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特開2024-48394膨張コーティング及びその製造方法と応用、当該膨張コーティングを含む永久磁石
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  • 特開-膨張コーティング及びその製造方法と応用、当該膨張コーティングを含む永久磁石 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048394
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】膨張コーティング及びその製造方法と応用、当該膨張コーティングを含む永久磁石
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240401BHJP
   C09D 163/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D163/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023165022
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】202211185592X
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジチアン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ペンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ユンティン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038HA026
4J038HA266
4J038JB04
4J038JB05
4J038JB12
4J038JB32
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA03
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】膨張コーティング及びその製造方法と応用、当該膨張コーティングを含む永久磁石を提供する。
【解決手段】本発明に係る膨張コーティングは、気孔を含み、気孔の間に充填樹脂を更に含み、前記気孔は、少なくとも類円形構造気孔を含み、前記類円形構造気孔の断面は、長径と、短径とを含み、前記膨張コーティングの断面において、前記類円形構造気孔の面積は、膨張コーティングの断面積の50%~60%を占める。本発明の永久磁石は膨張コーティングを含み、当該膨張コーティングの強度が高く、高温(例えば170℃)においても優れた機械的特性及び耐食性を示すことができ、170℃でのせん断強度が2 MPaより大きく、引張強度が2 MPaより大きく、耐油性能が1800 hより大きく、中性塩水噴霧が288 hより大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張コーティングは、気孔を含み、気孔の間に充填樹脂を更に含み、前記気孔は、少なくとも類円形構造気孔を含み、前記類円形構造気孔の断面は、長径と、短径とを含み、
前記膨張コーティングの断面において、前記類円形構造気孔の面積は、膨張コーティングの断面積の50%~60%を占める、ことを特徴とする膨張コーティング。
【請求項2】
前記膨張コーティングの断面において、前記類円形構造気孔の面積は、膨張コーティングの断面積の53%~57%を占め、
好ましくは、前記短径と長径との比をR2/R1とし、前記類円形構造気孔の総数に対して、0.7<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率は、60%~80%、好ましくは70%~78%であり、R2/R1≦0.5である類円形構造気孔の含有率は、8%未満、好ましくは5%以下であり、
好ましくは、0.8<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率は、40%~55%、好ましくは50%~53%であり、更に、0.9<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率は、25%~30%、好ましくは26%~28%である、ことを特徴とする請求項1に記載の膨張コーティング。
【請求項3】
前記類円形構造気孔の総数に対して、そのうち、
R1>60μmである類円形構造気孔の含有率は、12%未満、好ましくは10%以下であり、
30μm<R1≦50μmである類円形構造気孔の含有率は、50%~60%、好ましくは55%~60%であり、
20μm<R1≦30μmである類円形構造気孔の含有率は、15%~20%、好ましくは16%~20%であり、
R1≦20μmである類円形構造気孔の含有率は、10%未満、好ましくは7%未満であり、
好ましくは、R1>80μmである類円形構造気孔の含有率は、5%未満、好ましくは3%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の膨張コーティング。
