光は、最大3.5/cm、最大3.2/cm、最大3.0/cm、最大2.9/cm、最大2.8/cm、最大2.7/cm、最大2.6/cm、最大2.5/cm、最大2.4/cm、最大2.3/cm、最大2.2/cm、最大2.1/cm、最大2.0/cm、最大1.9/cm、最大1.8/cm、最大1.7/cm、最大1.6/cm、最大1.5/cm、最大1.4/cm、または最大1.3/cmである。波長260nmでの誘導減光は、例えば少なくとも0.01/cm、少なくとも0.02/cm、少なくとも0.05/cm、少なくとも0.1/cm、少なくとも0.2/cm、少なくとも0.3/cm、少なくとも0.4/cm、少なくとも0.5/cm、少なくとも0.55/cm、少なくとも0.6/cm、少なくとも0.65/cm、少なくとも0.7/cm、少なくとも0.75/cm、少なくとも0.8/cm、少なくとも0.85/cm、少なくとも0.9/cm、少なくとも0.95/cm、少なくとも1.0/cm、少なくとも1.05/cm、または少なくとも1.1/cmであることができる。波長260nmでの誘導減光は、例えば0.01/cm~3.5/cm、0.02/cm~3.2/cm、0.05/cm~3.0/cm、0.1/cm~2.0/cm、0.2/cm~2.8/cm、0.3/cm~2.7/cm、0.4/cm~2.6/cm、0.5/cm~2.5/cm、0.55/cm~2.4/cm、0.6/cm~2.3/cm、0.65/cm~2.2/cm、0.7/cm~2.1/cm、0.75/cm~2.0/cm、0.8/cm~1.9/cm、0.85/cm~1.8/cm、0.9/cm~1.7/cm、0.95/cm~1.6/cm、1.0/cm~1.5/cm、1.05/cm~1.4/cm、または1.1/cm~1.3/cmであることができる。
【0040】
1つの態様において、本開示のガラスは高いUV透過率および低い誘導減光を特徴とする。この組み合わせは、HOK 4ランプで144時間の照射後の、(基準厚さ1.0mmで)波長260nmでの高い透過率と関連する。HOK 4ランプで144時間の照射後の、(基準厚さ1.0mmで)波長260nmでの透過率は、例えば少なくとも54.0%、少なくとも55.0%、より好ましくは少なくとも56.0%、より好ましくは少なくとも57.0%、より好ましくは少なくとも58.0%、より好ましくは少なくとも59.0%、より好ましくは少なくとも60.0%、より好ましくは少なくとも61.0%、より好ましくは少なくとも62.0%、より好ましくは少なくとも63.0%、より好ましくは少なくとも64.0%、より好ましくは少なくとも65.0%、より好ましくは少なくとも66.0%、より好ましくは少なくとも67.0%、より好ましくは少なくとも68.0%、より好ましくは少なくとも69.0%、より好ましくは少なくとも70.0%、より好ましくは少なくとも71.0%、より好ましくは少なくとも72.0%、より好ましくは少なくとも73.0%、または好ましくは少なくとも74.0%であることができる。
【0041】
HOK 4ランプで144時間の照射後の、(基準厚さ1.0mmで)波長260nmでの透過率は、例えば最大95.0%、最大94.0%、最大93.0%、最大92.0%、最大91.0%、最大90.0%、最大89.0%、最大88.0%、最大87.0%、最大86.0%、最大85.0%、最大84.0%、最大83.0%、最大82.0%、最大81.0%、最大80.0%、最大79.0%、最大78.0%、最大77.0%、最大76.0%、または最大75.0%であることができる。波長260nmでの透過率は、例えば54.0%~95.0%、55.0%~94.0%、56.0%~93.0%、57.0%~92.0%、58.0%~91.0%、59.0%~90.0%、60.0%~89.0%、61.0%~88.0%、62.0%~87.0%、63.0%~86.0%、64.0%~85.0%、65.0%~84.0%、66.0%~83.0%、67.0%~82.0%、68.0%~81.0%、69.0%~80.0%、70.0%~79.0%、71.0%~78.0%、72.0%~77.0%、73.0%~76.0%、または74.0%~75.0%の範囲であることができる。
【0042】
1つの態様において、本開示は以下の成分を含むガラスに関する:
【表1】
【0043】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~3質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0044】
「カチオン%」は、ガラス中のカチオンの総量に対するカチオンの相対的なモル割合に関する「カチオンパーセント」を記述する。もちろん、前記ガラスはアニオンも含有する。
【0045】
「R+」は、ガラス中の全てのアルカリ金属の全てのカチオンの合計を記述する。「R2+」は、ガラス中の全てのアルカリ土類金属の全てのカチオンの合計を記述する。
【0046】
本開示のガラスはSi4+を少なくとも52カチオン%の割合で含み得る。Si4+はガラスの耐加水分解性および透過性に寄与する。Si4+含有率が過度に高いと、ガラスの融点が高すぎる。その際、温度T4およびTgも大きく上昇する。この理由のために、Si4+の含有率は71カチオン%以下に制限されるべきである。Si4+の含有率は好ましくは少なくとも52カチオン%、少なくとも53カチオン%、または少なくとも54カチオン%である。実施態様において、前記含有率は70カチオン%以下、69カチオン%以下、または68カチオン%以下に制限され得る。
【0047】
本開示のガラスはAl3+を8カチオン%以下の割合で含有する。より高い割合のAl3+は耐酸性を低下させる。さらに、Al3+は融点およびT4を高める。従って、この成分の含有率は最大7カチオン%、または最大6カチオン%に制限され得る。有利な実施態様において、Al3+は少なくとも0.25カチオン%、少なくとも0.5カチオン%、少なくとも0.75カチオン%、少なくとも1.15カチオン%、少なくとも1.25カチオン%、少なくとも1.5カチオン%、または少なくとも1.75カチオン%、または少なくとも2.0カチオン%の少ない割合で使用される。
【0048】
本開示のガラスはB3+を少なくとも1.0カチオン%の割合で含有し得る。B3+はガラスの溶融特性に有利な作用を及ぼし、特に融点が下げられ、且つガラスが低温で他の材料に融着されることができる。多すぎるB3+は耐加水分解性に悪影響を及ぼし、製造の間にガラスの蒸発損失が高く、ひいては塊の多いガラスになる傾向がある。それは35カチオン%まで、32カチオン%まで、または31.5カチオン%までに制限され得る。特定の実施態様において、B3+の含有率は30.5カチオン%以下である。B3+の含有率は少なくとも1.15カチオン%、少なくとも1.25カチオン%、少なくとも1.5カチオン%、少なくとも2.0カチオン%、少なくとも2.25カチオン%、少なくとも2.5カチオン%、少なくとも2.75カチオン%、または少なくとも2.8カチオン%であることができる。
【0049】
本開示のガラスはLi+を8カチオン%まで、7カチオン%まで、または6.5カチオン%までの割合で含有し得る。Li+はガラスの可融性を高め、UV端をより短い波長へと有利にシフトさせる。しかしながら、酸化リチウムは蒸発傾向があり、混合物の価格も上昇させる。好ましい実施態様において、前記ガラスはわずかなLi+のみ、例えば0.5カチオン%以下、0.25カチオン%以下、または0.15カチオン%以下を含有するか、またはガラスはLi+不含である。好ましい実施態様において、前記ガラスは0.01~8カチオン%、0.025~7カチオン%、または0.05~6.5カチオン%のLi+を含有する。
【0050】
