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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048416
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】オイルジェット装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/08 20060101AFI20240402BHJP
   F01M 1/16 20060101ALI20240402BHJP
   F01M 1/08 20060101ALI20240402BHJP
   F01P 7/14 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F01P3/08 G
F01M1/16 G
F01M1/08 B
F01M1/08 Z
F01P3/08 A
F01P7/14 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154298
(22)【出願日】2022-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】山本 和成
【テーマコード(参考)】
3G313
【Fターム(参考)】
3G313BB32
3G313BC04
3G313BD03
3G313BD32
3G313CA06
3G313CA25
3G313EA02
3G313EA03
3G313FA01
(57)【要約】
【課題】内燃機関を小型化する。
【解決手段】オイルを噴射する噴射口を含む噴射手段と、円筒形状の収容手段であって、収容手段の中心軸に沿って移動可能な状態で噴射手段の少なくとも一部を収容する収容手段と、収容手段内の油圧を変化させることにより噴射手段を中心軸に沿って移動させる制御手段と、を備え、収容手段には、噴射手段が中心軸に沿って移動する際に中心軸を回転軸として回転するように噴射手段を案内するガイド手段が設けられており、噴射手段は、中心軸の方向における第1位置において噴射口を内燃機関のピストンへ向けてオイルを噴射し、中心軸の方向における第1位置と異なる第2位置において噴射口を内燃機関のボアへ向けてオイルを噴射するオイルジェット装置。
【選択図】図2



【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを噴射する噴射口を含む噴射手段と、
円筒形状の収容手段であって、当該収容手段の中心軸に沿って移動可能な状態で前記噴射手段の少なくとも一部を収容する当該収容手段と、
前記収容手段内の油圧を変化させることにより前記噴射手段を前記中心軸に沿って移動させる制御手段と、を備え、
前記収容手段には、前記噴射手段が前記中心軸に沿って移動する際に当該中心軸を回転軸として回転するように前記噴射手段を案内するガイド手段が設けられており、
前記噴射手段は、前記中心軸の方向における第1位置において前記噴射口を内燃機関のピストンへ向けて前記オイルを噴射し、前記中心軸の方向における前記第1位置と異なる第2位置において前記噴射口を前記内燃機関のボアへ向けて前記オイルを噴射する、
オイルジェット装置。
【請求項2】
前記噴射手段は、
前記中心軸に沿って移動可能に前記収容手段に結合された結合部と、
前記中心軸の方向と異なる方向に延びており先端に前記噴射口が形成された噴射管と、
を有する、
請求項1に記載のオイルジェット装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記内燃機関の気筒内へ燃料を噴射するインジェクタが前記気筒内へ噴射させる燃料が所定量以上である場合に、前記噴射手段の位置が前記第1位置になるように前記収容手段内の油圧を第1油圧値にし、前記インジェクタが前記気筒内へ噴射させる燃料が前記所定量未満である場合に、前記噴射手段の位置が前記第2位置になるように前記収容手段内の油圧を第2油圧値にする、
請求項1又は2に記載のオイルジェット装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記内燃機関のエンジン出力が基準値以上である場合に、前記噴射手段の位置が前記第1位置になるように前記収容手段内の油圧を第1油圧値にし、前記エンジン出力が前記基準値未満である場合に、前記噴射手段の位置が前記第2位置になるように前記収容手段内の油圧を第2油圧値にする、