【請求項4】
前記充填樹脂は、熱硬化性樹脂によって提供され、
好ましくは、前記膨張コーティングの中性塩水噴霧性能は、288hより大きく、
好ましくは、前記膨張コーティングの170℃での耐油性能は、1800hより大きく、
好ましくは、前記膨張コーティングの170℃でのせん断強度は、2MPaより大きく、
好ましくは、前記膨張コーティングの170℃での引張強度は、2MPaより大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の膨張コーティング。
【請求項5】
請求項1に記載の膨張コーティングの製造方法であって、前記製造方法は、磁石基体の表面にコーティングを塗布することと、前記コーティングを仮硬化させることとを含み、前記コーティングを膨張硬化させて前記膨張コーティングを得、
好ましくは、前記コーティングは、膨張型塗料によって提供され、
好ましくは、重量部に対して、前記膨張型塗料は、少なくとも熱硬化性樹脂50~80重量部、膨張微小球5~20重量部、化学発泡剤0.2~1.5重量部、硬化剤0.3~2重量部、顔料フィラー15~30重量部を含み、
好ましくは、重量部に対して、前記膨張型塗料は、熱硬化性樹脂60~70重量部、膨張微小球8~15重量部、化学発泡剤0.5~1.5重量部、硬化剤0.8~1.5重量部、顔料フィラー17~25重量部を含み、
好ましくは、前記膨張微小球と化学発泡剤との使用量の比は、(5~20):(0.1~1.5)、好ましくは(10~18):(0.3~1.1)である、ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つであり、好ましくは、軟化点が50~95℃の間であるビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、
好ましくは、前記膨張微小球は、前記膨張可能な微小球の平均粒径が5~50μm、好ましくは5~20μm、より好ましくは10~15μmであるものから選ばれ、例示的に、前記膨張微小球は、AKZO-Nobel社のExpancelシリーズにおける920DU80、920DU40、920DU20から選ばれる少なくとも1つであり、例示的に、前記膨張微小球は、920DU40と920DU20との混合物から選ばれ、両者の重量比が(1~10):(1~10)であり、
好ましくは、前記化学発泡剤は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジドから選ばれる少なくとも1つであり、
好ましくは、前記硬化剤は、潜在性アミン硬化剤から選ばれる少なくとも1つであり、
好ましくは、前記潜在性アミン硬化剤は、イミダゾール、イミダゾールのエポキシ樹脂付加物又はポリアミンのエポキシ樹脂付加物から選ばれる少なくとも1つであり、
好ましくは、前記顔料フィラーは、絶縁カーボンブラック、雲母粉、炭酸カルシウム、ナノケイ酸アルミニウム繊維から選ばれる少なくとも1つであり、
好ましくは、前記コーティングを塗布することは、前記膨張型塗料を磁石基体の表面に塗布してコーティングを形成することを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記仮硬化の条件は、仮硬化温度が90~130℃であること、仮硬化時間が5~20minであることを含み、
好ましくは、仮硬化を経た後、前記コーティングの厚さは、50~200μmであり、
好ましくは、前記膨張硬化は、コーティングを塗布した磁石基体を溝体内に置き、高温で硬化させた後に膨張コーティングを得ることを含み、
好ましくは、高温硬化の温度は、190℃~230℃であり、
好ましくは、高温硬化の時間は、15~40minであり、
好ましくは、前記溝内に発泡隙間が設けられ、好ましくは、前記コーティング厚さと発泡間隙との比は、1.5~2.5である、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の膨張コーティングの応用。
【請求項9】
請求項1に記載の膨張コーティングと、磁石基体とを含む永久磁石であって、前記膨張コーティングは、前記磁石基体の表面に位置する、永久磁石。
【請求項10】
請求項9に記載の永久磁石の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年9月27日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202211185592.Xで、発明名称が「膨張コーティング及びその製造方法と応用、当該膨張コーティングを含む永久磁石」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願は全体として援用により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、膨張コーティング及びその製造方法と応用、当該膨張コーティングを含む永久磁石に関し、特に、特定ミクロ構造の膨張コーティングを含む永久磁石及びその製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギー自動車産業が急速に進むことに伴い、希土類永久磁石同期モータは、その損失が少なく、効率が高く、節電効果が明らかであるなどの利点により、広く用いられている。同時に、希土類永久磁石同期モータの磁性鋼の組立プロセスは、モータの主な生産プロセスの1つとして、その環境性、利便性及び組立精度などの問題もますます各大手自動車メーカーに注目されている。