本開示のガラスはNa+を17カチオン%までの割合で含有する。Na+はガラスの可融性を高める。しかしながら、酸化ナトリウムはUV透過率の低下および熱膨張係数の上昇もみちびく。前記ガラスはNa+を最大16カチオン%、または最大15カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、Na+の含有率は2.0カチオン%を上回るか、または3.0カチオン%を上回る。
【0051】
本開示のガラスはK+を14カチオン%以下の割合で含有する。K+はガラスの可融性を高め、UV端をより短い波長へと有利にシフトさせる。その割合は少なくとも0.5カチオン%、または少なくとも0.75カチオン%であることができる。しかしながら、過度に高い酸化カリウム含有率は、その同位体40Kの放射性特性に起因して、光電子増倍管において使用するために適さないガラスをみちびく。この理由のために、この成分の含有率は13カチオン%以下、または12カチオン%以下に制限されるべきである。前記ガラスはK+を少なくとも0.5カチオン%、または少なくとも0.75カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、K+の含有率は0.5カチオン%~14カチオン%、または0.75カチオン%~13カチオン%である。
【0052】
本開示のガラスはMg2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。Mg2+は可融性のために有利であるが、高い割合では、所望のUV透過率に関して問題があることが判明した。好ましい実施態様はMg2+不含である。
【0053】
本開示のガラスはCa2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。Ca2+は可融性のために有利であるが、高い割合では、所望のUV透過率に関して問題があることが判明した。好ましい実施態様はCa2+不含である。
【0054】
本開示のガラスはSr2+を2カチオン%まで、1カチオン%まで、または0.5カチオン%までの割合で含有し得る。Sr2+は可融性のために有利であるが、高い割合では、所望のUV透過率に関して問題があることが判明した。好ましい実施態様はSr2+不含であるか、または少しだけのSr2+、例えば少なくとも0.01カチオン%、少なくとも0.025カチオン%、少なくとも0.05カチオン%、または少なくとも0.1カチオン%を含有する。好ましい実施態様はSr2+不含である。
【0055】
本開示のガラスはBa2+を4カチオン%まで、または3カチオン%までの割合で含有し得る。Ba2+は耐加水分解性における改善をみちびく。しかしながら、過度に高い酸化バリウム含有率はガラスの不安定性をみちびく。好ましい実施態様は、Ba2+を少なくとも0.01カチオン%、少なくとも0.05カチオン%、または少なくとも0.1カチオン%の割合で含有する。
【0056】
本開示のガラスは、F-をガラス組成物の総質量に対して0~3質量%の量で含有し得る。F-の含有率は好ましくは2質量%以下である。1つの実施態様において、少なくとも0.1質量%、または少なくとも0.3質量%のこの成分が使用される。成分F-はガラスの可融性を改善し、且つより短い波長の方向のUV端に影響を及ぼす。
【0057】
本開示のガラスは、Cl-をガラス組成物の総質量に対して1質量%未満、特に0.5質量%未満、または0.4質量%未満の量で含み得る。適した下限は0.01質量%または0.05質量%である。
【0058】
好ましい実施態様において、B3+、R2+およびR+の含有率(カチオン%)の合計の、Si4+およびAl3+の含有率(カチオン%)の合計に対する比は0.8以下、特に0.75以下、またはより好ましくは0.73以下である。1つの実施態様において、この値は少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、または少なくとも0.3である。特定された割合の比を有するガラスは、耐加水分解性に関して関して良好な特性を示し、低い誘導減光しか有さず、そのことは特にUV透過材料として使用される場合に多くの利点を有する。
【0059】
本開示の1つの実施態様において、カチオン%でのNa+の含有率のK+の含有率に対する比は少なくとも0.5、特に少なくとも0.75である。1つの実施態様において、特定された比は4以下、特に3以下である。両方の酸化物は、ガラスの可融性を改善するために役立つ。しかしながら、多すぎるNa+が使用される場合、UV透過率が低下する。多すぎるK+は熱膨張係数を増加させる。示された比が最良の結果を達成する、つまり、UV透過率および熱膨張係数が有利な範囲であることが判明した。
【0060】
本開示のガラス中のR2+の合計は好ましくは30カチオン%以下、29カチオン%以下、または27カチオン%以下である。前記ガラスは少なくとも6.5カチオン%、少なくとも7.5カチオン%、または少なくとも8カチオン%のR2+の合計を含有し得る。アルカリ金属酸化物はガラスの可融性を高めるが、上述のとおり、高い割合では多くの欠点をみちびく。
【0061】
アルカリ土類酸化物R+は、耐加水分解性に大きな影響を及ぼすことが判明している。従って、1つの実施態様において、それらの成分の含有率およびそれらの互いの比に特別な注意が払われる。従って、カチオン%でのBa2+の、カチオン%でのMg2+とSr2+とCa2+との合計の含有率に対する比は少なくとも0.5であるべきである。この値は好ましくは少なくとも0.6、少なくとも0.7である。Ba2+は、他のアルカリ土類金属酸化物に比して耐加水分解性に関して最大の利点をもたらす。それにも関わらず、特定された比は2または1の値を上回るべきではない。有利な実施態様において、前記ガラスは少なくとも少量のBa2+を含み、且つMg2+および/またはSr2+および/またはCa2+不含である。
【0062】
有利な特性は特に、各々カチオン%でのガラス中のCa2+のBa2+に対する割合の比が3.0未満である場合に得られる。特に、この比は2.5未満、または2未満であるべきである。最適な比はさらに低く、特に1.75未満、または1.5未満である。好ましい実施態様において、この値は0である。
【0063】
1つの実施態様において、前記ガラスはカチオン%でのB3+のBa2+に対する比少なくとも0.5且つ85以下を有する。前記比は好ましくは少なくとも1、または少なくとも1.1である。好ましい実施態様において、特定された比は84以下、83以下、82以下、または81以下に制限される。特に、前記比は少なくとも1.2且つ81以下である。特定された割合の比を有するガラスは、耐加水分解性に関して関して良好な特性および小さな誘導減光のみを示す。
【0064】
本開示のガラス中のR+の合計は少なくとも0.5カチオン%、または少なくとも0.7カチオン%であることができる。アルカリ土類金属酸化物は可融性のために有利であるが、大きな割合では、所望のUV透過率に関して問題があることが判明している。1つの実施態様において、前記ガラスは4カチオン%以下、または3カチオン%以下、または2.5カチオン%以下のR+を含有する。
【0065】
アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物のカチオン%での含有率の合計R++R2+は30カチオン%以下に制限され得る。有利な実施態様は、それらの成分を29カチオン%以下の量で含有し得る。それらの酸化物の含有率は好ましくは少なくとも2カチオン%、少なくとも2.5カチオン%、または少なくとも3カチオン%である。過度に増大された割合のそれらの成分は、ガラスの耐加水分解性を低下させる。
【0066】
3+のカチオン%での含有率の、R2+およびR+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.04、少なくとも0.05、または少なくとも0.068であることができる。前記の比は最大9、最大8.5、または最大8に制限され得る。アルカリ金属ホウ酸塩またはアルカリ土類金属ホウ酸塩は、B3+に対して多すぎるアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物が存在する場合に形成され得る。示された比を設定することが有利であると判明している。
