(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048420
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】リレーシステム
(51)【国際特許分類】
H01H 51/10 20060101AFI20240402BHJP
H01H 47/22 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01H51/10 Z
H01H47/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154305
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋也
(72)【発明者】
【氏名】内田 晃
【テーマコード(参考)】
5G057
【Fターム(参考)】
5G057AA20
5G057BB03
5G057KK32
(57)【要約】
【課題】接点の寿命の低下を抑制しつつ、接点に氷結が生じた場合に速やかな対処が可能なリレーシステムを提供する。
【解決手段】リレーシステム(100)は、接点と接点の開閉状態を切り替える駆動機構とを有するリレー装置(10)と、リレー装置(10)を制御するコントローラ(20)とを備える。そして、コントローラ(20)は、接点に氷結が生じた場合に、駆動機構に接点の開閉状態が切り替わらない方向の駆動力を発生させる第1通電を開始する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点と前記接点の開閉状態を切り替える駆動機構とを有するリレー装置と、
前記リレー装置を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記接点に氷結が生じた場合に、前記駆動機構に前記接点の開閉状態が切り替わらない方向の駆動力を発生させる第1通電を開始することを特徴とするリレーシステム。
【請求項2】
前記リレー装置は、
前記接点及び前記駆動機構を収容する筐体と、
前記筐体内の温度を検出する第1温度センサと、
を更に有し、
前記コントローラは、前記第1温度センサの検出温度に基づいて前記第1通電を終了することを特徴とする請求項1記載のリレーシステム。
【請求項3】
前記リレー装置は、
前記接点及び前記駆動機構を収容する筐体と、
前記筐体内の温度を検出する第1温度センサと、
を更に有し、
前記リレーシステムは、
環境温度を検出する第2温度センサを更に備え、
前記コントローラは、
前記第1温度センサの検出温度と前記第2温度センサの検出温度とに基づいて前記接点に氷結が生じたか否かに関する推定を行うことを特徴とする請求項1記載のリレーシステム。
【請求項4】
前記リレー装置は、前記接点を開状態から閉状態へ切り替える駆動力を発生させる第1コイルと、前記接点を閉状態から開状態へ切り替える駆動力を発生させる第2コイルとを有し、
前記接点が開状態にあるとき、前記第1通電は前記第2コイルへの通電であることを特徴とする請求項1記載のリレーシステム。
【請求項5】
前記リレー装置は、前記接点を開状態から閉状態へ切り替える駆動力を発生させる第1コイルと、前記接点を閉状態から開状態へ切り替える駆動力を発生させる第2コイルとを有し、
前記第1通電は、前記第1コイルの通電と前記第2コイルの通電とを並行して行う通電であることを特徴とする請求項1記載のリレーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リレー装置の接点が氷結することを未然に防ぐリレー制御装置が示されている。当該リレー制御装置は、コイルへの通電を停止することでリレー装置を開状態へ切り替えた後、閉状態に切り替わらない程度の電流を継続的にコイルに流すことで、接点に結露及び氷結が生じてしまうことを未然に防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のリレー制御装置では、リレー装置の開閉状態が切り替わらない程度の電流をコイルに流すことで接点を温めるため、一度に大きな熱量を接点に加えることができない。したがって、この方式では、接点に氷結が生じてしまった場合に、解氷により接点を使用可能にするまでに長い時間を要する。また、仮にコイルにリレー装置の開閉状態が切り替わるような大きな電流を流して解氷を行うと、氷結が解けた際に接点の開閉状態が切り替わってしまう。したがって、解氷するタイミングに制約が生じ、また、接点の寿命が低下してしまう。