【0004】
近年、磁性鋼の組立プロセスは、現在主流の射出成形及び接着剤注入プロセスに加えて、膨張型コーティングがその安全で環境にやさしく、操作が簡便で、組立精度が高いなどの利点により、磁性鋼の組立プロセスに用いられるようになりつつあり、膨張型コーティングを加熱膨張させた後、磁性鋼溝を満たし、磁性鋼を固定する役割を果たす。
【0005】
公開番号がCN112774959Aである特許文献には、膨張可能な粉末を磁石に塗布するプロセスが開示されており、膨張可能な粉末は、プレポリマー、硬化剤、少なくとも1つの機能性フィラー及び発泡剤を含み、前記発泡剤は、化学発泡剤である。当該発泡剤がコーティング基体と早く反応しないため、当該コーティングを塗布した磁石は、輸送及び貯蔵過程において構造安定性を維持することができる。
【0006】
公開番号がCN113593817Aである特許文献には、磁石母材、磁石アセンブリの製造方法が開示されており、前記母材は、磁石とその表面に膨張可能な層とを含み、膨張可能な層は、ポリリン酸アンモニウム、ポリオール、エポキシ樹脂、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドなどを含む。当該膨張可能な層は、膨張した後、常温で比較的高い磁石と基体との結合力及び中性塩水噴霧を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、自動車用モータは、運転中に最高温度が150℃を超える場合があり、膨張コーティングの高温での安定性が比較的に悪いと、遠心力の作用により、製品は、磁性鋼溝に沿ってせん断して、コーティングが破壊される可能性がある。そのため、膨張コーティングの高温(>150℃)での機械的特性及び耐食性は、更に改善される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術問題を解決するために、本発明は以下の技術案、
気孔を含み、気孔の間に充填樹脂を更に含む膨張コーティングであって、前記気孔は、少なくとも類円形構造気孔を含み、前記類円形構造気孔の断面は、長径と、短径とを含む、膨張コーティングを提供する。本発明では、前記類円形構造気孔の断面は、気孔の中心点を通る任意の断面を指し、前記長径は、類円形の断面における中心点を通る最も長い距離を指し、R1とし、短径は、類円形の断面における中心点を通る最も短い距離を指し、R2とする。
【0009】
本発明の実施形態によれば、膨張コーティングの断面において、前記類円形構造気孔の面積は、膨張コーティングの断面積の50%~60%、好ましくは53%~57%、例えば56%、57%、60%、68%、70%を占める。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記類円形構造気孔の断面は、基本的に図1に示される形状を有する。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記長径と短径は、垂直であることが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記短径と長径との比をR2/R1とし、前記類円形構造気孔の総数に対して、0.7<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率は、60%~80%、好ましくは70%~78%、例えば65%、68%、72%、74%、77%であり、R2/R1≦0.5である類円形構造気孔の含有率は、8%未満、好ましくは5%以下、例えば2%、3%、4%、5%、6%、7%である。
【0013】
好ましくは、0.8<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率は、40%~55%、好ましくは50%~53%、例えば33%、47%、48%、52%、55%である。更に、0.9<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率は、25%~30%、好ましくは26%~28%、例えば25%、28%、29%、30%である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記類円形構造気孔の総数に対して、そのうち、
R1>60 μmである類円形構造気孔の含有率は、12%未満、好ましくは10%以下、例えば7%、8%、9%、10%であり、
30 μm<R1≦50 μmである類円形構造気孔の含有率は、50%~60%、好ましくは55%~60%、例えば50%、53%、54%、55%、59%であり、
20 μm<R1≦30 μmである類円形構造気孔の含有率は、15%~20%、好ましくは16%~20%、例えば16%、17%、18%、19%であり、