【0067】
gおよびT4を含む溶解特性が所望の範囲内であるように、B3+の含有率の、Si4+およびAl3+のカチオン%での含有率の合計に対する比を狭い範囲内に設定することが有利であることができる。有利な実施態様において、この比は少なくとも0.03且つ/または0.5以下である。
【0068】
アルカリ金属酸化物R2+の合計の、アルカリ土類金属酸化物R+の合計に対するカチオン%での割合の比は、好ましくは少なくとも4.4、特に少なくとも5.45、または少なくとも6.0である。実施態様において、この比は14以下、13以下、または12以下である。
【0069】
本開示の1つの実施態様において、以下の成分を含むガラスに関する:
【表2】
【0070】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~2質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0071】
1つの実施態様において、本開示のガラスはSi4+を少なくとも59カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、Si4+の含有率は73カチオン%以下に制限されるべきである。Si4+の含有率は好ましくは少なくとも60カチオン%、少なくとも61カチオン%、または少なくとも62カチオン%である。実施態様において、前記含有率は72カチオン%以下、71カチオン%以下、または70カチオン%以下に制限され得る。
【0072】
1つの実施態様において、本開示のガラスはAl3+を3カチオン%以下の割合で含有する。この成分の含有率は最大3カチオン%、または最大2.5カチオン%に制限され得る。有利な実施態様において、Al3+は少なくとも0.25カチオン%、少なくとも0.5カチオン%、少なくとも1.0カチオン%、または少なくとも1.5カチオン%の少ない割合で使用される。
【0073】
1つの実施態様において、本開示のガラスはB3+を少なくとも1.0カチオン%の割合で含有し得る。それは5カチオン%まで、4.5カチオン%まで、または4カチオン%までに制限され得る。特定の実施態様において、B3+の含有率は3.5カチオン%以下である。B3+の含有率は少なくとも1.5カチオン%、または少なくとも2.0カチオン%であることができる。
【0074】
1つの実施態様において、本開示のガラスはLi+を1カチオン%まで、0.5カチオン%まで、または0.25カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様において、前記ガラスはLi+不含である。
【0075】
1つの実施態様において、本開示のガラスはNa+を17カチオン%までの割合で含有する。前記ガラスはNa+を少なくとも12カチオン%、または少なくとも13カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、Na+の含有率は12カチオン%~17カチオン%、または13カチオン%~15カチオン%である。
【0076】
1つの実施態様において、本開示のガラスはK+を14カチオン%以下の割合で含有する。その割合は少なくとも10.5カチオン%、または少なくとも11.75カチオン%であることができる。しかしながら、過度に高い酸化カリウム含有率は、その同位体40Kの放射性特性に起因して、光電子増倍管において使用するために適さないガラスをみちびく。この理由のために、この成分の含有率は14カチオン%以下、または13カチオン%以下に制限されなければならない。前記ガラスはK+を少なくとも10.5カチオン%、または少なくとも11.25カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、K+の含有率は10.5カチオン%~14カチオン%、または11.25カチオン%~13カチオン%である。
【0077】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはMg2+を1カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はMg2+不含である。
【0078】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはCa2+を1カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はCa2+不含である。
【0079】
本開示の1つの実施態様において、前記ガラスはSr2+を1カチオン%まで、0.5カチオン%まで、または0.25カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はSr2+不含であるか、または少量のみのSr2+、例えば少なくとも0.015カチオン%、少なくとも0.025カチオン%、または少なくとも0.01カチオン%を含有する。好ましい実施態様はSr2+不含である。
【0080】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはBa2+を4カチオン%まで、または3カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様は、Ba2+を少なくとも0.5カチオン%、少なくとも1カチオン%、または少なくとも1.5カチオン%の割合で含有する。
【0081】
本開示のガラスは、F-をガラス組成物の総質量に対して0~1質量%の量で含有し得る。F-の含有率は好ましくは0.8質量%以下である。1つの実施態様において、少なくとも0.1質量%、または少なくとも0.3質量%のこの成分が使用される。成分F-はガラスの可融性を改善し、且つより短い波長の方向のUV端に影響を及ぼす。
【0082】
本開示のガラスは、Cl-をガラス組成物の総質量に対して1質量%未満、特に0.5質量%未満、または0.4質量%未満の量で含み得る。適した下限は0.01質量%または0.05質量%である。
【0083】
1つの実施態様において、B3+、R2+およびR+の含有率(カチオン%)の合計の、Si4+およびAl3+の含有率(カチオン%)の合計に対する比は0.51以下、特に0.48以下、またはより好ましくは0.47以下である。1つの実施態様において、この値は少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.3、または少なくとも0.4である。
【0084】
本開示の1つの実施態様において、カチオン%でのNa+の含有率のK+の含有率に対する比は少なくとも0.5、特に少なくとも0.75である。1つの実施態様において、特定された比は3以下、特に2以下である。示された比が最良の結果を達成する、つまり、UV透過率および熱膨張係数が有利な範囲であることが判明した。
【0085】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラス中のR2+の割合は好ましくは30カチオン%以下、29カチオン%以下、または27カチオン%以下である。前記ガラスはR2+を少なくとも18.5カチオン%、少なくとも19.5カチオン%、または少なくとも20カチオン%の割合で含有し得る。
【0086】
1つの実施態様において、前記ガラスは少なくとも少量のBa2+を含み、且つCa2+および/またはMg2+および/またはSr2+不含である。
【0087】
1つの実施態様において、前記ガラスはカチオン%でのB3+のBa2+に対する比少なくとも0.25且つ3以下を有する。前記比は好ましくは少なくとも0.5、または少なくとも0.75である。好ましい実施態様において、特定された比は2.5以下、2以下、1.75以下、または1.5以下に制限される。特に、前記比は少なくとも1.1且つ1.35以下である。
