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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048404
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20240401BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240401BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G02B1/14
C08J7/04 Z CEP
C08J7/04 CES
C08J7/04 CEZ
C08J7/04 CFD
C08F20/36
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008034
(22)【出願日】2024-01-23
(62)【分割の表示】P 2022154151の分割
【原出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】堀田 武史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小池 諒
(72)【発明者】
【氏名】横井 優貴
(72)【発明者】
【氏名】阪下 瑛亮
【テーマコード(参考)】
2K009
4F006
4J100
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB12
2K009BB24
2K009BB28
4F006AA02
4F006AA12
4F006AA31
4F006AA35
4F006AB43
4F006AB64
4F006AB65
4F006BA03
4F006CA05
4F006CA08
4F006DA04
4F006EA03
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100BA03P
4J100BC58P
4J100BC73P
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】有機ELディスプレイ表面の保護フィルムとして使用する場合、有機ELディスプレイの表示の色や輝度に悪影響を与えることなく、かつ有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制できるハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】このハードコートフィルムは、透明基材の少なくとも片面に、重量平均分子量が15000~35000の範囲内のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層され、波長365nmの光線透過率が0.1%以下であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも片面に、重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層され、波長365nmの光線透過率が0.1%以下であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコートフィルムに対し、JIS-K-5600-7-7に準拠した促進耐光性試験を100時間行った後の、波長365nmの光線透過率が0.1%以下であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚みが2.0μmを超え6.0μm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の配合量は、前記ハードコート層の紫外線硬化型樹脂100質量部に対して20質量部~60質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記透明基材は、トリアセチルセルロ-スフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはシクロオレフィンポリマーフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材に用いられるハードコートフィルムに関する。更に詳しくは、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置等のパネルディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品等の保護フィルムとして使用することができるハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイの表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求されている。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して、ディスプレイの表示面の耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。
【0003】
近年、ディスプレイの薄膜化、軽量化に伴い、その構成部材の薄膜化が進行している。たとえば、ディスプレイの偏光板に用いられるハードコートフィルムも薄膜化が要求されている。
また、例えば有機ELディスプレイ表面の保護フィルムとして上記ハードコートフィルムを使用する場合、当該ハードコートフィルムには、有機ELディスプレイの表示の色や輝度に悪影響を与えることのないこと、有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制できること、等々のいくつもの要求を満たすことが求められている。
【0004】
従来技術としては、例えば特許文献1には、高屈折率で耐光性に優れた薄膜を形成し得るトリアジン環含有重合体を含む膜形成用組成物が開示されている。また、例えば特許文献2には、高透明性および高耐光性で、1000nm以上の厚みの膜を形成し得るトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを含む膜形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/110810号
【特許文献2】国際公開第2013/094664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ELディスプレイに用いられるいくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを抑制するためには、例えば365nm、405nmに代表される波長における光線透過率を十分に低下させることが求められている。さらに、近年の有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)向上を目的に、発光素子の保護のために例えば405nmの光線透過率を十分に低下させることが求められている。しかしながら、上記特許文献1、2に開示されているような膜形成用組成物から得られる膜は、例えば365nm、405nmにおける光線透過率が非常に高く、上記の有機ELディスプレイに用いられるいくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージ抑制、有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)向上といった課題を解決することができない。