【0005】
本発明は、接点の寿命の低下を抑制しつつ、接点に氷結が生じた場合に速やかな対処が可能なリレーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリレーシステムは、
接点と前記接点の開閉状態を切り替える駆動機構とを有するリレー装置と、
前記リレー装置を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記接点に氷結が生じた場合に、前記駆動機構に前記接点の開閉状態が切り替わらない方向の駆動力を発生させる第1通電を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1通電の開始によって、接点の開閉状態を切り替えることなく、駆動機構から大きな熱量を発生させることができる。したがって、接点の寿命の低下を抑制しつつ、接点に氷結が生じてしまった場合に速やかに対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るリレー装置を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るリレーシステム及び電源装置を示す図である。
【
図3】コントローラが実行する氷結解除処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態であるリレー装置を示す構成図である。
図1は、リレー装置10を固定鉄心163に沿って切断した縦断面図を示している。
【0010】
本実施形態のリレー装置10は、ラッチリレーである。ラッチリレーは、接点A11、A12を開状態から閉状態へ切り替える際と、閉状態から開状態へ切り替える際との両方において通電が必要なリレーである。加えて、ラッチリレーは、開閉状態が切り替わった後には、通電を切っても開閉状態が保持されるリレーである。
【0011】
リレー装置10は、
図1に示すように、互いに離間した状態と接触した状態とに切り替え可能な一対の接点A11、A12と、開閉対象の電路の一方と他方とが接続される図示略の第1端子及び第2端子と、接点A11と第1端子とを電気的に接続する第1導体11と、接点A12と第2端子とを電気的に接続する第2導体12とを備える。第1導体11の一部に接点A11が固定され、第2導体12の一部に接点A12が固定されている。第2導体12の一部はバネ材165を介して変位可能に支持され、当該変位によって一対の接点A11、A12が離間した状態と接触した状態とに切り替わる。
【0012】
リレー装置10は、さらに、一対の接点A11、A12を近接又は離間させる駆動機構16と、筐体19と、筐体19内の温度を検出する第1温度センサ18とを備える。
【0013】
駆動機構16は、第1コイル161、第2コイル162、固定鉄心163、可動鉄心164、バネ材165、並びに、図示しないラッチ機構を含む。第1コイル161と第2コイル162とは、通電により、固定鉄心163と可動鉄心164との間に可動鉄心164を変位させる駆動力(磁力)を発生させる。第1コイル161は、通電により、接点A11、A12を近接させる方向の駆動力を発生させる。第2コイル162は、通電により、接点A11、A12を離間させる方向の駆動力を発生させる。上記の近接させる方向とは、接点A11、A12を開状態から閉状態へ切り替える方向を意味する。上記の離間させる方向とは、接点A11、A12を閉状態から開状態へ切り替える方向を意味する。第1コイル161は、閉側励磁巻線と呼んでもよい。第2コイル162は、開側励磁巻線と呼んでもよい。ラッチ機構は、可動鉄心164を接点A11、A12が接触した位置と離間した位置との2つの位置で保持する。
【0014】
第1コイル161の端子と、第2コイル162の端子とは、筐体19の外側に配置されている。第1コイル161及び第2コイル162には外部端子を介して電流を流すことができる。
【0015】
第1温度センサ18は、検出部が筐体19の内部に配置され、検出温度を示す検出信号を筐体19の外部に出力する。第1温度センサ18は、例えば筐体19に固定されていてもよい。第1温度センサ18が検出する温度は、例えば筐体19の内部の空気の温度である。なお、第1温度センサ18が検出する温度は、接点A11が固定された第1導体11又は接点A12が固定された第2導体の温度であってもよい。
【0016】
筐体19は、一対の接点A11、A12、第1導体11、第2導体12、駆動機構16を内部に収容する。筐体19は、内部を密閉する構成であってもよい。筐体19の外側には、第1導体11の端子(第1端子)、第2導体12の端子(第2端子)、第1コイル161の端子、並びに、第2コイル162の端子が設けられている。