【0088】
1つの実施態様において、本開示のガラス中のR+の合計は少なくとも1カチオン%、または少なくとも2カチオン%であることができる。1つの実施態様において、前記ガラスは5カチオン%以下、または4カチオン%以下、または3カチオン%以下のR+を含有する。
【0089】
1つの実施態様において、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物のカチオン%での含有率の合計R++R2+は35カチオン%以下に制限され得る。有利な実施態様は、それらの成分を32カチオン%以下の量で含有し得る。それらの酸化物の含有率は好ましくは少なくとも25カチオン%、少なくとも26カチオン%、または少なくとも27カチオン%である。
【0090】
1つの実施態様において、B3+のカチオン%での含有率の、R2+およびR+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.04、少なくとも0.05、または少なくとも0.068であることができる。前記の比は最大1.5、最大1.0、または最大0.5に制限され得る。示された比を設定することが有利であると判明している。
【0091】
1つの実施態様において、B3+の含有率の、Si4+およびAl3+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.01且つ/または0.1以下、または少なくとも0.03且つ/または0.08以下である。
【0092】
1つの実施態様において、アルカリ金属酸化物R2+の合計の、アルカリ土類金属酸化物R+の合計に対するカチオン%での割合の比は、好ましくは少なくとも9、特に少なくとも10、または少なくとも11である。実施態様において、この比は14以下、13以下、または12以下である。
【0093】
本開示の1つの実施態様において、以下の成分を含むガラスに関する:
【表3】
【0094】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~1質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0095】
本開示の1つの実施態様において、以下の成分を含むガラスに関する:
【表4】
【0096】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~2質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0097】
1つの実施態様において、本開示のガラスはSi4+を少なくとも52カチオン%の割合で含み得る。Si4+の含有率は65カチオン%以下に制限されなければならない。Si4+の含有率は好ましくは少なくとも52カチオン%、少なくとも53カチオン%、または少なくとも54カチオン%である。実施態様において、前記含有率は65カチオン%以下、64カチオン%以下、または63カチオン%以下に制限され得る。
【0098】
1つの実施態様において、本開示のガラスはAl3+を8カチオン%以下の割合で含有する。従って、この成分の含有率は最大7.5カチオン%、または最大7カチオン%に制限され得る。有利な実施態様において、Al3+は少なくとも1.5カチオン%、少なくとも2カチオン%、少なくとも2.5カチオン%、または少なくとも3.0カチオン%の少ない割合で使用される。
【0099】
1つの実施態様において、本開示のガラスはB3+を少なくとも18.0カチオン%の割合で含有し得る。それは32カチオン%まで、32.5カチオン%まで、または31.5カチオン%までに制限され得る。特定の実施態様において、B3+の含有率は31カチオン%以下である。B3+の含有率は少なくとも18.5カチオン%、または少なくとも19.0カチオン%であることができる。
【0100】
1つの実施態様において、本開示のガラスはLi+を4カチオン%まで、3.5カチオン%まで、または3カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様において、前記ガラスは少ない割合のLi+、例えば少なくとも0.15カチオン%、少なくとも1.25カチオン%、または少なくとも1.45カチオン%を含有する。好ましい実施態様において、前記ガラスは0.25~4カチオン%、1.75~3.25カチオン%、または2.0~2.95カチオン%のLi+を含有する。
【0101】
1つの実施態様において、本開示のガラスはNa+を6カチオン%までの割合で含有する。前記ガラスはNa+を少なくとも2カチオン%、または少なくとも3カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、Na+の含有率は2カチオン%~6カチオン%、または3カチオン%~5カチオン%である。
【0102】
1つの実施態様において、本開示のガラスはK+を3カチオン%以下の割合で含有する。その割合は少なくとも0.25カチオン%、または少なくとも0.5カチオン%であることができる。しかしながら、過度に高い酸化カリウム含有率は、その同位体40Kの放射性特性に起因して、光電子増倍管において使用するために適さないガラスをみちびく。この理由のために、この成分の含有率は2カチオン%以下、または1.5カチオン%以下に制限されるべきである。前記ガラスはK+を少なくとも0.5カチオン%、または少なくとも0.75カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、K+の含有率は0.5カチオン%~3カチオン%、または0.75カチオン%~2カチオン%である。
【0103】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはMg2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はMg2+不含である。
【0104】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはCa2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はCa2+不含である。
【0105】
本開示の1つの実施態様において、前記ガラスはSr2+を2カチオン%まで、1カチオン%まで、または0.5カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はSr2+不含であるか、または少量のみのSr2+、例えば少なくとも0.025カチオン%、少なくとも0.05カチオン%、または少なくとも0.1カチオン%を含有する。好ましい実施態様はSr2+不含である。
【0106】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはBa2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様は、Ba2+を少なくとも0.05カチオン%、少なくとも0.1カチオン%、または少なくとも0.2カチオン%の割合で含有する。
【0107】
本開示のガラスは、F-をガラス組成物の総質量に対して0~2質量%の量で含有し得る。F-の含有率は好ましくは1質量%以下である。1つの実施態様において、少なくとも0.1質量%、または少なくとも0.3質量%のこの成分が使用される。成分F-はガラスの可融性を改善し、且つより短い波長の方向のUV端に影響を及ぼす。
【0108】
本開示のガラスは、Cl-をガラス組成物の総質量に対して1質量%未満、特に0.5質量%未満、または0.4質量%未満の量で含み得る。適した下限は0.01質量%または0.05質量%である。
【0109】