【0007】
また、上記特許文献1、2以外にも従来技術のハードコートフィルムは種々知られているが、上記の有機ELディスプレイの表示の色や輝度に悪影響を与えることのないこと、有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制できること、等々の要求を同時に満たすことができるハードコートフィルムを得ることは困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、第1に、有機ELディスプレイ表面の保護フィルムとして使用する場合、有機ELディスプレイの表示の色や輝度に悪影響を与えることなく、かつ有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制できるハードコートフィルムを提供することであり、第2に、ハードコートフィルムに対する耐光性試験後も上記の性能を維持できるハードコートフィルムを提供することであり、第3に、薄膜化を可能とするハードコートフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の構成を有する発明により上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
(第1の発明)
透明基材の少なくとも片面に、重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層され、波長365nmの光線透過率が1%未満であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0011】
(第2の発明)
前記ハードコートフィルムに対し、JIS-K-5600-7-7に準拠した促進耐光性試験を100時間行った後の、波長365nmの光線透過率が1%未満であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とする第1の発明に記載のハードコートフィルムである。
【0012】
(第3の発明)
前記ハードコート層の厚みが2.0μmを超え6.0μm未満であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載のハードコートフィルムである。
【0013】
(第4の発明)
前記セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の配合量は、前記ハードコート層の紫外線硬化型樹脂100質量部に対して20質量部~60質量部であることを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
【0014】
(第5の発明)
前記透明基材は、トリアセチルセルロ-スフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはシクロオレフィンポリマーフィルムであることを特徴とする第1乃至第4の発明のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機ELディスプレイ表面の保護フィルムとして使用する場合、有機ELディスプレイの表示の色や輝度に悪影響を与えることなく、かつ有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制できるハードコートフィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、ハードコートフィルムに対する耐光性試験後も上記の性能を維持できるハードコートフィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、薄膜化を可能とするハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「○○~△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
【0017】
上記第1の発明にあるとおり、本発明のハードコートフィルムは、透明基材の少なくとも片面に、重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層され、波長365nmの光線透過率が1%未満であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とするものである。
以下、本発明のハードコートフィルムの構成を詳しく説明する。
【0018】
[透明基材]
まず、上記ハードコートフィルムの透明基材について説明する。
本発明のハードコートフィルムの被塗工基材としては、通常透明フィルム基材が用いられる。
本発明において使用される透明フィルム基材は、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレングリシジルメタクリレート、芳香族式ポリイミド、脂環式ポリイミド、ポリアミドイミド及びこれらの混合物からなる樹脂フィルムを例示することができる。
ここで、「透明性」とは、JIS-K7136に準拠して測定した、全光線透過率が80%以上であることをいう。
【0019】
本発明においては、ディスプレイ用光学フィルムにおける透明性、光学特性、汎用性の観点から、これらのフィルム基材のなかでも、特にトリアセチルセルロ-スフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはシクロオレフィンポリマーフィルム等が好適である。
【0020】
本発明において、上記透明基材の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、ディスプレイの薄膜化、軽量化に伴うハードコートフィルムの薄膜化の要請の観点から、50μm以下であることが好ましく、特に好ましくは30μm以下である。他方、機械的強度、ハンドリング性等の観点から、10μm以上であることが好ましい。
【0021】
[ハードコート層]
次に、上記ハードコートフィルムのハードコート層について説明する。
本発明において、上記ハードコート層は、少なくとも紫外線硬化型樹脂及び重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する。
本発明において、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、特にハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また、紫外線の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の表面硬度の調節が可能になるという点で紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