【0017】
上記構成のリレー装置10によれば、一対の接点A11、A12が離間した状態で、第1コイル161に通電が行われると、可動鉄心164及び第2導体12の可動部に、一対の接点A11、A12を近接する方向の駆動力が作用する。そして、可動鉄心164及び第2導体12の可動部が変位し、接点A11、A12が接触することで、リレー装置10が閉状態に切り替わる。このとき、ラッチ機構が、可動鉄心164及び第2導体12の可動部の位置を保持する。その後、第1コイル161の通電が停止されても、リレー装置10は閉状態を維持する。
【0018】
また、一対の接点A11、A12が近接した状態で、第2コイル162に通電が行われると、可動鉄心164及び第2導体12の可動部に、一対の接点A11、A12を離間させる方向の駆動力が作用する。そして、可動鉄心164及び第2導体12の可動部が変位し、接点A11、A12が離間することで、リレー装置10が開状態に切り替わる。このとき、ラッチ機構が、可動鉄心164及び第2導体12の可動部の位置を保持する。その後、第2コイル162の通電が停止されても、リレー装置10は開状態を維持する。
【0019】
(リレーシステム)
図2は、本発明の実施形態に係るリレーシステム及び電源装置を示す図である。本実施形態のリレーシステム100は、リレー装置10と、リレー装置10を制御するコントローラ20と、環境温度を検出する第2温度センサ30とを備える。
【0020】
リレーシステム100は、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、エンジン自動車などの車両200の電源装置220に適用されてもよい。電源装置220は、バッテリ、DC/DCコンバータ、発電機などの電力供給部221と、電力供給部221から電気装置224へ電力を送る電力線222と、電力線222の電路を開閉するリレー装置10とを備える。
【0021】
リレー装置10は、エンジンルームなどの動力源室に配置されていてもよい。寒冷期において動力源室は、動力源の駆動によって高温になる一方、動力源の停止により急激に温度が低下することがあり、また、動力源の長い停止により氷点下まで温度が低下するなど、過酷な温度環境となる。過酷な温度環境に置かれたリレー装置10は、筐体19によって内部が密閉されていても、経年に伴って湿気が内部に浸入することがある。そして、湿気が内部に浸入した場合、リレー装置10が高温になることで、リレー装置10内の水分が気化する。その後、熱容量の大きな電力線222を介してリレー装置10内から熱が引き出され第1導体11及び第2導体12が先に低温になることで、接点A11、A12に結露が発生する恐れが生じる。そして、温度が氷点下まで低下すると接点A11、A12に氷結が生じてしまう。
【0022】
第2温度センサ30は、環境温度として車両200の外気温を検出する構成である。あるいは、第2温度センサ30は、リレー装置10が配置される空間(例えば動力源室)の空気の温度を検出する構成であってもよい。第2温度センサ30は、検出温度を示す検出信号をコントローラ20へ送る。
【0023】
コントローラ20は、ECU(Electronic Control Unit)であり、制御プログラムが格納された記憶部22を有し、制御プログラムに従ってリレー装置10を制御する。コントローラ20は、車両200のコントローラなどの他のECUと通信を行って、他のECUの要求に基づいてリレー装置10の開閉状態を切り替える制御を行ってもよい。また、コントローラ20は、例えば車両200のコントローラなど、他のECUと統合された構成であってもよい。
【0024】
続いて、コントローラ20の機能について説明する。コントローラ20は、リレー装置10の開閉状態の切替要求に基づいて、リレー装置10の開閉状態を切り替える機能を有する。開閉状態の切り替えは、第1コイル161又は第2コイル162に通電により行われる。
【0025】