1つの実施態様において、B3+、R2+およびR+の含有率(カチオン%)の合計の、Si4+およびAl3+の含有率(カチオン%)の合計に対する比は0.8以下、特に0.75以下、またはより好ましくは0.7以下である。1つの実施態様において、この値は少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.45、または少なくとも0.5である。
【0110】
本開示の1つの実施態様において、カチオン%でのNa+の含有率のK+の含有率に対する比は少なくとも1、特に少なくとも2である。1つの実施態様において、特定された比は4以下、特に3以下である。示された比が最良の結果を達成する、つまり、UV透過率および熱膨張係数が有利な範囲であることが判明した。
【0111】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラス中のR2+の合計は好ましくは11カチオン%以下、10カチオン%以下、または9カチオン%以下である。前記ガラスはR2+を少なくとも7カチオン%、少なくとも7.5カチオン%、または少なくとも8カチオン%の割合で含有し得る。
【0112】
1つの実施態様において、カチオン%でのBa2+の、カチオン%でのMg2+とSr2+とCa2+との合計の含有率に対する比は少なくとも0.5であるべきである。この値は好ましくは少なくとも0.6、少なくとも0.7である。それにも関わらず、特定された比は3または2.5の値を上回るべきではない。有利な実施態様において、前記ガラスは少なくとも少量のCa2+および/またはBa2+を含み、且つMg2+および/またはSr2+不含である。
【0113】
1つの実施態様において、CaO/BaOの比は少なくとも0.25、少なくとも0.35、且つ2.0以下、または1.5以下である。
【0114】
1つの実施態様において、前記ガラスはカチオン%でのB3+のBa2+に対する比少なくとも20且つ100以下を有する。前記比は好ましくは少なくとも21、且つ90以下である。好ましい実施態様において、特定された比は85以下、83以下、または82以下に制限される。特に、前記比は少なくとも23且つ81.5以下である。
【0115】
1つの実施態様において、本開示のガラス中のR+の合計は少なくとも0.5カチオン%、または少なくとも0.6カチオン%であることができる。1つの実施態様において、前記ガラスは3カチオン%以下、または2カチオン%以下、または1.5カチオン%以下のR+を含有する。
【0116】
1つの実施態様において、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物のカチオン%での含有率の合計R++R2+は12カチオン%以下に制限され得る。有利な実施態様は、それらの成分を11カチオン%以下の量で含有し得る。それらの酸化物の含有率は好ましくは少なくとも6カチオン%、少なくとも7カチオン%、または少なくとも8カチオン%である。
【0117】
1つの実施態様において、B3+のカチオン%での含有率の、R2+およびR+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.5、少なくとも1.0、または少なくとも1.5であることができる。前記の比は最大5、最大4.5、または最大4に制限され得る。示された比を設定することが有利であると判明している。
【0118】
1つの実施態様において、B3+の含有率の、Si4+およびAl3+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.2、および/または0.8以下、または少なくとも0.3、および/または0.6以下である。
【0119】
1つの実施態様において、アルカリ金属酸化物R2+の合計の、アルカリ土類金属酸化物R+の合計に対するカチオン%での割合の比は、好ましくは少なくとも5、特に少なくとも5.5、または少なくとも6である。実施態様において、この比は11以下、10.5以下、または10以下である。
【0120】
本開示の1つの実施態様において、以下の成分を含むガラスに関する:
【表5】
【0121】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~2質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0122】
本開示のさらに他の実施態様において、以下の成分を含むガラスに関する:
【表6】
【0123】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~2質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0124】
1つの実施態様において、本開示のガラスはSi4+を少なくとも56カチオン%の割合で含み得る。Si4+の含有率は62カチオン%以下に制限されなければならない。Si4+の含有率は好ましくは少なくとも57カチオン%、少なくとも57.5カチオン%、または少なくとも58カチオン%である。実施態様において、前記含有率は61カチオン%以下、60カチオン%以下、または59.8カチオン%以下に制限され得る。
【0125】
1つの実施態様において、本開示のガラスはAl3+を8カチオン%以下の割合で含有する。従って、この成分の含有率は最大7.5カチオン%、または最大7カチオン%に制限され得る。有利な実施態様において、Al3+は少なくとも4.5カチオン%、少なくとも5カチオン%、少なくとも5.5カチオン%、または少なくとも6.0カチオン%の少ない割合で使用される。
【0126】
1つの実施態様において、本開示のガラスはB3+を少なくとも18.0カチオン%の割合で含有し得る。それは28カチオン%まで、27.5カチオン%まで、または26.5カチオン%までに制限され得る。特定の実施態様において、B3+の含有率は26カチオン%以下である。B3+の含有率は少なくとも20.5カチオン%、または少なくとも22.0カチオン%であることができる。
【0127】
1つの実施態様において、本開示のガラスはLi+を4カチオン%まで、3.5カチオン%まで、または3カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様において、前記ガラスは少ない割合のLi+、例えば少なくとも0.15カチオン%、少なくとも1.25カチオン%、または少なくとも1.45カチオン%を含有する。好ましい実施態様において、前記ガラスは0.25~4カチオン%、1.75~3.25カチオン%、または2.0~2.95カチオン%のLi+を含有する。
【0128】
1つの実施態様において、本開示のガラスはNa+を6カチオン%までの割合で含有する。前記ガラスはNa+を少なくとも2カチオン%、または少なくとも3カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、Na+の含有率は2カチオン%~6カチオン%、または3カチオン%~5カチオン%である。
【0129】
1つの実施態様において、本開示のガラスはK+を3カチオン%以下の割合で含有する。その割合は少なくとも0.25カチオン%、または少なくとも0.5カチオン%であることができる。しかしながら、過度に高い酸化カリウム含有率は、その同位体40Kの放射性特性に起因して、光電子増倍管において使用するために適さないガラスをみちびく。この理由のために、この成分の含有率は2カチオン%以下、または1.5カチオン%以下に制限されるべきである。前記ガラスはK+を少なくとも0.5カチオン%、または少なくとも0.75カチオン%の割合で含み得る。1つの実施態様において、K+の含有率は0.5カチオン%~3カチオン%、または0.75カチオン%~2カチオン%である。
【0130】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはMg2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はMg2+不含である。