請求項1又は2に記載のオイルジェット装置。
【請求項5】
前記オイルの油圧を変更可能な可変オイルポンプを備え、
前記制御手段は、前記オイルの油圧を前記可変オイルポンプにより変化させる、
請求項1又は2に記載のオイルジェット装置。
【請求項6】
その長手方向が前記収容手段の長手方向と一致しており、その一端が前記収容手段に固定されており、その他端が前記噴射手段に結合されている付勢手段であって、前記第1位置から前記第2位置に向けて前記噴射手段を押す付勢力を発生する前記付勢手段をさらに備え、
前記制御手段が前記オイルの油圧を変化させることにより、前記付勢手段の付勢力が前記第1位置から前記第2位置まで前記噴射手段を移動させる、
請求項1又は2に記載のオイルジェット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンへオイルを供給するオイルジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのピストンに向けてオイルを噴射する技術が知られている。特許文献1には、ピストンにオイルを供給するピストン用オイルジェットと、シリンダボアにオイルを供給するシリンダボア用オイルジェットとをそれぞれ設け、ピストン及びシリンダボアの少なくとも一方にオイルを供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-138307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された潤滑装置では、オイルジェットを噴射する状態と、オイルジェットを噴射しない状態とを切り替えるための機構がオイルジェットごとに必要となる。このため、特許文献1に記載された潤滑装置では、装置が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、内燃機関を小型化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のオイルジェット装置は、オイルを噴射する噴射口を含む噴射手段と、円筒形状の収容手段であって、当該収容手段の中心軸に沿って移動可能な状態で前記噴射手段の少なくとも一部を収容する当該収容手段と、前記収容手段内の油圧を変化させることにより前記噴射手段を前記中心軸に沿って移動させる制御手段と、を備え、前記収容手段には、前記噴射手段が前記中心軸に沿って移動する際に当該中心軸を回転軸として回転するように前記噴射手段を案内するガイド手段が設けられており、前記噴射手段は、前記中心軸の方向における第1位置において前記噴射口を内燃機関のピストンへ向けて前記オイルを噴射し、前記中心軸の方向における前記第1位置と異なる第2位置において前記噴射口を前記内燃機関のボアへ向けて前記オイルを噴射する。
【0007】
前記噴射手段は、前記中心軸に沿って移動可能に前記収容手段に結合された結合部と、前記中心軸の方向と異なる方向に延びており先端に前記噴射口が形成された噴射管と、を有してもよい。
【0008】
前記制御手段は、前記内燃機関の気筒内へ燃料を噴射するインジェクタが前記気筒内へ噴射させる燃料が所定量以上である場合に、前記噴射手段の位置が前記第1位置になるように前記収容手段内の油圧を第1油圧値にし、前記インジェクタが前記気筒内へ噴射させる燃料が前記所定量未満である場合に、前記噴射手段の位置が前記第2位置になるように前記収容手段内の油圧を第2油圧値にしてもよい。
【0009】
前記制御手段は、前記内燃機関のエンジン出力が基準値以上である場合に、前記噴射手段の位置が前記第1位置になるように前記収容手段内の油圧を第1油圧値にし、前記エンジン出力が前記基準値未満である場合に、前記噴射手段の位置が前記第2位置になるように前記収容手段内の油圧を第2油圧値にしてもよい。
【0010】
前記オイルジェット装置は、前記オイルの油圧を変更可能な可変オイルポンプを備え、前記制御手段は、前記オイルの油圧を前記可変オイルポンプにより変化させてもよい。前記オイルジェット装置は、その長手方向が前記収容手段の長手方向と一致しており、その一端が前記収容手段に固定されており、その他端が前記噴射手段に結合されている付勢手段であって、前記第1位置から前記第2位置に向けて前記噴射手段を押す付勢力を発生する前記付勢手段をさらに備え、前記制御手段が前記オイルの油圧を変化させることにより、前記付勢手段の付勢力が前記第1位置から前記第2位置まで前記噴射手段を移動させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内燃機関を小型化するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の車両の概要を示す図である。