R1≦20 μmである類円形構造気孔の含有率は、10%未満、好ましくは7%未満、例えば0%、4%、5%、6%である。
【0015】
好ましくは、R1>80 μmである類円形構造気孔の含有率は、5%未満、好ましくは3%未満、例えば0%、1%、2%、3%である。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記充填樹脂は、熱硬化性樹脂によって提供されている。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記膨張コーティングの中性塩水噴霧性能は、288 hより大きく、例示的には312 h、336 h、360 hである。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記膨張コーティングの170℃での耐油性能は、1800 hより大きく、例示的には1920 h、2016 h、2112 hである。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記膨張コーティングの170℃でのせん断強度は、2 MPaより大きく、例示的には2.1 MPa、2.3 MPa、2.5 MPaである。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記膨張コーティングの170℃での引張強度は、2 MPaより大きく、例示的には2.1 MPa、2.2 MPa、2.3 MPaである。
【0021】
本発明は、上記膨張コーティングの製造方法を更に提供し、前記製造方法は、磁石基体の表面にコーティングを塗布することと、前記コーティングを仮硬化させることとを含み、前記コーティングを膨張硬化させて前記膨張コーティングを得る。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記コーティングは、膨張型塗料によって提供されている。
【0023】
本発明の実施形態によれば、重量部に対して、前記膨張型塗料は、少なくとも熱硬化性樹脂50~80重量部、膨張微小球5~20重量部、化学発泡剤0.2~1.5重量部、硬化剤0.3~2重量部、顔料フィラー15~30重量部を含む。
【0024】
好ましくは、重量部に対して、前記膨張型塗料は、熱硬化性樹脂60~70重量部、膨張微小球8~15重量部、化学発泡剤0.5~1.5重量部、硬化剤0.8~1.5重量部、顔料フィラー17~25重量部を含む。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記膨張微小球と化学発泡剤との使用量の比は、(5~20):(0.1~1.5)、好ましくは(10~18):(0.3~1.1)、例えば、10:0.3、10:0.8、16:0.9、18:1である。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記熱硬化性樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つであり、好ましくは、軟化点が50~95℃の間であるビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記膨張微小球は、前記膨張可能な微小球の平均粒径が5~50 μm、好ましくは5~20 μm、より好ましくは10~15 μmであるものから選ばれる。例示的に、前記膨張微小球は、AKZO-Nobel社のExpancelシリーズにおける920DU80、920DU40、920DU20から選ばれる少なくとも1つである。例示的に、前記膨張微小球は、920DU40と920DU20との混合物から選ばれ、両者の重量比が(1~10):(1~10)である。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記化学発泡剤は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジドから選ばれる少なくとも1つであり、例えば、アゾジカルボンアミドである。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記硬化剤は、潜在性アミン硬化剤から選ばれる少なくとも1つである。
【0030】
好ましくは、前記潜在性アミン硬化剤は、イミダゾール、イミダゾールのエポキシ樹脂付加物又はポリアミンのエポキシ樹脂付加物から選ばれる少なくとも1つであり、例えば、ジシアンジアミドである。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記顔料フィラーは、絶縁カーボンブラック、雲母粉、炭酸カルシウム、ナノケイ酸アルミニウム繊維から選ばれる少なくとも1つであり、例えば、絶縁カーボンブラックである。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記コーティングを塗布することは、前記膨張型塗料を磁石基体の表面に塗布してコーティングを形成することを含む。好ましくは、前記塗布は、静電スプレーのような本分野で既知の塗布方式を選択することができる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、前記仮硬化の条件は、仮硬化温度が90~130℃、好ましくは95℃~110℃、例えば、95℃、100℃、105℃、110℃であること、仮硬化時間が5~20 min、好ましくは8~18 min、例えば、8 min、10 min、12 min、14 min、16 min、18 minであることを含む。