【0131】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはCa2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はCa2+不含である。
【0132】
本開示の1つの実施態様において、前記ガラスはSr2+を1カチオン%まで、0.75カチオン%まで、または0.5カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様はSr2+不含であるか、または少量のみのSr2+、例えば少なくとも0.025カチオン%、少なくとも0.05カチオン%、または少なくとも0.1カチオン%を含有する。好ましい実施態様はSr2+不含である。
【0133】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラスはBa2+を2カチオン%まで、または1カチオン%までの割合で含有し得る。好ましい実施態様は、Ba2+を少なくとも0.05カチオン%、少なくとも0.1カチオン%、または少なくとも0.2カチオン%の割合で含有する。
【0134】
本開示のガラスは、F-をガラス組成物の総質量に対して0~2質量%の量で含有し得る。F-の含有率は好ましくは1質量%以下である。1つの実施態様において、少なくとも0.1質量%、または少なくとも0.3質量%のこの成分が使用される。成分F-はガラスの可融性を改善し、且つより短い波長の方向のUV端に影響を及ぼす。
【0135】
本開示のガラスは、Cl-をガラス組成物の総質量に対して1質量%未満、特に0.5質量%未満、または0.4質量%未満の量で含み得る。適した下限は0.01質量%または0.05質量%である。
【0136】
1つの実施態様において、B3+、R2+およびR+の含有率(カチオン%)の合計の、Si4+およびAl3+の含有率(カチオン%)の合計に対する比は0.6以下、特に0.55以下、またはより好ましくは0.54以下である。1つの実施態様において、この値は少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.45、または少なくとも0.5である。
【0137】
本開示の1つの実施態様において、カチオン%でのNa+の含有率のK+の含有率に対する比は少なくとも1、特に少なくとも2である。1つの実施態様において、特定された比は4以下、特に3以下である。示された比が最良の結果を達成する、つまり、UV透過率および熱膨張係数が有利な範囲であることが判明した。
【0138】
本開示の1つの実施態様において、本開示のガラス中のR2+の合計は好ましくは11カチオン%以下、10カチオン%以下、または9カチオン%以下である。前記ガラスはR2+を少なくとも7カチオン%、少なくとも7.5カチオン%、または少なくとも8カチオン%の割合で含有し得る。
【0139】
1つの実施態様において、カチオン%でのBa2+の、カチオン%でのMg2+とSr2+とCa2+との合計の含有率に対する比は少なくとも1であるべきである。この値は好ましくは少なくとも1.5、少なくとも2.0である。それにも関わらず、特定された比は3、または2.5の値を上回るべきではない。有利な実施態様において、前記ガラスは少なくとも少量のCa2+および/またはBa2+を含み、且つMg2+および/またはSr2+不含である。
【0140】
1つの実施態様において、CaO/BaOの比は少なくとも0.25、少なくとも0.35、且つ1.0以下、または0.75以下である。
【0141】
1つの実施態様において、前記ガラスはカチオン%でのB3+のBa2+に対する比少なくとも20且つ30以下を有する。前記比は好ましくは少なくとも21、且つ28以下である。好ましい実施態様において、特定された比は27以下、26以下、25以下に制限される。特に、前記比は少なくとも22且つ24.5以下である。
【0142】
1つの実施態様において、本開示のガラス中のR+の合計は少なくとも1カチオン%、または少なくとも1.25カチオン%であることができる。1つの実施態様において、前記ガラスは3カチオン%以下、または2カチオン%以下、または1.5カチオン%以下のR+を含有する。
【0143】
1つの実施態様において、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物のカチオン%での含有率の合計R++R2+は12カチオン%以下に制限され得る。有利な実施態様は、それらの成分を11カチオン%以下の量で含有し得る。それらの酸化物の含有率は好ましくは少なくとも9カチオン%、少なくとも9.5カチオン%、または少なくとも10カチオン%である。
【0144】
1つの実施態様において、B3+のカチオン%での含有率の、R2+およびR+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.5、少なくとも1.0、または少なくとも1.5であることができる。前記の比は最大3.5、最大3、または最大2.5に制限され得る。示された比を設定することが有利であると判明している。
【0145】
1つの実施態様において、B3+の含有率の、Si4+およびAl3+のカチオン%での含有率の合計に対する比は、少なくとも0.2且つ/または0.8以下、または少なくとも0.3且つ/または0.6以下である。
【0146】
1つの実施態様において、アルカリ金属酸化物R2+の合計の、アルカリ土類金属酸化物R+の合計に対するカチオン%での割合の比は、好ましくは少なくとも5、特に少なくとも5.5、または少なくとも6である。実施態様において、この比は9以下、8.5以下、または7以下である。
【0147】
本開示の1つの実施態様において、以下の成分を含むガラスに関する:
【表7】
【0148】
1つの実施態様において、ガラス組成物の総質量に対してF-はガラス中に0~1質量%で存在することができ、且つ/またはCl-はガラス中に0~1質量%で存在することができる。少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%、または100質量%までのアニオンが酸素であることができる。酸素はそれぞれのカチオンの酸化物として、つまりR2OまたはROとして、例えばSiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaOなどの形態で存在することができる。
【0149】
本願明細書において、「ppm」は質量割合である。
【0150】
本願明細書において、ガラスがある成分不含であるか、または特定の成分を含有しないことが述べられる場合、これによって、この成分は最大で不純物として存在し得ることを意味する。これは、著しい量では添加されないことを意味する。本開示によれば、「著しくない量」とは、関連する成分について特段記載されない限り、500ppm未満、好ましくは250ppm未満、および最も好ましくは50ppm未満の量のことである。
【0151】
さらなる実施態様において、本開示によれば、「著しくない量の微量元素」とは、10ppm未満、5ppm未満、1ppm未満、0.5ppm未満、0.125ppm未満、および最も好ましくは0.05ppm未満の任意の元素またはBeO、Bi23、CdO、CeO2、CoO、Cr23、CuO、Dy23、Er23、Eu23、Ga23、Gd23、GeO2、HfO2、La23、MnO2、MoO3、Nb25、NiO、PbO、Pr23、PtO2、Rb2O、Sb23、Sc23、Sm23、SnO2、Ta25、Tb23、Tm23、V25、WO3、Y23、Yb23、およびZnOからなるリストから選択される酸化物の微量元素の量である。
【0152】
1つの態様において、本開示は、ガラス中のZrまたはZrOの量が150ppm未満、または140ppm未満、または130ppm未満、または120ppm未満、または110ppm未満、または50ppm未満、または20ppm未満、または10ppm未満、または5ppm未満であるガラスに関する。好ましくは前記ガラスはZr不含である。