本発明に用いる紫外線硬化型樹脂は、紫外線(UV)を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではないが、塗膜硬度及びハードコート層が3次元的な架橋構造を形成するために1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVにて硬化可能な多官能アクリレートからなるものが好ましい。分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUV硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等を挙げることができる。なお、多官能アクリレートは単独で使用するだけでなく、2種以上の複数を混合し使用してもよい。
【0023】
さらに、上記ハードコート層に用いる紫外線硬化型樹脂は、重量平均分子量が500~3600の範囲内であるモノマーあるいはオリゴマーあるいはポリマーを用いることが好ましく、重量平均分子量500~3000の範囲のものがより好ましく、重量平均分子量500~2400がさらに好ましい。重量平均分子量が500未満であると、UV照射により硬化した際の硬化収縮が大きく、ハードコートフィルムがハードコート層面側に反りかえる現象(カール)が大きくなり、その後の加工工程を経るに不具合が生じ、加工適性が悪い。また、重量平均分子量が3600を超えると、ハードコート層の柔軟性が高まるが、硬度が不足するため適さない。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0024】
また、上記ハードコート層に用いる紫外線硬化型樹脂は、重量平均分子量が1500未満である場合は、1分子中の官能基数は3個以上10個未満であることが望ましい。また、上記紫外線硬化型樹脂の重量平均分子量が1500以上である場合は、1分子中の官能基数は3個以上20個以下であることが望ましい。上記範囲内であれば、カールが抑制でき、適切な加工適性を維持できる。
【0025】
また、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、上述の紫外線硬化型樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、スチレン-アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、珪素樹脂等の熱硬化性樹脂をハードコート層の硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で配合してもよい。
【0026】
本発明においては、上記ハードコート層は、上記紫外線硬化型樹脂に加えて、重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(以下、本明細書において「本発明の紫外線吸収剤」と称することもある。)を含有する。
【0027】
本発明の紫外線吸収剤は、セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体を、例えばアクリレート樹脂成分等と反応させてポリマー化してなるものである。
【0028】
ここで、セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体とは、たとえば下記一般式(I)で表されるものであり、ベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にセサモールを結合させた化合物からの誘導体である。
【0029】
【化1】
【0030】
上記式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。また、Rは炭素原子数1~6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基、又は、炭素原子数1~6の直鎖状または枝分かれ鎖状のオキシアルキレン基を表す。
上記一般式(I)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体の具体的な例としては、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルアクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルメタクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルアクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルメタクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルアクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルアクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル-2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(メタクリロイルオキシ)ブチル-2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(アクリロイルオキシ)ブチル-2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート等が挙げられる。
【0031】
本発明の紫外線吸収剤は、上記のセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体を、他の単量体成分(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート等のアクリレート樹脂成分等)と重合反応させることにより得ることができる。重合方法は従来公知の溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等を適用することができる。
【0032】
また、本発明においては、重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用することが重要である。
これに対し、重量平均分子量が15000未満のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用した場合、後述の比較例にも示されるように、405nmの光線透過率を十分に低下させることができないため、有機ELディスプレイの表示が劣化する問題がある。また、重量平均分子量が35000超過のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用した場合、405nmの波長を耐光試験後もその性能を維持することができず、有機ELディスプレイの表示が劣化する問題及び、発光素子の耐久性(耐光性)向上を達成できない問題がある。
なお、上記セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0033】