図2】オイルジェット装置の要部の構成を示す模式図である。
図3】オイルジェット装置の噴射部の要部の構成を示す模式図である。
図4】車両の構成を示す模式図である。
図5】制御部によるオイルの噴射の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の車両100の概要を示す図である。車両100は、内燃機関1及び制御装置2を備える。内燃機関1は、例えば、ディーゼルエンジンである。内燃機関1は、インジェクタ11、ピストン12、クランクシャフト13及びオイルジェット装置14を備える。制御装置2は、記憶部21及び制御部22(制御手段に相当)を備える。
【0014】
インジェクタ11は、内燃機関1の気筒内へ燃料を噴射する。ピストン12は、クランクシャフト13に取り付けられている。インジェクタ11が内燃機関1の気筒内へ燃料を噴射したときに内燃機関1の気筒内において発火により膨張した燃料は、ピストン12を押し下げることにより、クランクシャフト13を回転させる。
【0015】
オイルジェット装置14は、ピストン12又はシリンダ内壁であるボア16へオイルを噴射する。オイルジェット装置14は、ピストン12に設けられたジェット空洞15へ向けてオイルを噴射する。このとき、噴射されたオイルがジェット空洞15を通過することにより、ピストン12が冷却される。オイルジェット装置14は、制御装置2において設定されたオイルジェット装置14内の油圧値に応じて、ピストン12のジェット空洞へオイルを噴射する状態と、ボア16へオイルを噴射する状態とを切り替える。
【0016】
制御装置2は、例えば、例えば、コンピュータにより車両100の各部を電子的に制御するECU(Electronic Control Unit)である。記憶部21は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を有する。記憶部21は、制御部22を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。
【0017】
制御部22は、記憶部21に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を実行する。制御部22は、ピストン12又はボア16へオイルジェット装置14によりオイルを噴射する。詳細については後述するが、制御部22は、オイルジェット装置14内の油圧値として第1油圧値を設定することにより、ピストン12へ向けてオイルジェット装置14にオイルを噴射させる。制御部22は、第1油圧値より低い第2油圧値をオイルジェット装置14内の油圧値として設定することにより、ボア16へ向けてオイルジェット装置14にオイルを噴射させる。
【0018】
このようにして、制御部22は、ピストン12へオイルを噴射していない状態においてもボア16へオイルを噴射するので、ピストン12とシリンダとの間の潤滑性が低下することを抑制することができる。このため、制御部22は、内燃機関1の燃費をより良好にすることができる。また、制御部22は、オイルジェット装置14内の油圧値の設定により、ピストン12の内部へオイルを噴射する状態と、ボア16へオイルを噴射する状態とを、切り替えることが可能である。したがって、内燃機関1は、ピストン12へオイルを噴射するか否かを切り替える機構と、ボア16へオイルを噴射するか否かを切り替える機構とをそれぞれ個別に設ける必要がないので、内燃機関1が大型化することを抑制することができる。
【0019】
[オイルの噴射方向の切替え機構]
図2及び図3は、車両100の要部の構成を示す。図2(a)は、ピストン12へオイルを噴射する際のオイルジェット装置14の状態を示す。図2(b)は、ボア16へオイルを噴射する際のオイルジェット装置14の状態を示す。
【0020】
オイルジェット装置14は、噴射部41(噴射手段に相当)、収容部42(収容手段に相当)及びスプリングコイル43(付勢手段に相当)を備える。なお、図2において、収容部42に対してスプリングコイル43が設けられている方向を左方向、収容部42に対して噴射部41が設けられている方向を右方向であるとする。
【0021】