【0153】
1つのさらなる態様において、本開示は、ガラス中の天然のHfまたはHfO2の量が10ppm未満、または9ppm未満、または8ppm未満、または7ppm未満、または6ppm未満、または5ppm未満、または4ppm未満、または3ppm未満、または2ppm未満、または1ppm未満であるガラスに関する。好ましくは前記ガラスはHf不含である。
【0154】
鉄含有率は本発明においてはFe23の質量による割合としてppmで表される。この値は、当業者が熟知しているように、ガラス中に存在する全ての鉄種の量を特定し、且つ質量割合を計算するために、全ての鉄がFe23として存在すると仮定することによって特定され得る。従って、1モルの鉄がガラス中にある場合、計算のために仮定される質量は159.70mgのFe23である。この手順は、ガラス中の個々の鉄種の量を確実には特定できないか、あるいは特定するのが非常に困難であるという事実を考慮している。実施態様において、前記ガラスは100ppm未満、特に50ppm未満、または10ppm未満のFe23を含有する。特に低い鉄含有率を有する1つの実施態様において、Fe23の割合は6ppm未満、5ppm未満、または4.5ppm未満である。Fe23の含有率は任意に、0~4.4ppm、0~4.0ppm、0~3.5ppm、0~2.0ppm、0~1.75ppmの範囲である。実施態様において、前記含有率は0~1.5ppm、または好ましくは0~1.25ppmの範囲であることができる。さらなる実施態様において、前記ガラスはFe23でのいかなる汚染物も不含である。
【0155】
1つの実施態様において、前記ガラスは100ppm未満、特に50ppm未満、または10ppm未満のTiO2を含有する。特に低いTiO2含有率を有する1つの実施態様において、前記ガラスは7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、または4ppm未満含有する。TiO2含有率は任意に、0~6.9ppm、0~5.8ppm、0~4.7ppm、0~3.8ppm、または0~2.5ppmの範囲である。1つの実施態様において、この成分の割合は0~1.5ppm、0~1.0ppm、0~0.75ppm、0~0.5ppm、および好ましくは0~0.25ppmの範囲であることができる。さらなる実施態様において、前記ガラスはTiO2でのいかなる汚染物も不含である。
【0156】
1つの実施態様において、前記ガラスは100ppm未満、特に50ppm未満、または10ppm未満のヒ素を含む。100ppm未満のアンチモン、50ppm未満のアンチモン、10ppm未満のアンチモンを含むガラスが好ましい。ヒ素およびアンチモンは毒性であり且つ環境に有害であり、さらにそれらの両方はガラスのソラリゼーションを高める。
【0157】
本明細書において化学元素(例えばAs、Sb)に関してこの成分が存在しないと示されている場合、この記述は特定の場合において特段記載されない限りあらゆる化学形態に適用される。例えば、ガラスが10ppm未満のAs含有率を有するとの記述は、存在するAs種(例えばAs23、As25など)が一緒になった質量割合の合計が共に10ppmの値を超えないことを意味する。
【0158】
1つの実施態様において、前記ガラスは屈折率n1.45~1.55を有する。屈折率は1.50未満であることができる。
【0159】
本発明のガラスの製造方法は、以下の段階:
a) ガラス原料を、耐火材料を含有する溶融槽内で1500℃以上の温度で溶融する段階、
b) 任意に、耐火材料を含有する清澄槽内で前記溶融物を清澄する段階、
c) 前記溶融物を冷却する段階
を含み、前記ガラス溶融物が前記溶融槽および/または任意の清澄槽の耐火材料と接触し、前記溶融槽および任意の清澄槽の耐火材料中のZrO2の割合は5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、または1質量%未満の量である。好ましい実施態様において、0.25質量%未満、0.15質量%未満、0.05質量%未満、または0.01質量%未満である。1つの実施態様において、耐火材料はZrおよび/またはZrO2不含である。
【0160】
耐火材料は以下の式によって、汚染物質の許容レベルに鑑みて選択すべきである:
汚染物質[ppm]=Cuv×K×A/D
前記式中、
uvは耐火材料中の汚染物質の[ppmでの]濃度であり、Cuv(Fe、Ti、Pt、ZrおよびHfの合計)は1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは100ppm未満、10ppm未満であるべきであり、
Kは、約102dPasのガラス溶融物の粘度に相応する温度での腐食速度[mm/d]であり、前記腐食速度は溶融物へと失われる耐火材料の量であり、耐火材料とガラス溶融物との接触面に垂直な方向における一日あたりの材料の厚さの損失として示され、
Aは前記溶融物と前記耐火材料との接触面積[m2]であり、
Dはガラスのスループット[t/d]である。
【0161】
汚染物質は20ppm未満、または10ppm未満、または5ppm未満であるべきである。
【0162】
1つの実施態様において、耐火材料はAl23を5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、または1質量%未満の量で含む。好ましい実施態様において、0.25質量%未満、0.15質量%未満、0.05質量%未満、または0.01質量%未満のAl23である。1つの実施態様において、耐火材料はAl23不含である。
【0163】
本開示のガラスにおいて、溶解の間の還元性条件が、約200nmでの吸収を増加し得ることが判明した。従って、ガラスの製造の間の還元性溶解条件を、約200nmで低い透過率をもたらす程度に選択することが望ましい。これは、溶解の間に例えば1つ以上の還元剤、例えば糖(還元糖、例えばスクロース)を、特に0.1~1.0質量%、例えば0.2~0.6質量%の量で添加することによって達成できる。しかしながら、前記条件は、220nmでの透過率に悪影響を及ぼしかねない高い割合のFe2+種を回避するために、あまりに還元性であってはならない。
【0164】
本開示の1つの態様において、ガラス溶融物をアルゴン雰囲気下で白金るつぼ内で温度1500℃に誘導加熱することによってガラスから製造する場合、ガラス溶融物中での酸素分圧(pO2)は温度1500℃で0.5bar以下である。
【0165】
1500℃でのpO2は例えば最大0.4bar、最大0.3bar、または最大0.2barであってよい。いくつかの実施態様において、pO2は例えば少なくとも0.01bar、少なくとも0.02bar、少なくとも0.05bar、または少なくとも0.1barであってよい。pO2は例えば0.01bar~0.5bar、0.02bar~0.4bar、0.05bar~0.3bar、または0.1bar~0.2barであってよい。
【0166】
本開示の1つの態様は、汚染物質、例えばジルコニウム、ハフニウム、チタン、白金、および検出されるべき放射線と干渉する任意の他の材料不含である、溶融ガラス材料と直接接触するるつぼまたは他の接触材料の使用である。
【0167】
本開示の1つの態様において、製造プロセスの間に使用されるるつぼおよび他の接触材料は少なくとも部分的にSiO2製である。
【0168】
本願内で化学元素に言及する場合、この記載は個々の場合において特段記載されない限り、あらゆる化学形態(例えば全ての酸化物、同位体など)に関する。例えば、ガラスが100ppm未満のZr含有率を有するとの記述は、Zr種(例えばZr0、ZrO2など)の質量分率の合計が100ppmの値を超えないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0169】