上記の本発明の紫外線吸収剤は、1種類のものを単独で用いてもよいし、2種類以上のものを併用してもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲においては、例えば、他のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等を併用してもよい。
【0034】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層が上述の本発明の紫外線吸収剤を含有することにより、分光特性(365nm、405nmおよび436nmの各波長における光線透過率)が本発明の範囲を満たすことが可能となる。
【0035】
後述するように、本発明においては、本発明の紫外線吸収剤を含有するハードコート層の厚みが2.0μmを超え6.0μm未満であることが好適であり、特に3.0μm~5.0μmの範囲であることが好適である。ハードコート層の厚みが2.0μmを超え6.0μm未満であるとしたときに、本発明の紫外線吸収剤の配合量は、ハードコート層の紫外線硬化型樹脂100質量部に対して20質量部~60質量部の範囲内であることが好ましい。本発明の紫外線吸収剤の配合量が20質量部未満であると、本発明のハードコート層の厚みが2.0μmを超え6.0μm未満の範囲内で本発明の分光特性を十分に満たすことができない。一方、本発明の紫外線吸収剤の配合量が60質量部を超えると、ハードコート層に占める紫外線硬化型樹脂比率が下がるため、フィルム基材へのハードコート層の密着性が低下すること、あるいはハードコート層の硬度が低下する場合があるため適さない。
また、ハードコート層の厚みを3.0μm~5.0μmの範囲としたときに、本発明の紫外線吸収剤の配合量は、ハードコート層の紫外線硬化型樹脂100質量部に対して30質量部~50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0036】
また、上記ハードコート層に無機酸化物微粒子を含有させ、表面硬度(耐擦傷性)の更なる向上を図ることも可能である。この場合、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5~50nmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは平均粒子径10~40nmの範囲である。平均粒子径が5nm未満であると、十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が50nmを超えると、ハードコート層の光沢、及び透明性が低下し易く、また、可撓性も低下するおそれがある。
【0037】
本発明において、上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミニウムを主成分とするアルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られることから特に好適である。
【0038】
本発明において、無機酸化物微粒子の含有量は、ハードコート層の紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.1~10.0質量部であることが好ましい。無機酸化物微粒子の含有量が0.1質量部未満であると、表面硬度(耐擦傷性)の向上効果が得られ難い。一方、含有量が10.0質量部を超えると、ヘイズが上昇するため好ましくない。
【0039】
上記ハードコート層を形成するためのハードコート用塗料には、光重合開始剤を含むことができる。そのような光重合開始剤としては、市販のIRGACURE 651やIRGACURE 184(いずれも商品名:BASF社製)などのアセトフェノン類、また、IRGACURE 500(商品名:BASF社製)などのベンゾフェノン類を使用できる。
【0040】
上記ハードコート層には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の使用が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、ハードコート層の樹脂の固形分100質量部に対し0.03~3.0質量部の範囲での配合が可能である。また、タッチパネル用途等において、タッチパネル端末のカバーガラス(CG)、透明導電部材(TSP)、液晶モジュール(LCM)等との接着を目的に光学透明粘着剤OCRを用いた対接着性が要求される場合には、表面自由エネルギーの高い(凡そ30mN/m以上)アクリル系レベリング剤やフッ素系のレベリング剤の使用が好ましい。
【0041】
上記ハードコート層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0042】
上記ハードコート層は、上述の紫外線硬化型樹脂の他に、上述の本発明の紫外線吸収剤や、光重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散したハードコート用塗料を、上記透明基材上に塗工、乾燥した後、UVを照射して硬化させることにより形成される。溶媒としては、配合される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、紫外線吸収剤、色素、光重合開始剤、その他添加剤等)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n-ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶媒を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0043】
上記ハードコート層を形成するハードコート用塗料の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50~120℃程度の温度で乾燥する。
【0044】
上記ハードコート層塗膜形成後の紫外線(UV)の照射量は、ハードコート層に十分なハード性を持たせるに必要な照射量であればよく、紫外線硬化型樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0045】
上記ハードコート層の厚さ(塗膜厚さ)は、本発明においては、例えば、2.0μmを超え6.0μm未満であることが好ましく、更に好ましくは3.0μm~5.0μmの範囲である。
ハードコート層の厚さが2.0μm未満では、必要なハード性(例えば耐擦傷性)が低下するため好ましくない。また、ハードコート層の厚さが6.0μm以上である場合は、カールが強く発生しやすく製造工程などで取扱い性が低下するため、またハードコートフィルムの薄膜化の観点から好ましくない。
【0046】
なお、本発明のハードコートフィルムは、透明基材の少なくとも片面に、上述のハードコート層が積層されてなるが、たとえば透明基材としてシクロオレフィンポリマーフィルムを用いる場合、ハードコート層の密着性を向上させるため、透明基材とハードコート層との間に易接着層を設けることも好適である。
【0047】