噴射部41は、ピストン12又はボア16へオイルを噴射口413から噴射する。噴射部41は、噴射管411、結合部412、噴射口413、ピン414、オイル漏れ防止リング415及びオイル漏れ防止リング416を備える。噴射管411は、円筒形状の収容部42の中心軸の方向とは異なる方向に延びる。噴射部41の噴射管411の先端には、噴射口413が形成されている。
【0022】
結合部412は、噴射管411と収容部42とを結合するための部品である。結合部412は、円柱形状を有する。結合部412は、少なくともその一部が収容部42に収容されている。結合部412は、収容部42の中心軸に沿って移動可能である。図2の例では、結合部412は、スプリングコイル43等を介して収容部42に結合されている。結合部412は、収容部42に直接結合されていてもよい。
【0023】
結合部412には、可変オイルポンプ3が吐出したオイルが流入する開口が形成されている。また、結合部412には、流入したオイルを噴射部41まで送るための通路が形成されている。可変オイルポンプ3が吐出したオイルは、当該通路を介して噴射部41から噴射される。
【0024】
ピン414は、結合部412から突出した凸部である。ピン414は、収容部42の内側にらせん状に形成されたガイド溝(ガイド手段に相当)421にはまっている。ピン414は、噴射部41が収容部42の中心軸に沿って移動する際に、らせん状のガイド溝421に沿って移動する。ピン414がガイド溝421に沿って移動することにより、噴射部41が収容部42の中心軸を回転軸として回転する。
【0025】
オイル漏れ防止リング415及び416は、オイルジェット装置14において噴射口413以外の箇所からオイルが漏れることを抑制するためのものである。図2中には、オイル漏れ防止リング415及び416の断面を示す。
【0026】
収容部42は、可変オイルポンプ3が吐出するオイルの圧力により収容部42の中心軸に沿って移動可能な状態で噴射部41の少なくとも一部を収容する。収容部42は、円筒形状を有する。収容部42の内側には、らせん状のガイド溝421が形成されている。ガイド溝421は、噴射部41が収容部42の中心軸に沿って移動する際にこの中心軸を回転軸として噴射部41が回転するように噴射部41のピン414を案内する。収容部42の内側には、ガイド溝421の代わりに、噴射部41が回転するように噴射部41を案内するためのレール等が設けられてもよい。
【0027】
スプリングコイル43は、長手方向が収容部の長手方向と一致しており、一端が収容部42に固定されており、他端が結合部412に結合されている。スプリングコイル43は、噴射部41を押す付勢力を発生する。
【0028】
可変オイルポンプ3は、収容部42内へオイルを供給する。可変オイルポンプ3は、収容部42内へ供給するオイルの油圧を変更可能である。図2の例では、可変オイルポンプ3は、制御部22が設定した油圧で収容部42内へオイルを供給する。図2(a)及び図2(b)中の太矢印は、オイルの流れを示す。図2(a)及び図2(b)に示すように、収容部42内に送り込まれたオイルは、結合部412、噴射管411を順に経由して、噴射口413からピストン12又はボア16へ向けて噴射される。
【0029】
制御部22は、収容部42内のオイルの油圧を変化させることにより噴射部41を収容部42の中心軸に沿って移動させる。例えば、制御部22は、オイルの油圧を可変オイルポンプ3により変化させる。一例として、制御部22は、可変オイルポンプ3が後述するオイルパン4からオイルを吸引して収容部42にオイルを吐出する量を変更するように可変オイルポンプ3を制御することにより、オイルの油圧を制御する。
【0030】
図2の例では、制御部22が設定したオイルの油圧に応じて、収容部42の中心軸に沿って噴射部41が移動する。収容部42内の油圧が高い場合には、結合部412がスプリングコイル43を押すことで、噴射部41が図2中の左側に移動する。収容部42内の油圧が低い場合には、スプリングコイル43が結合部412を押し付ける付勢力により、噴射部41が図2中の右側に移動する。
【0031】
制御部22が収容部42内の油圧を第1油圧値に設定した場合に、スプリングコイル43が噴射部41を図2(a)中の右方向へ押し付ける付勢力と、オイルの油圧が噴射部41を図2(a)中の左方向へ押し付ける力とが、噴射部41が第1位置にある状態において等しくなる。図2(a)は、噴射部41が第1位置にある状態を示す。図3(a)は、噴射部41が第1位置にあるときの噴射管411及び噴射口413の様子を示す。噴射部41は、収容部42の中心軸の方向における第1位置にある状態では、内燃機関1のピストン12のジェット空洞15へ向けてオイルを噴射する方向に噴射口413が向いている。