【0034】
本発明の実施形態によれば、仮硬化を経た後、前記コーティングの厚さは、50~200 μm、好ましくは80~150 μm、例えば80 μm、90 μm、100 μm、110 μm、120 μm、130 μm、140 μm、150 μmである。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記膨張硬化は、コーティングを塗布した磁石基体を溝体内に置き、高温で硬化させた後に膨張コーティングを得ることを含む。
【0036】
好ましくは、高温硬化の温度は、190℃~230℃、好ましくは200℃~220℃、例えば200℃、205℃、210℃、215℃、220℃である。
【0037】
好ましくは、高温硬化の時間は、15~40 min、好ましくは20~30 min、例えば20 min、25 min、30 minである。
【0038】
例示的に、前記溝体は、ロータに設けられることが好ましい。
【0039】
本発明は、上記製造方法により製造された膨張コーティングを更に提供し、前記膨張コーティングは、前記のような意味を有する。
【0040】
本発明は、上記膨張コーティングの応用を更に提供し、好ましくは永久磁石に用いられる。
【0041】
本発明は、永久磁石を更に提供し、前記永久磁石は、上記膨張コーティングと、磁石基体とを含み、前記膨張コーティングは、前記磁石基体の表面に位置する。
【0042】
本発明の実施形態によれば、前記磁石基体は、前記永久磁石を得られれば、本分野で既知の磁石基体を選択してもよい。
【0043】
例示的に、前記磁石基体の形状は、正方形磁石から選ばれる。
【0044】
本発明の実施形態によれば、前記膨張コーティングは、前記製造方法で製造して得られる。
【0045】
本発明は、上記永久磁石の応用を更に提供し、好ましくはロータに用いられる。
【発明の効果】
【0046】
有益な効果
1、本発明の永久磁石は、膨張コーティングを含み、前記膨張コーティングにおける気孔の大きさの均一性が比較的に良く、特定形状の類円形構造気孔を含み、且つ貫通孔がなく、気孔の間に樹脂が充填される。本発明の膨張コーティングの強度が高く、高温(例えば170℃)においても優れた機械的特性及び耐食性を示すことができ、170℃でのせん断強度が2 MPaより大きく、引張強度が2 MPaより大きく、耐油性能が1800 hより大きく、中性塩水噴霧が288 hより大きい。
【0047】
2、本発明は、化学発泡剤と物理発泡剤(膨張微小球)との特定割合で組み合わせて、コーティングの膨張率を向上させ、膨張微小球の安定性と化学発泡剤の柔軟性との両方を備え、制御性が高く、膨張が比較的均一で、支持力が強く、化学発泡剤は、より高い膨張率を実現することができ、両者の組合わせにより、膨張後のコーティングの膨張率が高く、且つコーティング構造が安定し、強度が強く、重量が軽く、接着性がよく、デラミネーション分裂しにくく、耐衝撃、支持力が強いという利点を実現することができる。
【0048】
3、本発明は、化学発泡剤と物理発泡剤(膨張微小球)との特定割合で組み合わせた方式を採用し、比較的に良好な発泡効果を奏することができると共に、化学発泡剤による環境問題を減らすことを実現し、また、化学発泡剤の反応が迅速で、膨張倍率を正確に制御することが難しく、発泡隙間に対する要求が高く、もし化学発泡剤の量が大きすぎると、更に、微小球が貫通され、安定性が悪くなり、推力、粘着力などが悪くなる可能性があり、更に結合力が低くなり、コーティングが脱落しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】膨張後の膨張コーティングの断面ミクロ構造図である。
【0050】
図中、R1は気孔の長径であり、R2は気孔の短径である。
図2】膨張コーティングを塗布した永久磁石がロータ磁性鋼溝内で固定された模式図である。
【0051】
図中、1:ロータコアの磁性鋼溝孔、2:磁石基体、3:膨張コーティング。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0053】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0054】
以下の実施例及び比較例では、何れも、磁石基体として、20 mm×10 mm×3.5 mmのサイズを有するネオジム鉄ボロン製品を選択した。
【0055】
実施例1
永久磁石の製造方法は以下の通りである:
1)コーティングを塗布
静電スプレー方式により膨張型塗料を磁石基体の表面に塗布し、前記膨張型塗料は、エポキシ樹脂 68%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 4%、920DU20 6%、アゾジカルボンアミド 0.8%、硬化剤ジシアンジアミド(アラジン、98%) 1.2%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 20%の質量比の成分からなる。90℃で20 min仮硬化させて成膜し、コーティング厚さが100 μmであり、表面にコーティングをコーティングした永久磁石を得た。