コントローラ20は、さらに、第1温度センサ18の検出温度と第2温度センサ30の検出温度とに基づいて、接点A11、A12に氷結が生じたか否かに関する推定を行う機能を有する。氷結が生じたか否かに関する推定とは、氷結が生じたか否かの推定、氷結が生じた可能性の有無の推定、当該可能性が或る閾値を超えたか否かの推定などを含む。続いて、第1温度センサ18が筐体19内の空気の温度を検出し、第2温度センサ30が外気温を検出する場合について説明する。第2温度センサ30が検出した外気温は、電力線222を介して接点A11、A12の温度として伝わりやすい。したがって、コントローラ20は、第1温度センサ18の検出温度と第2温度センサ30の検出温度との差から、筐体19内で気化した水分が、接点A11、A12上で凝縮することにより結露が生じる可能性を推定できる。当該推定は、予め、上記の温度差及び検出温度の値と結露が生じる可能性を示す値とを関連づけたデータテーブルをシミュレーション又は実験等により作成し、コントローラ20に与えておくことで可能である。さらに、コントローラ20は、結露が生じたと推定し、かつ、第1温度センサ18及び第2温度センサ30の検出温度が、結露を氷結させる温度である場合に、接点A11、A12に氷結が生じた可能性があると推定できる。
【0026】
第1温度センサ18及び第2温度センサ30が検出する温度は、上記の例に限られない。次に、第1温度センサ18が筐体19内の第1導体11又は第2導体12の温度を検出し、第2温度センサ30が動力源室の空気の温度を検出する場合について説明する。第2温度センサ30が検出した動力源室の空気の温度は、筐体19内の空気の温度に近い。したがって、コントローラ20は、第1温度センサ18の検出温度と第2温度センサ30の検出温度との差から、筐体19内で気化した水分が、接点A11、A12で凝縮することにより結露が生じる可能性を推定できる。そして、結露が生じる可能性があり、かつ、第1温度センサ18及び第2温度センサ30の検出温度が、結露を氷結させる温度である場合に、コントローラ20は、接点A11、A12に氷結が生じた可能性があると推定できる。
【0027】
その他、コントローラ20は、リレー装置10の開閉状態を切り替える制御を行ったのに、開閉状態が切り替わっていない場合に、接点A11、A12に氷結が生じたと推定してもよい。開閉状態が切り替わったか否かは、電力線222の電圧、電流等の検出値に基づいて判断できる。コントローラ20は、上記の場合に加えて、第1温度センサ18又は第2温度センサ30の検出温度が氷結を生じさせる温度か否かの情報を合わせて、接点A11、A12に氷結が生じたか否かに関する推定を行ってもよい。
【0028】
コントローラ20は、さらに、接点A11、A12に氷結が生じたと推定した場合に、駆動機構16へ第1通電(第1コイル161、第2コイル162への通電)を行って氷結に対処する機能を有する。第1通電とは、駆動機構16に、接点A11、A12の開閉状態が切り替わらない方向の駆動力を発生させる通電である。第1通電により、接点A11、A12の開閉状態を切り替えずに、比較的に大きな電流を流し、駆動機構16に大きな熱(例えばジュール熱)を発生させることができる。したがって、発生した熱によって接点A11、A12を温めて、速やかに氷結を解かすことができる。
【0029】
具体的には、第1通電は、接点A11、A12が開状態にある場合、接点A11、A12を離間させる方向に駆動力を発生させる第2コイル162への通電に相当する。また、接点A11、A12が閉状態にある場合、第1通電は、接点A11、A12を近接させる方向に駆動力を発生させる第1コイル161への通電に相当する。第1通電は、第1コイル161と第2コイル162とを並行して行う通電であってもよい。この場合、駆動機構16には、接点A11、A12を離間させる方向の駆動力と近接させる方向の駆動力との両方が発生する。すなわち、接点A11、A12が開いている場合には、開閉状態が切り替わらない方向(離間させる方向)の駆動力が発生し、接点A11、A12が閉じている場合には、開閉状態が切り替わらない方向(近接させる方向)の駆動力が発生する。したがって、大きな電流を流しても、接点A11、A12の開閉状態は切り替わらない。なお、第1コイル161又は第2コイル162に逆方向の電流を流すことが可能な駆動回路を有する場合には、コントローラ20は、逆方向の通電により開閉状態が切り替わらない方向の駆動力を発生させる第1通電を行ってもよい。
【0030】
<氷結解除処理>
続いて、コントローラ20が実行する氷結解除処理について説明する。
図3は、コントローラ20が実行する氷結解除処理を示すフローチャートである。氷結解除処理は、コントローラ20の動作中に常に実行されてもよいし、氷結が生じえる寒冷期を通してコントローラ20の動作中に実行されてよい。あるいは、リレー装置10の開閉状態の切り替えが生じるタイミングが予測できる場合には、当該タイミングの直前に実行されてもよい。例えば、リレー装置10が、車両200のシステム起動後すぐに閉状態に切り替わるものであれば、コントローラ20は、システム起動時からリレー装置10が閉状態に切り替わるまでの期間に氷結解除処理を実行してもよい。あるいは、リレー装置10が、エンジンのアイドリングストップ後の再始動時に閉状態に切り替わる可能性が高くなる場合には、コントローラ20は、アイドリングストップからエンジンが再始動するまでの期間に氷結解除処理を実行してもよい。