上記易接着層に使用される樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。たとえば、上記透明基材フィルム(シクロオレフィンフィルム)との密着性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、メチルメタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、繊維素系樹脂、またはこれらの樹脂の2種類以上の混合物などを好ましく用いることができる。
【0048】
上記易接着層の塗膜厚みは、特に制約されるわけではないが、基材フィルム及びハードコート層との密着性、或いはハードコート層の鉛筆硬度などに悪影響を及ぼさない範囲の0.1μm~5.0μmの範囲が好適である。
【0049】
上述したように、本発明のハードコートフィルムは、透明基材の少なくとも片面に、重量平均分子量が15000~35000の範囲内であるセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層されてなる。
【0050】
そして、本発明のハードコートフィルムは、さらに下記の分光特性を満たすことを特徴とするものである。
すなわち、本発明のハードコートフィルムは、波長365nmの光線透過率が1%未満であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とする。
なお、上記の各波長における光線透過率の具体的な測定方法については、後述の実施例の記載において説明する。
【0051】
本発明のハードコートフィルムは、本発明の紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を設け、かつ上述の分光特性(365nm、405nmおよび436nmの各波長における光線透過率)が本発明の範囲を満たすことにより、有機ELディスプレイに用いられるいくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを与える365nm、405nmに代表される波長における光線透過率を10%未満に抑制でき、いくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを抑制できる。さらに、近年の有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)向上を目的に、発光素子の保護のために405nmの光線透過率を十分に低下させることが求められているが、本発明のハードコートフィルムは、405nmの波長における光線透過率を10%未満に抑制でき、近年の有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができる。加えて、可視光領域の436nmの波長は、有機ELディスプレイの表示の輝度を確保するために光線透過率をできるだけ大きくすることが求められるが、本発明のハードコートフィルムは、可視光領域の436nmの波長は光線透過率を81%以上得ることが可能となり、有機ELディスプレイの表示の輝度に悪影響を及ぼさない。
【0052】
また、本発明のハードコートフィルムは、さらに、ハードコートフィルムに対し、JIS-K-5600-7-7に準拠した促進耐光性試験を100時間行った後の、波長365nmの光線透過率が1%未満であり、かつ波長405nmの光線透過率が10%未満であり、かつ波長436nmの光線透過率が81%以上であることを特徴とするものである。
なお、上記の耐光性試験のさらに詳細は、後述の実施例の記載において説明する。
【0053】
上述した各波長の光線透過率は、その目的から、いくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを与える365nm、405nmの波長、および近年の有機ELディスプレイの発光素子を保護に寄与する405nmの波長において耐光性試験後もその性能を維持することが必要となる。本発明のハードコートフィルムは、本発明の紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を設けることで、耐光性試験後も、365nmの波長、および405nmの波長における光線透過率の上昇を抑えることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制することができる。なお、可視光領域の436nmの波長についても、本発明のハードコートフィルムは、耐光性試験後も光線透過率の上昇を抑えることができ、有機ELディスプレイの表示の輝度を維持することができる。
【0054】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、有機ELディスプレイ表面の保護フィルムとして使用する場合、有機ELディスプレイの表示の色や輝度に悪影響を与えることなく、かつ有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制できるハードコートフィルムを得ることができる。また、本発明によれば、ハードコートフィルムに対する耐光性試験後も上記の性能を維持できるハードコートフィルムを得ることができる。また、本発明によれば、薄膜化を可能とするハードコートフィルムを得ることができる。
【実施例0055】
次に、実施例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、下記の記載中、「部」は別途記載がない限り質量部を、「%」は別途記載がない限り質量%を表す。
【0056】
(実施例1)
[ハードコート層形成用塗工液の調製]
本発明のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(HFC-UVA-13(商品名);ハリマ化成(株)製。セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量;22000)94部を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)5部、表面改質剤(フタージェント681;(株)ネオス製)を1部配合し、トルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=15/85(重量部)にて希釈して最終固形分濃度30%のハードコート層形成用塗工液(以下、「ハードコート用塗料」とも呼ぶ。)を調製した。
【0057】
[ハードコートフィルムの作製]
トリアセチルセルロースフィルムとして厚さ25μmのTJ25UL(富士フイルム(株)製)の片面に、上記のハードコート用塗料を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み3.0μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量100mJ/cmの紫外線照射により硬化させ、本実施例1のハードコートフィルムを作製した。
【0058】
(実施例2)
アクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料として、本発明のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(HFC-UVA-13(商品名);ハリマ化成(株)製。セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量;27000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして調製したハードコート用塗料を適用し、実施例1と同様にして、実施例2のハードコートフィルムを作製した。
【0059】
(実施例3)
アクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料として、本発明のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(HFC-UVA-13(商品名);ハリマ化成(株)製。セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量;35000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして調製したハードコート用塗料を適用し、実施例1と同様にして、実施例3のハードコートフィルムを作製した。
【0060】
(実施例4)
アクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料として、本発明のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(HFC-UVA-13(商品名);ハリマ化成(株)製。セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量;15000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして調製したハードコート用塗料を適用し、実施例1と同様にして、実施例4のハードコートフィルムを作製した。
【0061】
(実施例5)
実施例1のハードコート用塗料を用い、基材をポリエチレンテレフタレートフィルムとして厚さ50μmのA4360(東洋紡(株)製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のハードコートフィルムを作製した。
【0062】
(実施例6)
実施例1のハードコート用塗料を用い、基材をシクロオレフィンポリマーフィルムとして厚さ13μmのゼオノアフィルムZF12(日本ゼオン(株)製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のハードコートフィルムを作製した。
【0063】
(実施例7)
実施例1のハードコート用塗料を用い、基材をシクロオレフィンポリマーフィルムとして厚さ22μmのゼオノアフィルムZD12(日本ゼオン(株)製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7のハードコートフィルムを作製した。
【0064】
(実施例8)
実施例1のハードコート用塗料を用い、基材をシクロオレフィンポリマーフィルムとして厚さ26μmのゼオノアフィルムZD12(日本ゼオン(株)製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8のハードコートフィルムを作製した。
【0065】
(実施例9)
実施例8における塗工層の塗膜厚みを5.0μmに変更したこと以外は、実施例8と同様にして、実施例9のハードコートフィルムを作製した。
【0066】
(比較例1)
[ハードコート用塗料の調製]
セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(HFC-UVA-13(商品名);ハリマ化成(株)製。セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量;13000)94部を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)5部、表面改質剤(フタージェント681;(株)ネオス製)を1部配合し、トルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=15/85(重量部)にて希釈して最終固形分濃度30%のハードコート用塗料を調製した。
[ハードコートフィルムの作製]
上記組成からなるハードコート用塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のハードコートフィルムを作製した。
【0067】
(比較例2)
比較例1における塗工層の塗膜厚みを5.0μmに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2のハードコートフィルムを作製した。
【0068】
(比較例3)
アクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料として、セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(HFC-UVA-13(商品名);ハリマ化成(株)製。セサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の重量平均分子量;37000)を用いたこと以外は比較例1と同様にして調製したハードコート用塗料を適用し、比較例1と同様にして、比較例3のハードコートフィルムを作製した。
【0069】
(比較例4)
比較例3における塗工層の塗膜厚みを5.0μmに変更したこと以外は、比較例3と同様にして、比較例4のハードコートフィルムを作製した。
【0070】
(比較例5)
[ハードコート用塗料の調製]
アクリレート系紫外線硬化型樹脂(NKエステル A-9550(商品名);新中村化学工業(株)製)84部を主剤とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(アデカスタブ LA-36(商品名);(株)ADEKA製)10部、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)5部、表面改質剤(フタージェント681;(株)ネオス製)を1部配合し、トルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=15/85(重量部)にて希釈して最終固形分濃度30%のハードコート用塗料を調製した。
[ハードコートフィルムの作製]
上記組成からなるハードコート用塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5のハードコートフィルムを作製した。
【0071】
(比較例6)
[ハードコート用塗料の調製]
アクリレート系紫外線硬化型樹脂(NKエステル A-9550(商品名);新中村化学工業(株)製)90部を主剤とし、シアニン色素(NK-9994(商品名);(株)林原製)4部、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)5部、表面改質剤(フタージェント681;(株)ネオス製)を1部配合し、トルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=15/85(重量部)にて希釈して最終固形分濃度30%のハードコート用塗料を調製した。