【0056】
2)発泡膨張処理
ステップ1)の永久磁石を磁性鋼としてオーブンに置き、210℃で30 min硬化させ、表面に膨張コーティングを含む永久磁石を得た。
【0057】
比較例1
永久磁石の製造方法は実施例1と基本的に同じであり、膨張型塗料が、エポキシ樹脂 68%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 12%、920DU20 14%、アゾジカルボンアミド 0.8%、硬化剤ジシアンジアミド(アラジン、98%) 1.2%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 4%の質量比の成分からなる点で異なる。
【0058】
実施例2
永久磁石の製造方法は以下の通りである:
1)コーティングを塗布
静電スプレー方式により膨張型塗料を磁石の表面に塗布し、前記膨張型塗料は、エポキシ樹脂 56%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 8%、920DU20 8%、アゾジカルボンアミド 0.9%、硬化剤ジシアンジアミド(アラジン、98%) 0.7%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 26.4%の質量比の成分からなる。90℃で20 min仮硬化させて成膜し、コーティング厚さが160 μmであり、表面にコーティングを塗布した永久磁石を得た。
【0059】
2)発泡膨張処理
ステップ1)の永久磁石をオーブンに置き、230℃で40 min硬化させ、表面に膨張コーティングを含む永久磁石を得た。
【0060】
比較例2
永久磁石の製造方法は実施例2と同じであり、膨張型塗料がエポキシ樹脂 56%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 12%、920DU20 10%、アゾジカルボンアミド 1.8%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 20.2%の質量比の成分からなる点で異なる。
【0061】
実施例3
永久磁石の製造方法は以下の通りである:
1)コーティングを塗布
静電スプレー方式により膨張型塗料を磁石の表面に塗布し、前記膨張型塗料はエポキシ樹脂 65%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 6%、920DU20 3%、アゾジカルボンアミド 1.2%、硬化剤ジシアンジアミド(アラジン、98%) 0.8%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 24%の質量比の成分からなる。100℃で15 min仮硬化させて成膜し、コーティング厚さが100 μmであり、表面にコーティングを塗布した永久磁石を得た。
【0062】
2)発泡膨張処理
ステップ1)の永久磁石をオーブンに置き、190℃で30 min硬化させ、表面に膨張コーティングを含む永久磁石を得た。
【0063】
比較例3
永久磁石の製造方法は以下の通りである:
1)コーティングを塗布
静電スプレー方式により膨張型塗料を磁石の表面に塗布し、前記膨張型塗料はエポキシ樹脂 60%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 6%、920DU20 10%、アゾビスイソブチロニトリル 1.0%、アゾジカルボンアミド 0.5%、硬化剤ジシアンジアミド(アラジン、98%) 0.6%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 21.9%の質量比の成分からなる。100℃で15 min仮硬化させて成膜し、コーティング厚さが100 μmであり、表面にコーティングを塗布した永久磁石を得た。
【0064】
2)発泡膨張処理
ステップ1)の永久磁石をオーブンに置き、210℃で30 min硬化させ、表面に膨張コーティングを含む永久磁石を得た。
【0065】
実施例4
永久磁石の製造方法は以下の通りである:
1)コーティングを塗布
静電スプレー方式により膨張型塗料を磁石の表面に塗布し、前記膨張型塗料はエポキシ樹脂 66%、膨張微小球Expancel(登録商標)920DU40 6%、920DU20 8%、アゾビスイソブチロニトリル 0.8%、硬化剤ジシアンジアミド(アラジン、98%) 1.2%、顔料フィラー絶縁カーボンブラック(天津億博瑞) 18%の質量比の成分からなる。100℃で15 min仮硬化させて成膜し、コーティング厚さが100 μmであり、表面にコーティングを塗布した永久磁石を得た。
【0066】
2)発泡膨張処理
ステップ1)の永久磁石をオーブンに置き、230℃で35 min硬化させ、表面に膨張コーティングを含む永久磁石を得た。
【0067】
実施例及び比較例の永久磁石表面の膨張コーティングの断面における類円形構造気孔のデータを表1に示す。