【0031】
氷結解除処理が開始されると、コントローラ20は、第1温度センサ18及び第2温度センサ30の検出温度を取得し(ステップS1)、これらの検出温度に基づいて接点A11、A12に氷結が発生した可能性の有無を推定する(ステップS2)。そして、可能性の有無を判別し(ステップS3)、可能性が無ければ、コントローラ20は、ステップS1~S3の処理を繰り返す。
【0032】
一方、可能性が有ると判別したら、コントローラ20は、リレー装置10の開閉状態を判別し(ステップS4)、開状態であれば、開状態に切り替える方向の駆動力を発生させる第2コイル(開側励磁巻線)162に通電を開始する(ステップS5)。その後、コントローラ20は、第1温度センサ18の検出温度が閾値を超えたか判別し(ステップS6)、NOであればステップS6の判別処理を繰り返す。閾値は、氷結を解かすことのできる値に設定されている。そして、ステップS6の判別結果がYESになったら、コントローラ20は、計時を開始して温度が閾値を超えた時間が設定時間以上となったか判別する(ステップS7)。そして、その結果がNOであればコントローラ20はステップS6に処理を戻す。
【0033】
そして、ステップS6で検出温度が閾値以上と判別し、かつ、ステップS7で温度が閾値以上となった時間が設定時間以上になったと判別したら、コントローラ20は、通電を終了する(ステップS11)。ステップS6、S7の処理により、接点A11、A12に氷結が生じていた場合でも、第2コイル162の熱で氷結が解けたことを高い確度でかつ速やかに判別できる。
【0034】
一方、ステップS4の判別処理で、閉状態であると判別した場合には、コントローラ20は、閉状態に切り替える方向の駆動力を発生させる第1コイル(閉側励磁巻線)161に通電を開始する(ステップS8)。その後、コントローラ20は、第1温度センサ18の検出温度が閾値を超えたか判別し(ステップS9)、NOであればステップS9の判別処理を繰り返す。閾値は、氷結を解かすことのできる値に設定されている。そして、ステップS9の判別結果がYESとなったら、コントローラ20は、計時を開始して温度が閾値を超えた時間が設定時間以上となったか判別する(ステップS10)。そして、その結果がNOであればコントローラ20はステップS9に処理を戻す。
【0035】
そして、ステップS9で検出温度が閾値以上と判別し、かつ、ステップS10で温度が閾値以上となった時間が設定時間以上になったと判別したら、コントローラ20は、通電を終了する(ステップS11)。ステップS9、S10の処理により、接点A11、A12に氷結が生じていた場合でも、第1コイル161の熱で氷結が解けたことを高い確度でかつ速やかに判別することができる。
【0036】
ステップS11で通電を終了したら、コントローラ20は、氷結解除処理を終了する。あるいは、ある期間、継続的に氷結解除処理を実行する場合には、コントローラ20は、当該期間が経過するまで、上記の氷結解除処理を繰り返し実行する。
【0037】
上記の氷結解除処理のプログラムは、コントローラ20の記憶部22など、非一過性の記憶媒体(non transitory computer readable medium)に記憶されている。コントローラ20は、可搬型の非一過性の記録媒体に記憶されたプログラムを読み込み、当該プログラムを実行するように構成されてもよい。上記の可搬型の非一過性の記憶媒体は、上述した氷結解除処理のプログラムを記憶していてもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態のリレーシステム100によれば、コントローラ20が、リレー装置10の接点A11、A12に氷結が生じる可能性があると推定した場合に、駆動機構16への第1通電を開始する。第1通電は、駆動機構16に、接点A11、A12の開閉状態が切り替わらない方向の駆動力を発生させる通電である。よって、比較的に大きな電流で第1通電を実施することができ、第1通電により、駆動機構16から大きな熱量を発生させることができる。したがって、接点A11、A12の氷結を速やかに解かすことができる。さらに、大きな電流を流しても、駆動機構16には開閉状態を切り替えない方向の駆動力が生じるので、接点A11、A12の氷結が解けたときに、接点A11、A12の開閉状態が切り替わらない。よって、氷結を解かすタイミングの制約が生じ難く、さらに、接点A11、A12の寿命の低下を抑制できる。