[ハードコートフィルムの作製]
上記組成からなるハードコート用塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6のハードコートフィルムを作製した。
【0072】
<評価>
以上のようにして作製された実施例及び比較例の各ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
【0073】
<塗膜の厚み>
ハードコート層(HC層)の塗膜の形成厚みは、Thin-Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
【0074】
<各波長における光線透過率>
ハードコートフィルムの各波長(365nm、405nm、436nm)における光線透過率は、日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U-3310を用いて測定した。測定は、波長範囲250~800nm、スキャンスピード600nm/minで測定した。
【0075】
<耐光性試験>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムに対し、Xenon Weather Ometerによる促進耐光性試験(JIS-K-5600-7-7に準拠し、下記条件で実施)を実施した。
光源:キセノンアーク
温度:63℃
相対湿度:50%
放射照度:50W/m
放射時間:100時間
降雨の周期及び時間:設定なし
【0076】
なお、耐光性試験後のハードコートフィルムの各波長における光線透過率は、上記と同様にして測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
上記表1の結果から明らかなように、本発明実施例のハードコートフィルムは、本発明の紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を設け、かつ前述の分光特性(365nm、405nmおよび436nmの各波長における光線透過率)が本発明の範囲を満たすことにより、有機ELディスプレイに用いられるいくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを与える365nm、405nmに代表される波長における光線透過率を10%未満に抑制でき、いくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを抑制できる。さらに、近年の有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)向上を目的に、発光素子の保護のために405nmの光線透過率を十分に低下させることが求められているが、本発明実施例のハードコートフィルムは、405nmの波長における光線透過率を10%未満に抑制でき、近年の有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)を向上させることができる。加えて、可視光領域の436nmの波長は、有機ELディスプレイの表示の輝度を確保するために光線透過率をできるだけ大きくすることが求められるが、本発明実施例のハードコートフィルムは、可視光領域の436nmの波長は光線透過率を81%以上得ることが可能となり、有機ELディスプレイの表示の輝度に悪影響を及ぼさない。
【0079】
さらに、上述した各波長の光線透過率は、その目的から、いくつかのポリマーの劣化や色素の退色や変色等のダメージを与える365nm、405nmの波長、および近年の有機ELディスプレイの発光素子を保護に寄与する405nmの波長において耐光性試験後もその性能を維持することが必要となるが、本発明実施例のハードコートフィルムは、本発明のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を設けることで、耐光性試験後も、365nmの波長、および405nmの波長における光線透過率の上昇を抑えることができ、有機ELディスプレイの表示の劣化を抑制することができる。なお、可視光領域の436nmの波長についても、本発明実施例のハードコートフィルムは、耐光性試験後も光線透過率の上昇を抑えることができ、有機ELディスプレイの表示の輝度を維持することができる。
【0080】
これに対し、重量平均分子量が15000未満のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を設けた比較例1のハードコートフィルムでは、405nmの光線透過率を十分に低下させることができないため、有機ELディスプレイの表示が劣化する問題がある。さらに、比較例2のハードコートフィルムでは、比較例1のハードコート層の膜厚を調整(厚膜化)することで405nmの光線透過率を低下させることができるものの、405nmの波長において耐光性試験後もその性能を維持することができず、有機ELディスプレイの表示が劣化する問題及び、発光素子の耐久性(耐光性)向上を達成できない問題がある。なお、ハードコート層の膜厚をさらに厚膜化(例えば6.0μm以上)し、405nmの波長において耐光性試験後もその性能を維持する方法は考えられるが、ハードコート層の厚膜化は、ハードコートフィルムのカール、ハードコート層のクラック、ハードコートフィルムの薄膜化の技術動向と逆行するため好ましくない。
【0081】
また、重量平均分子量が35000超過のセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を設けた比較例3のハードコートフィルムでは、405nmの波長において耐光性試験後もその性能を維持することができず、有機ELディスプレイの表示が劣化する問題及び、発光素子の耐久性(耐光性)向上を達成できない問題がある。さらに、比較例4のハードコートフィルムでは、比較例3のハードコート層の膜厚を調整(厚膜化)することで405nmの波長については耐光性試験後もその性能を維持することができるものの、436nmの波長については耐光性試験後はその性能を維持することができず、有機ELディスプレイの表示の輝度を十分に確保できないという問題がある。なお、ハードコート層の膜厚をさらに厚膜化(例えば6.0μm以上)し、436nmの波長において耐光性試験後もその性能を維持する方法は考えられるが、ハードコート層の厚膜化は、ハードコートフィルムのカール、ハードコート層のクラック、ハードコートフィルムの薄膜化の技術動向と逆行するため好ましくない。
【0082】
さらに、本発明の紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を用いた比較例5のハードコートフィルムでは、405nmの波長における光線透過率を十分に低下させることができないため、有機ELディスプレイの保護を達成できない問題点がある。また、本発明の紫外線吸収剤を用いていない比較例6のハードコートフィルムでは、初期の各波長における光線透過率は問題ないものの、耐光性試験後の各波長における光線透過率の変化が極めて大きく、有機ELディスプレイの発光素子の耐久性(耐光性)向上を達成できない問題がある。