【0068】
試験例
上記実施例及び比較例の永久磁石の表面の膨張コーティングに対して以下の試験を行い、その試験結果を表2に示す。
【0069】
(1)170℃でのせん断強度の試験条件
170℃の環境温度において、GB/T 7124-2008を参考にして試験を行った。
【0070】
(2)170℃での引張強度の試験条件
170℃の環境温度において、GB/T 6329-1996を参考にして試験を行った。
【0071】
(3)耐食性
(a)SST実験(中性塩水噴霧性能)の試験条件
35℃で、NaCl水溶液の濃度が50 g/L±5 g/Lであり、pHが6.5から7.2まで、噴霧の方法によりNaCl水溶液を塩水噴霧に形成し、測定対象であるネオジム鉄ボロン磁石製品に堆積させ、磁石表面に錆が生じ始める時間を記録した。
【0072】
(b)油浸の試験条件
ネオジム鉄ボロン磁石製品を150℃、トランスミッションオイルに全面的に浸し、磁石の表面の錆、バブリング、ピーリングなどの状況を観察し、磁石の表面のコーティングが変化し始める時間を記録し、及び磁石コーティングの性能を再検出し、影響を与えなかった場合、この時間を耐浸油時間とした。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1及び表2の結果から分かるように、
1、実施例1と比較例1との比較結果から、膨張微小球と化学発泡剤との割合が26:0.8であり、微小球の数が増加し、化学発泡剤が少なすぎて、膨張剤の総量が増加し、膨張率が高すぎて、コーティングにおける気孔の比率が74%に達したため、膨張コーティングの孔隙が疎となり、過大な孔隙が生じ、安定性、推力、粘着力などが悪くなり、更に結合力が低くなり、コーティングが脱落しやすいことが示される。
【0076】
2、実施例2と比較例2との比較結果から、比較例2では、膨張微小球と化学発泡剤との割合が22:1.8であり、膨張微小球及び化学発泡剤が多すぎて、範囲を超え、膨張した後、コーティングにおける類円形構造気孔の比率が70%であり、同様に、膨張率が高すぎて、膨張コーティングの孔隙が疎となり、孔隙が大きすぎ、安定性が悪くなるという問題があることが示される。実施例2の永久磁石は、170℃でのせん断強度が比較例2よりも高く、せん断及び引張強度が比較例2よりも明らかに高く、耐食性もより優れる。
【0077】
3、実施例3と比較例3との比較結果から、実施例3と比較例3の膨張微小球と化学発泡剤との割合が、何れも(5~20):(0.1~1.5)の範囲内であるが、比較例3の製品のコーティングにおける類円形構造気孔の比率が68%(60%より高い)であり、同様に膨張率が高すぎ、膨張コーティングの孔隙が疎で、孔隙が大きいため、安定性が悪くなり、せん断及び引張強度が実施例3よりも明らかに高くなることが示される。
【0078】
4、実施例3と比較例2との比較結果から、実施例3の永久磁石の170℃でのせん断強度が比較例2よりも高く、引張強度が比較例2よりも明らかに高く、耐食性が比較例2よりも優れていることが示される。このことから、実施例3の30 μm<R1≦50 μmの割合は35%(50~60%の範囲外である)であり、R2/R1の比が8%未満、コーティングにおける類円形気孔の割合が50%~60%であるため、実施例3の永久磁石膨張コーティングのせん断力、引張強度は何れも比較的に良好であることが分かる。
【0079】
5、実施例4と実施例1との比較結果から、実施例4の永久磁石膨張コーティングの0.8<R2/R1≦1である類円形構造気孔の含有率が33%(40%~55%の範囲外である)であるため、実施例4の永久磁石膨張コーティングのせん断力、引張強度は何れも実施例1に比べてやや劣ることが示される。
【0080】
6、実施例3と比較例3との比較結果から、実施例3と比較例3の膨張微小球及び化学発泡剤の使用量の比が何れも(5~20):(0.1~1.5)の範囲内であるが、比較例3の製品のコーティングにおける類円形構造気孔の面積が膨張コーティングの断面積の68%(50%~60%の範囲を超えた)を占めるため、比較例3の製品の170℃でのせん断及び引張強度は実施例3よりもやや低く、耐食性が相当であることが示される。
【0081】
7、実施例1と実施例2との比較結果から、R2/R1の比が8%未満であれば、R1値とコーティングにおける気孔の比率は何れも好ましい範囲内であり、実施例1の永久磁石膨張コーティングの170℃でのせん断及び引張強度はやや高く、耐食性が相当であることが示される。
【0082】
8、実施例と比較例との比較結果から、170℃でのせん断と引張強度及び耐食性に対して、膨張コーティングのミクロ構造における永久磁石の性能への影響の順序は、類円形構造気孔の比率>R1値範囲>R2/R1の比の範囲であることが示される。
【0083】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。しかし、本願の請求範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。当業者が本発明の精神及び原則を逸脱しない範囲で行われたあらゆる修正、同等置換、改良などは、何れも本発明の請求範囲内に含まれるべきである。
図1
図2