【0039】
なお、上記実施形態では、コントローラ20が氷結に関する推定を行って、第1通電を実施する構成を示したが、コントローラ20は、氷結に関する推定を行わなくてもよい。例えば、氷結が生じた場合に外部からコントローラ20へ第1通電の要求が送られ、当該要求に基づいてコントローラ20が第1通電を開始する構成が採用されてもよい。
【0040】
本実施形態のリレーシステム100によれば、さらに、筐体19内の温度を検出する第1温度センサ18を有し、コントローラ20は、第1温度センサ18の検出温度に基づいて第1通電を終了する。したがって、第1通電によって、接点A11、A12の氷結を解除する処理の信頼性を向上できる。
【0041】
さらに、本実施形態のリレーシステム100によれば、環境温度を検出する第2温度センサ30を備える。そして、コントローラ20は、第1温度センサ18の検出温度と第2温度センサ30の検出温度とに基づいて接点A11、A12に氷結が生じたか否かに関する推定を行う。氷結の前には結露が発生するのが通常であり、結露は空気の温度と対象物の温度とに温度差があることによって主に生じる。したがって、上記2つの検出温度に基づく推定により、コントローラ20は、接点A11、A12に結露が生じたか否かを高い確度で推定でき、よって接点A11、A12に氷結が生じたか否かを高い確度で推定できる。当該高い確度の推定により、氷結していないのに第1通電が行われて無駄な電力消費が生じることを削減でき、かつ、氷結が生じているのに対処することを逃してしまうといった事態を低減できる。したがって、無駄が少なくかつ寒冷期に障害が生じ難いリレーシステム100を実現できる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、リレー装置10は、接点A11、A12を開状態から閉状態へ切り替える駆動力を発生させる第1コイル161と、接点A11、A12を閉状態から開状態へ切り替える駆動力を発生させる第2コイル162とを備える。そして、上記の第1通電としては、接点A11、A12が開状態にある場合、第2コイル162への通電が採用される。したがって、第1通電を行うための特別な駆動回路の追加等が不要であり、コントローラ20が第1通電を実施する構成を、容易に実現できる。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、コントローラ20は、上記の第1通電として、第1コイル161の通電と第2コイル162の通電とを並行して行う方式の通電を採用することができる。当該方式の通電によれば、接点A11、A12が開状態にあるときにも、閉状態にあるときにも、同様の通電により接点A11、A12の開閉状態を切り替えることなく駆動機構16から熱を発生させることができる。したがって、コントローラ20は、第1通電を実施する前に、開閉状態を確認する処理を省略できる。さらに、上記方式の通電によれば、1つのコイルに通電する場合よりも、総合的に大きな電流を流すことができる。したがって、より速やかな氷結への対処が可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、車両にリレーシステムが搭載される例を示したが、本発明に係るリレーシステムは、車両に限られず、様々な装置に組み込まれてもよい。例えばリレーシステムは産業用機械に組み込まれてもよい。また、上記実施形態では、リレー装置がラッチリレーである例を示したが、リレー装置は、コイルへの通電と通電の解除によって開閉状態が切り替わる構成であってもよい。この場合、第1通電として、通電とは逆方向に流れる通電を採用することができる。このような第1通電によっても、コイルへの通電の解除によって開状態又は閉状態になっているリレー装置に対して、開閉状態を切り替えずに、コイルに大きな電流を流して、氷結に対処することができる。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 リレー装置
A11、A12 接点
16 駆動機構
18 第1温度センサ
19 筐体
20 コントローラ
30 第2温度センサ
100 リレーシステム
161 第1コイル
162 第2コイル
200 車両
220 電源装置
221 電力供給部
222 電力線
224 電気装置