図1】HOK 4ランプの発光スペクトルを示す図である。
図2】種々のガラスのZrO2分析結果を示す図である。
図3】本開示によるガラスについてのUV透過率プロファイルを示す図である。
図4】比較用ガラスについてのUV透過率プロファイルを示す図である。
図5】比較用ガラスについてのUV透過率プロファイルを示す図である。
【0170】
図面の説明
図1は、HOK 4ランプの発光スペクトルを示す。波長をnmでx軸に示す。最大強度に比した相対強度をy軸に示す。
【0171】
図2は種々のガラスのZrO2分析結果を示す。本開示によるガラスは実質的にZrO2不含である一方で、従来の方法によって製造された比較用ガラスは著しい量のZrO2を含有する(例3も参照)。
【0172】
図3~5は本開示によるガラスおよび従来の製造方法を用いた比較用ガラスについてのUV透過率プロファイルを示す。同じガラス(本発明のガラス1、比較用ガラス2および3)を用いて2または3回の測定が示される。透過率(y軸)対波長(x軸)が示される。本発明のガラスについて、より低い波長での透過率がより良好である。
【実施例0173】
例1 製造プロセス
本発明のガラスを以下のプロセスによって製造した:
汚染物不含の原料を混合し、次いで耐火材料を含有する溶融槽内で少なくとも1500℃、少なくとも1600℃の温度で約6~8時間溶融した。
【0174】
いくつかの実施態様において、前記溶融物を、やはり耐火材料を含有する清澄槽内でさらに清澄した。
【0175】
溶融槽および/または清澄槽の耐火材料がZrO2を5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、または1質量%未満の量で含むことが重要である。好ましい実施態様において、0.25質量%未満、0.15質量%未満、0.05質量%未満、または0.01質量%未満である。1つの実施態様において、耐火材料はZrおよび/またはZrO2不含である。
【0176】
次いで、前記溶融物を冷却し、ガラスをさらにその最終形態へと(例えばダウンドロー法によって)加工した。
【0177】
例2 例示的なガラスの分析
レーザーアブレーション・誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)による微量元素に関するガラスの1つの分析を示す。
【0178】
【表8-1】
【0179】
【表8-2】
【0180】
例3 比較用ガラス
1つの実験において、本開示によるガラスおよびZrO2を含有するるつぼ内での従来の溶融法を用いて製造された3つの比較用UVCガラス(比較用ガラス1~3)をそれらのZrO2含有率について分析した(図2参照)。本発明のガラスが実質的にZrO2不含である一方で、3つの市販のUVCガラスは依然として著しい量のZrO2を含むことが明らかになった。
【0181】
他の実験において、本開示による2つの例示的なガラス1および2、およびZrO2を含有するるつぼ内での従来の溶融法を用いて製造された他の比較用UVCガラス(比較用ガラス4)をそれらのZrO2含有率について分析した(表参照)。本発明のガラスが実質的にZrO2不含である一方で、3つの市販のUVCガラスは依然として著しい量のZrO2を含むことが明らかになった。比較用ガラスは汚染に起因して放射線検出器において使用できないことが判明した。
【0182】
【表9】
【0183】
例4 耐火るつぼの腐食
静的腐食試験を使用してガラス溶融物に対する材料の耐食性を評価した。その試験は温度1550℃~1650℃(加熱速度60~最大100K/h)で24時間であった。
【0184】
まず、予め測定された試料をホルダ内に接着し、予定される炉に設置する。相応のガラス溶融物を有するPtつるぼを下に設置する。炉が適切な温度に達したら、試料をガラス溶融物中に入れて浸漬し、試験温度で相応の保持時間の後、再度引き出す。
【0185】
ガラス槽における腐食は通常、片側のみで生じる。従って、フラッシングジョイントのところで、およびその下での腐食した試料の腐食除去も片側の除去のみで評価される。
【0186】
フラッシングジョイントの深さおよび平均の除去を使用して、フラッシングジョイントの下で考慮される腐食除去を特定する。いずれの場合も、計算は試料の2分の1について行う。
【0187】
除去を計算するために以下の式を使用する:
【数2】
【0188】
ここで、diは点iでの試験後の試料の平均厚さを示し、Sxは試料1(x=1)および試料2(x=2)上での測定点での厚さを示し、Aは点iでの片側の平均の除去を示し、daは開始時の試料の厚さを示す。この計算をフラッシングジョイント(試料の最も薄い点)および4つの他の点について繰り返す。その後、フラッシングジョイントの下の4つの点にわたって再度平均化する。
【0189】
【数3】
【0190】
いくつかの材料は成長または収縮するので、除去について特定された値になり、材料の収縮率(Sw)は以下のように計算される:
【数4】
【0191】
試料の最も上の点でda(開始時の試料の厚さ)とSx(試験後の試料の厚さ)との両方(可能であれば、接着領域内で、ガラス蒸気の接触なく測定)。
【0192】
以下の成分を含む耐火るつぼのための材料:
【表10】
【0193】
意外なことに、新規の材料はガラス溶融物中でより速く腐食するにもかかわらず、Zr、Cr、Fe、Mn、Pt、TiおよびNiによる汚染は従来のケイ酸アルミニウムジルコニウム(AZS)またはKorvisit A(登録商標)材料に比して著しく少ないことが判明した。
【0194】
例えば、AZSを使用する場合のガラス溶融物の汚染は以下のように示される:
【表11】
【0195】
例5 放射性核種での汚染
AZS製(40質量%のZrを有する)のガラス溶融るつぼ内で製造された比較用ガラスをガンマ線分光によって分析した。U-238-、U-235-およびTh-232壊変系列からの天然放射性核種のみが検出され、それはAZS耐火材料中に存在するようなジルコニウムを伴う汚染物質であることがある。Ir-192およびK-40はそれぞれ検出限界未満であった。ガンマ線分光測定において、Ra-228の娘生成物はIr-192と同様のエネルギーで信号を示し、測定装置の種類によっては、それはIr-192についての偽陽性の結果をみちびきかねない。
【0196】
【表12】
【0197】
第2の実験において、AZS製(65質量%のZrを有する)の他のガラス溶融るつぼ内で製造された比較用ガラスをガンマ線分光によって分析した。U-238-、U-235-およびTh-232壊変系列からの天然放射性核種のみが検出され、それはAZS耐火材料中に存在するようなジルコニウムを伴う汚染物質であることがある。Ir-192およびK-40はそれぞれ検出限界未満であった。ガンマ線分光測定において、Ra-228の娘生成物はIr-192と同様のエネルギーで信号を示し、測定装置の種類によっては、それはIr-192についての偽陽性の結果をみちびきかねない。
【0198】
【表13】
【0199】
例6 中性子検出
中性子感受性シンチレーションガラスファイバ検出器を、本発明のガラス1および2(例3参照)および比較用ガラス4(例3参照)製のガラスファイバを用いて試験する。
【0200】
中性子吸収の検出は、本発明のガラスでは±3%のみ変動する一方で、比較用ガラス4を用いた中性子吸収の変動は約±10%変動する。さらに、比較のために、フォイルスパン(foil span)に沿った熱中性子ビーム位置の関数としての固有の熱中性子検出効率を、両方の検出器の構成について実験的に測定する。検出効率16.16%(比較用ガラス4)対44.08%(本発明のガラス2)および53.04%(本発明のガラス1)がそれぞれ測定される。
【0201】
これは中性子検出器において使用される場合の本発明のガラスの優位性を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】