【0032】
制御部22は、噴射口413をボア16に向けて噴射する場合に、収容部42内のオイルの油圧を第1油圧値から第2油圧値に変化させる。第2油圧値は、第1油圧値に比べて低いので、スプリングコイル43の付勢力が噴射部41を図2中の右方向へ押し付ける力は、収容部42内のオイルの油圧が噴射部41を図2中の左方向へ押し付ける力に比べて大きくなる。このため、噴射部41は、図2(a)に示した第1位置から図2(b)に示す第2位置までスプリングコイル43の付勢力により移動する。第2位置は、収容部42の中心軸の方向において第1位置と異なる位置である。
【0033】
図2(b)は、噴射部41が第2位置にある状態を示す。図2(b)の右向きの矢印で示すように、噴射部41は、図2(b)の状態において図2(a)に比べて右側へ移動している。噴射部41が第1位置から第2位置に移動する間、噴射部41のピン414がらせん状のガイド溝421内を移動するため、収容部42の中心軸を回転軸として噴射部41が回転する。
【0034】
図3(b)は、噴射部41が第2位置にあるときの噴射管411及び噴射口413の様子を示す。図3(b)に示すように、噴射部41が第1位置から第2位置に移動することにより、図3(a)の状態から噴射管411が左回りに回転する。噴射管411は収容部42の中心軸の方向とは異なる方向に延びているため、噴射管411がこの中心軸を回転軸として回転することにより噴射口413の向きが変化する。したがって、噴射部41は、収容部42の中心軸の方向における第2位置にある状態では、噴射口413の方向は、ピストン12のジェット空洞15に向かわない。噴射部41が第2位置にある状態では、内燃機関1のボア16へ向けてオイルが噴射される。
【0035】
制御部22は、エンジン負荷に応じて、ピストン12へ向けてオイルを噴射する状態と、ボア16へ向けてオイルを噴射する状態とを切り替える。一例としては、制御部22は、インジェクタ11(図1参照)が内燃機関1の気筒内へ噴射させる燃料が所定量以上である場合に、噴射部41の位置が第1位置になるように収容部42内の油圧を第1油圧値にする。所定量は、例えば、オイルジェット装置14によるピストン12へのオイルの供給が停止した状態でピストン12に損傷又は溶融が発生する可能性がある燃料の噴射量の最小値未満の値である。制御部22は、インジェクタ11が内燃機関1の気筒内へ噴射させる燃料が所定量未満である場合に、噴射部41の位置が第2位置になるように収容部42内の油圧を第2油圧値にする。
【0036】
このようにして、制御部22は、インジェクタ11が内燃機関1の気筒内へ噴射させる燃料が所定量未満である場合に、ピストン12へ燃料を噴射しないことにより、収容部42内のオイルの油圧を低減させることができる。このため、制御部22は、オイルの油圧を発生させるために内燃機関1の駆動力を利用する割合を少なくすることができるので、車両100の燃費をより良好にすることができる。
【0037】
制御部22は、エンジン出力が基準値以上である場合に、噴射部41の位置が第1位置になるように収容部42内の油圧を第1油圧値にしてもよい。基準値は、オイルジェット装置14によるピストン12へのオイルの供給が停止した状態でピストン12に損傷又は溶融が発生する可能性があるエンジン出力の最小値未満の値である。制御部22は、エンジン出力が基準値未満である場合に、噴射部41の位置が第2位置になるように収容部42内の油圧を第2油圧値にしてもよい。このようにして、制御部22は、エンジン出力が基準値未満である場合に、ピストン12へ燃料を噴射しないことにより、収容部42内のオイルの油圧を低減させることができる。したがって、制御部22は、オイルの油圧を発生させるために内燃機関1の駆動力を利用する割合を少なくすることができるので、車両100の燃費をより良好にすることができる。
【0038】
[車両100の構成]
図4は、車両100の構成を示す。車両100は、可変オイルポンプ3、オイルパン4、オイルクーラ5、ウォーターポンプ6、シリンダブロック7、ターボチャージャ8、ラジエータ9及びオイルジェット装置14を備える。オイルクーラ5は、オイルサーモ51、熱交換器52を備える。図4中のハッチングを付した太線は、オイルが循環する経路を示す。オイルは、オイルパン4から可変オイルポンプ3によりくみ出され、オイルクーラ5を経由してオイルジェット装置14に供給される。図4中の太い矢印は、冷却水が循環する経路を示す。冷却水は、ウォーターポンプ6からシリンダブロック7、ターボチャージャ8、ラジエータ9を順に経由してウォーターポンプ6に戻る。一部の冷却水は、シリンダブロック7からターボチャージャ8を経由することなくラジエータ9へ流れる。
【0039】
オイルパン4は、オイルを貯留する。オイルパン4は、例えば金属製の容器である。オイルクーラ5は、オイルを冷却する。オイルサーモ51は、オイルの温度に応じて弁が開閉する。オイルサーモ51は、所定値を超える温度のオイルが熱交換器52を流れるようにオイルが循環する経路を切り替える。所定値は、例えば、オイルジェット装置14によるピストン12の冷却に適したオイルの温度の上限値である。一方、オイルサーモ51は、所定値以下の温度のオイルが熱交換器52を流れずにオイルジェット装置14へ供給されるようにオイルが循環する経路を切り替える。熱交換器52は、冷却水とオイルとを熱交換させる。
【0040】
ウォーターポンプ6は、冷却水を循環させる。ウォーターポンプ6は、例えば、クランクプーリ(不図示)に取り付けられたベルトにより駆動される。シリンダブロック7は、複数のシリンダと、クランクシャフトを収容するクランクケースとを含む。ターボチャージャ8は、内燃機関1に送り込まれる空気の密度を高くする過給機である。ラジエータ9は、冷却水の熱を空気中に逃がすことにより、冷却水を冷却する。
【0041】
[オイルジェット装置14によるオイルの噴射の処理手順]
図5は、制御部22によるオイルの噴射の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、内燃機関1の始動時に開始する。まず、制御部22は、エンジン出力が基準値以上であるか否かを判定する(S101)。制御部22は、エンジン出力が基準値以上であると判定した場合に(S101のYES)、内燃機関1の気筒内へ噴射する燃料が所定量以上であるか否かを判定する(S102)。制御部22は、内燃機関1の気筒内へ噴射する燃料が所定量以上であると判定した場合に(S102のYES)、収容部42内の油圧を第1油圧値に設定する(S103)。制御部22は、内燃機関1が停止したか否かを判定する(S104)。制御部22は、内燃機関1が停止したと判定した場合に(S104のYES)、処理を終了する。
【0042】
制御部22は、S101の判定においてエンジン出力が基準値未満であると判定した場合に(S101のNO)、収容部42内の油圧を第2油圧値に設定し(S105)、S104の判定に進む。制御部22は、S102の判定において内燃機関1の気筒内へ噴射する燃料が所定量未満であると判定した場合に(S102のNO)、S105の処理に進む。制御部22は、S104の判定において内燃機関1が停止していないと判定した場合に(S104のNO)、S101の判定に戻る。
【0043】
図5のフローチャートでは、制御部22は、エンジン出力が基準値以上であり、且つ、内燃機関1の気筒内へ噴射する燃料が所定量以上であると判定した場合に、収容部42内の油圧を第2油圧値に設定する例について説明したが、本発明は、これに限定されない。制御部22は、エンジン出力が基準値以上である場合、又は、内燃機関1の気筒内へ噴射する燃料が所定量以上である場合の少なくともいずれか一方である場合に、収容部42内の油圧を第2油圧値に設定してもよい。
【0044】
[本開示の内燃機関1による効果]
制御部22は、ピストン12へオイルを噴射していない状態においてもボア16へオイルを噴射するので、ピストン12とシリンダとの間の潤滑性が低下することを抑制することができる。このため、制御部22は、内燃機関1の燃費をより良好にすることができる。内燃機関1は、ピストン12へオイルを噴射するか否かを切り替える機構と、ボア16へオイルを噴射するか否かを切り替える機構とを個別に備える必要がないので、内燃機関1が大型化することを抑制することができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0046】
1 内燃機関
2 制御装置
3 可変オイルポンプ
4 オイルパン
5 オイルクーラ
6 ウォーターポンプ
7 シリンダブロック
8 ターボチャージャ
9 ラジエータ
11 インジェクタ
12 ピストン
13 クランクシャフト
14 オイルジェット装置
15 ジェット空洞
16 ボア
21 記憶部
22 制御部
41 噴射部
42 収容部
51 オイルサーモ
52 熱交換器
100 車両
411 噴射管
412 結合部
413 噴射口
414 ピン
415 防止リング
416 防止リング
421 ガイド溝
43 スプリングコイル
図1
図2
図3
図4
図5